(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】高圧溶断器用ヒューズ
(51)【国際特許分類】
H01H 85/38 20060101AFI20220307BHJP
H01H 85/36 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
H01H85/38
H01H85/36
(21)【出願番号】P 2018193740
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤井 善朗
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博光
(72)【発明者】
【氏名】藤森 樹
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-079950(JP,U)
【文献】特開2012-119139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/38
H01H 85/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定値以上の電流が流れた際に電流を遮断する高圧溶断器に用いられ、ヒューズ筒の上部接触子に通電可能に接続される頭部金具と、前記頭部金具と接続される可溶接続線と、前記可溶接続線と締付金具によって接続され、前記ヒューズ筒の下部接触子に通電可能に接続される下部接続線と、前記頭部金具、前記可溶接続線、前記締付金具、及び前記下部接続線を収納する円筒状の消弧チューブと、を備え、規定値以上の電流によって前記可溶接続線が溶断する高圧溶断器用ヒューズであって、
前記消弧チューブを密封し、前記締付金具に設けられる支持栓を備える
高圧溶断器用ヒューズ。
【請求項2】
前記消弧チューブを密封し、前記頭部金具に設けられる第1支持栓を備え、
前記締付金具に設けられる前記支持栓を第2支持栓とする
請求項1に記載の高圧溶断器用ヒューズ。
【請求項3】
前記第1支持栓は、前記頭部金具の可溶接続線側端部に設けられ、
前記第2支持栓は、前記締付金具の可溶接続線側端部に設けられる
請求項2に記載の高圧溶断器用ヒューズ。
【請求項4】
前記消弧チューブは、前記頭部金具を収容する第1消弧チューブと、前記下部接続線を収容する第2消弧チューブとを備え、
前記消弧チューブの前記可溶接続線の部分は、前記第1消弧チューブと前記第2消弧チューブとの二重構造であり、
前記第2消弧チューブの内径は、前記第1消弧チューブの内径よりも短く、
前記第1支持栓は、前記第1消弧チューブの内壁に当接し、
前記第2支持栓は、前記第2消弧チューブの内壁に当接する
請求項2又は3に記載の高圧溶断器用ヒューズ。
【請求項5】
前記第1支持栓の端部と前記第2消弧チューブの端部とが当接する
請求項4に記載の高圧溶断器用ヒューズ。
【請求項6】
前記第1支持栓及び前記第2支持栓は、円筒形状である
請求項2~5のいずれか一項に記載の高圧溶断器用ヒューズ。
【請求項7】
前記第1支持栓及び前記第2支持栓の少なくとも一方の外周面には、前記消弧チューブの周方向に延出する鍔部が設けられる
請求項6に記載の高圧溶断器用ヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧溶断器用ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧溶断器には、規定値以上の電流が流れた際に溶断するヒューズが設置されている(特許文献1,2参照)。このヒューズは、ヒューズ筒の上部接触子に通電可能に接続される頭部金具と、規定値以上の電流によって溶断する可溶接続線と、ヒューズ筒の下部接触子に通電可能に接続される下部接続線とを備えている。可溶接続線の上端部は、頭部金具の下端部に接続されている。可溶接続線の下端部と下部接続線の上端部とは、締付金具によって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭60-162357号公報
【文献】中国実用新案公告第207381358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヒューズが溶断した時、消弧ガスが消弧チューブの内面と締付金具との隙間から下部接続線側に漏れ出して、消弧チューブ内の圧力が上がらないことがある。特に、規定値以上の電流のうち小電流域において、消弧チューブの可溶接続線の部分に消弧ガスが不足して圧力が上がらず消弧不能となるおそれがある。そこで、消弧性能が高められた高圧溶断器用ヒューズが求められている。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、消弧性能が高められた高圧溶断器用ヒューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する高圧溶断器用ヒューズは、規定値以上の電流が流れた際に電流を遮断する高圧溶断器に用いられ、ヒューズ筒の上部接触子に通電可能に接続される頭部金具と、前記頭部金具と接続される可溶接続線と、前記可溶接続線と締付金具によって接続され、前記ヒューズ筒の下部接触子に通電可能に接続される下部接続線と、前記頭部金具、前記可溶接続線、前記締付金具、及び前記下部接続線を収納する円筒状の消弧チューブと、を備え、規定値以上の電流によって前記可溶接続線が溶断する高圧溶断器用ヒューズであって、前記消弧チューブを密封し、前記締付金具に設けられる支持栓を備える。
【0007】
上記構成によれば、消弧チューブ内の可溶接続線の下部接続線側が支持栓によって隙間なく封鎖されるため、消弧ガスを閉じ込めることができ、可溶接続線の溶断時に消弧チューブ内の可溶接続線の部分の圧力を急激に上昇させることができる。よって、消弧性能を高めることができる。また、小電流域における可溶接続線の溶断時にも有効である。
【0008】
上記高圧溶断器用ヒューズについて、前記消弧チューブを密封し、前記頭部金具に設けられる第1支持栓を備え、前記締付金具に設けられる前記支持栓を第2支持栓とすることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、消弧チューブ内の可溶接続線の両端が第1支持栓と第2支持栓とによって隙間なく封鎖されるため、消弧ガスを閉じ込めることができ、可溶接続線の溶断時に消弧チューブ内の可溶接続線の部分の圧力を急激に上昇させることができる。よって、消弧性能を高めることができる。また、小電流域における可溶接続線の溶断時にも有効である。
【0010】
上記高圧溶断器用ヒューズについて、前記第1支持栓は、前記頭部金具の可溶接続線側端部に設けられ、前記第2支持栓は、前記締付金具の可溶接続線側端部に設けられることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、消弧チューブ内の第1支持栓と第2支持栓とによる密閉空間が狭くなるため、可溶接続線の溶断時に消弧チューブ内の可溶接続線の部分の圧力を一層急激に上昇させることができる。
【0012】
上記高圧溶断器用ヒューズについて、前記消弧チューブは、前記頭部金具を収容する第1消弧チューブと、前記下部接続線を収容する第2消弧チューブとを備え、前記消弧チューブの前記可溶接続線の部分は、前記第1消弧チューブと前記第2消弧チューブとの二重構造であり、前記第2消弧チューブの内径は、前記第1消弧チューブの内径よりも短く、前記第1支持栓は、前記第1消弧チューブの内壁に当接し、前記第2支持栓は、前記第2消弧チューブの内壁に当接することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、消弧チューブの可溶接続線の部分の強度が高くなり、第2消弧チューブの内径を短くすることで、可溶接続線の溶断時に消弧チューブ内の可溶接続線の部分の圧力を一層急激に上昇させることができる。
【0014】
上記高圧溶断器用ヒューズについて、前記第1支持栓の端部と前記第2消弧チューブの端部とが当接することが好ましい。
上記構成によれば、第1支持栓の端部と第2消弧チューブの端部との隙間がなくなり、消弧チューブ内の第1支持栓と第2支持栓とによる密閉空間が狭くなるため、可溶接続線の溶断時に消弧チューブ内の可溶接続線の部分の圧力を一層急激に上昇させることができる。
【0015】
上記高圧溶断器用ヒューズについて、前記第1支持栓及び前記第2支持栓は、円筒形状であることが好ましい。
上記構成によれば、第1支持栓及び第2支持栓を容易に形成することができる。
【0016】
上記高圧溶断器用ヒューズについて、前記第1支持栓及び前記第2支持栓の少なくとも一方の外周面には、前記消弧チューブの軸方向に延出する複数の突条が設けられることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、支持栓の突条が消弧チューブの内壁に密着することで、消弧チューブ内の第1支持栓と第2支持栓とによる密閉空間の密閉を高めることができる。
上記高圧溶断器用ヒューズについて、前記第1支持栓及び前記第2支持栓の少なくとも一方の外周面には、前記消弧チューブの周方向に延出する鍔部が設けられることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、支持栓の鍔部が消弧チューブの内壁に密着することで、消弧チューブ内の第1支持栓と第2支持栓とによる密閉空間の密閉を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、消弧性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態の高圧溶断器の概略構成を示す断面図。
【
図2】同実施形態の高圧溶断器のヒューズ筒の概略構成を示す半断面図。
【
図3】同実施形態の高圧溶断器用ヒューズの構成を示す断面図。
【
図4】同実施形態の高圧溶断器用ヒューズの構成を示す断面拡大図。
【
図5】第2の実施形態の高圧溶断器用ヒューズの構成を示す断面拡大図。
【
図6】同実施形態の高圧溶断器用ヒューズの第1支持栓を示す図であって、(a)は断面図、(b)は側面図。
【
図7】同実施形態の高圧溶断器用ヒューズの第2支持栓を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図。
【
図8】第3の実施形態の高圧溶断器用ヒューズの構成を示す断面拡大図。
【
図9】第4の実施形態の高圧溶断器用ヒューズの構成を示す断面図。
【
図10】同実施形態の高圧溶断器用ヒューズの構成を示す断面拡大図。
【
図11】変形例の高圧溶断器用ヒューズの構成を示す断面図。
【
図12】同変形例の高圧溶断器用ヒューズの構成を示す断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、
図1~
図4を参照して、高圧溶断器用ヒューズの第1の実施形態について説明する。
【0022】
図1に示すように、高圧溶断器1の磁器製の本体碍子10は円筒状に形成されている。本体碍子10の外周面には複数個の絶縁襞18が形成されている。本体碍子10の下端は開口され、下端開口部14を形成している。本体碍子10の内部には、円柱状の上部室11と、上部室11の下部に連通するとともに上部室11の内径よりも拡径された円柱状の下部室12とが形成されている。
【0023】
高圧溶断器1は、取付金具110によって電柱の腕金に取り付けられる。取付金具110のバンド部114は、本体碍子10の上下方向中央の外周に固定されている。
高圧溶断器1は、本体碍子10内の上部室11と下部室12とにヒュ-ズ筒40が収納されている。高圧溶断器1には、上部電極23と下部電極34とが設けられている。本体碍子10の上端部13には、円錐状の上部モールドコーン21が接着剤によって接着されている。上部モールドコーン21は、上部電極23のネジ部に接続固定されている。上部モールドコーン21の引出線21aには、配電線路の外部電線が接続される。
【0024】
また、本体碍子10の下部側壁15には、円錐状の下部モールドコーン31が接着剤によって接着されている。下部モールドコーン31の引出線31aの基端には、接続線32が接続されている。下部モールドコーン31の接続線32は、下部電極34に螺子止めされている。接続線32は、固定部材である四角ナット33によって接続線32を本体碍子10内に固定されている。下部モールドコーン31は、四角ナット33によって本体碍子10に固定されている。下部モールドコーン31の引出線31aには、配電線路に設けられた変圧器等の機器が外部電線を介して接続される。下部電極34は、本体碍子10内の下部室12に嵌合係止されている。下部電極34の上部には、樹脂製の緩衝部材36が配置されている。緩衝部材36は、緩衝板37を介して下部室12の上部に当接されている。ヒューズ筒40には、円筒状の消弧筒35が環装されている。消弧筒35の下端は、緩衝板37の上面に当接している。
【0025】
本体碍子10の下部室12の内壁12aには、本体碍子10の下端開口部14を閉蓋する閉蓋部材19が接着剤17によって固着されている。閉蓋部材19は、耐トラッキング性のゴム材や軟質合成樹脂等の弾性部材によって有底円筒状に形成されている。
【0026】
ヒューズ筒40は、上部電極23と下部電極34とを接続する。
図2に示すように、ヒューズ筒40の上端には、管状の上部接触子41を固定した絶縁筒42が設けられている。絶縁筒42には、環状の接触部47aを有する下部接触子47が貫装される。絶縁筒42の下端には、表示筒48が固着される。下部接触子47と表示筒48との間にはばね49が介在される。絶縁筒42内には、ヒューズ50が上部接触子41と下部接触子47との間にばね49によって張設される。
【0027】
上部接触子41の下端部外周には、ローレット加工等の凹凸面41aが形成されている。よって、ヒューズ50の挿入後にヒューズ筒40の上部金具42bに対し上部接触子41を螺着する場合に凹凸面41aにより滑り難いので締付けを確実に行うことができる。頭部金具51の接点部51aの上面には、ヒューズ50の定格が刻印されている。また、消弧チューブ43の外周面には、ヒューズ50の定格を示すラベルが貼り付けられている。
【0028】
図2及び
図3に示すように、ヒューズ50は、頭部金具51と、抗張線53と、可溶接続線52と、ヒューズリード線45とを備えている。ヒューズリード線45が下部接続線に相当する。ヒューズリード線45の先端には、接続端子45aが設けられている。下部接触子47に設けられる固定部47bには、接続端子45aが締付螺子46によって締付固定される。ヒューズ筒40の上部接触子41と下部接触子47とは、ヒューズ50を介して電気的に接続されている。ヒューズ50の可溶接続線52は、規定値を越える電流が流れると溶断する。
【0029】
可溶接続線52は、低融点金属であって、可溶体に相当する。低融点金属は、錫単体や、錫を主体とする合金(錫・ニッケル合金、錫・銀合金、錫・銅合金、錫・銀・銅合金等)を採用する。なお、低融点金属は、鉛を含まないものが望ましい。抗張線53は、抵抗体として機能するステンレス、銅、銀を主体とした単体もしくは銅・ニッケル合金、銅・ニッケル・クロム合金などの合金線を採用する。
【0030】
図3に示すように、頭部金具51と、可溶接続線52と、抗張線53と、ヒューズリード線45とは、円筒状の消弧チューブ43内に貫装されている。消弧チューブ43は、クラフト紙等を巻回して形成されている。
【0031】
頭部金具51は、円板状の接点部51aと、円柱状の接続部51bとを備えている。頭部金具51の接点部51aは、消弧チューブ43の外径よりも大きく形成されている。頭部金具51の接点部51aは、消弧チューブ43の上端から突出している。頭部金具51の接続部51bには、円筒状の支持栓55が被嵌接着されている。支持栓55には、消弧チューブ43が被嵌接着されている。頭部金具51は、支持栓55によって支持されている。消弧チューブ43の上端部には、クラフト紙を数巻き分巻かず縮径された段部43aが形成されている。消弧チューブ43の上端の段部43aには、ばね座金44が嵌装されている。よって、ばね座金44は、頭部金具51と消弧チューブ43の段部43aとにより抜けることはない。ヒューズ50をばね座金44によりヒューズ筒40に装着した場合、上部接触子41を絶縁筒42に確実に固定することができ、また確実に通電させることができる。
【0032】
頭部金具51とヒューズリード線45とは、可溶接続線52と抗張線53とによって接続されている。可溶接続線52及び抗張線53の上端部は、頭部金具51の下端部にある接続部51bの円柱孔に挿入されている。頭部金具51の下端部の接続部51bは、可溶接続線52及び抗張線53の上端部が挿入された状態でかしめにより圧着固定されている。よって、頭部金具51の下端部と可溶接続線52及び抗張線53の上端部とは圧着接続されている。
【0033】
可溶接続線52及び抗張線53とヒューズリード線45とは、円筒状の締付金具54によって接続固定されている。可溶接続線52及び抗張線53の下端部は、締付金具54の上端部に挿入されている。締付金具54の上端部は、可溶接続線52及び抗張線53の下端部が挿入された状態でかしめにより圧着固定されている。よって、締付金具54の上端部と可溶接続線52及び抗張線53の下端部とは圧着接続されている。
【0034】
ヒューズリード線45の上端部は、締付金具54の下端部に挿入されている。締付金具54の下端部は、ヒューズリード線45の上端部が挿入された状態でかしめにより圧着固定されている。よって、締付金具54の下端部とヒューズリード線45の上端部とは圧着接続されている。ヒューズリード線45の下端部は、接続端子45aの円筒部に挿入された状態でかしめにより圧着固定されている。
【0035】
ヒューズ50は、消弧チューブ43を密封し、頭部金具51に設けられる第1支持栓57を備えている。第1支持栓57は、頭部金具51の可溶接続線52側に設けられている。ヒューズ50は、消弧チューブ43を密封し、締付金具54に設けられる第2支持栓58を備えている。第2支持栓58は、締付金具54の可溶接続線52側に設けられている。
【0036】
次に、
図4を参照して、頭部金具51、第1支持栓57、可溶接続線52、第2支持栓58、ヒューズリード線45の接続構造について説明する。
図4に示すように、第1支持栓57は、可溶接続線52及び抗張線53が貫通する貫通孔57aを有する円筒形状である。第1支持栓57の上面57bは、頭部金具51の下端51cに接触している。第1支持栓57の外径と消弧チューブ43の内径とは、ほぼ同一である。第1支持栓57の外周面は、消弧チューブ43の内壁に当接する。
【0037】
第2支持栓58は、可溶接続線52及び抗張線53が貫通する貫通孔58aを有する円筒形状である。第2支持栓58の下面58bは、締付金具54の上端54aに接触している。第2支持栓58の外径と消弧チューブ43の内径とは、ほぼ同一である。第2支持栓58の外周面は、消弧チューブ43の内壁に当接する。
【0038】
消弧チューブ43の可溶接続線52の部分は、消弧チューブ43の内壁と第1支持栓57と第2支持栓58とによって密閉空間59が形成されている。このため、可溶接続線52が溶断して、その熱で消弧チューブ43の内面から発生した消弧ガスが密閉空間59に充満することになり、密閉空間59の圧力を一層急激に上昇させて、溶断部に発生したアークを消弧ガスによって消弧することができる。よって、消弧性能を高めることができる。
【0039】
次に、上記のように構成された高圧溶断器1の作用について説明する。
高圧溶断器1に規定値以上の電流が流れると、可溶接続線52が溶断するとともに、抗張線53が切断する。そして、ヒューズ筒40の絶縁筒42がばね49により本体碍子10の下端開口部14側へ移動して、表示筒48が本体碍子10から突出する。これにより、ヒューズ筒40の上部接触子41が上部電極23から離脱して、通電が遮断される。この時、絶縁筒42の段部42aは、下部接触子47の接触部47a内のばね47cに当接する。これにより、絶縁筒42の下方への移動は緩衝されるため、絶縁筒42の衝撃によるヒューズ筒40の脱落は防止される。
【0040】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)消弧チューブ43内の可溶接続線52の前後が第1支持栓57と第2支持栓58とによって隙間なく封鎖されるため、消弧ガスを密閉空間59に閉じ込めることができ、可溶接続線52の溶断時に消弧チューブ43内の可溶接続線52の部分の圧力を急激に上昇させることができる。よって、消弧性能を高めることができる。また、小電流域における可溶接続線52の溶断時にも有効である。
【0041】
(2)第1支持栓57が頭部金具51の可溶接続線52側端部に設けられ、第2支持栓58が締付金具54の可溶接続線52側端部に設けられる。よって、消弧チューブ43内の第1支持栓57と第2支持栓58とによる密閉空間59が狭くなるため、可溶接続線52の溶断時に消弧チューブ43内の可溶接続線52の部分の圧力を一層急激に上昇させることができる。
【0042】
(3)第1支持栓57及び第2支持栓58が円筒形状であるため、第1支持栓57及び第2支持栓58を容易に形成することができる。
【0043】
(第2の実施形態)
以下、
図5~
図7を参照して、高圧溶断器用ヒューズの第2の実施形態について説明する。この実施形態の高圧溶断器用ヒューズは、第1支持栓57及び第2支持栓58の形状が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0044】
図5に示すように、ヒューズ60は、消弧チューブ43を密封し、頭部金具51に設けられる第1支持栓67を備えている。第1支持栓67は、頭部金具51の可溶接続線52側に設けられている。ヒューズ60は、消弧チューブ43を密封し、締付金具54に設けられる第2支持栓68を備えている。第2支持栓68は、締付金具54の可溶接続線52側に設けられている。
【0045】
図5及び
図6(a)に示すように、第1支持栓67は、頭部金具51が貫装される貫通孔67aを有する円筒形状である。第1支持栓67は、頭部金具51の下端部の外周に装着されている。
図6(b)に示すように、第1支持栓67の外周面には、消弧チューブ43の軸方向に延出する突条67bが周方向に等間隔で複数設けられている。突条67bは、消弧チューブ43の内径よりも突出する。このため、第1支持栓67を消弧チューブ43に挿入すると、突条67bが変形した状態で取り付けられ、第1支持栓67の外周面が消弧チューブ43の内壁に密着する。
【0046】
図5及び
図7(a)に示すように、第2支持栓68は、可溶接続線52及び抗張線53が貫通する貫通孔68aを有する円筒形状である。第2支持栓68の下面68bは、締付金具54の上端54aに接触している。
図7(b)に示すように、第2支持栓68の上面側には、拡径した鍔部68cが設けられている。鍔部68cの外径は、消弧チューブ43の内径よりも若干大きく形成されている。第2支持栓68の鍔部68cでない部分の外径は、消弧チューブ43の内径よりも若干小さく形成されている。このため、第2支持栓68を消弧チューブ43に挿入すると、鍔部68cが撓んだ状態で取り付けられ、第2支持栓68の外周面が消弧チューブ43の内壁に密着する。
【0047】
消弧チューブ43の可溶接続線52の部分は、消弧チューブ43の内壁と第1支持栓67と第2支持栓68とによって密閉空間69が形成されている。このため、可溶接続線52が溶断して、その熱で消弧チューブ43の内面から発生した消弧ガスが密閉空間69に充満することになり、密閉空間69の圧力を一層急激に上昇させて、溶断部に発生したアークを消弧ガスによって消弧することができる。よって、消弧性能を高めることができる。
【0048】
次に、本実施形態の効果について説明する。なお、第1の実施形態の(1)及び(2)の効果に加え、以下の効果を奏する。
(4)第1支持栓67の突条67bが消弧チューブ43の内壁に密着することで、消弧チューブ43内の第1支持栓67と第2支持栓68とによる密閉空間69の密閉を高めることができる。
【0049】
(5)第2支持栓68の鍔部68cが消弧チューブ43の内壁に密着することで、消弧チューブ43内の第1支持栓67と第2支持栓68とによる密閉空間69の密閉を高めることができる。
【0050】
(第3の実施形態)
以下、
図8を参照して、高圧溶断器用ヒューズの第3の実施形態について説明する。この実施形態の高圧溶断器用ヒューズは、第1支持栓の形状が上記第2の実施形態と異なっている。以下、第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0051】
図8に示すように、ヒューズ70は、消弧チューブ43を密封し、頭部金具51の接続部51bに設けられる第1支持栓77を備えている。第1支持栓77は、頭部金具51の可溶接続線52側に設けられている。第1支持栓77は、頭部金具51の接続部51bが貫装される貫通孔77aを有する円筒形状である。第1支持栓77は、頭部金具51の下端部の外周に装着されている。第1支持栓77の外周面には、消弧チューブ43の周方向に延出する鍔部77bが複数設けられている。鍔部77bは、第1支持栓77の上端部、中央部、下端部に設けられている。鍔部77bの外径は、消弧チューブ43の内径よりも若干大きく形成されている。第1支持栓77の鍔部77bでない部分の外径は、消弧チューブ43の内径よりも若干小さく形成されている。このため、第1支持栓77を消弧チューブ43に挿入すると、鍔部77bが撓んだ状態で取り付けられ、第1支持栓77の外周面が消弧チューブ43の内壁に密着する。
【0052】
消弧チューブ43の可溶接続線52の部分は、消弧チューブ43の内壁と第1支持栓77と第2支持栓68とによって密閉空間79が形成されている。このため、可溶接続線52が溶断して、その熱で消弧チューブ43の内面から発生した消弧ガスが密閉空間79に充満することになり、密閉空間79の圧力を一層急激に上昇させて、溶断部に発生したアークを消弧ガスによって消弧することができる。よって、消弧性能を高めることができる。
【0053】
次に、本実施形態の効果について説明する。なお、第1の実施形態の(1)、(2)、及び第2の実施形態の(5)の効果に加え、以下の効果を奏する。
(6)第1支持栓77の鍔部77bが消弧チューブ43の内壁に密着することで、消弧チューブ43内の第1支持栓77と第2支持栓68とによる密閉空間79の密閉を高めることができる。
【0054】
(第4の実施形態)
以下、
図9及び
図10を参照して、高圧溶断器用ヒューズの第4の実施形態について説明する。この実施形態の高圧溶断器用ヒューズは、消弧チューブの形状が上記第2の実施形態と異なっている。以下、第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0055】
図9に示すように、ヒューズ80は、第1消弧チューブ83と、第2消弧チューブ84とを備えている。頭部金具51と、可溶接続線52と、抗張線53とは、円筒状の第1消弧チューブ83内に貫装されている。また、可溶接続線52と、抗張線53と、締付金具54と、ヒューズリード線45とは、円筒状の第2消弧チューブ84内に貫装されている。第1消弧チューブ83及び第2消弧チューブ84は、クラフト紙等を巻回して形成されている。第1消弧チューブ83の内側に第2消弧チューブ84が挿入されて接着固定されている。
【0056】
図10に示すように、第2消弧チューブ84の外径は、第1消弧チューブ83の内径とほぼ同一である。第2消弧チューブ84の上端84aは、第1支持栓67の下端67cに当接している。よって、可溶接続線52の部分は、第1消弧チューブ83と第2消弧チューブ84との二重構造となっている。また、第2消弧チューブ84は、第1消弧チューブ83よりも細くなっている。すなわち、第2消弧チューブ84の内径は、第1消弧チューブ83の内径よりも短くなっている。
【0057】
第1支持栓67の外径と第1消弧チューブ83の内径とは、ほぼ同一である。第1支持栓67を第1消弧チューブ83に挿入すると、突条67bが変形した状態で取り付けられ、第1支持栓67の外周面が第1消弧チューブ83の内壁に密着する。
【0058】
第2支持栓68の鍔部68cでない部分の外径は、第2消弧チューブ84の内径よりも若干短く形成されている。第2支持栓68を第2消弧チューブ84に挿入すると、鍔部68cが撓んだ状態で取り付けられ、第2支持栓68の外周面が第2消弧チューブ84の内壁に密着する。
【0059】
第2消弧チューブ84の可溶接続線52の部分は、第2消弧チューブ84の内壁と第1支持栓67と第2支持栓68とによって密閉空間89が形成されている。この密閉空間89は、第2消弧チューブ84が第1消弧チューブ83よりも細いため、更に狭い空間となっている。このため、可溶接続線52が溶断して、その熱で第2消弧チューブ84の内面から発生した消弧ガスが密閉空間89に充満することになり、密閉空間89の圧力を一層急激に上昇させて、溶断部に発生したアークを消弧ガスによって消弧することができる。よって、消弧性能を高めることができる。
【0060】
次に、本実施形態の効果について説明する。なお、第1の実施形態の(1)、(2)、及び第2の実施形態の(4)、(5)の効果に加え、以下の効果を奏する。
(7)第2消弧チューブ84の内径が第1消弧チューブ83の内径より短いため、更に狭い密閉空間89を形成することができる。
【0061】
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・上記第2の実施形態では、第2支持栓68の鍔部68cを可溶接続線52側、上端側に設けたが、締付金具54側、下端側に設けてもよい。また、鍔部68cを複数設けてもよい。
【0063】
・上記第2の実施形態では、第1支持栓67を頭部金具51の下端部の外周に装着したが、第1支持栓を頭部金具51の中央部や上端部に装着してもよい。
・上記第2の実施形態では、第2支持栓68を締付金具54の上端に設けたが、第1支持栓67を頭部金具51に装着したように、第2支持栓を締付金具54に装着してもよい。この場合、第2支持栓を締付金具54の中央部や下端部に装着してもよい。なお、可溶接続線52側に装着するのが好ましい。
【0064】
・上記第3の実施形態では、第1支持栓77に鍔部77bを3個設けたが、4個以上設けてもよく、1個,2個でもよい。なお、可溶接続線52側に設けるのが好ましい。
・上記第2の実施形態では、第2支持栓68に鍔部68cを設けたが、鍔部68cに代えて第2支持栓68に軸方向に延出する突条を設けてもよい。
【0065】
・上記第4の実施形態では、第2消弧チューブ84の上端84aが第1支持栓67の下端67cに当接するようにしたが、第2消弧チューブ84の上端84aが第1支持栓67の下端67cに当接しないようにしてもよい。
【0066】
・上記第4の実施形態では、第2消弧チューブ84を第1消弧チューブ83の内側に挿入するようにした。しかし、第1消弧チューブ83の外径を第2消弧チューブ84の内径とほぼ同一として、第1消弧チューブ83を第2消弧チューブ84の内側に挿入するようにしてもよい。
【0067】
・上記各実施形態の構成において、抗張線53を省略してもよい。
・上記各実施形態の構成において、消弧チューブ43(第2消弧チューブ84)の内面に、ホウ酸、水酸化アルミニウム等の粉末消弧剤と粘結剤とを混練したものを塗布することで消弧層を形成してもよい。
【0068】
・上記各実施形態では、第1支持栓57(67,77)と第2支持栓58(68)との2つを設けたが、第1支持栓57(67,77)を省略して、第2支持栓58(68)のみにしてもよい。このような構成によれば、消弧チューブ43内の可溶接続線52の部分は、消弧チューブ43の内壁と頭部金具51の支持栓55と第2支持栓58(68)とによって密閉空間が形成される。このため、可溶接続線52の溶断時に消弧ガスを密閉空間に閉じ込めることができ、密閉空間の圧力を急激に上昇させて、溶断部に発生したアークを消弧ガスによって消弧することができる。よって、消弧性能を高めることができる。また、小電流域における可溶接続線52の溶断時にも有効である。
【0069】
・また、頭部金具51の支持栓55及び第1支持栓57(67,77)を省略して、第2支持栓58(68)のみにして、頭部金具51に消弧チューブ43を直接取り付けてもよい。
図11及び
図12に示すように、ヒューズ90は、頭部金具51の接続部51bに縮径させた小径部51dを設けて、小径部51dが消弧チューブ43の内に挿入されている。このような構成によれば、消弧チューブ43内の可溶接続線52の部分は、消弧チューブ43の内壁と頭部金具51と第2支持栓68とによって密閉空間が形成される。このため、可溶接続線52の溶断時に消弧ガスを密閉空間に閉じ込めることができ、密閉空間の圧力を急激に上昇させて、溶断部に発生したアークを消弧ガスによって消弧することができる。よって、消弧性能を高めることができる。また、小電流域における可溶接続線52の溶断時にも有効である。なお、頭部金具51の接続部51bに段付きの構成を備えず、接続部51b全体の外径と消弧チューブ43の内径とを同一としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…高圧溶断器、10…本体碍子、11…上部室、12…下部室、12a…内壁、13…上端部、14…下端開口部、15…下部側壁、17…接着剤、18…絶縁襞、20…上部モールドコーン、21…下部側壁、21a…引出線、23…上部電極、31…下部モールドコーン、31a…引出線、32…接続線、33…四角ナット、34…下部電極、35…消弧筒、36…緩衝部材、37…緩衝板、40…ヒューズ筒、41…上部接触子、41a…凹凸面、42…絶縁筒、43…消弧チューブ、43a…段部、44…ばね座金、45…ヒューズリード線、45a…接続端子、46…締付螺子、47…下部接触子、47a…接触部、47b…固定部、47c…ばね、48…表示筒、49…ばね、50…ヒューズ、51…頭部金具、51a…接点部、51b…接続部、51c…下端、51d…小径部、52…可溶接続線、53…抗張線、54…締付金具、54a…上端、55…支持栓、57…第1支持栓、57a…貫通孔、57b…上面、58…第2支持栓、58a…貫通孔、58b…下面、59…密閉空間、60…ヒューズ、67…第1支持栓、67a…貫通孔、67b…突条、67c…下端、68…第2支持栓、68a…貫通孔、68b…下面、68c…鍔部、69…密閉空間、70…ヒューズ、77…第1支持栓、77a…貫通孔、77b…鍔部、79…密閉空間、80…ヒューズ、83…第1消弧チューブ、84…第2消弧チューブ、84a…上端、89…密閉空間、90…ヒューズ。