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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】重金属吸着シート
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/02 20060101AFI20220307BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20220307BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220307BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220307BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20220307BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B01J20/02 A
B01J20/04 A
B01J20/30
B01J20/28 Z
B09C1/08 ZAB
B32B5/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019224836
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2020097029
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2018234824
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(73)【特許権者】
【識別番号】304047956
【氏名又は名称】株式会社イーエス総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000112509
【氏名又は名称】フェリック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】大渕 智道
(72)【発明者】
【氏名】塚本 祐司
(72)【発明者】
【氏名】奥野 稔
(72)【発明者】
【氏名】木川 えり子
(72)【発明者】
【氏名】落合 健一
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-032038(JP,A)
【文献】特開2004-160905(JP,A)
【文献】特開2014-166621(JP,A)
【文献】特開2016-163873(JP,A)
【文献】特開2016-221976(JP,A)
【文献】特開2018-192449(JP,A)
【文献】特開平02-191758(JP,A)
【文献】特開平07-314413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28、20/30-20/34
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布で形成された主層と、
前記主層内に配置された、鉄系、カルシウム系またはマグネシウム系のいずれかである重金属吸着粒子と、
前記主層内に配置され、前記重金属吸着粒子を前記主層内に保持する保持樹脂と、
前記主層の一方の面を被覆する透水層と、
を備え、
前記重金属吸着粒子を1平方メートルあたり2.6キログラム以上含有し、
前記重金属吸着粒子の分布ばらつきが±15%以下であり、
前記保持樹脂の使用量が、前記重金属吸着粒子と前記保持樹脂の合計質量の5%以上20%以下である、
重金属吸着シート。
【請求項2】
厚さが5mm以下である、
請求項1に記載の重金属吸着シート。
【請求項3】
前記重金属吸着粒子の粒径分布が50μm~150μmである、
請求項1に記載の重金属吸着シート。
【請求項4】
前記主層および前記透水層が樹脂で形成され、
前記保持樹脂の融点が前記主層を形成する樹脂および前記透水層を形成する樹脂よりも低い、
請求項1に記載の重金属吸着シート。
【請求項5】
網目状またはメッシュ状に形成され、前記主層および前記透水層よりも大きい引張強度を有する補強層をさらに備える、
請求項1に記載の重金属吸着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属吸着シート、および重金属吸着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路、トンネル、河川、ダムなどの建設現場から出る建設発生土(掘削土)は、土壌汚染対策法に定められた特定有害物質のうちフッ素、ホウ素、ヒ素、セレン、鉛、六価クロム、水銀、カドミウムなどの自然由来重金属を含むことが少なくない。
このため、掘削土を対策する際には、掘削土に含まれる自然由来重金属の溶出を抑制するため、重金属の種類に応じた吸着材を用いて周辺環境への拡散を防止する。吸着材としては、例えば、鉄系、カルシウム系、マグネシウム系のものなどが提案されている。
【0003】
吸着材を使った従来の方法では、敷土母材(透水性の土)に吸着材を混合造成した吸着層上に自然由来重金属を含有する掘削土を堆積させ、掘削土から自然由来重金属を含む浸出水が出た際に、吸着層内で自然由来重金属を吸着している。従来法では、敷土母材の調達及び混合機械の用意等で工種・工程作業時間が多い点が問題である。
従来法の問題を解決するために、特許文献1には、透水性のある袋体に吸着材を装てんした重金属吸着マットが記載されている。重金属吸着マットを敷き、その上に掘削土を堆積することで、掘削土から重金属を含む水が染み出した際に、重金属が吸着マット内の吸着材に吸着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-140860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸着材の粒径が小さくなると、吸着材の体積あたりの表面積が大きくなり、重金属の吸着性能が向上する。しかし、特許文献1に記載の重金属吸着マットは、袋体に吸着材を装てんしているだけであるため、吸着材の粒径を小さくすると、製造時や輸送時、さらには施工時において、吸着材が袋体の隙間から脱落し、吸着効果が低減する。
【0006】
また、特許文献1の重金属吸着マットを斜面等に施工する場合、マット自体はアンカー等により斜面に固定できるが、吸着材は重力により袋体の中で移動し、吸着材の分布に偏りが生じる可能性がある。その結果、重金属吸着マットを透過する浸出水の一部において重金属が十分吸着されないまま周囲に流れ出てしまう可能性がある。
【0007】
上記事情を踏まえ、本発明は、吸着材が脱落しにくく、かつ吸着材の分布の均一性が好適に保持される重金属吸着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、不織布で形成された主層と、主層内に配置された鉄系、カルシウム系またはマグネシウム系のいずれかの重金属吸着粒子と、主層内に配置され、重金属吸着粒子を主層内に保持する保持樹脂と、主層の一方の面を被覆する透水層とを備える重金属吸着シートである。
この重金属吸着シートは、重金属吸着粒子を1平方メートルあたり2.6キログラム以上含有する。重金属吸着粒子の分布ばらつきは±15%以下である。保持樹脂の使用量は、重金属吸着粒子と保持樹脂の合計質量の5%以上20%以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸着材が脱落しにくく、かつ吸着材の分布の均一性が好適に保持される重金属吸着シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一実施形態に係る重金属吸着シートの模式断面図である。
図2】同重金属吸着シートの主層断面の光学顕微鏡写真である。
図3】同重金属吸着シートの製造方法の一例を示す図である。
図4】同重金属吸着シートの製造例における坪量の分布を示すグラフである。
図5】本発明の第二実施形態に係る重金属吸着シートの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第一実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る重金属吸着シート1の模式断面図である。重金属吸着シート1は、主層10と、主層10の一方の面に接合された透水層20とを備えている。
【0013】
主層10は樹脂製の不織布からなり、透水性を有する。主層10の材料となる樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等を例示できる。主層10が、例えば目付(坪量)50~200g/mかつ厚さが2~4mm程度の嵩高い不織布であると、後述する重金属吸着粒子の含有量を増加させることができ、好ましい。不織布の形成方法は特に制限されないが、サーマルボンド等の、短繊維を交絡させるタイプの不織布が好ましい。これらの不織布は、レジンボンド等の不織布に比べて内部空間が大きく確保でき、重金属吸着粒子の含有量を増大させやすいため、好ましい。
【0014】
図2は、主層10の断面の光学顕微鏡写真である。主層10の内部には、多数の重金属吸着粒子11が配置されている。
重金属吸着粒子11の材質は、吸着させようとする重金属の種類等に応じて適宜選択できるが、鉄系やカルシウム系、マグネシウム系の材料等が、幅広い重金属に対応でき、好適である。
【0015】
重金属吸着粒子11の粒子径は適宜設定できる。粒子径が小さくなるほど単位質量あたりの表面積が大きくなり、重金属の吸着性能が向上するが、小さすぎると、主層10内への保持がしにくくなる。これらの観点からは、重金属吸着粒子11の粒径分布(この数値範囲内に80%の粒子が含まれる)は、20μm~200μmが好ましく、50μm~150μmがより好ましい。
【0016】
主層10内に配置された重金属吸着粒子は、保持樹脂12により、主層10を構成する樹脂繊維に保持されている。図2にも、保持樹脂12が見えている。
保持樹脂12は、主層10の材質よりも低い融点を持つことが好ましく、例えば60~100℃程度とできる。例えば、主層10がPP製の不織布である場合、エチレン酢酸ビニル(EVA)やPE等を主成分とするホットメルト材を、保持樹脂12として好適に使用できる。
【0017】
保持樹脂12の使用量は、重金属吸着粒子11と保持樹脂12の合計質量の5%以上20%以下とする。保持樹脂12が少なすぎると、重金属吸着粒子11を主層内に十分に保持できない結果、重金属吸着粒子11の脱落が多くなる。保持樹脂12が多すぎると、重金属吸着粒子11の表面を過度に覆ってしまい、重金属吸着性能が低下する。
保持樹脂12は、溶融前に粒状であると、重金属吸着粒子と十分に混合できる。保持樹脂12の粒径分布は、例えば100~300μmとでき、重金属吸着粒子11の粒径分布と近い値が好ましい。
【0018】
透水層20は、透水性を有する限りその材質や構造に制限はない。例えば、紙製のシートや、PP、PEなどの熱可塑性樹脂あるいはそれらの複合材などからなる織布、レーヨンやPPなどからなる不織布等を透水層20として使用できる。不織布を透水層20とする場合、目付は例えば30~100g/m程度とできる。
透水層20は、主層10よりも目の細かいものであることが好ましい。この場合、透水層20を下側にして重金属吸着シート1を施工することにより、重金属吸着粒子11の脱落を好適に防止することができる。
透水層20には重金属吸着粒子11が保持されないため、界面活性剤コーティングや親水剤の練りこみ等の親水性処理を透水層20に施して、透水層20の透水性を高めてもよい。
【0019】
上記の構成を有する本実施形態の重金属吸着シート1は、様々な方法により製造できる。以下では、一例として、重金属吸着シート1を簡便かつ効率よく製造できる、本実施形態の重金属吸着シートの製造方法について説明する。
【0020】
まず、主層10となる樹脂製の不織布を用意し、巻き出しロールにセットする。さらに、不織布を繰り出してヒートコンベアに通し、巻取りロールに取り付ける。つづいて、透水層20となる透水性シートを別の巻き出しロールにセットし、ヒートコンベアに通して巻取りロールに取り付ける。
【0021】
次に、図3に示すように、巻き出しロール101から繰り出した不織布10Aを巻取りロール102で巻き取りながら、重金属吸着粒子11と、溶融して保持樹脂12となるホットメルト材との混合物15を、散布機103から不織布10Aに均一に散布する(ステップA)。
【0022】
次に、混合物15が散布された不織布10Aに透水層となる透水性シート20Aを重ねて(ステップB)ヒートコンベア104に移動し、ヒートコンベア104で熱および圧力を加える。ヒートコンベア104の温度は、ホットメルト材の融点以上かつ不織布10Aの融点以下とする。
【0023】
ヒートコンベア104によって加えられる熱および圧力により、ホットメルト材が溶融する。溶融したホットメルト材により、重金属吸着粒子11が不織布10Aの繊維や繊維間に支持される。さらに、透水性シート20Aと不織布10Aとが熱および圧力によりホットメルト材を介して一体に接合され、それぞれ透水層20および主層10となる(ステップC)。
【0024】
主層10および透水層20がヒートコンベア104を通過すると、ホットメルト材が固化して保持樹脂12となり、本実施形態の重金属吸着シート1が完成する。完成した重金属吸着シートは、順次巻取りロール102に巻き取られる。
【0025】
本実施形態の重金属吸着シート1によれば、重金属吸着粒子11が保持樹脂12によって主層10内にしっかり保持されているため、輸送時や施工時に重金属吸着粒子11が脱落したり、主層10内で移動して分布に偏りが生じたりすることが抑制されている。その結果、重金属吸着粒子11が均一な分布で安定して主層10内にとどまり、安定した重金属吸着効果を発揮する。
【0026】
また、主層20が不織布で形成されているため、内部に十分な空間を有する。その結果、適切なサイズの重金属吸着粒子11を選択することにより、あまり厚くせずとも比較的多量の重金属吸着粒子11を含有させることができる。例えば、重金属吸着粒子11が鉄系である場合、1平方メートルあたり2キログラム以上の含有量とすることも容易であり、1平方メートルあたり4キログラム以上含有させることも可能である。
現在実用化されている重金属吸着マットの厚さは数センチメートル程度あるため、ロール状に巻いても巻き径がすぐ大きくなり、大量に巻くことはできない。そのため、大面積に敷き詰めるための準備や運搬は煩雑であった。本実施形態の重金属吸着シートは、上記の構造を備えるため、多量の重金属吸着粒子11を含有しつつも、厚さは5mm以下であり、2mm程度とすることも可能である。したがって、数十メートルのロールとすることも容易であり、大面積の施工も簡便に行える。
【0027】
重金属吸着シート1において、主層10内に配置された重金属吸着粒子11および保持樹脂12は、主層10と一体となっているため、重金属吸着シート1の物性向上にも寄与している。その結果、重金属吸着シート1は、引張強度等に優れる。したがって、厚さが5mm以下であっても、施工時に容易に裂けたり破れたりすることがない。
【0028】
さらに、主層10および透水層20がいずれも透水性を有するため、単位面積当たりの重金属吸着粒子11の量をさらに増やしたい場合は、重金属吸着シート1を複数枚重ねて使用することもできる。したがって、単位面積当たりの重金属吸着粒子11の量を容易に調節することができる。
重金属吸着シート1全体としての透水性は、JIS A 1218:2009に準拠した測定において10-5m/秒程度が好ましい。
【0029】
加えて、主層10が樹脂で形成されているため、複数の重金属吸着シート1の端部を重ねて加熱すると、熱融着により端部同士を接合することができる。したがって、複数の重金属吸着シートを並べて配置し、重なった部分をアンカー等で固定する方法に比べて、掘削土からの浸出水が、重金属吸着シート内を通らずに重ねられた複数の重金属吸着シートの隙間を通り、重金属が十分に吸着されない事態の発生を防止できる。
【0030】
本実施形態の重金属吸着シートの製造方法によれば、ステップAにおいて散布された重金属吸着粒子とホットメルト材との混合物が、ステップCにおいて、そのまま主層10に支持される。したがって、ステップAにおいて混合物を均一に不織布10Aに散布しさえすれば、重金属吸着粒子が均一に担持された重金属吸着シート1を容易に製造することができる。
【0031】
また、ステップBにおいて透水性シート20Aを不織布10Aに重ねてからステップCを行うため、重金属吸着粒子11の主層10に支持させることと、不織布10Aと透水性シート20Aとを接合することとを、同時に行うことができる。その結果、重金属吸着シート1を効率よく製造することができる。
【0032】
本実施形態の重金属吸着シート1について、製造例を示す。
(製造例)
不織布10Aとして、PP繊維およびポリエチレン繊維からなるサーマルボンド不織布(目付70g/m、厚さ1.5mm、幅1500mm)を用いた。
重金属吸着粒子11として、粒径分布50~100μmの鉄粉を用いた。
保持樹脂12となるホットメルト材として、EVAを主成分とする平均粒径300μmのホットメルト材を用いた。
透水性シート20Aとして、レーヨン製の不織布(目付40g/m)を用いた。
【0033】
不織布10Aおよび透水性シート20Aを装置にセットし、不織布10Aを搬送速度2.5m/分で繰り出した。純鉄粒子とホットメルト材とを質量比10:2で混合した混合物を、繰り出される不織布10Aに散布機から均一に散布した。散布量は、3.5kg/mとした。
【0034】
混合物を散布した不織布10Aに透水性シート20Aを重ね、接触式ヒートコンベアに通して熱および圧力を加えた。熱圧条件は、ヒートコンベアの隙間0.3mm、ヒーター温度160℃、圧力5N/m、接触時間60秒とした。ヒートコンベアを通過し、一体化したシートを巻取りロールに巻き取り、重金属吸着シートを得た。
【0035】
得られた重金属吸着シートの物性を示す。
厚さ 2mm
密度(比重) 1.8~2.2g/cm
坪量 3.2~4.2kg/m
重金属吸着粒子含有量 2.6~3.4kg/m
引張強度(JIS L 1908に準拠して測定) 70N/cm
伸び率(JIS L 1908に準拠して測定)25%
透水性(JIS A 1218:2009に準拠して測定) 10-5m/秒
【0036】
得られた重金属吸着シートは、直径3インチの紙管を芯として50m以上巻き取ることができた。
上記坪量は、巻き出した重金属吸着シート20m分において無作為に設定した156箇所の10cm四方の領域の値がとった範囲を示している。坪量は、中央値3.7kg/mに対し±15%以内に収まっており、重金属吸着粒子の分布ばらつきが±10%以下に抑えられていた。図4に、測定箇所の坪量の分布を示す。
得られた重金属吸着シート2枚の端部を重ね、熱超音波接合機で300~400℃に加熱すると、端部同士を熱融着により接合できた。接合された端部の引張強度は50~70N/cmであった。
【0037】
本発明の第二実施形態について、図5を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
図5は、本実施形態に係る重金属吸着シート101の模式断面図である。重金属吸着シート101は、主層10と透水層20との間に補強層110を備えている。
補強層110は、素線を編んだり交差状態で接合したりした網目状、またはシートに多数の穴が形成されたメッシュ状のシート状材料であり、透水性を有する。補強層110の引張強度は、主層10および透水層20のいずれよりも大きい。
補強層110の材質に特に制限はなく、樹脂や金属等を例示できる。
【0039】
上記の構成を有する重金属吸着シート101は、例えば上述した製造方法において、補強層110となるシート状材料をさらに別の巻き出しロールにセットし、混合物15が散布された不織布10Aに重ねていくことにより製造できる。
【0040】
本実施形態に係る重金属吸着シート101は、第一実施形態と同様に、安定した重金属吸着効果を発揮する。
さらに、補強層110を備えるため、引張強度が向上されている。その結果、敷設する地盤が石等により強い凹凸を有する場合や、踏みつけ等により大きい力が作用した場合であっても、破れ等を生じにくい。
【0041】
本実施形態において、補強層を設ける場所は、主層と透水層との間に限られない。したがって、主層の下方に設けられてもよいし、透水層の上方に設けられてもよい。
また、補強層が複数設けられてもよい。
【0042】
本実施形態に係る実施例を示す。
上述の製造例に、以下に示すシート状材料1から6を、補強層として主層10と透水層20との間に配置し、一体に接合した。
シート状材料1:ポリプロピレン製網目状シート(素線径2mm)(ダイオ化成社製 12-215PPNW-K)
シート状材料2:PET製網目状シート(素線径6mm)(ユニチカ社製 EM505)
シート状材料3:PET製網目状シート(素線径6mm)(ダイオ化成社製 5-225PTNW-L)
シート状材料4:ビニロン製網目状シート(素線径6mm)(ユニチカ社製 V2010)
シート状材料5:ビニロン製網目状シート(素線径1mm)(ユニチカ社製 500-5)
シート状材料6:PET製網目状シート(素線径2mm)(ダイオ化成社製 20-215PTBK)
【0043】
製造された各重金属吸着シートに対し、JIS L 1908に準拠してMD(長さ方向(製造時における繰り出し方向))およびTD(幅方向(MDに直交する方向))の2方向の引張強度を測定した。
結果を表1に示す。引張強度は、試験片3つの算術平均値である。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、いずれのシート状材料を補強層に用いた場合でも、補強層を備えない構成に比べて、引張強度を1.5倍以上に向上することができた。
【0046】
以上、本発明の各実施形態および製造例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0047】
例えば、透水性シートは、主層の両面に設けられてもよい。このようにすると、重金属吸着シートの向きに関わらず重金属吸着粒子の脱落を抑制できるため、重金属吸着シートの取り扱いや施工がより簡便になる。
【0048】
本発明の重金属吸着シートに吸着させる重金属は、自然由来のものに限られない。本発明の重金属吸着シートは、人工物である重金属含有部材の廃棄場所や一次保管場所に敷いたり、汚染水のフィルター等として使用したりすることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1、101 重金属吸着シート
10 主層
10A 不織布
11 重金属吸着粒子
12 保持樹脂
15 混合物
20 透水層
20A 透水性シート
110 補強層
図1
図2
図3
図4
図5