(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】排水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20220307BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20220307BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20220307BHJP
B01D 63/06 20060101ALI20220307BHJP
B01D 63/10 20060101ALI20220307BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20220307BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20220307BHJP
B01D 71/16 20060101ALI20220307BHJP
C02F 1/04 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C02F1/44 K
B01D61/02
B01D61/58
B01D63/06
B01D63/10
B01D71/68
B01D71/56
B01D71/16
C02F1/04 D
(21)【出願番号】P 2018230793
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2017240164
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594152620
【氏名又は名称】ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】中塚 修志
(72)【発明者】
【氏名】浜田 敏充
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-115558(JP,A)
【文献】特開昭50-037266(JP,A)
【文献】特開2001-347142(JP,A)
【文献】特開2001-252658(JP,A)
【文献】特開昭52-156182(JP,A)
【文献】特開昭51-066285(JP,A)
【文献】特開2007-000788(JP,A)
【文献】特開平07-196705(JP,A)
【文献】特開昭53-032867(JP,A)
【文献】特開2012-045550(JP,A)
【文献】特開2002-085941(JP,A)
【文献】特開2004-160396(JP,A)
【文献】特開昭57-63103(JP,A)
【文献】特開2000-70937(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060042(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
1/02 - 1/18
B01D 61/00 - 71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水処理において水分を回収し、最終的に乾燥された固形分のみを廃棄又は再利用する排水処理方法であって、
前記排水処理における排水源が、船・自動車・家電製品の製造工場、切削部品加工工場、塗装工場、染色工場、製紙工場から選択されるものであり、
前記排水処理方法が、管状RO膜による処理工程と蒸発工程を有し
ており、
前記管状RO膜による処理工程が、
筒状のケーシング内に、
管状ポリエステル不織布支持体からなる多孔支持管内に内径5~15mmのチューブ状の
セルロースアセテートからなるRO膜が配置された管状RO膜エレメントを、
10~20本配置された管状RO膜モジュールであって、前記複数本の管状RO膜エレメントが、それぞれの開口部同士が接続され、全体として1本の管状RO膜エレメントになっている管状RO膜モジュールを用いて被処理水のろ過運転を実施して、前記管状RO膜モジュールを用いてろ過した後の濃縮水を再び前記管状RO膜モジュールでろ過する運転を繰り返して、濃縮水の固形分濃度を20質量%以上に高め、
前記管状RO膜による処理工程の後、濃縮水中の水分を蒸発させて回収し、固形分と分離する蒸発工程を実施する、排水処理方法。
【請求項2】
排水処理において水分を回収し、最終的に乾燥された固形分のみを廃棄又は再利用する排水処理方法であって、
前記排水処理方法が、前処理工程と管状RO膜による処理工程と蒸発工程を有して
おり、
前記管状RO膜による処理工程が、
筒状のケーシング内に、管状ポリエステル不織布支持体からなる多孔支持管内に内径5~15mmのチューブ状のセルロースアセテートからなるRO膜が配置された管状RO膜エレメントを、10~20本配置された管状RO膜モジュールであって、前記複数本の管状RO膜エレメントが、それぞれの開口部同士が接続され、全体として1本の管状RO膜エレメントになっている管状RO膜モジュールを用いて被処理水のろ過運転を実施して、前記管状RO膜モジュールを用いてろ過した後の濃縮水を再び前記管状RO膜モジュールでろ過する運転を繰り返して、濃縮水の固形分濃度を20質量%以上に高め、
前記管状RO膜による処理工程の後、濃縮水中の水分を蒸発させて回収し、固形分と分離する蒸発工程を実施する、排水処理方法。
【請求項3】
前記排水処理が、スパイラルRO膜による処理工程を含む前処理工程と、前記管状RO膜による処理工程と前記蒸発工程を有している、請求項
2記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記前処理工程、前記管状RO膜による処理工程、前記蒸発工程において、被処理水中へ消泡剤を一括添加又は逐次添加する、
請求項2又は3記載の排水処理方法。
【請求項5】
前記蒸発工程が、間接加熱型汚泥乾燥機を用いて実施する、請求項1~
4の何れか1項記載の排水処理方法。
【請求項6】
前記間接加熱型汚泥乾燥機が、伝熱面として円筒ドラムの外周面でなく、内部に空洞を有する中空円盤(CD:コンパクトディスク)の両面を使うCDドライヤーである、請求項
5に記載の排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場排水などの各種排水から水と固形分を分離して、最終的に乾燥した固形分のみを廃棄することができる排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種装置を使用して工場排水を処理するとき、工場排水から一部水を回収して再利用する一方で、残部の水は下水に流したり、最終的には水を生物処理するなどして河川に流したりしている。
しかし最近では、世界的にも液体排出量をゼロとするという考え方(ZLD: Zero Liquid Discharge)が採用されており、そのための処理装置や処理方法の発明が提案されている(特許文献1~7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2009-530100号公報
【文献】特表2010-517746号公報
【文献】特表2013-500157号公報
【文献】特表2014-512952号公報
【文献】特開2016-112559号公報
【文献】特表2016-506867号公報
【文献】特表2017-533815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のZLDを実施することができる排水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、排水処理において水分を回収し、最終的に乾燥された固形分のみを廃棄又は再利用する排水処理方法であって、管状RO膜による処理工程を有している排水処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の排水処理方法によれば、排水処理をしたとき、実質的に排水中の全ての水分を回収して、最終的には乾燥した固形分のみを廃棄又は再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】管状RO膜エレメント集合体の平面図。但し、一部を省略して示している。
【
図3】管状RO膜モジュールの斜視図。但し、実際には見えない内部が見えるように示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の排水処理方法はZLDを実施できるものであり、水分を回収し、最終的に乾燥した固形分のみを廃棄又は再利用する方法である。
本発明の排水処理方法は、管状RO(逆浸透)膜による処理工程を有しており、必要に応じて、前記管状RO膜による処理工程の前に前処理工程を、前記管状RO膜による処理工程の後に蒸発工程または分離工程を付加することができる。
【0009】
<管状RO膜>
本発明の排水処理方法で使用する管状RO膜エレメント10は、
図1に示すとおり、多孔支持管11内に管状RO膜12が配置されているものである。
多孔支持管11は、合成樹脂(好ましくは繊維強化樹脂)または金属(好ましくはステンレス)からなるものであり、厚さ方向に貫通された多数の孔13が分散配置されている。
管状RO膜12は、不織布、紙などからなる支持管の内側にRO膜が形成されたものでもよい。
RO膜の材質は、特に限定されなく、セルロースアセテート、芳香族ポリアミド、及びスルホン化ポリエーテルスルホンなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
RO膜の材質は、ファウリング防止の観点から、セルロースアセテート及びスルホン化ポリエーテルスルホンから選ばれる1種以上が好ましい。
管状RO膜12の内径は、被処理水の濃度(固形分濃度)に応じて調整することができるものであり、例えば5~15mmの範囲にすることができる。
管状RO膜12は、排水の流路が大きいため膜が閉塞し難く、排水の流入が膜面閉塞物を剥離する方向に流れているため、排水の高濃度濃縮に適している。
【0010】
管状RO膜は、
図2に示すとおり、複数本の管状RO膜エレメント10が連結されて1本になった管状RO膜集合体20が好ましい。例えば、管状RO膜は、合成樹脂または金属からなる多孔支持管11内にチューブ状のRO膜が配置された管状RO膜エレメント10が複数組み合わされたものであり、前記RO膜がセルロースアセテート、芳香族ポリアミド、及びスルホン化ポリエーテルスルホンから選ばれる1種以上のものを用いることができる。
図2に示す管状RO膜集合体20では、並列配置された管状RO膜エレメント10のうち、隣接する管状RO膜エレメント10同士がU字管21で連結されているものである。U字管21に代えて他の連結方法を使用することもできる。
管状RO膜集合体20の第1端開口部20aには原水供給部23が接続され、反対側の第2端開口部20bには濃縮水排水部24が接続されている。
管状RO膜集合体20は、例えば、10~20本の管状RO膜エレメント10からなるものにすることができる。
【0011】
本発明の排水処理で使用する管状RO膜は、
図3に示すように、筒状のケーシング31内に複数本の前記管状RO膜エレメント10が配置された管状RO膜モジュールであって、前記複数本の管状RO膜エレメント10が、それぞれの開口部同士が接続され、全体として1本の管状RO膜エレメント(管状RO膜集合体20)になっている管状RO膜モジュール30が好ましい。
管状RO膜モジュール30は、両端面(第1端面32と第2端面33)が閉塞された筒状のケーシング31内に管状RO膜集合体20が巻き込まれて円柱状になった形態で収容されているものである。
筒状のケーシング31の第1端面32には、管状RO膜集合体20の原水供給部23と濃縮水排水部24が突き出されている。
筒状ハウジング31の側面34からは、透過水出口部25が突き出されており、さらに図示していない通気孔が形成されている。
管状RO膜モジュール30は、1または複数を組み合わせて使用することができる。
【0012】
管状RO膜モジュールとしては、次のものを使用することができる。
管状RO膜エレメント10:
図1に示すような、内径11.5mmの管状ポリエステル不織布支持体の管内表面に0.2mmの酢酸セルロース逆浸透膜を積層させた長さ2,500mmのもの。
管状膜エレメント集合体20:
図2に示すとおり、U字管21を使用して、管状膜エレメント10の18本を直列に接続して1本にしたもの。
管状膜モジュール30:
図3に示すもの。
【0013】
<排水処理方法>
次に、管状RO膜を使用した排水処理方法を説明する。
本発明の排水処理方法は、例えば、
図3に示す管状RO膜モジュール30などの管状RO膜のみを使用して排水処理を実施することができる。このとき、管状RO膜モジュール30を複数使用することもできる。
管状RO膜モジュール30を複数使用するときは、幹管と、前記幹管から分岐された複数の枝管の組み合わせを使用することができる。
例えば、前記原水タンクと第1幹管を接続し、複数の第1枝管と複数の管状RO膜モジュール30の原水供給部23を接続して原水を供給し、管状RO膜モジュール30の複数の濃縮水排出部24と複数の第2枝管を接続し、前記第2枝管で集めた濃縮水は、第2幹管を経て原水タンクに戻し、これを繰り返すことができる。
透過水は、複数の透過水出口25と複数の第3枝管を接続し、前記第3枝管で集めた透過水は第3幹管を経て、透過水タンクに貯水して回収される。また透過水は再利用することができる。
【0014】
本発明の排水処理は、前処理工程と管状RO膜による処理工程を組み合わせて実施することもできる。
前処理工程は特に制限されるものではなく、公知の水処理工程で汎用されている処理方法を実施することができる。公知の前処理工程としては、活性炭処理工程、軟水化処理工程、MF膜処理工程、NF膜処理工程、UF膜処理工程、凝集沈殿処理工程などを挙げることができる。
【0015】
本発明の排水処理方法では、前処理工程としてスパイラルRO膜による処理工程を含むことが好ましく、前処理工程がスパイラルRO膜による処理工程のみからなるものでもよい。
スパイラルRO膜による処理工程は、公知のスパイラルRO膜モジュールを使用した処理工程であり、前記スパイラルRO膜モジュールは1または複数を組み合わせて使用することもできる。
【0016】
本発明の排水処理方法の一実施形態を
図1~
図3により説明する。
ポンプを使用して、原水タンクから管状RO膜モジュール30の原水供給部23に原水を供給する。
原水供給部23から供給した原水は、管状RO膜集合体20を通過する過程でろ過され、透過液は管状RO膜エレメント10の多孔支持管11に形成されている孔13からケーシング31内に排出される。
ケーシング31内に排出した透過水は、透過水出口部25から排出した後、回収して再利用する。
管状RO膜集合体20内でろ過した後の濃縮水は、濃縮水排出部24から排出した後、原水タンクに戻す。
このろ過運転を繰り返すことで濃縮水中の固形分濃度を高めることができる。
本発明の排水処理方法では、原水をスパイラルRO膜でろ過処理することで固形分濃度が高められた一次処理水を管状RO膜モジュール30で処理すると、より固形分濃度が高められるので好ましい。
本発明の管状RO膜を使用する排水処理方法では、原水の種類により異なるが、例えば、原水の固形分濃度を1.0質量%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、最も好ましくは50質量%以上にまで高めることができる。
【0017】
本発明の排水処理方法は、管状RO膜による処理工程の後、被処理水中の水分を蒸発させて回収し、固形分と分離する蒸発工程または処理液を冷却し結晶化物を遠心分離器やフィルタープレス装置によって回収する分離工程を実施する。蒸発工程は既存の蒸発装置、乾燥装置が使用できる。結晶化装置及び篩分・分離装置も既存の装置を使用できる。また、管状RO膜による処理工程の前後で、攪拌・振動等の運動エネルギー、熱エネルギー、電気・磁気・光エネルギーなどによる析出・造粒工程を実施することもできる。
【0018】
蒸発工程は、各種の汚泥乾燥機が使用できるが、特に乾燥効率が高い間接加熱型汚泥乾燥機の使用が好ましい。
間接加熱型汚泥乾燥機は、直接加熱型汚泥乾燥機と比べ省エネルギーだけでなく、据付設置面積が少ない、排気ガス量が少ない、水分調整が容易などの長所がある。
間接加熱型汚泥乾燥機としては、ドラム型乾燥機、製紙用シリンダー乾燥機などと呼ばれる乾燥機が挙げられ、具体的には西村鐵工所製CDドライヤー、月島製作所製インクラインドディスクドライヤー、大和三光製作所製タコロータリー乾燥機、ウェッジスタイルドライヤー、攪拌ロータリー乾燥機、西村鐵工所製CDドライヤーへ大川原製作所製のヒートポンプシステムを組み込んだ直接加圧型ヒートポンプ式濃縮乾燥機H-VCDドライヤーなどが挙げられる。
西村鐵工所製CDドライヤーは、伝熱面として円筒ドラムの外周面でなく、内部に空洞を有する独自の中空円盤(CD:コンパクトディスク)の両面を使うことで熱通過係数を高めたものである。
【0019】
蒸発工程は、固形化する物質の性質や有用性から常圧または加圧・減圧下で実施できる。
常圧での蒸発工程の処理は、管状RO膜による処理水を100℃で蒸発処理したとき、水分の発生が10~10,000mL/min以下、好ましくは10~1,000mL/min以下となったときを終了として、そのときの蒸発残渣が「乾燥された固形分」となる。「乾燥された固形分」とは、固形物としての取り扱いが可能であれば良く、少量の水分を含んでいてもよい。
水分の発生が10~10,000mL/min以下(好ましくは10~1,000mL/min以下)となった場合には、水分が滴り落ちることなく、実質的に固形物として取扱いが可能になり、さらにその後に回収される水分もごく少量であることと、回収される水分量と蒸発に使用するエネルギー量を考慮すると、さらに蒸発工程を継続することは運転コストの削減とCO2量の削減の観点からも好ましくない。
【0020】
乾燥された固形分(汚泥)は廃棄又は再利用することができる。前記固形分中に、例えば貴金属などの有価物が含まれている場合には回収して再利用することができる。また乾燥された固形分(汚泥)は、大和三光製作所製ボルテックス乾燥焼却装置などを使用して、バイオ燃料として使用することもできる。
本発明の排水処理方法では、管状RO膜を使用するろ過工程の処理により被処理水中の固形分濃度が高められているため、蒸発工程における使用エネルギー量および処理時間を削減できるようになる。
【0021】
前処理工程、管状RO膜による処理工程、及び乾燥工程において、本発明の排水処理を円滑に行う観点から、被処理水中へ消泡剤などの添加剤を、一括添加、又は逐次添加してもよい。
【0022】
本発明の排水処理方法は、各種技術分野における排水処理においてZLD(Zero LiquidDischarge)を適用する場合に好適である。
排水源は特に制限されるものではないが、発電所、海水淡水化施設などのエネルギー施設や造船・自動車・家電製品等の製造工場、切削部品加工工場、塗装工場、染色工場、食品工場、製紙工場などの工場などを挙げることができる。
【実施例】
【0023】
[管状RO膜を用いた排水処理装置の作製]
図1に示す管状RO膜エレメント10を、
図2に示すように、U字管21を使用して、直列に18本連結させた管状RO膜集合体20を作製した。管状RO膜エレメント10は、内径11.5mmの管状ポリエステル不織布支持体の管内表面に0.3mmの酢酸セルロース逆浸透膜(NaCl除去率90%)を積層させた長さ2654mmのものである。この管状RO膜集合体20を
図3に示す筒状のケーシング30に収容し、
図3に示す管状RO膜モジュール30を作製した。この管状RO膜モジュール30を合計4本(30a~30d)と、原水タンク1と、ポンプ2と、透過水タンク3とを、各ライン41~49で連結させて、
図4に示す排水処理装置を作製した。原水タンク1内に入れた排水は、ポンプ2を使用して、ライン41を通過させて、管状RO膜モジュール30aの原水供給部23aから各管状RO膜モジュール30a~30dに順に供給され、各管状RO膜モジュールの管状RO膜集合体20を通過する過程でろ過される。各管状RO膜モジュールでろ過した後の透過水は、各管状RO膜モジュールの各透過水出口25a~25dから排出され、各ライン46~49を通過させて、透過水タンク3に回収される。各管状RO膜モジュールでろ過した後の濃縮水は、最終的に管状RO膜モジュール30dの濃縮水排出部24dから排出され、ライン45を通過させて、原水タンク1に戻され、再度ろ過されることにより原水タンク1内の排水は濃縮される。
【0024】
実施例1
成型機洗浄による含油排水(COD:24,600mg/L)650kg(固形分濃度2.6質量%)を、
図4の排水処理装置を用いて、排水を濃縮し、排水量を22分の1(排水量30kg:固形分濃度57質量%)までに減容化する作業を行った(管状RO膜による処理工程)。
前記排水の固形分をX線マイクロアナライザーによって元素分析を行ったところ、主な元素としてはC:46質量%、O:24質量%、P:12質量%、Na:11質量%であった。
排水処理運転は、ポンプ2により一定圧になるように操作され、運転時の入口圧力(原水供給部23a部の圧力)は4MPa、出口圧力(濃縮水排出部24d部の圧力)は2MPa、各管状RO膜モジュールの膜間圧力は2MPaであった。
各管状RO膜の透過流速は、運転初期では100L/hであったが、排水の濃縮とともに透過流速が徐々に低下し、8時間後には排水量が22分の1となったため、排水処理運転を終了した。この際、透過水のCODは280mg/Lであった。
排水処理運転後に得られた固形分濃度57重量%の排水を、蒸発装置として、西村鐵工所製CDドライヤーを用いて蒸発工程を実施した。
CDドライヤーにスクレパー(固形分掻き取り刃)をセットし、ディスク回転数を5rpmで運転し、ディスク中へ蒸気を入れディスク温度を昇温させながら、スクレパーの締め付けトルクを調整し、暖気運転を実施した。ディスク温度が120℃になった後、ディスク回転数を15rpmに上げ、フィードノズルへ前記排水のポンプ送液を開始した。フィードノズルから吐出される排水は、ディスクの最適位置に当たるように調整した。ディスクに付着しない液分は、排水タンク中へ回収され、再びポンプ送液を行った。ディスクへ付着した液分は、スクレパーへ達するまでにディスク上で蒸発し、生じた固形分はスクレパーで掻き取り、ディスクの直下に設置した固形分回収箱へ落下させ回収した。蒸発水蒸気は、ブロワーにより回収した。蒸発工程中は、蒸気圧を0.2~0.3MPaの範囲内で調整し、ディスク温度が120℃で一定になるよう調整した。なおCDドライヤーによる蒸発工程の排水処理に要したエネルギー量は、装置規模に対して排水量が少なかったため定量化できなかったが、蒸発工程を問題なく実施することができた。
【0025】
実施例1の含油排水650kg(固形分濃度2.6質量%)を、22分の1(排水量30kg:固形分濃度57質量%)までに減容化する排水処理に要したエネルギーを、以下に示す(1)と(2)のケースで比較した。
(1)実施例1の排水処理運転(管状RO膜による処理工程)を実施して、含油排水を減容化した場合
管状RO膜による処理工程に要するエネルギー:22.4kW・h
計算式:管状RO膜装置の所要動力(2.8kW)×運転時間(8h)=22.4KW・h
(2)実施例1の排水処理運転を実施せずに、直接加熱型乾燥機を用いて含油排水を減容化した場合
直接加熱型乾燥機の蒸発工程に要するエネルギー:1027KW・h
計算式:水の蒸発潜熱(2.26MJ/kg)×蒸発水分量(620(650-30)kg)/蒸発装置の乾燥効率(0.4)+水の比熱容量(4.2×10-3MJ/kg℃)×蒸発水分量(620(650-30)kg)×昇温温度(75(100-25)℃)=3698MJ=1027KW・h
※蒸発工程に要するエネルギーの計算は、固形分成分の比熱も水と同じとし、排水(650kg)の初期温度は25℃とし、蒸発装置の乾燥効率を40%として算出した。
【0026】
実施例1の排水処理運転を実施して、含油排水650kg(固形分濃度2.6質量%)を、22分の1(排水量30kg:固形分濃度57質量%)までに減容化するのに要したエネルギー(1)は、実施例1の排水処理運転を実施せずに、直接加熱型乾燥機を用いて含油排水を減容化した場合に要するエネルギー(2)と比較して、約48分の1であり、著しいエネルギー削減が可能なことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の排水処理方法は、ZLDを実現するため、各種分野の工場排水処理法として利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 管状RO膜エレメント
20 管状RO膜エレメント集合体
30 管状RO膜モジュール