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特許7034741情報処理装置、自車位置算出システム及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】情報処理装置、自車位置算出システム及び車両
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20220307BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20220307BHJP
   G01S 19/45 20100101ALI20220307BHJP
【FI】
G01C21/28
G08G1/0969
G01S19/45
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018011383
(22)【出願日】2018-01-26
(65)【公開番号】P2019128309
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬脇 光二
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-066636(JP,A)
【文献】国際公開第2017/037753(WO,A1)
【文献】特開2007-232690(JP,A)
【文献】特開2012-155660(JP,A)
【文献】特開2010-151829(JP,A)
【文献】特開2011-164069(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/027803(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0016740(US,A1)
【文献】特開2015-094690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26 ~ 21/36
G08G 1/00 ~ 1/16
G01S 19/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位システムにより測定された、自車両の位置を示す第1の自車位置情報を取得する取得手段と、
前記自車両の周囲の地物を検出する地物検出センサにより地物が検出された場合に、該地物に対する前記自車両の距離及び角度を所定周期で取得し、保持部に格納する格納処理を行う格納手段と、
前記格納処理が行われた地物の位置を示す地物位置情報と、前記格納処理が終了する直前に前記保持部に格納された該地物に対する前記自車両の距離及び角度とに基づいて、前記自車両の位置を示す第2の自車位置情報を算出する算出手段と、
前記第2の自車位置情報に基づいて算出される、前記第1の自車位置情報を補正する際の補正量を、予め定められた前記地物位置情報の精度に応じて変更する変更手段と
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記補正量は、前記第1の自車位置情報と前記第2の自車位置情報との差分値に、所定の係数をかけることで算出されることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記変更手段は、前記第2の自車位置情報の算出精度に応じて、前記所定の係数を変更することで、前記補正量を変更することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
自車両の周囲の地物を検出する地物検出センサと、該地物検出センサに接続される情報処理装置とを有する自車位置算出システムであって、
前記情報処理装置は、
測位システムにより測定された、自車両の位置を示す第1の自車位置情報を取得する取得手段と、
前記地物検出センサにより地物が検出された場合に、該地物に対する前記自車両の距離及び角度を所定周期で取得し、保持部に保持する格納処理を行う格納手段と、
前記格納処理が行われた地物の位置を示す地物位置情報と、前記格納処理が終了する直前に前記保持部に格納された該地物に対する前記自車両の距離及び角度とに基づいて、前記自車両の位置を示す第2の自車位置情報を算出する算出手段と、
前記第2の自車位置情報に基づいて算出される、前記第1の自車位置情報を補正する際の補正量を、予め定められた前記地物位置情報の精度に応じて変更する変更手段と
を有することを特徴とする自車位置算出システム。
【請求項5】
請求項に記載の自車位置算出システムを搭載した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、自車位置算出システム及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に地物検出センサを搭載し、位置情報が既知の地物を検出することで得た当該地物と車両との位置関係(距離、角度)を用いて、自車位置情報を補正する自車位置算出システムが知られている。当該自車位置算出システムによれば、例えば、衛星測位システム等から取得した自車位置情報を補正して、より精度の高い自車位置情報を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-223847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記自車位置算出システムにおいては、地物の位置情報に誤差が含まれていたり、地物の検出精度が低かった場合に、補正により、かえって自車位置情報の精度が低下することが考えられる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、自車位置情報の精度低下を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、情報処理装置は以下のような構成を有する。すなわち、
測位システムにより測定された、自車両の位置を示す第1の自車位置情報を取得する取得手段と、
前記自車両の周囲の地物を検出する地物検出センサにより地物が検出された場合に、該地物に対する前記自車両の距離及び角度を所定周期で取得し、保持部に格納する格納処理を行う格納手段と、
前記格納処理が行われた地物の位置を示す地物位置情報と、前記格納処理が終了する直前に前記保持部に格納された該地物に対する前記自車両の距離及び角度とに基づいて、前記自車両の位置を示す第2の自車位置情報を算出する算出手段と、
前記第2の自車位置情報に基づいて算出される、前記第1の自車位置情報を補正する際の補正量を、予め定められた前記地物位置情報の精度に応じて変更する変更手段とを有する。
【発明の効果】
【0007】
自車位置情報の精度低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自車位置算出システムのシステム構成の一例を示す図である。
図2】地物検出センサの検出方向と検出範囲とを示す図である。
図3】情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】地物位置情報の一例を示す図である。
図5】自車位置算出部の機能構成の一例を示す図である。
図6】自車位置算出処理の際にデータ保持部に格納される保持データの一例を示す図である。
図7】自車位置算出処理における位置算出部の処理の具体例を示す図である。
図8】自車位置算出処理における精度判定部の処理の具体例を示す図である。
図9】補正用自車位置情報の算出精度が低下する例を示す図である。
図10】自車位置算出処理における位置補正部の処理の具体例を示す図である。
図11】自車位置情報の補正例を示す図である。
図12】自車位置算出処理の流れを示すフローチャートである。
図13】各係数における、差分値と補正量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0010】
[第1の実施形態]
<自車位置算出システムのシステム構成>
はじめに、自車位置算出システムのシステム構成について説明する。図1は、自車位置算出システムのシステム構成の一例を示す図である。図1に示すように、車両100に搭載される自車位置算出システム130は、地物検出センサ110と、情報処理装置120とを有する。
【0011】
地物検出センサ110は、撮像装置、レーザ装置、レーダ装置のうちのいずれか1つまたは複数を含み、車両100の周囲の地物を検出する。また、地物検出センサ110は、検出した地物と車両100との位置関係を示す情報(車両100から地物までの距離及び車両100から見た場合の地物の方向を示す角度)を計測し、距離データ及び角度データとして、情報処理装置120に送信する。
【0012】
情報処理装置120には、自車位置算出プログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、情報処理装置120は、自車位置算出部121として機能する。自車位置算出部121は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムにより測定された、車両100の"自車位置情報"(第1の自車位置情報)を取得する。
【0013】
また、自車位置算出部121は、地物位置情報格納部122に格納された、地物の位置を示す地物位置情報のうち、車両100の周囲のいずれか1の地物の地物位置情報を読み出す。自車位置算出部121は、読み出した当該地物位置情報と、距離データ及び角度データとに基づいて、自車位置情報を補正するための"補正用自車位置情報"(第2の自車位置情報)を算出する。
【0014】
更に、自車位置算出部121は、自車位置情報及び補正用自車位置情報と、補正用自車位置情報を算出した際の算出精度とに基づいて補正量を算出する。また、自車位置算出部121は、算出した補正量を用いて自車位置情報を補正し、補正後の自車位置情報を出力する。
【0015】
<地物検出センサの検出方向と検出範囲>
次に、地物検出センサ110の検出方向と検出範囲について説明する。図2は、地物検出センサの検出方向と検出範囲とを示す図である。このうち、図2(a)は、地物検出センサ110の検出方向及び検出範囲を、車両100の側面から見た様子を示している。図2(a)に示すように、地物検出センサ110は、車両100の前方を検出方向とし、YZ平面における領域210を検出範囲としている。
【0016】
また、図2(b)は、地物検出センサ110の検出方向及び検出範囲を、車両100の上面から見た様子を示している。図2(b)に示すように、地物検出センサ110は、XY平面における領域220を検出範囲としている。
【0017】
<情報処理装置のハードウェア構成>
次に、情報処理装置120のハードウェア構成について説明する。図3は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図3に示すように、情報処理装置120は、CPU(Central Processing Unit)301、ROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303を有する。また、情報処理装置120は、補助記憶装置304、接続装置305、受信装置306、補助センサ307を有する。なお、情報処理装置120の各部は、バス308を介して相互に接続されている。
【0018】
CPU301は、補助記憶装置304にインストールされている各種プログラム(例えば、自車位置算出プログラム等)を実行するデバイスである。ROM302は、不揮発性メモリであり、主記憶デバイスとして機能する。RAM303は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM303は、補助記憶装置304にインストールされている各種プログラムがCPU301によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0019】
補助記憶装置304は、各種プログラムや、各種プログラムがCPU301によって実行される際に用いられる情報等を格納する。上述した地物位置情報格納部122は、補助記憶装置304において実現される。
【0020】
接続装置305は、地物検出センサ110と接続され、地物検出センサ110より送信される距離データ及び角度データを受信する。受信装置306は、GNSSより車両100の現在の位置を示す自車位置情報を受信する。補助センサ307は、車両100の現在の状態を示す状態情報を測定するセンサである。補助センサ307には、加速度センサ、ジャイロセンサ、距離センサ等が含まれる。なお、受信装置306は、補助センサ307により測定される状態情報に応じた自車位置情報を出力するものとする。
【0021】
<地物位置情報の詳細>
次に、地物位置情報格納部122に格納される地物位置情報の詳細について説明する。図4は、地物位置情報の一例を示す図である。図4に示すように、地物位置情報400には、情報の項目として、"地物識別子"、"位置情報"、"精度レベル"が含まれる。
【0022】
"地物識別子"には、地物を識別するための識別子が格納される。"位置情報"には、地物識別子により識別される地物の緯度、経度、高度が格納される。"精度レベル"には、"位置情報"に格納された緯度、経度、高度の精度を示す情報が格納される。図4の例は、地物識別子="F1"により識別される地物が、(緯度1、経度1、高度1)の位置にあり、精度レベルが"ランクA"であること(精度が高いこと)を示している。
【0023】
<自車位置算出部の機能構成>
次に、自車位置算出部121の機能構成について説明する。図5は、自車位置算出部の機能構成の一例を示す図である。図5に示すように、自車位置算出部121は、距離及び角度データ取得部501、自車位置情報取得部502、位置算出部503、精度判定部504、位置補正部505、データ保持部510を有する。
【0024】
距離及び角度データ取得部501は、地物検出センサ110より送信される距離データ及び角度データを、所定周期で取得し、データ保持部510に格納する。自車位置情報取得部502は取得手段の一例であり、受信装置306より出力される自車位置情報を、所定周期で取得し、データ保持部510に格納する。
【0025】
位置算出部503は算出手段の一例である。位置算出部503は、地物位置情報格納部122に格納されている地物位置情報400を参照することで、現在、データ保持部510に対して、距離データ及び角度データの格納が行われている地物を特定する。また、位置算出部503は、データ保持部510を監視し、特定した地物について、データ保持部510に対する距離データ及び角度データの格納処理が終了したタイミングを判定する。なお、"特定した地物について、データ保持部510に対する距離データ及び角度データの格納処理が終了したタイミング"とは、地物検出センサ110が、当該地物を検出している状態から、検出していない状態へと移行したタイミングを指す。
【0026】
また、位置算出部503は、格納処理が終了したタイミングの直前のタイミングでデータ保持部510に格納された距離データ及び角度データを、データ保持部510より読み出す。"格納処理が終了したタイミングの直前のタイミングでデータ保持部510に格納された距離データ及び角度データ"は、地物検出センサ110が、当該地物に最も近付いた状態で検出された距離データ及び角度データであり、検出精度が高いからである。
【0027】
更に、位置算出部503は、地物位置情報格納部122に格納された地物位置情報400より読み出した当該地物の位置情報と、データ保持部510より読み出した距離データ及び角度データとに基づいて、補正用自車位置情報を算出する。
【0028】
精度判定部504は判定手段の一例である。精度判定部504は、位置算出部503により特定された地物についての精度レベルを、地物位置情報格納部122に格納された地物位置情報400より読み出す。また、精度判定部504は、格納処理が終了したタイミングの直前のタイミングでデータ保持部510に格納された距離データ及び角度データを、データ保持部510より読み出す。更に、精度判定部504は、読み出した精度レベル、距離データ及び角度データに基づいて、補正用自車位置情報の算出精度を判定する。
【0029】
位置補正部505は変更手段の一例である。位置補正部505は、格納処理が終了したタイミングの直前のタイミングでデータ保持部510に格納された自車位置情報を、データ保持部510より読み出し、補正用自車位置情報との差分値を算出する。また、位置補正部505は、算出した差分値に対して、精度判定部504において判定された算出精度に応じた係数をかけ合わせることで、補正量を算出する。更に、位置補正部505は、データ保持部510より読み出した自車位置情報を、算出した補正量を用いて補正し、補正後の自車位置情報を出力する。
【0030】
<自車位置算出処理の具体例>
次に、自車位置算出部121による自車位置算出処理の具体例について図6図11を用いて説明する。
【0031】
(1)保持データの具体例
図6は、自車位置算出処理の際にデータ保持部に格納される保持データの一例を示す図である。図6に示すように、データ保持部510に格納される保持データ600は、情報の項目として、"時刻"、"地物識別子"、"地物までの距離、角度"、"自車位置情報"が含まれる。"時刻"には、距離及び角度データ取得部501が距離データ及び角度データを取得したタイミング、及び、自車位置情報取得部502が自車位置情報を取得したタイミングが格納される。
【0032】
"地物識別子"には、現在、距離データ及び角度データの格納が行われている地物を識別するための識別子が、位置算出部503によって格納される。"地物までの距離、角度"には、距離及び角度データ取得部501により取得される距離データ及び角度データが格納される。"自車位置情報"には、自車位置情報取得部502により取得される自車位置情報が格納される。
【0033】
図6の例は、時刻="T1"のタイミングで、地物識別子="F2"の地物についての距離データ、角度データとして、"L1、θ1"が格納されるとともに、自車位置情報として、"緯度a、経度a、高度a"が格納されたことを示している。
【0034】
また、図6の例は、時刻="T2"のタイミングで、地物識別子="F2"の地物についての距離データ、角度データとして、"L2、θ2"が格納されるとともに、自車位置情報として、"緯度b、経度b、高度b"が格納されたことを示している。
【0035】
更に、図6の例は、時刻="T3"のタイミングで、地物識別子="F2"の地物についての距離データ及び角度データのデータ保持部510への格納処理が終了したことを示している。
【0036】
なお、保持データ600において、地物についての角度データは、本来、図2に示した座標軸のうち、Z軸周りの角度データと、X軸周りの角度データの両方が含まれるが、説明を簡略化するため、図6では、X軸周りの角度データのみを示している。また、以降の説明においても、X軸周りの角度のみを取り扱うこととする。
【0037】
(2)位置算出部の処理の具体例
次に、自車位置算出処理において、データ保持部510に保持データ600が格納された際の、位置算出部503の処理の具体例について説明する。図7は、自車位置算出処理における位置算出部の処理の具体例を示す図である。
【0038】
位置算出部503は、車両100の周囲の地物のうち、現在(時刻="T2")時点において、距離データ及び角度データの格納が行われている地物を特定する。続いて、位置算出部503は、地物位置情報格納部122に格納されている地物位置情報400より、特定した地物を識別する地物識別子("F2")を読み出す。続いて、位置算出部503は、読み出した地物識別子("F2")を、データ保持部510に格納する。
【0039】
具体的には、図7(a)に示すように、位置算出部503では、データ保持部510に現在(時刻="T2")時点で格納されている自車位置情報("緯度b、経度b、高度b")を読み出す。続いて、位置算出部503では、当該自車位置情報に近い位置情報について、地物位置情報400内を検索する。続いて、位置算出部503では、検索した位置情報に対応する地物(地物識別子="F2")を特定する。続いて、位置算出部503では、特定した地物の地物識別子("F2")を地物位置情報400より読み出し、データ保持部510に格納する。
【0040】
また、位置算出部503では、データ保持部510を監視し、"F2"の地物識別子により識別される地物について、距離データ及び角度データのデータ保持部510への格納処理が終了したタイミング(時刻="T3")を判定する。続いて、位置算出部503では、格納処理が終了したタイミング(時刻="T3")の直前のタイミング(時刻="T2")でデータ保持部510に格納された距離データ("L2")及び角度データ("θ2")を、データ保持部510より読み出す。
【0041】
また、位置算出部503では、図7(b)に示すように、地物の位置情報("緯度2、経度2、高度2")と、距離データ("L2")及び角度データ("θ2")とに基づいて、補正用自車位置情報("緯度B、経度B、高度B")を算出する。なお、位置算出部503では、算出した補正用自車位置情報("緯度B、経度B、高度B")を精度判定部504に通知する。
【0042】
(3)精度判定部の処理の具体例
次に、自車位置算出処理において、データ保持部510に保持データ600が格納された際の、精度判定部504の処理の具体例について説明する。図8は、自車位置算出処理における精度判定部の処理の具体例を示す図である。図8に示すように、精度判定部504では、位置算出部503より通知された補正用自車位置情報(緯度B、経度B、高度B)を、位置補正部505に通知する。
【0043】
また、図8に示すように、精度判定部504では、位置算出部503により特定された地物(地物識別子="F2")についての精度レベル("ランクC")を地物位置情報400より読み出す。続いて、精度判定部504では、格納処理が終了したタイミング(時刻="T3")の直前のタイミング(時刻="T2")でデータ保持部510に格納された距離データ("L2")及び角度データ("θ2")を、データ保持部510より読み出す。続いて、精度判定部504では、以下の判定条件について判定を行う。
・(判定条件1):読み出した精度レベル("ランクC")が所定の精度閾値(Th_r)未満であるか。
・(判定条件2):読み出した距離データ("L2")が所定の距離閾値(Th_L)より大きいか。
・(判定条件3):読み出した角度データ("θ2")が所定の角度閾値(Th_θ)より大きいか。
【0044】
判定の結果、いずれかの判定条件を満たすと判定した場合、精度判定部504は、補正用自車位置情報("緯度B、経度B、高度B")の算出精度が低いと判定し、係数αを"20%"に変更して位置補正部505に通知する。
【0045】
一方、いずれの判定条件も満たさないと判定した場合、精度判定部504は、補正用自車位置情報("緯度B、経度B、高度B")の算出精度が高いと判定し、係数αを"50%"に変更して位置補正部505に通知する。
【0046】
図9は、補正用自車位置情報の算出精度が低下する例を示す図である。このうち、図9(a)は、地物が、路面上のマーカの一例である停止線901であって、停止線901の位置情報についての精度レベルが所定の精度閾値未満であると判定された場合を示している。この場合、仮に地物検出センサ110が停止線901を精度よく検出し、距離データ及び角度データを正しく取得できたとしても、そもそも停止線901の位置情報についての精度レベルが低いため、補正用自車位置情報の算出精度は低下する。
【0047】
図9(b)は、地物が停止線902であって、停止線902の位置情報についての精度レベルは所定の精度閾値以上であると判定されたが、距離データが所定の角度閾値以上であると判定された場合を示している。一般に、地物検出センサ110の検出ポイントは離散的であるため、停止線902までの距離が長いと、停止線902を検出した際の検出精度が下がる。このため、当該距離データを用いて算出される補正用自車位置情報の算出精度が低下する。
【0048】
図9(c)は、地物が看板903であって、看板903の位置情報についての精度レベルは所定の精度閾値以上であると判定されたが、角度データが所定の角度閾値以上であると判定された場合を示している。角度データが大きい場合、看板903までの水平距離の誤差が大きくなる。このため、当該角度データを用いて算出される補正用自車位置情報の算出精度は低下する。
【0049】
(4)位置補正部の処理の具体例
次に、自車位置算出処理において、データ保持部510に保持データ600が保持された際の、位置補正部505の処理の具体例について説明する。図10は、自車位置算出処理における位置補正部の処理の具体例を示す図である。
【0050】
図10に示すように、位置補正部505では、精度判定部504より、算出精度("係数α")と、補正用自車位置情報("緯度B、経度B、高度B")とを取得する。また、図10に示すように、位置補正部505では、格納処理が終了したタイミング(時刻="T3")の直前のタイミング(時刻="T2")でデータ保持部510に格納された自車位置情報("緯度b、経度b、高度b")を、データ保持部510より読み出す。
【0051】
また、位置算出部503では、取得した補正用自車位置情報("緯度B、経度B、高度B")と、読み出した自車位置情報("緯度b、経度b、高度b")との差分値を算出する。また、位置算出部503では、算出した差分値に、取得した係数αをかけあわせることで、補正量を算出する。更に、位置算出部503では、読み出した自車位置情報("緯度b、経度b、高度b")を、算出した補正量を用いて補正することで、補正後の自車位置情報("緯度b'、経度b'、高度b'")を出力する。
【0052】
図11は、自車位置情報の補正例を示す図である。このうち、図11(a)は、補正用自車位置情報の算出精度が高いと判定された場合を示している。図11(a)において、車両1101は、自車位置情報が示す位置に配置した車両を示している。また、車両1102は、地物1121の位置情報と、距離データ及び角度データとに基づいて算出された、補正用自車位置情報が示す位置に配置した車両を示している。図11(a)に示すように、車両1101と車両1102との間の距離は、自車位置情報と補正用位置情報との差分値となる。
【0053】
ここで、図11(a)の場合、補正用自車位置情報の算出精度が高いと判定されているため、差分値に係数α="50%"がかけあわされることで、補正量が算出される。車両1103は、算出した補正量を用いて自車位置情報を補正した場合の補正後の自車位置情報が示す位置に配置した車両を示している。図11(a)に示すように、車両1103は、車両1101と車両1102との間の略中央位置に配置されることになる。このように、補正用自車位置情報の算出精度が高いと判定された場合、補正用自車位置情報が補正後の自車位置情報に及ぼす影響は大きくなる。
【0054】
一方、図11(b)は、補正用自車位置情報の算出精度が低いと判定された場合を示している。図11(b)において、車両1111は、自車位置情報が示す位置に配置した車両を示している。また、車両1112は、地物1122の位置情報と、距離データ及び角度データとに基づいて算出した、補正用自車位置情報が示す位置に配置した車両を示している。図11(b)に示すように、車両1111と車両1112との間の距離は、自車位置情報と補正用位置情報との差分値となる。
【0055】
ここで、図11(b)の場合、補正用自車位置情報の算出精度が低いと判定されているため、差分値に係数α="20%"がかけあわされることで、補正量が算出される。車両1113は、算出した補正量を用いて自車位置情報を補正した場合の補正後の自車位置情報が示す位置に配置した車両を示している。図11(b)に示すように、車両1113は、車両1111と車両1112との間において、車両1111寄りに配置されることになる。このように、補正用自車位置情報の算出精度が低いと判定された場合、補正用自車位置情報が補正後の自車位置情報に及ぼす影響は制限される。
【0056】
<自車位置算出処理の流れ>
次に、自車位置算出部121による自車位置算出処理の流れについて説明する。図10は、自車位置算出部による自車位置算出処理の流れを示すフローチャートである。ステップS1201において、距離及び角度データ取得部501は、地物検出センサ110より、地物に対する車両100の距離データ及び角度データを取得し、データ保持部510に格納する。ステップS1202において、自車位置情報取得部502は、受信装置306より自車位置情報を取得し、データ保持部510に格納する。
【0057】
ステップS1203において、位置算出部503は、処理対象の地物について、データ保持部510への距離データ及び角度データの格納処理が終了したか否かを判定する。ステップS1203において、終了していないと判定した場合には(ステップS1203においてNoの場合には)、ステップS1201に戻る。一方、ステップS1203において、終了したと判定した場合には(ステップS1203においてYesの場合には)、ステップS1204に進む。
【0058】
ステップS1204において、位置算出部503は、格納処理が終了したタイミングの直前のタイミングでデータ保持部510に格納された距離データ及び角度データを、データ保持部510より読み出す。
【0059】
ステップS1205において、位置算出部503は、格納処理が終了したタイミングの直前のタイミングでデータ保持部510に格納された自車位置情報を、データ保持部510より読み出す。
【0060】
ステップS1206において、位置算出部503は、処理対象の地物についての位置情報を読み出す。ステップS1207において位置算出部503は、読み出した地物の位置情報と、読み出した距離データ及び角度データとに基づいて、補正用自車位置情報を算出する。
【0061】
ステップS1208において、精度判定部504は、補正用自車位置情報の算出精度を判定し、判定結果に応じた係数αを特定する。ステップS1209において、位置補正部505は、読み出した自車位置情報と、算出した補正用自車位置情報との差分値に、係数αをかけあわせることで補正量を算出する。ステップS1210において、位置補正部505は、算出した補正量を用いて、読み出した自車位置情報を補正する。ステップS1211において、位置補正部505は、補正後の自車位置情報を出力する。
【0062】
ステップS1212において、距離及び角度データ取得部501は、自車位置算出処理を終了するか否かを判定する。ステップS1212において、自車位置算出処理を終了しないと判定した場合には(ステップS1212においてNoの場合には)、ステップS1201に戻る。一方、ステップS1212において、自車位置算出処理を終了すると判定した場合には(ステップS1212においてYesの場合には)、自車位置算出処理を終了する。
【0063】
<差分値と補正量との関係>
次に、補正用自車位置情報の算出精度に応じた各係数における、差分値と補正量との関係について説明する。図12は、各係数における、差分値と補正量との関係を示す図である。図13(a-1)、(a-2)において、横軸は車両100の走行距離([m])を表し、縦軸は自車位置情報と補正用自車位置情報との差分値([cm])または補正量([cm])を表している。
【0064】
このうち、図13(a-1)は、係数α="100%"とした場合を示している。図13(a-1)に示すように、係数αを100%とした場合、差分値に等しい補正量を用いて自車位置情報の補正が行われる。なお、この場合、補正後の自車位置情報が示す位置は、補正用自車位置情報が示す位置に等しくなる。
【0065】
一方、図13(a-2)は、係数α="50%"とした場合を示している。図13(a-2)に示すように、係数αを50%とした場合、差分値の半分の補正量を用いて自車位置情報の補正が行われる。なお、この場合、補正後の自車位置情報が示す位置は、自車位置情報が示す位置と補正用自車位置情報が示す位置との間の略中央位置となる。
【0066】
図13(b-1)、(b-2)において、横軸は車両100の走行距離([m])を表し、縦軸は地物位置情報の誤差([cm])または補正量([cm])を表している。このうち、図13(b-1)は、係数α="100%"とした場合を示している。係数αを100%とした場合、図13(b-1)に示すとおり、地物位置情報の誤差がそのまま補正量に反映されることとなる。このため、当該補正量を用いて自車位置情報を補正した場合、補正後の自車位置情報の精度が大きく低下することとなる。一方、図13(b-2)は、係数α="50%"とした場合を示している。係数αを50%とした場合、地物位置情報の誤差の半分が補正量に反映されることとなる。このため、当該補正量を用いて自車位置情報を補正した場合、補正後の自車位置情報の精度の低下が抑えられることとなる。
【0067】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、第1の実施形態に係る情報処理装置は、
・測位システムにより測定された、自車位置情報を取得する。
・自車両の周囲の地物の位置を示す地物位置情報を取得する。
・地物検出センサにより地物を検出することで得た、地物に対する自車両の距離データ及び角度データを取得する。
・地物位置情報と、距離データ及び角度データとに基づいて、自車両の位置を示す補正用自車位置情報を算出する。
・地物位置情報の精度レベルと、距離データと、角度データとを、それぞれの閾値と比較することで、補正用自車位置情報の算出精度を判定する。
・自車位置情報と補正用自車位置情報との差分値に、補正用自車位置情報の算出精度に応じた係数をかけ合わせることで、補正量を算出する。
・算出した補正量を用いて自車位置情報を補正する。
【0068】
これにより、第1の実施形態に係る情報処理装置によれば、補正用自車位置情報の算出精度が低いと判定された場合に、補正量を下げて補正することが可能となり、補正後の自車位置情報の精度低下を抑えることができる。また、第1の実施形態に係る情報処理装置によれば、補正用自車位置情報の算出精度が高いと判定された場合に、補正量を上げて補正することが可能となり、補正後の自車位置情報の精度を向上させることができる。
【0069】
[その他の実施形態]
上記第1の実施形態において、精度判定部504は、算出精度を判定する際の判定条件として、精度レベル、距離データ、角度データを参照するものとして説明した。しかしながら、算出精度を判定する際に参照するデータはこれらに限定されず、他のデータを参照してもよい。
【0070】
また、上記第1の実施形態において、精度判定部504は、いずれかの判定条件を満たすと判定した場合に、係数α=20%とし、いずれの判定条件も満たさないと判定した場合には、係数α=50%とするものとして説明した。しかしながら、判定条件に対する成否と、係数αとの関係はこれに限定されない。例えば、判定条件を1つ満たすごとに、係数αの値を下げていく構成としてもよい。
【0071】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0072】
100 :車両
110 :地物検出センサ
120 :情報処理装置
121 :自車位置算出部
130 :自車位置算出システム
400 :地物位置情報
501 :距離及び角度データ取得部
502 :自車位置情報取得部
503 :位置算出部
504 :精度判定部
505 :位置補正部
510 :データ保持部
600 :保持データ
図1
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