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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】マットセンサー
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/02 20060101AFI20220307BHJP
   H01H 13/16 20060101ALI20220307BHJP
   A61G 7/05 20060101ALN20220307BHJP
【FI】
H01H9/02 B
H01H13/16 B
A61G7/05
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018014706
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019133823
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390002668
【氏名又は名称】株式会社本田電子技研
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 達博
(72)【発明者】
【氏名】松田 卓也
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-188725(JP,A)
【文献】特開2017-223538(JP,A)
【文献】特開2011-253979(JP,A)
【文献】特開2000-124573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/00 - 9/28
H01H 13/00 - 13/88
H01H 89/00 - 89/10
A61G 7/00 - 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側の電極フィルムと下側の電極フィルムとを電気絶縁スペーサを挟んで積層してなるセンサー本体を備え、上記センサー本体の所定部分に上記各電極フィルムに検知信号出力用のリード配線が接続される配線接続部が設けられており、上記配線接続部の表裏両面に保護プレートが設けられているマットセンサーにおいて、
上記保護プレートは、上記配線接続部近傍の上記電極フィルムを覆う大きさの硬質材からなり、緩衝パッドを介して上記配線接続部に配置され、上記保護プレートの上記電極フィルムにかかる縁には、内側に入り込む凹溝が部分的に形成されていることを特徴とするマットセンサー。
【請求項2】
上記保護プレートの上記電極フィルムにかかる縁には少なくとも一対の凸部が所定の間隔をもって形成されており、上記凸部の間に上記凹溝が存在していることを特徴とする請求項1に記載のマットセンサー。
【請求項3】
上記保護プレートは、上記凹溝の他に上記リード配線引出用の凹溝を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のマットセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に置かれ、踏み圧によって物体(特には人)の存在を検知するマットセンサーに関し、さらに詳しく言えば、検知信号出力用のリード配線が接続される配線接続部を踏み圧から保護する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マットセンサーは、上下一対の電極フィルム(上側の電極フィルムと下側の電極フィルム)を電気絶縁性のスペーサを挟んで積層した面状のセンサーで、踏み圧(荷重)が掛けられることによる電極フィルム間の電気的変化(電極フィルムの導通や静電容量の変化)によって物体(特には人)の存在を検知する(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
多くの場合、マットセンサーは、病院や介護施設等においてベッドの脇に配置され、患者の離床を検知したり、自動ドアーの通路に配置され、人の出入りを検知する目的で使用される。
【0004】
マットセンサーには、検知信号出力用のリード配線が接続される配線接続部が設けられている。通常、リード配線は末端に圧着端子を有し、配線接続部においてその圧着端子が電極フィルムにリベット留めされる。
【0005】
配線接続部に踏み圧がかけられると、圧着端子が外れることがある。そこで、配線接続部を踏み圧から保護するため、配線接続部には硬質材からなる保護プレートが設けられるが、配線接続部への踏み圧が繰り返されると、次のような問題が生ずる。
【0006】
図7(a)に、マットセンサーが備える電極フィルムのうちの下側の電極フィルム11の配線接続部2を示す。電極フィルム11は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを基材とし、その片面にアルミニュウム箔を貼着してなり、所定部分(この例では角部)に検知信号出力用のリード配線61が接続される配線接続部2が設けられている。
【0007】
配線接続部2において、電極フィルム11の一部分が端子部111として舌片状に引き出されており、その端子部111にリード配線61の末端に設けられている圧着端子62がリベット71にて固着される。この配線接続部2を踏み圧から保護するため、配線接続部2に保護プレート31が被せられる。
【0008】
保護プレート31には、例えばエポキシガラス積層基板のコア基材が用いられる。図7(b)に示すように、保護プレート31は、軟質PVC製で裏面に両面粘着テープを有する緩衝パッド21を介して裏面側から配線接続部2にあてがわれる。
【0009】
図7(a)に一点鎖線で示すように、保護プレート31は、配線接続部近傍の電極フィルム11を覆う大きさの四角形の板である。配線接続部2が踏まれると、保護プレート31の縁(エッジ)311に沿って電極フィルム11に応力が集中する。
【0010】
これが繰り返されると、保護プレート31の縁311に沿って電極フィルム11に連続したクラックが発生し、最悪、そのクラックによって配線接続部2内の端子部111が電極フィルム11から切り離され、リード配線61と電極フィルム11の導通がとれなくなる、という断線事故に至る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2014-203772号公報
【文献】特開2016-97034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、検知信号出力用のリード配線が接続される配線接続部を踏み圧から保護する保護プレートを備えているマットセンサーにおいて、保護プレートによる配線接続部の断線事故を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、上側の電極フィルムと下側の電極フィルムとを電気絶縁スペーサを挟んで積層してなるセンサー本体を備え、上記センサー本体の所定部分に上記各電極フィルムに検知信号出力用のリード配線が接続される配線接続部が設けられており、上記配線接続部の表裏両面に保護プレートが設けられているマットセンサーにおいて、
上記保護プレートは、上記配線接続部近傍の上記電極フィルムを覆う大きさの硬質材からなり、緩衝パッドを介して上記配線接続部に配置され、上記保護プレートの上記電極フィルムにかかる縁には、内側に入り込む凹溝が部分的に形成されていることを特徴としている。
【0014】
本発明において、別の態様として、上記保護プレートの上記電極フィルムにかかる縁には少なくとも一対の凸部が所定の間隔をもって形成されており、上記凸部の間を上記凹溝としてもよい。
【0016】
また、上記保護プレートは、上記凹溝の他に上記リード配線引出用の凹溝を備えている態様も本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保護プレートの電極フィルムと接する縁に、内側に入り込む凹溝が部分的に形成されていることにより、踏み圧によって保護プレートの縁に沿ってクラックが発生したとしても、その発生箇所は凹溝の部分を除く非連続の鎖線状であり、凹溝の部分を介して電極フィルムとリード配線との導通が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るマットセンサーの要部である配線接続部を示す断面図。
図2】上記配線接続部を示す斜視図。
図3】上記配線接続部を示す分解斜視図。
図4】保護プレートを示す平面図。
図5】上記配線接続部に踏み圧が加えられた状態を示す断面図。
図6】(a)上記保護プレートによる効果を説明するための配線接続部の斜視図および(b)下側の電極フィルムのクラック発生状況を説明する部分断面図。
図7】(a)従来のマットセンサーにおける配線接続部を示す斜視図、(b)そのクラック発生状況を説明する部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図1ないし図6を参照して、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
図1ないし図3を参照して、この実施形態に係るマットセンサー1は、上下一対の電極フィルム、すなわち、上側の電極フィルム11aと下側の電極フィルム11bを電気絶縁性スペーサ12を挟んで積層してなるセンサー本体10を備えている。上側の電極フィルム11aと下側の電極フィルム11bを説明上区別する必要がない場合には、総称として電極フィルム11と言う。
【0021】
この実施形態において、電極フィルム11は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを基材とし、その片面にアルミニュウム箔を貼着した電極フィルムで、アルミニュウム箔の面が対向するように積層される。電極フィルム11は、対向する電極面を有することを条件として、他の構成であってもよい。
【0022】
この実施形態では、電気絶縁性スペーサ12には、多数の孔121を有するウレタンフォーム製のシートが用いられている。上側の電極フィルム11aと下側の電極フィルム11bとが孔121の部分で接触し導通したことで踏み圧を検知する。これとは別に、電気絶縁性スペーサ12を孔なしの絶縁シートとして静電容量の変化で踏み圧を検知するようにしてもよい。
【0023】
センサー本体10には、検知信号出力用のリード配線61(61a,61b)を電極フィルム11に接続するための配線接続部2が設けられている。この実施形態において、センサー本体10は矩形状で、配線接続部2はその角部に配置されているが、例えば辺の中央部に配置されてもよい。
【0024】
電極フィルム11のうち、電極としてのアルミニュウム箔の角は配線接続部2に沿ってL字状に切り欠かれているが、電極フィルム11の一部分が端子部111として配線接続部2内に舌片状に引き出されている。なお、基材としてのPETフィルムの角部は切り欠かれることなく残される。
【0025】
図2に示すように、上側の電極フィルム11aの端子部111aと下側の電極フィルム11bの端子部111bは重ならないように配置され、その各々に、リベット鋲止めとして、リード配線61a,61bの末端に設けられている圧着端子62a,62bがリベット71にて固着される。リベットではなく、例えばハンダにて接続してもよい。
【0026】
配線接続部2を踏み圧から保護するため、配線接続部2に保護プレート31が被せられる。保護プレート31には、配線接続部2の上側に配置される保護プレート31aと、配線接続部2の下側に配置される保護プレート31bの2枚が含まれる。
【0027】
保護プレート31(31a,31b)には、例えばエポキシガラス積層基板のコア基材のような硬質基板が用いられる。図示しないが、保護プレート31a,31bの裏面(配線接続部2側に向けられる面)には両面粘着テープが貼り付けられている。
【0028】
図3に示すように、上側の保護プレート31aは、軟質PVC製で裏面(配線接続部2側に向けられる面)に両面粘着テープを有する緩衝パッド21aを介して配線接続部2の上側に配置される。同様に、下側の保護プレート31bも、軟質PVC製で裏面(配線接続部2側に向けられる面)に両面粘着テープを有する緩衝パッド21bを介して配線接続部2の下側に配置される。
【0029】
上記のようにして、配線接続部2に保護プレート31を取り付けたのち、上側の保護プレート31aは保護カバー41aによって覆われ、同様に、下側の保護プレート31bも保護カバー41bによって覆われる。この実施形態において、保護カバー41(41a,41b)には、裏面に粘着材を有するアセテートクロステープが用いられている。
【0030】
最終的に、センサー本体10は、図1に示すように、袋状の外装カバー51内に収納され、例えば病院や介護施設等では離床センサーとしてベッド脇の床面に置かれ、また、自動ドア用途の場合には、建物の出入り口付近の床面に配置される。
【0031】
保護プレート31は、基本的に、配線接続部2近傍の電極フィルム11を覆う大きさを有する四角形状をしている。先にも説明したように、配線接続部2が踏まれると、保護プレート31の縁(エッジ)に沿って電極フィルム11に応力が集中する。
【0032】
これが繰り返されると、電極フィルム11にクラックが発生し、最悪の場合、保護プレート31の縁(エッジ)に沿って電極フィルムが切断し、断線事故として、リード配線61との導通が途切れてしまう。
【0033】
そこで、本発明では、電極フィルム11にクラックが発生したとしても、その発生箇所を部分的として、断線事故までには至らないようにしている。
【0034】
そのため、この実施形態では、図4に示すように、保護プレート31の縁311に内側に入り込む凹溝312を部分的に形成している。凹溝312の形状はU字状のほか、コ字状、V字状もしくは球根状等であってもよい。
【0035】
また、配線接続部2において、電極フィルム11はL字状に切りかかれているため、保護プレート31の4辺のうち、電極フィルム11にかかるのは、図4において、右辺31Rと下辺31Lの2辺である。
【0036】
したがって、右辺31Rと下辺31Lの2辺に凹溝312が設けられればよいのであるが、この実施形態では、リード配線61の引出用の溝として、上辺31Uにも凹溝312が設けられている。
【0037】
なお、この実施形態において、電極フィルム11にかかる右辺31Rと下辺31Lの2辺に、それぞれ、一辺につき凹溝312が2箇所に設けられているが、1箇所もしくは3箇所以上であってもよい。
【0038】
これによれば、図5に示すように、配線接続部2に対して踏み圧がかけられると、図6(b)に示すように、保護プレート31の縁311の部分においては、電極フィルム11に応力が集中してかけられてくの字状に折り曲げられるが、凹溝312の部分では、電極フィルム11は折り曲げられることなくほぼ平坦な状態に保たれる。
【0039】
したがって、配線接続部2に対して踏み圧が繰り返しかけられ、保護プレート31の縁311の部分で電極フィルム11にクラックが発生したとしても、凹溝312の部分までは広がらないため、端子部111と電極フィルム11の導通状態が保たれる。
【0040】
なお、上記実施形態では、保護プレート31の縁311に対して凹溝312を形成しているが、保護プレート31の縁311に凸部を例えば2つ形成してその間を凹溝としていもよい。要するに、保護プレート31の電極フィルム11にかかる一辺に、2つ以上凸部を形成して、それら凸部の間を凹溝とすればよい。
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、保護プレート31の電極フィルム11と接する縁311に、内側に入り込む凹溝312を部分的に形成したことにより、踏み圧によって保護プレート31の縁311に沿ってクラックが発生したとしても、その発生箇所は凹溝312の部分を除く非連続の鎖線状であり、凹溝312の部分を介して電極フィルム11とリード配線61との導通が確保され、信頼性の高いマットセンサーが得られる。
【符号の説明】
【0042】
1 マットセンサー
2 配線接続部
10 センサー本体
11(11a,11b) 電極フィルム
12 電気絶縁スペーサ
21(21a,21b) 緩衝パッド
31(31a,31b) 保護プレート
311 縁(凸部)
312 凹溝
41(41a,41b) 保護カバー
51 外装カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7