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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】旋削加工方法及び旋削加工用ジグ
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/117 20060101AFI20220307BHJP
   B23B 1/00 20060101ALI20220307BHJP
   B23B 31/20 20060101ALI20220307BHJP
   B23B 5/00 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B23B31/117 610A
B23B1/00 Z
B23B31/20 H
B23B5/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019031108
(22)【出願日】2019-02-24
(65)【公開番号】P2020131401
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2020-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】519064447
【氏名又は名称】株式会社ミズノマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】水野 文政
【審査官】永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-47337(JP,A)
【文献】実開昭60-7910(JP,U)
【文献】特開2001-198712(JP,A)
【文献】特開2002-292508(JP,A)
【文献】中国実用新案第201988972(CN,U)
【文献】特開昭57-205002(JP,A)
【文献】特開2008-6528(JP,A)
【文献】特開昭53-14484(JP,A)
【文献】特開平9-239607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00,5/00,31/00-31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のワークを保持するジグのみをチャックし、前記ワークに対して切削加工を行うための内面仕上用ジグであって、
前記ワークが遊嵌される位置決め部を備える円筒状のジグ箱と、
前記ジグ箱と螺合する回転体状の蓋と、
前記ワークの他方の端面又は表面の切込を確保し前記蓋とワークとの間に介在する円筒状の仲介部材を備え、
前記ジグ箱は、前記ワークの進入を制止し当該ワークの一方の端面が当接する進退基面を備え、
前記蓋は、その中央に前記ワークの外径より大きい直径を持ち表裏を貫通する工具孔を備え、前記工具孔に、前記仲介部材の通過を制止する加圧縁、及び当該加圧縁の内面を始端とし前記仲介部材の側面に接する向心基面を備え、
前記仲介部材は、前記ワークを側方から挟んで装着できるように複数に分割され、
前記ジグ箱に前記蓋を回し入れることにより前記ワークをチャックの回転軸方向に加圧挟持することを特徴とする旋削加工用ジグ。
【請求項2】
前記ジグ箱は、底壁の中央に前記進退基面を周縁内面とし前記ワークの内径と略等しい直径を持つ貫通孔を備えることを特徴とする請求項1に記載の旋削加工用ジグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い精度が要請されるワークの外丸削り、テーパー削り、端面削り、中ぐり加工、又は溝加工などの旋削加工方法及びそれに用いるジグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
隙間を埋め又は緩衝に用いる円筒状の機構部品の加工、特に、所謂ロジックエレメント(以下「ブッシング」という)については、所定のシーリング機能を満たすべく、極めて高い加工精度が要求される他、コストダウンや短納期の要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭57-205002号公報
【文献】特開2008-006528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、NC旋盤によるブッシングの旋削加工は、特に、中ぐり加工など内面の旋削加工の際には、加工しようとするワークの外周部を直接チャッキングした上で行われていた。
しかしながら、NC旋盤によるブッシングの旋削加工に際し、ワークの外周部を直接チャックすると(上記特許文献参照)、内厚の薄いものであれば、確実に円周の変形が生じて真円度が悪化し図面公差を満たすことができなくなる。
しかも、ブッシングの加工においては、径の異なる領域が軸方向に連続するワークを、内面及び外面並びに各領域の軸を同じくして精密に加工する必要が生じるところ、従来、ロットや作業者が相違すると、それらによる精度のバラツキが避けられず、製品の品質が安定しないという問題もあった。
【0005】
そもそも、機構部品の仕上げには、研削加工が行われることが一般的であるが、上記コストダウン及び短納期の要請に応えるには、焼き入れ前の加工のみならず、焼き入れが完了したワークに対する仕上加工においてNC旋盤による旋削加工による仕上げをも考慮に入れることが望ましいという着想を得た。
【0006】
本発明は、上記着想の下、幾年にもわたり試作を繰り返すことによってなされたものであって、チャック時におけるワークの変形や、表面の損傷を回避し、且つ径の異なる領域が軸方向に連続するワークにあっても、内面及び外面並びに各領域の軸を同じくして高精度に加工することができる旋削加工方法及び旋削加工用ジグの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明による旋削加工方法は、円筒状のワークを保持するジグのみを直接チャックし、前記ワークに対して切削加工を行う旋削加工方法であって、内面仕上用ジグにより前記ワークを前記チャックの回転軸方向に加圧挟持して行う内面仕上工程を含むことを特徴とする。
前記内面仕上用ジグは、前記ワークの端面、又は表面の切込を確保し前記チャックの回転軸方向に加圧挟持する構成を採用することができる。
更に、外面仕上用ジグの軸部を前記内面仕上工程を経たワークの中空部に嵌め入れ、当該軸部により当該中空部の内面に対し径方向外側へ均一に加圧保持して行う外面仕上工程を行う旋削加工方法を採用することもできる。
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明による旋削加工用ジグは、上記旋削加工方法に用いる内面仕上用ジグであって、円筒状のジグ箱と、当該ジグ箱と螺合する蓋を備え、前記ジグ箱は、ワークの一方の端面が当接する進退基面とワークの側面に接する軸基面を備え、前記蓋は、ワークの他方の端面を圧する加圧面を備え、前記ジグ箱に蓋を回し入れることにより前記ワークの両端面を確保し加圧挟持することを特徴とする。
【0009】
上記旋削加工用ジグは、円筒状のジグ箱及び当該ジグ箱と螺合する蓋と、前記ワークの他方の端面又は表面の切込を確保し前記ジグ箱及び蓋と加工部との間に介在する円筒状の仲介部材を備え、前記ジグ箱は、前記ワークの一方の端面が当接する進退基面と、前記仲介部材の側面に接する軸基面を備え、前記蓋は、前記仲介部材を前記チャックの回転軸方向に圧する加圧面を備え、前記仲介部材は、前記ワークを側方から挟んで装着できるように複数に分割され、前記ジグ箱に蓋を回し入れることにより前記ワークの一方の端面及び他方の端面又は表面の切込を確保し加圧挟持する構成を採ることができる。
【0010】
また、上記課題を解決するためになされた他の本発明による旋削加工用ジグは、前記外面仕上工程での旋削加工方法に用いる外面仕上用ジグであって、前記内面仕上工程を経たワークの中空部に嵌め入れられる軸部を備えるジグ軸と、前記軸部の先端部に螺入して当該先端部を均一に拡幅するカムネジを備え、前記軸部は、その先端部に、当該先端部を前記カムネジに拡幅される加圧片に分割する割溝を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による旋削加工方法及び旋削加工用ジグによれば、ワークは、NC旋盤のチャックの回転軸とその中心軸が一致するように保持され、前記内面仕上用ジグの孔からバイトを挿入し、途中でチャックから外されることの無い一連の旋削加工により、径の異なる複数の部位について、軸ズレが生じることなく精密な旋削加工による仕上げを短時間で行うことができる。
その際、前記ジグを直接チャッキングし、ワークは、当該ジグ内でその軸方向に加圧保持する手法を採っているため、円周の変形が生じて真円度が悪化するなどの不具合を防止することができる。
【0012】
また、上記の如く内面の精密加工が行われたワークは、その内面を保持するジグを介して、NC旋盤のチャックの回転軸及び先に行った内面仕上加工された内面の中心軸を一致させて当該チャックに保持され、チャックから外されることの無い一連の作業をもって外面仕上加工を行うことができるため、内面仕上から外面仕上に至るまで、径の異なる複数の内外部位について、軸ズレが生じることなく精密な旋削加工による仕上げを行うことができる。
また、その際、ジグを直接チャッキングし、且つワークは、その内面が当該ジグの遠心方向へ均一に加圧することにより保持されているため、円周の変形が生じて真円度が悪化するなどの不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による旋削加工方法で用いる(内面仕上げ用)旋削加工用ジグの装着例を示す縦断面図である。
図2】本発明による旋削加工方法で用いる(内面仕上げ用)旋削加工用ジグの装着例を示す側面図である。
図3】本発明による旋削加工方法で用いる(外面仕上げ用)旋削加工用ジグの装着例を示す縦断面図である。
図4】本発明による旋削加工方法で用いる(外面仕上げ用)旋削加工用ジグの装着例を示す縦断面図である。
図5】本発明による旋削加工方法で用いる(内面仕上げ用)旋削加工用ジグのジグ箱の一例を示す(A):側面図及び(B):縦断面図である。
図6】本発明による旋削加工方法で用いる(内面仕上げ用)旋削加工用ジグの蓋の一例を示す(A):側面図及び(B):縦断面図である。
図7】本発明による旋削加工方法で用いる(内面仕上げ用)旋削加工用ジグの蓋の一例を示す(A):平面図及び(B):底面図である。
図8】本発明による旋削加工方法で用いる(内面仕上げ用)旋削加工用ジグの仲介部材の一例を示す(A):平面図、(B):左側面図、(C):正面図、(D):右側面図及び(E):背面図である。
図9】本発明による旋削加工方法で用いる(外面仕上げ用)旋削加工用ジグのジグ軸の一例を示す(A):側面図及び(B):縦断面図である。
図10】本発明による旋削加工方法で用いる(外面仕上げ用)旋削加工用ジグのカムネジの一例を示す(A):側面図及び(B):平面図である。
図11】本発明による旋削加工方法及び旋削加工用ジグを用いるワークの一例を示す(A):側面図、(B):断面図、(C):正面図、(D):A-A矢視断面図、(E):B-B矢視断面図及び(F):背面図である。
図12】本発明による旋削加工方法で用いる(内面仕上げ用)旋削加工用ジグの(A):ジグ箱及び(B):仲介部材の一例を示す斜視図である。
図13】本発明による旋削加工方法で用いる(内面仕上げ用)旋削加工用ジグの蓋の一例を示す斜視図である。
図14】本発明による旋削加工方法で用いる(外面仕上げ用)旋削加工用ジグの(A):ジグ軸及び(B):カムネジの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による旋盤による切削加工方法及び切削加工用ジグの実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
ここでは、焼き入れが完了したロジック弁ブッシング(以下「ワークW」という)を本発明による加工ジグに取り付け、ボラゾンチップ(材質:窒化ホウ素焼結材)0.4Rを用いてNC旋盤で加工する例を挙げる。
【0015】
図に示す例は、円筒状のワークWを保持するジグのみをチャックし、前記ワークWに対して切削加工を行う旋削加工方法であって、内面仕上用ジグにより前記ワークWを前記チャックの回転軸方向に加圧挟持して行う内面仕上工程と、外面仕上用ジグの軸部を前記内面仕上工程を経たワークWの中空部に嵌め入れ、当該軸部により当該中空部の内面に対し径方向外側へ均一に加圧保持して行う外面仕上工程を含む旋削加工方法である。
【0016】
図11は、本発明による旋削加工方法が施されるワークWの一例を示したものである。
この例は、円筒状を呈し、表面の両端部にそれぞれシーリング領域Sを備え、それらの間に外径逃げ部Eを備える。
各シーリング領域Sには、Oリングを装着するための溝部Dが適宜形成され、ワークWの内面は、同じ中心軸からの内径が相違する三種類の領域を備える。
側壁は、外径逃げ部Eの領域に、ワークW外側方と中空部を連通させる透孔Hが当該ワークWの軸を中心として90度間隔で穿設されている。
【0017】
上記ワークWの仕上加工の際に用いる加工ジグは、前記内面仕上用ジグと、前記外面仕上用ジグの二つである。
【0018】
前記内面仕上用ジグは、円筒状のジグ箱1及び当該ジグ箱1と螺合する蓋2と、前記ワークWの前記蓋2に直接加圧される端面又は表面に刻まれた切込(前記溝部D)の内側面(以下「受圧面」という)を確保し前記ジグ箱1及び蓋2とワークWとの間に介在する円筒状の仲介部材3からなる(図1参照)。
【0019】
前記ジグ箱1は、NC旋盤のチャックに挟まれる有底円筒状(回転体状)の部材であって、その底壁の中央にワークWの内径と略等しい直径を持つ貫通孔を備え、当該貫通孔の周縁内面を、前記ワークWの進入を制止する進退基面1aとして備える(図2参照)。
当該ジグ箱1は、その内空部に、前記進退基面1aを終端とし前記ワークWが遊嵌される位置決め部1bと、前記蓋2のネジ部2cと螺合する蓋対偶部1cと、当該蓋2の進退軌道を定めるガイド部1dを連続して備え、各部は、同軸の均一な円形断面の空間を連続して形成し、各部の内径は、前記進退基面1aから離れた領域ほど大きくされている。
【0020】
前記蓋2は、頭部2aから先端部にかけて径が段階的に小さくされた回転体状の部材であって、当該ジグ箱1に当該蓋2を装着し加締めする際の手掛かりとなる頭部2aと、前記ジグ箱1のガイド部1dに嵌る封鎖部2bと、前記蓋対偶部1cと螺合するネジ部2cを備える。
当該蓋2は、その中央にワークWの外径より大きい直径を持ち表裏を貫通する工具孔を備え、前記頭部2aにおける当該工具孔の内縁に前記仲介部材3の通過を制止する加圧縁を備える。
当該蓋2は、前記加圧縁の内面を加圧面2dとして備え、その内空部に、当該加圧面2dを始端とし前記仲介部材3の側面に接する向心基面2eを備えたソケット部2fを、前記封鎖部2bからネジ部2cに亘って連続して備える(図6及び図7参照)。
この例の前記頭部2aの側面は、ローレット加工が施され、フック式スパナの爪が掛かる穴2gが穿設されている。
【0021】
前記仲介部材3は、前記ソケット部2fにちょうど収まる円筒状を呈し、その内空部に、前記ワークWのシーリング領域Sが収まる被覆部3aと、当該被覆部3aの一端部の内縁から中心へ向けて同心円状に迫出した爪部3bを備える形態を、その中心軸に沿って二等分した形態を持つ一対の部材である(図8参照)。
この例では、前記シーリング領域Sのフランジ部が嵌る保持部3cを前記爪部3bに隣接して備える。
前記爪部3bは、前記ワークWのシーリング領域Sに穿設された溝部Dに嵌る形態を備え、例えば、その幅及び迫出し長は、前記溝部Dの幅及び深さに略等しく設定されている。
【0022】
前記外面仕上用ジグは、前記内面仕上工程を経たワークWの中空部に嵌め入れられる軸部4aを備えるジグ軸4と、前記軸部4aの先端部に螺入して当該先端部を全周に亘って均一に拡幅するカムネジ5とで構成される。
【0023】
前記カムネジ5は、同じ中心軸を持つ回転体状のテーパー部5aとネジ部5bを連続して備え、前記テーパー部5aの側面に、当該カムネジ5の螺合方向へ向けて小径となるテーパー面を設けたものである。
前記テーパー部5aの径は、最も小径の先端部は、前記加圧部4gの内径の最小値以下とし、最も大径の終端部は、前記加圧部4gの内径よりワークWへの加圧に十分な量だけ大きく設定する。
この例では、前記テーパー部5aの端面の中央に、六角レンチが嵌る六角穴5cを備える(図10参照)。
【0024】
前記ジグ軸4は、外径が段階的に小さくされた回転体状の部材であって、NC旋盤のチャックに装着される挟持部4cと、装着したワークWの進退を規制する基部4bと、前記ワークWの内面を支持する軸部4aを備える。当該基部4bは、前記軸部4a側の面を前記ワークWの進入を制止する進退基面4dとして備える(図9参照)。
【0025】
当該ジグ軸4は、その中央に(その中心軸に沿って)前記カムネジ5が挿入され進退する調整孔4eを備える。
当該ジグ軸4は、その調整孔4eに、前記挟持部4cの側から、前記カムネジ5と螺合するネジ対偶部4fと、前記カムネジ5のテーパー部5aに押し広げられる加圧部4gを備え、前記ネジ対偶部4fと加圧部4gとの境界部に双方の隣接部を一定長薄肉とする拡幅部4hを備えている。
各部4e,4h,4gは、内径が異なる均一な円形状断面の空間が連続して形成され、前記拡幅部4hから加圧部4gの全域にかけて、それらの周壁を分割する割溝4iを複数備える。
前記ワークWの内壁に均一に加圧する面では、ワークWの内面の軸を中心として前記割溝4iを等角度間隔で複数穿設することが望ましい。
【実施例
【0026】
以下、本発明による旋盤による切削加工方法の実施例を説明する。
<内面仕上>
先ず、前記内面仕上用ジグのジグ箱1をNC旋盤のチャックに装着する。
次に、前記ワークWの端部に前記仲介部材3を装着する。当該仲介部材3装着に際しては、前記ワークWのOリング装着用溝部Dに、前記仲介部材3の爪部3bを挿入し、一対の仲介部材3で当該溝部Dを備えたシーリング領域Sの全域を覆うようにする。
尚、前記溝部Dを有しないワークWにあっては、前記仲介部材3の爪部3bを当該ワークWの端面(受圧面)や、フランジ部などに引っ掛けて装着し使用することもできる(図1及び図2参照)。
【0027】
続いて、前記ワークWの前記仲介部材3を装着した側を、前記蓋2の内空部に装填する。その際、ワークWは、前記仲介部材3と共に、前記蓋2のソケット部2fにちょうど収まることとなる(図1参照)。
そして、前記仲介部材3及び蓋2を装着したワークWを、当該ワークWが露出した側を前にして前記ジグ箱1の位置決め部1bへ挿入し、蓋2を回し、前記ワークWの当接面(ジグ箱1への進入方向前方の端面)が前記ジグ箱1の進退基面1aに達することを確認しながら、当該蓋2のネジ部2cと前記ジグ箱1の蓋対偶部1cとを螺合する。
蓋2を手で締まるところまでネジ込んだ後、フック式スパナ仕様のトルクレンチで蓋2のローレット面に備える穴2gに引っ掛けて一定の強さで締める。
【0028】
以上の作業をもって、ワークWは、NC旋盤のチャックの回転軸とその中心軸を一致させて当該チャックに保持され、前記内面仕上用ジグの孔(蓋2の工具孔)からバイトを挿入し、途中でチャックから外されることの無い一連の作業を行うことができる。
上記作業によれば、径の異なる複数の部位について、軸ズレが生じることなく精密な旋削加工による仕上げを行うことができる。
また、その際、前記ジグ箱1を直接チャッキングし、且つワークWは、当該ジグ箱1内でその軸方向に加圧保持しているため、円周の変形が生じて真円度が悪化するなどの不具合を防止することができる。
【0029】
<外面仕上>
先ず、前記外面仕上用ジグのジグ軸4をNC旋盤のチャックに装着する。
次に、前記ジグ軸4にワークWを装着し、当該ワークWを前記進退基面4dに押し当てながら、ワークWが動かないことを確認できるまで前記カムネジ5を締める。
この様に、前記ジグ軸4の調整孔4eにカムネジ5を回し入れることにより、前記ジグ軸4の加圧部4gが遠心方向へ均一に拡幅し、前記ワークWの内面を均一に加圧保持することができる(図3及び図4参照)。
【0030】
以上の作業をもって、ワークWは、NC旋盤のチャックの回転軸及び先に行った内面仕上加工された内面とその中心軸を一致させて当該チャックに保持され、チャックから外されることの無い一連の作業をもって外面仕上加工を行うことができる。
上記作業によれば、内面仕上から外面仕上に至るまで、径の異なる複数の内外部位について、軸ズレが生じることなく精密な旋削加工による仕上げを行うことができる。
また、その際、ジグ軸4の挟持部4cを直接チャッキングし、且つワークWは、当該ワークWの中空部に装填された軸部4aによって、当該ワークWの内壁を遠心方向へ均一に加圧することにより保持されているため、当該ワークWの円周に変形が生じて真円度が悪化するなどの不具合を防止することができる。
【符号の説明】
【0031】
D 溝部,E 外径逃げ部,H 透孔,S シーリング領域,W ワーク,
1 ジグ箱,
1a 進退基面,1b 位置決め部,1c 蓋対偶部、1d ガイド部,
2 蓋,
2a 頭部,2b 封鎖部,2c ネジ部,
2d 加圧面,2e 向心基面,2f ソケット部,2g 穴,
3 仲介部材,
3a 被覆部,3b 爪部,3c 保持部,
4 ジグ軸,
4a 軸部,4b 基部,4c 挟持部,4d 進退基面,4e 調整孔,
4f ネジ対偶部,4g 加圧部,4h 拡幅部,4i 割溝,
5 カムネジ,5a テーパー部,5b ネジ部,5c 六角穴,
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14