(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】磁気ディスク基板用研磨剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20220307BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20220307BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
B24B37/00 H
(21)【出願番号】P 2017205055
(22)【出願日】2017-10-24
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000178310
【氏名又は名称】山口精研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】岩田 徹
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-179763(JP,A)
【文献】特開2010-188514(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146942(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/051770(WO,A1)
【文献】特開2001-064688(JP,A)
【文献】特開2009-001811(JP,A)
【文献】特表2014-532305(JP,A)
【文献】特開2015-127988(JP,A)
【文献】特開2015-231029(JP,A)
【文献】特表2017-527446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
G11B 5/84 - 5/858
H01L 21/304
B24B 3/00 - 3/60
B24B 21/00 - 39/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカと、粉砕された湿式法シリカ粒子と、水溶性高分子化合物と、水と、
酸および/またはその塩とを含有し、
前記水溶性高分子化合物が、カルボン酸基を有する単量体、アミド基を有する単量体、およびスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体であ
り、
前記アミド基を有する単量体が、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミドから選ばれる1種または2種以上の単量体であり、
pH値(25℃)が0.1~4.0の範囲にある磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項2】
前記コロイダルシリカの平均粒子径(D50)が5~200nmであり、前記湿式法シリカ粒子の平均粒子径が0.2~1.0μmである請求項1に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項3】
前記コロイダルシリカの平均粒子径に対する前記湿式法シリカ粒子の平均粒子径の比の値が2.0~30.0である請求項1または2に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項4】
前記コロイダルシリカおよび前記湿式法シリカ粒子の合計濃度が1~50質量%であり、前記コロイダルシリカおよび前記湿式法シリカ粒子の合計に占める、前記コロイダルシリカの割合が5~95質量%であり、かつ、前記湿式法シリカ粒子の割合が5~95質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項5】
前記水溶性高分子化合物が、カルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合が50~95mol%、アミド基を有する単量体に由来する構成単位の割合が1~40mol%、スルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合が0.01~20mol%の範囲にある請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項6】
前記カルボン酸基を有する単量体が、アクリル酸またはその塩、メタクリル酸またはその塩から選ばれる単量体である請求項1~5のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項7】
前記
スルホン酸基を有する単量体が、イソプレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、ビニルナフタレンスルホン酸、およびこれらの塩から選ばれる単量体である請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項8】
前記
水溶性高分子化合物の重量平均分子量が1,000~1,000,000である請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項9】
前記水溶性高分子化合物の
含有量が、0.0001~2.0質量%である請求項1~8のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項10】
前記
研磨剤組成物のpH値(25℃)が0.5~3.0の範囲である請求項1~9のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項11】
前記研磨剤組成物が酸
化剤をさらに含有している請求項1~10のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項12】
無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板の研磨に用いられる請求項1~11のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、ハードディスクといった磁気記録媒体などの電子部品の研磨に使用される研磨剤組成物に関する。特に、ガラス磁気ディスク基板やアルミニウム磁気ディスク基板などの磁気記録媒体用基板の表面研磨に使用される研磨剤組成物に関する。さらには、アルミニウム合金製の基板表面に無電解ニッケル-リンめっき皮膜を形成した磁気記録媒体用アルミニウム磁気ディスク基板の表面研磨に使用される研磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム磁気ディスク基板の無電解ニッケル-リンめっき皮膜表面を研磨するための研磨剤組成物として、生産性の観点から、高い研磨速度を実現し得る比較的粒子径の大きなアルミナ粒子を水に分散させた研磨剤組成物が使用されてきた。しかし、アルミナ粒子を使用した場合、アルミナ粒子はアルミニウム磁気ディスク基板の無電解ニッケル-リンめっき皮膜に対してかなり硬度が高いため、アルミナ粒子が基板に突き刺さり、この突き刺さった粒子が後段の研磨工程に悪影響を与えることが問題となっていた。
【0003】
このような問題の解決策として、アルミナ粒子とシリカ粒子とを組み合わせた研磨剤組成物が提案されている(特許文献1~4等)。また、アルミナ粒子を使用せず、シリカ粒子のみで研磨する方法が提案されている(特許文献5~9)。さらにシリカ粒子のみで研磨した場合の基板の端面だれ(ロールオフ)を低減させるための添加剤が検討されている(特許文献10~14)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-260005号公報
【文献】特開2009-176397号公報
【文献】特開2011-204327号公報
【文献】特開2012-43493号公報
【文献】特開2010-167553号公報
【文献】特表2011-527643号公報
【文献】特開2014-29754号公報
【文献】特開2014-29755号公報
【文献】特開2012-155785号公報
【文献】特開2002-167575号公報
【文献】特開2003-160781号公報
【文献】特表2003-510446号公報
【文献】特開2007-63372号公報
【文献】特開2007-130728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~4のように、アルミナ粒子とシリカ粒子とを組み合わせることにより、基板に突き刺さったアルミナ粒子をある程度除去することは可能となる。しかしながら、このアルミナ粒子を含む研磨剤組成物を使用する限り、研磨剤組成物中に含まれるアルミナ粒子が基板に突き刺さる可能性は、依然として残っている。また、このような研磨剤組成物は、アルミナ粒子とシリカ粒子の両方を含むため、それぞれの粒子が有する特性を相互に打ち消し合い、研磨速度および表面平滑性が悪化するという問題が生じる。
【0006】
そこで、アルミナ粒子を使用せずに、シリカ粒子のみで研磨する方法が提案されている。特許文献5および6では、コロイダルシリカと研磨促進剤との組み合わせが提案されている。特許文献7および8では、コロイダルシリカや、フュームドシリカ、表面修飾されたシリカ、水ガラス法で製造されたシリカなどによる研磨、特殊な形状のコロイダルシリカを使用する方法などが提案されている。しかしながら、これらの方法では、研磨速度が不十分であり、改良が求められている。また、特許文献9では、破砕シリカ粒子を使用することにより、アルミナ粒子に近い研磨速度を出す方法が提案されている。しかしながら、この方法では、表面平滑性が悪化するという問題があり、改良が求められている。
【0007】
これらのシリカ粒子のみで研磨する方法では、アルミナ粒子を使用した場合に比べロールオフが悪いという問題点もある。ロールオフの低減のために種々の添加剤も検討されている。例えば、ノニオン系界面活性剤の添加(特許文献10、11)、セルロース誘導体の添加(特許文献12)、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤やポリオキシエチレン硫酸エステル系界面活性剤の添加(特許文献13、14)などの提案がなされている。しかしながら、これらの添加剤によりロールオフの低減は見られるものの、シリカ粒子との相性によってはその効果は不十分であり、また、研磨速度が著しく低下するという欠点もある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、アルミナ粒子を使用することなく、高い研磨速度を実現すると同時に、良好な表面平滑性とロールオフを実現することを可能にする研磨剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、コロイダルシリカと、粉砕工程を経て形成される湿式法シリカ粒子を組み合わせるとともに、特定の水溶性高分子化合物を添加することにより、予想以上に高い研磨速度と、良好な表面平滑性を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示す磁気ディスク基板用研磨剤組成物が提供される。
【0010】
[1] コロイダルシリカと、粉砕された湿式法シリカ粒子と、水溶性高分子化合物と、水と、酸および/またはその塩とを含有し、前記水溶性高分子化合物が、カルボン酸基を有する単量体、アミド基を有する単量体、およびスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体であり、前記アミド基を有する単量体が、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミドから選ばれる1種または2種以上の単量体であり、pH値(25℃)が0.1~4.0の範囲にある磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0011】
[2] 前記コロイダルシリカの平均粒子径(D50)が5~200nmであり、前記湿式法シリカ粒子の平均粒子径が0.2~1.0μmである前記[1]に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0012】
[3] 前記コロイダルシリカの平均粒子径に対する前記湿式法シリカ粒子の平均粒子径の比の値が2.0~30.0である前記[1]または[2]に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0013】
[4] 前記コロイダルシリカおよび前記湿式法シリカ粒子の合計濃度が1~50質量%であり、前記コロイダルシリカおよび前記湿式法シリカ粒子の合計に占める、前記コロイダルシリカの割合が5~95質量%であり、かつ、前記湿式法シリカ粒子の割合が5~95質量%である前記[1]~[3]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0014】
[5] 前記水溶性高分子化合物が、カルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合が50~95mol%、アミド基を有する単量体に由来する構成単位の割合が1~40mol%、スルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合が0.01~20mol%の範囲にある前記[1]~[4]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0015】
[6] 前記カルボン酸基を有する単量体が、アクリル酸またはその塩、メタクリル酸またはその塩から選ばれる単量体である前記[1]~[5]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0017】
[7] 前記スルホン酸基を有する単量体が、イソプレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、ビニルナフタレンスルホン酸、およびこれらの塩から選ばれる単量体である前記[1]~[6]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0018】
[8] 前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量が1,000~1,000,000である前記[1]~[7]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0019】
[9] 前記水溶性高分子化合物の含有量が、0.0001~2.0質量%である前記[1]~[8]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0020】
[10] 前記研磨剤組成物のpH値(25℃)が0.5~3.0の範囲にある前記[1]~[9]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0021】
[11] 前記研磨剤組成物が酸化剤をさらに含有している前記[1]~[10]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0022】
[12] 無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板の研磨に用いられる前記[1]~[11]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【発明の効果】
【0023】
本発明の磁気ディスク基板用研磨剤組成物は、アルミニウム合金製の基板表面に無電解ニッケル-リンめっき皮膜を形成した磁気記録媒体用アルミニウム磁気ディスク基板の表面を研磨する際に、2種類のシリカ粒子を組み合わせて使用し、さらに特定の水溶性高分子化合物を添加することにより、高い研磨速度と良好な表面平滑性を達成することを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】基板の表面を研磨した場合のロールオフの測定について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0026】
1.研磨剤組成物
本発明の磁気ディスク基板用研磨剤組成物は、コロイダルシリカと、湿式法シリカ粒子と、水溶性高分子化合物とを少なくとも含有する水系組成物である。水溶性高分子化合物は、カルボン酸基を有する単量体、アミド基を有する単量体、およびスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体である。コロイダルシリカの平均粒子径(D50)は5~200nmであることが好ましく、湿式法シリカ粒子の平均粒子径は0.2~1.0μmであることが好ましい。コロイダルシリカの平均粒子径(A)に対する湿式法シリカ粒子の平均粒子径(B)の比の値(B/A)は2.0~30.0であることが好ましい。ここで、湿式法シリカ粒子は、その製造工程において、粉砕により解砕されたものである。即ち、湿式法シリカ粒子の製造工程は、粉砕工程を含むものである。
【0027】
(1)コロイダルシリカ
本発明の磁気ディスク基板用研磨剤組成物に含有されるコロイダルシリカは、平均粒子径(D50)が5~200nmであることが好ましい。平均粒子径(D50)が5nm以上であることにより、研磨速度の低下を抑制することができる。平均粒子径(D50)が200nm以下であることにより、表面平滑性の悪化を抑制することができる。コロイダルシリカの平均粒子径(D50)は、より好ましくは10~150nmであり、さらに好ましくは20~120nmである。
【0028】
コロイダルシリカは、球状、鎖状、金平糖型(表面に凸部を有する粒子状)、異形型などの形状が知られており、水中に一次粒子が単分散してコロイド状をなしている。本発明で使用されるコロイダルシリカとしては、球状、または球状に近いコロイダルシリカが特に好ましい。球状、または球状に近いコロイダルシリカを用いることで、表面平滑性をより向上させることができる。コロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムを原料とし、当該原料を水溶液中で縮合反応させて粒子を成長させる水ガラス法、テトラエトキシシラン等のアルコキシシランを酸またはアルカリでの加水分解による縮合反応によって粒子を成長させるアルコキシシラン法などによって得られる。
【0029】
(2)湿式法シリカ粒子
本発明で使用される湿式法シリカ粒子は、ケイ酸アルカリ水溶液と無機酸または無機酸水溶液とを反応容器に添加することにより、沈殿ケイ酸として得られる湿式法シリカから調製される粒子のことを指しており、湿式法シリカ粒子には上述のコロイダルシリカは含まれない。
【0030】
湿式法シリカの原料であるケイ酸アルカリ水溶液としては、ケイ酸ナトリウム水溶液、ケイ酸カリウム水溶液、ケイ酸リチウム水溶液などが挙げられるが、一般的にはケイ酸ナトリウム水溶液が好ましく使用される。無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等を挙げることができるが、一般的には硫酸が好ましく使用される。反応終了後、反応液を濾過、水洗し、その後乾燥機で水分が6%以下になるように乾燥を行う。乾燥機は静置乾燥機、噴霧乾燥機、流動乾燥機のいずれでも良い。その後ジェットミル等の粉砕機で粉砕し、さらに分級を行い、湿式法シリカ粒子を得る。
【0031】
このように粉砕により解砕された湿式法シリカ粒子の粒子形状は、角部を有しており、球状に近い粒子よりも研磨能力が高い。
【0032】
湿式法シリカ粒子の平均粒子径は、0.2~1.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.2~0.8μmであり、さらに好ましくは0.2~0.6μmである。平均粒子径が0.2μm以上であることにより、研磨速度の低下を抑制することができる。平均粒子径が1.0μm以下であることにより、表面平滑性の悪化を抑制することができる。
【0033】
湿式法シリカ粒子の平均粒子径(B)とコロイダルシリカの平均粒子径(A)の比の値(B/A)は2.0~30.0であることが好ましく、より好ましくは2.0~16.0であり、さらに好ましくは2.5~16.0であり、特に好ましくは3.0~10.0である。
【0034】
平均粒子径の比の値が2.0以上であることにより、研磨速度を向上させることができる。平均粒子径の比の値が30.0以下であることにより、表面平滑性の悪化を抑制することができる。
【0035】
コロイダルシリカと湿式法シリカ粒子の合計濃度は、研磨剤組成物全体の1~50質量%であることが好ましく、より好ましくは2~40質量%である。シリカ粒子の合計濃度が1質量%以上であることにより、研磨速度の低下を抑制することができる。シリカ粒子の合計濃度が50質量%以下であることにより、必要以上のシリカ粒子を使用することなく十分な研磨速度を維持することができる。
【0036】
シリカ粒子全体に占めるコロイダルシリカの割合は、5~95質量%であることが好ましく、より好ましくは20~80質量%である。コロイダルシリカの割合が5質量%以上であることにより、表面平滑性の悪化を抑制することができる。コロイダルシリカの割合が95質量%以下であることにより、研磨速度の低下を抑制することができる。
シリカ粒子全体に占める湿式法シリカ粒子の割合は、5~95質量%であることが好ましく、より好ましくは20~80質量%である。湿式法シリカ粒子の割合が95質量%以下であることにより、表面平滑性の悪化を抑制することができる。湿式法シリカ粒子の割合が5質量%以上であることにより、研磨速度の低下を抑制することができる。
【0037】
(3)水溶性高分子化合物
本発明で使用される水溶性高分子化合物は、カルボン酸基を有する単量体、アミド基を有する単量体、およびスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体である。
【0038】
(3-1)カルボン酸基を有する単量体
カルボン酸基を有する単量体としては、不飽和脂肪族カルボン酸およびその塩が好ましく用いられる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0039】
(3-2)アミド基を有する単量体
アミド基を有する単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミドなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上を選択して、単量体として使用できる。例えば、アクリルアミドとN-アルキルアクリルアミドを選択し、併用しても良い。メタクリルアミドとN-アルキルメタクリルアミドを選択し、併用しても良い。
【0040】
N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミドの具体例としては、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-iso-プロピルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-iso-ブチルアクリルアミド、N-sec-ブチルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-iso-プロピルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-iso-ブチルメタクリルアミド、N-sec-ブチルメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミドなどが挙げられる。なかでもN-n-ブチルアクリルアミド、N-iso-ブチルアクリルアミド、N-sec-ブチルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-iso-ブチルメタクリルアミド、N-sec-ブチルメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミドなどが好ましい。
【0041】
(3-3)スルホン酸基を有する単量体
スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、イソプレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、ビニルナフタレンスルホン酸、およびこれらの塩などが挙げられる。好ましくは、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩などが挙げられる。
【0042】
(3-4)共重合体
本発明で使用される水溶性高分子化合物は、これらの単量体成分を組み合わせて重合することにより、共重合体とすることが好ましい。共重合体の組み合わせとしては、アクリル酸および/またはその塩とN-アルキルアクリルアミドとスルホン酸基を有する単量体の組み合わせ、アクリル酸および/またはその塩とN-アルキルメタクリルアミドとスルホン酸基を有する単量体の組み合わせ、メタクリル酸および/またはその塩とN-アルキルアクリルアミドとスルホン酸基を有する単量体の組み合わせ、メタクリル酸および/またはその塩とN-アルキルメタクリルアミドとスルホン酸基を有する単量体の組み合わせ、アクリル酸および/またはその塩とアクリルアミドとN-アルキルアクリルアミドとスルホン酸基を有する単量体の組み合わせ、アクリル酸および/またはその塩とメタクリルアミドとN-アルキルメタクリルアミドとスルホン酸基を有する単量体の組み合わせ、メタクリル酸および/またはその塩とアクリルアミドとN-アルキルアクリルアミドとスルホン酸基を有する単量体の組み合わせ、メタクリル酸および/またはその塩とメタクリルアミドとN-アルキルメタクリルアミドとスルホン酸基を有する単量体の組み合わせなどが好ましく用いられる。
【0043】
水溶性高分子化合物中の、カルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合は、50~95mol%が好ましく、60~93mol%がより好ましく、70~90mol%がさらに好ましい。アミド基を有する単量体に由来する構成単位の割合は、1~40mol%が好ましく、3~30mol%がより好ましく、5~20mol%がさらに好ましい。スルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合は、0.01~20mol%が好ましく、0.1~10mol%がより好ましく、0.2~5mol%がさらに好ましい。
【0044】
(3-5)水溶性高分子化合物の製造方法
水溶性高分子化合物の製造方法は特に制限されないが、水溶液重合法が好ましい。水溶液重合法によれば、均一な溶液として水溶性高分子化合物を得ることができる。
【0045】
上記水溶液重合の重合溶媒としては、水性の溶媒であることが好ましく、特に好ましくは水である。また、上記単量体成分の溶媒への溶解性を向上させるために、各単量体の重合に悪影響を及ぼさない範囲で有機溶媒を適宜加えてもよい。上記有機溶媒としては、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
以下に、上記水性溶媒を用いた水溶性高分子化合物の製造方法を説明する。重合反応では、公知の重合開始剤を使用できるが、特にラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
【0047】
ラジカル重合開始剤として、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、過酸化水素等の水溶性過酸化物、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類等の油溶性過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等のアゾ化合物が挙げられる。これらの過酸化物系のラジカル重合開始剤は、1種類のみ使用しても、または2種類以上併用してもよい。
【0048】
上述した過酸化物系のラジカル重合開始剤の中でも、生成する水溶性高分子化合物の分子量の制御が容易に行えることから、過硫酸塩やアゾ化合物が好ましく、アゾビスイソブチロニトリルが特に好ましい。
【0049】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、水溶性高分子化合物の全単量体合計質量に基づいて、0.1~15質量%、特に0.5~10質量%の割合で使用することが好ましい。この割合を0.1質量%以上にすることにより、共重合率を向上させることができ、15質量%以下とすることにより、水溶性高分子化合物の安定性を向上させることができる。
【0050】
また、場合によっては、水溶性高分子化合物は、水溶性レドックス系重合開始剤を使用してもよい。レドックス系重合開始剤としては、酸化剤(例えば上記の過酸化物)と、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、ハイドロサルファイトナトリウム等の還元剤や、鉄明礬、カリ明礬等の組み合わせを挙げることができる。
【0051】
水溶性高分子化合物の製造において、分子量を調整するために、連鎖移動剤を重合系に適宜添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、2-プロパンチオール、2-メルカプトエタノールおよびチオフェノール等が挙げられる。
【0052】
水溶性高分子化合物を製造する際の重合温度は、特に制限されないが、重合温度は60~100℃で行うのが好ましい。重合温度を60℃以上にすることで、重合反応が円滑に進行し、かつ生産性に優れるものとなり、100℃以下とすることで、着色を抑制することができる。
【0053】
また、重合反応は、加圧または減圧下で行うことも可能であるが、加圧あるいは減圧反応用の設備にするためのコストが必要になるので、常圧で行うことが好ましい。重合時間は2~20時間、特に3~10時間程度で行うことが好ましい。
【0054】
重合反応後、必要に応じて塩基性化合物で中和を行う。中和に使用する塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類等が挙げられる。
【0055】
中和後、もしくは中和を行わなかった場合の水溶性高分子化合物のpH値(25℃)は、水溶性高分子化合物濃度が10質量%の水溶液の場合、1~13が好ましく、2~9がさらに好ましく、より好ましくは3~8である。
【0056】
(3-6)重量平均分子量
水溶性高分子化合物の重量平均分子量は、1,000~1,000,000が好ましく、より好ましくは2,000~800,000であり、さらに好ましくは3,000~600,000である。なお、水溶性高分子化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリアクリル酸換算で測定したものである。水溶性高分子化合物の重量平均分子量が、1,000未満の場合は、うねりが悪化する。また1,000,000を超える場合には、水溶液の粘度が高くなり取扱いが困難になる。
【0057】
(3-7)含有量
水溶性高分子化合物の研磨剤組成物中の含有量は、固形分換算で0.0001~2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.001~1.0質量%であり、さらに好ましくは0.005~0.5質量%である。水溶性高分子化合物の含有量が0.0001質量%より少ない場合には、水溶性高分子化合物の添加効果が十分に得られず、2.0質量%より多い場合には、水溶性高分子化合物の添加効果は頭打ちとなり、必要以上の水溶性高分子化合物を添加することになるので経済的でない。
【0058】
(4)酸および/またはその塩
本発明では、pH調整のために、または任意成分として酸および/またはその塩を使用することができる。使用される酸および/またはその塩としては、無機酸および/またはその塩と有機酸および/またはその塩が挙げられる。
【0059】
無機酸および/またはその塩としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸等の無機酸および/またはこれらの塩が挙げられる。
【0060】
有機酸および/またはその塩としては、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノカルボン酸および/またはこれらの塩、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、ニトロ酢酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸等のカルボン酸および/またはこれらの塩、有機ホスホン酸および/またはその塩などが挙げられる。これらの酸および/またはその塩は、1種あるいは2種以上を用いることができる。
【0061】
有機ホスホン酸および/またはその塩としては、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、およびこれらの塩から選ばれる少なくとも1種以上の化合物が挙げられる。
【0062】
上記の化合物は、2種以上を組み合わせて使用することも好ましい実施態様であり、具体的には、リン酸と有機ホスホン酸の組み合わせ、リン酸と有機ホスホン酸塩との組み合わせなどが挙げられる。
【0063】
(5)酸化剤
本発明では、研磨促進剤として酸化剤を使用することができる。使用される酸化剤としては、過酸化物、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、ハロゲンオキソ酸またはその塩、酸素酸またはその塩、これらの酸化剤を2種以上混合したもの、等を用いることができる。
【0064】
具体的には、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、過酸化カリウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸の金属塩、ジクロム酸の金属塩、過硫酸、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ペルオキソリン酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、等が挙げられる。中でも過酸化水素、過硫酸およびその塩、次亜塩素酸およびその塩などが好ましく、さらに好ましくは過酸化水素である。
【0065】
研磨剤組成物中の酸化剤含有量は、0.01~10.0質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1~5.0質量%である。
【0066】
2.研磨剤組成物の物性(pH)
本発明の研磨剤組成物のpH値(25℃)の範囲は、好ましくは0.1~4.0である。より好ましくは0.5~3.0である。研磨剤組成物のpH値(25℃)が0.1以上であることにより、表面荒れを抑制することができる。研磨剤組成物のpH値(25℃)が4.0以下であることにより、研磨速度の低下を抑制することができる。
【0067】
本発明の研磨剤組成物は、ハードディスクといった磁気記録媒体などの種々の電子部品の研磨に使用することができる。特に、アルミニウム磁気ディスク基板の研磨に好適に用いられる。さらに好適には、無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板の研磨に用いることができる。無電解ニッケル-リンめっきは、通常、pH値(25℃)が4~6の条件下でめっきされる。pH値(25℃)が4未満の条件下で、ニッケルが溶解傾向に向かうため、めっきしにくくなる。一方、研磨においては、例えば、pH値(25℃)が4.0未満の条件下でニッケルが溶解傾向となるため、本発明の研磨剤組成物を用いることにより、研磨速度を高めることができる。
【0068】
3.磁気ディスク基板の研磨方法
本発明の研磨剤組成物は、アルミニウム磁気ディスク基板やガラス磁気ディスク基板等の磁気ディスク基板の研磨での使用に適している。特に、無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板(以下、アルミディスク)の研磨での使用に適している。
【0069】
本発明の研磨剤組成物を適用することが可能な研磨方法としては、例えば、研磨機の定盤に研磨パッドを貼り付け、研磨対象物(例えばアルミディスク)の研磨する表面または研磨パッドに研磨剤組成物を供給し、研磨する表面を研磨パッドで擦り付ける方法(ポリッシングと呼ばれている)がある。例えば、アルミディスクのおもて面と裏面を同時に研磨する場合には、上定盤および下定盤それぞれに研磨パッドを貼り付けた両面研磨機を用いる方法がある。この方法では、上定盤および下定盤に貼り付けた研磨パッドでアルミディスクを挟み込み、研磨面と研磨パッドの間に研磨剤組成物を供給し、2つの研磨パッドを同時に回転させることによって、アルミディスクのおもて面と裏面を研磨する。
【0070】
研磨パッドは、ウレタンタイプ、スウェードタイプ、不織布タイプ、その他いずれのタイプも使用することができる。
【0071】
研磨では、通常、平均粒子径の大きい研磨材を含有する研磨剤組成物を用いて対象物の表面を深めに粗く削っていく粗研磨といわれる工程を行い、続いて、粗研磨が施された表面を対象として、平均粒子径の小さい研磨材を含有する研磨剤組成物を用いて少しずつ削っていく仕上げ研磨といわれる工程を行う。また、粗研磨の工程が複数の研磨工程で行われる場合がある。本発明の研磨剤組成物は、粗研磨の工程に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでなく、本発明の技術範囲に属する限り、種々の態様で実施できることはいうまでもない。
【0073】
[研磨剤組成物の調製方法]
実施例1~16、比較例1~9で使用した研磨剤組成物は、表1に記載の材料を、表1に記載の含有量または添加量で含んだ研磨剤組成物である。尚、表1でアクリル酸の略号をAA、アクリルアミドの略号をAM、N-tert-ブチルアクリルアミドの略号をTBAA、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の略号をATBSとした。また、各実施例と各比較例の研磨試験の結果を表2および表3に示した。表2は、研磨剤組成物中の水溶性高分子化合物の重量平均分子量が1万の場合、表3は、研磨剤組成物中の水溶性高分子化合物の重量平均分子量が10万の場合である。
【0074】
【0075】
[コロイダルシリカの粒子径]
コロイダルシリカの粒子径(Heywood径)は、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子(株)製、透過型電子顕微鏡 JEM2000FX(200kV))を用いて倍率10万倍の視野の写真を撮影し、この写真を解析ソフト(マウンテック(株)製、Mac-View Ver 4.0)を用いて解析することによりHeywood径(投射面積円相当径)として測定した。コロイダルシリカの平均粒子径は、前述の方法で2000個程度のコロイダルシリカの粒子径を解析し、小粒径側からの積算粒径分布(累積体積基準)が50%となる粒子径を上記解析ソフト(マウンテック(株)製、Mac-View Ver 4.0)を用いて算出した平均粒子径(D50)である。
【0076】
[湿式法シリカの粒子径]
湿式法シリカ粒子の平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラックUPA)を用いて測定した。湿式法シリカ粒子の平均粒子径は、体積を基準とした小粒径側からの積算粒径分布が50%となる平均粒子径(D50)である。
【0077】
[水溶性高分子化合物の重量平均分子量]
水溶性高分子化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリアクリル酸換算で測定したものであり、以下にGPC測定条件を示す。
【0078】
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL(東ソー(株)製)+G2500PWXL(東ソー(株)製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/アセトニトリル=9/1(容量比)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
検出:210nm(UV)
サンプル:濃度5mg/ml(注入量100μl)
検量線用ポリマー:ポリアクリル酸 分子量(ピークトップ分子量:Mp)11.5万、
2.8万、4100、1250(創和科学(株)、American Polymer Standards Corp.)
【0079】
[研磨条件]
無電解ニッケル-リンめっきした外径95mmのアルミディスクを研磨対象として、下記研磨条件で研磨を行った。
研磨機:システム精工(株)製、9B両面研磨機
研磨パッド:(株)FILWEL社製、P1パッド
定盤回転数:上定盤 -16.0min-1
下定盤 20.0min-1
研磨剤組成物供給量: 90ml/min
研磨時間:研磨量が1.2~1.5μm/片面となる時間まで研磨する。
(240~720秒)
加工圧力:120kPa
【0080】
[研磨速度比]
研磨速度は、研磨後に減少したアルミディスクの質量を測定し、下記式に基づいて算出した。
研磨速度(μm/min)=アルミディスクの質量減少量(g)/研磨時間(min)/アルミディスク片面の面積(cm2)/無電解ニッケル-リンめっき皮膜の密度(g/cm3)/2×104
(ただし、上記式中、アルミディスク片面の面積は65.9cm2、無電解ニッケル-リンめっき皮膜の密度は、8.0g/cm3)
【0081】
研磨速度比は、表2では、上記式を用いて求めた比較例1の研磨速度を1(基準)とした場合の相対値である。表3では、比較例6の研磨速度を1(基準)とした場合の相対値である。
【0082】
[ピット]
ピットは、アメテック株式会社製の走査型白色干渉法を利用した三次元表面構造解析顕微鏡を用いて測定した。アメテック株式会社製の測定装置(New View 8300(レンズ:1.4倍、ズーム:1.0倍))とアメテック株式会社製の解析ソフト(Mx)を用いて測定した。得られた形状プロファイルにおいて、ピットがほとんど認められない場合に「○(良)」と評価した。ピットが若干認められた場合に「△(可)」と評価した。
【0083】
[うねり]
アルミディスクのうねりは、アメテック株式会社製の走査型白色干渉法を利用した三次元表面構造解析顕微鏡を用いて測定した。測定条件は、アメテック株式会社製の測定装置(New View 8300(レンズ:1.4倍、ズーム:1.0倍))、波長100~500μmとし、測定エリアは6mm×6mmとし、アメテック株式会社製の解析ソフト(Mx)を用いて解析を行った。
【0084】
[ロールオフ比]
端面形状の評価として、端面だれの度合いを数値化したロールオフを測定した。ロールオフはアメテック株式会社製の測定装置(New View 8300(レンズ:1.4倍、ズーム:1.0倍)とアメテック株式会社製の解析ソフト(Mx))を用いて測定した。
【0085】
ロールオフの測定方法について、
図1を用いて説明する。
図1は、研磨の対象物である無電解ニッケル-リンめっきをした外径95mmのアルミディスクの、ディスクの中心を通過し研磨した表面に対して垂直な断面図を表す。ロールオフの測定にあたり、まずディスクの外周端に沿って垂線hを設け、垂線hから研磨した表面上のディスクの中心に向かって垂線hに対して平行で垂線hからの距離が3.92mmである線jを設け、ディスクの断面の線が線jと交わる位置を点Aとした。また、垂線hに対して平行で垂線hからの距離が0.32mmである線kを設け、ディスクの断面の線が線kと交わる位置を点Bとした。点Aと点Bを結んだ線mを設け、さらに線mに垂直な線tを設け、ディスクの断面の線が線tと交わる位置を点C、線mが線tと交わる位置を点Dとした。そして、点C-D間の距離が最大となるところでの距離をロールオフとして測定した。
【0086】
ロールオフ比は、表2では、上記方法を用いて測定した比較例1のロールオフを1(基準)とした場合の相対値である。表3では、比較例6のロールオフを1(基準)とした場合の相対値である。
【0087】
【0088】
【0089】
[考察]
表2は、研磨剤組成物中の水溶性高分子化合物の重量平均分子量が1万の場合の結果であるが、カルボン酸基を有する単量体、アミド基を有する単量体、およびスルホン酸基を有する単量体からなる共重合体を使用した実施例1~9は、カルボン酸基を有する単量体からなる単独重合体(比較例1、5)、スルホン酸基を有する単量体を含有しない共重合体(比較例2~4)を使用した各比較例よりも研磨速度、ピット、うねり、ロールオフのバランスが優れている。
【0090】
また、表3は、研磨剤組成物中の水溶性高分子化合物の重量平均分子量が10万の場合の結果であるが、カルボン酸基を有する単量体、アミド基を有する単量体、およびスルホン酸基を有する単量体からなる共重合体を使用した実施例10~16は、カルボン酸基を有する単量体からなる単独重合体(比較例6、9)、スルホン酸基を有する単量体を含有しない共重合体(比較例7、8)を使用した各比較例よりも研磨速度、ピット、うねり、ロールオフのバランスが優れている。
【0091】
以上のことから明らかなように、研磨剤組成物中の水溶性高分子化合物として、カルボン酸基を有する単量体、アミド基を有する単量体、およびスルホン酸基を有する単量体を含有する共重合体を使用することにより、研磨速度、ピット、うねり、ロールオフのバランスを良好なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の研磨剤組成物は、半導体、ハードディスクといった磁気記録媒体などの電子部品の研磨に使用することができる。特にガラス磁気ディスク基板やアルミニウム磁気ディスク基板などの磁気記録媒体用基板の表面研磨に使用することができる。さらには、アルミニウム合金製の基板表面に無電解ニッケル-リンめっき皮膜を形成した磁気記録媒体用アルミニウム磁気ディスク基板の表面研磨に使用することができる。