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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】ジャイロ安定機
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/16 20060101AFI20220307BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20220307BHJP
   F16N 7/32 20060101ALI20220307BHJP
   F16C 37/00 20060101ALI20220307BHJP
   G01C 19/02 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
G01C19/16
F16N7/38 D
F16N7/32
F16C37/00 Z
G01C19/02 B
【請求項の数】 39
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017158600
(22)【出願日】2017-08-21
(65)【公開番号】P2018028542
(43)【公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】2016903303
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】512215060
【氏名又は名称】ヴィーム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VEEM LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】マーク ミオセヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル アンドレワーサ
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0157749(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0268753(US,A1)
【文献】米国特許第01655800(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0244513(US,A1)
【文献】中国実用新案第204408103(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/16
F16N 7/38
F16N 7/32
F16C 37/00
G01C 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバアセンブリを備え、該真空チャンバアセンブリが、ハウジングにより形成された真空チャンバ内に囲われたフライホイールと、前記フライホイールに固定されたまたは前記フライホイールと一体であるフライホイールシャフトであって、前記フライホイールの回転軸周りの回転を可能とする上方回転ベアリングおよび下方回転ベアリングにより前記ハウジングに対して相対配置されるフライホイールシャフトとを含む、ジャイロ安定機において、
前記真空チャンバアセンブリが、
上方回転ベアリングチャンバ、ならびに前記フライホイールシャフトの周囲に設けられた上方シャフト封止部、
下方回転ベアリングチャンバ、ならびに前記フライホイールシャフトの周囲に設けられた下方シャフト封止部、
をさらに備え、
前記上方回転ベアリングチャンバは、前記上方回転ベアリングを収容すると共に、前記上方シャフト封止部によって前記真空チャンバから分離されており、
前記下方回転ベアリングチャンバは、前記下方回転ベアリングを収容すると共に、前記下方シャフト封止部によって前記真空チャンバから分離されており、
当該ジャイロ安定機がオイル循環路を含み、該オイル循環路が、前記上方回転ベアリングチャンバ内への少なくとも1つの出口と、前記上方回転ベアリングチャンバから排出を行う少なくとも1つの排出口と、前記下方回転ベアリングチャンバ内への少なくとも1つの出口と、前記下方回転ベアリングチャンバから排出を行う少なくとも1つの排出口とを有し、
前記上方回転ベアリングチャンバおよび前記下方回転ベアリングチャンバは、前記真空チャンバよりも高い圧力に維持される、
ことを特徴とするジャイロ安定機。
【請求項2】
使用時において、前記真空チャンバが、-0.8barゲージ圧(-80kPaゲージ圧)よりも低い圧力とされることを特徴とする請求項1記載のジャイロ安定機。
【請求項3】
使用時において、前記上方回転ベアリングチャンバおよび前記下方回転ベアリングチャンバが、-0.2barゲージ圧(-20kPaゲージ圧)よりも低く、-0.8barゲージ圧(-80kPaゲージ圧)よりも高い圧力とされることを特徴とする請求項1記載のジャイロ安定機。
【請求項4】
前記少なくとも1つの出口の各々が、少なくとも1つのノズルを備えていることを特徴とする請求項1記載のジャイロ安定機。
【請求項5】
前記上方回転ベアリングチャンバ内への前記少なくとも1つの出口が、前記上方回転ベアリング上に向けられる少なくとも1つのオイルジェットまたは噴射を提供することを特徴とする請求項1記載のジャイロ安定機。
【請求項6】
前記上方回転ベアリングチャンバ内への前記少なくとも1つの出口が、前記上方シャフト封止部上に向けられるオイルジェットまたは噴射を提供することを特徴とする請求項1記載のジャイロ安定機。
【請求項7】
前記下方回転ベアリングチャンバ内への前記少なくとも1つの出口が、前記下方回転ベアリング上に向けられるオイルジェットまたは噴射を提供することを特徴とする請求項1記載のジャイロ安定機。
【請求項8】
前記下方回転ベアリングが、第1の下方回転ベアリングと第2の下方回転ベアリングとを含み、
前記下方回転ベアリングチャンバ内への前記少なくとも1つの出口が、前記第1の下方回転ベアリング上に向けられるオイルジェットもしくは噴射、および前記第2の下方回転ベアリング上に向けられるオイルジェットもしくは噴射を提供する、
ことを特徴とする請求項1記載のジャイロ安定機。
【請求項9】
前記下方回転ベアリングチャンバ内への前記少なくとも1つの出口が、前記下方シャフト封止部上に向けられるオイルジェットまたは噴射を提供することを特徴とする請求項1記載のジャイロ安定機。
【請求項10】
前記オイル循環路が少なくとも1つのフィルタを含むことを特徴とする請求項1記載のジャイロ安定機。
【請求項11】
オイル回収チャンバ、オイル貯留部、少なくとも1つの戻りオイルポンプ、および供給オイルポンプをさらに含むことを特徴とする請求項1記載のジャイロ安定機。
【請求項12】
前記オイル回収チャンバが、少なくとも部分的に、前記ハウジングにより形成されていることを特徴とする請求項11記載のジャイロ安定機。
【請求項13】
前記上方回転ベアリングチャンバから排出を行う前記少なくとも1つの排出口、および前記下方回転ベアリングチャンバから排出を行う前記少なくとも1つの排出口が、前記オイル回収チャンバに接続されていることを特徴とする請求項11記載のジャイロ安定機。
【請求項14】
前記オイル回収チャンバ内に配され、前記フライホイールシャフトに固定されたまたは前記フライホイールシャフトにより駆動される、ラジアル投射ディスクをさらに含むことを特徴とする請求項11記載のジャイロ安定機。
【請求項15】
前記オイル循環路が、
前記オイル貯留部、
前記オイル貯留部と、各ベアリングチャンバ内への前記少なくとも1つの出口との間に接続された、前記供給オイルポンプ、
前記上方回転ベアリングチャンバから排出を行う前記少なくとも1つの排出口を、前記オイル回収チャンバへと接続する排出導管、および、前記下方回転ベアリングチャンバから排出を行う前記少なくとも1つの排出口から、前記オイル回収チャンバへの排出経路、
を含み、
前記少なくとも1つの戻りオイルポンプが、前記オイル回収チャンバから前記オイル貯留部へとオイルをポンピングして送るために設けられていることを特徴とする請求項11記載のジャイロ安定機。
【請求項16】
オイル冷却部をさらに含むことを特徴とする請求項15記載のジャイロ安定機。
【請求項17】
前記ハウジング内において、前記真空チャンバの底近くに配置されている、真空チャンバ排油キャビティをさらに含むことを特徴とする請求項11記載のジャイロ安定機。
【請求項18】
前記真空チャンバ排油キャビティが、ポンプ機構により前記オイル回収チャンバに接続されていることを特徴とする請求項17記載のジャイロ安定機。
【請求項19】
前記ポンプ機構が、
中間タンク、
前記中間タンクを前記オイル回収チャンバと選択的に連絡するための下方バルブ、
前記真空チャンバ排油キャビティを前記中間タンクと選択的に連絡するための上方バルブ、および
前記中間タンクを、前記真空チャンバもしくは大気と選択的に連絡するための圧力切替バルブ、
を含むことを特徴とする請求項18記載のジャイロ安定機。
【請求項20】
空気循環路をさらに含み、該空気循環路が、
前記真空チャンバと流体接続されている真空ポンプ、および
空気乾燥装置、
を含むことを特徴とする請求項11記載のジャイロ安定機。
【請求項21】
前記空気循環路が、
請求項19に記載の前記圧力切替バルブならびに中間タンク、
前記圧力切替バルブを前記空気乾燥装置に接続する導管、
前記圧力切替バルブを前記中間タンクに接続する導管、および
前記圧力切替バルブを前記真空チャンバに接続する導管、
をさらに含むことを特徴とする請求項20記載のジャイロ安定機。
【請求項22】
前記空気循環路が排気逃し弁をさらに含み、該排気逃し弁が、貯留部圧力導管により、前記オイル貯留部の頂部または頂部近くに設けられたポートに接続されていることを特徴とする請求項20記載のジャイロ安定機。
【請求項23】
前記空気循環路が、前記貯留部圧力導管と、前記ハウジング上のポートとの間に接続された、圧力調整バルブをさらに含むことを特徴とする請求項22記載のジャイロ安定機。
【請求項24】
前記空気循環路が、前記貯留部圧力導管内の、前記排気逃し弁と前記オイル貯留部との間の位置に、オイルトラップをさらに含み、
前記圧力調整バルブが、前記オイルトラップの底近くのポートにより前記貯留部圧力導管に接続されていることを特徴とする請求項23記載のジャイロ安定機。
【請求項25】
前記空気循環路が、前記貯留部圧力導管と前記空気乾燥装置との間に、返流チェックバルブをさらに含んでいることを特徴とする請求項22記載のジャイロ安定機。
【請求項26】
冷却剤循環路をさらに含み、該冷却剤循環路が、
冷却ポンプ、
冷却剤貯留部、
少なくとも1つのオイル熱交換部、および
水熱交換部、
を含むことを特徴とする請求項1記載のジャイロ安定機。
【請求項27】
前記冷却剤循環路が、前記上方回転ベアリングのための冷却ジャケットと、前記下方回転ベアリングのための冷却ジャケットとをさらに含むことを特徴とする請求項26記載のジャイロ安定機。
【請求項28】
前記冷却剤循環路が、回転モーター、回転モーター駆動部、歳差運動モーターおよび歳差運動モーター駆動部のうちの、1つ以上のための冷却プレートまたはジャケットをさらに含むことを特徴とする請求項26記載のジャイロ安定機。
【請求項29】
前記冷却剤循環路が、回転抑制抵抗部のための冷却ジャケットをさらに含むことを特徴とする請求項26記載のジャイロ安定機。
【請求項30】
前記冷却剤循環路が、
前記水熱交換部を通る冷却剤流路に対して並列に設けられたバイパス導管もしくは経路、および
前記バイパス導管もしくは経路を流れる冷却剤流と、前記水熱交換部を通る冷却剤流路を流れる冷却剤流との、バランスを制御するためのバイパスバルブ、
をさらに含むことを特徴とする請求項26記載のジャイロ安定機。
【請求項31】
前記少なくとも1つのオイル熱交換部が、前記オイル循環路の一部を構成するオイル入口およびオイル出口を有する、潤滑オイル熱交換部を含むことを特徴とする請求項26記載のジャイロ安定機。
【請求項32】
前記少なくとも1つのオイル熱交換部が、油圧マニホールドを含む油圧循環路の一部を構成する油圧オイル入口および油圧オイル出口を有する、油圧オイル熱交換部を含むことを特徴とする請求項26記載のジャイロ安定機。
【請求項33】
ジャイロ安定機用の真空チャンバアセンブリのための潤滑機構において、
前記真空チャンバアセンブリが、
ハウジングにより形成された真空チャンバ内に囲われたフライホイール、
前記フライホイールに固定されたまたは前記フライホイールと一体であるフライホイールシャフトであって、前記フライホイールの回転軸周りの回転を可能とする上方回転ベアリングおよび下方回転ベアリングにより前記ハウジングに対して相対配置されるフライホイールシャフト、
上方回転ベアリングチャンバ、ならびに前記フライホイールシャフトの周囲に設けられた上方シャフト封止部、
下方回転ベアリングチャンバ、ならびに前記フライホイールシャフトの周囲に設けられた下方シャフト封止部、
を備え、
前記上方回転ベアリングチャンバは、前記上方回転ベアリングを収容すると共に、前記上方シャフト封止部によって前記真空チャンバから分離されており、
前記下方回転ベアリングチャンバは、前記下方回転ベアリングを収容すると共に、前記下方シャフト封止部によって前記真空チャンバから分離されており、
当該潤滑機構は、前記上方回転ベアリングチャンバ内への少なくとも1つのオイルジェットまたは噴射と、前記下方回転ベアリングチャンバ内への少なくとも1つのオイルジェットまたは噴射とを提供し、
前記上方回転ベアリングチャンバおよび前記下方回転ベアリングチャンバは、前記真空チャンバよりも高い圧力に維持される、
ことを特徴とする潤滑機構。
【請求項34】
ジャイロ安定機の回転ベアリングを潤滑するためのシステムであって、潤滑用循環路と、冷却剤循環路と、空気循環路とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項35】
前記潤滑用循環路は、前記回転ベアリングを収容するベアリングチャンバ内へと潤滑オイルを放出するための、少なくとも1つの出口を含んでいることを特徴とする請求項34記載のシステム。
【請求項36】
前記冷却剤循環路は、前記潤滑用循環路の前記潤滑オイルから熱を除去するための、少なくとも1つの潤滑オイル熱交換部を含んでいることを特徴とする請求項35記載のシステム。
【請求項37】
前記冷却剤循環路は、該冷却剤循環路内の冷却剤から熱を除去するための水熱交換部およびポンプを含んでいることを特徴とする請求項35記載のシステム。
【請求項38】
前記空気循環路は、
真空チャンバから空気を吸引するための真空ポンプ、および
前記ベアリングチャンバ内の圧力を、前記ジャイロ安定機の前記真空チャンバ内の圧力と大気圧との間の圧力となるように、制御するためのバルブ、
を含むことを特徴とする請求項35記載のシステム。
【請求項39】
上方オイルポートと、上方空気ポートと、下方オイルポートと、液面センサとを有する、中間タンクをさらに含み、
前記潤滑用循環路は、前記中間タンクの前記上方オイルポートと、前記ジャイロ安定機の真空チャンバの底近くのポートとの間に設けられた、第1のロックアウトバルブ、および、前記中間タンクの前記下方オイルポートと、前記ジャイロ安定機のオイル回収チャンバとの間に設けられた、第2のロックアウトバルブを含み、
前記空気循環路は、前記中間タンクの前記上方空気ポートに接続された導管を、前記ジャイロ安定機の前記真空チャンバと、大気とのいずれかに、選択的に連絡するための圧力切替バルブを含む、
ことを特徴とする請求項35記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャイロ安定機に関するものであり、より詳細には、回転軸ベアリングの潤滑に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体(たとえば船舶等)を安定化させるためのジャイロ安定機は、よく知られている。かかるジャイロ安定機はフライホイールを含み、かかるフライホイールは、使用時において、典型的には毎分3000から10000回転である高速の回転速度で、回転軸周りに回転する。フライホイールの回転軸は、当該回転軸に垂直な歳差運動軸またはジンバルシャフトを有するジンバルフレーム内に支持され、その間、歳差運動は抑制および/または推進させられる。フライホイールの外縁が高速であるため、ジンバルフレームは、典型的には、フライホイールが真空中で回転することを可能とするようにフライホイールを包囲するチャンバとされる。この構成は抵抗を減少させ、それにより熱の生成が低減させられ、効率が改善される。フライホイールを回転軸周りに配置するために用いられる回転ベアリングは、高い負荷と高い回転速度との両方に曝され、それもまた熱や騒音の発生原因となる。
【0003】
回転シャフトが真空チャンバから突出する個所における真空チャンバの封止に関連する問題を回避するために、通常、回転ベアリングおよび回転モーターは、真空チャンバの内部に配置される。回転ベアリングを真空チャンバの内部に配することは、回転ベアリングの潤滑および冷却を困難にする。回転ベアリングの内輪とフライホイールシャフトとを冷却することはさらにいっそう困難である。なぜならば、それらは回転しており、冷却ジャケットとの接触により簡単に冷却することはできないからである。回転ベアリングは、典型的にはグリースにより潤滑させられるローラーベアリングであるが、公称上水平な回転軸を伴うジャイロ安定機における、滑りベアリングおよびオイル浴潤滑の使用も知られている。しかしながら、オイルを再循環させるシステムは使用されない。その理由の一部は、ポンプ作用により真空内にオイルを出し入れするのが困難なためである。ベアリングおよび真空チャンバの冷却を補助するために冷却フィンおよび/または冷却ジャケットが設けられてもよいが、ベアリングを冷却するための冷却ジャケットを使用しても、ベアリング全体の効果的な冷却は実現されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ジャイロ安定機の回転ベアリングにつき、改善された潤滑および/または冷却を提供しようと、開発されたものである。
【0005】
回転シャフトが真空チャンバから突出する個所における真空チャンバの封止に関連する問題は、フライホイールシャフトに加わる強い放射方向の力に起因するものである。これらの強い放射方向の力は、かかる大径のフライホイールシャフトに、シャフト封止部における高い表面速度を要求し、さらにシャフト封止部において大きな放射方向の移動またはランアウトを生じさせ、それらが相俟った結果として、封止に少なくとも幾らかの漏れが生じる。
【0006】
本発明は、真空チャンバ内へのオイル漏れに対して耐性を有するような潤滑構成を、さらに提供できるのが望ましいものであることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、真空チャンバアセンブリを備え、該真空チャンバアセンブリが、ハウジングにより形成された真空チャンバ内に囲われたフライホイールと、フライホイールに固定されたまたはフライホイールと一体であるフライホイールシャフトであって、フライホイールの回転軸周りの回転を可能とする上方回転ベアリングおよび下方回転ベアリングにより上記のハウジングに対して相対配置されるフライホイールシャフトとを含む、ジャイロ安定機において、上記の真空チャンバアセンブリが、上方回転ベアリングチャンバ、フライホイールシャフトの周囲に設けられた上方シャフト封止部、下方回転ベアリングチャンバ、およびフライホイールシャフトの周囲に設けられた下方シャフト封止部をさらに備え、上記の上方回転ベアリングチャンバは、上方回転ベアリングを収容すると共に、上方シャフト封止部によって上記の真空チャンバから分離されており、上記の下方回転ベアリングチャンバは、下方回転ベアリングを収容すると共に、下方シャフト封止部によって上記の真空チャンバから分離されており、当該ジャイロ安定機がオイル循環路を含み、該オイル循環路が、上方回転ベアリングチャンバ内への少なくとも1つの出口と、上方回転ベアリングチャンバから排出を行う少なくとも1つの排出口と、下方回転ベアリングチャンバ内への少なくとも1つの出口と、下方回転ベアリングチャンバから排出を行う少なくとも1つの排出口とを有することを特徴とする、ジャイロ安定機が提供される。
【0008】
好ましくは、上方回転ベアリングチャンバは、少なくとも部分的に上記のハウジングにより形成される。好ましくは、下方回転ベアリングチャンバは、少なくとも部分的に上記のハウジングにより形成される。上方回転ベアリングチャンバおよび/または下方回転ベアリングチャンバは、それぞれのベアリング担体内に設けられてもよい。
【0009】
真空チャンバは、使用時において、-0.8barゲージ圧(barg)(-80kPaゲージ圧)よりも低い圧力、好ましくは-0.9barゲージ圧(barg)(-90kPaゲージ圧)よりも低い圧力、さらに好ましくは-0.95barゲージ圧(barg)(-95kPaゲージ圧)よりも低い圧力とされてもよい。
【0010】
上方回転ベアリングチャンバおよび下方回転ベアリングチャンバは、使用時において、-0.2barゲージ圧(barg)(-20kPaゲージ圧)と-0.8barゲージ圧(barg)(-80kPaゲージ圧)との間の圧力、好ましくは-0.3barゲージ圧(barg)(-30kPaゲージ圧)と-0.7barゲージ圧(barg)(-70kPaゲージ圧)との間の圧力、さらに好ましくは-0.4barゲージ圧(barg)(-40kPaゲージ圧)と-0.6barゲージ圧(barg)(-60kPaゲージ圧)との間の圧力とされてもよい。
【0011】
あるいは、抵抗およびフライホイールの回転により生成される熱を低減するには、真空チャンバ内の圧力は、好ましくは200トール(約26.7kPa)未満、より好ましくは50トール(約6.67kPa)未満とされ得るものの、真空チャンバは、600トールすなわち600mmHg(約80.0kPa)未満の圧力とされてもよい。
【0012】
上方回転ベアリングチャンバおよび下方回転ベアリングチャンバ内の圧力は、大気圧と真空チャンバ圧力との間の圧力とされ得るが、大多数のポンプの動作範囲に留まるためには、150トール(約20.0kPa)未満とはされないことが好ましい。そのため、一例としては、真空チャンバ内の圧力と回転ベアリングチャンバ内の圧力とは、たとえば約300トール(約40.0kPa)(好ましくは約200トール(約26.7kPa))の圧力で、すべて実質的に等しくされてもよい。
【0013】
上記の少なくとも1つの出口の各々は、少なくとも1つのノズルを備えていてもよく、あるいは少なくとも1つのノズルであってもよい。上方回転ベアリングチャンバ内への上記の少なくとも1つの出口は、たとえば少なくとも1つのノズルにより、上方回転ベアリング上に向けられる少なくとも1つのオイルジェットまたは噴射を含むものとされてもよい。
【0014】
上記に加えて、あるいは上記に代えて、上方回転ベアリングチャンバ内への上記の少なくとも1つの出口は、上方シャフト封止部上に向けられる少なくとも1つのオイルジェットまたは噴射を含むものとされてもよい。
【0015】
上記に加えて、あるいは上記に代えて、下方回転ベアリングチャンバ内への上記の少なくとも1つの出口は、下方回転ベアリング上に向けられる少なくとも1つのオイルジェットまたは噴射を含むものとされてもよい。
【0016】
下方回転ベアリングは、第1の下方回転ベアリングと第2の下方回転ベアリングとを含んでもよく、下方回転ベアリングチャンバ内への上記の少なくとも1つの出口は、第1の下方回転ベアリング上に向けられる少なくとも1つのオイルジェットもしくは噴射、および/または第2の下方回転ベアリング上に向けられる少なくとも1つのオイルジェットもしくは噴射を含むものとされてもよい。
【0017】
上記に加えて、あるいは上記に代えて、下方回転ベアリングチャンバ内への上記の少なくとも1つの出口は、下方シャフト封止部上に向けられる1つ以上のそれぞれのオイルジェットまたは噴射を含むものとされてもよい。
【0018】
オイル循環路は、少なくとも1つのフィルタを含むものであってもよい。
【0019】
本発明の1つ以上の形態においては、ジャイロ安定機は、オイル回収チャンバ、オイル貯留部、少なくとも1つの戻りオイルポンプ、および供給オイルポンプをさらに含むものとされてもよい。
【0020】
上記のオイル回収チャンバは、たとえば、汚染物質を沈殿させるタンク、脱気タンク、受動冷却タンク、および/またはメンテナンスのための貯留部として機能し得る。
【0021】
オイル回収チャンバは、少なくとも部分的に、上記のハウジングにより提供されるものであってもよい。
【0022】
上方回転ベアリングチャンバから排出を行う上記の少なくとも1つの排出口、および下方回転ベアリングチャンバから排出を行う上記の少なくとも1つの排出口は、好ましくは、オイル回収チャンバに接続され得る。
【0023】
オイル回収チャンバ内には、ラジアル投射ディスクが配されてもよい。このラジアル投射ディスクは、既知のいかなる手段により駆動されてもよいが、好ましくは、フライホイールシャフトに固定されるか、フライホイールシャフトにより駆動される。
【0024】
ラジアル投射ディスクは、オイル回収チャンバ上の放射方向のポートに向けて、オイルを投射または付勢するために設けられるものであり、上記の放射方向のポートは、上記の少なくとも1つの戻りオイルポンプに接続される。
【0025】
オイル循環路は:オイル貯留部;オイル貯留部と、各ベアリングチャンバ内への上記の少なくとも1つの出口との間に接続された、供給ポンプ;上方回転ベアリングチャンバから排出を行う上記の少なくとも1つの排出口を、オイル回収チャンバへと接続する排出導管、および、下方回転ベアリングチャンバから排出を行う上記の少なくとも1つの排出口から、オイル回収チャンバへの排出経路;を含む循環路であって;かつ、少なくとも1つの戻りオイルポンプが、オイル回収チャンバからオイル貯留部へとオイルをポンピングして送るために設けられた循環路とされてもよい。
【0026】
上記の少なくとも1つの戻りオイルポンプは、オイル回収チャンバ内に配されてもよく、一例として、上記の少なくとも1つの戻りオイルポンプは、フライホイールシャフトにより駆動されてもよい。そのような、フライホイールシャフトにより駆動されるポンプは、たとえば、ギア、スクリュー、ダイヤフラムまたはピストン型のポンプであってもよい。
【0027】
あるいは、少なくとも1つの戻りオイルポンプは、オイル回収チャンバとオイル貯留部との間に接続されたものであってもよく、電気的に駆動されるものであってもよい。ポンプがオイル回収チャンバ内に配されていない場合には、ポンプの入口に呼び水としてのオイルを供給するのを補助するために、任意要素であるラジアル投射ディスクを使用するのが有利であるかもしれない。
【0028】
ジャイロ安定機は、オイル冷却部をさらに含むものであってもよい。オイル冷却部は、たとえば、オイル循環路内に配されたラジエーターを含むものであってもよいし、あるいは、オイルからの熱エネルギーを放熱する壁を有する受動タンクを含むものであってもよい。
【0029】
受動タンクは、たとえばオイル貯留部であってもよく、さらに、上記で述べたように、粒子や気泡を落ち着かせて除去するものであってもよく、また好ましくは、熱交換部であって、オイル循環路の一部を形成するオイル部分(たとえば、オイルが、たとえば上記の貯留部と出口との間において、熱交換部の内部を通るようにポンピングされる)と、内部を水もしくは冷却剤が流れるもしくはポンピングされる冷却剤部分とを有する、熱交換部を含むものであってもよい。
【0030】
ジャイロ安定機は、上記のハウジング内において、真空チャンバの底近くに配置された真空チャンバ排油キャビティを、さらに含むものとされてもよい。
【0031】
オイルが真空チャンバからポンプ除去されて最終的にはオイル貯留部に戻されることを可能とするために、上記の真空チャンバ排油キャビティは、ポンプ機構によりオイル回収チャンバに接続されてもよい。
【0032】
上記のポンプ機構は、中間タンク、同中間タンクをオイル回収チャンバと選択的に連絡するための下方バルブ、真空チャンバ排油キャビティを上記の中間タンクと選択的に連絡するための上方バルブ、および、上記の中間タンクを真空チャンバもしくは大気と選択的に連絡するための圧力切替バルブ、を含むものであってもよい。
【0033】
ジャイロ安定機は、冷却ポンプと、冷却剤貯留部と、少なくとも1つのオイル熱交換部と、水熱交換部(好ましくは海水熱交換部)とを含む、冷却剤循環路をさらに含むものであってもよい。上記の水は、塩水であってもよいし、真水であってもよい。
【0034】
冷却剤循環路は、上方回転ベアリングのための冷却ジャケット、および/または下方回転ベアリングのための冷却ジャケットを、さらに含むものであってもよい。同様に、冷却剤循環路は、回転モーターや、任意であるが回転モーター駆動部のための、冷却プレートまたはジャケットをさらに含むものであってもよい。
【0035】
冷却剤循環路はさらに、1つもしくは複数の歳差運動制御モーターおよび1つもしくは複数の歳差運動モーター駆動部のうちの、少なくとも1つのための冷却プレートまたはジャケットを含むものであってもよい。それに加えて、あるいはそれに代えて、冷却剤循環路は、回転抑制抵抗部のための冷却ジャケットをさらに含むものであってもよい。
【0036】
冷却剤循環路は、水熱交換部を通る冷却剤流路に対して並列に設けられたバイパス導管もしくは経路、および、上記のバイパス導管もしくは経路を流れる冷却剤流と、水熱交換部を通る冷却剤流路を流れる冷却剤流との、バランスを制御するためのバイパスバルブ、をさらに含むものであってもよい。
【0037】
好ましくは、バイパス導管もしくは経路を流れる冷却剤流に対する、水熱交換部を流れる冷却剤流のバランスは、水熱交換部の冷却剤入口における冷却剤温度、または水熱交換部の冷却剤入口近くにおける冷却剤温度の関数として制御される。
【0038】
上記の少なくとも1つのオイル熱交換部は、潤滑オイル熱交換部であって、冷却剤入口および冷却剤出口を含む同潤滑オイル熱交換部を通る冷却剤流路とは別に、かかる冷却剤流路に加えて、オイル循環路の一部を構成するオイル入口およびオイル出口を有する、潤滑オイル熱交換部を含むものであってもよい。この例では、オイルは、回転ベアリングを潤滑するオイルとされる。
【0039】
上記の潤滑オイル熱交換部は、前述のオイル冷却部であってもよい。
【0040】
上記に加えて、あるいは上記に代えて、上記の少なくとも1つのオイル熱交換部は、油圧オイル熱交換部であって、冷却剤入口および冷却剤出口を含む同油圧オイル熱交換部を通る冷却剤流路とは別に、かかる冷却剤流路に加えて、油圧マニホールドを含む油圧循環路の一部を構成する油圧オイル入口および油圧オイル出口を有する、油圧オイル熱交換部を含むものであってもよい。この例では、オイルは、たとえば歳差運動制御機構由来の、油圧オイルである。
【0041】
ジャイロ安定機は、真空チャンバと流体接続されている真空ポンプと、空気乾燥装置とを含む、空気循環路をさらに含むものであってもよい。
【0042】
上記の空気循環路は、貯留部圧力導管により、オイル貯留部の頂部または頂部近くに設けられたポートに接続された、排気逃し弁をさらに含むものであってもよい。
【0043】
空気循環路は、上記の貯留部圧力導管と、ハウジング上のポートとの間に接続された、圧力調整バルブをさらに含むものであってもよい。上記のハウジング上のポートは、たとえば、上方回転ベアリングチャンバ内へのポートおよび/または下方回転ベアリングチャンバ内へのポートであってもよい。
【0044】
圧力調整バルブは、その圧力調整バルブ前後での圧力の減少幅が、予め設定された大きさ、たとえば約0.7bar(約70kPa)の大きさよりも大きい場合のみに、貯留部圧力導管からハウジング上のポート内への流れを許可するバルブであってもよい。
【0045】
空気循環路は、貯留部圧力導管内の、上記の排気逃し弁とオイル貯留部との間の位置に配されたオイルトラップであって、上記の圧力調整バルブが、該オイルトラップの底近くのポートにより貯留部圧力導管に接続されているオイルトラップを、さらに含むものであってもよい。かかる構成では、圧力調整バルブは、オイルトラップからハウジング上のポートへの流れを許可することにより、オイルトラップからオイル循環路へのオイルの戻りを容易にすることができ、この場合のハウジング上のポートは、たとえば、上方回転ベアリングチャンバ内へのポートおよび/または下方回転ベアリングチャンバ内へのポートであってもよい。
【0046】
空気循環路は、貯留部圧力導管と空気乾燥装置との間に、返流チェックバルブをさらに含むものであってもよい。
【0047】
また、空気循環路は、前述の圧力切替バルブおよび中間タンクに加えて、さらに、圧力切替バルブを空気乾燥装置に接続する導管と、圧力切替バルブを中間タンクに接続する導管と、圧力切替バルブを真空チャンバに接続する導管とを含むものであってもよい。
【0048】
本発明の別の態様によれば、ジャイロ安定機用の真空チャンバアセンブリのための潤滑機構において、上記の真空チャンバアセンブリが、ハウジングにより形成された真空チャンバ内に囲われたフライホイール、上記のフライホイールに固定されたまたは上記のフライホイールと一体であるフライホイールシャフトであって、フライホイールの回転軸周りの回転を可能とする上方回転ベアリングおよび下方回転ベアリングにより上記のハウジングに対して相対配置されるフライホイールシャフト、上方回転ベアリングチャンバ、ならびにフライホイールシャフトの周囲に設けられた上方シャフト封止部、下方回転ベアリングチャンバ、ならびにフライホイールシャフトの周囲に設けられた下方シャフト封止部、を備え、上記の上方回転ベアリングチャンバは、上方回転ベアリングを収容すると共に、上方シャフト封止部によって真空チャンバから分離されており、上記の下方回転ベアリングチャンバは、下方回転ベアリングを収容すると共に、下方シャフト封止部によって真空チャンバから分離されており、当該潤滑機構は、上方回転ベアリングチャンバ内への少なくとも1つのオイルジェットまたは噴射と、下方回転ベアリングチャンバ内への少なくとも1つのオイルジェットまたは噴射とを含むことを特徴とする、潤滑機構が提供される。
【0049】
前述のように、好ましくは、上方回転ベアリングチャンバは、少なくとも部分的に上記のハウジングにより形成される。
【0050】
好ましくは、下方回転ベアリングチャンバは、少なくとも部分的に上記のハウジングにより形成される。
【0051】
上方回転ベアリングチャンバおよび/または下方回転ベアリングチャンバは、それぞれのベアリング担体内に設けられてもよい。
【0052】
本発明の別の態様によれば、ジャイロ安定機の回転ベアリングを潤滑するためのシステムであって、潤滑用循環路と、冷却剤循環路と、空気循環路とを含むことを特徴とする、システムが提供される。
【0053】
上記の潤滑用循環路は、回転ベアリングのベアリングチャンバハウジング内へと潤滑オイルを放出するための、少なくとも1つのジェットまたは噴射を含むものであってもよい。
【0054】
冷却剤循環路は、潤滑用循環路の潤滑オイルから熱を除去するための、少なくとも1つの潤滑オイル熱交換部を含むものとされてもよい。
【0055】
上記に加えて、あるいは上記に代えて、冷却剤循環路は、該冷却剤循環路内の冷却剤から熱を除去するための水熱交換部およびポンプを含むものとされてもよい。
【0056】
空気循環路は、真空ポンプ、および、ベアリングチャンバ内の圧力を、ジャイロ安定機の真空チャンバ内の圧力と大気圧との間の圧力となるように、制御するためのバルブを、含むものであってもよい。
【0057】
上記のシステムは、中間タンクであって、上方オイルポートと、たとえば中間タンクの頂部または頂部近くに配された上方空気ポートと、中間タンクの底または底近くに配された下方オイルポートと、液面センサとを有する、中間タンクをさらに含むものとされてもよく、潤滑用循環路は、上記の中間タンクの上方オイルポートと、ジャイロ安定機の真空チャンバの底近くのポートとの間に設けられた、第1のロックアウトバルブ、および、上記の中間タンクの下方オイルポートと、ジャイロ安定機のオイル回収チャンバとの間に設けられた、第2のロックアウトバルブを含むものとされてもよく、空気循環路は、上記の中間タンクの上方空気ポートに接続された導管を、ジャイロ安定機の真空チャンバと、(好ましくは空気乾燥装置を介して)大気とのいずれかに、選択的に連絡するための圧力切替バルブを含むものとされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】ジャイロ安定機の真空チャンバの、一部を切り取った状態の斜視図
図2】本発明の一実施形態に係るオイル循環路を示した概略図
図3】本発明の一実施形態に係る空気循環路を示した概略図
図4】本発明の一実施形態に係る冷却剤循環路を示した概略図
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、便宜上、本発明の好適な実施形態を図解した添付の図面を参照して、本発明につきさらなる説明を行う。
【0060】
本発明については他の実施形態も可能であり、したがって、添付の図面の個別具体性は、前出の本発明に関する説明の一般性に優先すると理解されるべきものではない。
【0061】
まず図1を参照すると、ジャイロ安定機の真空チャンバアセンブリ10が図示されている。フライホイール11は、ハウジング13の内部に形成された、真空チャンバ12またはフライホイールチャンバ内に収容されている。ハウジングは、当該ハウジング13に取り付けられた歳差運動ベアリングスタブ14上に枢動可能にマウントされており、歳差運動ベアリング15は、スタブ軸14に嵌め込まれた状態で図示されている。歳差運動軸周りにおける真空チャンバアセンブリ10の回転は、よく知られるようにダンパーやアクチュエータといった歳差運動制御デバイスによって制御され、歳差運動ベアリングスタブ14はまた、歳差運動ダンパーまたはアクチュエータ取付部16を含んでいる。フライホイール11は、フライホイールシャフト19に、取り付けられ、または固定され、または図示のように一体形成されており、このフライホイールシャフト19はさらに、フライホイール11が、回転モーター25により駆動されてハウジングに対して回転軸20周りに相対回転できるように、上方回転ベアリング21および下方回転ベアリング23によって、ハウジング13に対して相対的に配されている。上方回転ベアリング21は、上方回転ベアリングチャンバ22内に配されており、同様に、下方回転ベアリング23は、下方回転ベアリングチャンバ24内に配されている。しかしながら、真空チャンバ12と回転ベアリングチャンバ22,24との間のシャフト封止は、上述したように、高い表面速度と大きなランアウトに起因する避けられない漏れを有するので、フライホイールシャフト19が公称上垂直である(すなわち、使用時において、たとえば垂直状態の各側に±70°までの範囲で振れる)ジャイロ安定機においては、再循環型のオイル潤滑システムは典型的には可能でない。そのため、正しい場所にあり続けるため、典型的にはグリースが使用される。本発明のオイル循環路および空気循環路の構成は、漏れに対して耐性を有するものであり、ベアリングチャンバから真空チャンバ内へのオイル漏れを、除去してオイル循環路に戻すことを可能とするものである。
【0062】
図2は、回転ベアリング(この例では、上方回転ベアリング21、第1の下方回転ベアリング31および第2の下方回転ベアリング32)に対し潤滑および冷却を提供する、潤滑構成またはオイル循環路30を示している。第2の下方回転ベアリングは、フライホイールを支持するための大きなスラスト荷重(見やすさのため省略されている)に適したタイプのベアリングとされてもよい。図では、類似または等価の特徴は、共通の参照番号で示されている。
【0063】
図2はまた、ベアリングチャンバが真空チャンバに対して異なる圧力を有することを可能とし、かつ真空チャンバ内に潤滑オイルが自由に流れ込むことを防止するような、ベアリングチャンバ22,24と真空チャンバ12との間の封止部33,34も示している。ベアリングチャンバを真空チャンバに対して異なる圧力とすることには、主に2つの利点がある。第1に、たとえばキャビテーションのために、真空チャンバからオイルをポンプ除去することはあまり容易ではない。第2に、真空チャンバ12とベアリングチャンバ22または24との圧力差は、封止部33または34にエネルギーを与えることを補助する。封止部33,34は、フライホイールシャフトの周囲に配されており(フライホイールシャフトは、見やすさのため図2では省略されている)、いかなる態様の回転シャフト封止要素であってもよい。
【0064】
オイルは、オイル貯留部36から供給オイルポンプ37により送り出され、フィルタ38を通過し、さらにオイル冷却部または熱交換部39を通過する。オイル冷却部39は、導管42から流入し導管44から流出する冷却剤フローを伴う、直列接続された2つの熱交換ユニット40,41として図示されている。熱交換部から出たオイルの流れは、その後、上方回転ベアリングチャンバ22に向かう導管50と、下方回転ベアリングチャンバ24に向かう導管51とに分割される。回転ベアリングの内部および周囲をオイルが通る前にオイルを冷却することは、熱発生個所において回転ベアリングを冷却することを助け、グリースによる潤滑の場合には不可能な冷却を実現する。オイル貯留部はまた、受動冷却タンクとして作用してもよい。
【0065】
上方回転ベアリングチャンバ22に向かう導管50は、その後、制限要素53を通って上方回転ベアリング21上にオイルジェットを噴射する出口またはノズル54へと向かう導管52と、制限要素56を通って上方シャフト封止部33上にオイルジェットを噴射するノズル57へと向かう導管55とに、再び分岐する。真空チャンバアセンブリが歳差運動をしている間に2つのポートからオイルが交互に排出されるように、排出ライン58は、歳差運動軸の配向に対して垂直に対向するポートに接続された1つ以上のラインとされてもよい。図2の概略図においては、3つの排出ライン58が図示されており、それらのうち2つは上方回転ベアリング21の両側の下方にあたる領域から、1つは封止領域から延びており、すべての排出ライン58が、排出導管59へと繋がっている。この排出導管59は、ハウジング13内部を通って真空チャンバ12の外へ出て、さらに下方のオイル回収チャンバ60へと繋がっている。
【0066】
下方回転ベアリングチャンバ24に向かう導管51も、同様に、制限要素63を通って第1の下方回転ベアリング31上にオイルジェットを噴射する出口またはノズル64へと向かう導管62と、制限要素66を通って第2の下方回転ベアリング32上にオイルジェットを噴射するノズル67へと向かう導管65とに、再び分岐する。図2には図示されていないが、オイルジェットは、より上の下方シャフト封止部34上にも噴射されてもよい。ノズル54,57,64,67の数および/または制限要素53,56,63,66は、異なる複数のベアリングおよび封止部にポンピングされるオイルの流れのバランスを取るために、利用することができる。排出ライン68は、下方回転ベアリング31,32からオイル回収チャンバ60内へと排出されるオイルの排出経路を示している。オイル回収チャンバ60内のオイルを、戻りオイル導管71が接続された放射方向のポート70に向けて放射状に投射するために、任意の要素として、オイル回収チャンバ60内でラジアル投射ディスク(図示せず)が使用されてもよい。かかるラジアル投射ディスクは、好ましくはフライホイールシャフトにより駆動され、また理想的にはフライホイールシャフトに固定される。戻りオイル導管のそれぞれには、フィルタ73、戻りオイルポンプ75および逆止弁77が設けられている。オイル回収チャンバ60の圧力は、回転ベアリングチャンバ22,24と類似の圧力、すなわち大気圧と真空チャンバ圧との間の圧力であるため、オイル回収チャンバからオイルを送出することは困難であり得るが、ラジアル投射ディスクの使用は、オイルが戻りオイル導管に入ることを助け、したがって戻りオイルポンプ75の動作を補助する。戻りオイル導管の出口は、導管79によりオイル貯留部36に接続されている。戻りオイルポンプ75は、電気的に駆動されてもよいし、あるいは、ラジアル投射ディスクの必要性を排除するためにオイル回収チャンバ60内に配置されるのであれば、フライホイールシャフトにより機械的に駆動されてもよい。ギア、スクリュー、ダイヤフラムもしくはピストンポンプ、または混合流(すなわち典型的にはオイルと気泡)を送出することのできる他のタイプのポンプを含む、様々なタイプのポンプが、適当であり得る。オイル貯留部は、最も重要な点としてはオイル脱気装置として機能するが、汚染物質を沈殿させる機能、および/またはオイルの受動冷却を提供する機能等の、他の機能を提供してもよい。
【0067】
上方または下方シャフト封止部33,34を通過して真空チャンバ12内に引き込まれたオイルは、真空チャンバの底に堆積し、排油キャビティ80内に集まる。しかしながら、キャビテーションのため、ここでも真空チャンバ排油キャビティ80からオイルをポンプ除去することは、困難であり得る。ポンプ機構81は、真空チャンバ12と、オイル回収チャンバ60(および回転ベアリングチャンバ)と、大気圧との圧力差を利用して、真空チャンバ排油キャビティ80から、オイル回収チャンバ60へとオイルをポンピングする。切替可能な一方向バルブまたはロックアウトバルブであってもよい上方バルブ82は、選択的に、真空チャンバ排油キャビティ80が中間タンク83に接続されることを可能にする。同様に、下方バルブ84は、選択的に、中間タンク83がオイル戻り導管88を経由してオイル回収チャンバ60に接続されることを可能にする。導管89は、図3の空気循環路90内に示されている空気圧導管であり、中間タンク83内の圧力を変化させるために使用される。
【0068】
上方バルブ82、中間タンク83、下方バルブ84およびオイル戻り導管88のポンプ機構81は、空気循環路90の一部である図3の残りの要素と共に、図3にも示されている。図3では、オイル導管は、空気導管と比較してより細い線で示されている。圧力切替バルブ91は、空気圧導管89の連絡先を、真空チャンバ12内の低圧(導管95およびハウジング13のポート96を介して)と、空気乾燥装置93(さらに最終的には大気94)に接続された空気導管92内の大気圧との間で切り替える。上方バルブ82は、通常開状態のバルブであってもよいが、好ましくは、図示のように通常閉状態で、選択的に開状態とされて真空チャンバ排油キャビティ80から中間タンク83へのオイルの排出を可能にするバルブとされる。理想的には、中間タンク内のオイル量が減少させられるべき時点を特定するために、中間タンク内に液面センサが設けられ、その時点において、上方バルブ82を閉状態とした上で、圧力切替バルブ91が、中間タンクを大気圧に接続し得る。その後、圧力切替バルブ91が中間タンクを大気圧に接続した状態に保ち、かつ下方バルブ84が一時的に開状態とされるか、あるいは、圧力切替バルブ91が閉状態とされて、中間タンク83をオイル回収チャンバ60と接続するために下方バルブ84が一時的に開状態とされる。いずれの場合においても、オイル回収チャンバ60内の半真空に対する、大気圧にある中間タンク83内の空気の圧力差により、オイル導管88に沿って、中間タンクからオイル回収チャンバ内へとオイルが送出される。下方バルブ84が閉状態とされた後、圧力切替バルブ91は、中間タンクを真空チャンバと再度連絡してもよく、それにより、圧力を等化し、上方バルブ82が開状態とされたときに再度オイルが真空チャンバから中間タンク83内へと排出することを可能とする。中間タンクの容積は、典型的には真空チャンバよりも4桁程度小さいので、上述したバルブ動作のポンプ挙動サイクルは、各サイクルの終了時において中間タンクが圧力切替バルブ91を介して真空チャンバに連絡される際に取り込まれる空気を、真空ポンプが除去する必要が生じるまでには、数サイクル完了させられ得る。真空ポンプ97は、ハウジングに設けられたポート98と、導管99とを介して、真空チャンバ12から空気を吸引することができる。真空チャンバは、-1barゲージ圧(マイナス1barゲージ圧すなわち大気圧より1bar低い圧力;マイナス100kPaゲージ圧すなわち大気圧より100kPa低い圧力)近くに維持される。たとえば、真空チャンバは、使用時において、-0.2barゲージ圧(-20kPaゲージ圧)または600トール(mmHg)(約80.0kPa)よりも低い圧力とされてもよいが、かかる圧力では、フライホイールの周縁部における空気摩擦が熱を発生させ、かかる熱は対流によりハウジングに伝達されさらにそのハウジングが冷却され得るものの、上記の空気摩擦はまた、フライホイールを回転させるのにより大きなパワーを必要ともさせる。しかしながら、これらの問題を回避するために、使用時において、真空チャンバは、好ましくは-0.73barゲージ圧すなわち-73kPaゲージ圧(200トールすなわち約26.7kPa)未満、もしくは-0.8barゲージ圧すなわち-80kPaゲージ圧(150トールすなわち約20.0kPa)未満、または好ましくは-0.9barゲージ圧すなわち-90kPaゲージ圧(75トールすなわち約10.0kPa)未満、そしてより好ましくは-0.93bargすなわち-93kPaゲージ圧(50トールすなわち約6.67kPa)未満の圧力とされる。
【0069】
空気循環路の他の部分は、オイル貯留部36内の圧力と、上方および下方回転ベアリングチャンバ22,24内の圧力とを制御する。オイル貯留部36は、同貯留部の頂部または頂部近くに設けられたポート110から、貯留部圧力導管111を通り、オイルトラップ112を経て、典型的には約0.2bar(約20kPa)に設定される排気逃し弁113へと続く経路で、排気される。排気逃し弁は、直接または乾燥装置を経て大気中へと排気を行い、オイル貯留部内の圧力が最大0.2barゲージ圧(20kPaゲージ圧)となるように保障する。オイルトラップ112は任意の要素であるが、存在する場合には、オイルが排気逃し弁113を通過しないよう保障する手助けをする。オイルトラップ112の底にあるポート114は、導管115に接続されており、その導管115には、回転ベアリングチャンバに入る空気の圧力を調整する圧力調整バルブ116が設けられている。オイルトラップ112が設けられている場合には、かかる構成は、そこからオイルが排出されるおよび/またはタンクへと送り戻されるような容積部のうちの1つに、オイルトラップからオイルを戻すことも可能とする。この例では、圧力調整バルブ116は、ハウジング上に設けられた、上方回転ベアリングチャンバ22へと続くポート118に接続されている。したがって、圧力調整バルブが0.7bar(70kPa)の圧力差で開状態となるチェックバルブ構成であり、かつ貯留部36(および貯留部圧力導管111ならびにオイルトラップ112)内の圧力が0.2barゲージ圧(20kPaゲージ圧)である場合には、上方回転ベアリングチャンバ22内の圧力は、約-0.5barゲージ圧(約-50kPaゲージ圧)となる。上方および下方ベアリングチャンバ22,24は、オイル回収チャンバ60および排出導管を介して接続されている。ベアリングチャンバ内の圧力は、真空チャンバの圧力と大気圧との間の圧力とされ得るが、貯留部へとオイルをポンピングして戻すのが不必要に困難とならないよう、好ましくは-0.8barゲージ圧(-80kPaゲージ圧)よりも高い圧力とされる。好ましくは、使用時において、ベアリングチャンバ22,24内の圧力は-0.2barゲージ圧(-20kPaゲージ圧)と-0.8barゲージ圧(-80kPaゲージ圧)との間の圧力とされ、より好ましくは-0.3barゲージ圧(-30kPaゲージ圧)と-0.7barゲージ圧(-70kPaゲージ圧)との間の圧力とされ、さらに好ましくは-0.4barゲージ圧(-40kPaゲージ圧)と-0.6barゲージ圧(-60kPaゲージ圧)との間の圧力とされる。
【0070】
ジャイロ安定機が使用中でないとき、すなわちフライホイールが回転していないときには、回転ベアリングチャンバ22,24内の圧力が大気圧により近い圧力まで上昇し、シャフト封止部33,34にかかる圧力差を増大させ、それらシャフト封止部33,34を、より強く、回転がないことと相俟って長い不使用期間中において真空チャンバ内の真空を維持するための改善された封止性能を提供する水準の強さで、フライホイールシャフト側へと付勢することが好ましい。返流導管120が、返流チェックバルブ121によってオイルトラップに戻る導管115に接続されており、これにより、ベアリングチャンバ内に緩やかに空気を流すことが可能となり、また、戻りオイルポンプ(図2における参照番号75)がベアリングチャンバ内の圧力を引き続けるように動作していないときには、圧力は徐々に上昇する。図2に示されたオイル循環路の戻りオイルポンプが動作しているときには、それらのポンプは混合流(すなわち典型的には泡状に混合されたオイルと空気)をポンピングしており、その結果、戻りオイルポンプは、ベアリングチャンバ22,24内から、オイルのみならず空気も効果的にポンプ除去することとなるが、オイルのみがベアリングチャンバ内に戻るようにポンピングされ、したがって図3の空気循環路に示されたチェックバルブや圧力逃し弁のような受動バルブ系によりベアリングチャンバ内の圧力を調整する能力がもたらされる。
【0071】
図4は、冷却ポンプ131が循環路中に冷却剤をポンピングする、冷却剤循環路130を示している。拡張およびメンテナンスのため、ヘッダータンクまたは冷却剤貯留部132が設けられている。バイパスバルブ136が冷却剤流の全部または一部をバイパス導管または経路137に流す場合を除き、冷却剤は、導管134から入り導管135から出る海水流(あるいは真水内で動作している場合には真水流)により冷却されている海水熱交換部133を通過する。ベアリングのクリアランスの変化を最小限に抑えること、および、たとえば動作温度の変化の最小化を通じて既知のオイル粘度を維持することにより、許容誤差の管理を助けるため、理想的には、冷却系は、40度等の予め決められた温度に調整される。バイパスバルブ136は、たとえばジャイロ安定機の1つ以上の構成要素および海水の検知温度に依存して、電子的に制御されてもよいし、機械的なタイプの熱バイパスバルブであってもよい。いずれの場合においても、導管もしくは経路138と海水熱交換部、またはバイパス導管もしくは経路137を流れる冷却剤流のバランスは、温度の関数として変化させられる。
【0072】
図4の例では、冷却剤は、オリフィス141により制御されながら、回転抑制抵抗部(図示せず)のためのジャケット139と、回転抑制抵抗部冷却ジャケット139を回避するバイパス140とを通過して流れ、その後、回転モーターのための冷却プレートまたはジャケット142を通過して流れる。
【0073】
冷却剤は、上方回転ベアリングのための冷却ジャケット143と下方回転ベアリングのための冷却ジャケット144とを、直列的に流れてもよいし、図4に示すように並列的に流れてもよい。
【0074】
図4には、2つのオイル冷却器または熱交換部が示されており、これらは、図2にも示されている潤滑オイル熱交換部39、および油圧オイル熱交換部151である。潤滑オイル熱交換部39は、図2にも示されているように、2つの熱交換ユニット41および40を含んでいる。冷却剤は、導管42から第1の熱交換ユニット41に入り、導管43を含む熱交換部中の冷却剤流経路を通り、他方の熱交換ユニット40から導管44に出て、そこから、循環路の始点に戻る。油圧オイル熱交換部151は、冷却剤循環路の一部であってもよいが、好ましくは、図4に示すように海水で直接冷却される。減衰制御または能動制御を提供する歳差運動制御機構の一部であってもよい、油圧マニホールド152は、油圧オイル入口導管153および油圧オイル出口導管154を経由して、油圧オイルに熱交換部151を通過させる。この例では、海水も、導管135から入って熱交換部151を通過し、導管156を経由して出ていく。
【0075】
したがって、冷却剤循環路は、ベアリング周囲のジャケットにより回転ベアリングの外面を冷却し、かつベアリング内を流れるオイルを冷却することによりベアリングの内部を冷却することができる。そのため、オイル潤滑を通じて騒音を低減するのに加え、ベアリング内の熱も制御することができ、それにより、熱膨張の抑制により許容誤差の問題を軽減し、寿命を改善する。ベアリング内から粒子や汚染物質を洗い流すオイルの作用により、騒音と特に寿命とのさらなる改善がもたらされ、かかるデブリは、その後、オイル循環路内のオイルのフィルタ処理により濾し取られる。
【0076】
ベアリングは、ローラーベアリングであってもよいし、白色合金滑りベアリング等の流体駆動ベアリングであってもよい。滑りベアリングは、グリース潤滑を伴うジャイロ安定機におけるフライホイールシャフトの高い負荷および回転速度の下では、典型的には動作できず、オイル潤滑は、真空チャンバ圧と大気圧との間の圧力とされたベアリングチャンバの使用や、真空チャンバの底に堆積したオイルを真空部からポンプ除去するポンプ機構の使用等の、本明細書で説明した改善がなされる前においては、可能ではなかった。
【0077】
ここに開示した以外の方法を用いても、真空チャンバからオイルをポンプ除去することはできるが、-0.7barg(-70kPaゲージ圧)未満の圧力部からオイルをポンプ除去することは既存のポンプを用いては難題であるので、それらの方法のほとんどは、ここで提案されているソレノイドバルブおよび中間タンク構成よりも信頼性が低い。
【0078】
図2に示すように、下方ベアリングチャンバの下にあるオイル回収チャンバ内のオイルのために(1つまたは複数の)戻りオイルポンプが導管内に配されている場合には、ポンプは出口部と比較した入口部の圧力として最大-0.7bar(-70kPa)の圧力で動作しているので、ラジアル投射ディスクを設けることは、ポンプに対して呼び水作用の提供を試み、耐用寿命を改善するために有利であり得る。
【0079】
当業者にとって自明な他の変更例およびバリエーションも、本発明の範囲内に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
10 真空チャンバアセンブリ
11 フライホイール
12 真空チャンバ
13 ハウジング
14 歳差運動ベアリングスタブ
15 歳差運動ベアリング
19 フライホイールシャフト
21,23,31,32 回転ベアリング
22,24 回転ベアリングチャンバ
30 オイル循環路
33,34 封止部
36 オイル貯留部
54,57,64,67 ノズル
58,68 排出ライン
60 オイル回収チャンバ
71 戻りオイル導管
80 真空チャンバ排油キャビティ
81 ポンプ機構
83 中間タンク
88 オイル戻り導管
90 空気循環路
91 圧力切替バルブ
112 オイルトラップ
116 圧力調整バルブ
130 冷却剤循環路
131 冷却ポンプ
132 冷却剤貯留部
133 海水熱交換部
136 バイパスバルブ
139,142,143,144 冷却ジャケット
図1
図2
図3
図4