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特許7034632運転計画装置、運転計画システム及び運転計画方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】運転計画装置、運転計画システム及び運転計画方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20220307BHJP
   G06Q 10/06 20120101ALI20220307BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/06 302
H02J3/00 130
H02J3/00 170
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017163726
(22)【出願日】2017-08-28
(65)【公開番号】P2019040532
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山原 裕之
(72)【発明者】
【氏名】横川 勝也
(72)【発明者】
【氏名】黒川 太
(72)【発明者】
【氏名】穂刈 啓志
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 圭一
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073012(WO,A1)
【文献】特開2015-032244(JP,A)
【文献】特開2017-091386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント内で消費される電力のうち、前記プラント内の特定設備によって消費される電力を除く電力の予測値を算出する電力予測部と、
電力供給者が電力を調達する際のコストに係る前記電力の単価の予測値を算出する単価予測部と、
前記特定設備のうち、稼働する前記特定設備の集合を示す第1候補集合と前記電力の予測値と前記単価の予測値とに基づいて前記電力供給者による前記電力の第1調達コストを算出し、前記第1候補集合が前記プラントを運用できる条件を満たし、かつ前記第1調達コストが最小となる場合、前記第1候補集合を、稼働させる前記特定設備の集合を示す第1運転集合として決定する第1運転計画部と、
を備える運転計画装置。
【請求項2】
前記プラントが電力供給者による電力消費の抑制要請に応じて、前記特定設備のうち、稼働する前記特定設備の集合を示す第2候補集合と前記電力の予測値と前記単価の予測値とに基づいて電力供給者による前記電力の第2調達コストを算出し、
前記抑制要請に応じることで得られた節電量と前記抑制要請により発生したネガワットの単価を表すネガワット単価とを乗算した結果を示すネガワット収支を算出し、前記第2調達コストから前記ネガワット収支を減じた結果が、前記プラントを運用できる条件を満たし、かつ最小となる場合、前記第2候補集合を、稼働させる前記特定設備の集合を示す第2運転集合として決定する第2運転計画部を、
さらに備える請求項1に記載の運転計画装置。
【請求項3】
前記第1候補集合毎に前記第1候補集合と前記電力供給者による電力の提供条件とに基づいて前記電力供給者に支払われる電気料金を算出する電気料金計算部を、
さらに備え、
前記第1運転計画部は、前記第1候補集合が前記プラントを運用できる条件を満たし、かつ前記電気料金と前記第1調達コストとが最小となる場合、前記第1候補集合を前記第1運転集合として決定する請求項1に記載の運転計画装置。
【請求項4】
前記第1候補集合毎に前記第1候補集合と前記電力供給者による電力の提供条件とに基づいて前記電力供給者に支払われる電気料金と、前記第2候補集合毎に前記第2候補集合と前記電力供給者による電力の提供条件とに基づいて前記電力供給者に支払われる電気料金と、を算出する電気料金計算部を、
さらに備え、
前記第1運転計画部は、前記第1候補集合が前記プラントを運用できる条件を満たし、かつ前記電気料金と前記第1調達コストとが最小となる場合、前記第1候補集合を前記第1運転集合として決定し、
前記第2運転計画部は、前記第1運転集合に基づいて前記第2運転集合の候補集合を決定し、さらに前記プラントを運用できる条件を満たし、かつ前記第1運転集合及び前記第2運転集合の候補集合の差分に基づいて、前記ネガワット収支を算出し、前記第2調達コストと前記ネガワット収支とから算出される前記電気料金が最小となる場合、前記第2運転集合の候補集合を前記第2運転集合として決定する請求項2に記載の運転計画装置。
【請求項5】
前記節電量に基づいて前記ネガワット単価を算出するネガワット単価計算部をさらに備える請求項2または4に記載の運転計画装置。
【請求項6】
前記プラントを運用できる条件は、前記プラント内の第1貯水池の水位と、前記プラント内の第2貯水池の水位と、前記プラント内の消費電力と、前記特定設備の運転台数と、のうち少なくとも1つの条件を満たす場合である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の運転計画装置。
【請求項7】
ネットワークに接続された入出力装置と運転計画装置とを備える運転計画システムであって、
前記入出力装置は、
電力消費の抑制要請の入力を受け付ける入力部と、
前記電力消費の抑制要請を前記運転計画装置に送信する通信部と、
を備え、
前記運転計画装置は、
請求項1から6のいずれか一項に記載の運転計画装置である、
運転計画システム。
【請求項8】
運転計画装置が、プラント内で消費される電力のうち、前記プラント内の特定設備によって消費される電力を除く電力の予測値を算出する電力予測ステップと、
運転計画装置が、電力供給者が電力を調達する際のコストに係る前記電力の単価の予測値を算出する単価予測ステップと、
運転計画装置が、前記特定設備のうち、稼働する前記特定設備の集合を示す第1候補集合と前記電力の予測値と前記単価の予測値とに基づいて前記電力供給者による前記電力の第1調達コストを算出し、前記第1候補集合が前記プラントを運用できる条件を満たし、かつ前記第1調達コストが最小となる場合、前記第1候補集合を、稼働させる前記特定設備の集合を示す第1運転集合として決定する第1運転計画ステップと、
を有する、運転計画方法。
【請求項9】
運転計画装置が、前記プラントが電力供給者による電力消費の抑制要請に応じて、前記特定設備のうち、稼働する前記特定設備の集合を示す第2候補集合と前記電力の予測値と前記単価の予測値とに基づいて電力供給者による前記電力の第2調達コストを算出し、 前記抑制要請に応じることで得られた節電量と前記抑制要請により発生したネガワットの単価を表すネガワット単価とを乗算した結果を示すネガワット収支を算出し、前記第2調達コストから前記ネガワット収支を減じた結果が、前記プラントを運用できる条件を満たし、かつ最小となる場合、前記第2候補集合を、稼働させる前記特定設備の集合を示す第2運転集合として決定する第2運転計画ステップを、
をさらに有する請求項8に記載の運転計画方法。
【請求項10】
運転計画装置が、前記第1候補集合毎に前記第1候補集合と前記電力供給者による電力の提供条件とに基づいて前記電力供給者に支払われる電気料金を算出する電気料金計算ステップを、
さらに有し、
前記第1運転計画ステップは、前記第1候補集合が前記プラントを運用できる条件を満たし、かつ前記電気料金と前記第1調達コストとが最小となる場合、前記第1候補集合を前記第1運転集合として決定する請求項8に記載の運転計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、運転計画装置、運転計画システム及び運転計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力小売自由化に伴い、新電力又はPPS(Power Producer and Supplier)と呼ばれる小売電気事業者(電力供給者)が増加している。新電力は、電力卸売取引市場で電力を調達し、需要家に供給する。新電力が電力をより安く調達するには、電力の市場価格が安い時間帯に需要家の消費電力が多く、電力の市場価格が高い時間帯に需要家の消費電力が少ないことが望ましい。
【0003】
近年、新しい電力取引の種類として、デマンドレスポンス及びネガワット取引がある。新電力は、小売電気事業者の立場でネガワット取引を行う場合がある。新電力は、利益を得るために消費電力量及び消費時間帯等の電力需要を調整できる需要家を有することが望ましい。浄水場は、電力需要を調整できる需要家となる可能性を有する。配水池の水位と送水ポンプの運転台数とを調整することで、消費電力量を調整できる場合があるためである。
【0004】
浄水場は、新電力にとって望ましい送水ポンプ運転計画を立てることができれば、より安い電気料金で電力供給を受ける契約を結べる可能性がある。しかし、従来は電力供給者の電力調達コストが十分に考慮されずに送水ポンプ運転計画が作成されていた。したがって、送水ポンプ運転計画によっては、電力調達コストが安価にならない可能性があった。このような問題は、特定の設備に対して電力を供給する電力供給者にとって共通の問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-139243号公報
【文献】特開2012-246684号公報
【文献】特開2014-69105号公報
【文献】特開2016-119771号公報
【文献】特開2014-067405号公報
【文献】特開2014-178816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電力供給者がより安価に電力を調達することができる運転計画装置、運転計画システム及び運転計画方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の運転計画装置は、電力予測部と、単価予測部と、第1運転計画部とを持つ。電力予測部は、プラント内で消費される電力のうち、前記プラント内の特定設備によって消費される電力を除く電力の予測値を算出する。単価予測部は、前記電力の単価の予測値を算出する。第1運転計画部は、前記特定設備のうち、稼働する前記特定設備の集合を示す第1候補集合と前記電力の予測値と前記単価の予測値とに基づいて電力供給者による前記電力の第1調達コストを算出し、前記第1候補集合が前記プラントを運用できる条件を満たし、かつ前記第1調達コストが最小となる場合、前記第1候補集合を、稼働させる前記特定設備の集合を示す第1運転集合として決定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のポンプ運転計画システム1のシステム構成図。
図2】実施形態の浄水池から配水管路網までの送水の流れを表す図。
図3】実施形態の各時刻及び時間長を表す変数の時間関係の一具体例を示す図。
図4】第1の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図。
図5】第1の実施形態のポンプ運転台数を算出する処理の流れを示すフローチャート。
図6】第2の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図。
図7】第2の実施形態のポンプ運転台数を算出する処理の流れを示すフローチャート。
図8】第2の実施形態のDR対応運転計画部119がポンプ運転台数を算出する処理の流れを示すフローチャート。
図9】第3の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図。
図10】第3の実施形態のポンプ運転台数を算出する処理の流れを示すフローチャート。
図11】第3の実施形態の運転計画部118がポンプ運転台数を算出する処理の流れを示すフローチャート。
図12】第3の実施形態のDR対応運転計画部119がポンプ運転台数を算出する処理の流れを示すフローチャート。
図13】第4の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図。
図14】第5の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図。
図15】第6の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図。
図16】第7の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図。
図17】第8の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図。
図18】第9の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図。
図19】第10の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図。
図20】実施形態の当日DR要請が行われた場合の一具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の運転計画装置、運転計画システム及び運転計画方法を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、実施形態のポンプ運転計画システム1のシステム構成図である。ポンプ運転計画システム1は、ポンプ運転計画装置100、第1入出力装置200及び第2入出力装置300を備える。ポンプ運転計画装置100、第1入出力装置200及び第2入出力装置300は、ネットワーク400によって相互に通信可能に接続される。ポンプ運転計画システム1は、運転計画システムの一態様である。運転計画システムは、電力供給者が安価に電力を調達する運転計画を生成するシステムである。
【0011】
ポンプ運転計画装置100は、浄水場のポンプ運転計画を生成する。第1入出力装置200は、ポンプ運転計画装置100に対して節電時間帯等のデマンドレスポンス情報を送信する。第2入出力装置300は、ポンプ運転計画装置100からポンプ運転計画を受信する。第2入出力装置300は、ポンプ運転計画を出力部303に表示させる。ネットワーク400は、どのようなネットワークで構築されてもよい。例えば、ネットワーク400は、インターネットで構成されてもよい。浄水場はプラントの一態様である。プラントは、電力供給者にとって需要家となりうる者である。ポンプ運転計画装置100は、運転計画装置の一態様である。運転計画装置は、電力供給者が安価に電力を調達する運転計画を生成する装置である。
【0012】
ポンプ運転計画装置100は、ポンプ運転計画を生成する。ポンプ運転計画は、指定された期間における、浄水池から配水池まで水を移動させる送水ポンプ台数の運転計画である。指定された期間は、例えば、計画の生成を指示された当日の残り時間であってもよいし、翌日24時間であってもよいし、翌日以降の期間であってもよい。ポンプ運転計画装置100は、通信部101、データ記憶部102及び制御部114を備える。配水池は第1貯水池の一態様である。浄水池は第2貯水池の一態様である。送水ポンプは特定設備の一態様である。特定設備は、運転計画に応じて、稼働させる台数が決定される設備である。
【0013】
通信部101は、ネットワークインタフェースである。通信部101はネットワーク400を介して、第1入出力装置200及び第2入出力装置300と通信する。通信部101は、例えば無線LAN(Local Area Network)、有線LAN、Bluetooth(登録商標)又はLTE(Long Term Evolution)(登録商標)等の通信方式で通信してもよい。
【0014】
データ記憶部102は、ポンプ運転計画を生成するために用いられる各種のデータを記憶する。データ記憶部102は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。データ記憶部102は、水需要実績データ103、気象データ104、浄水場仕様データ105、浄水場電力需要実績データ106、浄水場ポンプ運転実績データ107、電気料金契約情報108、契約電力情報109、運転計画パラメータ設定110、DR情報111、オンサイト発電情報112及びスポット市場単価実績データ113を記憶する。
【0015】
制御部114は、ポンプ運転計画装置100の各部の動作を制御する。制御部114は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)を備えた装置により実行される。制御部114は、ポンプ運転計画プログラムを実行することによって、水需要予測部115、浄水場電力需要予測部116、浄水場電気料金計算部117、運転計画部118、DR(Demand Response)対応運転計画部119、ネガワット単価計算部120及びスポット市場単価予測部121として機能する。
【0016】
水需要実績データ103は、配水管路網を経由して配水された過去の水の需要量である。気象データ104は、気温、天候及び湿度等の気象に関する情報である。
【0017】
浄水場仕様データ105は、ポンプ運転計画を生成するための制約に関する情報である。具体的には、浄水場仕様データ105は、送水ポンプ1台あたりの消費電力[kW]であるWpump、配水池の上限水位Lmax[m]、送水ポンプの最大運転台数Nmax、送水ポンプの最小運転台数Nmin、配水池の面積Adist[m]、浄水池の上限水位Kmax[m]、浄水池の下限水位Kmin[m]及び浄水池の面積Atreat[m]の値である。
【0018】
浄水場電力需要実績データ106は、過去に浄水場に消費された電力量である。浄水場ポンプ運転実績データ107は、過去の単位時間毎の送水ポンプの運転台数である。
【0019】
電気料金契約情報108は、浄水場と電力供給者とが締結している電気料金契約に関する情報である。具体的には、電気料金契約情報108は、浄水場が電力供給者に支払う電気料金の基本料金[円]Bbasic、時刻t-1からtの期間の消費電力量に対して、浄水場が電力供給者に支払う電気料金の電力量単価[円/kWh]Btの値である。電力供給者は、浄水場に対して、電力を提供する事業者である。
【0020】
契約電力情報109は、浄水場が契約している電力量に関する情報である。契約電力情報109は、浄水場と電力供給者間との契約電力(部分供給)[kW]であるWpps、浄水場と他の電力供給者間との契約電力(ベース供給)[kW]であるWbaseの値である。
【0021】
運転計画パラメータ設定110は、ポンプ運転計画を生成するために利用される情報である。具体的には、運転計画パラメータ設定110は、計画対象となる期間の長さ[h]Hlen、配水池の下限水位を計算するための期間[h]Hstock、計画対象の基準時刻[h]T0、単位時間の係数τ、水需要予測の誤差計数γ、浄水場の電力需要予測の誤差計数εの値である。単位時間の係数τは、1時間を1とする係数である。単位時間の係数τは、例えば、30分なら0.5で示される。誤差計数γによって、水需要量は多めに見積もられる。誤差計数εによって、消費電力は多めに見積もられる。
【0022】
DR情報111は、デマンドレスポンス(以下、「DR」という。)に応じる運転計画を生成するために使用される情報である。具体的には、DR情報111は、電力供給者がDRに応じない場合の罰金額[円]G、電力供給者がネガワットを売る場合のネガワット単価[円/kWh]Pnega、DRの開始時刻ts、DRの終了時刻teの値である。ネガワットは、浄水場がDRに応じて余剰する電力である。
【0023】
オンサイト発電情報112は、電力供給者のオンサイト発電による電力量に関する情報である。オンサイト発電は、浄水場に対して、浄水場が消費する一部の電力を供給する。具体的には、オンサイト発電情報112は、時刻t-1からtまでの期間における電力供給者のオンサイト発電による供給電力量[円/kWh]Ftの値である。スポット市場単価実績データ113は、過去にスポット市場が定めた電力単価の実績値である。
【0024】
水需要予測部115は、水需要実績データ103と気象データ104とに基づいて、時刻t-1からtまでの期間の水需要量[m]の予測値Dtを算出する。tは、1以上、(Hlen+Hstock)/τ以下の整数である。すなわち、水需要予測部115は、ポンプ運転計画の基準時刻T0から所定の時間後までの水需要量の予測値を算出する。所定の時間とは、Tlen+Tstock単位時間である。Tlenとは、送水ポンプ運転計画の計画対象となる期間の長さHlenを、単位時間計数τで割ることで求められるタイムステップ数である。Tstockは、配水池に貯水される水の最低水位を計算するための時間Hstockを、τで割ることで求められるタイムステップ数である。
【0025】
浄水場電力需要予測部116は、気象データ104と浄水場仕様データ105と浄水場電力需要実績データ106と浄水場ポンプ運転実績データ107とに基づいて、時刻t-1からtの期間の送水ポンプ以外の浄水場の消費電力[kW]の予測値Wを算出する。tは、1以上、Hlen/τ以下の整数である。すなわち、浄水場電力需要予測部116は、時刻T0からTlen単位時間後までの送水ポンプ以外の浄水場の消費電力の予測値を算出する。浄水場電力需要予測部116は、電力量予測部の一態様である。
【0026】
浄水場電気料金計算部117は、電気料金契約情報108と送水ポンプ運転台数Nとに応じて浄水場が電力供給者に支払う電気料金を算出する。送水ポンプ運転台数Nは、運転計画部118又はDR対応運転計画部119によって決定される。
【0027】
運転計画部118は、時刻T0からTlen単位時間後までのDR未対応時のポンプ運転計画を生成する。運転計画部118は、所定の目的関数に基づいて、電力供給者が送水ポンプのために供給すべき電力を調達するコストが最小化されるように送水ポンプ台数Nを算出する。送水ポンプ運転台数Nは、式(D-1)で表される。Ntは、時刻t-1から時刻tまでの期間の送水ポンプ運転台数を表す。所定の目的関数は、実施形態ごとに異なってもよい。運転計画部118は、第1運転計画部の一態様である。
【0028】
【数1】
【0029】
DR対応運転計画部119は、時刻T0からTlen単位時間後までのDR対応時のポンプ運転計画を生成する。DR対応運転計画部119は、所定の目的関数に基づいて、電力供給者が送水ポンプのために供給すべき電力量を調達するコストが最小化されるように送水ポンプ台数Nを算出する。所定の目的関数は、実施形態ごとに異なってもよい。DR対応運転計画部119は、第2運転計画部の一態様である。
【0030】
ネガワット単価計算部120は、DR情報111に基づいて、ネガワット単価Pnega及び罰金Gを算出する。ネガワット単価計算部120は、ポンプ運転計画に応じてDR情報111に含まれるPnega及びGが変動する場合に、Pnega及びGを算出する。
【0031】
スポット市場単価予測部121は、スポット市場単価実績データ113に基づいて、スポット市場単価[円/kWh]の予測値Ptの値を算出する。tは、1以上、Hlen/τ以下の整数である。スポット市場単価予測部121は、単価予測部の一態様である。
【0032】
第1入出力装置200は、電力供給者側のユーザからの指示(例えば、節電等を要請するデマンドレスポンス情報)を受け付ける。第1入出力装置200は、受け付けた指示をポンプ運転計画装置100へ送信する。第1入出力装置200は、パーソナルコンピュータ又はサーバ等の情報処理装置である。第1入出力装置200は、通信部201、入力部202及び出力部203を備える。
【0033】
通信部201は、ネットワークインタフェースである。通信部201はネットワーク400を介して、ポンプ運転計画装置100及び第2入出力装置300と通信する。通信部201は、例えば無線LAN、有線LAN、Bluetooth又はLTE等の通信方式で通信してもよい。
【0034】
入力部202は、タッチパネル、マウス及びキーボード等の入力装置を用いて構成される。入力部202は、入力装置を第1入出力装置200に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、入力部202は、入力装置において入力された入力信号から入力データ(例えば、第1入出力装置200に対する指示を示す指示情報)を生成し、第1入出力装置200に入力する。
【0035】
出力部203は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の出力装置である。出力部203は、出力装置を第1入出力装置200に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、出力部203は、映像データから映像信号を生成し自身に接続されている映像出力装置に映像信号を出力する。
【0036】
第2入出力装置300は、浄水場側のユーザからの指示(例えば、ポンプ運転計画の生成)を受け付ける。第2入出力装置300は、受け付けた指示をポンプ運転計画装置100へ送信する。第2入出力装置300は、パーソナルコンピュータ又はサーバ等の情報処理装置である。第2入出力装置300は、通信部301、入力部302及び出力部303を備える。
【0037】
通信部301は、ネットワークインタフェースである。通信部301はネットワーク400を介して、ポンプ運転計画装置100及び第1入出力装置200と通信する。通信部301は、例えば無線LAN、有線LAN、Bluetooth又はLTE等の通信方式で通信してもよい。
【0038】
入力部302は、タッチパネル、マウス及びキーボード等の入力装置を用いて構成される。入力部302は、入力装置を第2入出力装置300に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、入力部302は、入力装置において入力された入力信号から入力データ(例えば、第2入出力装置300に対する指示を示す指示情報)を生成し、第2入出力装置300に入力する。
【0039】
出力部303は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の出力装置である。出力部303は、出力装置を第2入出力装置300に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、出力部303は、映像データから映像信号を生成し自身に接続されている映像出力装置に映像信号を出力する。
【0040】
図2は、実施形態の浄水池から配水管路網までの送水の流れを表す図である。本実施形態では、浄水池1つ、配水池1つの送水プロセスを対象として説明する。領域501は配水池である。領域502は浄水池である。領域503は送水ポンプである。送水ポンプは浄水池の水を配水池に移動させる。領域504は、配水管路網(水需要)である。配水管路網(水需要)は、配水池に貯水される水を需要家に移動させる経路である。配水管路網(水需要)は、例えばパイプで構成される。なお、配水池は複数配置されてもよい。本実施形態は、配水池の水位、浄水池の水位、送水ポンプ運転台数及び消費電力について制約を有する。各制約は、運転計画部118及びDR対応運転計画部119が、目的関数を計算するための制約条件として用いられる。以下、各制約について詳述する。
【0041】
配水池の各時刻tにおける水位Ltは、下限水位Lmin[m]以上、上限水位Lmax[m]以下であるという制約を有する。式(L-1)は、配水池の水位Ltとして許容される範囲を表す。
【0042】
【数2】
【0043】
各時刻tにおける配水池の水位Ltは、式(L-2)によって算出される。
【0044】
【数3】
【0045】
tは、時刻tにおける、送水ポンプ運転台数Nに基づいて送水ポンプの送水量を求める関数である。Qtは、式(L-3)によって算出される。
【0046】
【数4】
【0047】
は、需要家の水需要量の予測値である。Vは、式(L-4)によって算出される。
【0048】
【数5】
【0049】
下限水位Lminは、時刻毎に、式(L-5)によって算出される。
【0050】
【数6】
【0051】
stockは、式(L-6)によって算出される。
【0052】
【数7】
【0053】
浄水池の各時刻tにおける水位Ktは、下限水位Kmin[m]以上、上限水位Kmax[m]以下であるという制約を有する。式(K-1)は、浄水池の水位Ktとして許容される範囲を表す。
【0054】
【数8】
【0055】
各時刻tにおける浄水池の水位Ktは以下の式(K-2)によって算出される。
【0056】
【数9】
【0057】
各時刻tにおける送水ポンプ運転台数Nは、最小運転台数Nmin以上、最大運転台数Nmax以下であるという制約を有する。式(N-1)は、許容される送水ポンプ運転台数の範囲を表す。
【0058】
【数10】
【0059】
消費電力は、電力供給者との契約電力を超えないという制約を有する。式(W-1)は、許容される消費電力の範囲を表す。
【0060】
【数11】
【0061】
図3は、実施形態の各時刻及び時間長を表す変数の時間関係の一具体例を示す図である。ポンプ運転計画の対象期間は、運転計画部118又はDR対応運転計画部119によって生成されるポンプ運転計画の計画期間である。図3に示される場合、ポンプ運転計画の対象期間は、24時(0時)から24時までの24時間である。ポンプ運転計画は、スポット市場計画締切時刻及びネガワット取引市場計画締切時刻より前の時間に生成される。
【0062】
DR対象期間は、ポンプ運転計画の対象期間に含まれる。ポンプ運転計画の対象期間の終期からHstockの間は配水池水位保証期間である。配水池水位保証期間は、配水池が浄水池からの送水を受けられない場合でも、需要家への配水が維持される時間である。図3の場合、Hstockは12時間である。各時刻の下限水位は、Hstock時間の配水が維持されるように計算される。
【0063】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図である。第1の実施形態のポンプ運転計画装置100は、電力供給者による電力調達コストを最小化するポンプ運転計画を生成する。第1の実施形態のポンプ運転計画装置100は、水需要予測部115、浄水場電力需要予測部116、運転計画部118、DR対応運転計画部119及びスポット市場単価予測部121を備える。
【0064】
水需要予測部115は、算出した水需要量の予測値Dtを、運転計画部118及びDR対応運転計画部119に送信する。浄水場電力需要予測部116は、算出した送水ポンプを除いた浄水場の消費電力の予測値Wtを、運転計画部118及びDR対応運転計画部119に送信する。スポット市場単価予測部121は、算出したスポット市場単価の予測値Ptを、運転計画部118及びDR対応運転計画部119に送信する。
【0065】
運転計画部118は、所定の目的関数に基づいてポンプ運転計画を生成する。運転計画部118の目的関数は式(O-1)で表される。式(O-1)は、電力供給者による電力調達コストを最小化する式である。運転計画部118は、式(L-1)、式(K-1)、式(N-1)及び式(W-1)で表される制約条件を満たすように、送水ポンプ運転台数Nを決定する。運転計画部118は、運転計画パラメータ設定110及び契約電力情報109から各制約条件を示す値を取得する。運転計画部118は、送水ポンプ運転台数Nを決定するために、候補となるポンプ台数を複数決定してもよい。
【0066】
【数12】
【0067】
式(O-1)に含まれるC(N)は、式(O-2)で算出される。式(O-2)は、浄水場の消費電力量の予測値Et(Nt)にスポット市場単価Ptを乗じることで、電力供給者が電力を調達するためのコストを算出する式である。運転計画部118は、オンサイト発電情報112からオンサイト発電による供給電力量Ftを取得する。
【0068】
【数13】
【0069】
式(O-2)に含まれるEt(Nt)は、式(O-3)で算出される。式(O-3)は、浄水場の消費電力量の予測値である。運転計画部118は、浄水場仕様データ105から取得送水ポンプ1台当たりの消費電力Wpumpを取得する。運転計画部118は、時刻tにおけるポンプ運転台数NtとWpumpとを乗算する。運転計画部118は、乗算結果とその他の消費電力Wtとを加算し、単位時間係数τを乗ずることで、浄水場の消費電力量を算出する。
【0070】
【数14】
【0071】
DR対応運転計画部119は、所定の目的関数に基づいてDR対応したポンプ運転計画を生成する。DR対応運転計画部119の目的関数は式(R-1)で表される。式(R-1)は、電力供給者による電力調達コスト及び節電電力量に応じて得られるネガワット取引の収支に基づいて電力供給者が電力を調達するためのコストを最小化させる式である。DR対応運転計画部119は、式(L-1)、式(K-1)、式(N-1)及び式(W-1)で表される制約条件を満たすように、送水ポンプ運転台数Nを決定する。DR対応運転計画部119は、運転計画パラメータ設定110及び契約電力情報109から各制約条件を示す値を取得する。DR対応運転計画部119は、送水ポンプ運転台数Nを決定するために、候補となるポンプ台数を複数決定してもよい。
【0072】
【数15】
【0073】
式(R-1)に含まれるR(N)は、式(R-2)で算出される。式(R-2)は、浄水場の総節電量S(N)に、ネガワット単価Pnegaを乗じて算出したネガワット収入と罰金Gを考慮して、ネガワット取引の収支を求める式である。
【0074】
【数16】
【0075】
DR対応運転計画部119は、DR情報111から、ネガワット単価Pnegaと罰金Gとを取得する。罰金Gは、式(R-3)で算出される。
【0076】
【数17】
【0077】
浄水場の総節電量S(N)は、式(R-4)で算出される。DR対応運転計画部119は、DR対応しない場合の消費電力量の予測値Et(Mt)とDR対応した場合の消費電力量の予測値Et(Nt)との差分電力量に基づいて算出される。Mtは、運転計画部118によって算出された時刻t-1から時刻tまでの期間におけるポンプ運転台数である。
【0078】
【数18】
【0079】
式(R-2)及び(R-3)は、ネガワット取引の収支の算定方法に応じて、変更されてもよい。
【0080】
図5は、第1の実施形態のポンプ運転台数を算出する処理の流れを示すフローチャートである。水需要予測部115は、水需要実績データ103及び気象データ104に基づいて、時刻T0からTlen+Tstockまでの単位時間毎の水需要量の予測値Dtを算出する(ステップS101)。浄水場電力需要予測部116は、気象データ104、浄水場仕様データ105、浄水場電力需要実績データ106及び浄水場ポンプ運転実績データ107に基づいて、時刻T0からTlenまでの単位時間毎の送水ポンプ分を除いた消費電力の予測値Wtを算出する(ステップS102)。スポット市場単価予測部121がスポット市場単価実績データ113に基づいて、時刻T0からTlenまでの単位時間毎のスポット市場単価の予測値Ptを算出する(ステップS103)。
【0081】
運転計画部118は、時刻T0 からTlenまでの単位時間毎のDRに対応しない場合の送水ポンプ運転台数を算出する(ステップS104)。具体的には、運転計画部118は、DtとWtとPtと式(O-1)で表される目的関数とに基づいて、電力供給者による電力調達コストを最小化するポンプ運転計画を生成する。
【0082】
DR対応運転計画部119は、時刻T0 からTlenまでの単位時間毎のDRに対応する場合の送水ポンプ運転台数を算出する(ステップS105)。具体的には、DR対応運転計画部119は、DtとWtとPtとDR情報111と式(R-1)で表される目的関数とに基づいて、ネガワット取引の収支を含む電力供給者による電力調達コストを最小化するポンプ運転計画を生成する。
【0083】
このように構成されたポンプ運転計画装置100の運転計画部118は、水需要量、消費電力及びスポット市場単価の予測値に基づいて、電力供給者による電力調達コストを最小化するポンプ運転計画を生成する。さらに、DR対応運転計画部119は、水需要量、消費電力及びスポット市場単価の予測値とDR情報111とに基づいて、ネガワット取引の収支を考慮した電力供給者による電力調達コストを最小化するポンプ運転計画を生成する。また、浄水場側のユーザは、ポンプ運転計画に基づいてDRに対応できるか否かを電力供給者に示すことができる。電力供給者側のユーザは、ポンプ運転計画に基づいて浄水場を活用したネガワットが生成されるか否かを検討できる。したがって、運転計画部118又はDR対応運転計画部119に基づいて生成されたポンプ運転計画に従って浄水場を運転することで、電力供給者はより安価に電力を調達できる。
【0084】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態におけるポンプ運転計画装置100について説明する。図6は、第2の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図である。第2の実施形態のポンプ運転計画装置100は、DRに対応する場合ネガワット単価Pnegaを考慮したポンプ運転計画を生成する。第2の実施形態におけるポンプ運転計画装置100は、ネガワット単価計算部120をさらに備える点で第1の実施形態とは異なるが、それ以外の構成は同じである。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0085】
ネガワット単価計算部120は、ネガワット単価Pnega及び罰金Gを算出する。Pnegaは式(P-1)に基づいて算出される。Pnegaの値は、浄水場の総節電量S(N)に応じて算出される。Pnegaの値は、式(R-2)で使用される。
【0086】
【数19】
【0087】
図7は、第2の実施形態のポンプ運転台数を算出する処理の流れを示すフローチャートである。水需要予測部115は、水需要実績データ103及び気象データ104に基づいて、時刻T0からTlen+Tstockまでの単位時間毎の水需要量の予測値Dtを算出する(ステップS201)。浄水場電力需要予測部116は、気象データ104、浄水場仕様データ105、浄水場電力需要実績データ106及び浄水場ポンプ運転実績データ107に基づいて、時刻T0からTlenまでの単位時間毎の送水ポンプ分を除いた消費電力の予測値Wtを算出する(ステップS202)。スポット市場単価予測部121がスポット市場単価実績データ113に基づいて、時刻T0からTlenまでの単位時間毎のスポット市場単価の予測値Ptを算出する(ステップS203)。
【0088】
運転計画部118は、時刻T0 からTlenまでの単位時間毎のDRに対応しない場合の送水ポンプ運転台数を算出する(ステップS204)。具体的には、運転計画部118は、DtとWtとPtと式(O-1)で表される目的関数とに基づいて、電力供給者による電力調達コストを最小化するポンプ運転計画を生成する。
【0089】
DR対応運転計画部119は、時刻T0 からTlenまでの単位時間毎のDRに対応する場合の送水ポンプ運転台数を算出する(ステップS205)。ステップS205の具体的な処理は、図8にて説明する。
【0090】
図8は、第2の実施形態のDR対応運転計画部119がポンプ運転台数を算出する処理の流れを示すフローチャートである。DR対応運転計画部119は、時刻T0からTlenまでの単位時間毎の送水ポンプ運転台数の候補台数を決定する(ステップS301)。DR対応運転計画部119は、候補台数及び式(R-4)に基づいて節電量S(N)を算出する(ステップS302)。ネガワット単価計算部120は、算出されたS(N)と式(P-1)とに基づいてネガワット単価Pnegaを算出する(ステップS303)。DR対応運転計画部119は、式(R-2)に基づいて、R(N)を算出する。DR対応運転計画部119は、R(N)と式(R-1)に基づいて、電力調達コストとネガワット取引との収支Yを算出する(ステップS304)。DR対応運転計画部119は、送水ポンプ運転台数Nの最適解が決定したか否か判定する(ステップS305)。具体的には、DR対応運転計画部119は、式(R-1)が制約条件を満たしているか否かを判定する。さらにDR対応運転計画部119は、電力供給者による電力調達コストYが最小化されているか否かを判定する。最適解が決定した場合(ステップS305:YES)、DR対応運転計画部119は、候補台数を送水ポンプ運転台数Nと決定する。最適解が決定していない場合(ステップS305:NO)、ステップS301に遷移する。
【0091】
このように構成された第2の実施形態のポンプ運転計画装置100では、ネガワット単価計算部120が、ネガワット単価の予測値Pnegaを算出する。DR対応運転計画部119は、DR情報111とPnegaとに基づいて、ポンプ運転計画を生成する。これにより、DR対応運転計画部119は、第1の実施形態よりも望ましいポンプ運転計画を生成できる。したがって、運転計画部118又はDR対応運転計画部119に基づいて生成されたポンプ運転計画に従って浄水場を運転することで、電力供給者はより安価に電力を調達できる。
【0092】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態におけるポンプ運転計画装置100について説明する。図9は、第3の実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図である。第3の実施形態におけるポンプ運転計画装置100は、浄水場電気料金計算部117をさらに備える点で第1の実施形態とは異なるが、それ以外の構成は同じである。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0093】
浄水場電気料金計算部117は、運転計画部118及びDR対応運転計画部119からポンプ運転台数の候補台数を受け付ける。浄水場電気料金計算部117は、電気料金契約情報108に含まれるBbasic及びBtを取得する。浄水場電気料金計算部117は、式(M-2)に基づいて浄水場の電気料金を算出する。具体的には、浄水場電気料金計算部117は、浄水場の消費電力量の予測値Et(Nt)とBtとをt毎に乗算し、乗算した結果の和を算出する。tは1以上Tlen以下の整数である。次に浄水場電気料金計算部117は、算出した結果とBbasicとを加算することで浄水場の電気料金を算出する。浄水場電気料金計算部117は、電気料金を運転計画部118又はDR対応運転計画部119に送信する。
【0094】
運転計画部118は、所定の目的関数に基づいてDRに対応しない場合のポンプ運転計画を生成する。運転計画部118の目的関数は式(M-1)及び式(M-2)で表される。式(M-1)は、電力供給者による電力調達コストYを最小化する式である。すなわち式(M-1)は、式(O-1)に相当する。式(M-2)は、浄水場が支払う電気料金Xを最小化する式である。運転計画部118は、式(L-1)、式(K-1)、式(N-1)及び式(W-1)で表される制約条件を満たすように、送水ポンプ運転台数Nを決定する。運転計画部118は、運転計画パラメータ設定110及び契約電力情報109から各制約条件を取得する。
【0095】
【数20】
【0096】
DR対応運転計画部119は、所定の目的関数に基づいてDRに対応しない場合のポンプ運転計画を生成する。DR対応運転計画部119の目的関数は式(M-1)及び式(M-2)で表される。式(M-1)は、式(R-1)に相当する。DR対応運転計画部119は、運転計画部118が生成したポンプ運転計画に基づいてDRに対応しない場合のポンプ運転計画を生成する。
【0097】
図10は、第3の実施形態のポンプ運転台数を算出する処理の流れを示すフローチャートである。水需要予測部115は、水需要実績データ103及び気象データ104に基づいて、時刻T0からTlen+Tstockまでの単位時間毎の水需要量の予測値Dtを算出する(ステップS401)。浄水場電力需要予測部116は、気象データ104、浄水場仕様データ105、浄水場電力需要実績データ106及び浄水場ポンプ運転実績データ107に基づいて、時刻T0からTlenまでの単位時間毎の送水ポンプ分を除いた消費電力の予測値Wtを算出する(ステップS402)。スポット市場単価予測部121がスポット市場単価実績データ113に基づいて、時刻T0からTlenまでの単位時間毎のスポット市場単価の予測値Ptを算出する(ステップS403)。
【0098】
運転計画部118は、時刻T0 からTlenまでの単位時間毎のDRに対応しない場合の送水ポンプ運転台数を算出する(ステップS404)。ステップS404の具体的な処理は、図11にて説明する。DR対応運転計画部119は、時刻T0 からTlenまでの単位時間毎のDR未対応時の送水ポンプ運転台数を算出する(ステップS405)。ステップS405の具体的な処理は、図12にて説明する。
【0099】
図11は、第3の実施形態の運転計画部118がポンプ運転台数を算出する処理の流れを示すフローチャートである。運転計画部118は、時刻T0からTlenまでの単位時間毎の送水ポンプ運転台数の候補台数を決定する(ステップS501)。浄水場電気料金計算部117は、候補台数に基づいて浄水場の電気料金Xを算出する(ステップS502)。運転計画部118は、収支Yを算出する(ステップS503)。運転計画部118は、送水ポンプ運転台数Nの最適解が決定したか否か判定する(ステップS504)。具体的には、運転計画部118は、式(M-1)及び式(M-2)によって算出されたX及びYが制約条件を満たしつつ、最小化されているか否かを判定する。最適解が決定した場合(ステップS504:YES)、運転計画部118は、候補台数を送水ポンプ運転台数Nと決定する。最適解が決定していない場合(ステップS504:NO)、ステップS501に遷移する。
【0100】
図12は、第3の実施形態のDR対応運転計画部119がポンプ運転台数を算出する処理の流れを示すフローチャートである。DR対応運転計画部119は、時刻T0からTlenまでの単位時間毎の送水ポンプ運転台数の候補台数を決定する(ステップS601)。浄水場電気料金計算部117は、候補台数に基づいて浄水場の電気料金Xを算出する(ステップS602)。DR対応運転計画部119は、DR情報111を取得する(ステップS603)。DR対応運転計画部119は、収支Yを算出する(ステップS604)。DR対応運転計画部119は、送水ポンプ運転台数Nの最適解が決定したか否か判定する(ステップS605)。具体的には、DR対応運転計画部119は、式(M-1)及び式(M-2)によって算出されたX及びYが制約条件を満たしつつ、最小化されているか否かを判定する。最適解が決定した場合(ステップS605:YES)、DR対応運転計画部119は、候補台数を送水ポンプ運転台数Nと決定する。最適解が決定していない場合(ステップS605:NO)、ステップS601に遷移する。
【0101】
このように構成された第3の実施形態のポンプ運転計画装置100では、浄水場電気料金計算部117が、浄水場の電気料金を算出する。運転計画部118及びDR対応運転計画部119は、電気料金と式(M-1)と式(M-2)とに基づいて、電力供給者による電力調達コストと浄水場の電気料金とが最小化されるように、ポンプ運転計画を生成できる。したがって、運転計画部118又はDR対応運転計画部119に基づいて生成されたポンプ運転計画に従って浄水場を運転することで、電力供給者はより安価に電力を調達できる。また、浄水場はより安価な料金で電力供給を受けることができる。
【0102】
図13から図19は、第4から第10までの実施形態のポンプ運転計画装置100の機能ブロック図である。各実施形態のポンプ運転計画装置100では、互いに異なる情報に基づいて、ポンプ運転計画が生成される。
【0103】
ネガワット単価Pnegaの計算方法は、他の計算式で計算されてもよい。例えば、Pnegaの値は、単位時間ごとに設定されてもよい。このように構成されることで、DR対応運転計画部119は、Pnegaが単位時間ごとに異なる場合でも、ポンプ運転台数を算出できる。
【0104】
ポンプ運転計画の対象期間は、複数のDR対象期間を有してもよい。この場合、運転計画部118は、式(R-4)において、複数のDR対象期間の差分電力量を加算する。
【0105】
実施形態における候補台数の最適解は、総当たりで決定されてもよいし、予め定められた期間内で算出された電力調達コストの中で、最小の電力調達コストが算出された場合の候補台数としてもよいし、予め定められた回数内で算出された電力調達コストの中で、最小の電力調達コストが算出された場合の候補台数としてもよい。
【0106】
実施形態のポンプ運転計画装置100は、単位時間を異なる値に換算する機能をさらに備えてもよい。このように構成されることで、ポンプ運転計画装置100は、ポンプ運転計画及び電力料金の単位時間が異なる場合であっても、ポンプ運転計画を生成できる。
【0107】
本実施形態における送水ポンプの消費電力及びポンプ吐出量は、送水ポンプ毎に異なっていてもよい。具体的には、浄水場仕様データ105は、送水ポンプ一台毎の消費電力及びポンプ吐出量を記憶する。運転計画部118及びDR対応運転計画部119は、浄水場仕様データ105から送水ポンプの消費電力及びポンプ吐出量を取得する。運転計画部118及びDR対応運転計画部119は、取得した送水ポンプの消費電力とポンプ吐出量とに基づいて、どの送水ポンプを稼働させるかを示すポンプ運転集合を各単位時間毎に決定することで運転計画を生成する。
【0108】
ポンプ運転計画の対象期間は24時間以外の時間であってもよい。このように構成されることで、DR対応運転計画部119は、当日のDR要請に対応できる。図20は、実施形態の当日DR要請が行われた場合の一具体例を示す図である。スポット市場調達計画締切は、平時の場合、前日10時である。図20によると、ポンプ運転計画システム1は、当日14:50に電力供給者側のユーザからDR要請を受け付ける。DR対象期間は、15時から17時までである。この場合、DR対応運転計画部119は、ポンプ運転計画の対象期間を、DR開始時刻に設定することで、ポンプ運転台数を再計算する。なお、水位保証期間は、水道施設設計指針によると12時間と指定される。
【0109】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、運転計画部118及びDR対応運転計画部119を持つことにより、浄水場はより安価に電力供給を受けることができる。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0111】
1…ポンプ運転計画システム、100…ポンプ運転計画装置、101…通信部、102…データ記憶部、103…水需要実績データ、104…気象データ、105…浄水場仕様データ、106…浄水場電力需要実績データ、107…浄水場ポンプ運転実績データ、108…電気料金契約情報、109…契約電力情報、110…運転計画パラメータ設定、111…DR情報、112…オンサイト発電情報、113…スポット市場単価実績データ、114…制御部、115…水需要予測部、116…浄水場電力需要予測部、117…浄水場電気料金計算部、118…運転計画部、119…DR対応運転計画部、120…ネガワット単価計算部、121…スポット市場単価予測部、200…第1入出力装置、201…通信部、202…入力部、203…出力部、300…第2入出力装置、301…通信部、302…入力部、303…出力部、400…ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20