(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】索道設備の支索を再配置するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B61B 12/02 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
B61B12/02 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017200361
(22)【出願日】2017-10-16
【審査請求日】2020-07-31
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515238552
【氏名又は名称】ポマ
【氏名又は名称原語表記】POMA
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、スーシャル
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-250027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 12/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの駅(12、13)の間の線に沿って搬器が上を走行する、少なくとも1本の支索(11)と、
前記支索(11)を支持し、案内するために、前記駅(12、13)に設けられた支持ブロック(18)と、
前記支持ブロック(18)と直接接触する面を定期的に新しくするために前記支索(11)を再配置する手段とを備えた索道設備であって、
前記支索(11)を再配置する前記手段が、前記支持ブロック(18)のハウジング溝の特性に従って接触区域を角度変更することにより、前記
支索を、それ自体を中心として回転させるように構成されていることを特徴とする、索道設備。
【請求項2】
前記支索(11)を再配置するための回転角が、90°から180°の間であることを特徴とする、請求項1に記載の索道設備。
【請求項3】
前記支索(11)が、円形断面の閉索であり、前記ハウジング溝(21)から部分的に突出し、それぞれの支持ブロック(18)の、円の円弧の形をとる接触区域を押圧することを特徴とする、請求項1または2に記載の索道設備。
【請求項4】
前記支索(11)の再配置が、前記2つの駅(12、13)から同時に、または時間をずらして実施されることを特徴とする、請求項2に記載の索道設備。
【請求項5】
前記支索(11)の再配置が、油圧式または機械式の作動装置(22)を用いて実施され、前記作動装置(22)が、前記駅(12、13)に配置されて、前記
支索が部分的に回転するために必要なトルクを発生させることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の索道設備。
【請求項6】
前記作動装置(22)が、前記支索(11)を締め付けて固定するための掴み具システム(25)を備え、前記システムが、機構(26)によって制御されるピニオン(28)と係合する歯車(27)に取り付けられることを特徴とする、請求項5に記載の索道設備。
【請求項7】
前記支索(11)が、前記掴み具システム(25)を通過して固定具(17)に連結され、前記固定具(17)が、角度再配置動作中に、それ自体を中心として自由に回転できるように構成されていることを特徴とする、請求項6に記載の索道設備。
【請求項8】
索道設備の支持および案内ブロック(18)上の支索(11)を再配置する方法であって、前記
支索が、駅(12、13)内の固定具(16、17)によって固定された閉索である、方法において、
再配置中に、前記支索(11)を張った状態に保つステップと、
前記支索(11)のそれぞれの端部を、前記支索(11)の軸(X)を中心に、90°から180°の間の角度で回転させて、前記支持および案内ブロック(18)のハウジング溝(21)との接触区域を新しくするステップと、
それぞれの駅(12、13)内の前記
支索の角度運動を監視するステップとを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記支索(11)が、わずかに引き上げられて、前記ブロックの前記ハウジング溝(21)の底部からずらして配置されること、
回転手段(23)が、分離間隙(24)に挿入されること、
前記支索(11)を再配置するための回転が実施される前に、前記支索(11)が、前記回転手段(23)上に一時的に配置されることを特徴とする、請求項8に記載の支索(11)を再配置する方法。
【請求項10】
前記駅内の前記支索(11)の前記固定具は、再配置が実施されるときに自由に回転するように取り付けられるように構成されていることを特徴とする、請求項8に記載の支索(11)を再配置する方法。
【請求項11】
前記支索(11)に沿っ
た搬器(15)の移動が、2Sもし
くは3Sのロープウェイの場合は曳索(14)を用いた牽引によって行われ、または前記搬器に一体化した自走式システムによって自動で行われることを特徴とする、請求項8に記載の支索(11)を再配置する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索道輸送設備に関し、詳細には、一般に循環式、交走式または自動式(detachable)ロープウェイと称する複線式タイプの索道輸送設備、もしくは自走式移動索道タイプの索道輸送設備に関し、この設備は、搬器が走行する1つまたは複数の支索を有する線を備える。
【背景技術】
【0002】
このタイプの設備は、支索が中に固定される駅を含む。一般に、支索は、「ブロック」と呼ばれる支持体上にある、駅からの出口に案内される。線上では、地面およびこの設備の構成に応じて、支索は、1つまたは複数の線支柱の上部に配置されたブロックにも支持され、案内される。
【0003】
支索は動かないが、線上を搬器が通過することによって、湾曲の変化および支持体の位置での摺動の変化に伴う屈曲を引き起こす、索の運動が生じる。各ローラーに多かれ少なかれ重荷重がかかる場合、ブロック上を搬器が通過することによって、索に内部応力が生じる。したがって、これらのすべての索押圧点(線上および駅内)には、グリスが塗布される。これによって支索がブロック上で摺動しやすくなり、支索の内部構造が保護されることで、支索の耐用年数を保つ。
【0004】
ブロックの入口および出口の、この支索の押圧点区域は、疲労および損傷に影響されやすい区域である。搬器がこの区域を繰り返し通過することによって生じる支索の摩耗および損傷を抑えるために、製造業者の基準および仕様は、支索が、その支持体上で定期的に動かされることを求める。駅または線ブロック上の支索の点検の頻度は、設備のタイプに応じて、6年から12年まで変動し得る。大きな応力を受ける支索の場合は、この頻度を低減してもよい。
【0005】
支持ブロック上の支索の再配置は、索の予備部から索を引き出すことによって、索を長手方向に摺動させて実施されることが周知であり、この索の予備部は、駅のうちの1つに配置される。再配置する長さは、安全長さ分だけ延長された、支持体上の支索の接触区域の長さと、少なくとも同等でなければならない。索の予備部は、一般に、数巻きの索が巻かれた回転ドラムによって形成される。この予備アセンブリは、支索の機械的歪みに耐えなければならず、駅の地面に堅固に固定された支持構造物を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、少なくとも1つの架空支索上を走行する移動設備を提供することにあり、駅のブロックおよび線のブロック上でのこの支索の再配置は、駅内に、索のいかなる予備部も必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による設備は、
2つの駅の間の線に沿って搬器が上を走行する、少なくとも1本の支索と、
支索を支持し、案内するために、駅に設けられた支持ブロックと、
支持ブロックと直接接触する面を定期的に新しくするために支索を再配置する手段とを備え、
支索を再配置する手段が、支持ブロックのハウジング溝の特性に従って接触区域を角度変更することにより、前記索を、それ自体を中心として回転させるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
支索を再配置するための回転角は、90°から180°の間であることが好ましい。
【0009】
本発明の一特徴によれば、支索は、円形断面の閉索であり、ハウジング溝から部分的に突出し、それぞれの支持ブロックの、円の円弧の形をとる接触区域を押圧する。
【0010】
優先的な実施形態によれば、支索の再配置は、油圧式(hydraulic)、機械式、または電気機械式の作動装置(actuating device)を用いて実施され、作動装置は、駅に配置されて、索が部分的に回転するために必要なトルクを発生させる。
【0011】
この作動装置は、支索を締め付けて固定するための掴み具(jaw)のシステムまたは他の把持手段を備え、前記システムは、機構によって制御されるピニオンと係合する歯車に取り付けられる。支索は、掴み具システムを通過して固定具に連結され、固定具は、角度再配置動作中に、それ自体を中心として自由に回転できるように構成されている。
【0012】
本発明は、
再配置中に、支索を張った状態に保つこと、
前記支索のそれぞれの端部を、前記支索の軸を中心に、90°から180°の間の角度で回転させて、支持および案内ブロックのハウジング溝との接触区域を新しくすること、
それぞれの駅内の前記索の角度運動を監視することを含む、索を再配置する方法にも関する。
【0013】
本発明は、搬器の通行回数に従って、既定の期間でブロック上の支索の再配置を必要とする、任意のタイプの複線式支索および曳索ロープウェイ、たとえば、2S、3S、または自走式システムを備えた索道に対して適用される。
【0014】
他の利点および特徴は、非限定的な例を示す目的でのみ提供され、添付図面に示された、本発明の実施形態の以下の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】2つの駅の間の複線式輸送設備を示す概略図である。
【
図2】支持および案内ブロックの溝に収容された支索を示す横断面図である。
【
図3】支索の角度再配置後の、
図2と同一の図である。
【
図4】支索の、それ自体を中心とした回転を容易にするために、索が引き上げられ、回転手段が索の下に挿入された後の、
図3の変形形態を示す図である。
【
図5】支索が単純なワイヤの形で示された、回転時の支索の作動装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照すると、旅客移動、循環式、交走式、または自動式ロープウェイタイプの架空索道設備10は、2つの駅12、13の間の線に沿って延在する少なくとも1つの動かない支索11、および搬器15に連結されて輸送線に沿って搬器を動かす曳索14を備える。
【0017】
支索11は、その2つの端部を介して、駅12、13に取り付けられた固定具16、17に固定される。支索11は、搬器15の台車20のローラーが線に沿ってその上を走行するとき、張った状態のままであるように、機械的張力をかけて配置され、固定される。
【0018】
支索11の案内および支持は、駅12、13の入口または出口、および1つまたは複数の線支柱19の上部に設けられた支持ブロック18を用いて実施される。
【0019】
搬器15の曳索14は、破線で表される。曳索14は、一定のオフセットを有して支索11に沿って走り、駆動輪および返し車(return wheel)(図示せず)を有する駆動群の一部を形成する。曳索14は、たとえばカウンタ・ウエイトまたは油圧ジャッキによって、張った状態に保たれる。
【0020】
搬器を駆動するための自走式システムを使用する移動索道の変形形態の場合には、搬器は、支索上を自動で走行する方式で自走するので、曳索はなくされる。
【0021】
搬器15が繰り返し通過した後、支持ブロック18の入口および出口に、屈曲区域Fが生じる可能性がある。支索11の摩耗および損傷を抑えるため、支索11は、搬器の通過回数に従って、たとえば6年から12年ごとに定期的に動かされて、支持ブロック18と直接接触して係合する面を変更し、新しくする。
【0022】
図2は、支持ブロック18の上部に位置する、実質的に半円形のハウジング溝21内の、支索11の案内を示す。使用される支索11は閉索、すなわち、明らかな撚りがなく、平滑な外面を有する円形断面のものである。これは、ハウジング溝21から部分的に突出し、180°より小さな角度Aを形成する、円の円弧の形をとる接触区域を押圧する。
【0023】
本発明によれば、輸送設備10は、作動装置22(
図5および6)を装備して、支持ブロック18の接触区域の位置で支索11の角度再配置を実施するように、支索11を回転させる。この再配置は、回転によって、閉支索11とハウジング溝21との間のブロックの接触区域の位置を変更する。
【0024】
支索11の接触面の押圧の変更を実施するために、前記索は、そのX軸を中心に、矢印D(
図3)の方向に回転される。これによって、前記索の、ブロック18との接触区域を角度変位するのに十分な大きさの回転運動が生じる。この回転角は、ブロック18のハウジング溝21の特性に従って、90°から180°の間に定められ得る。
【0025】
支索11の、それ自体を中心としたこの部分的な回転を実施する前に、支索11はわずかに引き上げられて(矢印S)、ハウジング溝21の底部からずらして配置され得る。支索11の回転を容易にするために、回転手段23、具体的にはローラーまたはニードル・ローラーが、分離間隙24に挿入されてもよい(
図4)。閉支索11の回転による再配置は、駅12、13から同時に、または別々に実施される。
【0026】
回転を実施するための作動装置22は、駅12、13の支持ブロック18の近くに配置されて、支索11の回転および回転角の監視を容易にすることができる。動作中、支索11の運動および支持ブロック18上でのその摺動を抑えるように、支索11は、駅12、13内で、張った状態に保たれる。支持ブロックのハウジング溝21内での角度運動を監視するために、支持ブロック区域は、扱われる索11の目印で示される。
【0027】
図5および
図6では、作動装置22は、たとえば、支索11に締め付けて固定される掴み具のシステム25から構成され、必要なトルクを発生させるために、油圧式、機械式、または電気機械式の機構26によって回転駆動される。索11の、いかなる突然の激しい運動も防止するように、回転はゆっくりと行われることになる。
【0028】
掴み具システム25は、機構26のピニオン28と係合する歯車27に取り付けられる。歯車27は、支索11が通過するための中央開口29を備え、支索11は、掴み具システム25によって締め付けて固定され、固定具17に向かって延在する。
【0029】
掴み具システム25は、当然、索11の任意の他の把持手段で置き換えられてもよい。
【0030】
図5の固定具17は、索11が張った状態のままでなければならない角度再配置動作中、それ自体を中心として自由に回転できるように構成されている。
【0031】
支索11のいかなる損傷も防止するために、回転運動による再配置(the repositioning in rotation movement)は、閉索の線の撚り合わせ方向に対応する方向で実施される。
【0032】
本発明は、当然、2本の支索を備える輸送設備、たとえば3Sタイプ、すなわち、2本の支索および1本の曳索を有するタイプにも適用できる。この場合は、再配置方法は、両方の支索で実施されることになる。
【0033】
本発明は、支索11に沿った走行による移動のための自走式システムを装備した移動索道にも適用できる。この場合は、
図1の曳索14はなくされる。
【0034】
このように、支索11に沿った搬器の移動は、2Sもしくは3Sのロープウェイの場合は曳索14を用いた牽引によって行われ、または搬器に一体化した自走式システムによって自動で行われる。
【符号の説明】
【0035】
11 支索、索
12 駅
13 駅
14 曳索
15 搬器
16 固定具
17 固定具
18 支持ブロック、ブロック
19 線支柱
20 台車
21 ハウジング溝
22 作動装置
23 回転手段
24 分離間隙
25 掴み具システム、掴み具のシステム
26 機構
27 歯車
28 ピニオン
29 中央開口