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特許7034700搬送装置、樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】搬送装置、樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/12 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
B29C33/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017245003
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2019111673
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】川本 佳久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 範行
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0058724(KR,A)
【文献】特開平01-140739(JP,A)
【文献】特開2016-111323(JP,A)
【文献】特開2015-041640(JP,A)
【文献】特開2003-068830(JP,A)
【文献】特開2013-153146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0101631(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 45/00 - 45/84
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形装置の成形型に成形対象物を搬送する装置であって、
前記成形対象物が載置される成形対象物載置部と、
該成形対象物載置部の周縁又はその外側に設けられた、該成形対象物の端縁に当接する部材であり、該成形対象物載置部の内部の方向に移動可能である複数の端縁規制部材と
前記端縁規制部材を前記方向に付勢する弾性部材を有する付勢部材と、
前記付勢部材の作動をON/OFFする付勢部材制御部と、
を備えた成形対象物保持部を含む
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記付勢部材が、
回動中心の周りに回動する板状の回動部材と、
前記回動部材に、複数の前記端縁規制部材の各々に対して1個ずつ設けられ、該端縁規制部材が挿通される長孔であって、該長孔の幅方向の中心を結ぶ幅方向中心線上の1点と前記回動中心との距離が、該点が該幅方向中心線の一端から他端に向かうに従って増加しているように形成されている端縁規制部材案内長孔と、
複数の前記端縁規制部材の各々に対して1個ずつ設けられ、該端縁規制部材が移動可能な方向を、該端縁規制部材と前記回動中心を通過する直線上に規制する端縁規制部材移動規制部と
を備え、
前記弾性部材が、前記端縁規制部材案内長孔の前記一端側から前記他端側に向かって前記回動部材を回動させるように該回動部材を付勢するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記付勢部材制御部が、前記回動部材が前記一端側に回動した位置で該回動部材を固定可能及び該固定を解除可能なストッパであることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記回動部材が、該回動部材が前記一端側に回動した位置で前記ストッパが係合する切り欠きを備えることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記複数の端縁規制部材の全てが連動して前記方向に移動可能であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記成形対象物載置部に載置される前記成形対象物に設けられた切り欠きに対応する位置に前記複数の端縁規制部材のうちの1つが設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の搬送装置と、
前記成形対象物が取り付けられる成形対象物取付部を有する第1型と、該第1型に対向して配置される第2型とを含む成形型と
を備えることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項8】
成形対象物保持部に保持された成形対象物の端縁を規制する部材であって搬送装置の成形対象物保持部に設けられた成形対象物載置部の周縁又はその外側に複数設けられた端縁規制部材を前記成形対象物載置部の内部の方向に付勢する弾性部材を有する付勢部材の作動をOFFにする予備工程と、
前記成形対象物載置部に成形対象物を載置し、前記付勢部材の作動をONにして該付勢部材で前記方向に付勢することで前記複数の端縁規制部材を該方向に移動させることにより該端縁規制部材を該端縁に当接させ、前記成形対象物を前記成形対象物保持部に保持する搬入時成形対象物保持工程と、
成形対象物が取り付けられる成形対象物取付部を有する第1型と、該第1型に対向して配置される第2型とを含む成形型の該成形対象物取付部と前記成形対象物載置部の位置を合わせるように前記成形対象物保持部を移動させ、該成形対象物を該成形対象物取付部に取り付けた後、該成形対象物保持部を前記成形型の外部に移動させる成形対象物搬入工程と、
前記第1型と前記第2型を型締めしたうえで前記成形対象物に樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
を含むことを特徴とする樹脂成形品製造方法。
【請求項9】
前記付勢部材が、
回動中心の周りに回動する板状の回動部材と、
前記回動部材に、複数の前記端縁規制部材の各々に対して1個ずつ設けられ、該端縁規制部材が挿通される長孔であって、該長孔の幅方向の中心を結ぶ幅方向中心線上の1点と前記回動中心との距離が、該点が該幅方向中心線の一端から他端に向かうに従って増加しているように形成されている端縁規制部材案内長孔と、
複数の前記端縁規制部材の各々に対して1個ずつ設けられ、該端縁規制部材が移動可能な方向を、該端縁規制部材と前記回動中心を通過する直線上に規制する端縁規制部材移動規制部と
を備え、
前記弾性部材が、前記端縁規制部材案内長孔の前記一端側から前記他端側に向かって前記回動部材を回動させるように該回動部材を付勢するものであって、
前記搬入時成形対象物保持工程において、前記回動部材を回動させることにより、該端縁規制部材を前記成形対象物載置部の内部の方向に移動させることを特徴とする請求項8に記載の樹脂成形品製造方法。
【請求項10】
前記複数の端縁規制部材を前記方向に移動させる際に、該複数の端縁規制部材の全てを連動させて該方向に移動させることを特徴とする請求項8又は9に記載の樹脂成形品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置の成形型に成形対象物を搬送する搬送装置、樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形型を用いて基板等の成形対象物に樹脂成形をすることは広く行われている。成形対象物を成形型の成形対象物取付部に取り付けるために、成形対象物を成形型の第1型と第2型の間に搬送(搬入)する搬送装置が設けられた樹脂成形装置が用いられている。例えば特許文献1には、複数個の支持部で成形対象物の側部を支持することによって成形対象物の横方向の位置を固定し、該位置を第2型である上型の下面に設けられた成形対象物取付部(クランプ面)に合わせるように搬送装置(ローダー)を成形対象物取付部の直下に搬入した後、成形対象物取付部に設けられた吸着孔から気体を吸引することによって成形対象物を成形対象物取付部に取り付けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-153146号公報(図15
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形対象物の外郭寸法は、加工時に生じる加工誤差等によってばらつきが生じることがある。そのため、搬送装置の支持部で成形対象物の側部を支持することができなくなったり、支持部と成形対象物の間の隙間が大きくなることがある。その場合、成形対象物を搬送装置で搬送できなくなったり、成形対象物を成形対象物取付部に取り付ける際に、取り付ける位置がずれるおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、成形対象物の外郭寸法にばらつきが生じても、成形対象物を搬送することができ、成形型の成形対象物取付部への取り付け位置のずれを抑えることができる搬送装置、樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明に係る搬送装置は、樹脂成形装置の成形型に成形対象物を搬送する装置であって、
前記成形対象物が載置される成形対象物載置部と、
該成形対象物載置部の周縁又はその外側に設けられた、該成形対象物の端縁に当接する部材であり、該成形対象物載置部の内部の方向に移動可能である複数の端縁規制部材と
前記端縁規制部材を前記方向に付勢するばねを有する付勢部材と、
前記付勢部材の作動をON/OFFする付勢部材制御部と、
を備えた成形対象物保持部を含む
ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る樹脂成形装置は、
前記搬送装置と
前記成形対象物が取り付けられる成形対象物取付部を有する第1型と、該第1型に対向して配置される第2型とを含む成形型と
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る樹脂成形品製造方法は、
前記成形対象物保持部に保持された成形対象物の端縁を規制する部材であって搬送装置の成形対象物保持部に設けられた成形対象物載置部の周縁又はその外側に複数設けられた端縁規制部材を前記成形対象物載置部の内部の方向に付勢するばねを有する付勢部材の作動をOFFにする予備工程と、
前記成形対象物載置部に成形対象物を載置し、前記付勢部材の作動をONにして該付勢部材で前記方向に付勢することで前記複数の端縁規制部材を該方向に移動させることにより該端縁規制部材を該端縁に当接させ、前記成形対象物を前記成形対象物保持部に保持する搬入時成形対象物保持工程と、
成形対象物が取り付けられる成形対象物取付部を有する第1型と、該第1型に対向して配置される第2型とを含む成形型の該成形対象物取付部と前記成形対象物載置部の位置を合わせるように前記成形対象物保持部を移動させ、該成形対象物を該成形対象物取付部に取り付けた後、該成形対象物保持部を前記成形型の外部に移動させる成形対象物搬入工程と、
前記第1型と前記第2型を型締めしたうえで前記成形対象物に樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、成形対象物毎に外郭寸法にばらつきが生じても、成形対象物を搬送することができ、成形型の成形対象物取付部への取り付け位置のずれを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る搬送装置及び樹脂成形装置の一実施形態を示す概略図。
図2】本実施形態の搬送装置の全体を示す上面図(a)、A-A'縦断面図(b)、及びB-B'縦断面図(c)。
図3】本実施形態の搬送装置の昇降フレーム(a)及び回動フレーム(b)を示す上面図。
図4】回動フレームの回動に伴う端縁規制部材の動きであって、端縁規制部材が成形対象物載置部の内部の方向に移動する場合(a)及び外部の方向に移動する場合(b)を示す図。
図5】本実施形態の搬送装置及び樹脂成形装置における端縁規制部材を示す縦断面図。
図6】本実施形態の搬送装置及び樹脂成形装置における回動フレーム及び端縁規制部材の動作を示す上面図であって、端縁規制部材を成形対象物載置部の外部の方向に移動させる動作を示す図(a-1)及びその部分拡大図(a-2)、並びに端縁規制部材を成形対象物載置部の内部の方向に移動させる動作を示す図(b-1)及びその部分拡大図(b-2)。
図7】本実施形態における搬送装置及び成形型等の動作を示す図であって、上型と下型の間への搬送装置の搬入(a)、搬送装置の上昇(b)、成形対象物取付部への成形対象物の取り付け(c)、キャビティへの離型フィルムの張設及び樹脂材料の供給(d)、型締め(e)並びに型開き(f)の状態を示す図。
図8図7に示した搬送装置及び成形型等の動作の続きを表す図であって、上型と下型の間への搬送装置の搬入(a)、及び搬送装置の上昇(b)を示す図。
図9】第1の変形例における搬送装置を示す上面図(a)、及びB-B'縦断面図(b)。
図10】第2の変形例における搬送装置の成形対象物載置部及び端縁規制部材を示す上面図。
図11】第3の変形例における搬送装置を示す上面図(a)、及び側面図(b)。
図12】第3の変形例における搬送装置の動作を示す側面図。
図13】付勢部材制御部の変形例の構成を示す平面図(a)、及び付勢部材がOFFの状態を示す平面図(b)。
図14】付勢部材制御部の他の変形例を示す平面図(a)、及び付勢部材がOFFの状態を示す平面図(b)。
図15】本実施形態の搬送装置及び樹脂成形装置を有する樹脂成形ユニットの構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る搬送装置、樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法では、成形対象物を成形対象物載置部に載置し、端縁規制部材を該成形対象物載置部の内部の方向に移動させることにより、成形対象物を成形対象物保持部に保持する。このように移動可能な端縁規制部材を用いることにより、成形対象物の外郭寸法にばらつきが生じても、成形対象物を保持することができる。また、端縁規制部材と成形対象物の間の隙間を小さくするように端縁規制部材を移動させることができるため、成形対象物取付部に成形対象物を取り付ける位置がずれることを抑えることができる。
【0012】
端縁規制部材の形状は特に限定されない。また、成形対象物の種類及び形状も特に限定されない。本発明を適用することができる成形対象物の種類としては半導体ウエハ、回路基板、リードフレーム、ガラス基板、金属基板等が挙げられ、成形対象物の形状としては円形、矩形その他の多角形、楕円形等が挙げられる。
【0013】
本発明に係る樹脂成形品製造方法はさらに、
前記樹脂成形工程の後に前記第1型と前記第2型を型開きし、前記成形対象物取付部と前記成形対象物載置部の位置を合わせるように前記成形対象物保持部を移動させ、樹脂成形が行われ成形対象物取付部に取り付けられた前記成形対象物を前記成形対象物載置部に載置し、前記端縁規制部材を前記成形対象物載置部の内部の方向に移動させることにより、該成形対象物を該成形対象物保持部に保持する搬出時成形対象物保持工程と、
前記成形対象物保持部を前記成形型の外部に移動させる搬出工程と
を含むことができる。
【0014】
成形対象物の外郭寸法のばらつきは、上述した加工時に生じる加工誤差の他にも、例えば以下の原因により生じる。第1の原因の例は、成形対象物の熱膨張に起因するものである。樹脂成形の際には樹脂成形が可能な温度に第1型及び第2型が昇温されていることから、成形対象物は樹脂成形の直後には成形前よりも温度が高くなっている。生産効率を高くするためには温度が十分に低下する前に成形対象物取付部から取り外し成形型の外に搬出する必要があることから、成形対象物は搬出時には搬入時よりも熱膨張し、搬入時と搬出時では外郭寸法が異なることとなる。また、成形対象物の材質が異なると熱膨張率が異なることから、成形対象物の外郭寸法も成形対象物の材質によって異なることとなる。第2の原因の例は、以下に述べるオーバーモールドを行う場合に生じる問題が挙げられる。オーバーモールドは、成形対象物よりも外側まで樹脂成形を行うことをいい、樹脂封止されるチップより外側にも配線や入出力端子を設けるファンアウトパッケージングを行う際などに用いられる。オーバーモールドを行った成形対象物は元の形状よりも大きくなるため、成形対象物の外郭寸法が搬入時と搬出時で異なることとなる。本発明に係る搬送装置、樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法によれば、これら第1及び第2の原因の例のいずれにおいても、成形対象物を保持することができ、且つ、成形対象物取付部に成形対象物を取り付ける位置がずれることを抑えることができる。
【0015】
また、これら第1及び第2の原因の例では成形型への成形対象物の搬入時と成形型からの成形対象物の搬出時で成形対象物の外郭寸法が異なることから、特許文献1に記載の樹脂成形装置では、搬入用の搬送装置(ローダー)とは別に、搬出用の搬送装置(オフローダー)を備えており、樹脂成形装置のコストが上昇する要因となっていた。それに対して本発明に係る搬送装置、樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法では、搬入時と搬出時で同じ搬送装置を用いることができるため、コストを抑えることができる。
【0016】
本発明に係る搬送装置及び樹脂成形装置において、前記成形対象物保持部はさらに、前記複数の端縁規制部材を前記方向(成形対象物載置部の内部の方向)に付勢する付勢部材を備えることが望ましい。また、本発明に係る樹脂成形品製造方法では、成形対象物を前記成形対象物保持部に保持した状態において、前記複数の端縁規制部材を付勢部材により前記方向に付勢することが望ましい。これにより、成形対象物を成形対象物保持部に保持している間、付勢部材で成形対象物載置部の内部の方向に付勢された複数の端縁規制部材によって成形対象物が保持されるため、成形対象物をより安定して保持することができる。例えば、昇温されている第1型及び第2型に成形対象物保持部及びそれに保持された成形対象物が近づくと、成形対象物保持部及び成形対象物のそれぞれが、それぞれの熱膨張率に応じて膨張する場合がある。そのような場合であっても、複数の端縁規制部材成形対象物載置部の内部の方向に付勢することにより、成形対象物を安定して保持することができる。
【0017】
本発明に係る搬送装置において、
回動中心の周りに回動する板状の回動部材と、
前記回動部材に、複数の前記端縁規制部材の各々に対して1個ずつ設けられ、該端縁規制部材が挿通され、該端縁規制部材を移動させることができる端縁規制部材案内長孔と、
複数の前記端縁規制部材の各々に対して1個ずつ設けられ、該端縁規制部材が移動可能な方向を、該端縁規制部材と前記回動中心を通過する直線上に規制する端縁規制部材移動規制部と
を備えるという構成を取ることができる。このような搬送装置は、本発明に係る樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法において用いることができる。
【0018】
これら回動部材、端縁規制部材案内長孔、及び端縁規制部材移動規制部を有する構成によれば、回動中心の周りに回動部材を回動させることにより、端縁規制部材は、端縁規制部材案内長孔内での位置が変化し、それに伴って、回動中心との距離が変化するように、該端縁規制部材と前記回動中心を通過する直線上で移動する。これにより、端縁規制部材を成形対象物載置部の内部の方向、あるいはその反対の方向に移動させることができる。
【0019】
前記端縁規制部材案内長孔は、該端縁規制部材案内長孔の幅方向の中心を結ぶ幅方向中心線上の1点と前記回動中心との距離が、該1点とは異なる該幅方向中心線上の1点と前記回動中心との距離と異なるという構成を取ることができる。これにより、回動部材の回動によって端縁規制部材が端縁規制部材案内長孔内のこれら2つの点の間で移動すると、これら2つの点では互いに回動中心との距離が異なるため、端縁規制部材が該端縁規制部材と前記回動中心を通過する直線上で移動する。ここで「幅方向」とは、端縁規制部材案内長孔の外縁上のある点と、該点から該端縁規制部材案内長孔の内部を挟んで最短の距離にある該外縁上の他の点とを結ぶ方向をいう。
【0020】
前記端縁規制部材案内長孔は、前記幅方向中心線上の点と前記回動中心との距離が、該点が該幅方向中心線の一端から他端に向かうに従って増加しているように形成されているという構成を取ることができる。これにより、回動部材を上面視で右回り又は左回りのいずれか一方に回動させてゆくと、端縁規制部材は回動中心に近づくように移動してゆき、反対回りに回動させてゆくと、端縁規制部材は回動中心から遠ざかるように移動してゆく。
【0021】
前記付勢部材を有する搬送装置及び樹脂成形装置において、さらに、前記付勢部材の作動をON/OFFする付勢部材制御部を備えることが望ましい。また、前記付勢部材を用いた操作を行う樹脂成形品製造方法の前記搬入時成形対象物保持工程(及び前記搬出時成形対象物保持工程)において、前記成形対象物載置部に成形対象物を載置する前に前記付勢部材の作動をOFFにし、該成形対象物載置部に該成形対象物を載置した後に該付勢部材の作動をONにすること望ましい。これにより、成形対象物載置部に成形対象物を載置する際には複数の端縁規制部材が付勢部材によって成形対象物載置部の内部の方向に付勢されることがないため、それら複数の端縁規制部材と成形対象物との間に隙間を確保しながら、成形対象物載置部に成形対象物を載置することができる。
【0022】
本発明に係る搬送装置及び樹脂成形装置において、前記複数の端縁規制部材の全てが連動して前記方向に移動可能であることが望ましい。また、本発明に係る樹脂成形品製造方法において、前記複数の端縁規制部材を前記方向に移動させる際に、該複数の端縁規制部材の全てを連動させて該方向に移動させることが望ましい。これにより、成形対象物を成形対象物保持部の中央付近に保持することができ、成形対象物取付部への取り付け位置の精度を高くすることができる。
【0023】
前記複数の端縁規制部材のうちの1つは、前記成形対象物載置部に載置される前記成形対象物に設けられた切り欠き(ノッチ)に対応する位置に設けられていることが望ましい。これにより、切り欠きの位置を該端縁規制部材に合わせて該成形対象物を該成形対象物載置部に載置することで、成形対象物載置部上での成形対象物の向きを定めることができる。
【0024】
以下、図1図15を用いて、本発明に係る搬送装置、樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法のより具体的な実施形態を説明する。
【0025】
(1) 本実施形態の搬送装置及び樹脂成形装置の構成
図1に、本発明の一実施形態である搬送装置(搬送機構)20、及び本発明の一実施形態であって該搬送装置20を有する樹脂成形装置10の全体構成を概略図で示す。この樹脂成形装置10は、圧縮成形を行う装置であって、基盤111と、基盤111上に立設された4本(図1には2本のみ示すが、奥行き方向にあと2本設けられている)のタイバー112と、上下に移動可能なようにタイバー112に保持された可動プラテン121と、タイバー112の上端に固定された固定プラテン122と、基盤111上に設けられた、可動プラテン121を上下動させるトグルリンク113とを備える。また、樹脂成形装置10は、可動プラテン121の上面に下型152を、固定プラテン122の下面に上型151を備える。これら上型151と下型152により1組の成形型15が構成される。
【0026】
上型151は前記第1型に該当し、下面が成形対象物を保持する成形対象物取付部1511となっており、該成形対象物取付部1511に気体吸引孔1512が設けられている。上型151と固定プラテン122の間には、上型151寄りにヒータ142が、固定プラテン122寄りに断熱材141が、それぞれ設けられている。気体吸引孔1512は、上型151及びヒータ142内に設けられた気体吸引管1513を介して、真空ポンプ(図示せず)に接続されている。
【0027】
下型152は前記第2型に該当し、平面形状(上面視)で円形の枠から成る周壁部材1521と、周壁部材1521の枠内に装入された平面形状で円形の底面部材1522と、周壁部材1521の下面に設けられた弾性部材1523を有する。これら周壁部材1521及び底面部材1522で囲まれた空間が、樹脂材料が供給されるキャビティCとなる。なお、周壁部材1521の枠及び底面部材1522の形状は、製造する樹脂成形品の形状に応じて、円形以外の長方形等の形状とすることができる。下型152と可動プラテン121の間には、下型152寄りにヒータ142が、可動プラテン121寄りに断熱材141が、それぞれ設けられている。ここまでに述べた各構成要素により、圧縮成形装置101が構成される。
【0028】
搬送装置20は、成形型15が型開きした状態において、上型151と下型152の間(成形型15内)の、成形対象物取付部1511の直下の位置と、成形型15の外の間で、横方向に移動可能なものであって、上面に成形対象物Sを載置する成形対象物載置部25を有する。本実施形態では、成形対象物載置部25に載置する成形対象物Sは、板状であって円形の基板とする。
【0029】
図2図5を用いて、搬送装置20の構成を詳しく説明する。
【0030】
図2(a)は搬送装置20の全体の上面図、(b)は(a)に示したA-A'縦断面における図、(c)は(a)に示したB-B'縦断面における図である。搬送装置20は、ベースフレーム21と、昇降フレーム22と、回動フレーム(回動部材)23と、非回動フレーム24と、成形対象物載置部25と、昇降機構26と、端縁規制部材27とを有する。本実施形態では、端縁規制部材27は10個設けられており、うち9個は円周上に等間隔(40°間隔)で配置されている。残りの1個の端縁規制部材27Aは、前記9個のうち隣接する2個の端縁規制部材27の間であって、前記円周よりもわずかに内側に配置されている。なお、ここで示した端縁規制部材27の個数は一例であって、これには限定されない。昇降フレーム22、回動フレーム23、非回動フレーム24及び成形対象物載置部25は、下からこの順で重ねて設けられており、いずれも平面形状の外郭が同じ大きさの円形である。昇降フレーム22はベースフレーム21の上に設けられている。
【0031】
ベースフレーム21は、平面形状の1方向(図2(a)の横方向)に、昇降フレーム22等の外郭の円よりも外側まで延びている形状を有している。ベースフレーム21の該1方向の両端の下面には、該1方向に直交する方向(図2(a)の縦方向、(b)の紙面に垂直な方向)に延びる1対の凸状レール211が設けられている。樹脂成形装置10には、この凸状レール211に対応するレール16(図2では図示せず。後述の図7参照。)が設けられており、搬送装置20の全体はこれらのレールに案内されて成形型15内と成形型15外の間を移動する。
【0032】
図3(a)に昇降フレーム22の上面図を、図3(b)に回動フレーム23の上面図を、それぞれ示す。昇降フレーム22の上面の中心には軸体221が突出している。回動フレーム23の中心には軸体221を挿通する孔231が設けられており、回動フレーム23はこの軸体221を回動中心として回動する。
【0033】
昇降フレーム22には、端縁規制部材案内凹部222が10個設けられており、うち9個は、昇降フレーム22の外郭よりもやや内側に、外郭の円周に沿って40°間隔で設けられている(図2(c)、図3(a))。残りの1個の端縁規制部材案内凹部222Aは、前記9個のうち隣接する2個の端縁規制部材案内凹部222の間であって、該9個の端縁規制部材案内凹部222よりも昇降フレーム22のわずかに内側に配置されている。端縁規制部材案内凹部222Aを配置する円周方向の位置は、成形対象物を成形型に取り付ける際に、成形対象物に設けられた切り欠き(ノッチ)を配置したい位置(切り欠きを向けたい方向)に合わせて任意に定めればよい。1個の端縁規制部材案内凹部222(端縁規制部材案内凹部222Aを含む)には、1個の端縁規制部材27が有する円筒状の端縁規制部材収容部272(後述)の下面付近が保持される。端縁規制部材案内凹部222は、回動中心と交わる直線(図3(a)中の一点鎖線)が延びる方向の両端の距離が、端縁規制部材収容部272の直径よりも大きく設定されている。また、端縁規制部材収容部272が前記直線に垂直な方向にはほとんど移動することなく且つ該直線の方向には移動可能なように、端縁規制部材案内凹部222の前記直線に垂直な方向の幅は、前記距離よりも短く、且つ端縁規制部材収容部272の直径よりもわずかに大きく設定されている。これにより、端縁規制部材27は、端縁規制部材案内凹部222に案内されて、前記直線が延びる方向に移動するように規制される。この端縁規制部材案内凹部222は、前述の端縁規制部材移動規制部に該当する。
【0034】
回動フレーム23は板状であって、端縁規制部材案内長孔232が10個設けられており、うち9個は回動フレーム23の外郭よりもやや内側に、外郭の円周に沿って40°間隔で設けられている(図3(b))。残りの1個の端縁規制部材案内長孔232Aは、前記9個のうち隣接する2個の端縁規制部材案内長孔232の間であって、該9個の端縁規制部材案内長孔232よりも回動フレーム23のわずかに内側に配置されている。各端縁規制部材案内長孔232には、昇降フレーム22の端縁規制部材案内凹部222に保持される端縁規制部材27が1つずつ挿通され、うち端縁規制部材案内長孔232Aには端縁規制部材27Aが挿通される。端縁規制部材案内長孔232は、回動中心と交わる直線が延びる方向に、端縁規制部材収容部272の直径よりもわずかに大きい幅を有する。端縁規制部材案内長孔232のうち、挿通される端縁規制部材27が端縁規制部材案内長孔232の長手方向に移動する間に端縁規制部材本体271が描く軌跡(図3(b)中の太線)を「幅方向中心線」と規定する。この幅方向中心線の左端から右端(ここで左右は、端縁規制部材案内長孔232が回動中心よりも図3(b)でいう直上の位置にある場合で規定)に向かって、回動フレーム23の回動中心(孔231の中心)との距離(端縁規制部材案内長孔232の左端ではr1、右端ではr2とする。また、端縁規制部材案内長孔232の左端を「r1端」、右端を「r2端」とする。)が減少してゆく(従ってr1>r2)ように、端縁規制部材案内長孔232は該回動中心を中心とする円の接線方向に対して傾斜して設けられている。端縁規制部材案内長孔232Aを除く9個の端縁規制部材案内長孔232は、同じ形状且つ接線方向に対して同じ傾斜で設けられている。端縁規制部材案内長孔232Aは、幅方向中心線の左端から右端(定義は他の端縁規制部材案内長孔232の場合と同じであって、図3(b)に描かれた端縁規制部材案内長孔232Aの位置では右端から左端)に向かって、回動フレーム23の回動中心との距離がr3からr4に減少してゆく(r3>r4、r1>r3、r2>r4)ように、接線方向に対して傾斜している。端縁規制部材案内長孔232Aの左端を「r3端」、右端を「r4端」とする。
【0035】
このような構成により、回動フレーム23を上面視で左回り(以下、「左回り」及び「右回り」は上面視で規定)に回動させると、各端縁規制部材27の位置は端縁規制部材案内長孔232内のr1端側からr2端側(端縁規制部材案内長孔232Aではr3端側からr4端側)に移動し、それによって端縁規制部材27(27A)と回動中心との距離が小さくなってゆき、成形対象物載置部25の内部の方向(回動中心がある方向)に移動する(図4(a))。一方、回動フレーム23を右回りに回動させると、各端縁規制部材27の位置は端縁規制部材案内長孔232内のr2端側からr1端側(端縁規制部材案内長孔232Aではr4端側からr3端側)に移動し、それによって端縁規制部材27(27A)と回動中心との距離が大きくなってゆき、成形対象物載置部25の外部の方向に移動する(図4(b))。ここで、端縁規制部材案内長孔232Aを除く9個の端縁規制部材案内長孔232が同じ形状且つ接線方向に対して同じ傾斜で設けられていることにより、これら成形対象物載置部25の内部の方向及び外部の方向への移動中には、端縁規制部材27Aを除く9個の端縁規制部材27の間で回動中心との距離が等しい状態が維持される。端縁規制部材27Aは、その他の端縁規制部材27よりも回動中心との距離が近くなるように移動する。
【0036】
昇降フレーム22には、回動フレーム23を左回りに回動させる方向に付勢するトーションばね234が設けられている。これにより、端縁規制部材27は、成形対象物載置部25の内部の方向に付勢される。これらトーションばね234及び回動フレーム23は、上記付勢部材に該当する。なお、付勢部材はトーションばねには限定されず、回動フレーム23を左回りに回動させるエアシリンダやサーボモータ等を用いることもできる。
【0037】
回動フレーム23の外縁には切り欠き235が1箇所設けられている。また、昇降フレーム22の外縁には、ストッパ225が設けられている。ストッパ225はバネによって切り欠き235側に付勢されており、回動フレーム23を右回りに一杯回動させたときに切り欠き235に係合する位置に設けられている。前述のように回動フレーム23はトーションばね234によって左回りに回動させる(すなわち、端縁規制部材27を成形対象物載置部25の内部の方向に移動させる)方向に付勢されているが、切り欠き235にストッパ225を係合させることにより、回動フレーム23を右回りに一杯回動させた(すなわち、端縁規制部材27を成形対象物載置部25の外部の方向に移動させた)状態で停止させることができる。そして、係合させたストッパ225を切り欠き235から外すことにより、トーションばね234の作用により回動フレーム23が左回りに回動する。これらストッパ225及び切り欠き235は、付勢部材の作動をON/OFFする付勢部材制御部に該当する。ストッパ225の位置や向きは特に限定されない。
【0038】
非回動フレーム24及び成形対象物載置部25にはそれぞれ、昇降フレーム22の端縁規制部材案内凹部222に対応する位置に、該端縁規制部材案内凹部222と同じ平面形状を有する端縁規制部材通過孔242及び252が設けられている(図2(c))。
【0039】
昇降機構26は、ベースフレーム21の上面に設けられており、昇降フレーム22を上昇及び下降させる機構である。昇降フレーム22の上昇及び下降に伴って、昇降フレーム22の上に設けられた回動フレーム23、非回動フレーム24及び成形対象物載置部25も上昇及び下降する。
【0040】
端縁規制部材27は、図5に示すように、端縁規制部材本体271と、前述した円筒状の端縁規制部材収容部272と、弾性部材273を有する。端縁規制部材本体271は、端縁規制部材収容部272の円筒よりも径が小さい円柱状の部材である。弾性部材273は、端縁規制部材本体271の下端を支持し、端縁規制部材収容部272内の底部に設けられている。端縁規制部材本体271の上端が押圧されると、弾性部材273が圧縮され、該上端が下降する。この押圧が解除されると、弾性部材273が伸長し、該上端が元の位置に戻る。端縁規制部材本体271の上端がこの元の位置にあるとき、該上端は端縁規制部材通過孔252を通過して成形対象物載置部25の上面よりも上側まで突出している。一方、端縁規制部材収容部272の上端は、成形対象物載置部25の上面よりも下側に位置している。成形対象物載置部25と端縁規制部材27を合わせたものが、成形対象物保持部28を構成する。
【0041】
昇降フレーム22には、成形型15内において搬送装置20と上型151の横方向の位置を合わせるための、4個の板状の位置決め具2241~2244が設けられている。位置決め具2241~2244は、上型151の下方から搬送装置20を上昇させたときに、上型151の4つの側面にそれぞれ位置決め具2241~2244が1個ずつ当接するように配置されている。
【0042】
(2) 本実施形態の搬送装置及び樹脂成形装置の動作並びに本実施形態の樹脂成形品製造方法
次に、図6図8を用いて、搬送装置20及び樹脂成形装置10の動作、並びに本発明に係る樹脂成形品製造方法の実施形態を説明する。なお、図7及び図8では、図1の右方向から樹脂成形装置10を見た図を示した。
【0043】
まず、ベースフレーム21に設けられた凸状レール211と係合する樹脂成形装置10に設けられたレール16に沿って、搬送装置20を成形対象物の着脱位置に移動させる。
【0044】
次に、回動フレーム23を右回りに回動させ、ストッパ225を切り欠き235に係合させる。これにより、端縁規制部材27は成形対象物載置部25の外部側に移動する(図6(a-1), (a-2))。この状態で、円板状の成形対象物(半導体ウエハ)Sを、成形対象物載置部25の上面のうち9個の端縁規制部材27で囲まれた領域の内側に配置する。ここで、成形対象物Sの外縁には切り欠きSCが1箇所設けられており、この切り欠きSCの位置を端縁規制部材27Aの位置に合わせるようにする(図6(a-1))。この状態では、各端縁規制部材27(端縁規制部材27Aを含む)は成形対象物Sの外縁に当接していない。
【0045】
次に、ストッパ225を切り欠き235から外し、トーションばね234の作用により、回動フレーム23を左周りに回動する。これにより、10個の端縁規制部材27が連動して成形対象物載置部25の内部の方向に移動する。そして、端縁規制部材27の端縁規制部材本体271が成形対象物Sの外縁に当接することにより、回動フレーム23の回動が停止し(従って、回動フレーム23は必ずしも左周りに一杯に回動するとは限らない)、成形対象物Sが成形対象物載置部25に保持される(図6(b-1), (b-2))。このように、複数個の端縁規制部材27が連動して成形対象物載置部25の外縁に当接することにより、成形対象物Sは成形対象物載置部25の中央に保持され、成形対象物Sの位置ずれを抑えることができる。また、たとえ加工誤差等によって成形対象物Sの外郭寸法にばらつきが存在しても、端縁規制部材27が移動することによって成形対象物Sを保持することができ、取り付け位置のずれを抑えることができる。さらに、端縁規制部材27のうち切り欠きSCの位置に配置された端縁規制部材27Aは該切り欠きSCに係合し、これによって成形対象物Sの周方向の位置も所定通りとなり、成形対象物載置部25上での成形対象物Sの向きを定めることができる。以上で搬入時成形対象物保持工程が完了する。
【0046】
このようにして成形対象物Sを成形対象物載置部25に載置した後、レール16に沿って、成形対象物載置部25と上型151の成形対象物取付部1511の位置を合わせるように、搬送装置20を上型151と下型152の間に移動させる(図7(a))。
【0047】
この位置で、成形対象物載置部25を含む昇降フレーム22よりも上側の部分を昇降機構26により上昇させ、成形対象物載置部25に載置された成形対象物Sを成形対象物取付部1511に当接させる(図7(b))。その際、端縁規制部材本体271の上端は、成形対象物Sよりも前に成形対象物取付部1511に当接し、その後さらに昇降機構26により上昇すると弾性部材273が圧縮されることにより、成形対象物載置部25の上面との相対的な位置が下降する。そのため、成形対象物Sは、端縁規制部材27に妨げられることなく成形対象物取付部1511に当接させることができる。
【0048】
このように成形対象物Sが成形対象物取付部1511に当接した状態で、真空ポンプにより気体吸引孔1512から気体を吸引することにより、成形対象物は成形対象物取付部1511に取り付けられる。気体吸引孔1512からの気体の吸引は、後述する停止時まで継続する。そして、回動フレーム23を右回りに回動させて端縁規制部材27を成形対象物載置部25の外側の方向に移動させ、昇降機構26により成形対象物載置部25等を下降させた後、搬送装置20を成形型15の外に移動させる(図7(c))。以上で成形対象物搬入工程が完了する。
【0049】
次に、図示せぬ離型フィルム張設機構により、下型152のキャビティCの内面に離型フィルムFを張設したうえで、図示せぬ樹脂材料供給機構により、熱硬化性樹脂を含む樹脂材料PをキャビティC内に供給する(図7(d))。これら離型フィルム張設機構及び樹脂材料供給機構は、従来の樹脂成形装置で広く用いられているものであり、詳細な説明を省略する。樹脂材料Pは、ヒータ142から供給される熱によって、キャビティC内で溶融する。
【0050】
キャビティC内の樹脂材料Pが溶融したところで、トグルリンク113により可動プラテン121を上昇させる。これにより、可動プラテン121上の下型152が上型151に当接して該上型151を押し、上型151が固定プラテン122に固定されていることから、上型151と下型152が型締めされる(図7(e))。この状態で所定時間が経過すると、樹脂材料Pが硬化し、成形対象物Sの表面に樹脂がモールドされた樹脂成形品PSが得られる。以上で樹脂成形工程が完了する。
【0051】
その後、トグルリンク113によって可動プラテン121を下降させることにより、成形型15を型開きする(図7(f))。続いて、成形対象物載置部25と上型151の成形対象物取付部1511の位置を合わせるように、搬送装置20を上型151と下型152の間に搬送する(図8(a))。そして、回動フレーム23を右方向に回動させることで端縁規制部材27を成形対象物載置部25の外部側に移動させた状態(図6(a-1), (a-2))で、成形対象物載置部25等を昇降機構26により上昇させ、成形対象物載置部25の上面を樹脂成形品PSの下面に当接させる(図8(b))。次に、気体吸引孔1512からの気体の吸引を停止し、成形対象物載置部25等を昇降機構26により下降させる。
【0052】
さらに、回動フレーム23を左周りに回動させることにより、端縁規制部材27を成形対象物載置部25の内部側に移動させ(図6(b-1), (b-2))、樹脂成形品PSの外縁に当接させる。これにより、成形対象物Sの表面に樹脂がモールドされた樹脂成形品PSが成形対象物保持部28に保持されている状態となる。このとき、樹脂成形品PSが未だ十分に冷却されておらず、樹脂成形前の成形対象物Sよりも外郭寸法が大きくなっていることがあるが、そのような場合にも、端縁規制部材27が移動することによって樹脂成形品PSを保持することができる。同様に、成形対象物Sの外郭よりも外側にまで樹脂がモールドされたオーバーモールドの樹脂成形品PSも、端縁規制部材27が移動することによって保持することができる。以上で搬出時成形対象物保持工程が完了する。
【0053】
その後、搬送装置20を成形型15の外に移動させる(搬出工程)。そして、回動フレーム23を回動フレーム23を右方向に回動させることで端縁規制部材27を成形対象物載置部25の外部側に移動させた状態で、樹脂成形品PSを成形対象物載置部25から取り外すことにより、1個の樹脂成形品PSの製造が終了する。
【0054】
ここまでに述べた搬送装置20の動作、具体的には回動フレーム23の回動、レール16に沿った移動、及び昇降機構26による成形対象物載置部25等の昇降は、動力を用いて自動で行ってもよいし、作業者が手動で行ってもよい。
【0055】
(3) 本実施形態の搬送装置の変形例
図9図11を用いて、本実施形態の搬送装置の変形例を示す。これら変形例の搬送装置はいずれも、上記実施形態の樹脂成形装置10において搬送装置20の代わりに用いることができるものである。
【0056】
図9に、第1の変形例の搬送装置20Bの上面図を(a)に、縦断面図を(b)に、それぞれ示す。本変形例における搬送装置20Bは、回動フレーム及び非回動フレームは有さず、昇降フレーム22Bの上に直接、円形の成形対象物載置部25Bが設けられている。成形対象物載置部25Bには端縁規制部材収容孔252Bが9個設けられており、各端縁規制部材収容孔252Bに1つずつ、端縁規制部材27B及び端縁規制部材移動部275Bが設けられている。端縁規制部材27Bと端縁規制部材移動部275Bは連結棒276Bで連結されている。端縁規制部材移動部275Bは、端縁規制部材27Bを成形対象物載置部25Bの内部(中央)側及び外部側に移動させる。各端縁規制部材移動部275Bは連動して、成形対象物載置部25Bの中心と各端縁規制部材27Bの距離が等しくなるように、制御部(図示せず)により制御される。また、搬送装置20Bは、前述の搬送装置20に設けられているものと同様のベースフレーム21Bと、昇降フレーム22Bを昇降させる昇降機構26Bを有する。なお、この例では省略されているが、上記実施形態における端縁規制部材27Aと同様に、成形対象物の切れ込みに対応した位置に端縁規制部材及び端縁規制部材収容孔を設けてもよい。また、端縁規制部材移動部275Bは、エアシリンダやサーボモータ等であってもよい。
【0057】
搬送装置20Bの詳細な動作は、端縁規制部材27Bが端縁規制部材移動部275Bによって成形対象物載置部25Bの内部側及び外部側に移動する点を除いて、前述の搬送装置20と同様である。
【0058】
図10に、第2の変形例の搬送装置20Cにつき、成形対象物載置部25C及び端縁規制部材27Cの上面を示す。
【0059】
成形対象物載置部25Cは上面視で正方形の形状を有し、該正方形の4辺よりも内側にそれぞれ、端縁規制部材通過孔252Cが2個ずつ並んで、合計8個設けられている。各端縁規制部材通過孔252Cにはそれぞれ1個ずつ、端縁規制部材27Cが通過している。端縁規制部材27Cは、前述のものと同様の端縁規制部材本体、端縁規制部材収容部及び弾性部材から成る。端縁規制部材通過孔252Cは、端縁規制部材収容部272Cの直径よりも、前記正方形の中央から辺に向かって延び、それに垂直な方向にはほぼ同じ大きさを有するという平面形状を呈している。
【0060】
各端縁規制部材通過孔252Cにはそれぞれ、第1の変形例の端縁規制部材移動部275Bと同様の端縁規制部材移動部275Cが設けられている。
【0061】
第2の変形例の樹脂成形装置は、正方形の板状の成形対象物S’を成形対象物載置部25Cに載置したうえで、端縁規制部材27Cを成形対象物載置部25Cの内部の方向に移動させ、成形対象物S’の外縁を端縁規制部材27Cで保持した状態で、成形型への成形対象物S’の搬入及び成形型からの樹脂成形品の搬出を行う。搬送装置20Cの詳細な動作は、端縁規制部材27Cの動作が第1の変形例の搬送装置20Bと同様である点を除いて、前述の搬送装置20の動作と同様である。
【0062】
図11に、第3の変形例の搬送装置20Dの上面図を(a)に、縦断面図を(b)に、それぞれ示す。本変形例における搬送装置20Dは、昇降フレーム22Dの上に直接、円形の成形対象物載置部25Dが設けられている。昇降フレーム22Dの下には、前述の搬送装置20に設けられているものと同様のベースフレーム21Dと、昇降フレーム22Dを昇降させる昇降機構26Dが設けられている。成形対象物載置部25Dの上面には、可撓性のピンから成る端縁規制部材27Dが4個設けられている。端縁規制部材27Dは、円形の成形対象物Sよりもわずかに径が大きい円周上に等間隔(90°毎)に配置されている。各端縁規制部材27Dにはそれぞれ、昇降フレーム22に載置され成形対象物載置部25Dの外側に配置されたクランパ29が設けられている。クランパ29は、成形対象物載置部25Dの上面に平行な軸を中心に回動する棒状材であって、該上面への射影が成形対象物載置部25Dの中心を向くように配置されている。成形対象物載置部25Dの一端は、回動によって下降すると端縁規制部材27Dに接触し、端縁規制部材27Dを成形対象物載置部25Dの中心に向かって押し出すようになっている。
【0063】
第3の変形例における搬送装置20Dにより成形対象物Sを搬送する際には、成形対象物載置部25Dに円形の成形対象物Sを載置したうえで、クランパ29を回動させることにより、成形対象物載置部25Dの中心側のクランパ29の端部が降下し、可撓性のピンから成る端縁規制部材27Dを該中心側に向かって押し出す(図12)。これにより、成形対象物Sの端部に端縁規制部材27Dが押しつけられ、成形対象物Sが成形対象物載置部25Dに固定される。ここで、4個のクランパ29を同期させることにより、成形対象物Sを成形対象物載置部25Dの中央に配置することができる。
【0064】
本発明は上記実施形態及び変形例には限定されない。例えば、上記実施形態では圧縮成形装置を用いる場合を例として説明したが、圧縮成形装置の代わりに移送(トランスファー)成形装置を用いても、上記と同様の搬送装置20、20B、20C、20Dを備える構成を取ることができる。
【0065】
搬送装置20に設けられたストッパ225及び切り欠き235から成る付勢部材制御部の代わりに、以下のストッパ225A及び溝226Aを用いることができる。図13(a)に、ストッパ225A及び溝226Aを設けた搬送装置20につき、昇降フレーム22の上面の一部を拡大して示す。ストッパ225Aは回動フレーム23に取り付けられており、回動フレーム23の中心から外に向かう方向に延びるレバー2251Aと、レバー2251Aに接続されたローラ2252Aと、レバー2251Aを昇降フレーム22の中心の方向に付勢する弾性部材2253Aを有する。溝226Aは昇降フレーム22に設けられており、昇降フレーム22の中心の方向及びそれに垂直な方向にそれぞれ延びるようにL字状の形状を有している。ローラ2252Aは溝226Aに嵌められている。
【0066】
この構成において回動フレーム23を回動させると、それに伴ってレバー2251Aも回動する。そして、回動フレーム23を右回りに一杯回動させたとき、すなわち端縁規制部材27をいちばん外側まで移動させたとき、ローラ2252Aは、溝226Aのうち昇降フレーム22の中心の方向に延びる部分の、外側の端に達する。すると、レバー2251Aが弾性部材2253Aで付勢されていることにより、ローラ2252Aが溝226Aの当該部分に引き込まれる(図13(b))。そうすると、回動フレーム23の回動は、溝226Aの当該部分によって規制され、回動フレーム23が固定される。これにより、端縁規制部材27はいちばん外側の位置で固定される。そして、レバー2251Aを外側の方向に引くと、回動の規制が解除されたうえで、トーションばね234の作用によって回動フレーム23が左回りに回動し、端縁規制部材27が内側に移動して成形対象物Sの端縁を規制する。
【0067】
あるいは、図14(a)に示すように、軸の周りに回動可能なレバー2251Bを回動フレーム23に取り付け、レバー2251Bにフック2252Bを設け、昇降フレーム22に溝226Bを設けた付勢部材制御部を用いることもできる。この場合、回動フレーム23を右回りに一杯回動させたときに、レバー2251Bを軸の周りに回動させることによりフック2252Bを溝226Bに嵌め(図14(a))、それによって回動フレーム23の回動を規制する。
【0068】
また、上記実施形態では、1組の圧縮成形装置に対して搬送装置を1台設けた例を示したが、複数組の圧縮成形装置で1台の搬送装置を共用するようにしてもよい。成形型への成形対象物の取り付けと、成形型からの樹脂成形品の搬出の間には、樹脂成形を行うための時間を要するため、この樹脂成形を行うための時間を利用して、他の圧縮成形装置の成形型に成形対象物を取り付けたり、他の成形型から樹脂成形品を搬出することが可能である。これにより、搬送装置に要するコストを抑えることができる。
【0069】
複数組の圧縮成形装置で1台の搬送装置を共用する例として、以下に述べる図15に示す樹脂成形ユニット30が挙げられる。この樹脂成形ユニット30は、1台の材料受入モジュール31、複数台の成形モジュール32、及び1台の払出モジュール33を有する。材料受入モジュール31は、樹脂材料P及び成形対象物Sを外部から受け入れて成形モジュール32に送出するための装置であって、成形対象物受入部311と樹脂材料供給装置312を有する。1台の成形モジュール32は、上記実施形態の樹脂成形装置10のうち圧縮成形装置101を有する。図15には成形モジュール32が3台示されているが、樹脂成形ユニット30には成形モジュール32を任意の台数設けることができる。また、樹脂成形ユニット30を組み上げて使用を開始した後であっても、成形モジュール32を増減することができる。払出モジュール33は、成形モジュール32で製造された樹脂成形品PSを成形モジュール32から搬入して保持しておくものであって、樹脂成形品保持部331を有する。搬送装置20は、樹脂成形ユニット30内に設けられた搬送レール35に沿って、材料受入モジュール31内の成形対象物受入部311から成形モジュール32内の成形型の成形対象物取付部に成形対象物を搬入すると共に、成形モジュール32で成形された樹脂成形品を成形対象物取付部から払出モジュール33内の樹脂成形品保持部331に搬出する。その他、樹脂成形ユニット30には、樹脂材料Pを材料受入モジュール31内の樹脂材料供給装置312から成形モジュール32内の成形型のキャビティに搬送する樹脂材料搬送装置が設けられる。
【符号の説明】
【0070】
10…樹脂成形装置
101…圧縮成形装置
111…基盤
112…タイバー
113…トグルリンク
121…可動プラテン
122…固定プラテン
141…断熱材
142…ヒータ
15…成形型
151…上型(第1型)
1511…成形対象物取付部
1512…気体吸引孔
1513…気体吸引管
152…下型(第2型)
1521…周壁部材
1522…底面部材
1523…弾性部材
16…レール
20、20B、20C、20D…搬送装置(搬送機構)
21、21B、21D…ベースフレーム
211…凸状レール
22…昇降フレーム
221…軸体
222、222A…端縁規制部材案内凹部
2241、2242、2243、2244…位置決め具
225、225A…ストッパ
2251A、2251B…レバー
2252A…ローラ
2252B…フック
2253A…弾性部材
226A、226B…溝
22B、22D…昇降フレーム
23…回動フレーム
231…孔
232、232A…端縁規制部材案内長孔
24…非回動フレーム
242…端縁規制部材通過孔
25、25B、25C、25D…成形対象物載置部
252、252C…端縁規制部材通過孔
252B…端縁規制部材収容孔
26、26B、26D…昇降機構
27、27A、27B、27C、27D…端縁規制部材
271…端縁規制部材本体
272、272C…端縁規制部材収容部
273…弾性部材
275B、275C…端縁規制部材移動部
276B…連結棒
28…成形対象物保持部
29…クランパ
30…樹脂成形ユニット
31…材料受入モジュール
311…成形対象物受入部
312…樹脂材料供給装置
32…成形モジュール
33…払出モジュール
331…樹脂成形品保持部
35…搬送レール
C…キャビティ
F…離型フィルム
P…樹脂材料
PS…樹脂成形品
S…成形対象物
図1
図2
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