IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新東エスプレシジョン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-角度測定システム 図1
  • 特許-角度測定システム 図2
  • 特許-角度測定システム 図3
  • 特許-角度測定システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】角度測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20220307BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
G01D5/244 B
G01D5/244 A
G01B11/26 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018087972
(22)【出願日】2018-05-01
(65)【公開番号】P2019194525
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】510281944
【氏名又は名称】新東エスプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】寺本 亮
(72)【発明者】
【氏名】今村 智明
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-90317(JP,A)
【文献】特開2004-354165(JP,A)
【文献】特開2012-93252(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0131582(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/244- 5/249
G01B 11/26 -11/275
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転軸周りの回転角度を測定する角度測定システムであって、
前記回転体の前記回転軸に対して回動可能に取り付けられたエンコーダーと、
前記回転体に固定されたエンコーダーセンサーと、
前記エンコーダー及び前記エンコーダーセンサーによる前記回転体の前記回転軸周りの回転角度の計測の基準位置を検出する基準位置検出部と、
前記エンコーダーセンサーの出力値に基づき前記回転体の前記回転軸周りの前記基準位置からの回転角度を測定する測定部と、を備え、
前記基準位置検出部は、
前記エンコーダーと共に前記回転軸を中心として回動する撮像装置と、
前記撮像装置により撮像した画像を用いて前記基準位置を検出する検出部を有する角度測定システム。
【請求項2】
前記基準位置検出部は、
前記エンコーダー及び前記撮像装置を前記回転体の前記回転軸を中心として回動させる駆動部と、
前記撮像装置により前記基準位置の検出に用いる基準部材を撮像した場合に、前記撮像装置により撮像した画像中の前記基準部材の位置が所定の位置になるように、前記駆動部により前記エンコーダー及び前記撮像装置の回動位置を制御する制御部と、
を備える請求項1記載の角度測定システム。
【請求項3】
前記撮像装置により撮像された画像に基づいて前記撮像装置の回動位置の前記基準位置からの角度誤差を算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記角度誤差を用いて前記測定部により測定された回転角度を補正する補正部を備える請求項1または2記載の角度測定システム。
【請求項4】
前記基準部材は前記回転体が回転した際に位置が変動しない部材に形成されたマークまたは前記部材が有する縦線である請求項1~3の何れか一項に記載の角度測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転角度を精密に測定する角度測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機器などにおける回転体等の回転角度をロータリーエンコーダーを用いて測定する角度測定システムが存在する(特許文献1参照)。この角度測定システムにおいては、治具により固定されたエンコーダー本体に取付けられたエンコーダー読み取りヘッドにより、回転体に取付けられたエンコーダーの回転角度を測定する際に、干渉ユニット、コーナーキューブ、レーザ光源及び位相差検出ヘッドなどにより構成される非接触角度検出手段により、エンコーダー本体の傾斜角度を検出し、ロータリーエンコーダーにより検出された回転体の回転角度を非接触角度検出手段により検出されたエンコーダー本体の傾斜角度に基づいて補正することにより回転体の回転角度を精密に測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5115872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上述の角度測定システムにおいては、非接触角度検出手段を構成する干渉ユニット、コーナーキューブ及びレーザ光源等を精度良く設置する必要があり設置に手間がかかる。更に干渉ユニット、コーナーキューブ及びレーザ光源などが高価であることから角度測定システムの製造コストを低減させることが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、工作機器などにおける回転体の回転角度の精密な測定を低コストで容易に行うことができる角度測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の角度測定システムは、回転体の回転軸周りの回転角度を測定する角度測定システムであって、前記回転体の前記回転軸に対して回動可能に取り付けられたエンコーダーと、前記回転体に固定されたエンコーダーセンサーと、前記エンコーダー及び前記エンコーダーセンサーによる前記回転体の前記回転軸周りの回転角度の計測の基準位置を検出する基準位置検出部と、前記エンコーダーセンサーの出力値に基づき前記回転体の前記回転軸周りの前記基準位置からの回転角度を測定する測定部と、を備え、前記基準位置検出部は、前記エンコーダーと共に前記回転軸を中心として回動する撮像装置と、前記撮像装置により撮像した画像を用いて前記基準位置を検出する検出部を有する。
【0007】
また本発明の角度測定システムは、前記基準位置検出部が前記エンコーダー及び前記撮像装置を前記回転体の前記回転軸を中心として回動させる駆動部と、前記撮像装置により前記基準位置の検出に用いる基準部材を撮像した場合に、前記撮像装置により撮像した画像中の前記基準部材の位置が所定の位置になるように、前記駆動部により前記エンコーダー及び前記撮像装置の回動位置を制御する制御部とを備える。
【0008】
また本発明の角度測定システムは、前記撮像装置により撮像された画像に基づいて前記撮像装置の回動位置の前記基準位置からの角度誤差を算出する算出部と、前記算出部により算出された前記角度誤差を用いて前記測定部により測定された回転角度を補正する補正部を備える。
【0009】
また本発明の角度測定システムは、前記基準部材は前記回転体が回転した際に位置が変動しない部材に形成されたマークまたは前記部材が有する縦線である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工作機器などにおける回転体の回転角度の精密な測定を低コストで容易に行うことができる角度測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る角度測定システムの外観を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る角度測定システムを構成する角度測定ユニットの内部構成を示す図である。
図3】実施の形態に係る角度測定システムのシステム構成を示す図である。
図4】実施の形態に係る角度測定システムを構成する表示部の表示状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る角度測定システムについて説明する。図1は実施の形態に係る角度測定システムの外観を示す斜視図である。角度測定システムは、工作機械などが有する回転体、例えば回転テーブル2の回転軸周りの回転角度を角度測定ユニット4を構成するエンコーダーセンサー4e及びエンコーダー7(図2参照)を用いて測定する。エンコーダー7は円盤形状を有し、円盤形状の全周にわたり目盛が形成されており、この目盛をエンコーダーセンサー4eで読取ることにより回転テーブル2の回転角度を測定する。
【0013】
図2は実施の形態に係る角度測定システムを構成する角度測定ユニット4の内部構成を示す図である。図2に示すように角度測定システムは、回転テーブル2上に設置された角度測定ユニット4を備えている。角度測定ユニット4の筐体4aは、回転テーブル2に固定されている。筐体4a内には、回転テーブル2の回転軸に沿って延びる支持部材4bが配置されており、支持部材4bの下端部は、回転テーブル2に固定され支持部材4bを回動させるモーター(駆動部)4cに接続されている。支持部材4bのモーター(駆動部)4cの上部には、エンコーダー7が取り付けられている。更に支持部材4bの上端部にはレンズ5及び撮像部(図示せず)を有するカメラ(撮像装置)4dが取り付けられている。即ちエンコーダー7及びカメラ4dは、回転テーブル2の回転軸に対して回動可能に取り付けられており、モーター4cを回転させることにより、エンコーダー7及びカメラ4を回転テーブル2の回転軸を中心として回転テーブル2に対して回動させることができる。
【0014】
筐体4aの内壁のエンコーダー7の外縁部に対向する位置にエンコーダーセンサー4eが固定されている。即ちエンコーダーセンサー4eは、回転テーブル2が回転軸周りに回転するとエンコーダー7の外縁部に沿って回転し、エンコーダー7に形成されている目盛を読取ることにより回転テーブル2の回転角度を測定する。
【0015】
図3は実施の形態に係る角度測定システムのシステム構成を示す図である。角度測定システムは、角度測定ユニット4及びパーソナルコンピューター(PC)などにより構成される制御装置6を備えている。上述のように角度測定ユニット4は、カメラ4d、モーター4c及びエンコーダーセンサー4eを備えている。また制御装置6は、制御部6a、入力部6b、表示部6c及び記憶部6dを備えている。制御装置6は、工作機械の回転テーブル2を回転させる回転テーブル駆動部2aを制御して、回転テーブル2を所定角度回転させる。
【0016】
また制御装置6は、角度測定ユニット4のカメラにより撮像したマーク(基準部材)8の画像を用いて、エンコーダー7及びエンコーダーセンサー4eによる回転テールの2の回転軸周りの回転角度の計測の基準位置を検出する。ここでマーク8は、回転テーブル2が回転した際に位置が変動しない工作機械の部材に、マグネット等により取付けたものである。
【0017】
また制御装置6は、エンコーダーセンサー4eの出力値に基づき回転テーブル2の回転軸周りの基準位置からの回転角度を測定する。更に角度測定ユニット4のカメラ4dにより撮像した画像を用いて、カメラ4dの回動位置の基準位置からの角度誤差を算出し、算出された角度誤差を用いて、エンコーダーセンサー4eの出力値に基づき測定された回転角度を補正する。
【0018】
次に角度測定システムを用いた回転テーブル2の回転角度の測定について、制御装置6から回転テーブル2の駆動部2aに対して、30°回転させる指示を行った場合を例にして説明する。まず入力部6bから回転テーブル2の回転角度である30°を入力する。なお角度測定システムを用いた回転テーブル2の回転角度の測定は、記憶部6dに記憶されているプログラムに従って制御部6aの制御により行われる。
【0019】
制御部6aは、角度測定ユニット4のカメラ4dにマーク8の撮像を所定時間間隔で繰り返し行わせ、撮像された画像を順次取得す。図4(a)は制御装置6の表示部6cにカメラ4dにより撮像された画像が表示されている状態を示している。この状態においてマーク8が画像の幅方向の中心(画像中の縦破線上)に位置していない場合には、制御部6aは、角度測定ユニット4のモーター4cを回転させて、マーク8を画像の幅方向の中心(画像中の縦破線上)に位置させる。
【0020】
制御部6aは、回転テーブル2の駆動部2aを制御して回転テーブル2を30°回転させる。この場合に回転テーブル2が回転軸を中心として回転することにより、角度測定ユニット4も回転テーブル2と共に回転する。従って表示部6cに表示されているマーク8は、例えば図4(b)の実線で示す方向に移動するが、制御部6aは角度測定ユニット4のモーター4cを回転させることにより、カメラ4d及びエンコーダー7を回転テーブル2の回転軸を中心として回転テーブル2の回転方向と逆方向に回動させて、マーク8を画像の幅方向の中心に位置させるように制御する。即ち回転テーブル2が回転したときに角度制御ユニット4のエンコーダー7及びカメラ4dの回転角度が0°となるように制御する。
【0021】
この制御によりエンコーダーセンサー4eがエンコーダー7の外縁部に沿って回転し、エンコーダー7に形成されている目盛を読取ることにより回転テーブル2の回転角度を測定する。
【0022】
また制御部6aは、カメラ4dにより撮像された画像に基づいてカメラ4d及びエンコーダー7の回動位置の基準位置からの角度誤差を算出する。即ち制御部6aは角度測定ユニット4のモーター4cを回転させることによりマーク8を画像の幅方向の中心に位置させるように制御するが、マーク8の位置が画像の幅方向の中心に対して誤差を持った状態となる場合がある。従って、この場合には、制御部6aはカメラ4dにより撮像された画像に対して画像処理を行うことによりカメラ4d及びエンコーダー7の回動位置の基準位置からの角度誤差を算出し、この角度誤差を用いてエンコーダーセンサー4eにより測定された回転テーブル2の回転角度を補正する。この補正により回転テーブル2の回転角度を精密に測定することができる。
【0023】
この実施の形態に係る角度測定システムによれば、干渉ユニット、コーナーキューブ及びレーザ光源などの高精度な設置が必要なくなることから、工作機器などにおける回転テーブル2の回転角度の精密な測定を容易に行うことができる。また干渉ユニット、コーナーキューブ及びレーザ光源など高価な部品を使用しないため角度測定システムの製造コストを低減させることができる。従って、工作機器の出荷時などにおいて、回転テーブルの回転角度の制御の精密さの程度を容易に、かつ低コストで測定することができる。
【0024】
なお上述の実施の形態においては、基準部材として回転テーブル2が回転した際に位置が変動しない工作機器などの部材に、マグネット等により取付けたマーク8を用いているが、基準部材として工作機器を構成する部材の角(辺)などを構成する縦線を用いてもよい。
【符号の説明】
【0025】
2…回転テーブル、4…角度測定ユニット、4a…筐体、4b…支持部材、4c…モーター、4d…カメラ、4e…エンコーダーセンサー、5…レンズ、6…PC、7…エンコーダー、8…マーク
図1
図2
図3
図4