(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/125 20060101AFI20220307BHJP
B41J 2/08 20060101ALI20220307BHJP
B41J 2/02 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B41J2/125
B41J2/08
B41J2/02
(21)【出願番号】P 2017161769
(22)【出願日】2017-08-25
【審査請求日】2020-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直倫
(72)【発明者】
【氏名】有馬 崇博
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-123870(JP,A)
【文献】特開2004-130572(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156297(WO,A1)
【文献】特開昭61-213167(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0197406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク粒子を吐出するノズルと、
前記ノズルから吐出された前記インク粒子を帯電させる帯電電極と、
前記帯電電極によって帯電した前記インク粒子の帯電量を検出する帯電検出センサと、
前記帯電電極によって帯電した前記インク粒子の進行方向を偏向させる偏向電極と、
印字に使用しない前記インク粒子を回収するガターと、
を有し、
前記帯電検出センサは、前記帯電電極と前記ガターとの間に配置され、
前記帯電検出センサは、樹脂で形成される樹脂部に収容され、
前記樹脂部の上面は薄肉で構成され、
前記樹脂部の上面が、前記ノズルから前記ガターまで飛翔するインクビームよりも下に位置するように前記樹脂部が形成されており、
前記帯電検出センサは、その上面を前記
薄肉に突き当てた状態で固定されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記
薄肉の厚さは、前記帯電検出センサの側面を覆う樹脂部の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記帯電検出センサを覆う前記樹脂部を介して前記ノズルを固定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記帯電検出センサの下面に固定スペーサーを設けたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ノズルの下面にノズルストッパーを設けたことを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの表面に文字や図形を印字するのにインクジェット記録装置が用いられている。インクジェット記録装置は、製造ライン上に配置されるヘッド部と、ヘッド部にインクを供給する本体部とを有する。インク液を帯電させると共に粒子化し、粒子化したインク粒子を偏向させることでワーク表面に印字する。
【0003】
速乾性のインク液によってノズルが目詰まりするのを防止するために、ワークにインク粒子を印字しないときもヘッド部に対するインク液の供給が継続される。このインク液はインク受けであるガターを介して回収される。
【0004】
このようなインクジェット記録装置は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1では、ノズルから噴出されたインク粒子がインクビームとなって帯電検出センサの上端を通りガターへ回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、帯電検出センサは、帯電電極と偏向電極の間に配置されている。このため、ノズルから噴出されたインクビームが曲がってしまうと、インク粒子が帯電検出センサに衝突してインクが飛散しインク汚れが発生してしまう。
【0007】
本発明の目的は、インクジェット記録装置において、インク粒子が帯電検出センサに衝突することにより発生するインク汚れを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のインクジェット記録装置は、インク粒子を吐出するノズルと、前記ノズルから吐出された前記インク粒子を帯電させる帯電電極と、前記帯電電極によって帯電した前記インク粒子の帯電量を検出する帯電検出センサと、前記帯電電極によって帯電した前記インク粒子の進行方向を偏向させる偏向電極と、印字に使用しない前記インク粒子を回収するガターと、前記ノズルから吐出した前記インク粒子が前記帯電検出センサに衝突することを防止する衝突防止機構とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、インクジェット記録装置において、インク粒子が帯電検出センサに衝突することにより発生するインク汚れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1のインクジェット記録装置の内部構成を示す図である。
【
図2】実施例1のインクジェット記録装置の斜視図である。
【
図3】実施例1のインクビームと帯電検出センサの関係を示す図である。
【
図4】実施例1のインクビームの位置合わせ構造を示す図である。
【
図5】実施例1の帯電検出センサの固定方法を示す図である。
【
図6】実施例2のインクビームの位置合わせ構造を示す図である。
【
図7】実施例3のインクジェット記録装置の内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態は、インク粒子が帯電検出センサに衝突することにより発生するインク汚れを防止するインクジェット記録装置を提供する。
【0012】
インクジェット記録装置は、例えば、
図3に示すように、ノズル5から吐出されたインク粒子22を帯電させる帯電電極6と、インク粒子22の帯電量を検出する帯電検出センサ2と、インク粒子22の進行方向を偏向させる偏向電極3と、印字に使用しないインク粒子を回収するガター4と、インク粒子22が帯電検出センサ2に衝突することを防止する衝突防止機構(例えば、薄肉31)を有する。
【0013】
以下、図面を用いて、実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1~
図5を参照して、実施例1のインクジェット記録装置について説明する。
実施例1のインクジェット記録装置は、帯電検出センサとインクビームの位置出し精度を向上した構成を有する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、インク粒子22はインクビームとなってノズル5から噴出され、印字情報に対応した大きさの電圧を帯電電極6にて印加することで電荷を与えられる。
【0016】
帯電電極6で帯電させられたインク粒子22は、一対の偏向電極3の間の電界中を飛翔する。偏向電界は、5~6kVの高電圧が印加させた高圧電極とグランド電極との間に形成されている。帯電したインク粒子22はその帯電量に比例した力を受けて偏向して印字対象物23へ向かって飛翔して着弾する。
【0017】
その際、インク粒子22は帯電量に応じて偏向方向の着弾位置は変化し、さらに偏向方向と直行する方向に生産ラインが印字対象物23を移動させることで、偏向方向と直行した方向にも粒子を着弾させることが可能となる。これにより、複数の着弾粒子によって文字を構成し印字を行う。印字に使用されなかったインク粒子22は一対の偏向電極3の間を直線的に飛翔してガター4により捕捉された後に主インク容器21に回収される。
【0018】
また、帯電電極6と偏向電極3の間には、帯電検出センサ2が設けられており、インク粒子22の帯電量の検出を行う。帯電電極6の直後に帯電検出センサ2を配置することで帯電量の検出を本体部の制御部(図示せず)へ早くフィードバックすることができ、高速印字(1,000m/分)に対応することができる。
【0019】
図3を参照して、インク粒子22(インクビーム)と帯電検出センサ2の関係について説明する。
【0020】
帯電検出センサ2にインク粒子22が付着してしまうと帯電検出センサが故障してしまう恐れがある。このため、帯電検出センサ2は樹脂で覆う構造を有する。また、帯電検出センサ2とインクビーム22は検出精度を上げるためにも、可能な限り距離を縮める方が好ましい。例えば、帯電検出センサ2の上面(端面)からインクビーム22までの距離は中心寸法で0.7mm程度とする。そのため、帯電検出センサ2の上端を覆う樹脂は薄肉(薄膜)31にする必要がある。成形上、薄肉31は、例えば、0.3mm程度が好ましい。さらに縮めた距離を保持するためには帯電検出センサ2を薄肉31に突き当てた状態で固定できる構造をとる必要がある。
【0021】
ここで、薄肉31は、インク粒子22が帯電検出センサ2に衝突することを防止する衝突防止機構(衝突防止構造)を構成する。
【0022】
一方、インクビーム22と帯電検出センサ2の距離を縮めるということは、インクビーム22が帯電検出センサ2を覆っている樹脂のボス部32に衝突する恐れがあることにもなる。
【0023】
そこで、
図4を参照して、ノズル5とインクビーム22の位置合わせ構造について説明する。ここで、(a)は断面図、(b)はA矢視図、(c)は斜視図である。
【0024】
図4に示すように、ノズル5の噴出口部41を凸部にし、偏向ベース43に噴出口部41を支える凹部42を設けた構造とする。噴出口41の形状に伴い、凹部42の形状も変更する。また、帯電検出センサ2を覆っている樹脂と凹部42は偏向ベース43で一体となっている。このため、偏向ベース43の凹部42に噴出口41の凸部を組付けることで、インクビーム22の位置が決まる。この結果、帯電検出センサ2の上端を狙いの位置でインクビーム22を飛行させることができる。
【0025】
インクビーム22を帯電検出センサ2の上端の狙いの位置で飛行させた後、ガター4で印字に使用しないインクを回収する。この時、ガター4の中心部をインクビーム22が回収される位置に配置する。これにより、インクビーム22が帯電検出センサ2を覆っているボス部32へのインク衝突を回避でき、ガター4の中心部でインクビーム22を回収することができる。
【0026】
また、ボス部32と凹部42は偏向ベース43への二次成形で構成してもよい。但し、薄肉31の代わりに金属部品をインサートした場合には、帯電検出センサ2と金属部品が接触して帯電検出センサ2で検出ができなくなるため、金属部品を用いた構成は好ましくない。
【0027】
ノズル5の噴出口41の凸部は、
図4で示した丸部形状に限られず、凹部42と合わさる構成ならばどのような形状でも良い。
【0028】
図5を参照して、帯電検出センサ2とインクビーム22の位置出し構造について説明する。
【0029】
帯電検出センサ2の位置出しも精度が良くないと、
図4で説明したようにインクビーム22の位置が決まっても帯電検出センサ2の上面からインクビーム22までの距離が安定しなく検出精度が悪くなる。
【0030】
そこで、
図5に示すように、帯電検出センサ2を偏向ベース43に組込んだ後、固定スペーサー52を取付ける。固定スペーサー52の端面にボス部53を設けており、基板51の開口穴54に嵌め合せる。この構成により、基板51をヘッドベース55に固定する時に固定スペーサー52と基板51が接触して固定される。これにより、帯電検出センサ2を偏向ベース43の薄肉部31に押し当てた状態で固定できるので、帯電検出センサ2とインクビーム22との距離を安定させることができる。
【0031】
尚、接着剤等を使用した固定は、帯電検出センサ2の単独交換ができなく、メンテナンス性が悪いので好ましくない。
【0032】
実施例1によれば、帯電検出センサ2とインクビーム22の位置出し精度を向上した構成を有するインクジェット記録装置を提供することができる。
【実施例2】
【0033】
図6を参照して、実施例2のインクジェット記録装置について説明する。
ここで、(a)は断面図、(b)はB矢視図、(c)は斜視図である。
【0034】
実施例2は、実施例1とは異なり、インクビーム22をノズルストッパー61で調整して制限し位置合わせを行う構造になっている。従来では、インクビーム22をガター4内に入れる際にインクビーム22が外れていた時、ノズル5を上下及び左右方向に調整し、インクビーム22をガター4内に入れる構成をとっている。しかし、ノズル5を下方向に調整している時に、ガター4の下端側にインクビーム22が入ってしまった場合、帯電検出センサ2を帯電電極6と偏向電極3の間に配置していることから、インクビーム22が帯電検出センサ2を覆っている樹脂のボス32に衝突する恐れがある。
【0035】
そこで、実施例2では、ノズル5の下端に偏向ベース43と一体でノズルストッパー61を設ける。ノズルストッパー61を設けることにより、ノズル5の下方向の調整を制限することができ、ボス32へのインクビーム22の衝突を防ぐことができる。
【0036】
実施例2によれば、帯電検出センサ2とインクビーム22の位置出し精度を向上した構成を有するインクジェット記録装置を提供することができる。
【実施例3】
【0037】
図7を参照して、実施例3のインクジェット記録装置について説明する。
実施例3は、ガター4側に帯電検出センサ2を配置し、ガター4とインクビーム22の位置合わせを行う。
【0038】
図7に示すように、帯電検出センサ2をガター4と一体成形とすることで、インクビーム22と帯電検出センサ2の距離を維持することができる。実施例1と同様に帯電検出センサ2を覆う樹脂の上面は薄肉31とする。
【0039】
実施例3によれば、帯電検出センサ2とインクビーム22の位置出し精度を向上することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 印字ヘッド
2 帯電検出センサ
3 偏向電極
4 ガター
5 ノズル
6 帯電電極
21 インク容器
22 インク粒子
23 印字対象物
31 薄肉
32 ボス
41 噴出口部
42 凹部
43 偏向ベース
51 基板
52 固定スペーサー
53 ボス部
54 開口穴
55 ヘッドベース
61 ノズルストッパー