(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】ブロック状ポリ(エーテルエーテルケトン)コポリマーならびに対応する合成方法および物品
(51)【国際特許分類】
C08G 65/48 20060101AFI20220307BHJP
C08G 65/40 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C08G65/48
C08G65/40
(21)【出願番号】P 2019519229
(86)(22)【出願日】2017-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2017075864
(87)【国際公開番号】W WO2018069353
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-10
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(73)【特許権者】
【識別番号】503304197
【氏名又は名称】バージニア・ポリテクニック・インスティテュート・アンド・ステイト・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】VIRGINIA POLYTECHNIC INSTITUTE AND STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブラナム, ケリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ローラー, デーヴィッド ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】アポストロ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ムーア, ロバート ビー.
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, リンジー
(72)【発明者】
【氏名】タリー, サマンサ
(72)【発明者】
【氏名】ユアン, シーチン
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/040293(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/033566(WO,A1)
【文献】特開昭51-090397(JP,A)
【文献】国際公開第2009/005055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00-65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック状PEEKコポリマーと、トリフルオロアセチル硫酸と、ブロック状PEEKコポリマーの非溶媒であり、トリフルオロアセチル硫酸の溶媒であるゲル化溶媒とを含むPEEKコポリマーゲルであって、
ブロック状PEEKコポリマー
が、
(i)次式:
(式中、
- 各R
1~R
6は、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から場合ごとに独立して選択され;
- iおよびjは、0~4から独立して選択される整数である)
で表される繰り返し単位(
R
EEKP
)と;
(ii)次式:
(式中、
- i、j、R
5、R
6ならびに各R
1およびR
2は、繰り返し単位(R
PEEK)について選択されたものと同一であり;
- L
1は、R
3
、-SO
3Mまたは-Brと同じであり、
- L
2は、R
4、-SO
3M’または-Brと同じであり、
- MおよびM’は、水素、IA族元素およびアルカリ土類金属元素からなる群から独立して選択され;
- L
1およびL
2の少なくとも1つは、-SO
3MまたはBrである)
で表される繰り返し単位(R*
PEEK)と
を含み、
PEEKコポリマーが、
-
1HNMR分光法によって測定されるように、少なくとも約20%の官能化度、および
- 10℃/分のランプ速度を用い、0℃の第1温度から390℃まで加熱する示差走査熱量測定法(「DSC」)によって測定されるように、少なくとも約10%の結晶化度を有する
、PEEKコポリマーゲル。
【請求項2】
PEEKコポリマーが、少なくとも約22%、好ましくは少なくとも約25%の官能化度を有する、請求項1に記載の
PEEKコポリマーゲル。
【請求項3】
PEEK
コポリマーが、少なくとも約15%、好ましくは少なくとも約20%、さらにより好ましくは少なくとも約25%の結晶化度を有する、請求項1または2に記載の
PEEKコポリマーゲル。
【請求項4】
iおよびjが0に等しく;
R
3、R
4、R
5、およびR
6がそれぞれ水素であり、
繰り返し単位(R*
PEEK)が、次の式の群から選択される式:
(式中、
- L
1は、-SO
3Mまたは-Brであり、
- L
2は、-SO
3M’または-Brである)
で表される、請求項1~3のいずれか一項に記載の
PEEKコポリマーゲル。
【請求項5】
iおよびjがゼロであり、R
3、R
4、R
5、およびR
6が水素である、請求項1~3のいずれか一項に記載の
PEEKコポリマーゲル。
【請求項6】
L
1が、-SO
3M、好ましくはSO
3Hであり、L
2が、R
4と同じである、請求項1~5のいずれか一項に記載の
PEEKコポリマーゲル。
【請求項7】
ゲル化溶媒が、1,2-ジクロロエタンである、請求項
1~6のいずれか一項に記載のPEEKコポリマーゲル。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のブロック状PEEKコポリマーの形成方法であって、方法が、
反応混合物中で、(A)繰り返し単位(R
PEEK)を含むPEEKポリマーを含むPEEKゲルと、(B)官能化剤とを接触させる工程を含み、
ここで、
接触させる工程が、請求項1~6のいずれか一項に記載のブロック状PEEKコポリマーを形成し、
反応混合物が、PEEKポリマーの非溶媒であり、官能化剤の溶媒である液体を含み、
官能化剤が、トリフルオロアセチル硫酸である、方法。
【請求項9】
PEEKゲルが、液体と混和性であるゲル化溶媒を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
液体が、式:C
n’H
m’X
1
p’(式中、4n’-2(n’-1)=m’+p’であるように、p’は、1~6の整数であり;n’は、1~8の整数であり、m’は、1~17の整数である)で表されるハロゲン化アルカン、好ましくはCHCl
3またはClH
3C-CH
3Clであり、ゲル化溶媒が、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、およびそれらの組み合わせ、好ましくはジクロロ酢酸から選択される、請求項
8または
9に記載の方法。
【請求項11】
PEEKゲルが、ゲル化溶媒の量に対して、少なくとも約15w/v%、好ましくは少なくとも約20w/vol%のPEEK濃度を有する、請求項
9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月11日出願の米国仮特許出願第62/406,634号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ブロック状PEEKコポリマーおよびブロック状PEEKコポリマーの形成方法に関する。本発明はまた、ブロック状PEEKコポリマーから形成される膜に関する。
【背景技術】
【0003】
プロトン交換膜燃料電池(「PEMFC」)は、車両および携帯用デバイスなどのアプリケーション設定において魅力的な電源である。PEMFC用途において現在使用されている膜は、Nafion(登録商標)PFSAなどの過フッ素化ポリマーをベースとしている。そのような膜は良好なイオン伝導性を有するが、それらの長期安定性は懸念事項であり、それらは比較的高い生産コストを有する。
【0004】
スルホン化ポリ(エーテルエーテル)ケトン(「PEEK」)ポリマーは、PEMFC用途において過フッ素化ポリマー膜の代替品として研究されてきた。一般に、ランダムにスルホン化されたPEEKベースの膜が研究されており、それらの過フッ素化対応品と比べて、改善された機械的特性、熱安定性および導電性を示している。そのような膜は前途有望であるが、増加したイオン伝導性性能を有しながら、さらに改善された機械的性能、熱安定性、耐化学薬品性を有する膜組成物を見いだしたいという継続的願望が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ブロック状官能化PEEKコポリマーおよび対応する合成方法が本明細書に記載される。意外にも、PEEKに関して非溶媒環境中でのブロック状官能化PEEKコポリマーの合成が、高い官能化度および結晶化度のブロック状官能化PEEKコポリマーを生成することが見いだされた。本ブロック状官能化PEEKコポリマーは、他の公知の方法で合成された対応するPEEKコポリマーと比べて、増加したブロック状構造を有した。ブロック状官能化PEEKコポリマーから形成された膜は、燃料電池用途において特に望ましい。例えば、ブロック状官能化PEEKコポリマーから形成された膜は、少なくとも一つには同時に改善された官能化および結晶化度のために、意外にも大きいイオン伝導性ならびに著しく改善された耐化学薬品性および耐熱性を有した。
【0006】
本明細書で用いるところでは、「ブロック状」コポリマーは、同じ繰り返し単位の統計的に有意なシーケンスを有するコポリマーを意味する。ランダムコポリマーは、他方では、同じ繰り返し単位のランダムな統計的分布を有する。ブロック状コポリマーと「ブロック」コポリマーとの差は、主として程度の差である。一般に、少なくとも1つの繰り返し単位について、ブロックコポリマーは、対応するブロック状コポリマーと比べてポリマー骨格に沿ってより狭い分布を有する(例えば、同じ繰り返し単位の繰り返しシーケンスの局部密度は、ブロックコポリマーにおいてより大きい)。例えば、-(A)-および-(B)-繰り返し単位を含有するブロックコポリマーは、A-A-A-A-A-A-A-A-A-A-B-B-B-B-B-B-B-B-B-Bなどの構造を有し得るし、ランダムコポリマーは、B-A-A-B-A-B-B-A-B-A-A-A-B-A-B-A-A-B-B-Bなどの構造を有し得るし、ブロック状コポリマーは、A-A-A-A-B-B-B-B-A-B-B-B-B-A-A-A-A-A-B-B)などの構造を有し得る。本明細書で用いるところでは、「官能化」は、第2繰り返し単位-(B)-を生成するための官能化剤Yでの繰り返し単位-(A)-の官能化の結果を意味する。本明細書に記載されるブロック状官能化PEEKコポリマーについて、官能化繰り返し単位の分布は、ブロック状コポリマー・アーキテクチャを生じさせる。明確にするために、本明細書で用いるところでは、官能化コポリマーは、下により詳細に記載されるように、少なくとも2つのタイプの繰り返し単位:非官能化-(A)-および官能化-(B)-を有するポリマーである。
【0007】
意外にも、著しく改善された官能化度、結晶化度およびイオン伝導性のブロック状官能化PEEKコポリマーは、ゲル状態(「PEEKゲル」)での、PEEKポリマーを非溶媒環境中で官能化することによって合成できることが発見された。本明細書で用いるところでは、PEEKゲルは、それ以下でPEEKポリマー溶液がゲル状態への転移を受ける、ゲル化温度を有するPEEKポリマーとゲル化溶媒とを含むPEEKポリマー溶液を意味する。ある意味で、ゲルは単相系であることを心に留めておくべきであるが、ゲルは可動性溶媒成分を有する固定したポリマー網状構造と考えることができる。下に詳細に記載されるように、PEEKゲルは、ゲル化温度よりも上の温度で選択された溶媒にPEEKを溶解させ、ゲルを形成させるために温度を下げることによって形成することができる。もちろん、PEEKポリマーと溶媒とを有するすべてのPEEK溶液がゲル化温度を有するわけではない(すべてのそのようなPEEK溶液がゲルを形成するわけではない)。溶質と溶媒との間の相互作用が、ゲルが生じる温度を有するように、ゲル形成は、溶質、溶媒および濃度の特異的な選択に依存する。本明細書に記載されるブロック状官能化PEEKコポリマーについて、望ましいゲル形成溶媒は下に記載される。PEEKゲルは、参照により本明細書に援用される、Mooreに付与され、「Gelation Aerogel Formation and Reactions Thereof to Produce Non-Random Functionalization of Poly (Aryl Ether Ketones)」という表題のPCT特許出願公開番号国際公開第2016/040293号パンフレット(「‘293出願」)にさらに記載されている。
【0008】
PEEKゲルは、非溶媒環境中で官能化される。本明細書で用いるところでは、非溶媒は、PEEKに関しての非溶媒を特に意味する。非溶媒へのPEEKの溶解度は、官能化が行われる温度で約0.1パーセント重量/容積(「w/v%」)未満である。明確にするために、w/v%は、溶媒または非溶媒の100mL当たりのポリマー(例えばPEEK)のグラム数の100倍を意味する。好ましくは、非非溶媒へのPEEKの溶解度は、非溶媒の凝固点から沸点に及ぶ温度範囲にわたって約0.01w/v%未満である。さらに、非溶媒は、それが少なくとも官能化温度(官能化反応が行われる選択された温度)で官能化剤の溶媒であるように選択される。もちろん、非溶媒はまた、より幅広い温度範囲、例えば、室温から非溶媒の沸点にわたって官能化剤の溶媒であり得る。非溶媒への官能化剤の溶解度は、室温(25℃)で少なくとも約50g/L、好ましくは少なくとも約60g/L、より好ましくは約65g/Lである。いくつかの実施形態において、非溶媒はまた、ゲル化溶媒と混和性である。望ましい溶媒は、下で詳細に考察される。いくつかの実施形態において、非溶媒環境は、PEEKの溶媒を本質的に含まない。
【0009】
本明細書に記載される合成方法は、意外に高い官能化度および結晶化度のブロック状官能化PEEKコポリマーを生成する。特に、PEEKコポリマーは、依然として結晶化することができながら、高い官能化度を有することができる。ブロック状官能化PEEKコポリマーは、少なくとも10%~約35%のPEEKの結晶化度を維持しながら、官能化されている繰り返し単位の濃度が、同じ官能化剤によって官能化できるものに対して、約20モル%以上であり、最大で約40モル%までであり得る官能化度を有することができる。意外にも、増加した官能化と併せて増加したブロック状構造を有するブロック状官能化PEEKコポリマーは、増加したイオン伝導性を有することがまた発見された。例えば、溶媒環境中でのPEEKゲルの官能化を記載する‘293出願に記載されている合成方法と比べて、非溶媒環境を組み入れた本明細書に記載される方法は、より高い官能化度、結晶化度およびブロック状構造を可能にする。前述の発見を踏まえて、本明細書に記載されるブロック状官能化PEEKコポリマーはまた、‘293出願に記載されているものと比べて増加したイオン伝導性を有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるブロック状官能化PEEKコポリマーは、燃料電池膜を含むが、それらに限定されない用途において膜に有利に組み入れることができる。傑出した結晶化度は、改善された耐熱性、耐化学薬品性および機械的性能(引張弾性率、引張強度)を有する膜につながる。その上、高い官能化度およびブロック状アーキテクチャは、著しく改善されたイオン伝導性を有する膜につながる。したがって、本明細書に記載されるブロック状官能化PEEKコポリマーから製造される膜は、望ましくは、燃料電池膜として、ならびに、下に詳細に記載されるような、他のアプリケーション設定において使用することができる。
【0011】
ブロック状官能化PEEKコポリマー
本ポリマー組成物は、ブロック状官能化PEEKコポリマーを含む。コポリマーは、ブロック状官能化PEEKコポリマー中の繰り返し単位の総数に対して、少なくとも約50モル%の合計濃度の繰り返し単位(RPEEK)と繰り返し単位(R*PEEK)とを含む。いくつかの実施形態において、コポリマーは、ブロック状官能化PEEKコポリマー中の繰り返し単位の数に対して、少なくとも約60モル%、少なくとも約65モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、または少なくとも約99.9モル%の合計濃度の繰り返し単位(RPEEK)と繰り返し単位(R*PEEK)とを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、繰り返し単位(R*
PEEK)の相対濃度は、繰り返し単位の総数(R
PEEK)+(R*
PEEK)に対して、少なくとも約20モル%、少なくとも約22モル%、または少なくとも約25モル%である。相対濃度は、
[ここで、N(R*
PEEK)は、繰り返し単位(R*
PEEK)の数であり、N(R
PEEK)は、繰り返し単位(R
PEEK)の数である]
と定義することができる。いくつかの実施形態において、繰り返し単位(R*
PEEK)の相対濃度は、約50モル%以下、約40モル%以下、約35モル%以下または約30モル%以下である。本明細書で用いるところでは、上に定義されたような、繰り返し単位(R*
PEEK)対繰り返し単位の総数(R
PEEK)+(R*
PEEK)の相対濃度はまた、官能化度とも言われる。すなわち、繰り返し単位(R*
PEEK)は、いくつかの実施形態において、下に記載されるように、繰り返し単位(R
PEEK)の官能化によって形成される。
【0013】
官能化度は、プロトン核磁気共鳴(「1HNMR」)分光法を用いて測定することができる。1HNMR試料は、適切な溶媒/溶媒ブレンドを使用して調製することができる。例えば、スルホン化PEEKについて、1HNMRは、スルホン化PEEKを高温でジクロロ酢酸に溶解させ、(例えば1:1~7:1w/vのCDCl3:ジクロロ酢酸の比率での)CDCl3中のPEEKの室温溶液を形成することによって調製することができる。溶媒消去(Solvent suppression)1HNMRを次に、結果として生じるスペクトル中のジクロロ酢酸プロトンの寄与を除去するために行うことができる。官能化度を測定する他の方法には、滴定および元素分析が含まれる。しかしながら、そのような方法は、比較的大きい誤りを起こしやすい。滴定および元素分析をベースとする方法は、ブロック状官能化PEEKコポリマー合成から残り得る酸などの不純物(例えば、未反応量の官能化剤)の存在に非常に敏感である。不純物は、それらが、実施例において下に実証されるように、酸性不純物(例えば、未反応量の官能化剤)を官能化PEEKコポリマー単位(例えば、繰り返し単位(R*PEEK))として間違って測定するので、著しく過大評価された官能化度をもたらし得る。
【0014】
繰り返し単位(R
PEEK)は、次式:
(式中、R
1およびR
2は、場合ごとに、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;i、jおよびkは、0~4から独立して選択される整数であり;R
3
、R
4、R
5およびR
6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から独立して選択される)
で表される。本明細書で用いるところでは、破線の結合は、隣接繰り返し単位への結合を示す。さらに、本明細書で用いるところでは、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、およびアスタチンからなる群から選択される原子を意味する。
【0015】
繰り返し単位(R*
PEEK)は、次式:
[式中、i、j、R
5、R
6ならびに各R
1およびR
2は、繰り返し単位(R
PEEK)について選択されたものと同一であり;L
1は、-SO
3M、-Brであるか、または繰り返し単位(R
PEEK)について選択されたR
3と同じであり、L
2は、-SO
3M’もしくは-Brであるか、または繰り返し単位(R
PEEK)について選択されたR
4と同じであり;MおよびM’は、水素、IA族元素およびアルカリ土類金属元素からなる群から独立して選択され;かつ(a)L
1は、-SO
3Mもしくは-Brであるか、または(b)L
2は、-SO
3M’もしくはBrであるかのどちらかである]
で表される。IA族元素の例としては、Li、Na、K、およびCsが挙げられるが、それらに限定されない。アルカリ土類金属の例としては、CaおよびMgが挙げられるが、それらに限定されない。好ましくは、L
1は、-SO
3Mである。
【0016】
当業者は、繰り返し単位(RPEEK)および繰り返し単位(R*PEEK)の構造が連結されていることを認めるであろう。下に詳細に記載されるように、一実施形態において、ブロック状官能化PEEKコポリマーは、PEEKポリマー(ポリマーまたはコポリマー)の官能化によって合成される。したがって、元のPEEKポリマーの構造および組成は、元のPEEKポリマーの繰り返し単位のいくらかが官能化されるという事実を除いて、対応するブロック状官能化PEEKコポリマーを合成するために官能化されるときに保存される。例えば、上の式(1)および(2)に言及すると、いったん、繰り返し単位(RPEEK)かまたは繰り返し単位(R*PEEK)かのどちらかについてのi、j、R5、R6ならびに各R1およびR2について選択が行われると、同じ選択が、それぞれ、繰り返し単位(R*PEEK)および繰り返し単位(RPEEK)について存在する。
【0017】
いくつかの実施形態において、繰り返し単位(R
PEEK)は、次式:
で表される。
【0018】
いくつかのそのような実施形態において、各iは、ゼロである。追加のまたは代わりの実施形態において、繰り返し単位(R*
PEEK)は、次式:
で表される。
【0019】
いくつかのそのような実施形態において、各iおよびjは、ゼロであり、R3~R6は、水素である。その上、いくつかのそのような実施形態において、L1は、-SO3Mであり、L2は、R4と同じであるか、または-SO3M’である。
【0020】
本明細書に記載されるブロック状官能化PEEKポリマーは、約30,000g/モル~約60,000g/モルの数平均分子量(「Mn」)および約60,000g/モル~約132,000g/モルの重量平均分子量(「Mw」)を有することができる。
【0021】
高い官能化度と併せて、ブロック状官能化PEEKコポリマーは、高い結晶化度を有することができる。ブロック状官能化PEEKコポリマーは、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%または少なくとも約28%である結晶化度を有することができる。その上またはあるいは、ブロック状官能化PEEKコポリマーは、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下または約30%以下である結晶化度を有することができる。結晶化度は、ブロック状官能化PEEKの溶融エンタルピー(「ΔHf」)を、純粋結晶のPEEKの溶融エンタルピーで割ることによって求めることができる。ブロック状官能化PEEKコポリマーの溶融エンタルピーは、10℃/分のランプ速度を用いてPEEK試料を0℃から390℃まで加熱することによって、示差走査熱量測定法(「DSC」)を用いて測定することができる。溶融エンタルピーは、(例えば、水中でのブロック状官能化PEEKの沈澱後に)第1加熱からの溶融吸熱の曲線下面積から求められる。純粋結晶のPEEKの溶融エンタルピーは、本明細書に参照により援用される、Blundell,D.J.およびOsborn,B.N.,Polymer 1983,24,953-958に報告されるような、130ジュール/グラム(「J/g」)と見なされた。
【0022】
ブロック状官能化PEEKコポリマーの合成
意外にも、高い結晶化度および官能化度を有する本明細書に記載されるブロック状官能化PEEKコポリマーは、ゲル状態でのPEEKポリマーを非溶媒環境中で官能化することによって形成できることが見いだされた。本明細書で用いるところでは、PEEKポリマーは、式(1)および(3)で上に記載されるような、少なくとも50モル%の繰り返し単位(RPEEK)を含む。
【0023】
合成方法は、ゲル状態でのPEEKポリマーを官能化する工程を含む。官能化プロセスは、PEEKポリマー中の繰り返し単位(RPEEK)を官能化してブロック状官能化PEEKコポリマー中に繰り返し単位(R*PEEK)を形成する。PEEKゲルは、PEEKポリマーとゲル化溶媒とを含有する。上に述べられたように、ゲル化溶媒は、それがゲル化温度よりも上でPEEKの溶媒であり、官能化温度よりも上でPEEKとゲルを形成するように選択される。望ましいゲル化溶媒には、ハロゲン化カルボン酸が含まれるが、それらに限定されない。望ましいハロゲン化カルボン酸の例としては、ジクロロ酢酸(「DCA」)およびトリクロロ酢酸が挙げられるが、それらに限定されない。優れた結果は、DCAを溶媒として使用して得られた。
【0024】
PEEKゲルの形成は、ゲル化温度よりも上の温度でPEEKをゲル化溶媒に溶解させて溶液を形成することを伴う。溶液は次に、ゲル化温度以下の平衡温度で平衡化させてゲルを形成させることができる。本明細書に記載されるブロック状官能化PEEKコポリマーの合成のためには、望ましいPEEKゲルは、ゲル化溶媒に対して、少なくとも約1w/v%、少なくとも約10w/v%、少なくとも約15w/v%、少なくとも約20w/v%、少なくとも約21w/v%、少なくとも約22w/v%、少なくとも約23w/v%、少なくとも約24w/v%または少なくとも約25w/v%のPEEK濃度を有することができる。そのような実施形態において、PEEKゲルは、平衡温度で溶媒中最大でPEEKの溶解限度までのPEEK濃度を有することができる。さらなるそのような実施形態において、PEEKゲルは、ゲル化溶媒に対して、約40w/v%以下、約35w/v%以下または約30w/v%以下のPEEK濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、約20w/v%よりも大きいPEEK濃度を有するPEEKゲルの官能化は、約20w/v%未満のPEEK濃度を有するPEEKゲルと比べて、官能化中により安定である(溶解に左右されない)ことが発見された。したがって、いくつかの実施形態において、約20w/v/%よりも大きいPEEK濃度を有するPEEKゲルから形成されたブロック状官能化PEEKコポリマーは、約20w/v%以下のPEEK濃度を有するPEEKゲルから形成されたものと比べてブロック状構造の増加でより高い官能化度を有することができる。
【0025】
官能化は、PEEKの非溶媒を含有する反応混合物中でPEEKゲルを官能化剤と接触させる(例えば反応させる)ことによって行われる。上に記載されたように、意外にも、非溶媒環境中でゲル状態でのPEEKの官能化は、高い官能化度と併せて高い結晶化度を有するブロック状官能化PEEKコポリマーを形成できることが見いだされた。非溶媒は、次の特性を有するように選択される:(i)それが、PEEKの非溶媒である、および(ii)それが、少なくとも官能化温度で、好ましくは室温で官能化剤の溶媒である。いくつかの実施形態において、非溶媒は、その上、それがPEEKゲル中のゲル化溶媒と混和性であるように選択することができる。望ましい非溶媒には、ハロゲン化アルカンが含まれるが、それらに限定されない。そのような非溶媒は、PEEKゲル溶媒がハロゲン化アルカンであり、非溶媒がゲル化溶媒と混和性であるために選択される実施形態において特に望ましい。一般に、ハロゲン化アルカンは、ハロゲン化カルボン酸(PEEKゲル溶媒)と混和性である。望ましいハロゲン化アルカンには、式Cn’Hm’X1
p’(式中、4n’-2(n’-1)=m’+p’であるように、p’は、1~6の整数であり;n’は、1~8の整数であり、m’は、1~17の整数である)で表されるものが含まれるが、それらに限定されない。望ましいハロゲン化アルカンには、クロロホルムおよび1,2-ジクロロエチレン(「DCE」)が含まれるが、それらに限定されない。
【0026】
本明細書で用いるところでは、官能化剤は、ゲル状態でのPEEKの繰り返し単位(R
PEEK)と反応して対応する繰り返し単位(R*
PEEK)を形成することができる化合物を意味する。したがって、官能化剤は、式(2)および(4)~(9)に関して上に記載された、L
1およびL
2の基-SO
3-または-Brを組み入れる。望ましい官能化剤には、次式:
(式中、各R
7およびR
8は、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から場合ごとに独立して選択され;mは、0~2の整数であり;nは、0~20の整数であり;pは、0~3の整数であり;X
2は、ハロゲンである)
からなる式の基で表されるものが含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、各R
8は、ハロゲンである。いくつかのそのような実施形態において、nは、1~15、1~10、または1~5である。優れた結果は、トリフルオロアセチル硫酸(「TFAS」)(n=0、p=3の、および各R
8がフッ素Fである式(5))、アセチル硫酸(n=0およびp=0の式(5))ならびにクロロスルホン酸(X
2がClである、式(6))を官能化剤として使って得られた。
【0027】
PEEKポリマーに対して官能化剤の濃度は、PEEKポリマー中の繰り返し単位(RPEEK)の数に対して、約30モル%から約500モル%まで、約450モル%まで、約250モル%まで、約100モル%まで、約70モル%までまたは約50モル%までであり得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、反応混合物は、PEEKゲル懸濁液を官能化溶液と組み合わせることによって形成することができる。そのような実施形態において、PEEKゲル懸濁液は、非溶媒中に懸濁されたPEEKゲルを含有する。懸濁液中のPEEKの濃度は、非溶媒に対して、約1w/v%または約5w/v%~約10w/v%であり得る。官能化剤を次に、PEEKゲル懸濁液に添加して反応混合物を形成することができる。いくつかの実施形態において、官能化剤は、官能化剤と、PEEKゲル懸濁液に使用された非溶媒と同じもしくはそれとは異なる組成を有する、しかし上に詳述されたような同じ選択判定基準を有する、非溶媒とを含む官能化溶液へ組み入れることができる。そのような実施形態において、官能化溶液をPEEKゲル懸濁液に添加して反応混合物を形成することができる。他の実施形態において、(i)懸濁液は、PEEKゲルと、懸濁液に直接添加される官能化剤とから形成することができるか、または(ii)溶液は、官能化剤で形成することができ、PEEKゲルをこの溶液に添加することができる。本開示に基づき、当業者は、接触を行うために代わりの方法を実施することができるであろう。
【0029】
PEEKは、官能化反応を行うのに好適な反応温度(「官能化温度」)で官能化剤と反応させることができる。意外にも、非溶媒環境が溶媒環境を組み入れた対応する方法と比べて官能化中のPEEKゲルの安定性を増加させることが見いだされたので、ただ今記載される方法は、より高い官能化温度を可能にする。したがって、官能化反応速度は増加し、増加した官能化度を有するブロック状PEEKポリマーをもたらす。いくつかの実施形態において、官能化温度は、非溶媒またはゲル化溶媒の最低沸点よりも下の任意の温度であり得る。いくつかの実施形態において、官能化温度は、少なくとも約40℃または少なくとも約50℃であり得る。その上またはあるいは、官能化温度は、約100℃以下または約90℃以下であり得る。本開示に基づき、当業者は、反応混合物の成分に基づいて適切な官能化温度を選択する方法を知るであろう。
【0030】
官能化後に、ブロック状官能化PEEKコポリマーは、例えば、水中への沈澱によって固体として回収する、または当技術分野において周知の方法によってゲルもしくはエアロゲルへリフォームすることができる。いくつかの実施形態において、膜は、官能化ブロックPEEKポリマーから形成することができる。
【0031】
膜および他の用途
ブロック状官能化PEEKコポリマーを含有する膜は、電気化学的アプリケーション設定において望ましくは使用することができる。そのような膜は、燃料電池用途において非常に望ましい、望ましい機械的特性およびイオン伝導性を有することができる。膜は、溶液キャスティングによって形成することができる。いくつかの実施形態において、ブロック状官能化PEEKコポリマーは、望ましい超酸触媒であり得る。
【0032】
本明細書に記載されるブロック状官能化PEEKコポリマーを含有する膜は、電気化学的アプリケーション設定において現在使用中の膜と比べて改善された機械的特性を有することができる。ブロック状官能化PEEKコポリマーから形成された膜は、約1.5GPa~約4.1GPaの弾性率および約25MPa~約105MPa、好ましくは50MPa~約105MPaの引張強度を有することができる。弾性率および引張強度は、タイプIV寸法、25mmのゲージ長および25mm/分のひずみ速度を用いてASTM D638に従って測定することができる。
【0033】
さらに、膜は、望ましい水吸収量およびプロトン伝導性を有する。膜は、1cm当たり少なくとも約10ミリジーメンス(「mS/cm」)、少なくとも約20mS/cm、少なくとも約50mS/cm、少なくとも約90mS/cm、少なくとも約100mS/cm、または少なくとも約110mS/cm~約200mS/cmのプロトン伝導率を有することができる。膜は、燃料電池(プロトン交換膜)、水電解槽(プロトン交換膜)、レドックスフロー電池(高分子電解質)、リチウムイオン電池(高分子電解質)、および塩素アルカリ生産において(カチオン交換膜)を含むが、それらに限定されない電気化学的アプリケーション設定において使用することができる。プロトン伝導率は、下の実施例においてさらに説明されるように、2ポイント探蝕子を用いて測定することができる。
【0034】
膜は、溶液キャスティングによってブロック状官能化PEEKコポリマーから形成することができる。意外にも、特異的に選択された溶媒と併用して、溶液キャスティングは、膜中のブロック状官能化PEEKコポリマーの結晶化度を保存できることが分かった。いくつかの実施形態において、ブロック状官能化PEEKコポリマーの結晶化度は、上に記載されたものと同じ範囲にあり得る。キャスティング溶液は、溶媒に溶解したブロック状官能化PEEKコポリマーを含有する。溶媒は、加熱された基材上へ溶液キャスティングによってまたは溶液のスピンコーティングによってキャストして膜を形成することができる。望ましい溶媒には、ハロゲン化フェノールが含まれるが、それらに限定されない。優れた結果は、4-クロロフェノールで得られた。本明細書で興味のある膜は、少なくとも10ミクロン、少なくとも25ミクロン、少なくとも50ミクロン、少なくとも80ミクロンまたは少なくとも90ミクロンの平均厚さを有する。そのような実施形態において、膜は、約200ミクロン以下、または約180ミクロン以下、または約170ミクロン以下または約160ミクロン以下の平均厚さを有する。平均厚さは、形状測定を含むが、それに限定されない当技術分野において周知の技法を用いて測定することができる。
【0035】
結果として生じる膜は、ピンホールを含まないために加工することができる。高分子電解質膜において、1つの共通損傷モードは、(膜電極アセンブリの部品としての)高分子電解質膜におけるピンホール形成によって引き起こされるガスクロスオーバーである。例えば、膜におけるピンホールの存在は、水素および酸素が膜を通過し、カソードに達することを可能にし、カソードでガスはカソード材料と反応し、カソードの劣化を引き起こし得る。本明細書で用いるところでは、ピンホールを含まない膜は、膜の表面積に対して、百万当たり約1部(「ppm」)未満、好ましくは10億当たり1部(「ppb」)未満のピンホール濃度を有するものである。
【0036】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、および刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0037】
以下の実施例は、PEEKゲルの形成、およびゲル状態での官能化PEEKの特性評価の合成を実証する。
【0038】
実施例において、使用されるPEEKポリマーは、iおよびjがゼロに等しく、R3~R6がすべて水素であることが選択される、式(1)に従った繰り返し単位(RPEEK)からなった。特に明記しない限り、PEEKポリマーは、34,000g/モルのMnおよび69,000g/モルのMwを有した。
【0039】
PEEKゲルは、PEEK溶液から形成した。PEEK溶液は、PEEKとジクロロ酢酸(「DCA」)とから形成した。特に、PEEKを185℃の温度に維持された、ある量のDCAに添加した。PEEKが溶解した後、溶液を、直ちに熱源から取り出し、選択された平衡時間、選択された平衡温度で平衡化させた。ゲル形成は、選択された平衡時間後に試料バイアルを上下逆さまにすることによって判定した。いかなる流動性をも目視により示さない試料はゲルであると判定した。
【0040】
PEEK官能化は、上記のように形成された、PEEKゲルを壊してより小さいドメインにし、それらをDCA(溶媒)、クロロホルム(非溶媒)または1,2-ジクロロエタン(「DCE」)(非溶媒)に添加して懸濁液を形成することによって行った。懸濁液を、少なくとも1時間窒素雰囲気下に選択された平衡温度で平衡化させた。官能化は、DCA(DCA中の懸濁液のための)、クロロホルム(クロロホルム中の懸濁液のための)またはDCE(DCE中の懸濁液のための)中のトリフルオロアセチル硫酸(「TFAS」)(官能化剤)の2容積%溶液を平衡化懸濁液に滴加し、それを、選択された反応時間、選択された反応温度に維持することを伴った。反応時間は、平衡化懸濁液へのTFASの初期添加から選択した。反応時間の終わりに、反応懸濁液を冷たいRO水中へ沈澱させることによって官能化PEEKを単離した。沈澱後に、生成物を、濾過し、過剰の精製水(逆浸透によって精製された「RO水」)で洗浄し、24時間、メタノールでのソックスレー抽出によって精製した。生成物を次に、12時間真空下に80℃で乾燥させた。
【0041】
ゲルは、単離された官能化PEEKを185℃でDCAに溶解させてPEEK/DCA溶液を形成することによって官能化PEEKから形成した。溶解直後に、PEEK/DCA溶液を、溶液を185℃に保っている、熱源から取り出し、PEEK/DCA溶液を14日の期間室温で平衡化させた。ゲル形成は、上に記載されたように判定した。
【0042】
特に明記しない限り、官能化度は、選択された反応時間後の試料の1H-NMRスペクトルから測定した。官能化PEEK試料を175℃でDCAに溶解させて10w/v%溶液を生み出した。この溶液を室温まで放冷し、次にCDCl3を1:1のCDCl3:DCA(v/v)~7:1のCDCl3:DCA(v/v)の比率で溶液に添加した。600MHz Bruker Avance IIIを用いる溶媒消去1HNMRを次に、6.04ppmのDCAプロトンピークを除去するために行い、官能化PEEKプロトンを解明した。官能化度は、官能化芳香族繰り返し単位(例えば、(R*PEEK)に対応するもの)上のプロトンに対応する、7.77ppmでのプロトンの積分、対非官能化芳香族繰り返し単位(例えば、(RPEEK)に対応するもの)上のプロトンに対応する、7.85ppmでの4個のプロトンの積分の比を比較することによって測定した。
【0043】
実施例1:ゲル形成へのPEEK濃度の影響
本実施例は、PEEK溶液濃度へのPEEKゲル形成の依存性を実証する。
【0044】
ゲル形成を実証するために、10mLの乾燥DCA中の約6.0重量/容積%(「w/v%」)~約26.0w/v%PEEKの濃度を有するPEEK/DCA溶液から試料を形成した。PEEKが溶解した後、溶液を、室温(25℃)の平衡温度および14日の平衡時間を用いて平衡化させた。ゲル試験は、最初の20分間、次にその後の3時間の間、30分毎に、次にゲル形成が起こるまで1時間ベースで絶えず溶液を監視することによって行った。ゲル化が平衡時間後に観察されなかった場合、試験を打ち切った。ゲル形成結果を下表1に示す。
【0045】
【0046】
表1に言及すると、試験された試料について、より低濃度PEEK溶液から形成された試料は一般に、より高濃度PEEK溶液から形成された試料と比べて、より長いゲル化時間を有した。試料1~4については、ゲル化は14日の平衡化後に観察されなかった。9重量%以上のPEEK濃度を有するPEEK溶液で形成された試料(試料5~13)については、より高濃度PEEK溶液がより低いPEEK濃度を有するPEEK溶液から形成されたものよりも迅速にゲルを一般に形成する状態で、ゲル化が観察された。速いゲル化時間を有するゲルは、8時間よりも少ないゲル化時間を有する20%よりも上の濃度を有するものと同類で特に興味がある。
【0047】
実施例2:ゲル形成への温度の影響
この実施例は、PEEKゲル形成への温度の影響を実証する。
【0048】
温度の影響を実証するために、10mLのDCA中の約9.3w/v%~約26.1w/v%PEEKのPEEK濃度を有するPEEK/DCA溶液から試料を形成した。PEEKの溶解後に、試料を、約10℃~約150℃の範囲の平衡温度および最大で14日までの平衡時間を用いて平衡化させた。試料をその後、ゲル形成について試験した。試料パラメータおよびゲル化試験結果を下表2に示す。
【0049】
【0050】
表2に言及すると、試験された試料について、ゲル化速度は、温度と共に増加した(より短いゲル化時間)。例えば、試料14A~21Aを、それぞれ、増加する温度で平衡化させ、対応するゲル化速度は、60℃(試料18A)から120℃(試料21A)までの平衡温度ではゲル化速度の変化がまったく観察されなかったが、10日から2日まで減少した。同様に、試料14B~20Bを、それぞれ、増加する温度で平衡化させ、対応するゲル化速度は、0.05日から0.013日まで減少した。
【0051】
さらに、試験された試料について、より高濃度PEEK溶液から形成された試料は、より低濃度PEEK溶液から形成された試料と比べて、より高い温度でゲルを形成することができた。再び表2に言及すると、およそ10重量%PEEKを有するPEEK溶液から形成された試料(試料14A~23A)は、平衡温度が約120℃超である場合にゲルを形成しなかった。およそ25重量%PEEKを有するPEEK溶液から形成された試料(14B~20Bおよび22B~24B)は、平衡温度が約140℃超である場合にゲルを形成しなかった。より低い平衡温度試験は、DCAの融点(約9℃)によって制限された。もう一度、20%よりも上のゲル中のPEEKの濃度が特に興味があると思われる。
【0052】
実施例3:官能化中のPEEKゲルの安定性
この実施例は、官能化中のPEEKゲルの安定性を実証する。
【0053】
安定性を実証するために、5gのPEEKを乾燥DCAに溶解させて、約14.3w/v%~約20.0w/v%のPEEK濃度を有するPEEK/DCA溶液を形成することによってPEEKゲル試料を形成した。PEEKの溶解後に、試料を、室温の平衡温度および3日の平衡時間を用いて平衡化させた。
【0054】
官能化のために、PEEKゲルを壊し、乾燥DCAに添加して6.7w/v%のPEEK濃度を有する懸濁液を形成した。懸濁液を、60℃の反応温度で平衡化させた。官能化は、TFAS(DCAでの溶液としての)を、PEEK繰り返し単位(例えば(RPEEK))のモル数に対して1:1のモル比で平衡化懸濁液に添加することによって行った。この比は、5g試料中に存在するPEEKモノマーのモルを測定することによって計算した。次に、TFASのモルが懸濁液中のPEEKモノマーのモルに等しいように、TFASを調製した。反応時間は、PEEKゲルがDCAに完全に溶解するのに要する時間として選択した。各ゲルが溶解するので、反応時間は、より長い反応時間がより大きい安定性を示す状態で、安定性の尺度と見なされる。安定性試験の結果を下の表3に示す。
【0055】
【0056】
試験されたそれらについて、高濃度ゲルから形成された試料は、より低濃度ゲルから形成された試料と比べて、官能化中により安定であった。表3に言及すると、試料25(14.3重量%PEEK溶液)は、約75分のゲル安定性を有し、一方、試料26(16.7重量%PEEK溶液)および27(20.0重量%PEEK溶液)のそれは、それぞれ、115分および135分であった。したがって、安定性の増加はより高い官能化度(より長い反応時間)と関連しているので、試料25~27は、ゲル状態で、それぞれ、増加する官能化度を有した(実施例4を参照されたい)。
【0057】
実施例4:ゲル安定性および官能化度への非溶媒の影響
本実施例は、官能化中のゲル安定性および官能化度の増加への非溶媒の影響を実証する。
【0058】
安定性を実証するために、PEEKゲルを、20重量w/v%の最終濃度へと実施例3に記載されたように形成した。官能化は、PEEKゲルをDCA(溶媒)、クロロホルム(非溶媒)またはDCE(非溶媒)に溶解させて約6.7w/v%のPEEK濃度を有する懸濁液を形成することを伴った。懸濁液を、約60℃または約80℃の平衡温度で平衡化させた。官能化は、対応するTFAS溶液を懸濁液に添加することによって行った(上を参照されたい)。選択された反応温度は、選択された平衡温度と同一であり、選択された反応時間は最大で24時間までであった。いくつかの試料について、懸濁PEEKゲルは、選択された反応時間の前に溶解した。そのような試料について、反応時間は、PEEKゲルが完全に溶解するのに要する時間と見なされた。
【0059】
試料パラメータならびに安定性および官能化結果を下表4に示す。表4中、「無限」は、選択された反応時間中にゲルの目に見える溶解がまったくなかったという事実を意味する。
【0060】
【0061】
試験されたそれらについて、非溶媒中で官能化された試料は、溶媒中で官能化された対応する試料と比べてより安定であったし、高い官能化度を示した。表4に言及すると、試料31~33(DCA溶媒)は、それぞれ、2.5、3.0および4.0時間後に完全に溶解したが、試料31~33(非溶媒)は、それぞれ、8.5、20および24時間後にいかなる目に見える溶解をも示さなかった。さらに、試料32および33(非溶媒)は、対応する試料29(7.8モル%)と比べて官能化度の83%および136%増加(それぞれ、14.3モル%および18.4モル%)を示した。これらの結果は、非溶媒中での官能化が、著しく増加したゲル安定性および、相応して、意外にも増加した官能化度を意外にももたらしたことを実証する。
【0062】
実施例5:結晶化度の特性評価
本実施例は、官能化PEEK結晶化度への非溶媒官能化の影響を実証する。
【0063】
結晶化度を実証するために、実施例4に記載されたようにPEEKゲル試料を形成した。官能化は、DCE中に6.7重量%PEEKを有する懸濁液を形成することによって実施例4に記載されたようにまた行った。選択された平衡温度は80℃であり、選択された平衡時間は1時間であった。選択された平衡温度は80℃であり、選択された反応時間は24時間であった。懸濁液中のPEEKの量に対して、79モル%または80モル%TFAS(PEEK繰り返し単位のモル数に対して)を、DCE中の2v/v%溶液として平衡化懸濁液に添加した。各試料セット中の各試料について、TFSAを、約140分~約224分にわたって懸濁液に添加した。官能化後に、官能化度、溶融温度(「Tm1」および「Tm2」)、ならびに相対結晶化度(「%Xc1」および「%Xc2」)、ならびに全結晶化度(「%Xc」=%Xc1+%Xc2)。%Xc1および%Xc2 は、上に記載されたように求めた(例えば、それぞれ、DHf1/130およびDHF2/130)。各試料セットの結果についての最大値および最小値、ならびに試料パラメータを、下表5に示す。
【0064】
【0065】
表5に言及すると、これらの結果は、PEEKが最大で28.5%までの結晶化度と併せて最大で25.3%までの官能化度を有することを実証する。試料セット2に言及すると、当該試料セットからの少なくとも1つの試料は、25.3%の官能化度および28.5%の結晶化度の両方を有した。さらに、試料は、2つの溶融温度を示した。上に指摘されたように、2つの溶融温度は、PEEK中の異なる晶子サイズによって生じると考えられる。一般に、両試料セットについて、第2溶融温度よりも低い、第1溶融温度は、第2結晶化度よりも低い、第1のより低い結晶化度に関連した。例えば、試料セット1中の試料は、それぞれ、315℃~317℃の第2溶融温度および14.0%~21.7%の第2結晶化度よりも低い、225℃~239℃の第1溶融温度および1.6%~2.1%の第1結晶化度を有した。類似の結果が、セット2の試料について得られた。
【0066】
実施例6:ゲル形成に関する官能化方法の比較
この実施例は、対応する官能化PEEKポリマーがゲルを形成する能力への異なる官能化方法の影響を実証する。
【0067】
ゲル形成の影響を実証するために、ランダムおよびブロック状官能化PEEKポリマーを形成した。ランダム官能化PEEKポリマーを形成するために、PEEKを185℃でDCAに溶解させて6.7w/v%PEEKを含有する溶液を形成した。PEEKが溶解した後に、溶液の温度を60℃まで下げた。140mLの硫酸を溶液に添加して反応混合物を形成した。反応混合物を攪拌し、最大で2時間まで60℃に保ってPEEKポリマーを官能化した。官能化後に、反応懸濁液を冷たいRO水中へ沈澱させることによって生成物を単離した。沈澱後に、生成物を濾過し、過剰のRO水で洗浄し、24時間メタノールでのソックスレー抽出によって精製した。生成物を次に、12時間真空下に80℃で乾燥させた。
【0068】
ブロック状官能化PEEKポリマーを上に記載されたように形成した。特に、DCA中に20w/v%PEEKを含有する溶液を形成した。溶液を、60℃の平衡温度および1時間の平衡時間を用いて平衡化させた。結果として生じたゲルを使用してクロロホルム中6.7w/v%PEEKの懸濁液を形成した。官能化は、クロロホルム中の2容積%溶液として100モル%TFAS(PEEKモノマー繰り返し単位のモル数に対して)を懸濁液に添加することによって行った。選択された反応温度は60℃であり、選択された反応時間は8.5時間であった。官能化後に、反応懸濁液を冷たいRO水中へ沈澱させることによって生成物を単離した。沈澱後に、生成物を濾過し、過剰のRO水で洗浄し、24時間メタノールでのソックスレー抽出によって精製した。生成物を12時間真空下に80℃で乾燥させた。
【0069】
ゲル形成を試みるために、7.5gのそれぞれ単離されたランダム官能化およびブロック状官能化PEEKポリマーを、185℃で5mLのDCAに溶解させることによって試料を形成した(DCA中の15重量%のPEEK)。溶解後に、試料を14日間室温で平衡化させ、その後、上に記載されたように、ゲル形成について試験した。ブロック状官能化PEEKから形成された試料は、ゲルを形成したが、ランダムに官能化されたPEEKから形成された2つの試料は、ゲルを形成しなかった。
【0070】
実施例7:ブロック状官能化PEEK膜の形成および特性評価
この実施例は、ブロック状官能化PEEK膜の形成および特性評価を実証する。
【0071】
形成を実証するために、ブロック状官能化PEEK(「F-PEEK」)(式(4)、各iおよびjは、ゼロに等しく、L1は、-SO3Hに等しい)を、反応温度が80℃であり、PEEKモノマー繰り返し単位のモル数に対して、80モル%TFASが官能化のために使用され、反応時間が24時間であり、10重量%の最終濃度に160℃で4-クロロフェノールに溶解させたことを除いて、実施例4に記載されたように合成した。結果として生じた溶液を、濾過し、脱気し、100℃でのガラス基材上へ溶液キャストし、コートされた基材を室温まで放冷した。形成された官能化PEEK膜は、目視検査によって判定されるように、ピンホールを含まなかった。結果として生じた膜の平均厚さは、約23.3ミクロンであった。機械的性能、官能化度および結晶化度を、上に記載されたように測定した。機械的検査は、Instatron 5867 Dual Column System機械的検査装置を用いて行った。類似の検査を、Li,J.;Yang,X.;Tang,H.;Pan,M.J.Membr.(登録商標)Sci,2010,361,38-42から得られた、結晶化度を除いて、約25ミクロンの平均厚さを有するNafionPFSA(DuPontから入手可能な)から形成された膜に関して行った。結果を下表7に示す。
【0072】
【0073】
表7におよび試験された試料について言及すると、F-PEEK膜(試料34)は、伝統的なNafion(登録商標)PFSA膜(試料35)と比べて著しく改善された官能化(少なくとも約33%)および結晶化度(約85%)を有した。その上、F-PEEK膜の機械的特性は同様に、伝統的なNafion(登録商標)PFSA膜を上回って傑出した改善を示した。例えば、F-PEEK膜の弾性率および引張強度は、Nafion(登録商標)PFSA膜と比べて、それぞれ、少なくとも約416%および約85%だけ改善された。
【0074】
実施例7:ブロック状官能化PEEK膜のプロトン伝導性性能
この実施例は、ランダムおよびブロック状官能化PEEK膜のプロトン伝導性を実証する。
【0075】
性能を実証するために、ブロック状官能化PEEKおよびランダム官能化PEEK膜を、それぞれ、実施例4および実施例6に記載されたように形成した。膜を100℃で1時間ゆで、次にそれらを室温で12時間水中に置くことによって、水吸収量を測定した。膜は、約24ミクロンの平均厚さを有した。官能化度は、上に記載されたように1HNMRを用いて測定した。
【0076】
膜のプロトン伝導率は、当技術分野において周知であるように、2ポイント探蝕子を用いて測定した。分析前に、膜を1時間水中でゆで、次に一晩室温で水中に浸した。面内プロトン伝導率は、室温で脱イオン水中に沈めた2ポイント伝導率セルを用いて行った。インピーダンス測定結果は、Solatron製の1286電気化学的界面を備えた1255HF周波数分析器を用いて1Hzから1.5MHzまで採った。Nyquistプロットの実軸に沿った切片を採り、この切片を用いて
式:
に従って伝導率を求めた。
【0077】
水吸収量は、重量測定法で測定した。水吸収量は、試料を切断して1cm×2.5cmリボンにし、それらを一晩真空下に80℃で乾燥させることによって測定した。試料を室温まで冷却し、各試料の乾燥重量を測定した。試料を次に、1時間沸騰水中に浸し、これに、12時間の室温水中への浸漬が続いた。試料を水から取り出し、膜表面上の過剰の水を除去するために拭き取り、膜を沸騰水に曝す前の重量と比べて、水吸収量を測定するために再秤量した。結果を下表8に示す。表8中、λは、上に詳細に記載されたように、重量測定分析によって測定された値から計算された、水吸収量の尺度である。
【0078】
【0079】
表8に言及すると、試料37(ブロック状官能化PEEK)は、試料36(ランダム官能化PEEK)と比べて、著しく改善された水吸収量、λおよびプロトン伝導率を有した。とりわけ、試料36がより高い官能化度を有するという事実にもかかわらず、試料37は、試料36と比べて著しく増加したプロトン伝導率(約540%)を有する。これらの結果は、ブロック状官能化モルフォロジが、結果として生じた膜のプロトン伝導率を著しく増加させ得ることを、とりわけ、実証している。
【0080】
実施例8:官能化度の測定
この実施例は、滴定および1HNMRを用いるブロック状官能化PEEKコポリマーについての官能化度の測定を実証する。
【0081】
この測定を実証するために、6つの官能化PEEK試料を作製した。試料35、36、38および39は、170℃の温度で15w/v%の濃度を有するPEEKゲルを先ず調製して調製した。その後、ゲルを壊し、TFASを添加して、PEEKの繰り返し単位に対して、200~350モル%の範囲のスルホン化試薬の相対濃度を提供する、5w/v%のPEEK濃度および約1v/v%のTFAS濃度を有する懸濁液を作製した。官能化は、懸濁液を加熱して約3時間65℃の温度を維持することによって行った。生成物は、上に記載されたように回収した。試料36、39および40は、44,000g/モルのMnおよび98,000g/モルのMwを有するPEEKポリマーを使用して調製した。試料37は、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.製のKetaspire(登録商標)PEEK KT820NL(Mn=49,000、Mw=100,000)から調製した。試料35および36は、PEEK繰り返し単位(例えば、上の、RPEEK)に対して、350モル%のTFASを使用して官能化し、一方、試料38および39は、再びPEEK繰り返し単位に対して、200モル%のTFASを使用して官能化した。試料37および40は、使用されるPEEKポリマーがSolvay Specialty Polymers USA,L.L.C.製のKetaspire(登録商標)PEEK KT820NLであったことを除いて、PEEK繰り返し単位に対して、それぞれ、300モル%および200モル%のTFASが官能化のために使用される状態で、実施例6において記載されたように調製された均質官能化PEEKポリマーであった。
【0082】
逆滴定によって各試料の官能化度を測定するために、0.02モル/LのNaOH水溶液を調製してF-PEEK試料を中和した。NaOH溶液の濃度は、NaOH溶液を0.02モル/L安息香酸水溶液で滴定することによって標準化した。F-PEEK試料を先ずすり潰して粉末にし、分析天秤上に秤量した。次に、モル過剰のNaOH/F-PEEKを確実にする、正確に20mlのNaOH溶液および2mlのメタノールを、較正された注入ピペットを用いて各F-PEEK粉末試料へ添加した。次に、混合物を、12時間還流下に80℃で加熱した。中和されたF-PEEK混合物を次に室温に冷却し、0.02モル/LのHCl水溶液を調製してT-PEEK/NaOH混合物中に残っている過剰のNaOHを滴定した。0.02モル/LのHCl溶液は、標準化0.02モル/LのNaOH溶液を滴定することによって標準化した。F-PEEKのスルホン酸基で消費されたNaOHのモルを、滴定結果から計算した。官能化度(DoF)は、F-PEEK上の-SO3H基のモル対F-PEEK試料中のPEEK繰り返し単位のモルの比を比較することによって求めた。1HNMRによる官能化度測定は、上の実施例に記載されたように行った。
【0083】
官能化度測定およびパーセント結晶化度測定の結果を、下表9に示す。表9中、「DoF」は、官能化度を示し、Tgは、ガラス転移温度であり、Tmは、溶融温度であり、Tcは、冷却ラン中の結晶化温度であり、ΔHfは、純粋結晶のPEEK(上に説明されたように、130J/g2)に対する融解熱である。官能化度の滴定測定の誤差は、100×(滴定によるDoF-1HNMRによるDoF)/(1HNMRによるDoF)として計算した。
【0084】
【0085】
表9に言及すると、滴定ベースの方法は、官能化度の値を著しく過大評価した。試験された試料について、滴定ベースの方法は、少なくとも41.3%でだけおよび最大で142%まで官能化度を過大評価した。上で詳細に説明されたように、滴定ベースの方法は、ブロック状官能化PEEKコポリマー中の痕跡酸含量の存在の影響を極めて受けやすい。理論に制約されることなく、官能化度の過大評価は、官能化剤として使用されたTFASの残留濃度のためであると考えられる。
【0086】
上の実施形態は、例示的であり、限定的ではないことを意図する。加えて、本発明は特定の実施形態に関連して記載されているが、当業者は、変更が本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく形式上および詳細に行われ得ることを認めるであろう。上の文書の参照によるいかなる援用も、本明細書での明確な開示に反している主題はまったく援用されないように限定される。