(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】多足類害虫駆除用容器
(51)【国際特許分類】
A01M 1/20 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
A01M1/20 B
(21)【出願番号】P 2017215132
(22)【出願日】2017-11-07
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】向永 真也
(72)【発明者】
【氏名】菊田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】引土 知幸
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】実公昭49-2073(JP,Y1)
【文献】特開2015-112020(JP,A)
【文献】特開2014-113134(JP,A)
【文献】特開2009-148177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵入口から多足類害虫を侵入させて毒餌剤を摂食させる多足類害虫駆除用容器であって、
前記毒餌剤を収容する収容部を有する本体と、
遮光性材料からなり、前記本体に取り付けられることで、前記本体との間に前記侵入口を形成する屋根部材と、
を備え、
前記本体は、前記侵入口から前記収容部まで連続する床部と、前記収容部及び前記床部に沿って連続し、上端が前記屋根部材と隙間なく接合する側壁部とを有し、
前記屋根部材は、前記侵入口の上側から延出し、下方へ傾斜する庇部を有し、
前記床部は、前記侵入口側から前記収容部へ向かって上方へ傾斜する傾斜部を有し、
前記侵入口は、開口面積の50~100%において、前記庇部及び前記傾斜部によって視野が遮蔽されるように構成されている多足類害虫駆除用容器。
【請求項2】
前記侵入口は、異なる方向から前記収容部へ向かう2ヶ所に形成される請求項1に記載の多足類害虫駆除用容器。
【請求項3】
前記2ヶ所の侵入口は、前記収容部を挟んで直線状に配列し、前記本体の両端部に開口する請求項2に記載の多足類害虫駆除用容器。
【請求項4】
前記本体及び前記屋根部材は、前記2ヶ所の侵入口の配列方向を長手方向とした長尺形状に構成されている請求項3に記載の多足類害虫駆除用容器。
【請求項5】
前記本体及び前記屋根部材は、前記2ヶ所の侵入口の間に形成される内部空間の長手方向の長さが、前記多足類害虫の体長の6割以上となるように構成されている請求項4に記載の多足類害虫駆除用容器。
【請求項6】
建物の壁面に沿うように設置して使用される請求項1~5の何れか一項に記載の多足類害虫駆除用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵入口から多足類害虫を侵入させて毒餌剤を摂食させる多足類害虫駆除用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
トビズムカデ、アオズムカデ、アカズムカデ等のムカデは、野外環境に生息し、毒腺のある顎肢を用いて小型の虫等を捕食する。しかし、ムカデは温暖な環境を好む習性を有するため家屋等に侵入することが多く、家屋等での人との接触により刺咬被害を引き起こすことがある。そこで、ムカデ等の多足類害虫を防除する製品が開発されている。
【0003】
例えば、ムカデ用の毒餌剤を収容したムカデ用毒餌剤入り容器が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。このムカデ用毒餌剤入り容器は、毒餌剤の収容部の全周囲を傾斜面で取り囲み、毒餌剤に接近したムカデの触角を毒餌剤に触れさせずに口に触れさせるように構成している。これにより、触角が毒餌剤に触れることにより毒餌剤が障害物と認識されて回避されることを防ぎ、毒餌剤の摂食性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のムカデ用毒餌剤入り容器は、毒餌剤に触れたムカデに毒餌剤が障害物と認識されて回避されることは考慮しているが、毒餌剤に触れる前の状態で回避されること、例えば、毒餌剤の収容部を取り囲む傾斜面等が触角に触れることで、容器自体が障害物と認識されて回避される可能性については、何ら考慮されていない。そのため、例えば、傾斜面にまでムカデが接近したとしても、ムカデは傾斜面を登ることなく、傾斜面の立ち上がり部分に沿って進むことで、毒餌剤まで接近しない可能性がある。このように、特許文献1のムカデ用毒餌剤入り容器は、ムカデを毒餌剤まで効果的に誘導することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ムカデ等の多足類害虫を容器内に侵入させ、当該容器内に収容する毒餌剤まで誘導することができる多足類害虫駆除用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係る多足類害虫駆除用容器の特徴構成は、
侵入口から多足類害虫を侵入させて毒餌剤を摂食させる多足類害虫駆除用容器であって、
前記毒餌剤を収容する収容部を有する本体と、
遮光性材料からなり、前記本体に取り付けられることで、前記本体との間に前記侵入口を形成する屋根部材と、
を備え、
前記本体は、前記侵入口から前記収容部まで連続する床部と、前記収容部及び前記床部に沿って連続し、上端が前記屋根部材と隙間なく接合する側壁部とを有することにある。
【0008】
多足類害虫、特にムカデは、暗がりを好み壁沿いに移動する習性を有する。本構成の多足類害虫駆除用容器によれば、遮光性材料からなる屋根部材と本体の側壁部とが隙間なく接合し容器内が暗い空間となるため、近傍まで接近した多足類害虫が侵入口から侵入し易い。さらに、侵入口から侵入した多足類害虫は、側壁部に沿って収容部まで移動し易いため、多足類害虫を毒餌剤まで高い確率で誘導することができる。
【0009】
本発明に係る多足類害虫駆除用容器において、
前記侵入口は、異なる方向から前記収容部へ向かう2ヶ所に形成されることが好ましい。
【0010】
本構成の多足類害虫駆除用容器によれば、異なる方向から収容部へ向かう2ヶ所に侵入口が形成されるため、2つの方向から接近する多足類害虫を毒餌剤へ誘導することができる。
【0011】
本発明に係る多足類害虫駆除用容器において、
前記2ヶ所の侵入口は、前記収容部を挟んで直線状に配列し、前記本体の両端部に開口することが好ましい。
【0012】
本構成の多足類害虫駆除用容器によれば、本体の両端部に侵入口が開口するため、侵入口の配列方向を家屋等の壁面に沿うように多足類害虫駆除用容器を設置したときに、壁沿いに移動してきた多足類害虫を、それぞれの侵入口から容器内へ侵入させることができる。
【0013】
本発明に係る多足類害虫駆除用容器において、
前記本体及び前記屋根部材は、前記2ヶ所の侵入口の配列方向を長手方向とした長尺形状に構成されていることが好ましい。
【0014】
本構成の多足類害虫駆除用容器によれば、本体及び屋根部材が、侵入口の配列方向を長手方向とした長尺形状に構成されているため、侵入口の配列方向を家屋等の壁面に沿うように設置したときに、多足類害虫駆除用容器が邪魔になることなく使い勝手のよいものとなる。
【0015】
本発明に係る多足類害虫駆除用容器において、
前記本体及び前記屋根部材は、前記2ヶ所の侵入口の間に形成される内部空間の長手方向の長さが、前記多足類害虫の体長の6割以上となるように構成されていることが好ましい。
【0016】
本構成の多足類害虫駆除用容器によれば、内部空間の長手方向の長さがムカデの体長の6割以上となるように構成されていることで、内部空間は暗がりを好む習性を有するムカデにとって居心地の良いものとなるため、侵入したムカデが内部空間に長期間定着し易くなる。長期間定着したムカデは、毒餌剤に触れる機会が多く、毒餌剤を摂食する可能性が高くなる。
【0017】
本発明に係る多足類害虫駆除用容器において、
前記屋根部材は、前記侵入口の上側から延出し、下方へ傾斜する庇部を有することが好ましい。
【0018】
本構成の多足類害虫駆除用容器によれば、侵入口の上側から延出し、下方へ傾斜する庇部を屋根部材が有することにより、侵入口から内部空間への採光が抑制される。そのため、内部空間がさらに暗くなり、近傍まで接近した多足類害虫が侵入口からより侵入し易くなる。
【0019】
本発明に係る多足類害虫駆除用容器において、
前記床部は、前記侵入口側から前記収容部へ向かって上方へ傾斜する傾斜部を有し、
前記侵入口は、開口面積の50~100%において、前記庇部及び前記傾斜部によって視野が遮蔽されるように構成されていることが好ましい。
【0020】
本構成の多足類害虫駆除用容器によれば、侵入口が開口面積の50~100%において、庇部及び傾斜部によって視野が遮蔽されるため、収容部近傍がさらに暗くなり、侵入口から侵入した多足類害虫が収容部へ向けて移動し易くなる。
【0021】
本発明に係る多足類害虫駆除用容器において、
建物の壁面に沿うように設置して使用されることが好ましい。
【0022】
本構成の多足類害虫駆除用容器によれば、建物の壁面に沿うように設置して使用されることで、壁沿いに移動してきた多足類害虫を容器内に容易に侵入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態に係る多足類害虫駆除用容器の説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る多足類害虫駆除用容器の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る多足類害虫駆除用容器の使用形態の説明図である。
【
図4】
図4は、別実施形態に係る多足類害虫駆除用容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る多足類害虫駆除用容器は、ムカデ等の多足類害虫を侵入口から侵入させ、内部に収容した毒餌剤を摂食させることにより駆除する装置である。以下、本発明の多足類害虫駆除用容器に関する実施形態について、
図1~
図4を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0025】
〔多足類害虫駆除用容器の全体構成〕
図1は、実施形態に係る多足類害虫駆除用容器100の説明図である。
図1(a)は、多足類害虫駆除用容器100の斜視図である。
図1(b)は、
図1(a)中のA-A’線における多足類害虫駆除用容器100の断面図である。
図1(c)は、
図1(a)中のB-B’線における多足類害虫駆除用容器100の断面図である。
図2は、実施形態に係る多足類害虫駆除用容器100の分解斜視図である。
【0026】
多足類害虫駆除用容器100は、本体10と、本体10に取り付けられる屋根部材20とを備える。本体10及び屋根部材20の構成材料には、不透明の遮光性材料が使用される。遮光性材料として、例えば、着色されたポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン等の樹脂材料、鉄、アルミニウム等の金属材料等が挙げられる。樹脂材料の色は、黒、茶、緑等とすることが可能であるが、多足類害虫駆除用容器100の内部を暗くするために、黒であることが好ましい。本体10及び屋根部材20は長尺形状に構成されていることが好ましく、本体10に屋根部材20が取り付けられた状態で、本体10の長手方向の両端部に2つの侵入口30が形成されることが好ましい。両端の侵入口30の間に形成される内部空間Sの長手方向の長さLは、5~15cmに構成されていることが好ましく、7~10cmに構成されていることがより好ましい。日本国内で一般に見られる主なムカデ類には、アカズムカデ、アオズムカデ、及びトビズムカデ等がいるが、アカズムカデは体長7cm程度であり、アオズムカデは体長10cm程度であり、トビズムカデは大きい個体で体長15cm程度であることが知られている。内部空間Sの長さLが5cm以上であれば、内部空間Sにおいて、最も小型であるアカズムカデの体長の6割以上を屋根部材20で覆うように多足類害虫駆除用容器100を構成することができる。また、内部空間Sの長さLが15cmであれば、最も大型であるトビズムカデであっても、内部空間Sにおいて体長の6割以上を屋根部材20で覆うように多足類害虫駆除用容器100を構成することができる。多足類害虫は暗い環境を好むため、このような構成によって、侵入口30から侵入した多足類害虫を内部空間Sに長期間定着させることが可能となる。内部空間Sの長さLが、15cmを超える場合、多足類害虫駆除用容器100が大型化し、使い勝手が悪くなる虞がある。また、内部空間Sの長さLが10cmであっても、内部空間Sにおいてトビズムカデの体長の6割以上を屋根部材20で覆うように多足類害虫駆除用容器100を構成することができる。内部空間Sの幅Weは、1~8cmに構成されていることが好ましく、3~7cmに構成されていることがより好ましい。幅Weが1~8cmであれば、多足類害虫駆除用容器100を家屋等の壁面に沿うように設置したときに、多足類害虫駆除用容器100が邪魔になることなく使い勝手のよいものとなり、また、侵入口30から侵入した多足類害虫が内部空間Sに定着しやすくなる。幅Weが1cm未満の場合、侵入口30から侵入した多足類害虫が内部空間Sに定着せず、内部に収容した毒餌剤Pを摂食させることができない可能性がある。幅Weが8cmを超える場合、多足類害虫駆除用容器100を家屋等の壁面に沿うように設置したときに、多足類害虫駆除用容器100が壁面から突出することになり、邪魔になる虞がある。
【0027】
本体10は、
図2に示すように、毒餌剤Pを収容する収容部11を有しており、さらに、侵入口30から収容部11まで連続する床部12と、収容部11及び床部12に沿って連続して形成された側壁部13とを有する。
【0028】
収容部11には、毒餌剤Pを収容する長円形の凹部11aが形成されている。
図1(b)の断面図に示すように、凹部11aは、多足類害虫駆除用容器100の幅方向の中央に形成され、凹部11aを挟んで幅方向の両側に、床部12から連続する歩行面11bが形成されている。
【0029】
床部12は、多足類害虫が歩行する区間であり、収容部11を挟んで長手方向の両側に形成されている。夫々の床部12は、
図1(c)に示すように、長手方向に沿って容器外方から奥へ向けて、前縁部12a、傾斜部12b、及び奥部12cを有することが好ましい。前縁部12aは、凹部11aの底面と同一の高さに形成されており、多足類害虫駆除用容器100を設置した状態で地面に接触することで、多足類害虫の侵入を妨げない水平面をなす。傾斜部12bは、前縁部12aから奥部12cへ向かって上方に傾斜する曲面状の傾斜面をなす。奥部12cは、収容部11に連設した水平面をなす。
【0030】
側壁部13は、床部12と収容部11との幅方向の両側の側部から起立し、多足類害虫駆除用容器100の幅方向の側面を構成する。側壁部13は、長手方向両側の床部12の傾斜部12bから奥部12cまでと、収容部11とに沿って連続して形成されており、その上端は、屋根部材20と隙間なく接合している。ここで「隙間なく接合」とは、側壁部13と屋根部材20との接合部分から内部空間Sに光が入らない程度に接触した状態を意味する。
図1(b)に示す構成では、側壁部13の上端部を外側へ屈曲させることで、屋根部材20と接合する幅を大きくしているため、屋根部材20との接合部分から内部空間Sへ光が入ることをより確実に防ぐことができる。また、
図2に示すように、側壁部13には、係合突起14が形成され、係合突起14が屋根部材20に形成された係合孔23に係合することで、本体10と屋根部材20とが固着される。
【0031】
屋根部材20は、本体10に取り付けた状態で、幅方向の両側で側壁部13の上端と隙間なく接合し、長手方向の両側で本体10との間に侵入口30を形成する。屋根部材20は、平板部21と、平板部21を挟んで長手方向の両側に設けられた庇部22とを有することが好ましい。平板部21は、本体10に取り付けた状態で地面と略平行となる。庇部22は、平板部21から屈曲して延伸し、端部が下方へ向けて傾斜する。庇部22は、本体10に取り付けた状態で、侵入口30の上側から長手方向の外側へさらに延出する。
【0032】
〔侵入口〕
本体10の両端に開口する2つの侵入口30は、
図1(c)の断面図に示すように、収容部11を挟んで直線状に配列することが好ましい。
図1に示す構成では、侵入口30は、側壁部13の端部13aを側辺として、屋根部材20、床部12、及び側壁部13に囲まれた幅We、高さHの開口として形成される。
【0033】
侵入口30の幅Weは、1~8cmに構成されていることが好ましく、3~7cmに構成されていることがより好ましい。侵入口30の幅Weが1~8cmであれば、多足類害虫駆除用容器100を家屋等の壁面に沿うように設置したときに、多足類害虫駆除用容器100が邪魔になることなく使い勝手のよいものとなり、また、多足類害虫が侵入し易いものとなる。侵入口30の幅Weが1cm未満の場合、多足類害虫が侵入しにくくなる虞がある。特に、大型のムカデが侵入口30から内部空間Sへ侵入することが困難になる虞がある。侵入口30の幅Weが8cmを超える場合、多足類害虫駆除用容器100を家屋等の壁面に沿うように設置したときに、多足類害虫駆除用容器100が壁面から突出することになり、邪魔になる虞がある。
【0034】
侵入口30の高さHは、0.5~3cmに構成されていることが好ましく、1~2cmに構成されていることがより好ましい。侵入口30の高さHが0.5~3cmであれば、多足類害虫駆除用容器100を設置したときに、多足類害虫駆除用容器100が邪魔になることなく使い勝手のよいものとなり、また、多足類害虫が侵入し易いものとなる。侵入口30の高さHが0.5cm未満の場合、多足類害虫が侵入しにくくなる虞がある。特に、大型のムカデが侵入口30から内部空間Sへ侵入すること困難になる虞がある。侵入口30の高さHが3cmを超える場合、多足類害虫駆除用容器100の厚みが大きくなり、多足類害虫駆除用容器100を設置したときに邪魔になる虞がある。
【0035】
侵入口30は、開口面積の50~100%において、庇部22及び傾斜部12bによって視野が遮蔽されるように構成されていることが好ましい。侵入口30は、開口面積の80~100%において、庇部22及び傾斜部12bによって視野が遮蔽されるように構成されていることがより好ましい。ここで「視野が遮蔽される」とは、一方の侵入口30から多足類害虫駆除用容器100内部を見た場合に、長手方向の反対側の位置に形成された侵入口30を通して、多足類害虫駆除用容器100の外部を見ることができない状態を意味する。以下、侵入口30の開口面積において、視野が遮蔽される面積が占める割合を「遮蔽率」という。遮蔽率が50~100%であると、収容部11の近傍が侵入口30の近傍よりも暗くなるため、侵入口30から侵入した多足類害虫が収容部11へ向けて移動し易くなる。遮蔽率が50%未満である場合、収容部11の近傍が充分に暗くならず、収容部11の近傍と侵入口30の近傍との明るさの違いによる多足類害虫の誘導が不十分になる可能性がある。
図1(c)に示す構成では、矢印Vで示すように長手方向に沿って高さHの侵入口30を見た場合、庇部22によって上側Srの視野が遮蔽され、傾斜部12bによって下側Sfの視野が遮蔽されていることで、侵入口30は、高さHの全ての位置で視野が遮蔽される。侵入口30の開口面積は、幅Weと高さHとの積であることから、
図1(c)に示す構成における遮蔽率は、100%である。
【0036】
〔多足類害虫駆除用容器の使用方法〕
図3は、実施形態に係る多足類害虫駆除用容器100の使用形態の説明図である。
図3に示すように、多足類害虫駆除用容器100は、一方の側壁部13を家屋等の建物の壁面Xに密着させ、長手方向が壁面Xに沿うように設置して使用される。多足類害虫は、壁沿いに移動する習性を有するため、壁面Xに沿って移動してきた多足類害虫Yを、侵入口30から多足類害虫駆除用容器100の内部へ効果的に侵入させることが可能である。また、多足類害虫駆除用容器100は、長手方向の両端に侵入口30を有するため、逆方向から壁面Xに沿って移動してきた多足類害虫Zも、他方の侵入口30から効果的に侵入させることが可能である。このような使用形態によって、多足類害虫駆除用容器100は、内部へ侵入した多足類害虫に毒餌剤を摂食させて駆除することができる。
【0037】
〔別実施形態〕
上記の実施形態に係る多足類害虫駆除用容器100は、遮蔽率が100%になるように構成されているが、遮蔽率は必ずしも100%である必要はなく、50~100%の範囲であれば、内部空間Sを暗くし、多足類害虫を効率的に侵入させることが可能である。
図4は、別実施形態に係る多足類害虫駆除用容器100の断面図である。
図4に示す構成では、矢印Vで示すように長手方向に沿って高さHの侵入口30を見た場合、庇部22によって上側Srの視野が遮蔽され、傾斜部12bによって下側Sfの視野が遮蔽されていることで、遮蔽率が50%以上となるように構成されている。しかし、透過部分Tにおいて、長手方向の反対側の侵入口30を通して、多足類害虫駆除用容器100の外部を見ることができる。この場合、多足類害虫駆除用容器100の通気性が向上するため、例えば、毒餌剤に害虫が好む誘引香料を含有すれば、誘引効果を向上させることができる。
【実施例】
【0038】
本発明の特徴構成を備えた多足類害虫駆除用容器(実施例1)と、本発明の特徴構成とは異なる遮蔽率を有する多足類害虫駆除用容器(比較例1、2)とを用いて、多足類害虫の侵入率、及び定着率を比較した。
【0039】
(実施例1)
収容部及び床部に沿って連続する側壁部を有し、侵入口の遮蔽率が100%である多足類害虫駆除用容器を実施例1とした。
【0040】
(比較例1)
収容部及び床部に沿って連続する側壁部がなく、侵入口の遮蔽率が20%である多足類害虫駆除用容器を比較例1とした。
【0041】
(比較例2)
収容部及び床部に沿って連続する側壁部がなく、侵入口の遮蔽率が0%である多足類害虫駆除用容器を比較例2とした。
【0042】
〔侵入定着性確認試験〕
石膏を流し込んだ幅21cm、長さ37cm、高さ28cmのプラスチックケースに供試虫(トビズムカデ)を1匹放ち、馴化させた後に、プラスチックケースの壁に沿わせて多足類害虫駆除用容器を設置して、トビズムカデの行動を観察した。トビズムカデが多足類害虫駆除用容器の内部に定着した場合は、トビズムカデを容器内から外部へ出してプラスチックケースに放ち、再度馴化させた後に試験を継続した。侵入率(%)、及び定着率(%)を、下式により求めた。試験結果を、表1に示す。
侵入率(%) = Ci / Cn × 100
定着率(%) = Cf / Ci × 100
Cn:トビズムカデが多足類害虫駆除用容器に接触した回数
Ci:トビズムカデが多足類害虫駆除用容器へ侵入した回数
Cf:トビズムカデが多足類害虫駆除用容器の内部に定着した回数
【0043】
【0044】
侵入定着性確認試験の結果、側壁部を有し、遮蔽率が100%である実施例1の多足類害虫駆除用容器では、侵入率が85%、定着率が75%と何れも高い値を示した。この結果から、側壁部を有し、遮蔽率が高いことで内部が暗い実施例1の多足類害虫駆除用容器では、内部に収容した毒餌剤をトビズムカデが摂食する可能性が高いと考えられる。
【0045】
一方、側壁部がなく、遮蔽率が20%である比較例1の多足類害虫駆除用容器は、侵入率が50%、定着率が10%であった。側壁部がなく、遮蔽率が0%である比較例2の多足類害虫駆除用容器は、侵入率が50%、定着率が0%であった。この結果から、側壁部がなく、遮蔽率が低いことで内部が明るい比較例1及び2の多足類害虫駆除用容器では、内部に収容した毒餌剤をトビズムカデが摂食する可能性が低いと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の多足類害虫駆除用容器は、ムカデ、ヤスデ等の多足類害虫を駆除する用途に利用可能であり、多足類害虫のうち特に、トビズムカデ、アオズムカデ、アカズムカデ等のムカデ類に対して好適に利用可能であり、さらにはワラジムシ、ダンゴムシ等にも利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 本体
11 収容部
12 床部
12b 傾斜部
13 側壁部
20 屋根部材
22 庇部
30 侵入口
100 多足類害虫駆除用容器
S 内部空間