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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】細胞の増殖
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0789 20100101AFI20220307BHJP
   C12M 3/00 20060101ALN20220307BHJP
【FI】
C12N5/0789
C12M3/00 A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018561526
(86)(22)【出願日】2017-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 US2017034544
(87)【国際公開番号】W WO2017205667
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-04-13
(31)【優先権主張番号】62/341,523
(32)【優先日】2016-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507114521
【氏名又は名称】テルモ ビーシーティー、インコーポレーテッド
【住所又は居所原語表記】10811 West Collins Avenue, Lakewood, Colorado 80215, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ、マーク イー.
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-535981(JP,A)
【文献】特表2010-523118(JP,A)
【文献】特表2005-508393(JP,A)
【文献】国際公開第2015/073918(WO,A1)
【文献】特表平09-504943(JP,A)
【文献】Xue Cao ,The hollow fiber bioreactor as a stroma-supported, serum-free ex vivo expansion platform for human umbilical cord blood cells,Biotechnol J.,2014年,9(7),980-989
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD34+細胞と接着性細胞である共培養細胞とを含む第1の複数の細胞を、複数の中空糸を有する中空糸型バイオリアクターへ導入するステップと、
前記第1の複数の細胞を、成長条件へ曝露するステップと、
前記中空糸型バイオリアクターの前記複数の中空糸において前記第1の複数の細胞のうちの少なくとも一部の細胞を増殖させて、第2の複数の増殖細胞を生成するステップと、
前記中空糸型バイオリアクターから前記第2の複数の増殖細胞を取り出すステップと、
を有する細胞の増殖方法であって、
前記第1の複数の細胞を中空糸型バイオリアクターへ導入するステップは、
前記中空糸型バイオリアクターの中空糸の内側の流体を循環させると共に、前記中空糸型バイオリアクターを回転させながら前記第1の複数の細胞を前記中空糸の内側を通る流路に導入するステップと、
前記第1の複数の細胞を前記中空糸の内側の流路に導入した後に、前記中空糸の内側の流体の循環と、前記中空糸型バイオリアクターの回転とを停止させて、前記中空糸の外側の流路に前記第1の複数の細胞を付着させるための溶液としてFBS添加培地又は無血清培地を投入しつつ循環させて、前記接着性細胞を前記中空糸の内側表面に付着させるステップと、を有し、
前記第2の複数の増殖細胞を取り出すステップは、
前記中空糸の内側表面に付着した前記接着性細胞である共培養細胞を剥離する物質を添加するステップと、
前記中空糸の内側の流体の循環流量を、前記第2の複数の増殖細胞を生成するステップにおける循環流量よりも高めて、増殖したCD34+細胞及び前記接着性細胞である共培養細胞を流体中に懸濁させるステップと、を有する、
細胞の増殖方法。
【請求項2】
請求項1記載の細胞の増殖方法において、前記第1の複数の細胞のうちの前記一部の細胞は、CD34+細胞を含む、
細胞の増殖方法。
【請求項3】
請求項1記載の細胞の増殖方法において、前記第1の複数の細胞は、臍帯血に由来する、
細胞の増殖方法。
【請求項4】
請求項1記載の細胞の増殖方法において、前記第1の複数の細胞は、追加の精製処理を行わずに、前記中空糸型バイオリアクターに付加される、
細胞の増殖方法。
【請求項5】
請求項1記載の細胞の増殖方法において、前記成長条件は、前記第1の複数の細胞を、成長因子の組み合わせに曝露することを含み、
前記成長因子は、組換えヒトFlt3リガンド(rhFlt-3L)、組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)、組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、組換えヒトグリア由来神経栄養因子、及びそれらの組み合わせのうちの1又は複数である、
細胞の増殖方法。
【請求項6】
請求項1記載の細胞の増殖方法において、該方法は、前記導入する前記ステップの前に、第1の共培養細胞を成長させるステップを、さらに有する、
細胞の増殖方法。
【請求項7】
請求項記載の細胞の増殖方法において、前記第1の共培養細胞は、ヒト間葉系幹細胞を含む、
細胞の増殖方法。
【請求項8】
請求項記載の細胞の増殖方法において、前記ヒト間葉系幹細胞は、骨髄由来である、
細胞の増殖方法。
【請求項9】
請求項記載の細胞の増殖方法において、該方法は、前記第2の複数の増殖細胞を、患者に投与して、前記患者における造血を再構築するステップを、さらに有する、
細胞の増殖方法。
【請求項10】
間葉系幹細胞を含む第1の複数の細胞を、複数の中空糸を有する中空糸型バイオリアクターの毛細管内側へ導入するステップと、
前記第1の複数の細胞を、第1の成長条件へ曝露するステップであって、前記第1の成長条件は、前記第1の複数の細胞を第1の成長培地へ曝露することを含むステップと、
CD34+細胞を含む第2の複数の細胞を、前記中空糸型バイオリアクターの前記毛細管内側へ導入するステップと、
前記第2の複数の細胞を、第2の成長条件へ曝露するステップであって、前記第2の成長条件は、前記第2の複数の細胞を複数の成長因子へ曝露することを含むステップと、
前記間葉系幹細胞との共培養で、前記複数の中空糸において前記第2の複数の細胞のうちの少なくとも一部の細胞を増殖させて、第3の複数の増殖細胞を生成するステップと、
前記中空糸型バイオリアクターから前記第3の複数の増殖細胞を取り出すステップと、
を有し、
前記第1の複数の細胞を中空糸型バイオリアクターへ導入するステップは、
前記中空糸型バイオリアクターの中空糸の内側の流体を循環させると共に、前記中空糸型バイオリアクターを回転させながら前記第1の複数の細胞を前記中空糸の内側を通る流路に導入するステップと、
前記第1の複数の細胞を前記中空糸の内側の流路に導入した後に、前記中空糸の内側の流体の循環と、前記中空糸型バイオリアクターの回転とを停止させて、前記中空糸の外側の流路に前記第1の複数の細胞を付着させるための溶液としてFBS添加培地又は無血清培地を投入しつつ循環させて、前記接着性細胞を前記中空糸の内側表面に付着させるステップと、を有し、
前記第3の複数の増殖細胞を取り出すステップは、前記中空糸の内側表面に付着した前記間葉系幹細胞を剥離する物質を添加するステップと、
前記中空糸の内側の流体の循環流量を、前記第3の複数の増殖細胞を生成するステップにおける循環流量よりも高めて、増殖したCD34+細胞及び前記間葉系幹細胞を流体中に懸濁させるステップと、を有する、
細胞の増殖方法。
【請求項11】
請求項10記載の細胞の増殖方法において、前記第1の複数の細胞を、前記第1の成長条件へ曝露する前記ステップは、前記中空糸型バイオリアクターの毛細管外側において基礎培地を循環させるステップを有する、
細胞の増殖方法。
【請求項12】
請求項10記載の細胞の増殖方法において、前記第1の複数の細胞を、前記第1の成長条件へ曝露する前記ステップは、前記中空糸型バイオリアクターの前記毛細管内側において基礎培地を循環させるステップを有する、
細胞の増殖方法。
【請求項13】
請求項10記載の細胞の増殖方法において、前記第2の複数の細胞を、前記第2の成長条件へ曝露する前記ステップは、前記中空糸型バイオリアクターの毛細管外側において基礎培地を循環させるステップを有する、
細胞の増殖方法。
【請求項14】
請求項10記載の細胞の増殖方法において、前記第2の複数の細胞を、前記第2の成長条件へ曝露する前記ステップは、前記中空糸型バイオリアクターの前記毛細管内側において基礎培地を循環させるステップを有する、
細胞の増殖方法。
【請求項15】
請求項10記載の細胞の増殖方法において、前記複数の成長因子は、組換えヒトグリア由来神経栄養因子を含む、
細胞の増殖方法。
【請求項16】
請求項10記載の細胞の増殖方法において、前記第2の複数の細胞は、臍帯血に由来する、
細胞の増殖方法。
【請求項17】
第1の複数の間葉系幹細胞を、静置型の成長チャンバーで成長させるステップと、
前記静置型の成長チャンバーでCD34+細胞を、前記間葉系幹細胞との共培養において、成長させるステップと、
前記静置型の成長チャンバーから、CD34+細胞を含む第1の複数の細胞を取り出すステップと、
第2の複数の間葉系幹細胞を、複数の中空糸を有する中空糸型バイオリアクターへ導入するステップと、
前記第2の複数の細胞を、第1の成長条件へ曝露するステップと、
CD34+細胞を含む前記第1の複数の細胞を、前記中空糸型バイオリアクターへ導入するステップと、
CD34+細胞を含む前記第1の複数の細胞を、成長条件へ曝露するステップであって、前記成長条件は、前記第1の複数の細胞を成長因子の組み合わせへ曝露することを含み、前記成長因子は、組換えヒトグリア由来神経栄養因子を含むステップと、
前記中空糸型バイオリアクターにおける前記第2の複数の間葉系幹細胞との共培養で、前記中空糸型バイオリアクターの前記複数の中空糸において前記第1の複数の細胞のうちの少なくとも一部の細胞を増殖させて、複数の増殖細胞を生成するステップと、
前記中空糸型バイオリアクターから前記複数の増殖細胞を取り出すステップと、
を有し、
前記第1の複数の細胞を中空糸型バイオリアクターへ導入するステップは、
前記中空糸型バイオリアクターの中空糸の内側の流体を循環させると共に、前記中空糸型バイオリアクターを回転させながら前記第1の複数の細胞を前記中空糸の内側を通る流路に導入するステップと、
前記第1の複数の細胞を前記中空糸の内側の流路に導入した後に、前記中空糸の内側の流体の循環と、前記中空糸型バイオリアクターの回転とを停止させて、前記中空糸の外側の流路に前記第1の複数の細胞を付着させるための溶液としてFBS添加培地又は無血清培地を投入しつつ循環させて、前記接着性細胞を前記中空糸の内側表面に付着させるステップと、を有し、
前記複数の増殖細胞を取り出すステップは、前記中空糸の内側表面に付着した前記間葉系幹細胞を剥離する物質を添加するステップと、
前記中空糸の内側の流体の循環流量を、前記複数の増殖細胞を生成するステップにおける循環流量よりも高めて、増殖したCD34+細胞及び前記間葉系幹細胞を流体中に懸濁させるステップと、を有する、
臍帯血由来CD34+細胞の増殖方法。
【請求項18】
請求項17記載の臍帯血由来CD34+細胞の増殖方法において、該方法は、前記第2の複数の間葉系幹細胞を、前記複数の中空糸を有する前記中空糸型バイオリアクターへ導入する前記ステップの前に、前記中空糸型バイオリアクターを糖タンパク質によってコーティングするステップをさらに有する、
臍帯血由来CD34+細胞の増殖方法。
【請求項19】
請求項17記載の臍帯血由来CD34+細胞の増殖方法において、前記第2の複数の間葉系幹細胞を、前記複数の中空糸を有する前記中空糸型バイオリアクターへ導入する前記ステップは、
ポンプによって、前記第2の複数の間葉系幹細胞を、前記中空糸型バイオリアクターの毛細管内側において循環させるステップと、
前記ポンプを停止して、前記第2の複数の間葉系幹細胞の第1の部分を、中空糸の内側の第1の部分に付着させるステップと、
前記中空糸型バイオリアクターを、初期位置から180度回転させるステップと、
前記ポンプによって、残りの前記第2の複数の間葉系幹細胞を、前記中空糸型バイオリアクターの毛細管内側において循環させるステップと、
前記ポンプを停止して、前記第2の複数の間葉系幹細胞の第2の部分を、前記中空糸の内側の第2の部分に付着させるステップと、
を有する、
臍帯血由来CD34+細胞の増殖方法。
【請求項20】
請求項19記載の臍帯血由来CD34+細胞の増殖方法において、該方法は、前記ポンプを停止して、前記第2の複数の間葉系幹細胞の前記第2の部分を、前記中空糸の内側の前記第2の部分に付着させる前記ステップの後に、前記中空糸型バイオリアクターを、180°回転して、前記初期位置へ戻すステップを、さらに有する、
臍帯血由来CD34+細胞の増殖方法。
【請求項21】
請求項17記載の臍帯血由来CD34+細胞の増殖方法において、前記成長因子はさらに、組換えヒトFlt3リガンド(rhFlt-3L)、組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)、組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、及び組換えヒトグリア由来神経栄養因子を含む、
臍帯血由来CD34+細胞の増殖方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細胞増殖システム(CES)は、研究及び治療の目的のために用いられる種々の細胞を増殖・分化させるために使用される。一例として、CD34+前駆細胞の造血前駆幹細胞(HSC)は、癌(例えば、リンパ腫、白血病、骨髄腫)等の疾患における可能な治療法として認められてきた。HSCは、骨髄、臍帯血、又は末梢血から採取される。有効量として最低限の数のHSCを投与することが提案されてきた。従って、HSCは、初期量から少なくとも有効量と見なされる量まで増殖される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の実施形態は、上記の点及び他の点を考慮してなされた。しかしながら、ここで記載される課題は、本発明の実施形態の用途を、制限するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本節は、本発明のいくつかの実施形態の態様を簡単な形式で説明するためのものであり、本発明の重要な又は必須の要素を特定することを意図していないし、また、請求項の範囲を制限することを意図しているものでもない。
【0004】
実施形態は、細胞増殖システムのバイオリアクターにおいて細胞を成長させる細胞増殖システム(CES)及び方法に係る。実施形態では、中空糸型バイオリアクターのようなバイオリアクターにおいて細胞を増殖する方法が提供される。実施形態において、細胞(例えば、造血幹細胞(HSC)(例えば、CD34+細胞))は、複数の中空糸を含む中空糸型バイオリアクターに導入される。実施形態において、第1の複数の細胞は、成長条件に曝露される。成長条件は、第1の複数の細胞を、中空糸型バイオリアクターにおいて成長因子の組み合わせに曝露することを含む。実施形態において、成長条件は、限定はされないが、共培養された細胞及び成長因子の組み合わせを含む。細胞を成長条件に曝露した後、細胞を増殖して、第2の複数の増殖細胞を生成する。そして、第2の増殖細胞はバイオリアクターから取り出される。
【0005】
非制限的且つ非包括的な実施形態が、添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本発明の実施形態に係る中空糸型バイオリアクターの斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る、予め設けられた流体移送装置を備えた細胞増殖システムの斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る細胞増殖システムのハウジングの斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る、予め設けられる流体移送装置の斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る細胞増殖システムの概略図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る細胞増殖システムの他の実施形態の概略図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る細胞増殖プロセスのフローチャートである。
図8図8は、本発明の他の実施形態に係る細胞増殖プロセスのフローチャートである。
図9図9は、本発明のさらに他の実施形態に係る細胞増殖プロセスのフローチャートである。
図10図10A図10Dは、実施形態に係る、バイオリアクター回転中の中空糸の断面図である。
図11図11は、本発明の実施形態を実施するために使用されるコンピュータシステムの構成要素を示す図である。
図12図12は、バイオリアクターシステムにおいて、CD34+細胞の増殖のための一実施形態に従って成長させた細胞の数の棒グラフである。
図13図13は、CD34+細胞の増殖のための一実施形態に係る、代謝プロファイルを示すグラフである。
図14図14は、CD34+細胞の増殖のための一実施形態に係る、代謝率を示すグラフである。
図15図15は、CD34+細胞の増殖のための一実施形態に係る、細胞数を示すグラフである。
図16図16は、CD34+細胞の増殖のための他の実施形態に係る、細胞数を示すグラフである。
図17図17は、CD34+細胞の増殖のための他の実施形態に係る、細胞数を示すグラフである。
図18図18は、実施形態に従って成長させた細胞の種々のタイプのバイオマーカーを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の原理は、以下の詳細な説明及び添付図面に示される実施形態を参照することで、さらに理解されよう。詳細な実施形態において具体的な特徴が示され説明されるが、本発明は、以下で説明される実施形態に限定されないと理解されるべきである。
【0008】
以下では、添付図面に示される実施形態が詳細に言及され説明される。可能な限り、図面及び以下の記載において、同一又は同様な部分に対しては、同じ参照符号が使用される。
【0009】
図1は、本発明と共に使用される中空糸型バイオリアクター100の一例の正面図を示す。中空糸型バイオリアクター100は、長手方向軸LA-LAを有し、チャンバーハウジング104を備える。少なくとも1つの実施形態において、チャンバーハウジング104は、4つの開口部又は4つのポート、すなわち、毛細管内(IC)入口ポート108、IC出口ポート120、毛細管外(EC)入口ポート128、EC出口ポート132を有する。
【0010】
本開示の実施形態において、第1循環路内の流体は、中空糸型バイオリアクター100の第1の長手方向端112におけるIC入口ポート108を通って中空糸型バイオリアクター100に進入し、複数の中空糸116の毛細管内側(種々の実施形態において、中空糸膜の毛細管内(「IC」)側又は「IC空間」と呼ぶ)に進入して通過し、中空糸型バイオリアクター100の第2の長手方向端124に位置するIC出口ポート120を通って中空糸型バイオリアクター100の外に出る。IC入口ポート108とIC出口ポート120との間の流体経路は、中空糸型バイオリアクター100のIC部分126を定義する。第2循環路内の流体は、EC入口ポート128を通って中空糸型バイオリアクター100に進入し、中空糸116の毛細管外側又は外側(該膜の「EC側」又は「EC空間」と呼ぶ)に接触して、EC出口ポート132を通って中空糸型バイオリアクター100の外に出る。EC入口ポート128とEC出口ポート132との間の流体経路は、中空糸型バイオリアクター100のEC部分136を構成する。EC入口ポート128を通って中空糸型バイオリアクター100に入った流体は、中空糸116の外側に接触する。小分子(例えば、イオン、水、酸素、乳酸塩等)は、中空糸116を通じて中空糸の内部すなわちIC空間から外部すなわちEC空間へ、又はEC空間からIC空間へ拡散することができる。成長因子のような高分子量の分子は、大きすぎるため中空糸を通過できず、中空糸116のIC空間内にとどまる。培地は、必要であれば交換補充してもよい。また、必要であれば、培地を、酸素供給装置又はガス移送モジュールを通じて循環させて、ガスを交換してもよい(例えば、細胞増殖システム500(図5)や細胞増殖システム600(図6)を参照)。細胞は、以下で説明されるように、第1循環路及び/又は第2循環路内に含有させることができ、該膜のIC側及び/又はEC側に存在させることができる。
【0011】
中空糸膜を作製するのに用いられる材料は、中空糸に加工可能な任意の生体適合性高分子材料でよい。本開示の実施形態において、使用可能な一材料としては、合成ポリスルホン系材料が挙げられる。細胞を中空糸の表面に付着させるため、該表面は、少なくとも細胞成長表面をタンパク質(例えば、フィブロネクチンやコラーゲンのような糖タンパク質)でコーティングしたり或いは該表面に放射線を照射したりするような方法で、改質されてよい。膜表面をガンマ線処理することによって、膜に対してフィブロネクチン等による追加コーティングを行わずに、接着性細胞を付着させることが可能になる。ガンマ線処理を行った膜で作製されたバイオリアクターは、再利用することができる。本開示の実施形態において、細胞付着のための他のコーティング及び/又は他の処理を用いてもよい。
【0012】
図2において、本開示の実施形態に係る、予め設けられた流体輸送組立体を有する細胞増殖システム200の一実施形態が示される。CES200は、細胞増殖装置202を有する。細胞増殖装置202は、細胞増殖装置202の後側部分206と係合するハッチ又は開閉可能なドア204を有する。細胞増殖装置202内の内部空間208は、バイオリアクター100を含む予め設けられた流体輸送組立体210を受容し係合固定できるような特徴を有する。予め設けられた流体輸送組立体210は、細胞増殖装置202に取り外し可能に取り付けられており、細胞増殖装置202において、使用された流体輸送組立体210を、新しい又は未使用の流体輸送組立体210に比較的迅速に交換できるようになっている。単一の細胞増殖装置202の動作によって、第1の流体輸送組立体210を用いて細胞の第1のセットを成長又は増殖させ、その後、第1の流体輸送組立体210を第2の流体輸送組立体210に交換する際に殺菌することなく、第2の流体輸送組立体210を用いて細胞の第2のセットを成長又は増殖させることができる。予め設けられた流体輸送組立体は、バイオリアクター100と酸素供給器又はガス移送モジュール212を有する。実施形態において、流体輸送組立体210に接続される種々の培地用配管を受容する配管案内スロットが214として示される。
【0013】
図3は、本開示の実施形態に係る、予め設けられた流体輸送組立体210(図2参照)を取り外し可能に取り付ける前の、細胞増殖装置202の後側部分206を示す。開閉可能なドア204(図2参照)は、図3では省略されている。細胞増殖装置202の後側部分206には、流体輸送組立体210の構成要素と組み合わせて動作する複数の異なる構造が設けられている。詳細には、細胞増殖装置202の後側部分206は、流体輸送組立体210におけるポンプループと協働する複数の蠕動ポンプ(IC循環ポンプ218、EC循環ポンプ220、IC入口ポンプ222、EC入口ポンプ224)を有する。また、細胞増殖装置202の後側部分206は、複数のバルブ(IC循環バルブ226、試薬バルブ228、IC培地バルブ230、空気除去バルブ232、細胞入口バルブ234、洗浄バルブ236、分配バルブ238、EC培地バルブ240、IC廃棄バルブ242、EC廃棄バルブ244、収穫バルブ246)を有する。さらに、複数のセンサ(IC出口圧力センサ248、IC入口圧力/温度センサ250、EC入口圧力/温度センサ252、EC出口圧力センサ254)が、細胞増殖装置202の後側部分206に関連付けられる。さらに、空気除去チャンバーのための光学センサ256が示されている。
【0014】
実施形態に係る、バイオリアクター100を回転させるための軸又はロッカー制御部258が、図3に示されている。軸又はロッカー制御部258と関連付けられた軸嵌合部260によって、細胞増殖装置202の後側部分206に対して、流体輸送組立体210又は流体輸送組立体400の軸アクセス開口部(例えば、配管収納部300(図4)の開口部424(図4))の適切な位置合わせが行える。軸又はロッカー制御部258の回転によって、軸嵌合部260及びバイオリアクター100に対して回転運動が付与される。従って、CES200のオペレータ又はユーザが、新しい又は未使用の流体輸送組立体400(図4)を、細胞増殖装置202に取り付ける際、位置合わせは、軸嵌合部260に対して、流体輸送組立体210又は流体輸送組立体400の軸アクセス開口部424(図4)を適切に方向付けるといった比較的簡単な作業となる。
【0015】
図4は、取り付け・取り外し自在の予め取り付けられる流体輸送組立体400の斜視図である。予め取り付けられる流体輸送組立体400は、細胞増殖装置202に取り外し可能に取り付けられており、細胞増殖装置202において、使用された流体輸送組立体400を、新しい又は未使用の流体輸送組立体400に比較的迅速に交換できるようになっている。図4に示されるように、バイオリアクター100は、軸嵌合部402を含むバイオリアクターカップリングに取り付けられる。軸嵌合部402は、細胞増殖装置202の軸(図3に示されている例えば、軸258)を係合させるための1以上の(付勢された腕部又はバネ部材404のような)軸締結機構を有する。
【0016】
実施形態において、軸嵌合部402及びバネ部材404には、バイオリアクター100を回転させる細胞増殖システムの機構が接続される。例えば、いくつかの実施形態において、細胞増殖システムは、バイオリアクターを回転可能なQUANTUM(登録商標)細胞増殖システム(CES)(コロラド州、レイクウッド、テルモBCT社製)の一部であってもよい。バイオリアクターを回転可能な細胞増殖システムの例としては、少なくとも、2013年3月19日発行の米国特許第8,399,245号明細書(タイトル:細胞増殖システムの細胞成長チャンバーのための回転システム及びその使用方法)、2013年2月13日発行の米国特許第8,809,043号明細書(タイトル:細胞増殖システムの細胞成長チャンバーのための回転システム及びその使用方法)、及び2015年6月16日発行の米国特許第9,057,045号明細書(タイトル:細胞増殖システムのバイオリアクターにおける細胞の投入及び分散方法)に記載されている。上記米国特許出願の全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【0017】
実施形態によれば、流体輸送組立体400は、配管408A、408B、408C、408D、408E等及び種々の管継手を有する。これらにより、以下で説明されるように、図5及び図6に示されるような流体路が提供される。ポンプループ406A、406B、406Cも、ポンプ用に設けられる。細胞増殖装置202が配置される場所に、種々の培地が設けられてもよいが、実施形態において、プリマウントタイプの流体輸送組立体400は、細胞増殖装置202の外部に延在する程度に十分な長さの配管を有することで、該配管に対して培地バッグに関連付けられた配管が接合されてもよい。
【0018】
図5は、細胞増殖システム500の実施形態の概略図である。図6は、他の実施形態である細胞増殖システム600の概略図である。図5及び図6に示される実施形態では、以下で説明するように、細胞は、IC空間で成長される。しかしながら、本発明は、そのような例に限定されない。他の実施形態では、細胞はEC空間で成長されてもよい。さらに他の実施形態では、細胞を共培養するような場合、第1の細胞をEC空間で成長し、第2の細胞をIC空間で成長してもよい。細胞の共培養は、第1の細胞及び第2の細胞をEC空間で成長することにより行ってもよいし、第1の細胞及び第2の細胞をIC空間で成長することにより行ってもよい。
【0019】
図5は、実施形態に係るCES500を示している。CES500は、第1流体循環路502(「毛細管内側ループ」又は「ICループ」とも呼ぶ)と第2流体循環路504(「毛細管外側ループ」又は「ECループ」とも呼ぶ)とを有する。第1流体流路506は、中空糸型バイオリアクター501に流体的に関連付けられて、少なくとも部分的に第1流体循環路502を構成する。流体は、IC入口ポート501Aを介して中空糸型バイオリアクター501に流入し、中空糸型バイオリアクター501内の中空糸を通って、IC出口ポート501Bを介して流出する。圧力測定器510は、中空糸型バイオリアクター501を離れる培地の圧力を測定する。培地は、培地流量/循環流量を制御するために用いられるIC循環ポンプ512を介して、流れる。IC循環ポンプ512は、第1方向(例えば、時計回り)又は第1方向の反対の第2方向(例えば、反時計回り)に、流体をポンピング可能である。出口ポート501Bは、逆方向では、入口として使用することができる。ICループ502に流入する培地は、バルブ514を介して流入する。当業者であれば理解できるように、追加のバルブ及び/又は他の装置を種々の位置に配置して、流体経路の特定の部分に沿って、培地を隔離し及び/又は該培地の特性を測定することもできる。従って、示される概略図は、CES500の複数の要素に対する1つの可能な構成を示すものであり、1以上の実施形態の範囲において、概略図は変形可能であると理解されるべきである。
【0020】
ICループ502に対して、培地のサンプルは、動作中に、サンプルポート516又はサンプルコイル518から得られる。第1流体循環路502に配置された圧力/温度測定器520によって、動作中において、培地の圧力及び温度が測定できる。そして、培地は、IC入口ポート501Aに戻って、流体循環路502を完了する。中空糸型バイオリアクター501で成長/増殖した細胞は、中空糸型バイオリアクター501から流し出され、バルブ598を通って収穫バッグ599に入るか、中空糸内に再分配され、さらに成長される。
【0021】
第2流体循環路504において、流体は、EC入口ポート501Cを介して、中空糸型バイオリアクター501に入り、EC出口ポート501Dを介して中空糸型バイオリアクター501を離れる。ECループ504では、培地は、中空糸型バイオリアクター501の中空糸の外側と接触し、それによって、小分子の中空糸への及び中空糸からの拡散が可能となる。
【0022】
培地が中空糸型バイオリアクター501のEC空間に入る前に、第2流体循環路504に配置された圧力/温度測定器524によって、該培地の圧力及び温度が測定可能である。培地が中空糸型バイオリアクター501を離れた後、圧力測定器526によって、第2流体循環路504の培地の圧力が測定可能である。ECループに対して、培地のサンプルは、動作中に、サンプルポート530から又はサンプルコイルから得られる。
【0023】
実施形態において、中空糸型バイオリアクター501のEC出口ポート501Dを離れた後、第2流体循環路504の流体は、EC循環ポンプ528を通って、酸素供給器又はガス移送モジュール532に至る。EC循環ポンプ528は、両方向に流体をポンピング可能である。第2流体流路522は、酸素供給器入口ポート534及び酸素供給器出口ポート536を介して酸素供給器又はガス移送モジュール532と流体的に関連付けられている。動作中は、流体培地は、酸素供給器入口ポート534を介して、酸素供給器又はガス移送モジュール532に流入し、酸素供給器出口ポート536を介して、酸素供給器又はガス移送モジュール532から流出する。酸素供給器又はガス移送モジュール532は、CES500における培地に対して、酸素を付加し、気泡を除去する。種々の実施形態において、第2流体循環路504における培地は、酸素供給器又はガス移送モジュール532に入るガスと平衡状態にある。酸素供給器又はガス移送モジュール532は、適当なサイズの任意の酸素供給器又はガス移送装置でよい。空気又はガスは、フィルタ538を介して酸素供給器又はガス移送モジュール532に流入し、フィルタ540を介して、酸素供給器又はガス移送装置532から流出する。フィルタ538、540は、酸素供給器又はガス移送モジュール532及び関連する培地の汚染を減少又は防止する。プライミングステップの一部を行っている際にCES500からパージされた空気又はガスは、酸素供給器又はガス移送モジュール532を介して大気にベント可能である。
【0024】
CES500を図示した構成において、第1流体循環路502及び第2流体循環路504における流体培地は、同じ方向で(並流構成で)中空糸型バイオリアクター501を流れる。CES500は、対向流で流れるように構成してもよい。
【0025】
少なくとも1つの実施形態において、(バッグ562からの)細胞を含む培地及びバッグ546からの流体培地は、第1流体流路506を介して第1流体循環路502に導入される。流体容器562(例えば、細胞投入バッグ又は空気をシステム外にプライミングするための生理食塩水プライミング流体)は、バルブ564を介して、第1流体流路506及び第1流体循環路502に流体的に関連付けられる。
【0026】
流体容器、すなわち培地バッグ544(例えば、試薬)は、バルブ548を介して第1流体入口路542に流体的に関連付けられ、流体容器、すなわち培地バッグ546(例えば、IC培地)は、バルブ550を介して第1流体入口路542に流体的に関連付けられ、又はバッグ544、546は、バルブ548、550、570を介して第2流体入口路574に流体的に関連付けられる。また、滅菌され密封可能な第1及び第2入力プライミング路508、509が設けられる。空気除去チャンバー(ARC)556が、第1循環路502に流体的に関連付けられる。空気除去チャンバー556は、1以上の超音波センサを有してもよい。該センサには、空気除去チャンバー556内における特定の測定点において、空気、流体の不足、及び/又はガス/流体境界、例えば、空気/流体境界、を検知するための上部センサ及び下部センサが含まれる。例えば、空気除去チャンバー556の底部近傍及び/又は頂部近傍で、超音波センサを用いて、それらの場所における空気、流体、及び/又は空気/流体境界を検知することができる。実施形態において、本開示の範囲を逸脱しない範囲で、他のタイプのセンサを使用することができる。例えば、本開示の実施形態に従って、光学センサを使用してもよい。プライミングステップの一部又はその他のプロトコルを行っている際にCES500からパージされる空気又はガスは、空気除去チャンバー556と流体的に関連付けられたライン558を通って、エアバルブ560から大気中へベント可能である。
【0027】
(バッグ568からの)EC培地又は(バッグ566からの)洗浄液が第1流体流路又は第2流体流路に加えられる。流体容器566は、バルブ570と流体的に関連付けられる。バルブ570は、分配バルブ572及び第1流体入口路542を介して第1流体循環路502と流体的に関連付けられる。また、バルブ570を開け、分配バルブ572を閉じることにより、流体容器566は、第2流体入口路574及びEC入口路584を介して第2流体循環路504と流体的に関連付けることができる。同様に、流体容器568は、バルブ576と流体的に関連付けられる。バルブ576は、第1流体入口路542及び分配バルブ572を介して第1流体循環路502と流体的に関連付けられる。また、バルブ576を開け、分配バルブ572を閉じることにより、流体容器568は、第2流体入口路574と流体的に関連付けることができる。オプションとして、培地試薬又は洗浄液の導入用に熱交換器552を設けてもよい。
【0028】
ICループにおいて、流体はまず、IC入口ポンプ554によって送られる。ECループでは、流体はまず、EC入口ポンプ578によって送られる。超音波センサのようなエア検知器580がEC入口路584と関連付けられてもよい。
【0029】
少なくとも1つの実施形態において、第1及び第2流体循環路502、504は、廃棄ライン588と接続される。バルブ590を開けると、IC培地は、廃棄ライン588を介して、廃棄バッグすなわち出口バッグ586に至る。同様に、バルブ582を開けると、EC培地は、廃棄ライン588を介して廃棄バッグすなわち出口バッグ586に流れる。
【0030】
実施形態において、細胞は、細胞収穫路596を介して収穫される。中空糸型バイオリアクター501からの細胞は、細胞を含むIC培地をポンピングすることにより、細胞収穫路596及びバルブ598を介して、細胞収穫バッグ599に収穫される。
【0031】
CES500の各部品は、細胞増殖装置202(図2及び図3)のような装置又はハウジング内に収容され、該装置は、細胞及び培地を所定温度に維持する。
【0032】
図6は、細胞増殖システム600の他の実施形態の概略図である。CES600は、第1流体循環路602(「毛細管内側ループ」又は「ICループ」とも呼ぶ)と第2流体循環路604(「毛細管外側ループ」又は「ECループ」とも呼ぶ)とを有する。第1流体流路606は、中空糸型バイオリアクター601に流体的に関連付けられて、第1流体循環路602を構成する。流体は、IC入口ポート601Aを介して中空糸型バイオリアクター601に流入し、中空糸型バイオリアクター601内の中空糸を通って、IC出口ポート601Bを介して流出する。圧力センサ610は、中空糸型バイオリアクター601を離れる培地の圧力を測定する。圧力の他に、実施形態において、センサ610は、作動中において、培地圧力及び培地温度を検知する温度センサであってもよい。
【0033】
培地は、培地流量又は循環流量を制御するために用いられるIC循環ポンプ612を介して、流れる。IC循環ポンプ612は、第1方向(例えば、反時計回り)又は第1方向の反対の第2方向(時計回り)に、流体をポンピング可能である。出口ポート601Bは、逆方向では、入口として使用することができる。ICループに流入する培地は、バルブ614を介して流入することができる。当業者であれば理解できるように、追加のバルブ及び/又は他の装置を種々の位置に配置することにより、流体経路の特定の部分に沿って、培地を隔離し及び/又は該培地の特性を測定することもできる。培地のサンプルは、動作中に、サンプルコイル618から得られる。そして、培地は、IC入口ポート601Aに戻って、流体循環路602を完了する。
【0034】
中空糸型バイオリアクター601で成長/増殖した細胞は、中空糸型バイオリアクター601から流し出され、バルブ698及びライン697を介して収穫バッグ699に入る。或いは、バルブ698が閉じている場合、細胞は、中空糸型バイオリアクター601に再分配され、さらに成長される。示される概略図は、CES600の複数の要素に対する1つの可能な構成を示すものであり、概略図に対する変更は、1以上の実施形態の範囲において可能であると理解されるべきである。
【0035】
第2流体循環路604において、流体は、EC入口ポート601Cを介して、中空糸型バイオリアクター601に入り、EC出口ポート601Dを介して中空糸型バイオリアクター601を離れる。ECループでは、培地は、中空糸型バイオリアクター601の中空糸の外側と接触し、それによって、一実施形態では、チャンバー601内における小分子の中空糸への及び中空糸からの拡散が可能となる。
【0036】
培地が中空糸型バイオリアクター601のEC空間に入る前に、第2流体循環路604に配置された圧力/温度センサ624によって、該培地の圧力及び温度を測定することができる。培地が中空糸型バイオリアクター601を離れた後に、センサ626によって、第2流体循環路604の培地の圧力及び/又は温度を測定することができる。ECループに対して、培地のサンプルは、動作中に、サンプルポート630から又はサンプルコイルから得られる。
【0037】
中空糸型バイオリアクター601のEC出口ポート601Dを離れた後、第2流体循環路604の流体は、EC循環ポンプ628を通って、酸素供給器又はガス移送モジュール632に至る。実施形態において、EC循環ポンプ628もまた、両方向に流体をポンピング可能である。第2流体流路622は、酸素供給器又はガス移送モジュール632の入口ポート632A及び出口ポート632Bを介して酸素供給器又はガス移送モジュール632と流体的に関連付けられている。動作中は、流体培地は、入口ポート632Aを介して、酸素供給器又はガス移送モジュール632に流入し、出口ポート632Bを介して、酸素供給器又はガス移送モジュール632から流出する。酸素供給器又はガス移送モジュール632は、CES600における培地に対して、酸素を付加し、気泡を除去する。
【0038】
種々の実施形態において、第2流体循環路604における培地は、酸素供給器又はガス移送モジュール632に入るガスと平衡状態にある。酸素供給器又はガス移送モジュール632は、酸素供給又はガス移送に有用な、適当なサイズの任意の装置でよい。空気又はガスは、フィルタ638を介して酸素供給器又はガス移送モジュール632に流入し、フィルタ640を介して、酸素供給器又はガス移送装置632から流出する。フィルタ638、640は、酸素供給器又はガス移送モジュール632及び関連する培地の汚染を減少又は防止する。プライミングステップの一部を行っている際にCES600からパージされた空気又はガスは、酸素供給器又はガス移送モジュール632を介して大気にベント可能である。
【0039】
CES600として示された該構成において、第1流体循環路602及び第2流体循環路604における流体培地は、同じ方向で(並流構成で)中空糸型バイオリアクター601を流れる。ある実施形態において、CES600は、対向流で流れるように構成してもよい。
【0040】
少なくとも1つの実施形態において、(細胞容器、例えばバッグのような供給源からの)細胞を含む培地は、取り付け点662に取り付けられ、培地源からの流体培地は、取り付け点646に取り付けられる。細胞及び培地は、第1流体流路606を介して第1流体循環路602に導入される。取り付け点662は、バルブ664を介して、第1流体流路606と流体的に関連付けられる。取り付け点646は、バルブ650を介して、第1流体流路606と流体的に関連付けられる。試薬源を、点644に流体的に接続して、バルブ648を介して流体入口路642に関連付けてもよいし、又はバルブ648及び672を介して第2流体入口路674に関連付けてもよい。
【0041】
空気除去チャンバー(ARC)656が、第1循環路602に流体的に関連付けられる。空気除去チャンバー656は、1以上のセンサを有してもよい。該センサには、空気除去チャンバー656内における特定の測定点において、空気、流体の不足、及び/又はガス/流体境界、例えば、空気/流体境界、を検知するための上部センサ及び下部センサが含まれる。例えば、空気除去チャンバー656の底部近傍及び/又は頂部近傍で、超音波センサを用いて、それらの場所における空気、流体、及び/又は空気/流体境界を検知することができる。実施形態において、本開示の範囲を逸脱しない範囲で、他のタイプのセンサを使用することができる。例えば、本開示の実施形態に従って、光学センサを使用してもよい。プライミングステップの一部又はその他のプロトコルを行っている際にCES600からパージされる空気又はガスは、空気除去チャンバー656と流体的に関連付けられたライン658を通って、エアバルブ660から大気中へベント可能である。
【0042】
EC培地源が、EC培地取り付け点668に取り付けられる。洗浄液源が、洗浄液取り付け点666に取り付けられる。これにより、EC培地及び/又は洗浄液が第1流体流路又は第2流体流路に加えられる。取り付け点666は、バルブ670と流体的に関連付けられる。バルブ670は、バルブ672及び第1流体入口路642を介して第1流体循環路602と流体的に関連付けられる。また、バルブ670を開け、バルブ672を閉じることにより、取り付け点666は、第2流体入口路674及び第2流体流路684を介して第2流体循環路604と流体的に関連付けることができる。同様に、取り付け点668は、バルブ676と流体的に関連付けられる。バルブ676は、第1流体入口路642及びバルブ672を介して第1流体循環路602と流体的に関連付けられる。また、バルブ676を開け、分配バルブ672を閉じることにより、流体容器668を、第2流体入口路674と流体的に関連付けることができる。
【0043】
ICループにおいて、流体はまず、IC入口ポンプ654によって送られる。ECループでは、流体はまず、EC入口ポンプ678によって送られる。超音波センサのようなエア検知器680がEC入口路684と関連付けられてもよい。
【0044】
少なくとも1つの実施形態において、第1及び第2流体循環路602、604は、廃棄ライン688に接続される。バルブ690を開けると、IC培地は、廃棄ライン688を通って、廃棄バッグ又は出口バッグ686に至る。同様に、バルブ692を開けると、EC培地は、廃棄バッグ又は出口バッグ686に流れる。
【0045】
細胞が中空糸型バイオリアクター601にて成長された後、該細胞は、細胞収穫路697を介して収穫される。中空糸型バイオリアクター601からの細胞は、バルブ698を開けた状態において、細胞を含むIC培地をポンピングすることにより、細胞収穫路697を介して、細胞収穫バッグ699に収穫される。
【0046】
CES600の各部品は、細胞増殖装置202(図2及び図3)のような装置又はハウジング内に収容され、該装置は、細胞及び培地を所定温度に維持する。さらに、実施形態において、CES600とCES500(図5)の部品を組み合わせてもよい。他の実施形態において、CESは、本開示の範囲内において、図5及び図6に示される部品よりも少ない数の部品を含んでもよいし、多い数の部品を含んでもよい。実施形態において、CES500、CES600のある部分は、テルモBCT社(コロラド州、レイクウッド)によって製造されるQUANTUM(登録商標)細胞増殖システム(CES)の1以上の特徴によって実施される。
【0047】
CES600を使用する1つの特定の実施形態において、造血幹細胞(HSC)(例えばCD34+細胞)は、CES600の実施形態において、増殖される。この実施形態では、白血球アフェレーシスプロセス又は手動プロセス(例えば、臍帯)を使用して収集することができるHSC(CD34+細胞を含む)をバイオリアクター601に導入する。HSC(CD34+細胞を含む)は、循環路602を介してバイオリアクター601に導入することができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、HSC(CD34+細胞を含む)は、バイオリアクター601への導入の前に選択ステップ(例えば、精製ステップ)にかけられてもよい。このステップは、遠心分離機、精製カラム、磁気選択、化学的選択等の使用を伴うことができる。細胞選択/精製手順のいくつかの例としては、例えば、ドイツ国ベルギッシュグラートバッハのMiltenyi Biotec製の単離カラムを使用して行うものが挙げられる。一例では、臍帯血は、細胞をバイオリアクター601に導入する前に、最初に、HSC(CD34+細胞を含む)を選択する細胞選択プロセスにかけられる。他の例では、最初に収集されたときに(CD34+細胞を含む)HSCに含まれる可能性のある他の細胞を激減するためにアフェレーシス装置が利用される。例えば、HSCは、臍帯血、骨髄、又は末梢血から供給されてもよい。最初の収集後且つバイオリアクター601に導入する前に、CD34+細胞を含むある体積のHSCを処理して、その体積から赤血球、特定の白血球、顆粒球、及び/又は他の細胞を激減させることができる。これらは単なる例示であり、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0049】
他の実施形態では、HSC(CD34+細胞を含む)は、追加の精製を行わずに、収集後、バイオリアクター601に直接添加される。例えば、(HSCを含む)臍帯血はバイオリアクターに添加される。多くのタンパク質やその他の生物活性分子に加えて、臍帯血には、(CD34+細胞を含む)HSC、赤血球、血小板、顆粒球、及び/又は白血球が含まれる。
【0050】
いくつかの実施形態において、HSCは、プライミングステップの後、バイオリアクター601に加えられる。理解されるように、増殖される細胞は非接着性であり、従って、増殖(expansion/proliferation)のために、バイオリアクター601の中空糸壁に付着する必要がない。これらの実施形態では、付着を促進するためのコーティング剤(例えば、フィブロネクチン)で、中空糸の内側をコートする必要がない。これらの実施形態では、(精製された又は精製されていない)(CD34+細胞を含む)HSCは、バイオリアクターコーティングステップなしで、プライミングステップの後に、バイオリアクター601に導入される。細胞が接着性細胞の場合は、プライミングステップの後、HSCの導入前に、コーティングステップを実行する。
【0051】
バイオリアクター601内に入ると、細胞は、成長因子、活性化剤、ホルモン、試薬、タンパク質、及び/又は細胞の増殖を補助する他の生物活性分子に曝露される。一例では、HSC(CD34+細胞を含む)を増殖させるための条件を最適化するために、共培養細胞株がバイオリアクター601内で予め増殖/導入される。1つの特定の実施形態では、CD34+細胞の増殖を促進するために、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)をHSC(CD34+細胞を含む)と共培養する。理論に縛られるものではないが、MSCは、HSC(例えば、CD34+細胞)と相互作用する因子(例えばSDF‐1因子)を放出し、該細胞の増殖を促進すると考えられる。いくつかの実施形態では、共培養hMSCの使用は、HSC(CD34+細胞を含む)をバイオリアクター601に導入する前に、hMSCの増殖に最適化された条件下で最初に成長プロセスを行うことを伴ってもよい。hMSCは、実施形態において、骨髄、末梢血、臍帯細胞、脂肪組織、及び/又は奇胎組織に由来する。
【0052】
共培養細胞に加えて、HSCを成長及び増殖するために、1つ又は複数の成長因子、活性化剤、ホルモン、試薬、タンパク質、及び/又は他の生物活性分子を含むサプリメントをバイオリアクター601に添加してもよい。サプリメントは、単一容量の添加として、又はある期間にわたって(例えば、連続的に、断続的に、又は定期的なスケジュールで)添加することができる。一実施形態では、サイトカイン及び/又は他のタンパク質(例えば、組換えサイトカイン、ホルモン等)の組合せをサプリメントの一部として含めることができる。一例として、サプリメントは、組換えヒトFlt3リガンド(rhFlt‐3L)、組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)、組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、組換えヒト(rh)グリア由来神経栄養因子、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1又は複数のものを含む。実施形態と共に使用することができるサプリメントの一例は、STEMCELL2MAX(商標)サプリメント(stemcell2MAX、カンタニデ、ポルトガル)である。
【0053】
いくつかの実施形態において、因子の組み合わせは、細胞が懸濁されている培地に含まれてもよいことに留意されたい。例えば、HSCを培地に懸濁し、バイオリアクターに培地で導入することができる。実施形態において、培地は、HSCの増殖を助ける成長因子の組み合わせを含んでもよい。
【0054】
細胞をサプリメント、共培養細胞、及び/又は細胞を増殖させるための他の材料と共にバイオリアクターに導入した後、細胞をバイオリアクター601内で増殖させる。増殖中に、バイオリアクター601に追加する又はバイオリアクター601から除去するいくつかの材料がある。一例として、追加のタンパク質(例えば、サイトカイン)がバイオリアクター601に添加される。いくつかの実施形態では、2つ以上のタンパク質又は他の生物活性剤を使用することができる。追加の材料は、個別に、又は同時に、又は異なる時間に、添加することができる。或いは、組み合わせて添加することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、例えば、ポート618を介して、バイオリアクター601により直接的に材料が追加される場合もある。しかしながら、他の実施形態では、バイオリアクター601に、よりゆっくりと灌流されるように、材料は、例えば、流路606を介して、所与の位置において追加される。
【0056】
(CD34+細胞を含む)HSCの増殖を補助するための材料に加えて、HSCは、いくつかの栄養素を含む培地の添加等によってもフィーディングすることができる。いくつかの実施形態では、培地は、血清を含む市販の培地である。他の実施形態では、培地は、無血清であり、他の添加剤を含んでもよい。培地は、他の材料、塩、血清、タンパク質、試薬、生物活性分子、栄養素等を含むいくつかの非限定的な例の添加によって変性させてもよい。HSC(CD34+細胞を含む)をフィーディングするために使用される培地の一例としては、CELLGRO(登録商標)無血清培地(CellGenix、フライブルク、ドイツ)が挙げられる。
【0057】
いくつかの実施形態では、共培養細胞はIC空間内に位置しているが、フィーディングはEC空間内で行うことができる。実施形態では、EC空間を介してフィーディングを行うことにより、IC空間内の循環流体から細胞が感じることがある力の量を減らすことができる。EC空間における培地の循環は、実施形態において、HSC(CD34+細胞を含む)の増殖のために十分な栄養素を提供することができる。
【0058】
HSC(CD34+細胞を含む)の増殖の一部として、温度、pH、酸素濃度、二酸化炭素濃度、排出物濃度、代謝物濃度等のその他の条件は、バイオリアクター601内で調節される。いくつかの実施形態において、EC側(例えば、経路604)の流量を用いて、種々のパラメータが制御される。例えば、細胞成長が行われているIC側の排出物濃度又は代謝物濃度を減らしたい場合、EC側の流量を増やすことで、中空糸を通過するIC側からEC側への移動によって、排出物及び/又は代謝物をIC側から確実に除去することができる。
【0059】
CD34+細胞を増殖させた後、該細胞は、バイオリアクター601から取り出される。CD34+細胞は容器699に集められる。実施形態において、収集されたCD34+細胞は、造血を再構築するために、患者に投与される。そのような患者としては、非限定的な例であるが、造血に影響を及ぼし得る、様々な癌(例えば白血病、骨髄異形成、非ホジキンリンパ腫等)の治療を受けている患者等である。細胞は他の化合物又は分子と共に投与されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、CES600の使用によって、従来のプロセスと比べて、(CD34+細胞を含む)HSCの増殖において、種々の利点が得られる。例えば、中空糸の使用によって、密接な細胞間通信が可能になり、その結果、CD34+細胞の成長が高められて、増殖を開始させ継続させることができる。また、バイオリアクター601のような中空糸型バイオリアクターの使用によって、細胞増殖のための表面積が拡大し、それによって、より高い濃度の又はより高い量のCD34+細胞をもたらすことができる。
【0061】
さらに、バイオリアクター601における条件は、CES600のいくつかの異なる構成要素(IC流量及びEC流量を含む)を使用して制御され得る。また、CES600は、物質を添加するための様々な場所を提供することができる。これによって、サイトカインのバイオリアクター601への直接的な投入又は間接的な投入(例えば灌流)を行うことができる。
【0062】
さらに、CES600によって、閉鎖系システムが提供される。すなわち、CD34+細胞を成長するためのステップを、周囲環境に直接曝露することなく、実行することができる。従って、周囲環境によって該細胞が汚染されたり、或いは該細胞や該細胞成長に使用される物質によって周囲環境が汚染されたりすることがない。いくつかの実施形態では、増殖のためのCD34+細胞の開始濃度を、他の方法/システムに比べて、小さい量にすることができると考えられる。これらの実施形態では、CD34+細胞増殖の収穫量を、他の方法/システムに比べて大きくできる。いくつかの実施形態は、有効量のCD34+細胞を増殖させるための時間を短縮することができると考えられる。
【0063】
図7図9は、実施形態に係る細胞(例えば、HSC)成長のフローチャート700、800、900を示す。以下では、フローチャート700、800、900のステップを行うための特定の装置が説明されるが、本発明はそれらに限定されない。例えば、いくつかのステップは、細胞増殖システム(例えば、CES500、600)の一部又は、プロセッサ実行可能命令として与えられるソフトウェアに基づいてステップを実行可能なプロセッサ(例えば、図11のコンピュータシステム1100)によって行われるように記載されてもよい。これらはあくまでも例示の目的で行われるものであり、フローチャート700、800、900は、特定の装置によって行われることに制限されない。
【0064】
フローチャート700はステップ704で始まり、細胞(例えば、CD34+細胞を含むHSC)を集める/準備するオプションとしてのステップ708へ進む。一例として、ステップ708は、アフェレーシスプロセス(例えば、白血球アフェレーシスプロセス)を含んでよい。一実施形態では、アフェレーシスプロセスが、ステップ708の一部として実行される。アフェレーシスプロセスにおいて、細胞を集めることが可能な装置としては、テルモBCT社(コロラド州、レイクウッド)製のSPECTRA OPTIA(登録商標)アフェレーシス・システム、COBE(登録商標)スペクトラ・アフェレーシス・システム、TRIMA ACCEL(登録商標)自動血液収集システムが挙げられる。
【0065】
他の実施形態では、任意のステップ708は、細胞を解凍するか、又は他の方法で、(例えば、臍帯血から)細胞を調製することを含んでもよい。いくつかの実施形態において、臍帯血細胞の調製は、CD34+細胞を選択する選択プロセスを通して臍帯血細胞を処理することを含んでもよい。このプロセスは、正の選択プロセス又は負の選択プロセスのいずれかであってよい。このプロセスは、精製カラム、磁気カラム、機能性磁気ビーズ、試薬、又は他の細胞からCD34+細胞を分離する他の材料の使用を伴ってもよい。一例として、選択プロセスは、抗原で機能化された磁気ビーズ、及び分離を完了するために磁気カラムを利用するCLINIMACS PRODIGY(登録商標)システム(Miltenyi Biotec、ベルギッシュグラートバッハ、ドイツ)等の装置の使用を伴ってもよい。
【0066】
他の実施形態では、最初に収集されたときに細胞と共に含まれ得る他の細胞を激減させるためにアフェレーシス装置が使用される。例えば、該細胞は、臍帯血、骨髄、又は末梢血から供給されてもよい。最初の収集後且つバイオリアクターに導入する前に、所定体積のターゲット細胞を処理して、その体積から赤血球、特定の白血球、顆粒球、及び/又は他の細胞を激減させることができる。これらは単なる例示であり、本発明の実施形態においては、分離を実行するために他の材料又は他の装置を使用してもよい。
【0067】
フロー700は、ステップ708からステップ712へ進む。ステップ712では、細胞が細胞増殖システム(特に、細胞増殖システムのバイオリアクター)に投入される。上述のように、いくつかの実施形態では、フロー700は、ステップ712から始まってもよい。実施形態において、バイオリアクターは、バイオリアクター100(図1参照)のような中空糸型バイオリアクターである。これらの実施形態では、ステップ712では、細胞を1又は複数の中空糸に個別に流してもよい。ステップ712では、プロセッサ、ポンプ、バルブ、流体路等を用いて、細胞をバイオリアクターへ投入してもよい。一実施形態において、ステップ712は、バルブ(例えば、バルブ564、514、664、614)を開き、ポンプ(例えば、ポンプ554、654)を動作させてもよい。
【0068】
ステップ712の後、フローチャート700は、ステップ716へ進む。ステップ716では、細胞は、1又は複数の成長条件に曝露される。理解されるように、特定の細胞型は、増殖のための特定の成長条件が必要となる。成長条件としては、例えば、所定のタンパク質への曝露が挙げられる。この細胞型の例としては、CD34+細胞がある。ステップ716では、細胞の増殖・成長を促進するために、細胞を、必要な成長因子、タンパク質、試薬、栄養素等にさらす。
【0069】
ステップ716は、ステップ716の一部として行われる或いはステップ716の前に行われる複数のステップを含んでよい。例えば、いくつかの実施形態では、ステップ720は、ターゲット細胞株の成長を促進する材料を生成し得る共培養細胞を成長させるために行われる。一実施形態では、ステップ720は、ステップ716の前、又はさらにはステップ708の前に、実行される。1つの具体的な例では、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)をバイオリアクターで増殖させることができる。これらの実施形態では、ステップ720は、ステップ716の間に共培養細胞がバイオリアクター内に存在することをもたらすいくつかのステップ(例えば、骨髄、末梢血、臍帯細胞、脂肪組織、及び/又は奇胎組織からのhMSCの収集)を含む。理解され得るように、これらのステップはステップ712の前に実行されてもよい。
【0070】
共培養細胞を増殖させることに関して、共培養細胞を増殖させるためにバイオリアクターを調整するためのいくつかのステップを実施することができる。実施形態では、該ステップは、バイオリアクターをプライミングすること、(例えば、共培養細胞が接着性細胞である場合)共培養細胞の付着を促進する材料でバイオリアクターをコーティングすること、共培養細胞をバイオリアクターに導入する前に材料を除去するために洗浄すること、共培養細胞を付着させること、そして、共培養細胞を増殖させること、を含むことができる。
【0071】
他の実施形態では、ステップ716は、成長因子をバイオリアクターに追加するステップ724を含むことができる。理解され得るように、いくつかの実施形態において、細胞増殖を促進するために、1つ以上の成長因子(例えばサイトカイン)が添加される。一例として、CD34+細胞を成長する際の成長因子は、組換えヒトFlt3リガンド(rhFlt‐3L)、組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)、組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、組換えヒト(rh)グリア由来神経栄養因子、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1又は複数のものを含む。これは一例にすぎず、他の実施形態では、ステップ724の一部として、異なる成長因子、成長因子の組み合わせ、又は他のタンパク質を使用することができる。
【0072】
一実施形態では、ステップ712で、成長因子の少なくとも一部が細胞と共に導入される。例えば、バイオリアクターに導入される際、細胞が入っている培地は、組換えヒトFlt3リガンド(rhFlt‐3L)、組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)、組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、組換えヒト(rh)グリア由来神経栄養因子、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1又は複数のものを含む成長因子の組み合わせで調整することができる。これらの実施形態では、ステップ716及び任意選択のステップ724は、バイオリアクターにすでに添加されている成長因子を細胞で補足することを含んでもよい。
【0073】
ステップ716の後、フローはステップ728へ進み、そこで細胞が成長、すなわち増殖される。ステップ728はいくつかのサブステップを含むことができる。例えば、サブステップ732において、細胞は、他の成長因子、タンパク質、生物活性分子等に曝される。この曝露によって細胞が増殖し続けることが可能になる。
【0074】
実施形態では、ステップ728は、数時間又は数日又は数週間の期間にわたって行われる。この期間中、種々のサブステップ(例えば732、736、740)が、この期間中の様々な時点で実行されてもよい。例えば、この期間中、成長因子のような追加の物質をバイオリアクターに灌流するか直接注入して、補給を行い、成長因子への曝露を続けて、増殖を促進することができる。
【0075】
ステップ728は、細胞フィーディングステップ736を含んでもよい。ステップ736は、グルコース、リン酸塩、塩等を含む様々な栄養素を加えることを含むことができる。ステップ736は、実施形態において、栄養素の濃度を感知すること、及び相対的に低い濃度に応答して、バイオリアクターに栄養素を添加することを含むことができる。ステップ736は、細胞に栄養補給するための栄養素を添加するためのプロセッサ、ポンプ、バルブ、流体導管等の使用を含むことができる。或いは、グルコース等の栄養素の添加は、所定のスケジュールに基づいて行われてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、ステップ728は、EC空間内で培地を循環させることを含むことができる。培地はCD34+細胞の増殖に必要な栄養素を含んでもよい。実施形態において、EC空間を介してのフィーディングは、培地がIC空間内を循環している場合に細胞が感じる可能性がある力の量を減らすことができる。EC空間における培地の循環によって、中空糸を介した栄養素の拡散を通じて行われるHSC(CD34+細胞を含む)の増殖において、十分な栄養分(例えばグルコース)を提供することができる。他の実施形態では、ステップ728は、より直接的なフィーディングを行うために、栄養分(例えばグルコース)と共にIC空間内で培地を循環させることを含んでもよい。
【0077】
ステップ740は、バイオリアクターの成長環境を制御するステップを含んでよい。理解されるように、栄養素に加えて、細胞成長を最適化するための環境としては、複数の異なるパラメータがある。例えば、温度、pH、酸素濃度、二酸化炭素濃度、排出物濃度、代謝物濃度等が、ステップ740の一部として、モニター・制御される。一実施形態では、細胞増殖が行われている毛細管内側空間でのpH、酸素濃度、二酸化炭素濃度、排出物濃度、代謝物濃度等の制御において、バイオリアクターの毛細管外側空間(EC)側を流れる流体の流量が利用される。
【0078】
フローチャート700は、ステップ740から、バイオリアクターから細胞を取り出すステップ744へ進む。ステップ744は、複数のサブステップを含んでよい。例えば、収穫プロセス748はそれ自身で複数のステップを含むが、ステップ744の一部として行うことができる。実施形態において、ステップ744は、バイオリアクターの毛細管内側空間(IC)側及び毛細管外側空間(EC)側の循環レートを変更するステップを含んでよい。他の実施形態において、ステップ744は、種々の物質を循環させ、中空糸の内側表面に付着した細胞を確実に剥離してバイオリアクターから取り出すステップを有してよい。一例として、プロテアーゼを付加することで、細胞が中空糸に結合することを助ける糖タンパク質のようなタンパク質が分解される。フローチャート700はステップ752で終了する。
【0079】
一実施形態では、収穫プロセス748の一部として、バイオリアクター内(例えば、毛細管内側空間)の流体を比較的高い流量で循環させる。流体の循環は、ステップ728で増殖した細胞の懸濁を促進することができる。増殖した細胞が流体中に確実に懸濁されて、バイオリアクターからできる限り多くを回収することができるように、循環は所定の期間にわたって行われる。フロー700はステップ752で終了する。
【0080】
フロー800は、共培養において、CD34+細胞等の細胞を成長させるために実行される。実施形態では、共培養はCD34+細胞の成長を改善することができる。フロー800はステップ804で始まり、第1の細胞(例えば、ヒト間葉系幹細胞(hMSC))をバイオリアクターに導入するステップ808に進む。実施形態では、バイオリアクター(例えば、バイオリアクター100(図1))は、多数の中空糸(例えば、中空糸116(図1))を含む中空糸型バイオリアクターである。
【0081】
実施形態において、中空糸型バイオリアクター中の中空糸は、ステップ808の前に調整される。例えば、hMSCが中空糸の内壁に付着することを可能にするために、中空糸は、例えば糖タンパク質(フィブロネクチン、コラーゲン)でコーティングされる。コーティングプロセスはいくつかのサブステップを含むことができる。
【0082】
ステップ808で導入された細胞は、中空糸型バイオリアクターの毛細管内側空間(例えば、中空糸の内部)に導入されてもよい。ステップ808は、細胞をバイオリアクターに導入するために、プロセッサ(1100、(図11))、ポンプ、バルブ、流体導管等の使用を含むことができる。一実施形態では、ステップ808は、バルブ(例えば、564、514、664、614)を開き、ポンプ(例えば、554、654)を作動させることを含む。
【0083】
他の実施形態では、ステップ808は、細胞を、中空糸型バイオリアクターの毛細管外側空間(例えば、中空糸の外側)に導入する。ステップ808は、細胞をバイオリアクターに導入するために、プロセッサ(1100、(図11))、ポンプ、バルブ、流体導管等の使用を含むことができる。一実施形態では、ステップ808は、バルブ(例えば、570、576、670、676)を開き、ポンプ(例えば、578、678)を作動させることを含む。
【0084】
フローはステップ808からステップ812に進み、そこで第1の細胞が第1の成長条件にさらされる。第1の成長条件は、ステップ808で導入された第1の細胞を成長させるために最適化される。例えば、ステップ812は、第1の細胞を成長させるための栄養素を含む第1の成長培地で第1の細胞をフィーディングすることを含む(任意ステップ816)。成長培地は、グルコース、リン酸塩、塩等を含む種々の栄養素のうちの1つ以上を含むことができる。
【0085】
所定期間(この期間は、バイオリアクター内で成長した第1の細胞の数に応じて決定される)の後、フロー800は820に進み、そこで第2の細胞(例えば、HSC、造血前駆細胞(CD34+)等)がバイオリアクターに導入される。実施形態では、第2の細胞は、第1の細胞と同じように毛細管内側空間に導入される。他の実施形態では、上記のように、第1の細胞は毛細管外側空間におかれ、一方、第2の細胞は毛細血管内側空間に導入されてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、第2の細胞を導入する前に、バイオリアクターから前の流体を除去するために洗浄手順が実施される。理解され得るように、バイオリアクター内の流体は、第1の細胞を増殖させるために調整された栄養素を含む。実施形態では、ステップ820の前に、又はステップ820の一部として、この流体をバイオリアクターから洗い流すこと、及び第2の細胞をバイオリアクターに導入することが行われる。
【0087】
ステップ820は、第2の細胞をバイオリアクターに導入するために、プロセッサ(1100、(図11))、ポンプ、バルブ、流体導管等の使用を含むことができる。一実施形態では、ステップ820は、バルブ(例えば、564、514、664、614)を開き、ポンプ(例えば、554、654)を作動させることを含む。
【0088】
フローはステップ820からステップ824へ進み、そこで第2の細胞が第2の成長条件にさらされる。第2の成長条件は、ステップ820で導入された第2の細胞を増殖させるために最適化される。例えば、ステップ820は、第2の細胞を増殖させるための栄養素を含む第2の成長培地で第2の細胞をフィーディングすること(任意ステップ828)を含む。第2の培地は、グルコース、リン酸塩、塩等を含む種々の栄養素のうちの1つ以上を含むことができる。
【0089】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップ820は、第2の細胞(例えばCD34+細胞)の成長を促進する成長因子を添加する任意選択のステップ832を含む。実施形態では、成長因子(例えばサイトカイン)を添加して細胞の増殖を促進することができる。一例として、CD34+細胞を増殖させる場合、成長因子は、組換えヒトFlt3リガンド(rhFlt‐3L)、組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)、組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、組換えヒト(rh)グリア由来神経栄養因子、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。これは一例にすぎず、他の実施形態では、異なる成長因子、成長因子の組み合わせ、又は他のタンパク質が使用される。実施形態では、成長因子は、中空糸型バイオリアクターの毛細管内側空間に添加されてもよい。
【0090】
実施形態では、ステップ820で、成長因子の少なくとも一部は、細胞と共に導入される。例えば、バイオリアクターに導入される際、細胞が入っている培地を、組換えヒトFlt3リガンド(rhFlt‐3L)、組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)、組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、組換えヒト(rh)グリア由来神経栄養因子、及びそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含む成長因子の組み合わせで調整することができる。これらの実施形態では、ステップ820及び任意選択のステップ832は、バイオリアクターに細胞と共にすでに添加された成長因子を補給することを含む。
【0091】
フローはステップ824からステップ836へ進み、そこで細胞は共培養において増殖される。ステップ836は、いくつかのオプションのサブステップを含むことができる。例えば、細胞は、任意のサブステップ840においてフィーディングされてもよい。それらが共培養で増殖される際、さらなるグルコース又は他の栄養素が細胞に提供されてもよい。サブステップ844では、細胞を増殖するために他の条件が制御される。例えば、細胞の増殖のための環境を制御するために、温度、pH、ガス濃度等がモニターされ、変更される。
【0092】
フロー800はステップ836からステップ848に進み、そこで細胞がバイオリアクターから取り出される。ステップ848は、いくつかのサブステップを含むことができる。例えば、それ自体がいくつかのステップを含む収穫プロセス852は、ステップ848の一部として実行されてもよい。実施形態では、ステップ848は、バイオリアクターの毛細管内側空間(IC)及び毛細管外側空間(EC)側の循環流量の変更を含む。他の実施形態では、ステップ848は、中空糸の内面に付着している細胞がバイオリアクターから剥離され取り出されることを確実にするために種々の材料を循環させることを含む。一例として、細胞の中空糸への結合を補助するための糖タンパク質(フィブロネクチン、コラーゲン)等のタンパク質を分解するために、プロテアーゼが添加される。
【0093】
一実施形態では、収穫プロセス852の一部として、バイオリアクター(例えば、毛細管内側空間)内の流体を比較的高い流量で循環させる。流体の循環は、ステップ836で増殖した細胞の懸濁を促進することができる。増殖した細胞が流体中に確実に懸濁されて、バイオリアクターからできる限り多くを回収することができるように、循環は所定の期間にわたって行われる。フロー800はステップ856で終了する。
【0094】
フロー900はステップ904で始まり、ステップ908に進み、そこで、第1の細胞(例えば、ヒト間葉系幹細胞(hMSC))を静置型の成長チャンバー内で成長させる。ステップ908は、流体がポンプによって動かされないフラスコ又はガス透過型リアクターの使用を含むことができる。詳細には、成長チャンバーは静置の状態のままであり、チャンバーに添加された後は、流体は流れない。
【0095】
フロー900は次にステップ908からステップ912に進み、そこで第2の細胞が静置型の成長チャンバー内において静置状態で成長される。実施形態では、第2の細胞は造血前駆細胞(例えば、CD34+細胞)である。ステップ912の後、静置型の成長チャンバー内で増殖させられた第2の細胞は、該成長チャンバーから取り出され、動的な細胞増殖システム(例えば、CES500、600)内でさらに増殖されてもよい。そこでは、流体を(例えば、自動的に)循環させながら細胞が増殖される。
【0096】
フロー900は次にステップ920に進み、そこで第1の細胞(例えば、hMSC)が、多数の中空糸を含む中空糸型バイオリアクターに導入される。ステップ920で導入された細胞は、中空糸の内部(内腔)に導入されてもよい。
【0097】
実施形態において、中空糸型バイオリアクター中の中空糸は、ステップ920の前に調整される。例えば、hMSCが中空糸の内壁に付着することを可能にするために、中空糸は、例えば糖タンパク質(フィブロネクチン、コラーゲン)でコーティングされる。コーティングプロセスは、いくつかのサブステップを含むことができる。
【0098】
ステップ920は、第1の細胞をバイオリアクターに導入するために、プロセッサ(1100(図11))、ポンプ、バルブ、流体導管等の使用を含むことができる。一実施形態では、ステップ920は、バルブ(例えば、564、514、664、614)を開いて、ポンプ(例えば、554、654)を作動させることを含むことができる。
【0099】
ステップ920は、いくつかのサブステップを含むことができる。実施形態では、中空糸型バイオリアクターに細胞を導入することの一部として、サブステップ922において、バイオリアクターを回転させることができる。例えば、第1の細胞をできるだけ多くの中空糸内部(内腔)に付着させるために、バイオリアクターを特定のパターンで回転させることができる。
【0100】
図10A図10Dは、第1の細胞を中空糸内部に導入し付着させるプロセス中の中空糸1000(例えば、糸116(図1))の断面図である。図10Aでは、第1の細胞1008を有する流体1004は、ポンプを用いて、中空糸膜の毛細管内側空間を循環している(図5及び図6並びに上記の説明を参照)。図10Aに示すように、まず、細胞1008は流体全体に分布している。
【0101】
次にポンプを停止し、その結果、第1の細胞は沈降し、しばらくすると、図10Bに示すように、中空糸の内側1012の一部に付着する。実施形態において、中空糸は、細胞の中空糸壁内壁への付着を促進するために、ある化合物で予めコーティングされていてもよい。例えば、中空糸の内腔は、フィブロネクチンのような糖タンパク質でコーティングされてもよい。
【0102】
第1の細胞1008が沈降付着した後、バイオリアクター(ひいては中空糸1000)を180度回転させる。細胞を中空糸の内面により均一に分布させるために、細胞を投入する際、バイオリアクターを回転させる方法の例は、少なくとも、2017年4月11日に発行された米国特許第9,617,506号明細書(タイトル「EXPANDING CELLS IN A BIOREACTOR」)に記載されている。本明細書はこの参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0103】
いくつかの実施形態では、回転後、ポンプを再び作動させて、残りの付着していない第1の細胞1008を、中空糸膜の毛細管内側空間において循環させる。他の実施形態では、ポンプは再作動されなくてもよい。
【0104】
図10Cに示されるように、第1の細胞1008の第2の部分は、その後、沈降し始め、中空糸1000の内側1012の第2の部分に付着する。しばらくすると、図10Dに示されるように、第1の細胞1008の第2の部分が付着する。このようにして、第1の細胞1008(例えば、hMSC)を、内側表面1012全体(例えば、中空糸内側の頂部と底部の両方)に、より均等に分布させることができる。
【0105】
再び図9を参照すると、フローはステップ920からステップ924に進み、そこで、第1の細胞が第1の成長条件にさらされる。第1の成長条件は、ステップ920で導入された第1の細胞を成長させるために最適化される。例えば、ステップ924は、第1の細胞を成長させるための栄養素を含む第1の成長培地を第1の細胞にフィーディングすることを含むことができる(任意のステップ928)。成長培地は、グルコース、リン酸塩、塩等を含む種々の栄養素のうちの1つ以上を含むことができる。
【0106】
所定期間(この期間は、バイオリアクター内で成長した第1の細胞の数に応じて決定される)の後、フロー900は932に進み、そこで第2の細胞(例えば、HSC、造血前駆細胞(CD34+)等)がバイオリアクターに導入される。実施形態では、第2の細胞は、第1の細胞と同じように毛細管内側空間に導入される。他の実施形態では、上記のように、第1の細胞は毛細管外側空間におかれ、一方、第2の細胞は毛細血管内側空間に導入されてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、第2の細胞を導入する前に、バイオリアクターから前の流体を除去するために洗浄手順が実施される。理解され得るように、バイオリアクター内の流体は、第1の細胞を成長させるために調整された栄養素を含む。実施形態では、ステップ932の前に、又はステップ932の一部として、この流体をバイオリアクターから洗い流すこと、及び第2の細胞をバイオリアクターに導入することが行われる。
【0108】
ステップ932は、第2の細胞をバイオリアクターに導入するために、プロセッサ(1100、(図11))、ポンプ、バルブ、流体導管等の使用を含むことができる。一実施形態では、ステップ932は、バルブ(例えば、564、514、664、614)を開き、ポンプ(例えば、554、654)を作動させることを含む。
【0109】
フローはステップ932からステップ936へ進み、そこで第2の細胞が第2の成長条件にさらされる。第2の成長条件は、ステップ932で導入された第2の細胞を成長させるために最適化される。例えば、ステップ936は、第2の細胞を成長させるための栄養素を含む第2の成長培地で第2の細胞をフィーディングすること(任意ステップ940)を含む。第2の培地は、グルコース、リン酸塩、塩等を含む種々の栄養素のうちの1つ以上を含むことができる。
【0110】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップ936は、第2の細胞(例えばCD34+細胞)の成長を促進する成長因子を添加するステップ944を含む。実施形態では、成長因子(例えばサイトカイン)を添加して細胞の増殖を促進することができる。一例として、CD34+細胞を増殖させる場合、成長因子は、組換えヒトFlt3リガンド(rhFlt‐3L)、組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)、組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、組換えヒト(rh)グリア由来神経栄養因子、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。これは一例にすぎず、他の実施形態では、異なる成長因子、成長因子の組み合わせ、又は他のタンパク質が使用される。実施形態では、成長因子は、中空糸型バイオリアクターの毛細管内側空間に添加されてもよい。
【0111】
実施形態では、ステップ936で、成長因子の少なくとも一部は、細胞と共に導入される。例えば、バイオリアクターに導入される際、細胞が入っている培地を、組換えヒトFlt3リガンド(rhFlt‐3L)、組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)、組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、組換えヒト(rh)グリア由来神経栄養因子、及びそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含む成長因子の組み合わせで、調整することができる。これらの実施形態では、ステップ936及び任意選択のステップ944は、バイオリアクターに細胞と共にすでに添加された成長因子を補給することを含む。
【0112】
フローはステップ936からステップ948へ進み、そこで細胞は共培養において増殖される。ステップ948は、いくつかのオプションのサブステップを含むことができる。例えば、細胞は、任意のサブステップ952においてフィーディングされてもよい。それらが共培養で増殖される際、さらなるグルコース又は他の栄養素が細胞に提供されてもよい。サブステップ956では、細胞を増殖するために他の条件が制御される。例えば、細胞の増殖のための環境を制御するために、温度、pH、ガス濃度等がモニターされ、変更される。
【0113】
フロー900はステップ948からステップ960に進み、そこで細胞がバイオリアクターから取り出される。ステップ960は、いくつかのサブステップを含むことができる。例えば、それ自体がいくつかのステップを含む収穫プロセス964は、ステップ960の一部として実行されてもよい。実施形態では、ステップ964は、バイオリアクターの毛細管内側空間(IC)及び毛細管外側空間(EC)側の循環流量の変更を含む。他の実施形態では、ステップ964は、中空糸の内面に付着している細胞がバイオリアクターから剥離され取り出されることを確実にするために種々の材料を循環させることを含む。一例として、細胞の中空糸への結合をアシストしている糖タンパク質等のタンパク質を分解するために、プロテアーゼが添加される。
【0114】
一実施形態では、収穫プロセス964の一部として、バイオリアクター(例えば、毛細管内側空間)内の流体を比較的高い流量で循環させる。流体の循環は、ステップ948で増殖した細胞の懸濁を促進することができる。増殖した細胞が流体中に確実に懸濁されて、バイオリアクターからできる限り多くを回収することができるように、循環は所定の期間にわたって行われる。フロー900はステップ968で終了する。
【0115】
本開示の実施形態によれば、図7図9に示されるフロー700、800、900において記述された動作ステップは、あくまで例示の目的であり、変更されてもよく、他のステップと組み合わせてもよく(例えば、ステップ908及び/又はステップ912をフロー700及び/又はフロー800に付加する等)、また他のステップと並行に行われてもよい。実施形態では、本開示の範囲から逸脱しなければ、ステップを減らしてもよいし、ステップを追加してもよい。また、例えば、ステップ(及びサブステップ)は、いくつかの実施形態では、例えば、メモリに記憶された予めプログラムされたタスクを実行するプロセッサ(1100(図11))によって、自動的に行ってもよい。ここでは、そのようなステップは、あくまでも例示の目的で提示されている。
【0116】
フロー700、800、900に対して、種々のステップをある特定の順序で列挙して説明を行ったが、本開示は、そのような順序に制限されない。他の実施形態において、ステップ及びサブステップは、異なる順序で、或いは並行して、或いは部分的には図7図9に示された順序で、或いは図7図9に示されたシーケンスで行われてもよい。また、ステップ又はサブステップは特定の特徴又は特定の構造によって行われるように記載したが、これは本発明を制限することを意図していない。むしろ、それら記載は、あくまでも例示の目的で行われている。他の実施形態において、上記されていない他の構造や特徴を用いて、フロー700、800、900のステップのうちの1又は複数のステップを行ってもよい。さらに、フロー700、800、900は、オプションとしてのステップを含んでもよい。しかしながら、オプションとして示されていない上述のステップは、本発明において必須と考えるべきではなく、ある実施形態では実行され、他の実施形態では実行されない場合もある。
【0117】
図11は、本発明の実施形態が実行されるコンピュータシステム1100の構成要素例を示す。コンピュータシステム1100は、例えば、細胞増殖システムがプロセッサを用いて、(上述のフロー700、800、900に示されたプロセスのように、プロセスの一部として行われるカスタムタスクや予めプログラムされたタスクのような)タスクを実行する実施形態において、使用される。
【0118】
コンピュータシステム1100は、ユーザインターフェース1102、処理システム1104、及び/又は記憶装置1106を有する。ユーザインターフェース1102は、当業者であればわかるように、出力装置1108、及び/又は入力装置1110を有する。出力装置1108は、1又は複数のタッチスクリーンを有してよい。タッチスクリーンは、1又は複数のアプリケーションウィンドウを提供するためのディスプレイ領域を有してよい。タッチスクリーンはまた、例えば、ユーザやオペレータからの物理的な接触を受容可能及び/又は取り込み可能な入力装置1110であってもよい。タッチスクリーンは、当業者であれば理解できるように、処理システム1104による接触位置の推定を可能とする静電容量構造の液晶ディスプレイ(LCD)でもよい。この場合、処理システム1104は、接触位置を、アプリケーションウィンドウの所定位置に表示されるユーザインターフェース(UI)要素に写すことができる。また、タッチスクリーンは、本発明に係る、1又は複数のその他の電子構造を介して接触を受容することもできる。他の出力装置1108としては、プリンター、スピーカ等が挙げられる。その他の入力装置1110としては、当業者であれば理解できるように、キーボード、その他のタッチ式入力装置、マウス、音声入力装置等が挙げられる。
【0119】
本発明の実施形態において、処理システム1104は、処理ユニット1112、及び/又はメモリ1114を有してもよい。処理ユニット1112は、メモリ1114に記憶された命令を実行するために動作可能な汎用プロセッサであってよい。処理ユニット1112は、本発明の実施形態では、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサを含んでよい。さらに、実施形態では、各プロセッサは、個別に命令を読み込んで実行するための1又は複数のコアを有するマルチコアプロセッサでよい。プロセッサは、当業者であれば理解できるように、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、その他の集積回路を含んでよい。
【0120】
本発明の実施形態において、メモリ1114は、データ及び/又はプロセッサ実行可能命令を短期に又は長期に記憶する任意の記憶装置を含んでよい。メモリ1114は、当業者であれば理解できるように、例えば、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリ・メモリ(ROM)、又は電気的消去・プログラム可能型リード・オンリ・メモリ(EEPROM)を含む。他の記憶媒体としては、例えば、当業者であれば理解できるように、CD-ROM、テープ、デジタル多用途ディスク(DVD)、又は、その他の光学記憶装置、テープ、磁気ディスク記憶装置、磁気テープ、その他の磁気記憶装置等がある。
【0121】
記憶装置1106は、任意の長期データ記憶装置又は部品である。本発明の実施形態において、記憶装置1106は、メモリ1114と関連して記載されたシステムのうちの1又は複数のものを含んでよい。記憶装置1106は、常設してもよいし、取り外し可能でもよい。一実施形態において、記憶装置1106は、処理システム1104によって生成された又は与えられたデータを記憶する。
【0122】
実施例
実施形態の態様を実施することができるいくつかの例を以下に提供する。これらの実施例では特定の特徴を説明することがあるが、それらは単に例示及び説明を目的として提供されている。本発明は、以下に提供される実施例に限定されない。
【0123】
実施例1
3人のドナーからの未選択の臍帯血由来(CB)HSC、CD34+細胞の初期増殖は、臍帯血のポジティブ免疫磁気選択によってAllCells(登録商標)(Alameda、CA)から得られる。該細胞は、静止状態(5%CO、37.0℃)において、StemCell2MAX(商標)サプリメント(rhFlt-3L、rhSCF、rhTPO、rhグリア由来神経栄養因子)を1:100の濃度で添加した無血清培地CellGenix(Freiburg、Germany)CellGro(登録商標)GMP SCGMを用いて、骨髄由来hMSCとの共培養において成長され、中空糸細胞増殖システム(例えば、Quantum(登録商標)細胞増殖システム(CES))のための接種材料を成長させる。各Quantum CESバイオリアクターを5mgのヒトフィブロネクチンで一晩コーティングし、HSC導入の5日前に、3.0×10/cmでアンマッチド(unmatched)hMSCを播種する。バイオリアクターには、CellGro(登録商標)GMP SCGM+StemCell2MAXにCB由来CD34+細胞が3.0×10/mLの細胞密度で、総播種量が5.7×10の細胞数となるように播種される。そして、混合ガス(5%CO、20%O、残りN)を用いて、37.0°Cで、6.6日間、共培養増殖される。細胞は、Quantum(登録商標)CESの自動タスクを使用して、バイオリアクターへ播種され、増殖され、収穫される。具体的には、細胞は、バイオリアクターの毛細管内側ループで成長され、hMSC-CB CD34+細胞相互作用を増強するために、システムの毛細管外側ループを通して基礎培地が添加される。代謝産物は、Abbott i-STAT(登録商標)アナライザーで毎日定量される。細胞は、Beckman Coulter Vi-CELL(商標)XR細胞生死数アナライザー(Cell Viability Analyzer)を用いて、5~50μmの直径サイズ範囲で計数される。収穫した細胞は、BDマウス抗ヒトCD34-FITC、BDマウス抗ヒトCD34-PE、BDマウス抗ヒトCD38-APC、MB CD133/1-PE、及びeBioscience Fixable Viability Dye eFluor(登録商標)780で、表面バイオマーカーのために、着色され、BD FACSDivaソフトウェアを備えたBD FACSCanto IIを用いてフローサイトメトリーにより分析される。ZEN proソフトウェアを備えたZeiss Axio Observer A1顕微鏡を用いて、蛍光顕微鏡画像がキャプチャーされる。Stem Cell Technologies Human CFU Methocult(商標)Assayを使用して、収穫したCB由来CD34+細胞の分化を誘導する。
【0124】
【表1】
【0125】
図12は、上記表1に示したデータのいくつかの棒グラフ、すなわち、異なるドナーから収穫した細胞の平均数を示す棒グラフである。図13は、異なるドナーについての代謝プロファイルを示すグラフである。図14は、種々の実行に対する代謝率を示すグラフである。
【0126】
結果は、Quantum CES中空糸膜バイオリアクターが自動CESを用いた共培養におけるCB由来CD34+、CD38-CD133+前駆細胞の増殖をサポートすることができることを示唆している。rhFlt-3L、rhSCF、rhTPO、rhグリア由来神経栄養因子の成長因子サプリメントは、CB由来CD34+系統細胞の共培養をサポートし得る。増殖されたCB由来のCD34+細胞は、適切なサイトカイン及びサプリメント(SCF、GM‐CSF、IL‐3、GSF、EPO)の存在下における系統分化を実証している。下記の表2はフローサイトメトリーの結果の要約を示す。
【0127】
【表2】
【0128】
実施例2
CD34+増殖の培地コスト構造を改善するために、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)との単培養又は共培養にてFBS又はヒトAB血清を補充したIMDM培地を用いた場合における、AllCellsから得られるI‐Mag選択されたヒトHSC CB CD34+細胞(凍結CB008F‐2)の培養が研究される。細胞培養装置には、Wilson G-Rex 10ガス透過膜装置(Gas Permeable Membrane device)及び従来の組織培養ポリスチレンフラスコが含まれる。第1の実験の結果の後、細胞増殖及びバイオマーカーの発現を改善するため、修飾されたIMDM(BSA、rhインスリン、トランスフェリン)とFBS又はヒト血清AB型を含むStemSpan SPEM II培地に切り替えると同時に細胞播種密度を上げることが決定される。
【0129】
実験1
T25 TCPSフラスコにおいて、Gibco alpha-MEM(カタログ番号32561-037)完全培地(CM224)に1,000細胞/cm密度でhMSC-P2T1を播種し、37°C(5%CO)でインキュベートし、解凍したCB CD34+細胞播種前の第6日目に80%コンフルエントになるまで増殖させる。比較として、ウィルソンG-Rexガス透過細胞培養装置にはhMSCは播種されていない。CB CD34+細胞を2.0×10/mLの濃度で播種し、7mLのGibco IMDM(カタログ番号31980‐030)、20%HyClone FBS(カタログ番号SH30070.03)又は18%Akron HS‐AB(カタログ番号AK9340-0100)、及びGibcoペニシリン/ストレプトマイシン/ネオマイシン抗生物質(カタログ番号15640-055)で、4日間、成長させる。CD34+細胞播種密度は、細胞濃度を3.0×10/mL以下に維持するための推奨に基づいている。培養容器を秤量して培養容積を決定し、0日目、2日目及び4日目に、較正されたBeckman Coulter Vi-Cell XR Cell Viability Analyzerで、細胞数を測定する。
【0130】
実験2
6つのT25 TCPSフラスコにおいて、Gibco alpha-MEM完全培地(CM231)中に8.48×10/cmでhMSC-P2T1が播種され、37°C(5%CO)でインキュベートされ、解凍した(37°C)CB CD34+細胞(AllCells CB-CD34+、カタログ番号CB008F-2、ID No.CBP140129C)播種前の第3日目に80%コンフルエントになるまで増殖させる。CB CD34+細胞(2.5mL)を22.5mLのStemSpan SFEM II培地に再懸濁し、500×gで7分間遠心分離し、10mLのそれぞれの完全培地に再懸濁し、そして較正されたBeckman Coulter Vi‐Cell NR Cell Viability Analyzerで計数する。各フラスコ培地を、6mLの滅菌濾過した(Corning 0.22μmPES)StemSpan SFEM II完全培地20%FBS(HyClone カタログ番号SH30070.03)又は20%HS-AB(Innovative Researchカタログ番号IPLA-SERAB‐OTC‐16138)、Gibcoペニシリン/ストレプトマイシン/ネオマイシン抗生物質(カタログ番号15640‐055)、と交換する。20%FBS又は20%HS‐ABのいずれかを補充したStemSpan SFEM II培地で、フラスコ当たり6mLになるように、合計4つのT25共培養フラスコに、3.00×10/mL又は3.00×10/mLのCB CD34+細胞を播種し、37℃(5%CO)で4日間インキュベートした。各フラスコからの懸濁細胞を2日目に取り出し、15mLの無菌遠心管に移し、500×gで7分間遠心し、6mLのそれぞれのStemSpan SFEM II完全培地に再懸濁し、そして、インキュベーションのために、T25共培養フラスコに戻す。4日目に、懸濁細胞の画像を位相差顕微鏡(QCapture Pro 6.0ソフトウェアを備えたOlympus CKX41)によってキャプチャーし、フラスコの容積を決定するためにフラスコを秤量し、そして細胞を前述のように計数する。高細胞播種密度のアリコート(1.25×10細胞)を、修正版のFlow Cytometry Prep Protocolを用いて、フローサイトメトリー染色(BD Pharmingen FITCマウス抗ヒトCD34:カタログ番号555821、BD Pharmingen FITCマウスIgG1κアイソタイプコントロール:カタログ番号555748、BD Pharmingen APCマウス抗ヒトCD38:カタログ番号555462、BD PharmingenマウスIgG1κアイソタイプコントロール:カタログ番号555751、BD Pharmingen PEマウス抗ヒトCD34:カタログ番号555822、BD Pharmingen PEマウスIgG1κアイソタイプコントロール:カタログ番号555749、Miltenyi Biotec CD133/1-PE:カタログ番号180-080-801)のために調製する。BD FACSDiva(登録商標)v6.1.3ソフトウェアを備えたBD FACSCanto(登録商標)IIフローサイトメーターを使用して、固定剤なしで、フローデータを取得し分析する。
【0131】
実験1は、20%FBS又は18%HSを補充したIMDM基礎培地を使用して、総体積7mL中、2.00×10/mLの低播種密度で、臍帯血由来CD34+細胞の単培養及び共培養を評価し得る。T25組織培養ポリスチレン(TCPS)フラスコ及びガス透過性G‐Rex‐10容器を、一次静置培養環境として使用する。
【0132】
図15は、FBSを用いた実験1から得られた細胞数を示すグラフである。図16は、ヒト血清を用いた実験1から得られた細胞数を示すグラフである。
【0133】
FBS及びHS添加IMDMの両方とも、2日目までに細胞数の増加を示す。しかしながら、4日目までに細胞濃度の減少もある。また、両方の補給培地において、FBSでは、87%から76.4%に、HSでは88.5%から76.3%に、細胞膜の完全性(cell membrane integrity)が2日目から4日目に低下している。これは、3日目の培地交換の欠如又は2.00×10/mLの低い細胞播種密度のためだと考えられる。要約すると、20%FBS添加培地の場合、4日目までに、フラスコ共培養で7.5~7.6倍の増加、フラスコ単培養で7.1倍の増加、及びG‐Rex‐10単培養で7.0~7.2倍の増加を生じる。比較すると、18%HS添加培地では、4日目までに、フラスコ共培養で7.3~7.5倍の増加、フラスコ単培養で6.8倍の増加、及びG‐Rex10単培養で6.7~6.9倍の増加を生じる。
【0134】
実験2は、低播種密度と高播種密度の両方を評価することができる。図17は、低播種密度条件と高播種密度条件の両方におけるCD34+細胞を示すグラフを示す。20%FBSを添加した6mLのStemSpan SFEM IIにおける低密度(3.00×10/mL)と高密度(3.00×10/mL)のCB CD34+細胞播種密度において、4日目の浮遊細胞数はそれぞれ、57%及び36%、増加している。一方、20%HS‐AB添加培地は、同じ期間の4日間の培養期間にわたって、懸濁細胞数は減少している。図18は、フローサイトメトリーの結果を示す棒グラフを示す。これらのフローサイトメトリーの結果は、CD34+細胞の大部分が、高細胞播種条件で、FBS及びHS-AB添加培地のいずれでも、CD38+バイオマーカーを発現し得ることを示唆している。CD38バイオマーカーは、初期前駆体CD34+細胞集団の指標となる。より成熟したCD34+細胞は、4日目以降の短期間の培養での増殖中には、徐々にCD38(low/-)になる。CD133+CD34+血液前駆細胞は、自己末梢血幹細胞移植を受けている患者における血小板生着の推定マーカーとなり得る。これらのデータはまた、FBS及びHS-AB補充培地が静置共培養におけるCD133+細胞亜種(それぞれ30%及び47%)を裏付けることを示している。
【0135】
実施例3
以下は、実施形態において使用され得るプロトコルの一例である。このプロトコルは、細胞増殖システム(CES)を使用するときに利用される通常のプロトコルからの可能な修正を示す。
【0136】
CES細胞導入 修正3-循環分配及び回転を伴う導入
【0137】
通常の予め選択されたMSC増殖プロトコルは、下記の太字、下線、及び斜体を組み合わせて示される以下の修正が行われて、実行される。バイオリアクターを180度回転させ、細胞を、5分間、中空糸膜(HFM)上に沈着させる。次にバイオリアクターを回転させて「ホーム」水平位置に戻し、増殖プロトコルを進める。修正の理由は、細胞をバイオリアクターの中空糸の全表面にわたって分布させることである(図10A図10D)。
【0138】
0日目:回転による指示細胞の付着
【0139】
目的:接着性細胞をバイオリアクターに付着させ、同時にEC循環ループでの流れを起こす。ICループのポンプ流量はゼロに設定される。
【0140】
分配及び回転による細胞のCESへの導入の前に、以下の既存ステップ又は修正ステップを用いるカスタムタスク(Custom Task)をインストールする(タッチスクリーンディスプレイ又はGUIを介してConfig>Task)。これらの溶液及び対応する体積は、カスタムタスクのデフォルト設定又は修正された設定に基づいている。
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
2日目又は必要に応じて、通常の細胞フィーディングタスクに戻り、Feed Cells Taskを用いて、前培養hMSC増殖プロトコルを続ける。
【0144】
5日目:回転させながら、CB CD34+懸濁細胞を導入。
【0145】
CB CD34+細胞のためのIC/EC培地交換及び調整。
【0146】
SCGM基礎培地をIC培地ラインに取り付け。IC/EC洗浄タスク及び培地調整タスクを実行。
【0147】
SCGM(98mL)及びStemCell2MAX 100Xサプリメント(2mL)のCB CD34+細胞懸濁液が入った細胞投入バッグを、システムの細胞投入ラインに滅菌溶接機で取り付け。
【0148】
【表5】
【0149】
収穫前に細胞の再懸濁
【0150】
循環タスクの目的は、収穫タスクを開始する前に、共培養中にhMSC指示層に付着した細胞を再懸濁することである。
【0151】
【表6】
【0152】
収穫
【0153】
修正を伴うCES収穫タスク
【0154】
【表7】
【0155】
当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の方法及び構造に対して種々の変形及び変更を行えることは理解できよう。従って、本発明は、上記の特定の実施形態又は実施例に限定されないと理解されるべきである。むしろ、本発明は、以下の請求項及びそれらの等価物の範囲内において、変形形態及び変更形態をも含むことが意図されている。
【0156】
本発明の実施形態及び適用例が示され説明されてきたが、本発明は、上記した構成に制限されないと理解されるべきである。当業者に明らかな種々の変形、変更等は、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の構成、動作、また方法及びシステムにおける詳細において行うことが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18