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特許7034939直鎖ポリカルボキシレート分散剤を含む石膏スラリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】直鎖ポリカルボキシレート分散剤を含む石膏スラリー
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/14 20060101AFI20220307BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20220307BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20220307BHJP
   C04B 24/20 20060101ALI20220307BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C04B28/14
C04B24/26 E
C04B24/16
C04B24/20
C08F220/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018555872
(86)(22)【出願日】2017-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 US2017033304
(87)【国際公開番号】W WO2017201270
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/339,383
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/588,756
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596172325
【氏名又は名称】ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】アンナマリア・ヴィリンスカ
(72)【発明者】
【氏名】アルフレッド・シー・リー
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・デュピュイ
(72)【発明者】
【氏名】イオルダナ・トライアンタフィリュー
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・ロワゾー
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特許第2978560(JP,B2)
【文献】特開平03-199177(JP,A)
【文献】特開2014-208589(JP,A)
【文献】特表2008-543716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0270969(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102515611(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02,
C04B40/00-40/06,
C04B103/00-111/94
C08F 220/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、
水硬性成分の乾燥重量に基づいて少なくとも80重量%の硫酸カルシウム半水和物を含む水硬性成分と、
第1のモノマー反復単位A及び第2のモノマー反復単位Bを含み、かつポリビニルアセテートモノマー単位が存在しない、直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤と、の混合物を含む、凝固性スラリーであって、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、前記スラリー中に、前記硫酸カルシウム半水和物に対する百分率として計算した乾燥分散剤の重量として、約0.01%から約2%の量で含まれ、
前記第1のモノマー反復単位Aが、式Iのオレフィン部分を含有する少なくとも1つのカルボン酸官能基であり、
【化1】
式中、Rは、-CH、及び-CH-C(O)-OH、またはそのNa、K、もしくはNH 塩からなる群から選択され、
前記第2のモノマー反復単位Bが、式IIに従う少なくとも1つのビニルスルホネートであり、
【化2】
式中、XはNHまたはOであり、RはHまたは-CHであり、Rは式-(C2n)-(式中、n=2~6)を有する直鎖または分岐アルキレン基であり、M=H、Na、K、またはNH であり、
前記第1のモノマー反復単位Aの前記第2のモノマー反復単位Bに対するモル比が、1:9~9:1であり、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、アクリル酸モノマーを含まず、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の重量平均分子量が、3000~100000ダルトンであり、
前記スラリーにおける水の硫酸カルシウムの半水和物に対する重量比が、0.1~1.5:1である、スラリー。
【請求項2】
水と、
水硬性成分の乾燥重量に基づいて少なくとも50重量%の硫酸カルシウム半水和物を含む水硬性成分と、
第1のモノマー反復単位A及び第2のモノマー反復単位Bを含み、かつポリビニルアセテートモノマー単位が存在しない、直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤と、の混合物を含む、スラリーであって、
前記第1のモノマー反復単位Aが、式Iのオレフィン部分を含有する少なくとも1つのカルボン酸官能基であり、
【化3】
式中、Rは、-CH 、及び-CH -C(O)-OH、またはそのNa、K、もしくはNH 塩からなる群から選択され、
前記第2のモノマー反復単位Bが、式IIIaに従う少なくとも1つのビニルスルホネートまたはそのNa、K、もしくはNH 塩のうちの1つから選択され、
【化4】
前記第1のモノマー反復単位Aの前記第2のモノマー反復単位Bに対するモル比が、1:9~9:1であり、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の重量平均分子量が、3000~100000ダルトンであり、
前記スラリーにおける水の硫酸カルシウムの半水和物に対する重量比が、0.1~1.5:1である、スラリー。
【請求項3】
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤が、式Vの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸
【化5】
またはそのNa、K、もしくはNH のうちの1つと、
式VIのメタクリル酸
【化6】
またはそのNa、K、もしくはNH 塩のうちの1つとのコポリマーであるメタクリル酸-co-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホネートである、請求項1に記載のスラリー。
【請求項4】
前記第1のモノマー反復単位が、式Iのメタクリル酸(MAA)反復単位であり、
【化7】
式中、Rは、-CH、またはそのNa、K、もしくはNH 塩のうちの1つであり、
前記第1のモノマー反復単位Aの前記第2のモノマー反復単位Bに対するモル比が、1:4~4:1であり、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の重量平均分子量が、5000~60000ダルトンである、請求項1に記載のスラリー。
【請求項5】
水と、
水硬性成分の乾燥重量に基づいて少なくとも50重量%の硫酸カルシウム半水和物を含む水硬性成分と、
第1のモノマー反復単位A及び第2のモノマー反復単位Bを含み、かつポリビニルアセテートモノマー単位が存在しない、直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤と、の混合物を含む、スラリーであって、
前記第1のモノマー反復単位A、式Iaのイタコン酸(IT)反復単位、
【化8】
またはそのNa、K、もしくはNH 塩のうちの1つであり、
前記第2のモノマー反復単位Bが、式IIに従う少なくとも1つのビニルスルホネートであり、
【化9】
式中、XはNHまたはOであり、R はHまたは-CH であり、R は式-(C 2n )-(式中、n=2~6)を有する直鎖または分岐アルキレン基であり、M=H、Na、K、またはNH であり、
前記第1のモノマー反復単位Aの前記第2のモノマー反復単位Bに対するモル比が、1:9~1:1であり、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の重量平均分子量が、5000~60000ダルトンであ
前記スラリーにおける水の硫酸カルシウムの半水和物に対する重量比が、0.1~1.5:1である、スラリー。
【請求項6】
前記水硬性成分が、少なくとも85重量%の硫酸カルシウム半水和物を含む、請求項1に記載のスラリー。
【請求項7】
ポリナフタレンスルホネートをさらに含む、請求項1に記載のスラリー。
【請求項8】
硫酸カルシウム二水和物と、第1のモノマー反復単位A及び第2のモノマー反復単位Bを含み、かつポリビニルアセテートモノマー単位が存在しない、直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤と、を含む、石膏コア材料、を含む、石膏板であって、
前記第1のモノマー反復単位Aが、式Iのオレフィン部分を含有する少なくとも1つのカルボン酸官能基であり、
【化10】
式中、Rは、-CH及び-CH-C(O)-OH、またはそのNa、K、もしくはNH 塩からなる群から選択され、
前記第2のモノマー反復単位Bが、式IIに従う少なくとも1つのビニルスルホネートであり、
【化11】
式中、XはNHまたはOであり、RはHまたは-CHであり、Rは式-(C2n)-(式中、n=2~6)を有する直鎖または分岐アルキレン基であり、M=H、Na、K、またはNH であり、
前記第1のモノマー反復単位Aの前記第2のモノマー反復単位Bに対するモル比が、1:9~9:1であり、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、アクリル酸モノマーを含まず、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の重量平均分子量が、3000~100000ダルトンであり、
前記石膏コア材料が、10~92体積%の全空隙体積を有
前記石膏コア材料は、水と、水硬性成分の乾燥重量に基づいて少なくとも80重量%の硫酸カルシウム半水和物を含む水硬性成分と、前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤と、の混合物を含む、スラリーから製造され、前記スラリーにおける水の硫酸カルシウムの半水和物に対する重量比が、0.1~1.5:1であり、前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、前記スラリー中に、前記硫酸カルシウム半水和物に対する百分率として計算した乾燥分散剤の重量として、約0.01%から約2%の量で含まれる、
石膏板。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載のスラリーを作製する方法であって、
前記水の、混合される硫酸カルシウム半水和物に対する重量比が、0.1~1.5:1となるように、前記水と、前記硫酸カルシウム水和物を含む前記水硬性成分と、前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤とを混合して、前記スラリーを作製することを含む、方法。
【請求項10】
請求項に記載のスラリーから石膏板を作製する方法であって、
前記スラリーに空気を取り込むことにより及び/又は前記スラリーに泡沫水を加えることにより前記スラリーが5~70体積%の気泡を有するようにすることと、
前記スラリーをカバーシート上に堆積させて石膏コア材料を形成することと
前記スラリー中の前記硫酸カルシウム半水和物を硫酸カルシウム二水和物に転化させることと、前記スラリーを凝固させて前記板を形成することと、
を含
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、前記硫酸カルシウム半水和物の添加前に、前記水に添加される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、石膏板、補強石膏複合板、プラスター、機械加工可能材料、目地処理材料、及び吸音タイル等の凝固石膏含有製品を調製するための方法及び組成物、ならびにそれらを製造するための方法及び組成物に関する。より具体的には、本発明は、分散剤として1つ以上の直鎖ポリカルボキシレートを用いて作製されたこのような凝固石膏含有製品に関する。これは、高粘土スタッコ源の分散の改善にも適切である。
【背景技術】
【0002】
多くの周知の有用な製品は、重要な成分として、多くの場合、主成分として、凝固石膏(硫酸カルシウム二水和物)を含有する。例えば、凝固石膏は、建造物の内壁及び天井の典型的な乾式壁構造に用いられる紙直面石膏板の主成分である(例えば、米国特許第4,009,062号及び同第2,985,219号)。これは、米国特許第5,320,677号に記載されているように、石膏/セルロース繊維複合板及び製品の主成分でもある。石膏板の縁の間の目地を充填して平滑にする製品は、多くの場合、多量の石膏を含有する(例えば、米国特許第3,297,601号)。吊り天井に有用な吸音タイルは、例えば、米国特許第5,395,438号及び同第3,246,063号に記載されているように、かなりの割合の凝固石膏を含有し得る。例えば、プラスター表面の建造物内壁を作成するために使用される一般的な従来のプラスターは、通常、主に凝固石膏の形成に依存する。米国特許第5,534,059号に記載されているように、正確に機械加工可能なモデル化及び型作製に有用な材料等の多くの特殊材料は、多量の石膏を含有する。
【0003】
このような石膏含有製品の大部分は、焼き石膏(硫酸カルシウム半水和物及び/または硫酸カルシウム無水物)と水(及び必要に応じて他の成分)との混合物を形成し、この混合物を所望の成形型内または表面上に流し込み、焼き石膏を水と反応させて結晶化水和石膏(硫酸カルシウム二水和物)のマトリクスを形成することにより、この混合物を硬化させて凝固(すなわち再水和)石膏を形成することによって、調製される。これは、多くの場合、残りの遊離(未反応)水を取り出して乾燥製品を得るために、弱い加熱によって行われる。焼き石膏の所望の水和によって、凝固石膏結晶のインターロッキングマトリクスの形成が可能になり、石膏含有製品の石膏構造に強度が付与される。
【0004】
使用中に遭遇し得る応力に対してより耐性を持たせるために、それらの成分凝固石膏結晶構造の強度を増加させるのであれば、上述の石膏含有製品の全ては、利益をもたらし得る。
【0005】
壁板パネルを作製するために、硫酸カルシウム半水和物及び水を含むスラリーが、コアを形成するために使用され、混合機の下を移動する紙カバーシート上に連続的に堆積される。その上に第2の紙カバーシートが塗布され、得られたアセンブリがパネルの形状に形成される。硫酸カルシウム半水和物は、十分な量の水と反応して、その半水和物をインターロッキング硫酸カルシウム二水和物結晶のマトリクスに転化し、これを凝固させて固める。このようにして形成された連続ストリップは、焼き石膏が凝固するまでベルト上を搬送され、その後ストリップは、所望の長さの板を形成するように切断され、その板は過剰水分を除去するように乾燥窯を通って搬送される。これらのステップの各々は数分しかかからないため、工程ステップのいずれの小さな変更も、製造工程の全体的な非効率性につながる可能性がある。
【0006】
スラリーを形成するために添加される水の量は、水和反応を完了させるのに必要な量を上回る。石膏スラリーに添加される水の一部は、硫酸カルシウム半水和物としても知られる焼き石膏を水和させて、硫酸カルシウム二水和物結晶のインターロッキングマトリクスを形成するために使用される。過剰水は、混合機から出て対向する材料上に流れて適切な幅及び厚さに成形されるように十分な流動性をスラリーに与える。製品が湿っている間は、移動するには非常に重く、比較的壊れ易い。過剰水は、蒸発によって板から除去される。過剰水を室温で蒸発させるのであれば、壁板を積み重ねて保管する多大なスペースを必要とし得るが、壁板を空気乾燥させること、または適切な乾燥時間を提供するのに十分な長さのコンベヤーを有することが可能になる。板が凝固し、かつ比較的乾燥するまで、板は若干壊れ易いため、破砕または損傷から保護されなければならない。
【0007】
比較的短時間で板を乾燥させるために、壁板製品は、通常、例えばオーブンまたは窯において高温で過剰水を蒸発させることによって乾燥される。窯を建設し高温で操作することは、特に化石燃料の費用が上昇する場合に、比較的費用がかかる。後に蒸発によって除去される凝固石膏板に存在する過剰水の量を減少させることによって、製造費用の削減が実現され得る。
【0008】
水を減少させる別の理由として、石膏製品の強度が、特に全密度スラリーでのその製造に使用される水の量に反比例することが挙げられる。過剰水が蒸発するとき、過剰水は、水によって占められていたマトリクスの空隙を離れる。石膏スラリーを流動化するために多量の水を使用する場合、完全に乾燥したときに、より多くのかつより大きな空隙が製品中に残る。これらの空隙は、最終製品の製品密度及び強度を低下させる。
【0009】
分散剤は、石膏とともに使用して水及び硫酸カルシウム半水和物の混合物を流動化する助けになることで知られており、流動性スラリーの作製に必要な水が削減される。
【0010】
現在、石膏スラリー分散剤のために2つの主な商業的選択肢が存在する。1)ポリナフタレンスルホネート分散剤及び2)分岐ポリカルボキシレート。
【0011】
ポリナフタレンスルホネート分散剤は、周知であり、比較的安価であるが、有効性が限られている。ポリナフタレンスルホネートは、デンプン、発泡剤、及び粘土との良好な相溶性を有する。ポリナフタレンスルホネートの製造工程は、ナフタレンを硫酸でスルホン化してb-ナフタレンスルホン酸を製造すること、b-ナフタレンスルホン酸をホルムアルデヒドと縮合させてポリメチレンナフタレンスルホン酸を製造すること、ポリメチレンナフタレンスルホン酸を水酸化ナトリウムまたは別の水酸化物で中和することという反応ステップを含む。反応条件に応じて、異なる特性を有する製品が得られる。
【0012】
Gaidisらに対するUS4,460,720は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のポリナフタレンスルホネート-ホルムアルデヒドまたはアルカリ金属リグノスルホネートもしくはアルカリ土類金属リグノスルホネートまたはその混合物と組み合わせた低分子量アルカリ金属ポリアクリレートから形成されたポートランド系組成物のための超可塑剤セメント混和剤を開示している。
【0013】
US5,718,759は、ベータ焼き石膏とセメントとの混合物にシリケートを添加することを開示している。その例では、リグノスルホネートまたはポリナフタレンスルホネートが減水剤として使用されている。シリケートを含むポゾラン材料の添加により、エトリンガイトの形成による膨張を減少させるものと認められている。この組成物は、裏打ち板、床下敷、道路補修材料、防火材料、及び繊維板等の建築材料の使用に提案されている。
【0014】
分岐ポリカルボキシレートは、より高価でより有効な分散剤である。しかしながら、粘土を含むスタッコにはあまり有効ではない。また、分岐ポリカルボキシレートは、板強度を低下させ、表面活性であり、発泡剤を妨害する可能性がある。また、分岐ポリカルボキシレートの側鎖のために、それらをポリナフタレンスルホネートと混合することはできない。Liuらに対するUS7,767,019は、分岐ポリカルボキシレートの実施形態を開示している。
【0015】
したがって、上述の問題を解決、回避、または最小化する、新規で改良された凝固石膏含有製品、及びそれらを製造するための組成物及び方法が引き続き必要とされている。スラリーの流動性を維持しながら、石膏スラリー中に使用される分散剤の用量を減少させる必要が当該技術分野にある。分散剤使用量の減少により、分散剤に要する費用の節約がもたらされる。
【発明の概要】
【0016】
石膏及び分岐ポリカルボキシレート超分散剤を含有する上述の製品の代替物として、本発明は、石膏及び直鎖ポリカルボキシレート系分散剤を含有する製品及び組成物を提供する。これらの分散剤は、石膏スラリーを分散させるのに有効である。市販の分岐ポリカルボキシレート超分散剤とは異なり、直鎖ポリカルボキシレートは、分岐ポリカルボキシレートの側鎖に関連する問題を回避し、ポリナフタレンスルホネートにより類似している。
【0017】
したがって、本発明は、石膏スラリー及びそれを作製する方法を提供する。
水と、
水硬性成分の乾燥重量に基づいて少なくとも50重量%の硫酸カルシウム半水和物を含む水硬性成分と、
第1のモノマー反復単位A及び第2のモノマー反復単位Bから本質的になり、かつポリビニルアセテートモノマー単位が存在しない、直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤と、の混合物を含むまたは混合物から本質的になる、石膏スラリーであって、
第1の反復単位Aが、式Iのオレフィン部分を含有する少なくとも1つのカルボン酸官能基であり、
【0018】
【化1】
【0019】
式中、Rは、-CH及び-CH-C(O)-OH、またはそのNa、K、もしくはNH 塩からなる群から選択され、
第2のモノマー反復単位Bが、式IIに従う少なくとも1つのビニルスルホネートであり、
【0020】
【化2】
【0021】
式中、XはNHまたはOであり、RはHまたは-CHであり、Rは式-(C2n)-(式中、n=2~6)を有する直鎖または分岐アルキレン基であり、M=H、Na、K、またはNH であり、
第1の反復単位Aの第2の反復単位Bに対するモル比が、1:9~9:1であり、
直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の重量平均分子量が、3000~100000ダルトンであり、
スラリーが、0.1~1.5:1、好ましくは0.2~0.8:1、より好ましくは0.4~0.8:1の水の硫酸カルシウム半水和物に対する重量比を有する、石膏スラリー。
【0022】
本出願では、本質的になるという用語は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び置換もしくは非置換アリール基を含有する側鎖を有する、Liuらに対する米国特許出願公開第2006/0278130号の式Iの第2の反復単位を排除することを意図している。本質的になるという用語はまた、ポリビニルアセテートモノマー単位を排除することも意図している。
【0023】
重量平均分子量は、3000~100000ダルトン、好ましくは5000~60000ダルトン、最も好ましくは5000~35000ダルトンである。
【0024】
第1の反復単位Aの第2の反復単位Bに対するモル比は、1:9~9:1である。第1の反復単位Aがメタクリル酸(MAA)反復単位である場合、第1の反復単位Aの第2の反復単位Bに対するモル比は、1:4~4:1、好ましくは2:3~7:3である。第1の反復単位Aがイタコン酸反復単位である場合、第1の反復単位Aの第2の反復単位Bに対するモル比は、1:9~1:1、好ましくは1:8~1:2である。
【0025】
本発明の直鎖ポリカルボキシレートポリマー分子の吸着は、ポリナフタレンスルホネートの吸着よりも強く、分散剤表面はより帯電している。したがって、反発力によって、ポリナフタレンスルホネートよりも多くの水の減少を可能にする。さらに、これらのポリマーは、ポリナフタレンスルホネートと組み合わせることができ、より困難で不均一なスタッコに使用することができる。直鎖ポリカルボキシレートは、ポリナフタレンスルホネートよりも有効な分散剤であり、極めて低い空気巻き込み能力を有する。したがって、直鎖ポリカルボキシレートは、発泡に敏感な用途に、より適切である。Liuらに対する米国特許出願公開第2006/0278130号の式Iの第2の反復単位の側鎖の欠如により、これらの直鎖ポリカルボキシレートは、石膏スラリーに分散剤として添加される場合、スラリーに添加される泡を妨害しない。
【0026】
直鎖ポリカルボキシレート分散剤はまた、水硬性成分が高粘土スタッコ源である場合に、水硬性成分の分散も改善し得る。高粘土スタッコ源は、硫酸カルシウム半水和物及び粘土を含むものであり、硫酸カルシウム半水和物が、少なくとも80重量%のスタッコを含み、粘土が、0.01~20重量%のスタッコ、特に0.1~20重量%のスタッコ、またはより好ましくは0.5~15重量%のスタッコを含む。
【0027】
直鎖ポリカルボキシレート分散剤は、ポリナフタレンスルホネート分散剤とともに使用してもよい。ナフタレンスルホネートモノマー単位は、それぞれ式VIに従い、ナフタレンスルホネートにホルムアルデヒドを加えたものである。
【0028】
【化3】
【0029】
本明細書で使用する「硫酸カルシウム材料」という用語は、硫酸カルシウム無水物、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム二水和物、カルシウム及び硫酸のイオン、またはそれらの任意のまたは全ての混合物を意味することを意図している。好ましくは、スラリーを作製するために添加される硫酸カルシウム材料は、大部分が硫酸カルシウム半水和物である。
【0030】
スラリーを作製する方法であって、
水と、硫酸カルシウム二水和物を含む水硬性成分と、上述の直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤とを混合して、スラリーを作製することを含み、水の混合される硫酸カルシウム半水和物に対する重量比が0.2~1.5:1、好ましくは0.2~0.8:1、より好ましくは0.4~0.7:1であり、
直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤が、上述の第1のモノマー反復単位A及び上述の第2のモノマー反復単位Bを含み、かつポリビニルアセテートモノマー単位が存在しない、方法。
【0031】
本発明はまた、
硫酸カルシウム二水和物と、上述の第1のモノマー反復単位A及び上述の第2のモノマー反復単位Bを含み、かつポリビニルアセテートモノマー単位が存在しない、上述の直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤とを含む石膏コア材料、を含む、凝固石膏製品、好ましくは石膏板も提供する。
【0032】
本発明の凝固石膏含有製品は、硫酸カルシウム材料、水、及び適切な量の上記1つ以上の本発明の直鎖ポリカルボキシレート分散剤の混合物を形成することによって、本発明に従って調製される。次いで、この混合物を、硫酸カルシウム材料が改良された凝固石膏材料を形成するのに十分な条件下で維持する。
【0033】
好ましくは、板等の凝固石膏含有製品を製造するための方法は、焼き石膏、水、及び直鎖ポリカルボキシレート分散剤の混合物を形成することと、この混合物を、焼き石膏が凝固石膏に転化するのに十分な条件(例えば、好ましくは約120°F未満の温度)に維持することと、を含む。
【0034】
好ましくは、スラリーは、直鎖ポリカルボキシレート分散剤と、水硬性成分の乾燥重量に基づいて少なくとも50重量%の硫酸カルシウム半水和物を含む水硬性成分とを含む石膏コア材料を含む石膏パネルに作製される。
【0035】
本発明の方法は、紙または他の材料のカバーシートの間に挟まれた凝固石膏のコアを含む石膏板を製造してもよい。好ましくは、板は、焼き石膏、水、及び直鎖ポリカルボキシレート分散剤の流動性混合物(スラリー)を形成し、それをカバーシート間に堆積させ、得られたアセンブリを凝固及び乾燥させることによって調製される。スラリーを第1のカバーシート上に堆積させ、次いで第2のカバーシートを凝固しているスラリーの上に塗布する。
【0036】
具体的には、石膏板を作製する方法は、
水と、硫酸カルシウム二水和物を含む水硬性成分と、直鎖ポリカルボキシレートとを混合してスラリーを作製することであって、水の混合される硫酸カルシウム半水和物に対する重量比が0.2~1.5:1、好ましくは0.2~0.8:1、より好ましくは0.4~0.7:1である、作製することと、
スラリーをカバーシート上に堆積させて石膏コア材料を形成することであって、
スラリーが5~70体積%の気泡を有する、形成することと、
スラリー中の硫酸カルシウム半水和物を硫酸カルシウム二水和物に転化させることと、スラリーを凝固させて板を形成することと、を含む。
【0037】
全ての割合及び比率は、他に指示がない限り重量比である。全ての分子量は、他に指示がない限り、重量平均分子量である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の板を示す。
図2】実施例4、実験シリーズ4-1の水和データを示す。
図3】実施例4、実験シリーズ4-2の水和データを示す。
図4】実施例4、実験シリーズ4-3の水和データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、硫酸カルシウム半水和物、水、及び本発明の直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤から作製された石膏スラリーを提供する。
【0040】
本発明は、先行技術で用いられている組成物及び方法と類似した組成物及び方法を用いて、様々な凝固石膏含有製品を調製するために実施され得る。様々な凝固石膏含有製品を調製するために先行技術で用いられている組成物及び方法と本発明の組成物及び方法との本質的な相違点は、本発明が分散剤として直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤を用いることにある。
【0041】
水硬性材料は、好ましくは少なくとも50%の量で、スタッコまたは焼き石膏としても知られている任意の硫酸カルシウム半水和物を含む。好ましくは、硫酸カルシウム半水和物の量は、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%である。多くの壁板配合物では、水硬性材料は、実質的に全て硫酸カルシウム半水和物である。アルファまたはベータスタッコを含むがこれに限定されない、任意の形態の焼き石膏を使用してもよい。好ましくは20%未満の少量ではあるが、硫酸カルシウム無水物、合成石膏、または粉末石膏の使用も企図される。セメント及びフライアッシュを含む他の水硬性材料は、任意選択でスラリーに含まれる。
【0042】
本発明によりいずれのスタッコも利益をもたらすが、異なる供給源からのスタッコは、異なる量及び種類の塩及び不純物を含む。本発明のスラリーは、硫酸カルシウム半水和物が比較的高い濃度の天然由来の塩を有する場合にあまり有効ではない。低塩スタッコは、300ppm未満の可溶性塩を有するものとして定義される。高塩含量スタッコは、少なくとも600ppmの可溶性塩を有するものを含む。オクラホマ州サウサード、ノバスコシア州リトルナローズ、アイオワ州フォートドッジ、テキサス州スウィートウォーター、カリフォルニア州プラスターシティ、及び他の多くの場所からの石膏鉱床は、この選好を満たす。
【0043】
好ましくは、硫酸カルシウム半水和物は、600ppm未満の可溶性塩を含む。
【0044】
直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、乾燥石膏の割合として計算される乾燥分散剤の約0.01重量%~約2重量%の量で該スラリー中に存在する。好ましくは、直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、乾燥石膏の割合として計算される乾燥分散剤の約0.05重量%~約0.5重量%の量で存在する。
【0045】
石膏スラリーは、0.1~1.5:1、好ましくは0.2~0.8:1、より好ましくは0.4~0.8:1の水の硫酸カルシウム半水和物に対する重量比を有する。
【0046】
典型的には、空気が石膏スラリーに添加される。好ましくは、石膏スラリーは、5~70体積%の空気、より好ましくは10~70体積%の空気、最も好ましくは20~60体積%の空気を有する。
【0047】
直鎖カルボキシレートアニオン性分散剤
直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、第1のモノマー反復単位A及び第2のモノマー反復単位Bから本質的になり、ポリビニルアセテートモノマー単位が存在しない。
【0048】
本発明の本説明において、本質的になるという用語は、アルキレンオキシ側鎖を有する反復単位を排除することを意図している。例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び非置換または置換アリール基を含有する側鎖を有するLiuらに対する米国特許出願公開第2006/0278130号の式Iの第2の反復単位は除外される。本質的になるという用語はまた、ポリビニルアセテートモノマー単位を排除することも意図している。
【0049】
第1の反復単位Aは、式Iのオレフィン部分を含有する少なくとも1つのカルボン酸官能基であり、
【0050】
【化4】
【0051】
式中、Rは、-CH及び-CH-C(O)-OH、またはそのNa、K、もしくはNH 塩からなる群から選択される。これは、式Iaを有するモノマーから作製され、
【0052】
【化5】
【0053】
式中、Rは、-CH及び-CH-C(O)-OH、またはそのNa、K、もしくはNH 塩からなる群から選択される。すなわち、第1の反復単位Aを作製するためのモノマーは、式Iaのメタクリル酸(MAA)もしくは式Ibのイタコン酸(IA)、
【0054】
【化6】
【0055】
【化7】
【0056】
またはNa、K、もしくはNH 塩である。
【0057】
本発明の直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の第2の反復単位Bは、少なくとも1つのビニルスルホネートモノマー単位である。このビニルスルホネートモノマー単位は、式IIに従うスルホネートに結合したビニル基を有し、
【0058】
【化8】
【0059】
式中、XはNHまたはOであり、RはHまたは-CHであり、Rは式-(C2n)-(式中、nは2~6である)を有する直鎖または分岐アルキレン基であり、MはH、Na、KまたはNH である。これは、式IIaのモノマーを含有するスルホネートから作製され、
【0060】
【化9】
【0061】
式中、XはNHまたはOであり、RはHまたは-CHであり、Rは式-(C2n)-(式中、nは2~6である)を有する直鎖または分岐アルキレン基であり、MはH、Na、K、またはNH である。
【0062】
第1の反復単位Aの第2の反復単位Bに対するモル比は、1:9~9:1である。
【0063】
第2の反復単位Bを作製するのに好適なモノマーは、3-(アクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸またはそのNa、K、もしくはNH 塩のうちの1つ、あるいは2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸またはそのNa、K、またはNH 塩のうちの1つである。
【0064】
3-(アクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸は構造IIIを有する。
【0065】
【化10】
【0066】
二重結合は、これを構造IIIaの第2の反復単位Bに転化するように反応する。
【0067】
【化11】
【0068】
2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸は、構造IVを有する。
【0069】
【化12】
【0070】
二重結合は、これを構造IVaの第2の反復単位Bに転化するように反応する。
【0071】
【化13】
【0072】
第1の反復単位Aが式Iを有する場合、
【0073】
【化14】
【0074】
式中、Rは-CHであり、
好ましくは、第1の反復単位Aの第2の反復単位Bに対するモル比は、1:4~4:1であり、最も好ましくは、第1の反復単位Aの第2の反復単位Bに対するモル比は、2:3~7:3である。すなわち、好ましくは、第1の反復単位Aは、20~80モル%であり、第2の反復単位Bは、20~80モル%であり、最も好ましくは、第1の反復単位Aは、40~70モル%であり、第2の反復単位Bは、30~60モル%である。
【0075】
第1の反復単位Aが式Iaを有する場合、
【0076】
【化15】
【0077】
好ましくは、第1の反復単位Aの第2の反復単位Bに対するモル比は1:9~1:1、最も好ましくは1:8~1:2である。すなわち、好ましくは、第1の反復単位Aは、10~50モル%であり、第2の反復単位Bは、50~90%であり、最も好ましくは、第1の反復単位Aは、12~33%であり、第2の反復単位Bは、67~88モル%である。
【0078】
本発明の直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の重量平均分子量は、3,000~100,000ダルトン、好ましくは5,000~60,000ダルトン、最も好ましくは5,000~35,000ダルトンである。
【0079】
好適な直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、MAAと3-(アクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸とのコポリマー、MAAと2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムとのコポリマー、イタコン酸と3-(アクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸とのコポリマー、イタコン酸と2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムとのコポリマー、またはこれらのコポリマーのいずれかのNa、K、もしくはNH 塩からなる群のうちの少なくとも1つの要素から選択される。
【0080】
例えば、好適な直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、式Vのメタクリル酸、
【0081】
【化16】
【0082】
式VIの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸
【0083】
【化17】
【0084】
のコポリマーであるメタクリル酸-co-2-アクリルアミド-2-メチル-プロパンスルホネートである。
【0085】
好ましくは、本発明で用いられる直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、メタクリル酸(MAA)及びイタコン酸(IA)からなる群から選択されるカルボン酸と、式IIaのモノマーを含有するスルホネートとを組み合わせたラジカル重合によって合成されるポリマーである。
【0086】
【化18】
【0087】
好ましくは、直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、ラジカル開始剤(無機過酸化物)及び標準的な連鎖移動剤(メルカプタン)を使用して水性媒体中でラジカル重合により合成される。典型的には、2.0を超える多分散性が得られ、ポリマー末端基は、開始剤、連鎖移動剤、及びモノマー単位の不活性化型の混合物であるように理論化される。他のラジカル重合法を代替えとして使用してもよい。
【0088】
本発明の直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤は、ポリビニルアセテートモノマー基が存在しない。例えば、本発明の直鎖ポリカルボキシレートは、構造VIIのモノマー基が存在せず、
【0089】
【化19】
【0090】
式中、Rは、アルキル、フェニル、またはアルキルフェニルである。
【0091】
また、本発明の直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤には、アルキレンオキシ側鎖を有するモノマー反復単位、例えばポリプロピレンオキシドまたはポリエチレンオキシド側鎖が存在しない。例えば、本発明の直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び非置換または置換アリール基を含有する側鎖を有するLiuらに対する米国特許出願公開第2006/0278130号の式Iの第2の反復単位が存在しない。これらは、式VIIに従うアルケニルポリエーテルグリコール反復単位である。
【0092】
【化20】
【0093】
は、式VIIIで表されるアルキレンオキシ側鎖であり、
【0094】
【化21】
【0095】
式中、Rは、水素または脂肪族C~C炭化水素基であり、Rは、非置換または置換のアリール基、好ましくはフェニルであり、Rは、水素もしくは脂肪族C~C20炭化水素基、脂環式C~C炭化水素基、置換C~C14アリール基、または式IX:
【0096】
【化22】
【0097】
に適合する基であり、
式中、R及びRは、互いに独立して、アルキル、アリール、アラルキル、またはアルキルアリール基を表し、Rは、二価のアルキル、アリール、アラルキル、またはアルカリール基であり、pは0~3(両端を含む)であり、m及びnは、独立して、2~4(2、4を含む)の整数であり、x及びyは、独立して、55~350(両端を含む)の整数であり、zは0~200(両端を含む)である。
【0098】
さらに、本発明の直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤には、好ましくは、構造Xの以下の構造式Xのモノマー基が存在せず、
【0099】
【化23】
【0100】
式中、Rは、NH、NH(CH)、N(CH、-O-CH-CH(OH)-CH、(EO)、(PO)(nは1以上、mは1以上)である。
【0101】
さらに、本発明の直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤には、好ましくは、その骨格にポリビニルアルコールモノマー単位が存在しない。
【0102】
縮合リン酸から選択される増強材料
好ましくは、組成物はまた、その各々が2つ以上のリン酸単位を含む縮合リン酸、及びその各々が2つ以上のホスフェート単位を含む縮合ホスフェートの塩またはイオンから選択される増強材料も含有する。増強材料は、好ましくは、その各々が1つ以上のリン酸単位を含むリン酸、その各々が2つ以上のホスフェート単位を含む縮合ホスフェートの塩またはイオン、オルトホスフェートの一塩基性塩または一価イオンからなる群から選択される。増強材料は、形成された凝固石膏の永久変形に対する耐性を高める。さらに、いくつかの増強材料(例えば、以下の塩またはそのアニオン性部分、トリメタリン酸ナトリウム(本明細書ではSTMPとも呼ばれる)、6~27の反復ホスフェート単位を有するヘキサメタリン酸ナトリウム(本明細書ではSHMPとも呼ばれる)、及び1000~3000の反復ホスフェート単位を有するポリリン酸アンモニウム(本明細書ではAPPとも呼ばれる)は、サグ耐性のより大きな増加等の好適な利益を提供する。また、APPは、STMP濃度のわずか4分の1で添加した場合でも、STMPによって提供されるものと同等のサグ耐性を提供する。
【0103】
典型的には、これは、凝固石膏含有製品を製造するために使用される焼き石膏及び水の混合物にトリメタリン酸イオンを添加することによって達成される。本明細書で使用される用語「焼き石膏」は、アルファ硫酸カルシウム半水和物、ベータ硫酸カルシウム半水和物、水溶性硫酸カルシウム無水物、またはそれらの任意のまたは全ての混合物を意味することを意図し、用語「凝固石膏」及び「水和石膏」は、硫酸カルシウム二水和物を意味することを意図している。混合物中の水は焼き石膏と自然に反応して凝固石膏を形成する。
【0104】
したがって、本発明の組成物は、好ましくはトリメタリン酸塩を含む。本発明の組成物に含まれるトリメタリン酸塩は、組成物の他の成分に悪影響を及ぼさない任意の水溶性トリメタリン酸塩を含み得る。有用な塩のいくつかの例として、特に、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸カリウム、トリメタリン酸アンモニウム、トリメタリン酸リチウム、トリメタリン酸アルミニウム、及びそれらの混合塩が挙げられる。トリメタリン酸ナトリウムが好適である。これは、例えば、以前ミズーリ州セントルイスのモンサント社(Monsanto Company)の部門であった、ミズーリ州セントルイスのSolutia Inc.から容易に入手可能である。
【0105】
トリメタリン酸化合物を石膏スラリーに添加して、製品の強度を増強し、凝固石膏のサグ耐性を改善する。好ましくは、トリメタリン酸化合物の濃度は、焼き石膏の重量に基づいて約0.07%~約2.0%である。トリメタリン酸化合物を含む石膏組成物は、両特許とも参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,342,284号及び同第6,632,550号に開示されている。例示的なトリメタリン酸塩として、トリメタホスフェートのナトリウム塩、カリウム塩、またはリチウム塩、例えば、Astaris、LLC、St.Louis、MOから入手可能なものが挙げられる。スラリーのpHを上昇させる石灰または他の改変剤とともにトリメタホスフェートを使用する場合は注意が必要である。pHが約9.5を超えると、トリメタホスフェートはその製品を強化する能力を失い、スラリーは著しく遅延性になる。
【0106】
具体的には、本発明の好適な方法の1つの実施に使用するために、トリメタリン酸塩を焼き石膏の水性混合物中に溶解して、焼き石膏の重量に基づいて約0.004~約2.0重量%のトリメタホスフェートイオン濃度を生じさせる。トリメタホスフェートイオンの好適な濃度は、約0.04~約0.16%である。より好適な濃度は約0.08%である。本発明のいくつかの実施形態の実施におけるより容易な保管及び供給のために所望される場合、トリメタリン酸塩は、水中で予め溶解され、水溶液の形態で混合物中に挿入され得る。
【0107】
使用時、凝固石膏を形成するためには、トリメタホスフェートイオンが、焼き石膏の水和中に焼き石膏の水性混合物中に存在するだけでよい。したがって、通常、トリメタホスフェートイオンを初期段階に混合物中に挿入することが最も便宜的、ひいては好適である一方で、トリメタホスフェートイオンを、焼き石膏及び水の混合物に若干後の段階で挿入することでも十分である。例えば、典型的な石膏板を調製する際、水、直鎖ポリカルボキシレート分散剤、及び焼き石膏を混合装置で一緒にし、完全に混合し、次いで、通常は移動ベルト上でカバーシート上に堆積させ、凝固石膏を形成する焼き石膏の再水和の大部分が発生する前に、堆積した混合物の上に第2のカバーシートを置く。混合装置中で調製する間に混合物中にトリメタホスフェートイオンを入れることが最も便宜的であるが、トリメタホスフェートイオンを後の段階で、例えば、第2のカバーシートが堆積物上に置かれる直前に焼き石膏の堆積した水性混合物にイオンの水溶液を噴霧することによって添加することも十分であり、トリメタホスフェートイオン水溶液は、堆積した混合物中に浸漬し、凝固石膏を形成する水和のほとんどが発生するときに存在する。
【0108】
混合物中にトリメタホスフェートイオンを入れる他の代替方法は、当業者には明らかであり、当然ながら本発明の範囲内にあると考えられる。例えば、カバーシートの一方または両方をトリメタリン酸塩で予め被覆することが可能であってもよく、塩は溶解し、焼き石膏の水性混合物の堆積物がカバーシートに接触したときにトリメタホスフェートイオンが混合物を通って移行する。別の代替として、加熱して焼き石膏を形成する前でも、トリメタリン酸塩を未石膏と混合することが挙げられ、焼き石膏を水と混合させて再水和させるときに既に塩が存在する。
【0109】
混合物中にトリメタホスフェートイオンを入れる他の代替方法として、トリメタホスフェートを含有する溶液で凝固石膏を噴霧または浸漬する等の任意の適切な手段によって、凝固石膏にトリメタホスフェートイオンを添加することが挙げられる。トリメタホスフェートイオンは、凝固石膏の処理に使用されている従来の紙シートを通して凝固石膏に移行することが判明している。
【0110】
焼き石膏
本発明に用いられる焼き石膏は、先行技術の対応する実施形態において有用であると一般的に判明している形態及び濃度であり得る。アルファ硫酸カルシウム半水和物、ベータ硫酸カルシウム半水和物、水溶性硫酸カルシウム無水物、またはそのいずれかもしくは全てが、天然源または合成源からのものであり得る。いくつかの好適な実施形態では、アルファ硫酸カルシウム半水和物は、比較的高い強度を有する凝固石膏の収率のために用いられる。他の好適な実施形態では、ベータ硫酸カルシウム半水和物またはベータ硫酸カルシウム半水和物と水溶性硫酸カルシウム無水物との混合物が用いられる。
【0111】

水は、流動性スラリーを作製する任意の量でスラリーに添加される。使用する水の量は、それを使用する用途、使用する正確な分散剤、スタッコの特性、及び使用する添加剤によって大きく変化する。壁板での水のスタッコとの重量比(「WSR」)は、0.1~1.5:1、好ましくは0.2~0.8:1、より好ましくは0.4~0.8:1である。
【0112】
床用組成物は、好ましくは、約0.17~約0.45、好ましくは約0.17~約0.34のWSRを使用する。成形可能製品またはキャスタブル製品は、好ましくは、約0.1~約0.3、好ましくは約0.16~約0.25のWSRで水を使用する。直鎖ポリカルボキシレート分散剤の適度な添加に基づく実験室試験では、WSRを0.1以下に低下させることができる。本発明では、板を作製するために用いるスラリーの水の焼き石膏(硫酸カルシウム半水和物)との重量比は0.8未満である。
【0113】
スラリーを作製するために使用する水は、スラリー及び凝固プラスターの両特性の最良な制御のために実用的な純度であるべきである。塩及び有機化合物は、スラリーの凝固時間を改変することで周知であり、促進剤から凝固抑制剤まで幅広く変化する。いくつかの不純物は、二水和物結晶のインターロッキングマトリクスが形成するときに構造の不規則性をもたらし、凝固製品の強度を低下させる。したがって、製品の強度及び一貫性は、できる限り汚染物のない水の使用によって増強される。
【0114】
添加剤
例えば、水性発泡体、凝固促進剤、凝固遅延剤、再石灰化抑制剤、結合剤、接着剤、二次分散助剤(直鎖ポリカルボキシレート分散剤以外剤)、レベリングまたは非レベリング剤、増粘剤、殺菌剤、防カビ剤、pH調整剤、着色剤、補強材、難燃剤、撥水剤、充填剤、及びこれらの混合物等の他の従来の添加物を、本発明の実施時に、所望の特性を与えるため、かつ製造を容易にするために慣習的な量で用いることができる。例えば、1)ポリナフタレンスルホネート分散剤及び2)分岐ポリカルボキシレートは、潜在的な二次分散助剤である。
【0115】
また、石膏スラリーは、ポリカルボキシレート分散剤のスラリーを流動化してその有効性を改善する能力を増強する1つ以上の改変剤を任意選択で含む。本明細書で使用する2つの反復単位分散剤は、特に、改変剤の影響を受けやすい可能性がある。好適な改変剤には、セメント、生石灰または酸化カルシウムとしても知られている石灰、水酸化カルシウムとしても知られている消石灰、炭酸ナトリウムとしても知られているソーダ灰、ならびに他のカルボネート、シリケート、ホスホネート、ホスフェートが含まれる。改変剤の用量は、使用する改変剤及びそれを使用する用途に応じて、0.05%~約1%である。改変剤を使用する場合、分散剤の有効性が高められて新しいレベルの流動性が達成されるか、またはポリカルボキシレート分散剤の量が減少してポリカルボキシレートの費用が削減され得る。改変剤及びその使用に関する追加の情報は、参照により本明細書に組み込まれ、「Modifiers for Gypsum Slurries and Method of Using Them」と題する、米国特許出願公開第2006/0280898A1号に見られる。
【0116】
好ましくは、改変剤及び分散剤は、半水和物の添加前に混合機水に添加される。改変剤及び分散剤の両方が乾燥形態である場合、それらを相互に予めブレンドし、スタッコに添加することができる。この一連の添加によって、分散剤の有効性がより向上する。スタッコ組成物に分散剤及び改変剤を添加するための方法は、参照により組み込まれ、「Modifiers for Gypsum Slurries and Method of Using Them」と題する、US2006/0280898A1に詳細に開示されている。
【0117】
石膏スラリーを入れる特定の用途に典型的な追加の添加剤もスラリーに添加される。水和反応が発生する速度を改変するために、凝固遅延剤(最大約2ポンド/MSF(9.8g/m))または乾燥促進剤(最大約35ポンド/MSF(170g/m))が添加される。硫酸カルシウム促進剤(「CSA」)は、95%の硫酸カルシウム二水和物を5%の糖とともに粉砕し、250°F(121℃)まで加熱して糖をカラメル化させた凝固促進剤である。CSAは、USG Corporation,Southard,Okla.の工場から入手可能であり、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,573,947号に従って作製されている。硫酸カリウムは、別の好適な促進剤である。HRAは、硫酸カルシウム二水和物100ポンド当たり糖約5~25ポンドの比率で糖とともに粉砕した直後の硫酸カルシウム二水和物である。これは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2,078,199号にさらに記載されている。これらはいずれも、好適な促進剤である。
【0118】
湿式石膏促進剤またはWGAとして既知である別の促進剤も、好適な促進剤である。湿式石膏促進剤の使用及びその作製方法の説明は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,409,825号に開示されている。この促進剤は、有機ホスホン化合物、ホスフェート含有化合物、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む。この特定の促進剤は、長寿命を呈し、かつ経時的にその有効性を維持するため、使用前に湿式石膏促進剤を作製、保管、さらに長距離輸送することができる。湿式石膏促進剤は、板製品の1000平方フィート(24.3~390g/m)当たり約5~約80ポンドの範囲の量で使用される。
【0119】
石膏スラリーは、最終製品の1つ以上の特性を改変するための添加剤を含んでもよい。添加剤は、当該技術分野において既知である様式及び量で使用される。濃度は、最終板パネル(「MSF」)の1000平方フィート当たりの量で報告される。でんぷんは、紙の結合を高め、かつ製品を強化するために、約3~約20ポンド/MSF(14.6~97.6g/m)の量で使用される。ガラス繊維は、任意選択で、少なくとも11ポンド/MSF(54g/m)の量でスラリーに添加される。最大15ポンド/MSF(73.2g/m)の紙繊維も、スラリーに添加される。ワックスエマルジョンは、最終石膏板パネルの耐水性を改善するために、最大90ポンド/MSF(0.4kg/m)の量で石膏スラリーに添加される。
【0120】
より軽量にするために発泡剤を用いて凝固石膏含有製品に空隙を生じさせる本発明の実施形態では、発泡凝固石膏製品の調製に有用であることが知られている従来の発泡剤のいずれかを用いることができる。多くのこのような発泡剤は周知であり、商業的に容易に入手可能であり、例えば石鹸である。発泡体及び発泡石膏製品を調製するための好適な方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,683,635号に開示されている。発泡体を製品に添加する場合、ポリカルボキシレート分散剤及び/またはポリナフタレンスルホネート(使用する場合)を、任意選択で、ゲージ水と発泡水との間で分配するか、または硫酸カルシウム半水和物に添加する前に、2つの異なる分散剤をゲージ水及び発泡水中で使用する。この方法は、参照により本明細書に組み込まれ、「Effective Use of Dispersants in Wallboard Containing Foam」と題する、米国特許出願公開第2006/0278128A1号に開示されている。
【0121】
壁板への他の潜在的な添加剤として、カビ、白カビ、または真菌の増殖を減少させるための殺生物剤がある。選択された殺生物剤及び壁板の意図された使用に応じて、殺生物剤は、被覆、石膏コア、またはその両方に添加され得る。殺生物剤の例として、ホウ酸、ピリチオン塩、及び銅塩が挙げられる。殺生物剤は、被覆または石膏コアのいずれかに添加することができる。使用する場合、殺生物剤は、500ppm未満の量で被覆中に使用される。
【0122】
さらに、石膏組成物は、任意選択で、アルファ化デンプンまたは酸修飾デンプン等のデンプンを含むことができる。アルファ化デンプンを含めると、凝固及び乾燥石膏キャストの強度が増加し、水分が増加した条件下(例えば、水の焼き石膏に対する比の上昇に関して)での紙の剥離のリスクが最小化または回避される。当業者であれば、生デンプンをアルファ化する方法、例えば、生デンプンを少なくとも約185°F(85℃)の温度の水で調理する等がわかるであろう。アルファ化デンプンの適切な例として、Lauhoff Grain Companyから市販されているPCF 1000デンプン、ならびにいずれもArcher Daniels Midland Companyから市販されているAMERIKOR 818デンプン及びHQM PREGELデンプンが挙げられるが、これらに限定されない。アルファ化デンプンを含める場合、アルファ化デンプンは、任意の適切な量で存在する。例えば、アルファ化デンプンを含める場合、アルファ化デンプンは、凝結石膏組成物の約0.5重量%~約10重量%の量で存在するように、凝固石膏組成物の形成に使用する混合物に添加され得る。USG95(United States Gypsum Company,Chicago,IL)等のデンプンも、コア強度のために任意選択で添加される。
【0123】
製品の特定の特性を改変するために、必要に応じて、他の既知の添加剤を使用してもよい。デキストロース等の糖は、板の端部での紙の結合を改善するために使用される。ワックスエマルジョンまたはポリシロキサンは、耐水性のために使用される。剛性が必要な場合は、一般にホウ酸が加えられる。難燃性は、バーミキュライトの添加によって改善され得る。これら及び他の既知の添加剤は、本スラリー及び壁板配合物中において有用である。
【0124】
本発明のスラリーの固形分は、好ましくは、5重量%未満の炭酸カルシウムを有する。
【0125】
スラリーには、好ましくは、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸が存在しない。
【0126】
スラリーには、好ましくは、ヒドロキシアルキルアクリレートホスフェート、ヒドロキシアルキルアクリルアミドホスフェート、ジ(ヒドロキシアルキルアクリレート)ホスフェート、及びジ(ヒドロキシアルキルアクリルアミド)ホスフェートのモノマーの各々が存在しない。スラリーには、好ましくは、アルケン基を含むポリアルキレングリコール含有マクロモノマーが存在しない。
【0127】
好ましくは、石膏スラリーは、5~70体積%の空気、より好ましくは10~70体積%の空気、最も好ましくは20~70体積%の空気を有する。
【0128】
石膏板及びその製造方法
好ましくは、本発明の方法及び組成物は、カバーシートの間に挟まれた凝固石膏含有材料のコアを含む石膏板10(図1参照)を調製するためのものであり、直鎖ポリカルボキシレートは上述の濃度及び様式で用いられる。他の点では、組成物及び方法は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,009,062号及び同第2,985,219号に記載されているような、先行技術の石膏板を調製するための対応する組成物及び方法と同じ成分及び同じ様式で実施することができる。
【0129】
したがって、本発明は、
硫酸カルシウム二水和物及び本発明の直鎖ポリカルボキシレート分散剤を含む石膏コア材料、を含む石膏板を提供し、
石膏コア材料に作製されたスラリーの水硬性成分が、水硬性成分の乾燥重量に基づいて少なくとも50重量%の硫酸カルシウム半水和物を含み、
石膏コア材料に作製されたスラリーが、0.2~1.5:1、好ましくは0.2~0.8:1、より好ましくは0.4~0.7:1の水の硫酸カルシウム半水和物に対する重量比を有し、
石膏コア材料が、10~90体積%の空隙を含む。
【0130】
本発明の石膏板(石膏パネルとしても知られている)は、硫酸カルシウム二水和物と、第1の反復単位A及び第2の反復単位Bから本質的になる本発明の直鎖ポリカルボキシレート分散剤及び本発明の直鎖ポリカルボキシレート分散剤とを含む石膏コア材料を含み、石膏板は、直鎖ポリカルボキシレート分散剤と、水硬性成分の乾燥重量に基づいて少なくとも50重量%の硫酸カルシウム半水和物とを含む水硬性成分とを含む石膏スラリーから作製される。概して、板10(図1)は0.25~1インチの厚さTを有する。
【0131】
より軽量の石膏板を製造することを所望する場合、本発明のスラリーは、気泡の水性発泡体をさらに含む。このような組成物及び方法は、水性発泡体の気泡が、得られた板の凝固石膏コアに対応する空気空隙をもたらすため、軽量の板を提供する。
【0132】
石膏板は、板の石膏コアが作製された石膏スラリー中の気泡の発泡体によって形成された空隙を含む。好ましくは、石膏スラリーは、5~70体積%の気泡、より好ましくは10~70体積%の空気、最も好ましくは20~60体積%の空気を有する。石膏板は、作製される前のスラリーよりも高い体積%の空隙を有してもよい。これは、スラリーが凝固して板を形成する際に水が除去されるときに、粒子間の空隙から追加の空隙(水空隙)が生じるためである。したがって、石膏板は、10~92体積%、より好ましくは25~90体積%、最も好ましくは30~85体積%の全空隙体積を有してもよい。本発明の方法で空気が添加される場合、硫酸カルシウム半水和物と水とが混合されてスラリーが形成され、次いで、空気がスラリー中に取り込まれることによって、及び/またはスラリーに泡沫水が添加されることによって、空気が添加される。
【0133】
本発明の方法は、紙または他の材料のカバーシートの間に挟まれた凝固石膏のコアを含む上述の石膏板を製造する。好ましくは、板は、焼き石膏(硫酸カルシウム半水和物)、空気、水、及び直鎖ポリカルボキシレート分散剤の流動性混合物(スラリー)を形成し、それをカバーシートの間に堆積させ、得られたアセンブリを凝固及び乾燥させることによって調製される。スラリーを第1のカバーシート上に堆積させ、次いで第2のカバーシートを凝固しているスラリーの上に塗布する。
【0134】
スラリーは、好ましくは、促進剤の非存在下で、10分で少なくとも50%を凝固する。したがって、板は、促進剤の非存在下で、10分で少なくとも50%凝固される。
【0135】
スラリーは、直鎖ポリカルボキシレート分散剤と、水硬性成分の乾燥重量に基づいて少なくとも50重量%の硫酸カルシウム半水和物、好ましくは少なくとも80重量%の硫酸カルシウム半水和物を含む水硬性成分とを含み、スラリーは石膏板(石膏パネルとしても知られている)の石膏コア材料に作製される。石膏板に作製された石膏スラリーは、0.1~1.5:1、好ましくは0.2~0.8:1、より好ましくは0.4~0.8:1の水の硫酸カルシウム半水和物に対する重量比を有する。
【0136】
スラリーは、石膏(硫酸カルシウム半水和物)、水、及び本発明の分散剤から作製される。操作中、板のためのスラリーを作製するために、石膏は、コンベヤー上を混合機に向かって移動する。混合機に入る前に、乾燥凝固促進剤等の乾燥添加剤が粉末石膏に添加される。水も添加される。空気も添加される。いくつかの添加剤は、別々のラインを介して混合機に直接添加される。他の添加剤も水に添加してもよい。これは、添加剤が液体形態である場合に特に便宜的である。大部分の添加剤について、スラリー中に添加剤を入れることに関して重大性はなく、便宜的であるどの装置または方法を使用して添加してもよい。
【0137】
しかしながら、本発明の分散剤を使用する場合、スタッコを添加する前に分散剤を水に添加することが重要である。ゲージ水または補給水は、他の供給源からの水が考えられている場合に、対象の水のスタッコに対する比率を満たすのに必要な量で混合機に添加される。石膏(硫酸カルシウム半水和物)は、板の製造中に硫酸カルシウム二水和物に転化する。
【0138】
石膏板を調製するための好適な方法及び組成物では、板の前面及び裏面のシートは紙を含み、典型的には、トリメタホスフェートイオンも、コア組成物用のスラリーに用いられる。したがって、好ましくは、コア組成物用のスラリーは、トリメタホスフェートイオンも含む。石膏板を調製するための好適な方法及び組成物では、板の表面シートが紙を含み、好ましくは、スラリーは、製造スラリー中にアルファ化デンプンも含む。次いで、このデンプンは、得られた石膏コア全体に分散される。これは、コアとカバーシートとの間の結合の弱化を回避する。アルファ化デンプンは、極度の湿気の条件下での紙の剥離の危険性をわずかに高めることを回避する。生デンプンのアルファ化は、少なくとも185°Fの温度で、水中で加熱することによって達成される。
【0139】
したがって、石膏板を製造するための好適な組成物及び方法にでは、組成物は、焼き石膏(硫酸カルシウム半水和物)、水、直鎖ポリカルボキシレート分散剤、トリメタホスフェートイオン、及びアルファ化デンプンの混合物を含む。この方法は、そのような混合物を形成することと、それを第1のカバーシート上に堆積させて石膏コアを形成することと、次いで第2のカバーシートを石膏コアの上に塗布することと、を含む。次いで、この混合物を、硫酸カルシウム材料が凝固石膏材料を形成するのに十分な条件下で維持する。
【0140】
本発明の目的に役立つ容易に入手可能なアルファ化デンプンのいくつかの例として、Lauhoff Grain Co.から入手可能なPCF1000デンプン、ならびに両方ともArcher Daniels Midland Co.から入手可能なAMERIKOR 818及びHQM PREGELデンプンが挙げられる(その企業名で識別)。
【0141】
本発明の好適な実施において使用するために、アルファ化デンプンは、焼き石膏の重量に基づいて、約0.08~約5重量%の濃度で焼き石膏の水性混合物中に含まれる。アルファ化デンプンの好適な濃度は、約0.2~約3%である。先行技術の対応する実施形態がアルファ化されていないデンプンも含む場合(多くの場合)、本発明の実施形態のアルファ化デンプンは、通常用いられる先行技術のデンプンの量の全部または一部を置き換える役割を果たし得る。
【0142】
発泡剤
より軽量にするために発泡剤を用いて凝固石膏含有製品に空隙を生じさせる本発明の実施形態では、発泡凝固石膏製品の調製に有用であることが知られている従来の発泡剤のいずれかを使用することができる。発泡剤の好適な範囲は、約0.2ポンド/MSF~約1.5ポンド/MSFである。多くのこのような発泡剤は周知であり、商業的に容易に入手可能であり、例えば石鹸である。有用な発泡剤のさらなる説明については、例えば、米国特許第4,676,835号、同第5,158,612号、同第5,240,639号、及び同第5,643,510号、ならびに1995年6月22日に公開されたPCT国際特許出願公開第WO95/116515号を参照されたい。
【0143】
多くの場合、強度を維持するのを助けるために石膏製品に比較的大きな空隙を形成することが好適である。これは、焼き石膏スラリーと接触したときに比較的不安定な発泡体を生成する発泡剤を用いることによって達成され得る。好ましくは、これは、比較的不安定な発泡体を生成することで知られている大量の発泡剤を、比較的安定な発泡体を生成することで知られている少量の発泡剤とブレンドすることによって達成される。
【0144】
このような発泡剤混合物は、「オフライン」、すなわち、発泡石膏製品を調製する工程とは別々に予めブレンドされ得る。しかしながら、このような発泡剤を、工程の一体的な「オンライン」部分として同時にかつ連続的にブレンドすることが好ましい。これは、例えば、異なる発泡剤の別々の流れをポンプ輸送し、水性発泡体の流れを生成するために用いられる発泡体発生器で、またはその直前で流れを一緒にすることによって達成され、次いで、水性発泡体は、焼き石膏スラリーに挿入され、それと混合される。このようにブレンドすることにより、ブレンド中の発泡剤の比率を簡単かつ効率的に調整して(例えば、別々の流れの一方または両方の流速を変えることによって)、発泡凝結石膏製品の所望の空隙特性を達成することができる。このような調整が必要か否かを決定するための最終製品の審査に応じて、このような調整は行われる。このような「オンライン」ブレンド及び調整のさらなる説明は、米国特許第5,643,510号及び米国特許第5,683,635号に記載されている。
【0145】
不安定な発泡体を生成するのに有用な1つの種類の発泡剤の例は、式ROSO を有し、式中、Rは、2~20個の炭素原子を含有するアルキル基であり、Mは、陽イオンである。好ましくは、Rは、8~12個の炭素原子を含有するアルキル基である。安定な発泡体を生成するのに有用な1つの種類の発泡剤の例は、式CH(CHCH(OCHCH)yOSO を有し、式中、Xは、2~20の数であり、Yは、0~10の数であり、かつ発泡剤の少なくとも50重量%において0より大きく、Mは、陽イオンである。これらの発泡剤のブレンドも用いてもよい。
【0146】
本発明のいくつかの好適な実施形態では、水性発泡体は、式CH(CHCH(OCHCH)yOSO を有する予めブレンドされた発泡剤から生成されており、
式中、Xは、2~20の数であり、Yは、0~10の数であり、かつ発泡剤の少なくとも50重量%において0より大きく、Mは、陽イオンである。好ましくは、Yは、この発泡剤の86~99重量%において0である。
【0147】
複合板
複合石膏板を製造することを所望する場合、本発明のスラリーは補強材料をさらに含む。複合板は、凝固石膏及びホスト粒子を含み、凝固石膏の少なくとも一部分は、ホスト粒子内のアクセス可能な空隙の中及び周囲に配置される。板は、表面上に混合物を形成または堆積させることによって調製され、この混合物は、ホスト粒子と、その少なくとも一部分がホスト粒子の空隙の中及び周囲の結晶の形態である硫酸カルシウム半水和物、水、及び直鎖ポリカルボキシレート分散剤を含む。好ましくは、混合物は、その各々が2つ以上のリン酸単位を含む縮合リン酸、及びその各々が2つ以上のホスフェート単位を含む縮合ホスフェートの塩またはイオンからなる群から選択される、適量の1つ以上の増強材料も含有する。次いで、混合物を、硫酸カルシウム半水和物が凝固石膏を形成するのに十分な条件下で維持し、それにより、ホスト粒子中のアクセス可能な空隙の中及び周囲の凝固石膏の部分が、硫酸カルシウム半水和物結晶の原位置水和により、ホスト粒子の空隙の中及び周囲に形成する。
【0148】
いくつかの好適な本発明の実施形態では、方法及び組成物は、上述の濃度及び様式で凝固石膏及び補強材料の粒子を含む複合板を調製するためのものである。好ましくは、トリメタホスフェートイオンも上述の濃度及び様式で用いられる。所望する場合、複合製品は、凝固石膏及びホスト粒子を含み、凝固石膏の少なくとも一部分は、ホスト粒子中のアクセス可能な空隙の中及び周囲に配置される。本発明の組成物は、その中にアクセス可能な空隙を有するホスト粒子と、その少なくとも一部分がホスト粒子中の空隙の中及び周囲で結晶の形態である焼き石膏と、直鎖ポリカルボキシレート分散剤との混合物を含む。好ましくは、混合物は、水溶性トリメタリン酸塩も含む。組成物を水と混合して、水、直鎖ポリカルボキシレート分散剤、その中にアクセス可能な空隙を有するホスト粒子、焼き石膏(少なくともその一部分がホスト粒子中の空隙の中及び周囲で結晶の形態である)、及び好ましくはトリメタホスフェートイオンの発明混合物を製造することができる。この方法は、このような混合物を形成することと、それを表面上または型内に堆積させることと、それを凝固及び乾燥させることとを含む。他の点では、この組成物及び方法は、例えば、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる米国特許第5,320,677号に記載されているように、先行技術の複合板を調製するための対応する組成物及び方法と同じ成分及び同じ様式で実施され得る。
【0149】
本発明のスラリーから製造される他の製品
本発明は、デンプン、水再分散性ポリマーの粒子、硫酸カルシウム材料、水、及び直鎖ポリカルボキシレート分散剤を含む混合物を形成することによって調製された凝固石膏含有機械加工可能製品も提供する。好ましくは、混合物は、その各々が2つ以上のリン酸単位を含む縮合リン酸、及びその各々が2つ以上のホスフェート単位を含む縮合ホスフェートの塩またはイオンから選択される適量の1つ以上の増強材料も含有する。次いで、この混合物を、硫酸カルシウム材料が凝固石膏材料を形成するのに十分な条件下で維持する。
【0150】
本発明は、石膏板の縁の間の目地を仕上げるために用いられる凝固石膏含有製品も提供し、この製品は、結合剤、増粘剤、非レベリング剤、硫酸カルシウム材料、水、及び直鎖ポリカルボキシレート分散剤を含む混合物を目地に挿入することによって調製される。好ましくは、混合物は、その各々が2つ以上のリン酸単位を含む縮合リン酸塩、及びその各々が2つ以上のホスフェート単位を含む縮合ホスフェートの塩またはイオンから選択される適量の1つ以上の増強材料も含有する。次いで、混合物を、硫酸カルシウム材料が凝固石膏材料を形成するのに十分な条件下で維持する。
【0151】
方法及び組成物は、石膏板の縁の間の目地を仕上げるために用いられる材料を製造してもよく、直鎖ポリカルボキシレート分散剤が上述の濃度で用いられる。好ましくは、トリメタリン酸塩及びイオンも組成物に含まれる。直鎖ポリカルボキシレート分散剤を含む以外の態様に関して、組成物及び方法は、例えば、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる米国特許第3,297,601号に記載されているように、先行技術における目地仕上げ材料を製造するための対応する組成物及び方法と同じ成分及び同じ方法で実施され得る。いくつかの好適な形態では、組成物は、焼き石膏、直鎖ポリカルボキシレート分散剤、結合剤、増粘剤、及び非レベリング剤、及び好ましくは水溶性トリメタリン酸塩の混合物を含む。組成物は、焼き石膏、直鎖ポリカルボキシレート分散剤、結合剤、増粘剤、非レベリング剤、及び好ましくはトリメタホスフェートイオンの発明混合物を製造するために水と混合することができる。方法は、このような混合物を形成することと、それを石膏板の縁の間の目地に挿入することと、それを凝固及び乾燥させることとを含む。
【0152】
このような好適な目地仕上げの実施形態では、結合剤、増粘剤、及び非レベリング剤は、目地化合物の技術分野の当業者に周知の成分から選択される。例えば、結合剤は、従来のラテックス結合剤であってもよく、ポリ(ビニルアセテート)及びポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)が好適であり、組成物の約1~約15重量%の範囲で含まれる。有用な増粘剤の例として、組成物の約0.1~約2重量%の範囲で含まれる、セルロース系増粘剤、例えば、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。適切な非レベリング剤の例として、組成物の約1~約10重量%の範囲で含まれる、アタパルジャイト、セピオライト、ベントナイト、及びモンモリロナイト粘土が挙げられる。
【0153】
以下の実施例は、本発明のいくつかの好適な実施形態をさらに説明し、それらを本発明の範囲外の方法及び組成物と比較するために提示される。他に指定のない限り、組成物及び混合物中の材料の濃度は、存在する焼き石膏の重量に基づいて、重量%で与えられる。
【0154】
実施例1
新規の直鎖ポリカルボキシレートを、同じ用量でポリナフタレンスルホネートと比較した。水使用量を調整して7インチのスランプ(水のスタッコに対する重量比、WSR)を達成した。
【0155】
直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤を、ラジカル開始剤(無機過酸化物)及び標準的な連鎖移動剤(メルカプタン)を使用して、水性媒体中でラジカル重合により合成した。典型的には、2.0を超える多分散性が得られ、ポリマー末端基は、開始剤、連鎖移動剤、及びモノマー単位の不活性化型の混合物であるように理論化される。
【0156】
直鎖ポリカルボキシレート分散剤(Ruetgers Polymers製のPC1~PC8)で分散した石膏スラリーの水需要を試験し、ポリナフタレンスルホネート(Ruetgers Polymersから入手可能なDURASARポリナフタレンスルホネートカルシウム塩)分散石膏スラリーと比較した。1重量%(スタッコ重量のうちの)のボールミル促進剤及び3重量%のプレゲル化デンプンが添加された合成ベータカルシウム半水和物を、高せん断ブレンダー中で水、分散剤、及び遅延剤と10秒間混合した。スラリーを金属シリンダーに注ぎ、シリンダーを持ち上げた後に散布したままにした。スラリースプレッドの直径を測定した。
【0157】
分散剤の有効性を比較するために、分散剤の用量を0.25重量%(スタッコ重量のうちの)に設定し、一定の7インチ(18cm)のスラリースプレッドを達成するように水量を調整した。遅延剤(VERSENEX80)の用量は、スラリーの同等の硬化時間を40~60秒以内に達成するように調整した。水需要は、7インチのスプレッドに必要な水のスタッコとの重量比(WSR)として表される。
【0158】
試験した直鎖ポリカルボキシレート分散剤を表1に列挙する。
【0159】
【表1-1】
【0160】
【表1-2】
【0161】
【表1-3】
【0162】
本実施例の結果を表2に示す。
【0163】
【表2】
【0164】
試験した全ての直鎖ポリカルボキシレートは、DURASARポリナフタレンスルホネート(PNS)よりも低い水需要(WSR)を達成した。モノマーA含有量が増加すると、水需要及び遅延剤の使用が減少する。全ての直鎖ポリカルボキシレート分散剤は、市販のPNS分散剤よりも低いWSRを達成した。
【0165】
実施例2
新規の直鎖ポリカルボキシレートを、粘土を含有するより困難なスタッコを使用して、同じ用量でポリナフタレンスルホネート及び従来の分岐ポリカルボキシレート(ポリカルボキシレートエーテルまたはPCEとしても知られている)と比較した。水使用量を調整して7インチのスランプ(水のスタッコに対する重量比、WSR)を達成した。スタッコは、87重量%の硫酸カルシウム半水和物及び約0.6重量%の全粘土を有する。
【0166】
直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤を、ラジカル開始剤(無機過酸化物)及び標準的な連鎖移動剤(メルカプタン)を使用して、水性媒体中でラジカル重合により合成した。典型的には、2.0を超える多分散性が得られ、ポリマー末端基は、開始剤、連鎖移動剤、及びモノマー単位の不活性化型の混合物であるように理論化される。
【0167】
直鎖ポリカルボキシレート分散剤(Ruetgers Polymers製のPC1、PC4、及びPC7)で分散した石膏スラリーの水需要を試験し、ポリナフタレンスルホネート(Ruetgers Polymersから入手可能なDURASARポリナフタレンスルホネートカルシウム塩)及び従来のPCE(COATEXから入手可能なETHACRYL M)分散石膏スラリーと比較した。0.75重量%(スタッコ重量のうちの)のボールミル促進剤及び3重量%のプレゲル化デンプンが添加されたベータカルシウム半水和物を含有する天然石膏を、高せん断ブレンダー中で水、分散剤、及び遅延剤と10秒間混合した。スラリーを金属シリンダーに注ぎ、シリンダーを持ち上げた後に散布したままにした。スラリースプレッドの直径を測定した。
【0168】
分散剤の有効性を比較するために、分散剤の用量を0.25重量%(スタッコ重量のうちの)に設定し、一定の7インチ(18cm)のスラリースプレッドを達成するように水量を調整した。遅延剤(VERSENEX80)の用量は、スラリーの同等の硬化時間を40~60秒以内に達成するように調整した。水需要は、7インチのスプレッドに必要な水のスタッコとの重量比(WSR)として表される。試験した直鎖ポリカルボキシレート分散剤を表3に列挙する。
【0169】
【表3】
【0170】
粘土含有スタッコは、従来の分散剤を使用して分散することが非常に困難であり、そうでなければ非常に有効な従来のPCEは、これらの困難なスタッコの水需要を減少させることができない。直鎖ポリカルボキシレート分散剤は、PNS及びさらにはPCEよりも良好に機能した。
【0171】
実施例3
本発明の直鎖ポリカルボキシレートとポリナフタレンスルホネート(PNS)とのブレンドを、直鎖ポリカルボキシレートと比較し、同じ用量でポリナフタレンスルホネートと比較した。水使用量を調整して6インチのスランプ(水のスタッコに対する重量比、WSR)を達成した。
【0172】
直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤を、ラジカル開始剤(無機過酸化物)及び標準的な連鎖移動剤(メルカプタン)を使用して、水性媒体中でラジカル重合により合成した。典型的には、2.0を超える多分散性が得られ、ポリマー末端基は、開始剤、連鎖移動剤、及びモノマー単位の不活性化型の混合物であるように理論化される。
【0173】
直鎖ポリカルボキシレート分散剤は、MAAとAMPSとのモル比60:40を有し、重量平均分子量は約15000ダルトンであると推定された。
【0174】
Ruetgers Polymerによって作製された直鎖ポリカルボキシレート分散剤で分散した石膏スラリーの水需要を試験し、ポリナフタレンスルホネート(Ruetgers Polymersから入手可能なDURASARポリナフタレンスルホネートカルシウム塩)及び本発明の直鎖ポリカルボキシレートとPNS(DURASAR)の1:1ブレンドの分散石膏スラリーと比較した。1重量%(スタッコ重量のうちの)のボールミル促進剤及び2重量%のプレゲル化デンプンが添加された合成ベータカルシウム半水和物を、高せん断ブレンダー中で水、分散剤、及び遅延剤と10秒間混合した。スラリーを金属シリンダーに注ぎ、シリンダーを持ち上げた後に散布したままにした。スラリースプレッドの直径を測定した。
【0175】
分散剤の有効性を比較するために、分散剤の用量を0.64重量%(スタッコ重量のうちの)に設定し、一定の6インチ(15cm)のスラリースプレッドを達成するように水量を調整した。遅延剤(VERSENEX80)の用量を、スラリーの同等の硬化時間を40~60秒以内に達成するように調整した。水需要は、6インチスプレッドに必要な水のスタッコとの重量比(WSR)として表される。試験した直鎖ポリカルボキシレート分散剤を表4に列挙する。
【0176】
【表4】
【0177】
直鎖PC分散剤は、ポリナフタレンスルホネートと同時に使用した場合、同等以上の効果があることがわかった。
【0178】
実施例4-水和データ
実験シリーズ4-1、実験シリーズ4-2、及び実験シリーズ4-3では、メタクリル酸系直鎖ポリカルボキシレートを石膏板の分散剤として試験し、温度上昇として測定された水和を記録した。実験シリーズ4-1の水和データを図2に示す。実験シリーズ4-2を図3に示し、実験シリーズ4-3を図4に示す。
【0179】
実験シリーズ4-1は、分散剤が0.3重量%のPNS(ポリナフタレンスルホネート)、0.2重量%のPNS(ポリナフタレンスルホネート)と0.2重量%の本発明の直鎖ポリカルボキシレート分散剤との混合物、及び0.3重量%のPNS(ポリナフタレンスルホネート)と0.3重量%の本発明の直鎖ポリカルボキシレート分散剤との混合物である組成物を試験した。
【0180】
実験シリーズ4-2は、分散剤が0.6重量%のPNS(ポリナフタレンスルホネート)、0.3重量%のPNS(ポリナフタレンスルホネート)と0.3重量%の本発明の直鎖ポリカルボキシレート分散剤との混合物、及び0.3重量%のPNS(ポリナフタレンスルホネート)と0.4重量%の本発明の直鎖ポリカルボキシレート分散剤との混合物である組成物を試験した。
【0181】
実験シリーズ4-3は、分散剤が0.2重量%のPNS(ポリナフタレンスルホネート)、0.2重量%のPNS(ポリナフタレンスルホネート)と0.1重量%の本発明の直鎖ポリカルボキシレート分散剤との混合物、及び0.2重量%のPNS(ポリナフタレンスルホネート)と0.2重量%の本発明の直鎖ポリカルボキシレート分散剤との混合物である組成物を試験した。
【0182】
直鎖ポリカルボキシレート分散剤は、MAAとAMPSのコポリマーであり、約16000ダルトンと推定される重量平均分子量を有した。
【0183】
スラリーの全ての試料を、工場規模の石膏板製造ラインから採取し、水和について試験した。石膏板製造ラインの混合機を使用して、湿式及び乾式成分を組み合わせて、連続工程でコアスラリーを形成した。混合機の排出導管からのコアスラリーを、紙のシート上に板の前駆体の連続リボンとして堆積させた。試料をこの板の前駆体の連続リボンから採取し、次いで試験した。
【0184】
各実験シリーズでは、唯一の配合変更は分散剤の種類及び用量であった。遅延剤及び促進剤の用量は調整しなかった。
【0185】
図2の実験シリーズ4-1の石膏スラリーは、直鎖ポリカルボキシレート(PC)を導入したときに、水和遅延のいずれの兆候も示さなかった。図2~4のプロットでは、Tは時間を表し、TKEは窯入口までの時間を表す。
【0186】
実験シリーズ4-2の石膏スラリーは、直鎖ポリカルボキシレートの0.3重量%の用量で、わずかな水和の遅延を示した。用量をさらに0.4重量%に増加させたときの影響はより顕著であった。しかしながら、両方の場合において、水和は0.75T/TKEの前に完了し、ここで、Tは時間であり、TKEは混合機で形成された板の窯入口までの時間である。
【0187】
実験シリーズ4-3の石膏スラリーは、0.1%のPCの添加で、わずかな水和の減少を示し、その減少は0.2重量%では若干増加した。同様に、実験シリーズ4-2のように、全体的な水和は減少せず、水和は0.5T/TKEの前に完了した。
【0188】
直鎖ポリカルボキシレートの遅延効果は、わずかかまたは存在しない(実験シリーズ4-1)かのいずれかであることが判明し、100%の水和までの全体の時間に影響しなかった。
【0189】
直鎖ポリカルボキシレート(本発明による)は、水和の初期部分にのみ影響を与え、減退遅延を伴う弱い遅延剤のように作用すると考えられ得る。
【0190】
従来の分岐ポリカルボキシレート分散剤と比較した。本発明に記載された直鎖ポリカルボキシレートの影響は、製品強度に対して最小または存在しない。これは予想外の重大な利点である。最小または存在しない遅延効果の結果として、直鎖ポリカルボキシレート分散剤からの干渉なしに専用の遅延剤を添加することによって遅延を正確に制御することができる。
【0191】
従来の分岐ポリカルボキシレートは、高使用でより強力で持続的な遅延の影響を有し、TKEで100%未満の水和をもたらし、それにより強度特性が低下する。例えば、最近開示されたSchwartzらに対する米国特許第7,070,648号の第1欄第45~50行では、石膏組成物中の減水剤としてアクリル-ポリエーテル櫛状分岐コポリマーが使用されている(Schwartzらに対する米国特許第6,527,850号を参照)。櫛状分岐コポリマーは、ポリナフタレンスルホネートよりもはるかに低い用量で使用することができる。しかしながら、櫛状分岐コポリマーは、凝固を遅延させる傾向がある。
【0192】
実施例5-メタアクリル酸系ポリマーと比較アクリル酸系ポリマーとの比較
メタクリル酸系直鎖ポリカルボキシレートPC1を、アクリル酸で作製した直鎖ポリカルボキシレートと同じ用量で比較した。
【0193】
直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤を、ラジカル開始剤(無機過酸化物)及び標準的な連鎖移動剤(メルカプタン)を使用して、水性媒体中でラジカル重合により合成した。典型的には、2.0を超える多分散性が得られ、ポリマー末端基は、開始剤、連鎖移動剤、及びモノマー単位の不活性化型の混合物であるように理論化される。
【0194】
試験したアクリル酸系直鎖ポリカルボキシレート分散剤を表5に列挙する。
【0195】
【表5】
【0196】
直鎖ポリカルボキシレート分散剤(Ruetgers Polymers製のPC1)で分散した石膏スラリーの水需要を試験し、分散石膏スラリー中のアクリル酸系直鎖ポリカルボキシレート(Ruetgers Polymers製)と比較した。1重量%(スタッコ重量のうちの)のボールミル促進剤及び3重量%のプレゲル化デンプンが添加された合成βカルシウム半水和物を、高せん断ブレンダー中で水、分散剤、及び遅延剤と10秒間混合した。スラリーを金属シリンダーに注ぎ、シリンダーを持ち上げた後に散布したままにした。スラリースプレッドの直径を測定した。これを、PC1、PC-A実行1、PC-B実行2の実施例として示す。
【0197】
分散剤の有効性を比較するために、分散剤の用量を0.25重量%(スタッコ重量のうちの)に設定し、約7インチ(18cm)のスラリースプレッドのスランプを達成するように、水のスタッコに対する比率を83%に設定した。遅延剤(VERSENEX80)の用量を、スラリーの同等の硬化時間を40~60秒以内に達成するように調整した。全ての試験の硬化時間を報告する。表6に試験結果を示す。
【0198】
【表6】
【0199】
同じ配合を使用して、PC1、PC-A実行1、及びPC-B-実行2と比較するとき、PC-A及びPC-Bで作製されたスラリーは、同じ剛性を達成するのにかなり長い時間がかかった。アクリル酸系直鎖ポリカルボキシレートによって引き起こされる遅延は有意であり、望ましくないものであった。
【0200】
次のステップとして、遅延剤の用量を大幅に減少させ、同じスタッコに対する比率を使用して試験を繰り返した。これを、PC-A実行3、PC-B実行4の実施例として示す。非常に低い遅延剤用量であっても、アクリル酸系直鎖ポリカルボキシレートによって引き起こされる遅延は、依然として有意であり、望ましくないものであった。スラリースプレッドはわずかに良好であったが、これは、分散剤からのより長い硬化時間及び凝固遅延に起因する可能性がある。ゆえに、アクリル酸系直鎖ポリカルボキシレートポリマーは、石膏凝固時間に対する強力な遅延効果のために、分散剤としての用途が限られている。メタクリル酸系直鎖ポリカルボキシレートポリマーは、予想外にも、アクリル酸系直鎖ポリカルボキシレートポリマーよりも優れており、その理由は、メタクリル酸系直鎖ポリカルボキシレートポリマーには有害な遅延効果がないからである。
【0201】
本発明の直鎖メタクリル酸及びイタコン酸系の直鎖ポリカルボキシレートポリマーは、石膏スラリーの分散に使用するときに、凝固時間または遅延剤の使用に有意な影響を及ぼさないことが判明した(実施例1参照)。
【0202】
本発明は、上に提供された実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって規定される。
[付記]
[付記1]
水と、
水硬性成分の乾燥重量に基づいて少なくとも50重量%の硫酸カルシウム半水和物を含む水硬性成分と、
第1のモノマー反復単位A及び第2のモノマー反復単位Bを含み、かつポリビニルアセテートモノマー単位が存在しない、直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤と、の混合物を含む、スラリーであって、
前記第1の反復単位Aが、式Iのオレフィン部分を含有する少なくとも1つのカルボン酸官能基であり、
【化24】
式中、Rは、-CH 、及び-CH -C(O)-OH、またはそのNa、K、もしくはNH 塩からなる群から選択され、
前記第2のモノマー反復単位Bが、式IIに従う少なくとも1つのビニルスルホネートであり、
【化25】
式中、XはNHまたはOであり、R はHまたは-CH であり、R は式-(C 2n )-(式中、n=2~6)を有する直鎖または分岐アルキレン基であり、M=H、Na、K、またはNH であり、
前記第1の反復単位Aの前記第2の反復単位Bに対するモル比が、1:9~9:1であり、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の重量平均分子量が、3000~100000ダルトンであり、
前記スラリーが、水の硫酸カルシウムの半水和物に対する重量比が、0.1~1.5:1である、スラリー。
[付記2]
前記第2の反復単位Bが、式IIIa及び式IVaからなる群のうちの少なくとも1つの要素またはそのNa、K、もしくはNH 塩のうちの1つから選択される、付記1に記載のスラリー。
【化26】
【化27】
[付記3]
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤が、式Vの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸
【化28】
またはそのNa、K、もしくはNH のうちの1つと、
式VIのメタクリル酸
【化29】
またはそのNa、K、もしくはNH 塩のうちの1つとのコポリマーであるメタクリル酸-co-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホネートである、付記1に記載のスラリー。
[付記4]
前記第1の反復単位が、式Iのメタクリル酸(MAA)反復単位であり、
【化30】
式中、Rは、-CH 、またはそのNa、K、もしくはNH 塩のうちの1つであり、
前記第1の反復単位Aの前記第2の反復単位Bに対するモル比が、1:4~4:1であり、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の重量平均分子量が、5000~60000ダルトンである、付記1に記載のスラリー。
[付記5]
前記第1の反復単位Aは、式Iaのイタコン酸(IT)反復単位、
【化31】
またはそのNa、K、もしくはNH 塩のうちの1つであり、
前記第1の反復単位Aの前記第2の反復単位Bに対するモル比が、1:9~1:1であり、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の重量平均分子量が、5000~60000ダルトンである、付記1に記載のスラリー。
[付記6]
前記水硬性成分が、少なくとも80重量%の硫酸カルシウム半水和物を含む、付記1に記載のスラリー。
[付記7]
ポリナフタレンスルホネートをさらに含む、付記1に記載のスラリー。
[付記8]
硫酸カルシウム二水和物と、第1のモノマー反復単位A及び第2のモノマー反復単位Bを含み、かつポリビニルアセテートモノマー単位が存在しない、直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤と、を含む、石膏コア材料、を含む、石膏板であって、
前記第1の反復単位Aが、式Iのオレフィン部分を含有する少なくとも1つのカルボン酸官能基であり、
【化32】
式中、Rは、-CH 及び-CH -C(O)-OH、またはそのNa、K、もしくはNH 塩からなる群から選択され、
前記第2のモノマー反復単位Bが、式IIに従う少なくとも1つのビニルスルホネートであり、
【化33】
式中、XはNHまたはOであり、R はHまたは-CH であり、R は式-(C 2n )-(式中、n=2~6)を有する直鎖または分岐アルキレン基であり、M=H、Na、K、またはNH であり、
前記第1の反復単位Aの前記第2の反復単位Bに対するモル比が、1:9~9:1であり、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の重量平均分子量が、3000~100000ダルトンであり、
前記石膏コア材料が、10~92体積%の全空隙体積を有する、石膏板。
[付記9]
付記1~7のいずれかに記載のスラリーを作製する方法であって、
水と、硫酸カルシウム二水和物を含む水硬性成分と、直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤とを混合して、前記スラリーを作製することを含み、前記水の混合される硫酸カルシウム半水和物に対する重量比が、0.2~1.5:1であり、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤が、第1のモノマー反復単位A及び第2のモノマー反復単位Bを含み、かつポリビニルアセテートモノマー単位が存在せず、
前記第1の反復単位Aが、式Iのオレフィン部分を含有する少なくとも1つのカルボン酸官能基であり、
【化34】
式中、Rは、-CH 、及び-CH -C(O)-OH、またはそのNa、K、もしくはNH 塩からなる群から選択され、
前記第2のモノマー反復単位Bが、式IIに従う少なくとも1つのビニルスルホネートであり、
【化35】
式中、XはNHまたはOであり、R はHまたは-CH であり、R は式-(C 2n )-(式中、n=2~6)を有する直鎖または分岐アルキレン基であり、M=H、Na、K、またはNH であり、
前記第1の反復単位Aの前記第2の反復単位Bに対するモル比が、1:9~9:1であり、
前記直鎖ポリカルボキシレートアニオン性分散剤の重量平均分子量が、3000~100000ダルトンであり、
前記スラリーの前記水硬性成分が、前記水硬性成分の乾燥重量に基づいて少なくとも50重量%の硫酸カルシウム半水和物を含む、方法。
[付記10]
付記8に記載の石膏板を作製する方法であって、
前記水と、硫酸カルシウム二水和物を含む前記水硬性成分と、前記直鎖ポリカルボキシレートとを混合して、スラリーを作製することであって、前記水の混合される硫酸カルシウム半水和物に対する重量比が、0.2~1.5:1である、作製することと、
前記スラリーをカバーシート上に堆積させて石膏コア材料を形成することであって、
前記スラリーが5~70体積%の気泡を有することと、形成することと、
前記スラリー中の硫酸カルシウム半水和物を硫酸カルシウム二水和物に転化させることと、前記スラリーを凝固させて前記板を形成することと、を含む、方法。
図1
図2
図3
図4