(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】減速機構及び減速機付モータ
(51)【国際特許分類】
F16H 57/039 20120101AFI20220307BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20220307BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20220307BHJP
F16D 41/10 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
F16H57/039
H02K7/116
F16H1/16 Z
F16D41/10
(21)【出願番号】P 2018074563
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】早田 聖基
(72)【発明者】
【氏名】杉山 友康
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-78457(JP,A)
【文献】特開2005-351468(JP,A)
【文献】特開2014-176283(JP,A)
【文献】実開昭58-193125(JP,U)
【文献】実開昭57-24312(JP,U)
【文献】特開2016-44796(JP,A)
【文献】特開2004-140931(JP,A)
【文献】特開昭56-97620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/039
H02K 7/116
F16H 1/16
F16D 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに一端が固定されているシャフトと、
前記シャフトに回転可能に支持され、外部動力の回転力により回転する少なくとも1つのギヤと、
前記シャフトの他端に締結され、前記ギヤの前記シャフトからの抜けを防止するナットと、
前記ナットに設けられ、前記シャフトの軸方向からみて円弧状の円筒外周面を少なくとも一部に有するアタッチメントと、
前記ケースに取り付けられるとともに、前記円筒外周面に嵌合され
る軸受ボスを有し、前記アタッチメント及び前記ナットを介して前記シャフトの他端を支持するカバーと、を備え
、
前記ケースに、
前記外部動力の回転力が入力されるウォーム軸と、
前記ウォーム軸に噛合されるウォームホイールと、
前記ウォームホイールと同軸上に配置され、前記ウォームホイールと一体となって回転可能な平歯車と、
前記平歯車に噛合され、外部機器に回転力を伝達する出力部と、
前記ウォームホイールからの回転を前記平歯車に伝達するとともに、前記平歯車からの回転が前記ウォームホイールに伝達されてしまうことを阻止するクラッチ機構と、
が収納されており、
前記ギヤは、前記ウォームホイール及び前記平歯車であり、
前記クラッチ機構は、
前記ウォームホイールに軸方向に貫通形成された複数の係合孔と、
前記平歯車に形成され前記係合孔に挿入される係合凸部と、
前記ウォームホイールの前記平歯車とは反対側の面に配置され、前記係合凸部の先端面と突き合わされる受入れ面を有するとともに、前記ケースと摺動可能、かつ前記ケースによって軸方向への移動が規制されたロックプレートと、
を備え、
前記先端面及び前記受入れ面のうち何れか一方は、周方向中央から周方向両端にかけて高さが減少する第1傾斜面を有し、前記先端面及び前記受入れ面のうちいずれか他方は、周方向中央から両端にかけて高さが増加する第2傾斜面を有し、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とが、前記ウォームホイールの周方向で互いに間隔を隔てている
ことを特徴とする減速機構。
【請求項2】
前記シャフトの前記ギヤと前記ナットとの間に挿通されたワッシャを備え、
前記シャフト及び前記ワッシャに、それぞれ相対回転不能とする嵌合部が設けられている
ことを特徴とする請求項1
に記載の減速機構。
【請求項3】
前記嵌合部は、
前記シャフト及び前記ワッシャのいずれか一方から突出された嵌合凸部と、
前記シャフト及び前記ワッシャのいずれか他方に形成され、前記嵌合凸部を受け入れる嵌合凹部と、
からなることを特徴とする請求項
2に記載の減速機構。
【請求項4】
請求項1
から請求項
3のいずれか1項に記載の減速機構と、
前記減速機構に連結されたモータと、
を備え、
前記モータは、前記外部動力である
ことを特徴とする減速機付モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機構及び減速機付モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
減速機構は、例えば複数のギヤ(歯車)により構成されており、例えばモータの回転力が入力され、モータの回転を減速して出力する。これにより、モータ自体の規定トルクよりも大きなトルクを得ることが可能になる。
ところで、この種の減速機構の中には、組立作業を容易化するために、一面が開口された箱状のケースに、モータと減速機構とを収納したものがある。また、このものは、ケースにシャフトを立設し、シャフトの先端から減速機構を構成するギヤを挿入するように構成されている。そして、ケースの一面側からモータと減速機構とを収納した後、一面の開口をカバーで閉塞する。このように、ケース内への部品の組付けを、全て一面側から行えるので、減速機構の組立作業を容易に行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の従来技術にあっては、ケースにシャフトが片持ち支持されているので、このシャフトに支持されているギヤに径方向の荷重がかかると、シャフトが傾いてしまう可能性があった。このような場合、シャフトに支持されているギヤと、このギヤに噛合されている他のギヤとの噛合わせが不十分になり、減速機構の動作が不安定になる可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は、組立作業を容易化しつつ、確実に動作不良を防止できる減速機構及び減速機付モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の減速機構は、ケースに一端が固定されているシャフトと、前記シャフトに回転可能に支持され、外部動力の回転力により回転する少なくとも1つのギヤと、前記シャフトの他端に締結され、前記ギヤの前記シャフトからの抜けを防止するナットと、前記ナットに設けられ、前記シャフトの軸方向からみて円弧状の円筒外周面を少なくとも一部に有するアタッチメントと、前記ケースに取り付けられるとともに、前記円筒外周面に嵌合される軸受ボスを有し、前記アタッチメント及び前記ナットを介して前記シャフトの他端を支持するカバーと、を備え、前記ケースに、前記外部動力の回転力が入力されるウォーム軸と、前記ウォーム軸に噛合されるウォームホイールと、前記ウォームホイールと同軸上に配置され、前記ウォームホイールと一体となって回転可能な平歯車と、前記平歯車に噛合され、外部機器に回転力を伝達する出力部と、前記ウォームホイールからの回転を前記平歯車に伝達するとともに、前記平歯車からの回転が前記ウォームホイールに伝達されてしまうことを阻止するクラッチ機構と、が収納されており、前記ギヤは、前記ウォームホイール及び前記平歯車であり、前記クラッチ機構は、前記ウォームホイールに軸方向に貫通形成された複数の係合孔と、前記平歯車に形成され前記係合孔に挿入される係合凸部と、前記ウォームホイールの前記平歯車とは反対側の面に配置され、前記係合凸部の先端面と突き合わされる受入れ面を有するとともに、前記ケースと摺動可能、かつ前記ケースによって軸方向への移動が規制されたロックプレートと、を備え、前記先端面及び前記受入れ面のうち何れか一方は、周方向中央から周方向両端にかけて高さが減少する第1傾斜面を有し、前記先端面及び前記受入れ面のうちいずれか他方は、周方向中央から両端にかけて高さが増加する第2傾斜面を有し、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とが、前記ウォームホイールの周方向で互いに間隔を隔てていることを特徴とする。
【0007】
このように構成することで、シャフトの他端側からギヤを組み付けてケース内にギヤを収納することができるので、減速機構の組立作業を容易化できる。
また、ケースとカバーとにより、シャフトを両持ち支持にできる。さらに、シャフトの他端にナットを締結することにより、シャフトからのギヤの抜けを確実に防止できる。そして、アタッチメントによりシャフトに締結されているナットの外周面を円筒外周面とすることにより、ギヤにかかる荷重の径方向の向きに関わらず、ギヤにかかる荷重をカバーで確実に受けることができる。このため、ギヤにかかる荷重によってシャフトが傾いてしまうことを防止できるので、シャフトに支持されているギヤと、他のギヤとの噛合わせを確実に維持できる。よって、減速機構の動作不良を確実に防止できる。
さらに、大きな減速比を得ることができる。また、外部機器から出力軸に荷重がかかり、この荷重が平歯車に伝達される場合であっても、カバーにより荷重を確実に受けることができる。このため、減速機構の動作不良を確実に防止できる。
また、クラッチ機構を設けることにより、外部機器からの荷重により、減速機構が逆転、換言すれば、ウォームホイールが逆転してしまうことを確実に防止できる。また、クラッチ機構が、係合孔、係合凸部、受入れ面、及びロックプレートにより構成されているので、係合凸部の先端面と受入れ面との突き合わせ状態により、ウォームホイールや平歯車の姿勢が不安定になりやすい。しかしながら、これらウォームホイールや平歯車を支持するシャフトが両持ち支持されているので、シャフトによって、ウォームホイールや平歯車を確実に支持できる。
【0012】
本発明の減速機構は、前記シャフトの前記ギヤと前記ナットとの間に挿通されたワッシャを備え、前記シャフト及び前記ワッシャに、それぞれ相対回転不能とする嵌合部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、ギヤとナットとが直接接触することがない。また、ギヤが回転した際に、ワッシャがギヤと共回りすることがない。このため、ギヤの回転がナットに伝達されることがなく、ギヤが回転することによってナットが緩んでしまうことを確実に防止できる。
【0014】
本発明の減速機構において、前記嵌合部は、前記シャフト及び前記ワッシャのいずれか一方から突出された嵌合凸部と、前記シャフト及び前記ワッシャのいずれか他方に形成され、前記嵌合凸部を受け入れる嵌合凹部と、からなることを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、簡素な構造でシャフトとワッシャとを相対回転不能とすることができる。
【0016】
本発明の減速機付モータは、上記に記載の減速機構と、前記減速機構に連結されたモータと、を備え、前記モータは、前記外部動力であることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、組立作業を容易化しつつ、確実に動作不良を防止できる減速機付モータを提供できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シャフトの他端側からギヤを組み付けてケース内にギヤを収納することができるので、減速機構の組立作業を容易化できる。
また、ケースとカバーとにより、シャフトを両持ち支持にできる。さらに、シャフトの他端にナットを締結することにより、シャフトからのギヤの抜けを確実に防止できる。そして、アタッチメントによりシャフトに締結されているナットの外周面を円筒外周面とすることにより、ギヤにかかる荷重の径方向の向きに関わらず、ギヤにかかる荷重をカバーで確実に受けることができる。このため、ギヤにかかる荷重によってシャフトが傾いてしまうことを防止できるので、シャフトに支持されているギヤと、他のギヤとの噛合わせを確実に維持できる。よって、減速機構の動作不良を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態における減速機付モータの外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態における減速機付モータの部品構成を示す斜視展開図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるウォームホイールの斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態におけるピニオンギヤの斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態におけるウォーム支軸に平ワッシャを挿入した状態を、ウォーム支軸の軸方向からみた平面図である。
【
図7】本発明の実施形態におけるロックプレートの斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態におけるクラッチ機構の作用説明であり、(a)~(c)は、クラッチ機構を状態別に図示したものである。
【
図9】本発明の実施形態の変形例におけるアタッチメントの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態に係る減速機付モータについて、図面を参照して説明をする。
【0021】
(減速機付モータ)
図1は、減速機付モータ1の外観を示す斜視図である。
図2は、減速機付モータ1の部品構成を示す展開斜視図である。
図1、
図2に示すように、減速機付モータ1は、例えば、車両のパワーウインドウ装置等に用いられるものである。減速機付モータ1は、モータ2と、モータ2に連結された減速機構3と、を備え、減速機構3にクラッチ機構4が内装されている。
【0022】
(モータ)
モータ2は、いわゆるブラシ付DCモータである。モータ2は、略有底筒状のヨーク5と、ヨーク5の径方向内側に回転自在に設けられたアーマチュア6と、を備えている。ヨーク5の筒部5aには、内周面に、複数の永久磁石40が周方向に並んで配置されている。ヨーク5は、開口部5bを減速機構3側に向けて配置されている。
アーマチュア6は、回転軸7と、回転軸7の永久磁石40に対応する位置に外嵌固定されているアーマチュアコア8と、回転軸7のアーマチュアコア8よりも減速機構3側に外嵌固定されているコンミテータ9と、を備えている。
【0023】
回転軸7の一端(
図2における右端)は、ヨーク5の底部に回転自在に支持されている。
アーマチュアコア8には、不図示のコイルが巻回されている。コイルの端末部がコンミテータ9に接続されている。コンミテータ9は、略円柱状に形成されている。コンミテータ9は、外周面に複数の導電性のセグメント9aが周方向に並んで配置されている。これらセグメント9aに不図示のコイルが接続される。
また、セグメント9aには、ブラシユニット10の不図示のブラシが摺接される。ブラシユニット10は、コネクタ部11を介して不図示の外部電源に電気的に接続されている。このため、ブラシユニット10の不図示のブラシ、及びセグメント9aを介し、不図示のコイルの電流が供給される。
【0024】
コネクタ部11は、不図示の外部電源とブラシユニット10とを電気的に接続するものである。コネクタ部11は、減速機構3の後述するモータ収容部16に収容されるフレーム部12と、フレーム部12の一側に一体的に設けられているコネクタ受部13と、を備えている。
コネクタ受部13には、外部電源から延びる不図示のコネクタが嵌着される。コネクタ受部13の不図示の端子が、ブラシユニット10と電気的に接続される。
【0025】
フレーム部12は、略長方形で額縁状に形成されている。フレーム部12の開口部12aは、ヨーク5の開口部5bに連通されている。また、フレーム部12の開口部12aは、コンミテータ9を挿通可能に形成されている。モータ2の回転軸7の他端は、フレーム部12の開口部12aを介して減速機構3側に突出しており、この減速機構3に連結されている。
【0026】
(減速機構)
(ケース)
図3は、
図1のA-A線に沿う断面図である。
図2、
図3に示すように、減速機構3は、一面に開口部14aを有する略箱状のケース14と、ケース14のモータ2側に一体成形され、ケース14の開口部14aと同じ向きで第1開口部16aを有するモータ収容部16と、ケース14の開口部14a、及びモータ収容部16の第1開口部16aを閉塞するカバー15と、ケース14内に収容された減速機部30と、ケース14内に収容されたクラッチ機構4と、を備えている。
【0027】
モータ収容部16には、モータ2が取り付けられるとともに、ブラシユニット10、及びコネクタ部11が収容される。モータ収容部16には、モータ2が取り付けられる側面にも第2開口部16bが形成されている。この第2開口部16bの外周縁に、ヨーク5の開口部5bの外周縁が当接される。そして、この当接された箇所で、モータ収容部16とヨーク5とが不図示のボルトによって締結固定される。
【0028】
また、モータ収容部16の第2開口部16bは、第1開口部16aと連通されている。そして、モータ収容部16の第1開口部16a側からコネクタ部11のフレーム部12を挿入し、このフレーム部12を第2開口部16bの内周縁に嵌合させることにより、モータ収容部16にコネクタ部11が収容される。さらに、モータ収容部16の第1開口部16aで、コネクタ部11よりもケース14側からブラシユニット10を挿入する。これにより、モータ収容部16のコネクタ部11よりもケース14側にブラシユニット10が収容される。
【0029】
ケース14は、モータ2の回転軸7の軸線上に沿って形成されたウォーム軸収容凹部17と、ウォーム軸収容凹部17を挟んで両側に配置されたウォームホイール収容凹部18、及びドライブギヤ収容凹部19と、ウォームホイール収容凹部18の底面18aに形成されたクラッチ収容凹部20と、を備えている。
ウォーム軸収容凹部17は、ケース14の側壁14bを貫通するように延出形成されている。ケース14の側壁14bには、ウォーム軸収容凹部17が貫通された箇所に、ケース14の開口部14aと同じ向きで開口された軸受収容凹部21a,21b(第1軸受収容凹部21a、第2軸受収容凹部21b)が形成されている。
【0030】
軸受収容凹部21a,21bのうち、モータ収容部16側の第1軸受収容凹部21aには、回転軸7の他端7bを回転自在に支持する軸受22aが圧入されて収容されている。一方、軸受収容凹部21a,21bのうち、モータ収容部16とは反対側の第2軸受収容凹部21bには、回転軸7と一体化された後述のウォーム軸31の端部31a(
図2における左端)を回転自在に支持する軸受22bが圧入されて収容されている。
【0031】
ドライブギヤ収容凹部19の底部19aには、後述のドライブギヤ35を回転自在に支持するためのドライブ支軸23が立設されている。
また、クラッチ収容凹部20の底部20aには、略円筒状の軸受部25が一体成形されている。この軸受部25に、後述のウォームホイール32を回転自在に支持するためのウォーム支軸24の基端が圧入される。
【0032】
ドライブ支軸23、及びウォーム支軸24は、これの軸方向が回転軸7、及びウォーム軸31の軸方向と直交している。ウォーム支軸24は、基端にフランジ部24aが形成されている。一方、ウォーム支軸24の先端には、雄ネジ部24bが刻設されている。また、ウォーム支軸24の雄ネジ部24bには、軸方向に沿ってキー溝26が形成されている。キー溝26は、雄ネジ部24bの軸方向全体に渡って形成されており、ウォーム支軸24の先端側もキー溝26が開口されている。これら雄ネジ部24b、及びキー溝26は、ウォーム支軸24に回転自在に支持される減速機部30やクラッチ機構4の抜けを防止するために使用される(詳細は後述する)。
【0033】
このような構成のもと、ウォーム支軸24は、先端をクラッチ収容凹部20の底部20aの外側(ケース14の底部14cの外側)から軸受部25に圧入される。クラッチ収容凹部20の底部20aにフランジ部24aを当接させることにより、ウォーム支軸24のクラッチ収容凹部20に対する位置決めが行われる。これにより、クラッチ収容凹部20の底部20aからウォーム支軸24が突出される。
【0034】
その他、ケース14の外側面には、ケース14を車体等に取り付けるための3つのボルト座27が周方向にほぼ等間隔で形成されている。各ボルト座27には、それぞれ不図示のボルトを挿通可能な挿通孔27aが形成されている。
また、ケース14の外側面には、複数の雌ネジ座81が形成されている。この雌ネジ座81は、ケース14にカバー15を締結固定するためのものである。
また、ケース14の開口部14aの内周縁には、カバー15が嵌め込まれる段差部29が形成されている。
【0035】
(減速機部)
減速機部30は、モータ2から突出された回転軸7と一体成形され、ウォーム軸収容凹部17に収容されるウォーム軸31と、ウォーム軸31に噛合され、ウォームホイール収容凹部18に収容されるウォームホイール32と、ウォームホイール32のクラッチ収容凹部20とは反対側の上部に配置されクラッチ機構4と一体化されたピニオンギヤ33と、ピニオンギヤ33に噛合されるスパーギヤ34と、スパーギヤ34と一体化されるドライブギヤ35と、を備えている。
【0036】
ウォーム軸31は、回転軸7と同軸上に延在されている。ウォーム軸31の回転軸7とは反対側の端部31aが、ケース14の軸受収容凹部21bに圧入された軸受22bに回転自在に支持されている。
【0037】
図4は、ウォームホイール32の斜視図である。
図2~
図4に示すように、ウォームホイール32は、略円板状に形成されている。ウォームホイール32の外周面には、ウォーム軸31に噛合される歯部32aが形成されている。ウォームホイール32の径方向中央には、ウォーム支軸24が挿通可能な挿通孔32bが形成されている。この挿通孔32bにウォーム支軸24を挿通することにより、ウォーム支軸24にウォームホイール32が回転自在に支持される。
【0038】
ウォームホイール32の外周部で、歯部32aよりも径方向内側には、ウォーム支軸24の軸方向の一面32c側に、ウォーム支軸24の軸方向からみて円環状の凸部36が一体成形されている。この凸部36がウォームホイール収容凹部18の底面18aに当接するように、ウォームホイール収容凹部18にウォームホイール32が位置決め収容される。ウォームホイール32は、凸部36がウォームホイール収容凹部18の底面18aに当接するだけなので、ウォームホイール収容凹部18に対するウォームホイール32の摺動抵抗を最小限に抑えることができる。
【0039】
また、ウォームホイール32には、挿通孔32bの周囲に、後述のピニオン凸部43が挿入可能な3つのピニオン係合孔37が周方向に等間隔で形成されている。ピニオン係合孔37は、径方向外側に向かって末広がりとなるように、ウォーム支軸24の軸方向からみて略扇状に形成されている。さらに、ウォームホイール32には、挿通孔32bの周囲で、かつ挿通孔32bの間に、それぞれ後述のロック凸部73が挿入可能な3つのロック係合孔38が周方向に等間隔で形成されている。ロック係合孔38は、径方向外側に向かって末広がりとなるように、ウォーム支軸24の軸方向からみて略扇状に形成されている。
また、ウォームホイール32の一面32cとは反対側の他面32dには、径方向中央の大部分に凹部32eが形成されている。この凹部32eにピニオンギヤ33の一部が収容される。
【0040】
図5は、ピニオンギヤ33の斜視図である。
図2、
図3、
図5に示すように、ピニオンギヤ33は、略円板状のベース部41とベース部41のウォームホイール32とは反対側にベース部41と同軸上に配置された略円柱状のピニオン本体42と、ベース部41のピニオン本体42とは反対側の面から突出する3つのピニオン凸部43と、が一体成形されたものである。
ピニオン本体42の外周面には、スパーギヤ34と噛合される歯部42aが形成されている。ベース部41、及びピニオン本体42の径方向中央には、ウォーム支軸24が挿通可能な挿通孔44が形成されている。挿通孔44にウォーム支軸24を挿通することにより、ウォーム支軸24にピニオンギヤ33が回転自在に支持される。
【0041】
3つのピニオン凸部43は、ウォームホイール32のピニオン係合孔37に対応するように、周方向に等間隔で形成されており、それぞれピニオン係合孔37に挿通される。
ピニオン凸部43は、ウォームホイール32が回転するとピニオン係合孔37と係合し、ウォームホイール32とピニオンギヤ33とが共回りする。各ピニオン凸部43の先端には、周方向中央から両端にかけて軸方向の高さが減少するように楔部45が一体成形されている。楔部45は、傾斜面45aを有している。
【0042】
ここで、ウォーム支軸24に回転自在に支持されているウォームホイール32及びピニオンギヤ33は、ウォーム支軸24の先端に刻設された雄ネジ部24bに締結されているナット46によって、ウォーム支軸24からの抜けが防止されている。ナット46は、いわゆる六角ナットである。ナット46の外周面には、略円筒状の金属又は樹脂からなる円筒形状のアタッチメント47が嵌合されている。
【0043】
アタッチメント47は、内周面47bがナット46の外周面に対応するように、ウォーム支軸24の軸方向からみて六角形状に形成されている。これにより、ナット46に、アタッチメント47が相対回転不能に嵌合される。アタッチメント47の外周面は、ウォーム支軸24の軸方向からみて円形の円筒外周面47aとされている。この円筒外周面47aは、カバー15に嵌合される(詳細は後述する)。
また、ウォーム支軸24には、ピニオン本体42とナット46との間に、平ワッシャ48が挿入されている。
【0044】
図6は、ウォーム支軸24に平ワッシャ48を挿入した状態を、ウォーム支軸24の軸方向からみた平面図である。
図2、
図3、
図6に示すように、平ワッシャ48は、略円環状に形成されている。平ワッシャ48の内周面には、ウォーム支軸24に形成されたキー溝26に挿入されるキー部49が径方向内側に向かって突出形成されている。キー溝26は、雄ネジ部24bの軸方向全体に渡って形成されており、ウォーム支軸24の先端側もキー溝26が開口されている。このため、平ワッシャ48にキー部49が突出形成されていても、ウォーム支軸24の先端側から平ワッシャ48を挿入可能である。ウォーム支軸24のキー溝26に平ワッシャ48のキー部49が挿入されることにより、ウォーム支軸24に対して平ワッシャ48が回転不能に挿入される。
【0045】
図2、
図3に示すように、ピニオン本体42の歯部42aに噛合されているスパーギヤ34は、略円環状に形成されている。スパーギヤ34は、ドライブギヤ収容凹部19に、ドライブ支軸23と同軸上に収容されている。
ここで、ドライブギヤ収容凹部19の深さは、ウォームホイール収容凹部18の深さと比較して浅く設定されている。具体的には、ドライブギヤ収容凹部19は、底部19aがピニオン本体42の歯部42aと径方向で並ぶように形成されている。このため、ドライブギヤ収容凹部19に収容されたスパーギヤ34は、一部がウォームホイール32の一部とウォーム支軸24の軸方向で重なる。また、ピニオンギヤ33の歯部42aに、スパーギヤ34の外周面に形成された歯部34aが噛合される。
【0046】
スパーギヤ34の内周面には、ドライブ支軸23の軸方向からみて略扇状の係合凹部51が周方向に等間隔で4つ形成されている。係合凹部51は、スパーギヤ34とドライブギヤ35とを相対回転不能に係合するためのものである。
【0047】
スパーギヤ34の内周面に、ドライブギヤ35が嵌合されている。すなわち、スパーギヤ34とドライブギヤ35は、ドライブギヤ収容凹部19の底部19a側が同一平面となるように、ドライブギヤ収容凹部19に収容されている。
ドライブギヤ35は、略円板状のベース部52と、ベース部52におけるドライブギヤ収容凹部19の底部19aとは反対側に配置されたドライブ本体53と、が一体成形されたものである。
【0048】
ベース部52は、ドライブギヤ収容凹部19の底部19a側に配置された大経部54と、ドライブ本体53側に配置され、大経部54よりも縮径形成された小径部55と、が一体成形されたものである。そして、大経部54が、スパーギヤ34に内嵌される。大経部54の一部も、ウォームホイール32の一部とウォーム支軸24の軸方向で重なる。
大経部54の外周面には、スパーギヤ34の係合凹部51に対応する位置に、これら係合凹部51に嵌る係合凸部54aが、径方向外側に向かって突出形成されている。係合凹部51に係合凸部54aが嵌ることにより、スパーギヤ34とドライブギヤ35とが相対回転不能に一体化される。これらスパーギヤ34とドライブギヤ35とにより、出力部50を構成している。
【0049】
ベース部52の小径部55には、外周面に略円筒状のシール壁56がドライブ本体53側に向かって突出形成されている。シール壁56は、ドライブギヤ35とカバー15との間のシール性を確保するためのものである(詳細は後述する)。
ドライブ本体53は、略円柱状に形成されている。ドライブ本体53、及びベース部41の径方向中央には、ドライブ支軸23が挿通可能な挿通孔58が形成されている。挿通孔58にドライブ支軸23を挿通することにより、ドライブ支軸23にドライブギヤ35が回転自在に支持される。
【0050】
ドライブ本体53の外周面には、歯部53aが形成されている。この歯部53aに、不図示の外部機器(例えば、車両用窓を開閉するウィンドウレギュレータ)が噛合され、減速機付モータ1の出力が不図示の外部機器に伝達される。
また、ドライブギヤ収容凹部19の底部19aには、ドライブギヤ35のベース部52に対応する位置に、ドライブ支軸23の軸方向からみて円環状の凸部57が一体成形されている。この凸部57に、ベース部52の大経部54が当接するように、ドライブギヤ収容凹部19に出力部50が収容される。出力部50は、ドライブギヤ収容凹部19の凸部57に大経部54が当接するだけなので、ドライブギヤ収容凹部19に対する出力部50の摺動抵抗を最小限に抑えることができる。
【0051】
このように構成された減速機部30は、ドライブ本体53を除き、ケース14に装着されるカバー15によって覆われる。
【0052】
(カバー)
カバー15は、樹脂材料により略板状に形成されている。カバー15は、ケース14の開口部14aを閉塞するカバー本体61と、モータ収容部16の第1開口部16aを閉塞するモータ側カバー62と、が一体成形されている。
カバー15の外周部には、ケース14の雌ネジ座81に対応する位置に、取付座82が形成されている。取付座82には、ボルト80を挿通可能な挿通孔82aが形成されている。この挿通孔82aにケース14とは反対側からボルト80が挿入され、このボルト80がケース14に螺入される。これにより、ケース14にカバー15が締結固定される。
【0053】
モータ側カバー62は、モータ収容部16側が開口するように断面略C字状に形成されている。モータ側カバー62は、カバー15からケース14とは反対側に向かって突出するように形成されている。モータ側カバー62の側壁62aとカバー本体61との間には、これら側壁62aとカバー本体61とに跨る複数(本実施形態では3つ)のリブ66が一体成形されている。リブ66は、カバー15の機械的強度を高め、振動抑制(共振回避)するためのものである。
【0054】
カバー本体61には、ウォームホイール収容凹部18に立設されたウォーム支軸24に対応する位置に、ケース14とは反対側に向かって突出する軸受ボス65が一体成形されている。軸受ボス65は、ケース14側が開口するように略有底円筒状に形成されている。軸受ボス65の内周面には、ウォーム支軸24の先端に設けられたアタッチメント47の円筒外周面47aが嵌合される。これにより、カバー本体61にウォーム支軸24の先端が支持される。
【0055】
また、カバー本体61には、ドライブギヤ35のドライブ本体53、及びシール壁56を挿通可能な開口部67が形成されている。この開口部67を介し、ベース部52の一部、及びドライブ本体53が外部に露出される。
さらに、カバー本体61には、開口部67の周縁に、この開口部67とシール壁56との間をシールするためのシール部68が設けられている。シール部68は、例えばゴム等により形成されている。
【0056】
この他、カバー本体61には、ケース14の各軸受収容凹部21a,21bに対応する位置に、これら軸受収容凹部21a,21bに収容された各軸受22a,22bを上から押さえつける不図示の軸受押さえが一体成形されている。この軸受押さえによって、各軸受収容凹部21a,21bに収容された各軸受22a,22bが軸受収容凹部21a,21bから脱落してしまうことを防止できる。
【0057】
(クラッチ機構)
ケース14内に収容されたクラッチ機構4は、ピニオンギヤ33のピニオン凸部43と、ウォームホイール32のピニオン係合孔37及びロック係合孔38と、ケース14のクラッチ収容凹部20と、ロックプレート70と、により構成されている。ピニオンギヤ33とウォームホイール32との間には、ウォームホイール32がウォームギヤ(図示せず)反力により浮いてくるのを防止するために平ワッシャ76が設けられている。クラッチ収容凹部20は、ウォーム支軸24の軸方向からみて略円形状に形成されている。また、クラッチ収容凹部20は、内周面20bの直径がウォームホイール32に形成されているピニオン係合孔37及びロック係合孔38の外周の直径とほぼ同等になるように形成されている。クラッチ収容凹部20の内周面20bには、底部20aからウォームホイール32側に向かうに従って徐々に拡径するように傾斜面(テーパ面)20cが形成されている。このように形成されたクラッチ収容凹部20に、ロックプレート70が収容されている。
【0058】
図7は、ロックプレート70の斜視図である。
図3、
図7に示すように、ロックプレート70は、略円板状に形成されたプレート本体71を有している。プレート本体71の外径は、クラッチ収容凹部20の直径よりもやや小さく設定されている。また、プレート本体71の外周面には、クラッチ収容凹部20の傾斜面20cに対応するように、クラッチ収容凹部20の底部20aに向かうに従って先細りとなるように傾斜面(テーパ面)71aが形成されている。これらクラッチ収容凹部20の傾斜面20cとプレート本体71の傾斜面71aとが摺動される。
【0059】
プレート本体71の径方向略中央には、ウォーム支軸24を挿通可能な挿通孔72が形成されている。
プレート本体71のウォームホイール32側の一面71bには、ウォームホイール32のロック係合孔38に対応する位置に、ロック係合孔38に挿入可能な3つのロック凸部73が突出形成されている。ロック凸部73は、ロック係合孔38の形状に対応するように形成されている。すなわち、ロック凸部73は、径方向外側に向かって末広がりとなるように、ウォーム支軸24の軸方向からみて略扇状に形成されている。ロック凸部73の周方向の幅は、ロック係合孔38の周方向の幅よりも小さく設定されている。ロック凸部73は、ウォームホイール32が回転するとロック係合孔38と係合し、ウォームホイール32とロックプレート70とが共回りする。
【0060】
また、プレート本体71の一面71bには、ウォームホイール32のピニオン係合孔37に対応する位置に、3つのロック凹部74が形成されている。ロック凹部74は、ピニオン係合孔37に対応するように形成されている。すなわち、ロック凹部74は、径方向外側に向かって末広がりとなるように、ウォーム支軸24の軸方向からみて略扇状に形成されている。ロック凹部74は、ウォームホイール32のピニオン係合孔37に挿入されたピニオン凸部43の先端(楔部45)にウォーム支軸24の軸方向で突き当たる。
【0061】
すなわち、ロック凹部74は、ピニオン凸部43の楔部45を受け入れ可能なように、周方向中央から周方向両端にかけてウォーム支軸24の軸方向の高さが増加するように楔状に形成された傾斜面74aを有している。
【0062】
また、ロック凹部74の周方向中央には、ロックプレート70の厚さ方向に貫通する貫通孔75が形成されている。この貫通孔75は、ピニオン凸部43の楔部45における先端の稜線部とロック凹部74との干渉を回避するための逃げ部として機能する。
このような構成のもと、ケース14内に減速機構3及びクラッチ機構4を収納した状態では、ピニオン凸部43における楔部45の傾斜面45aとロックプレート70におけるロック凹部74の傾斜面74aとの間に、周方向に微小なクリアランスが形成される。
【0063】
このため、ピニオンギヤ33、又はロックプレート70の何れか一方のみが回転した場合、ピニオン凸部43の楔部45とロックプレート70のロック凹部74とが当接される。
ここで、ウォームホイール32のピニオン係合孔37、ロック係合孔38、ピニオンギヤ33のピニオン凸部43、ロックプレート70のロック凸部73、及びロック凹部74の各々の形成位置、及び周方向の幅は、以下のように設定されている。
【0064】
すなわち、ピニオンギヤ33よりもウォームホイール32が先に回転した場合、ピニオン係合孔37の周方向側面37aとピニオン凸部43の周方向側面43a(いずれも
図8参照)とが当接されるタイミングと、ロック係合孔38の周方向側面とロック凸部73の周方向側面(いずれも符号なし)とが当接されるタイミングと、がほぼ同時になる。これに対し、ウォームホイール32よりもピニオンギヤ33が先に回転した場合、ピニオン係合孔37の周方向側面37aとピニオン凸部43の周方向側面43aとが当接されるよりも先に、ピニオン凸部43の傾斜面45aとロック凹部74の傾斜面74aとが当接される。これによって、外力等により、減速機付モータ1が逆転してしまうことを防止できる。以下、これについて、図面を参照しながら詳述する。
【0065】
(減速機付モータの動作、及びクラッチ機構の作用)
図8に基づいて、減速機付モータ1の動作、及びクラッチ機構4の作用について説明する。
図8は、クラッチ機構4の作用説明であり、(a)~(c)は、クラッチ機構4を状態別に図示したものである。なお、以下の説明において、減速機付モータ1を、車両に搭載されているパワーウインドウ装置に用いた場合について説明する。また、以下の説明では、ウォームホイール32のロック係合孔38とロックプレート70のロック凸部73との係合状態については、図示を省略する。
【0066】
まず、モータ2のブラシユニット10の不図示のブラシ、及びセグメント9aを介し、不図示のコイルの電流が供給されると、アーマチュアコア8に所定の磁界が発生する。この磁界とヨーク5に設けられた永久磁石40との間で、磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、アーマチュア6が回転する。アーマチュア6が回転すると、アーマチュア6の回転軸7と一体化されているウォーム軸31が回転する。ウォーム軸31が回転すると、このウォーム軸31に噛合されているウォームホイール32が回転する。
【0067】
ここで、
図8(a)に示すように、減速機付モータ1のモータ2を停止させた状態では、ウォームホイール32のピニオン係合孔37に対し、ピニオン凸部43がフリーな状態になっている。また、ウォームホイール32のロック係合孔38に対し、ロックプレート70のロック凸部73がフリーな状態になっている。
【0068】
この状態から、
図8(b)に示すように、モータ2を駆動させると、ウォームホイール32が回転する。すると、ピニオン係合孔37の周方向側面37aとピニオン凸部43の周方向側面43aとが当接される。これと同時に、ロック係合孔38の周方向側面とロック凸部73の周方向側面とが当接される。そして、このままの状態で、ウォームホイール32、ピニオンギヤ33、及びロックプレート70が共回りする。
ピニオンギヤ33が回転すると、これに噛合されているスパーギヤ34、及びスパーギヤ34と一体化されているドライブギヤ35(以下、総称して出力部50という場合がある)が回転する。すると、出力部50のドライブ本体53に噛合されているパワーウインドウ装置(不図示)に減速機付モータ1の回転が出力される。これによってパワーウインドウ装置が駆動し、車両のウインドガラスの開閉動作が行われる。
【0069】
一方、ウインドガラスの自重や車両走行時の振動等の外力によりウインドガラスが開こうとすると、パワーウインドウ装置を介して出力部50に回転力が作用する。
【0070】
図8(c)に示すように、モータ2が停止状態であって、かつ出力部50に回転力が作用すると、ウォームホイール32、及びロックプレート70は停止したままの状態で出力部50に噛合されるピニオンギヤ33のみが回転し始める。すると、ロックプレート70が停止したままであるので、ピニオンギヤ33に設けられているピニオン凸部43の楔部45における傾斜面45aと、ロックプレート70に設けられているロック凹部74における傾斜面74aとが当接される。
【0071】
ピニオンギヤ33は、ロック凹部74の傾斜面74aに楔部45の傾斜面45aが当接された後、さらに回転しようとする。ここで、楔部45の傾斜面45aが周方向中央から両端にかけて軸方向の高さが減少するように形成されているとともに、ロック凹部74の傾斜面74aがこれを受入れ可能なように周方向中央から周方向両端にかけて軸方向の高さが増加するように楔状に形成されている。このため、ロックプレート70に、ケース14に形成されているクラッチ収容凹部20の底部20a側に向かう力が作用する。すると、ロックプレート70の傾斜面71aがクラッチ収容凹部20の傾斜面20cを押圧する。これにより、ロックプレート70とクラッチ収容凹部20との間の摩擦力がピニオンギヤ33の回転力よりも大きくなる。これによって、ピニオンギヤ33、及びウォームホイール32の回転が阻止される。
【0072】
(減速機付モータの組立方法)
次に、減速機付モータ1の組立方法について説明する。
まず、回転軸7に、アーマチュアコア8及びコンミテータ9を組み付けてアーマチュア6を完成させておくとともに、回転軸7と一体化されたウォーム軸31に、軸受22a,22bを組み付けておく。また、ケース14のクラッチ収容凹部20の底部20aに、ウォーム支軸24を組み付けておく。さらに、ドライブギヤ35にスパーギヤ34を組み付けておく。
【0073】
次いで、ケース14の各軸受収容凹部21a,21bにウォーム軸31に組付けられた軸受22a,22bを圧入するように、ケース14の開口部14a側からウォーム軸31を組み付け、ケース14にアーマチュア6及びウォーム軸31を組み付ける。
次いで、ケース14のモータ収容部16に、第1開口部16a側からブラシユニット10及びコネクタ部11を組み付ける。この際、コネクタ部11は、フレーム部12の開口部12aにアーマチュア6を予め挿入しておく。
【0074】
次いで、モータ収容部16の第2開口部16bに、ヨーク5を組み付ける。
次いで、ウォーム支軸24に、先端側から(ケース14の開口部14a側から)ロックプレート70、平ワッシャ76、ウォームホイール32、ピニオンギヤ33、及び平ワッシャ48を、この順で挿入する。その後、ウォーム支軸24の先端に刻設されている雄ネジ部24bに、ナット46を締結する。さらに、ナット46にアタッチメント47を組み付ける。これにより、ケース14のクラッチ収容凹部20にロックプレート70が収容されるとともに、ウォームホイール収容凹部18にウォームホイール32及びピニオンギヤ33が収容される。
【0075】
次いで、ケース14のドライブギヤ収容凹部19に立設されているドライブ支軸23に、ドライブ支軸23の先端側から(ケース14の開口部14a側から)出力部50を挿入する。
次いで、ケース14の開口部14a及びモータ収容部16の第1開口部16aを閉塞するように、これら開口部14a,16aの上からカバー15を組み付ける。この際、ウォーム支軸24の先端に取り付けられているアタッチメント47の円筒外周面47aに、カバー15に形成されている軸受ボス65を外嵌させる。そして、ケース14の雌ネジ座81にカバー15の取付座82の上からボルト80(
図1参照)を締結固定する。これにより、ケース14へのカバー15の組み付けが完了する。カバー15を組み付けることにより、出力部50のドライブ支軸23からの抜けが規制される。
【0076】
(アタッチメント、及び平ワッシャの作用)
次に、ウォームホイール32、ピニオンギヤ33、及びロックプレート70が回転自在に支持されているウォーム支軸24の先端に設けられているアタッチメント47、及び平ワッシャ48の作用について説明する。
減速機付モータ1を駆動すると、ピニオンギヤ33のピニオン本体42と出力部50のスパーギヤ34との噛合わせ反力により、ウォーム支軸24の先端側にラジアル荷重がかかる。ここで、ウォーム支軸24の基端は、ケース14の軸受部25に支持されている。一方、ウォーム支軸24の先端側にはナット46が締結されており、このナット46がアタッチメント47を介してカバー15の軸受ボス65に嵌合されて支持されている。すなわち、ウォーム支軸24は、いわゆる両持ち支持されている。このため、ウォーム支軸24にラジアル荷重がかかった場合であっても、ウォーム支軸24が傾いてしまうことが防止される。
【0077】
また、ケース14の軸受ボス65は、略有底円筒状に形成されている。さらに、この軸受ボス65に支持されているアタッチメント47の外周面は、円筒外周面47aとされている。このため、アタッチメント47にかかるラジアル荷重の方向にかかわらず、ケース14の軸受ボス65が面で受けることになるので、ウォーム支軸24の先端側にかかる荷重を、カバー15によって確実に受ける。
【0078】
また、ピニオンギヤ33とナット46との間には、平ワッシャ48が配置されている。平ワッシャ48は、キー部49がウォーム支軸24に形成されたキー溝26に挿入されて相対回転不能になっている。
ここで、例えば、従来の平ワッシャのように、ウォーム支軸24に対して回転可能に平ワッシャ48が設けられていたり、ピニオンギヤ33に直接当接するようにナット46が設けられていたりする場合、ピニオンギヤ33の回転がナット46に伝わり、ナット46が緩む可能性がある。しかしながら、ウォーム支軸24に対して回転不能に平ワッシャ48が設けられることにより、ピニオンギヤ33が回転しても平ワッシャ48が共回りすることがないので、ナット46が緩んでしまうことが防止される。
【0079】
このように、上述の実施形態では、同じ向きに形成されているケース14の開口部14a、及びモータ収容部16の第1開口部16a側からヨーク5を除いた全ての部品を組み付けることができる。このため、減速機付モータ1の組付け作業性を容易化できる。
組付け作業性を容易化するために、ケース14におけるクラッチ収容凹部20の底部20aにウォーム支軸24が立設されている。ウォーム支軸24には、ウォームホイール32、ピニオンギヤ33、及びロックプレート70が回転自在に支持されている。また、ウォーム支軸24の先端側には、このウォーム支軸24からのウォームホイール32、ピニオンギヤ33、及びロックプレート70の抜けを防止するためのナット46が締結されている。ナット46によって、ウォーム支軸24の先端から組み付けたウォームホイール32、ピニオンギヤ33、及びロックプレート70のウォーム支軸24からの抜けを防止できる。
【0080】
ここで、ナット46は、アタッチメント47を介してカバー15の軸受ボス65に嵌合されて支持されている。このため、ケース14とカバー15とにより、ウォーム支軸24を両持ち支持にできる。さらに、アタッチメント47の円筒外周面47aによりピニオンギヤ33にかかる荷重の径方向の向きに関わらず、ピニオンギヤ33にかかる荷重(ウォーム支軸24にかかる荷重)をカバー15で確実に受けることができる。このため、ピニオンギヤ33にかかる荷重によってウォーム支軸24が傾いてしまうことを防止できるので、ウォーム支軸24に支持されているピニオンギヤ33と、スパーギヤ34との噛合わせを確実に維持できる。よって、減速機構3の動作不良を確実に防止できる。
【0081】
また、減速機構3は、回転軸7に一体化されたウォーム軸31と、ウォーム軸31に噛合されるウォームホイール32と、ウォームホイール32と同軸上に配置され、ウォームホイール32と一体となって回転可能なピニオンギヤ33と、ピニオンギヤ33に噛合される出力部50と、により構成されている。このように、減速機構3は、2段減速構造とされている。すなわち、ウォーム軸31とウォームホイール32とにより1段目の減速機構が構成され、ピニオンギヤ33と出力部50のスパーギヤ34とにより2段目の減速機構が構成されている。このため、減速機構3全体として大きな減速比を得ることができる。また、このような2段減速構造で、ピニオンギヤ33に大きな荷重がかかる場合であっても、カバー15とアタッチメント47とにより、ウォーム支軸24が傾いてしまうことを確実に防止できる。
【0082】
また、減速機構3は、クラッチ機構4を備えているので、外力(例えば、ウインドガラスの自重や車両走行時の振動等の外力)により、減速機構3が逆転、換言すれば、ウォームホイール32が逆転してしまうことを確実に防止できる。
【0083】
また、クラッチ機構4は、ウォームホイール32に形成されたピニオン係合孔37に挿通されるピニオン凸部43と、ウォームホイール32のピニオン本体42とは反対側の一面32cに配置されたロックプレート70と、を備えている。ロックプレート70は、ケース14のクラッチ収容凹部20に収容され、クラッチ収容凹部20と摺動可能とされている。そして、ピニオン凸部43の先端に楔部45を設け、ロックプレート70に、楔部45と突き合わされるロック凹部74を形成している。さらに、楔部45の傾斜面45aとロック凹部74の傾斜面74aとが周方向で互いに間隔を隔てている。このように構成されたクラッチ機構4を備えた減速機構3は、楔部45とロック凹部74との突き合わせ状態により、ウォームホイール32やピニオンギヤ33の姿勢が不安定になりやすい。しかしながら、これらウォームホイール32やピニオンギヤ33を支持するウォーム支軸24が両持ち支持されているので、ウォーム支軸24によって、ウォームホイール32やピニオンギヤ33を確実に支持できる。
【0084】
また、ウォーム支軸24の先端側には、このウォーム支軸24と相対回転不能な平ワッシャ48が設けられている。平ワッシャ48は、ピニオンギヤ33とナット46との間に設けられている。このため、ピニオンギヤ33とナット46とが直接接触することがない。また、ピニオンギヤ33が回転した際に、平ワッシャ48がピニオンギヤ33と共回りすることがない。よって、ピニオンギヤ33の回転がナット46に伝達されることがなく、ピニオンギヤ33が回転することによってナット46が緩んでしまうことを確実に防止できる。
【0085】
また、ウォーム支軸24にキー溝26を形成する一方、平ワッシャ48にキー溝26に挿入されるキー部49を形成している。このような簡素な構造で、ウォーム支軸24に対して平ワッシャ48の回転を不能としている。このため、減速機構3の製造コストを低減できる。
【0086】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0087】
例えば、上述の実施形態では、減速機付モータ1の組立方法について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、ウォームホイール32や出力部50等と、ブラシユニット10やコネクタ部11等との組み付け順序を適宜変更してもよい。
また、上述の減速機付モータ1を、車両のウィンドウレギュレータ等の駆動源に適用した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、本発明は、ワイパーモータ、サンルーフ、電動シートなどの駆動源、さらには、車両以外の電装品など、さまざまな装置にも適用可能である。
【0088】
また、上述の実施形態では、ピニオン凸部43の先端に、周方向中央から両端にかけて軸方向の高さが減少するように傾斜面45aを有する楔部45が一体成形されている場合について説明した。また、楔部45に突き合わさるロックプレート70のロック凹部74は、周方向中央から周方向両端にかけてウォーム支軸24の軸方向の高さが増加するように楔状に形成されて傾斜面74aを有している場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ピニオン凸部43の先端に、ロック凹部74のような周方向中央から周方向両端にかけてウォーム支軸24の軸方向の高さが増加するように傾斜面74aを有する楔状の凹部を形成してもよい。一方、ロック凹部74に、楔部45のような周方向中央から両端にかけて軸方向の高さが減少するように傾斜面45aを有する楔部を形成してもよい。
【0089】
また、上述の実施形態では、ナット46に嵌合されるアタッチメント47は、外周面がウォーム支軸24の軸方向からみて円形の円筒外周面47aとされている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、
図9に示すように、アタッチメント47の外周面を二方取りとし、この外周面を、径方向で対向する一対の平坦面47cと、径方向で対向する一対の円筒外周面47aと、が互い違いに配置された構成としてもよい。すなわち、アタッチメント47の外周面の少なくとも一部に、ウォーム支軸24の軸方向からみて円弧状の円筒外周面47aが形成されていればよい。
【0090】
また、上述の実施形態では、ウォーム支軸24に対して平ワッシャ48を相対回転不能とするために、ウォーム支軸24にキー溝26を形成する一方、平ワッシャ48にキー溝26に挿入されるキー部49を形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ウォーム支軸24に平ワッシャ48が相対回転不能に挿入可能な構造であればよい。例えば、ウォーム支軸24の雄ネジ部24bを避けた位置を多角形状に形成し、平ワッシャ48の内周縁を、ウォーム支軸24の形状に対応させて多角形状に形成してもよい。
【0091】
また、上述の実施形態では、減速機構3にクラッチ機構4が内装されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、クラッチ機構4を設けていなくてもよい。また、ウォーム支軸24に、ウォームホイール32、ピニオンギヤ33、及びロックプレート70が回転自在に支持されている場合について説明した。さらに、ドライブ支軸23にスパーギヤ34とドライブギヤ35とが一体化された出力部50が回転自在に支持されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな支軸に、少なくとも1つギヤが回転自在に支持され、このギヤがナット46によって支軸からの抜けが防止されている構造に、上述のアタッチメント47やカバー15の軸受ボス65の構造を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…減速機付モータ、2…モータ、3…減速機構、4…クラッチ機構、14…ケース、15…カバー、24…ウォーム支軸(シャフト)、26…キー溝(嵌合凹部)、31…ウォーム軸、32…ウォームホイール(ギヤ)、32c…一面(面)、33…ピニオンギヤ(ギヤ、平歯車)、34…スパーギヤ、35…ドライブギヤ、37…ピニオン係合孔(係合孔)、43…ピニオン凸部(係合凸部)、45…楔部、45a…傾斜面(第1傾斜面)、46…ナット、47…アタッチメント、47a…円筒外周面、48…平ワッシャ(ワッシャ)、49…キー部(嵌合凸部)、50…出力部、65…軸受ボス、70…ロックプレート、74…ロック凹部(受入れ面)、74a…傾斜面(第2傾斜面)