IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フーダン ユニバーシティーの特許一覧

特許7035050VAPポリペプチド及び腫瘍の標的診断及び治療のための薬物の調製におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】VAPポリペプチド及び腫瘍の標的診断及び治療のための薬物の調製におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20220307BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 49/14 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220307BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20220307BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20220307BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20220307BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20220307BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220307BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220307BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C07K19/00
A61K49/14
A61K49/04
A61K47/64
A61K31/704
A61K31/69
A61K31/337
A61K47/54
A61K47/59
A61K47/60
A61K9/127
A61K9/107
A61K47/69
A61P35/00
A61K31/37
A61K47/34
A61K47/42
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019528582
(86)(22)【出願日】2017-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 CN2017114796
(87)【国際公開番号】W WO2018103660
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】201611115191.1
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518384803
【氏名又は名称】フーダン ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】FUDAN UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】ルー ウェイユエ
(72)【発明者】
【氏名】ラン ダニー
(72)【発明者】
【氏名】マオ ジアニー
(72)【発明者】
【氏名】シエ カオ
【審査官】玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0003200(US,A1)
【文献】特表2013-511563(JP,A)
【文献】PNAS, 2016, Vol.113, pp.12786-12791
【文献】Chem. Rec., 2016, Vol.16, pp.1772-1786
【文献】Journal of Controlled Release, 2015, Vol.201, pp.14-21
【文献】International Journal of Cancer, 2010, Vol.127, pp.2685-2698
【文献】PNAS, 2015, Vol.112, pp.3776-3781
【文献】SCIENTIFIC REPORTS, 2016, Vol.6, No.34922
【文献】Journal of Controlled Release, 2016, Vol.240, pp.267-286
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/00-7/66
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
VAP及び/又はVAPであり、前記VAPのアミノ酸配列がSであり、前記VAPのアミノ酸配列がPであることを特徴とする、GRP78に対する高い親和性を有するD型ペプチド。
【請求項2】
VAP及び/又はVAPのペプチド複合体であって、前記VAP及び/又はVAPペプチド複合体が、請求項1に記載のVAP及び/又はVAPにより修飾されたマレイミド基含有造影物質であり、前記VAP及び/又はVAPのペプチド複合体の構造がVAP-X及び/又はVAP-Xであり、Xが造影物質である、前記ペプチド複合体。
【請求項3】
Xが、蛍光物質、近赤外色素、磁気共鳴造影剤、及びX線造影剤からなる群から選択される1つ又は2つ以上である、請求項2に記載のペプチド複合体。
【請求項4】
蛍光物質がフルオレセインであり、近赤外色素がCy7、IR820、DiRであり、磁気共鳴造影剤がGd-DTPAであり、X線造影剤が 99m Tc-DTPAであることを特徴とする、請求項3に記載のペプチド複合体。
【請求項5】
VAP及び/又はVAPのペプチド複合体であって、前記VAP及び/又はVAPペプチド複合体が、請求項1に記載のVAP及び/又はVAPペプチドにより修飾された抗腫瘍薬であり、前記VAP及び/又はVAPのペプチド複合体の構造がVAP-Y及び/又はVAP-Yであり、Yが前記抗腫瘍薬である、前記ペプチド複合体。
【請求項6】
抗腫瘍薬が、ドキソルビシン又はエピルビシン等のアントラサイクリン類、タキソール並びにドセタキセル及びカバジタキセル等のタキサン類、カンプトテシン及びヒドロキシカンプトテシン並びにイリノテカン等のカンプトテシン類、ビンクリスチン及びビノレルビン等のビンブラスチン類、ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、パルテノライド等のラクトン類、p53活性化ペプチド、メリチン、サソリ毒ペプチド及び抗菌ペプチド等のペプチド薬からなる群から選択される1つ又は2つ以上である、請求項5に記載のペプチド複合体。
【請求項7】
抗腫瘍薬が、ケトン又はアルデヒド基を含む、ドキソルビシン又はエピルビシン;ヒドロキシ又はアミノ基を含む、パクリタキセル、ドセタキセル、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、ビンクリスチン、エトポシド、ゲムシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、テニポシド、モリチニブ、エポチロン、ビノレルビン、アクチノマイシンD、ミトキサントロン、アントラキノン、マイトマイシン、ブレオマイシン、イリノテカン;ホウ酸を含む、ボルテゾミブ又はカルフィルゾミブ;並びに/又はp53活性化ペプチド、メリチン及びサソリ毒ペプチドのペプチド薬のうちの1つからなる群から選択される1つ又は2つ以上であることを特徴とする、請求項6に記載のペプチド複合体。
【請求項8】
VAP及び/又はVAPのペプチド複合体であって、前記VAP及び/又はVAPペプチド複合体が、請求項1に記載のVAP及び/又はVAPにより修飾されたポリマー担体物質であり、前記VAP及び/又はVAPのペプチド複合体の構造がVAP-ポリエチレングリコール-Z及び/又はVAP-ポリエチレングリコール-Zであり、Zが前記ポリマー担体物質である、前記ペプチド複合体。
【請求項9】
ポリマー担体物質が、リン脂質、ポリ乳酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸、及びポリカプロラクトンからなる群から選択される1つ又は2つ以上であることを特徴とする、請求項8に記載のペプチド複合体。
【請求項10】
請求項又はに記載の複合体を含薬物送達系。
【請求項11】
リポソーム送達系、ポリマーミセル送達系、ポリマーディスク送達系又はナノ粒子送達系であることを特徴とする、請求項10に記載の薬物送達系。
【請求項12】
VAP及び/又は VAPペプチド複合体に加えて、薬物送達系が(1)診断薬及び/又は(2)抗腫瘍薬をさらに含む、請求項10又は11に記載の薬物送達系。
【請求項13】
(1)の診断薬が、蛍光物質、近赤外色素及び磁気共鳴造影剤からなる群から選択される1つ若しくは2つ以上であり、並びに/又は
(2)の抗腫瘍薬が、ドキソルビシン若しくはエピルビシン等のアントラサイクリン類、タキソールとドセタキセル及びカバジタキセル等のタキサン類、カンプトテシン及びヒドロキシカンプトテシンとイリノテカン等のカンプトテシン類、ビンクリスチン及びビノレルビン等のビンブラスチン類、ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、パルテノライド等のラクトン類、p53活性化ペプチド、メリチン、サソリ毒ペプチド及び抗菌ペプチド等のペプチド薬からなる群から選択される1つ若しくは2つ以上であることを特徴とする、請求項12に記載の薬物送達系。
【請求項14】
蛍光物質がフルオレセインであり、近赤外色素がCy7、IR820、DiRから選択され、及び/又は磁気共鳴造影剤がGd-DTPAである、請求項13に記載の薬物送達系。
【請求項15】
腫瘍を診断、追跡及び/又は治療するための薬物又は医薬品の製造における、請求項1に記載のVAP及び/又はVAPペプチド、請求項2~のいずれかに記載のVAP及び/又 VAPペプチド複合体、請求項10~14のいずれかに記載の薬物送達系の使用であって、
記腫瘍が、グルコース調節タンパク質GRP78を高度に発現する腫瘍である、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学の分野に属し、VAPペプチド及び薬物の調製におけるその使用に関し、詳細には、高度に安定でありグルコース調節タンパク質であるGRP78を標的とすることが可能な多機能性D型ペプチド、L型ペプチド及び安定なD型ペプチドの薬物複合体及び修飾ナノ薬物送達系に関する。詳細には、D型ペプチドVAP(D型アミノ酸配列S)及びVAP(D型アミノ酸配列P)、L型ペプチドVAP(アミノ酸配列SNTRVAP)及び安定なD型ペプチドの診断及び治療用薬物複合体、これらにより構築されるペプチド修飾ポリマー担体物質及びナノ薬物送達系、例えばリポソーム、ポリマーミセル、ポリマーディスク、ナノ粒子等、並びに腫瘍の診断及び標的治療のための薬物の調製における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍はヒトの生命と健康を深刻に脅かす疾患であり、疾患の中でもその死亡率が最も高いものの1つであることが文献により報告されている。腫瘍薬物療法の主な手段として、従来の化学療法は、腫瘍組織に対する乏しい選択性、高い毒性、狭い治療域及び多剤耐性傾向等の欠陥を有する。したがって、このような制限を克服するために、能動的標的化が近年、腫瘍部位に対する標的化効率を向上させる重要な戦略となった。能動的標的化戦略は、腫瘍組織において高度に発現する特異的受容体又は輸送体に対するリガンドの認識及び結合能、腫瘍組織又は細胞へ媒介する薬物又はナノ薬物送達系により主に実現されることが情報により開示されている。一般に使用される対応するリガンドは、モノクローナル抗体、ペプチド、アプタマー、低分子化合物等を含み、そのため、リガンド修飾薬物又はナノ薬物送達系は、細胞表面受容体又は輸送体及びリガンドの特異的認識、結合及び内部移行により薬物を腫瘍部位及び細胞へ送達することができ、したがって、薬物の腫瘍に対する能動的標的化が実現される。
【0003】
免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(Bip)としても知られる、グルコース調節タンパク質であるGRP78は、小胞体の主要な分子シャペロンの1つであり、タンパク質の折りたたみ及び小胞体ストレス反応において重要な役割を担っている。GRP78の発現が、いくつかの腫瘍細胞株、固形腫瘍及びヒトがん組織生検試料において顕著に増加するという研究が示された。GRP78タンパク質の過剰発現は、乳がん、肝臓がん、結腸がん及び胃がん等の種々の腫瘍において証明されており、これは、このような腫瘍の発生、進行、予後及び薬物耐性と密接に関連している。GRP78が腫瘍細胞の細胞膜の表面に移行し得るが、この現象は正常細胞においては認められないことが最近の研究により示されている。成体幹細胞及び腫瘍幹細胞の機能を制御するCripto/GRP78シグナル伝達経路により、GRP78は、がん幹細胞の制御及びその幹細胞性の維持において鍵となる役割を担うことも研究により示されている。したがって、GRP78受容体媒介経路による、薬物又はナノ薬物送達系の腫瘍部位への特異的送達は、薬物の腫瘍診断及び治療効果の向上において非常に大きな価値を有する。
【0004】
VAP(L型アミノ酸配列SNTRVAP)は、ファージディスプレイ法により選択されるヘプタペプチドである。VAPは、GRP78に対する高い親和性を有することが判明したが、腫瘍診断及び標的治療における適用は、未だ報告されていない。
【0005】
現行技術に基づいて、本願の発明者らは、腫瘍の診断及び標的治療におけるVAPペプチドの適用を提供し、既存のペプチドの安定性をさらに最適化してインビボでより良い腫瘍標的化効果を達成することを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行技術の欠陥に照準を合わせて、本発明の目的は、VAPペプチド並びに腫瘍診断及び標的治療におけるその適用を提供し、既存のペプチドの安定性をさらに最適化してインビボでより良い腫瘍標的効果を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、D型ペプチドを提供し、D型ペプチドはVAP及び/又はVAPであり、VAPのアミノ酸配列はSであり、VAPのアミノ酸配列はPである。
【0008】
本発明の第2の態様は、VAP及び/又はVAPのペプチド複合体を提供し、VAP及び/又はVAPペプチド複合体は、第1の態様のVAP及び/又はVAPにより修飾されたマレイミド基含有造影物質であり、VAP及び/又はVAPペプチド複合体の構造はVAP-X及び/又はVAP-Xであり、Xは造影物質であり、
好ましくは、Xは、蛍光物質、近赤外色素、磁気共鳴造影剤、及びX線造影剤からなる群から選択される1つ又は2つ以上であり、
より好ましくは、蛍光物質はフルオレセインであり、近赤外色素はCy7、IR820、DiRであり、磁気共鳴造影剤はGd-DTPAであり、X線造影剤は99mTc-DTPAである。
【0009】
本発明の第3の態様では、L型ペプチドVAPのペプチド複合体を提供し、VAPペプチド複合体は、VAPにより修飾されたマレイミド基含有造影物質であり、VAPペプチドのアミノ酸配列はSNTRVAPであり、VAPペプチド複合体の構造はVAP-Xであり、Xは造影物質であり、
好ましくは、Xは、蛍光物質、近赤外色素、磁気共鳴造影剤、及びX線造影剤からなる群から選択される1つ又は2つ以上であり、
より好ましくは、蛍光物質はフルオレセインであり、近赤外色素はCy7、IR820、DiRであり、磁気共鳴造影剤はGd-DTPAであり、X線造影剤は99mTc-DTPAである。
【0010】
本発明の第4の態様は、VAP及び/又はVAPのペプチド複合体を提供し、VAP及び/又はVAPペプチド複合体は、第1の態様のVAP及び/又はVAPペプチドにより修飾された抗腫瘍薬であり、VAP及び/又はVAPペプチド複合体の構造はVAP-Y及び/又はVAP-Yであり、Yは抗腫瘍薬であり、
好ましくは、抗腫瘍薬は、ドキソルビシン又はエピルビシン等のアントラサイクリン類、タキソール並びにドセタキセル及びカバジタキセル等のタキサン類、カンプトテシン及びヒドロキシカンプトテシン並びにイリノテカン等のカンプトテシン類、ビンクリスチン及びビノレルビン等のビンブラスチン類、ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、パルテノライド等のラクトン類、p53活性化ペプチド、メリチン、サソリ毒ペプチド及び抗菌ペプチド等のペプチド薬からなる群から選択される1つ又は2つ以上であり、
より好ましくは、抗腫瘍薬は、ケトン又はアルデヒド基を含む、ドキソルビシン又はエピルビシン;ヒドロキシ又はアミノ基を含む、パクリタキセル、ドセタキセル、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、ビンクリスチン、エトポシド、ゲムシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、テニポシド、モリチニブ(moritinib)、エポチロン、ビノレルビン、アクチノマイシンD、ミトキサントロン、アントラキノン、マイトマイシン、ブレオマイシン、イリノテカン;ホウ酸を含む、ボルテゾミブ又はカルフィルゾミブ;並びに/又はp53活性化ペプチド、メリチン及びサソリ毒ペプチドのペプチド薬のうちの1つからなる群から選択される1つ又は2つ以上である。
【0011】
本発明の第5の態様は、L型ペプチドVAPのペプチド複合体を提供し、VAPペプチド複合体は、VAPにより修飾された抗腫瘍薬であり、VAPペプチドのアミノ酸配列はSNTRVAPであり、VAPペプチド複合体の構造はVAP-Yであり、Yは抗腫瘍薬であり、
好ましくは、抗腫瘍薬は、ドキソルビシン又はエピルビシン等のアントラサイクリン類、タキソール並びにドセタキセル及びカバジタキセル等のタキサン類、カンプトテシン及びヒドロキシカンプトテシン並びにイリノテカン等のカンプトテシン類、ビンクリスチン及びビノレルビン等のビンブラスチン類、ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、パルテノライド等のラクトン類、p53活性化ペプチド及びメリチン、サソリ毒ペプチド及び抗菌ペプチド等のペプチド薬からなる群から選択される1つ又は2つ以上であり、
より好ましくは、抗腫瘍薬は、ケトン又はアルデヒド基を含む、ドキソルビシン又はエピルビシン;ヒドロキシ又はアミノ基を含む、パクリタキセル、ドセタキセル、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、ビンクリスチン、エトポシド、ゲムシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、テニポシド、モリチニブ、エポチロン、ビノレルビン、アクチノマイシンD、ミトキサントロン、アントラキノン、マイトマイシン、ブレオマイシン、イリノテカン;ホウ酸を含む、ボルテゾミブ;並びに/又はp53活性化ペプチド、メリチン及びサソリ毒ペプチドのペプチド薬のうちの1つからなる群から選択される1つ又は2つ以上である。
【0012】
本発明の第6の態様は、VAP及び/又はVAPのペプチド複合体を提供し、VAP及び/又はVAPペプチド複合体は、第1の態様のVAP及び/又はVAPにより修飾されたポリマー担体物質であり、VAP及び/又はVAPペプチド複合体の構造はVAP-ポリエチレングリコール-Z及び/又はVAP-ポリエチレングリコール-Zであり、Zはポリマー担体物質であり、
好ましくは、ポリマー担体物質は、リン脂質、ポリ乳酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸、及びポリカプロラクトンからなる群から選択される1つ又は2つ以上である。
【0013】
本発明の第7の態様は、L型VAPのペプチド複合体を提供し、VAPペプチド複合体は、VAPにより修飾されたポリマー担体物質であり、VAPペプチドのアミノ酸配列はSNTRVAPであり、このVAPペプチド複合体の構造はVAP-ポリエチレングリコール-Zであり、Zはポリマー担体物質であり、
好ましくは、ポリマー担体物質は、リン脂質、ポリ乳酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸、及びポリカプロラクトンからなる群から選択される1つ又は2つ以上である。
【0014】
本発明の第8の態様は、第6又は第7の態様の複合体を含み、
好ましくは、リポソーム送達系、ポリマーミセル送達系、ポリマーディスク送達系又はナノ粒子送達系であることを特徴とする薬物送達系を提供する。
【0015】
第8の態様の薬物送達系によれば、VAP、VAP及び/又はVAPペプチド複合体に加えて、薬物送達系は(1)診断薬及び/又は(2)抗腫瘍薬をさらに含み、
好ましくは、(1)の診断薬は、蛍光物質、近赤外色素及び磁気共鳴造影剤からなる群から選択される1つ若しくは2つ以上であり、より好ましくは、蛍光物質はフルオレセインであり、近赤外色素はCy7、IR820、DiRから選択され、及び/若しくは磁気共鳴造影剤はGd-DTPAであり、並びに/又は
(2)の抗腫瘍薬は、ドキソルビシン若しくはエピルビシン等のアントラサイクリン類、タキソール並びにドセタキセル及びカバジタキセル等のタキサン類、カンプトテシン及びヒドロキシカンプトテシン並びにイリノテカン等のカンプトテシン類、ビンクリスチン及びビノレルビン等のビンブラスチン類、ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、パルテノライド等のラクトン類、p53活性化ペプチド、メリチン、サソリ毒ペプチド及び抗菌ペプチド等のペプチド薬からなる群から選択される1つ若しくは2つ以上である。
【0016】
本発明の第9の態様は、腫瘍を診断、追跡及び/又は治療するための薬物又は医薬品の製造における、第1の態様のVAP及び/又はVAPペプチド、第2~第7の態様のうちのいずれか1つのVAP、VAP及び/又はVAPペプチド複合体、第8又は第9の態様の薬物送達系の使用を提供し、
好ましくは、腫瘍は、グルコース調節タンパク質GRP78を高度に発現する腫瘍である。
【0017】
本発明の第10の態様は、腫瘍診断及び/又は標的療法のための方法であって、それを必要とする対象に
第1の態様によるD型ペプチド、
第2~第7の態様のうちのいずれか1つによるVAP、VAP及び/若しくはVAPペプチド複合体、並びに/又は第8若しくは第9の態様の薬物送達系
を投与することを特徴とする方法を提供する。
【0018】
本発明の安定化したD型VAPペプチドにおいて、D型VAPペプチドはVAP及び/又はVAPであり、VAPのアミノ酸配列はSであり、VAPのアミノ酸配列はPである。
【0019】
具体的には、本発明は、D型ペプチドVAP及び/又はVAPを設計及び調製する。両ペプチドは、血清に対する高い安定性及びGRP78に対する高い親和性を有する。
【0020】
本発明におけるD型ペプチド又は文献に報告されているL型ペプチド(VAP、アミノ酸配列はSNTRVAP)の複合体において、VAP、VAP、VAPペプチド複合体は、VAP、VAP、VAPにより修飾された造影物質であり、VAP、VAP、VAPペプチド複合体の構造はVAP-X、VAP-X及び/又はVAP-Xであり、Xは造影物質である。
【0021】
好ましくは、Xは、蛍光物質、近赤外色素、磁気共鳴造影剤及びX線造影剤からなる群から選択される1つ又は2つ以上である。より好ましくは、蛍光物質はフルオレセインであり、近赤外色素はcy7、IR820及びDiRからなる群から選択される1つ又は2つ以上であり、磁気共鳴造影剤はGd-DTPAであり、X線造影剤は99mTc-DTPAである。
【0022】
具体的には、スルフヒドリル化後、本発明のVAP、VAP又は文献に報告されているVAPは、分子中のスルフヒドリル基を利用してマレイミド官能化蛍光物質(フルオレセイン、近赤外色素cy7、IR820、DiR等)、マレイミド官能化磁気共鳴造影剤Gd-DTPA及びマレイミド官能化X線造影剤99mTc-DTPAと反応して複合体を形成することが可能である。
【0023】
本発明のVAP、VAP又は文献に報告されているVAPの複合体において、VAP、VAP、VAPペプチド複合体は、VAP、VAP、VAPにより修飾された抗腫瘍薬であり、VAP、VAP、VAPペプチド複合体の構造は、VAP-Y、VAP-Y及び/又はVAP-Yであり、Yは抗腫瘍薬である。
【0024】
好ましくは、抗腫瘍薬は、ドキソルビシン又はエピルビシン等のアントラサイクリン類、タキソール並びにドセタキセル及びカバジタキセル等のタキサン類、カンプトテシン及びヒドロキシカンプトテシン並びにイリノテカン等のカンプトテシン類、ビンクリスチン及びビノレルビン等のビンブラスチン類、ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、パルテノライド等のラクトン類、p53活性化ペプチド、メリチン、サソリ毒ペプチド及び抗菌ペプチド等のペプチド薬からなる群から選択される1つ又は2つ以上である。
【0025】
より好ましくは、抗腫瘍薬は、ケトン又はアルデヒド基を含む、ドキソルビシン又はエピルビシン;ヒドロキシ又はアミノを含む、パクリタキセル、ドセタキセル、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、ビンクリスチン、エトポシド、ゲムシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、テニポシド、モリチニブ、エポチロン、ビノレルビン、アクチノマイシンD、ミトキサントロン、アントラキノン、マイトマイシン、ブレオマイシン、イリノテカン;ホウ酸基を含む、ボルテゾミブ又はカルフィルゾミブ;並びに/又はp53活性化ペプチド、メリチン及びサソリ毒ペプチドのペプチド薬からなる群から選択される1つ又は2つ以上である。
【0026】
具体的には、本発明のVAP、VAP又は文献に報告されているVAPにより修飾された薬物は、マレイミドヒドラジン誘導体の反応によりpH感受性ヒドラゾン結合を形成するペプチド薬複合体(ドキソルビシン又はエピルビシン及びケトン若しくはアルデヒド基を含む他の薬物を含む)、又は3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸誘導体の反応によりジスルフィド結合を形成するペプチド薬複合体(パクリタキセル、ドセタキセル、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、ビンクリスチン、エトポシド、ゲムシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、テニポシド、モリチニブ、エポチロン、ビノレルビン、アクチノマイシンD、ミトキサントロン、アントラキノン、マイトマイシン、ブレオマイシン、イリノテカン及びヒドロキシ又はアミノ基を含む他の薬物を含む)、又はドパミン及び薬物のホウ酸基の反応によりpH感受性ホウ酸エステルを形成するペプチド薬複合体(ボルテゾミブ及びホウ酸を含む他の薬物を含む)、又は固相合成により直接アミド結合を形成するペプチド薬複合体(p53活性化ペプチド、抗菌ペプチド、ペプチド毒素及び他のペプチド薬を含む)を含む。
【0027】
本発明のVAP、VAP又は文献に報告されているVAPの複合体において、VAP、VAP、VAPペプチド複合体は、VAP、VAP、VAPにより修飾されたポリマー物質であって、このVAP、VAP、VAPペプチド複合体の構造は、VAP-ポリエチレングリコール-Z、VAP-ポリエチレングリコール-Z及び/又はVAP-ポリエチレングリコール-Zであり、Zはポリマー担体物質である。
【0028】
好ましくは、ポリマー担体物質は、リン脂質、ポリ乳酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸、及びポリカプロラクトンからなる群から選択される1つ又は2つ以上である。
【0029】
具体的には、スルフヒドリル化後、本発明のVAP、VAP又は文献に報告されているVAPは、ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスホエタノールアミン(PEG-DSPE)、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸(PEG-PLA)、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸-co-グリコール酸(PEG-PLGA)、ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトン(PEG-PCL)等のマレイミド官能基を含むポリマー担体物質を修飾することが可能であり、これらはVAP、VAP、VAP修飾リポソーム、ポリマーミセル、ポリマーディスク、及びナノ粒子等のナノ薬物送達系の構築に使用することができる。
【0030】
本発明の薬物送達系において、薬物送達系は、上述のVAP、VAP、VAPペプチド複合体を含む。好ましくは、薬物送達系は、リポソーム薬物送達系、ポリマーミセル薬物送達系、ポリマーディスク薬物送達系、及びナノ粒子薬物送達系である。
【0031】
好ましい実施形態として、本発明はまた、VAP、VAP、VAPペプチド複合体に加えて(1)診断薬及び/又は(2)抗腫瘍薬を含む、上述の薬物送達系を提供する。
【0032】
好ましくは、(1)の診断薬は、蛍光物質、近赤外色素、及び磁気共鳴造影剤からなる群から選択される1つ若しくは2つ以上である。より好ましくは、蛍光物質はフルオレセインであり、近赤外色素はCy7、IR820、DiRからなる群から選択される1つ若しくは2つ以上であり、及び/若しくは磁気共鳴造影剤はGd-DTPAである。並びに/又は(2)の抗腫瘍薬は、ドキソルビシン又はエピルビシン等のアントラサイクリン類、タキソール並びにドセタキセル及びカバジタキセル等のタキサン類、カンプトテシン及びヒドロキシカンプトテシン並びにイリノテカン等のカンプトテシン類、ビンクリスチン及びビノレルビン等のビンブラスチン類、ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、パルテノライド等のラクトン類、p53活性化ペプチド、メリチン、サソリ毒ペプチド及び抗菌ペプチド等のペプチド薬からなる群から選択される1つ若しくは2つ以上である。
【0033】
具体的には、本発明により設計したVAP、VAP、VAPにより修飾されたナノ薬物送達系は、ドキソルビシン又はエピルビシン等のアントラサイクリン類、タキソール並びにドセタキセル及びカバジタキセル等のタキサン類、カンプトテシン及びヒドロキシカンプトテシン並びにイリノテカン等のカンプトテシン類、ビンクリスチン及びビノレルビン等のビンブラスチン類、ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、パルテノライド等のラクトン類、p53活性化ペプチド、メリチン、サソリ毒ペプチド及び抗菌ペプチド等のペプチド薬を被包することが可能であり、フルオレセイン、Cy7、IR820、DiR、Gd-DTPA等の蛍光物質、近赤外色素、及び磁気共鳴造影剤等を被包することも可能である。
【0034】
本発明はまた、腫瘍を診断、追跡又は治療するための薬物又は医薬品の調製における、上述のVAP、VAPのペプチド、上述のVAP、VAP、VAPのペプチド複合体、上述の薬物送達系の使用を提供する。
【0035】
好ましくは、
腫瘍は、GRP78を高度に発現する腫瘍である。
【0036】
具体的には、本発明の第1の態様のVAP、VAP又は文献に報告されているVAPは、腫瘍の診断及び標的治療のための、GRP78を高度に発現する細胞及び組織を標的とする薬物又はナノ薬物送達系を媒介することができる。
【0037】
本発明はまた、腫瘍を診断、追跡、及び/又は治療するための併用製剤を提供し、この併用製剤は、上述のVAP、VAP、VAPペプチド複合体及び上述の薬物送達系からなる群から選択される1つ又は2つ以上の成分を含む。
【0038】
好ましくは、併用製剤はキットであり、及び/又は
腫瘍はGRP78を高度に発現する腫瘍である。
【0039】
腫瘍を診断、追跡、及び/又は治療する本発明の方法は、経口又は非経口経路を介して、上述のVAP、VAP、VAPペプチド複合体、上述の薬物送達系、及び上述の組合せから選択される1つ又は2つ以上の物質を有効量、患者に投与するステップを含む。
【0040】
好ましくは、腫瘍はGRP78を高度に発現する腫瘍であり、並びに/又は
好ましくは、経口若しくは非経口経路は、経口、注射、パッチ、スプレー、及び患者へ送達する他の既知の経路のうちの1つ若しくは2つ以上であり得る。有効量は、1つ又は2つ以上の症候の状態の治療、減少、緩和、軽減、除去に有効な量を含み得る。この状態は、治療されることが求められているか、或いは、状態は、回避されることが求められているか、さもなければ、臨床的に同定可能な好ましい変化が、状態又はその効果において生じるものである。
【0041】
本発明は、腫瘍標的化製剤の調製における上述のVAP、VAP、VAPのペプチドの使用を提供する。好ましくは、腫瘍標的化製剤は、GRP78を高度に発現する腫瘍を標的化するためのものであり、並びに/又は腫瘍標的化製剤は、腫瘍を診断、追跡及び/若しくは治療するための薬物、実験試薬及び/若しくは医薬品である。本発明は、VAPペプチド(SNTRVAP)修飾薬物複合体及びナノ薬物送達系を提供し、L型ペプチドが、インビボでの安定性に乏しく血中で分解され易いため、腫瘍標的化能が低下するという課題を対象とする。本発明は、高い安定性及びGRP78に対する高い親和性を有する、D型ペプチド標的化分子であるVAP(D型アミノ酸配列S)及びVAP(D型アミノ酸配列P)を提供して、その薬物複合体及び修飾ナノ薬物送達系を構築し、これにより、腫瘍の診断及び標的治療を達成して、インビボでより良い腫瘍標的化効果を得ることが可能である。
【0042】
具体的には、本発明では、高い安定性を有する、D型ペプチド標的化分子であるD型ペプチドVAP(D型アミノ酸配列S)及びVAP(D型アミノ酸配列P)を調製し、VAP(L型アミノ酸配列SNTRVAP)、VAP及びVAPにより薬物分子又はポリマー担体物質を修飾して、VAP薬物複合体及びVAP修飾ナノ薬物送達系を構築する。
【0043】
本発明では、D型ペプチド標的化分子であるVAP(D型アミノ酸配列S)及びVAP(D型アミノ酸配列P)を設計し、固相ポリペプチド合成技術により調製する。両ペプチドは、血清に対する高い安定性及びGRP78に対する高い親和性を有する。
【0044】
本発明では、システインと連結後、設計したVAP又はVAP、VAPは、マレイミド官能化造影物質(フルオレセイン等の蛍光物質、Cy7、IR820、DiR等の近赤外色素、Gd-DTPA等の磁気共鳴造影剤、99mTc-DTPA等のX線造影剤等)と分子中でスルフヒドリル反応することにより複合体を形成することができる。
【0045】
本発明では、設計したVAP又はVAP、VAPは、マレイミドヒドラジン誘導体の反応によりpH感受性ヒドラゾン結合を形成するペプチド薬複合体(ドキソルビシン又はエピルビシン及びケトン若しくはアルデヒド基を含む他の薬物を含む)、又は3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸誘導体の反応によりジスルフィド結合を形成するペプチド薬複合体(パクリタキセル、ドセタキセル、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、ビンクリスチン、エトポシド、ゲムシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、テニポシド、モリチニブ、エポチロン、ビノレルビン、アクチノマイシンD、ミトキサントロン、アントラキノン、マイトマイシン、ブレオマイシン、イリノテカン及びヒドロキシ又はアミノを含む他の薬物を含む)、又はドパミン及び薬物のホウ酸基の反応によりpH感受性ホウ酸エステルを形成するペプチド薬複合体(ボルテゾミブ及びホウ酸基を含む他の薬物を含む)、又は固相合成により直接アミド結合を形成するペプチド薬複合体(p53活性化ペプチド、抗菌ペプチド、ペプチド毒素及び他のペプチド薬を含む)を含む薬物を修飾することができる。
【0046】
本発明では、システインと連結後、本発明のVAP、VAP又は文献に報告されているVAPは、ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスホエタノールアミン(PEG-DSPE)、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸(PEG-PLA)、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸-co-グリコール酸(PEG-PLGA)、ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトン(PEG-PCL)等のマレイミド官能基を含むポリマー担体物質を修飾することが可能であり、これらはVAP、VAP、VAPにより修飾された、リポソーム、ポリマーミセル、ポリマーディスク、及びナノ粒子等のナノ薬物送達系の構築に使用することができる。
【0047】
本発明では、VAP、VAP、VAPにより修飾されたナノ薬物送達系は、ドキソルビシン又はエピルビシン等のアントラサイクリン類、タキソール並びにドセタキセル及びカバジタキセル等のタキサン類、カンプトテシン及びヒドロキシカンプトテシン並びにイリノテカン等のカンプトテシン類、ビンクリスチン及びビノレルビン等のビンブラスチン類、ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、パルテノライド等のラクトン類、p53活性化ペプチド、メリチン、サソリ毒ペプチド及び抗菌ペプチド等のペプチド薬等を被包する。或いは、これはまた、フルオレセイン、Cy7、IR820、DiR等の近赤外色素、磁気共鳴造影剤Gd-DTPA等の造影物質等を被包することが可能である。
【0048】
本発明のVAP、VAP及びVAPは、グルコース調節タンパク質GRP78を高度に発現する細胞又は組織を標的とする、腫瘍の診断及び標的治療のための、薬物又はナノ薬物送達系を媒介することができる。
【0049】
本発明は、VAP及びVAPの調製及び特性評価と、前述のVAP、VAP及びVAP修飾薬物複合体の物質的根拠と、腫瘍診断及び治療薬を調製するためのナノ薬物送達系とを提供し、以下を含む、インビボでのVAP、VAP、及びVAP媒介能動的標的化の実験を実行する。
【0050】
1.VAP、VAP-Cys及びこれらの蛍光誘導体(VAP-フルオレセイン、VAP-Cy7)の合成
VAP、VAP-Cys、VAP、VAP-Cys、VAP、VAP-Cysを固相合成により調製した。VAP-フルオレセイン、VAP-フルオレセイン、VAP-フルオレセイン、VAP-Cy7、VAP-Cy7、VAP-Cy7をマレイミド基のスルフヒドリル基とのマイケル付加反応により合成した。生成物の特性をHPLC及びMSにより評価した。
【0051】
2.VAP安定性及び受容体親和性の評価
VAP及びVAPの血清安定性、グルコース調節タンパク質GRP78に対する結合能、並びにGRP78高発現細胞による細胞取込みを検討した。VAP、VAP及びVAPを、マウス血清と共に37℃でそれぞれインキュベートし、種々の時点でペプチドの濃度を測定して安定性を比較した。表面プラズモン共鳴法を使用してVAP、VAP及びVAPのGRP78に対する結合能を評価し、GRP78高発現細胞(例えば、ヒト臍帯静脈内皮細胞、HUVEC)及びモデル腫瘍細胞(例えば、神経膠腫細胞、U87)のインビトロ標的化能を比較し、VAP-フルオレセイン、VAP-フルオレセイン、VAP-フルオレセインについてインビトロ3D腫瘍凝集塊(tumor spheroid)モデルにおける取込み能を比較した。
【0052】
3.VAP薬物複合体の調製
VAP、VAP及びVAPは、システインと連結後、薬物のマレイミドヒドラジン誘導体と反応して、pH感受性ヒドラゾン結合を含むペプチド薬物複合体を形成する。関与する薬物は、ドキソルビシン及びエピルビシン等のケトン又はアルデヒド基を含む薬物を含む。
【0053】
VAP、VAP及びVAPは、システインと連結後、薬物の3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸誘導体と反応して、ジスルフィド結合を含むペプチド薬物複合体を形成する。関与する薬物は、ヒドロキシ基又はアミノ基を含む、パクリタキセル、ドセタキセル、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、ビンクリスチン等を含む。
【0054】
VAP、VAP及びVAPは、ドパミンと連結後、薬物のホウ酸基と反応して、pH感受性ホウ酸を含むペプチド薬物複合体を形成する。関与する薬物は、ボルテゾミブ等のホウ酸基を含む薬物を含む。
【0055】
VAP、VAP及びVAPは、ペプチド薬を用いて固相合成により直接縮合して融合ペプチドを形成する。関与する薬物は、p53活性化ペプチド、抗菌ペプチド、ペプチド毒素等のペプチド薬を含む。
【0056】
4.VAP-ドキソルビシン複合体のインビボ薬力学及び薬物動態
システインと連結後、ドキソルビシンマレイミドヒドラジン誘導体(MAL-DOX)でVAPを縮合して、VAP-ドキソルビシン複合体(VAP-DOX)を形成した。U87皮下腫瘍を移植したヌードマウスモデルに尾静脈を介して薬物を投与し、腫瘍容積、腫瘍重量及び腫瘍阻害率により抗腫瘍効果を評価した。U87頭蓋内腫瘍を移植したヌードマウスモデルに尾静脈を介して薬物を投与し、インビボでの薬物の抗腫瘍効果を評価する指標として生存期間中央値を使用した。マウスの尾に静脈内注射した後、インビボでの薬物動態曲線及び分布を蛍光法により検討した。
【0057】
5.VAP-PEG-PLAミセル送達系の構築及び特性評価
初めに、VAP、VAP及びVAP修飾ポリマー物質であるVAP-PEG-PLA、VAP-PEG-PLA及びVAP-PEG-PLAを合成した。物質の合成は、システイン連結ペプチドの遊離スルフヒドリル基とMal-PEG-PLA中のマレイミド基との反応により達成した。Mal-PEG-PLAをアセトニトリル中に溶解し、回転蒸発させて薄膜を形成し、次いで、PBS(pH8.0)を含むペプチドを加えてVAP-PEG-PLA、VAP-PEG-PLA及びVAP-PEG-PLAを調製した。
【0058】
次に、VAP、VAP及びVAP修飾ミセル(VAP-ミセル、VAP-ミセル、VAP-ミセル)を別々に調製した。一定量のVAP-PEG-PLA、mPEG-PLA及び薬物(クマリンC6、DiR又はパクリタキセル)を用いて製膜法によりミセルを調製し、動的光散乱法(DLS)により特性を評価して平均サイズ及び多分散指数(PDI)を確認した。
【0059】
6.VAP-ミセルのインビトロ及びインビボ腫瘍標的化評価
インビトロにおけるVAP-ミセル/C6、VAP-ミセル/C6、VAP-ミセル/C6及びmPEG-ミセル/C6のU87細胞、HUVEC細胞及びU87腫瘍凝集塊への取込みを検討した。
【0060】
VAP-ミセル/DiR、VAP-ミセル/DiR、VAP-ミセル/DiR及びmPEG-ミセル/DiRを、U87皮下腫瘍を移植したヌードマウスモデルに尾静脈を介して投与し、種々の群の腫瘍内分布を各時点で比較した。
【0061】
7.VAP-ミセル/PTXのインビボ抗腫瘍効果の評価
VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX及びmPEG-ミセル/PTX、タキソールの臨床用調製物及び生理食塩水を、U87皮下腫瘍を移植したヌードマウスモデルに静脈を介して投与し、種々のパクリタキセルの処方のインビボにおける抗腫瘍効果を、腫瘍容積、腫瘍重量、腫瘍細胞アポトーシス、血管新生の数及び血管擬態により評価した。
【0062】
本発明は、VAP及びVAPの調製及び特性評価と、前述のVAP、VAP及びVAP修飾薬物複合体の物質的根拠と、腫瘍診断及び治療薬を調製するためのナノ薬物送達系とを提供する。本発明の実験結果は、VAP、VAP及びVAPがすべて、インビボにおいて能動的腫瘍標的化を媒介することが可能であり、VAP及びVAPは、VAPと比較して、より良い安定性を有し、したがって、これらはインビボにおいて、より良い能動的腫瘍標的化効果を達成したことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1VAPのHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフィーの方法:カラム(YMC、C18):150×4.6mm;移動相A:水(0.1%トリフルオロ酢酸を含む)、移動相B:アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸を含む);溶出手順:5%B~65%Bで0~30分;流速:0.7mL/分;カラム温度:40℃;検出:UV214nm、保持時間:11.1分。ESI-MS:743.5、理論的分子量に従う。
図2VAP-CysのHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフの方法は上記と同様であり、保持時間は12.0分であった。ESI-MS:846.5、理論的分子量に従う。
図3VAPのHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフの方法は上記と同様であり、保持時間は10.8分であった。ESI-MS:743.5、理論的分子量に従う。
図4VAP-CysのHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフの方法は上記と同様であり、保持時間は11.5分であった。ESI-MS:846.5、理論的分子量に従う。
図5VAPのHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフの方法は上記と同様であり、保持時間は9.5分であった。ESI-MS:743.5、理論的分子量に従う。
図6VAP-CysのHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフの方法は上記と同様であり、保持時間は9.6分であった。ESI-MS:846.5、理論的分子量に従う。
図7VAP-フルオレセインのHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフの方法は上記と同様であり、保持時間は15.3分であった。ESI-MS:1274.4、理論的分子量に従う。
図8VAP-フルオレセインのHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフの方法は上記と同様であり、保持時間は16.9分であった。ESI-MS:1274.4、理論的分子量に従う。
図9VAP-フルオレセインのHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフの方法は上記と同様であり、保持時間は16.5分であった。ESI-MS:1274.4、理論的分子量に従う。
図10VAP-Cy7のHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフの方法は上記と同様であり、保持時間は26.5分であった。ESI-MS:1535.8、理論的分子量に従う。
図11VAP-Cy7のHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフの方法は上記と同様であり、保持時間は26.5分であった。ESI-MS:1535.8、理論的分子量に従う。
図12VAP-Cy7のHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフの方法は上記と同様であり、保持時間は26.5分であった。ESI-MS:1535.8、理論的分子量に従う。
図13VAP-DOXのHPLC及びESI-MSスペクトルを示すグラフである。クロマトグラフの方法は、移動相において0.1%のトリフルオロ酢酸を0.1%のギ酸に置き換えることを除いて上記と同様であり、保持時間は15.5分であった。ESI-MS:1599.6、理論的分子量に従う。
図14VAP-PEG3000-PLA2000VAP-PEG3000-PLA2000及びVAP-PEG3000-PLA2000H-NMRスペクトルを示すグラフである。Mal-PEG-PLAの核磁気共鳴スペクトルにより、マレイミドのピークが6.7ppmで示されたが、VAP-PEG-PLAの核磁気共鳴スペクトルにおいてピークは消失し、これによりMal-PEG-PLAのマレイミド基が完全に反応したことが示された。
図15VAP、VAP及びVAPの血清安定性を示すグラフである。グラフの垂直の縦座標は、インタクトなポリペプチドの残留率である。50%のマウス血清においてVAP及びVAPの安定性が、VAPのそれよりも有意に高くなることを理解することができる。インキュベーション2時間後、VAPは完全に分解されたが、VAP及びVAPは、ほとんど分解されなかった。
図16VAP、VAP及びVAPのGRP78に対する結合能を示すグラフである。VAP、VAP及びVAPは、GRP78に対する類似の結合能を有し、KD値はそれぞれ4.010μM及び5.223μM、2.696μMであり、VAP及びVAPでは、VAPよりもわずかに弱い。3つのペプチドの解離パターンは類似しており、Kd値はそれぞれ0.02091 1/s、0.02826 1/s及び0.01898 1/sである。
図17】GRP78の細胞内分布を示す画像である。GRP78は、腫瘍細胞U87及びHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞、Human Umbilical Vein Endothelial Cell)の細胞膜上及び血漿中では広範に分布するが、HEK293(正常細胞)の膜上では分布せず、血漿中では分布は狭小である。
図18】神経膠腫細胞U87によるフルオレセイン標識ペプチドの取込みを示す図である。図A及び図Bは、4時間、U87細胞と相互作用する、フルオレセイン標識VAP、VAP及びVAPのレーザー共焦点顕微鏡写真及びフローサイトメトリー検出結果を示す。VAP、VAP及びVAPのU87による取込みが、遊離のフルオレセインの取込みよりも有意に高くなっており、VAP及びVAPの取込みにおいて有意差はなく、これらの取込みは、VAPよりもわずかに弱いことを示す。
図19】HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)によるフルオレセイン標識ペプチドの取込みを示す図である。図A及び図Bは、4時間、HUVEC細胞と相互作用する、フルオレセイン標識VAP、VAP及びVAPのレーザー共焦点顕微鏡写真及びフローサイトメトリー検出結果を示す。VAP、VAP及びVAPのHUVEC細胞による取込みが、遊離のフルオレセインの取込みよりも有意に高くなっており、VAP及びVAPの取込みにおいて有意差はなく、これらの取込みは、VAPよりもわずかに弱いことを示す。
図20】U87腫瘍凝集塊によるフルオレセイン標識ペプチド及びVAP-ミセル/C6の取込みを示す画像である。画像は、U87腫瘍凝集塊によるフルオレセイン標識ペプチド及びVAPミセルのそれぞれの取込みを示す。フルオレセイン標識ペプチド及びVAPミセルのそれぞれが、U87腫瘍凝集塊により良好に取り込まれ、これらの取込みは、FAM及び単純なミセルとは有意に異なることが画像から理解することができる。
図21VAP、VAP及びVAPの競合的阻害を示すグラフである。VAP、VAP及びVAPが、お互いを完全に阻害し得ることが理解可能であり、3つのポリペプチドすべてが、GRP78タンパク質の同じ部位に結合することを証明する。
図22】皮下移植腫瘍におけるCy7標識ペプチドの分布を示す図である。図Aは、U87皮下腫瘍を移植したヌードマウスにおける1時間のCy7標識ペプチド注射後の腫瘍のエクスビボ蛍光画像を示す。図Bは、投与後各時点での蛍光の半定量的結果を示す。図Cは、腫瘍及び臓器におけるエクスビボ蛍光画像を示す。図Dは、腫瘍における蛍光強度のエクスビボ半定量的分析である。腫瘍におけるCy7標識VAP、VAP及びVAPの蓄積は、遊離のCy7の蓄積よりも有意に高かった(***p<0.001)。腫瘍標的化効果はVAP≒VAP>VAPである。
図23VAP-DOXの皮下腫瘍増殖の阻害を示す図である。図Aは、ヌードマウスにおける各群の腫瘍容積の時間による変動を示す曲線である。生理食塩水の群と比較して、投与の各群では、腫瘍の増殖が阻害された。同じDox用量では、VAP-DOXの効果は、DOX及びMAL-DOXの効果よりも有意に良好であり、RGD-DOXの効果よりも明白に良好であった。図Bは、ヌードマウスを犠死させ、腫瘍組織を採出した後の秤量の結果及び統計分析を示す。図Cは、エクスビボ腫瘍組織の写真である。VAP-DOX群の腫瘍サイズ及び腫瘍重量が、同じDox用量の他の群の腫瘍サイズ及び腫瘍重量よりも有意に低かったことを理解することができる。
図24VAP-DOXにより処理した頭蓋内腫瘍を担持するヌードマウスモデルの生存曲線を示すグラフである。PBS群、DOX群、MAL-DOX群、VAP-DOX群(高、中、低用量)及びVAP群の平均生存期間はそれぞれ36、36、48、58、52、48.5及び45.5日であった。結果は、他の群と比較して、VAP-DOX群の頭蓋内腫瘍を担持するヌードマウスモデルの生存期間が最も持続し、低用量のVAP-DOXが、4倍高用量のMAL-DOXと同じ抗脳神経膠腫効果を有したことを示した。
図25】マウスにおけるVAP-DOXの薬物動態曲線及び分布を示すグラフである。図Aは薬物動態曲線を示し、図Bはマウスの主要臓器における分布を示す。結果は、VAP-DOXのAUCが、MAL-DOXのAUCよりも有意に低くなったが、遊離のDOXのAUCよりも有意に高くなったことを示した。さらに、インビボの主要臓器における分布から、VAP-DOXにより心臓における薬物の分布を有意に減少させることができ、これによりドキソルビシンの心臓に対する副作用が減少し得る。
図26】皮下腫瘍におけるDiR負荷VAPミセルの分布を示す画像である。図Aは、尾静脈注射24時間後のインビボ蛍光画像を示す。左から右に示すのは、PBS群、mPEG-ミセル/DiR群、VAP-ミセル/DiR群、VAP-ミセル/DiR群及びVAP-ミセル/DiR群である。図Bは、臓器の蛍光画像である。結果は、VAP又はVAP修飾ミセルが、腫瘍部位をより効果的に標的としたことを示す。
図27】パクリタキセル負荷ミセルの粒子サイズを示すグラフである。グラフは、各パクリタキセルミセルの処方の粒子サイズ分布を示す。グラフに示すように、種々の処方間でサイズの有意差はなかった。
図28】パクリタキセル負荷ミセルのU87及びHUVEC細胞に対する阻害曲線を示すグラフである。グラフA及びグラフBは、mPEG-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX及びタキソールのU87細胞及びHUVEC細胞に対する阻害曲線をそれぞれ示す。グラフAは、mPEG-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX及びタキソールのU87細胞に対するIC50が、4時間投与し72時間培養した後に0.73、0.09、0.12、0.59及び0.75μMであることを示す。すべてのミセルにおいて、インビトロでU87細胞の増殖が阻害可能である。VAP-ミセル/PTX及びVAP-ミセル/PTXの活性は、VAP-ミセル/PTXの活性のそれぞれ6.56及び4.92倍であった。グラフBは、mPEG-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX及びタキソールのHUVEC細胞に対するIC50が、4時間投与し72時間培養した後に0.52、0.04、0.04、0.23及び0.74μMであったことを示す。すべてのミセルにおいて、インビトロでHUVEC細胞の増殖が阻害可能である。VAP-ミセル/PTX及びVAP-ミセル/PTXの活性は、VAP-ミセル/PTXの活性の5.75倍であった。
図29】パクリタキセル負荷ミセルによる血管新生形成のインビトロ阻害を示す画像である。画像は、mPEG-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX及びタキソールのインビトロ血管新生モデルに対する阻害を、血管新生形成をより有意に阻害したVAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX及びVAP-ミセル/PTXと比較して示す。
図30】パクリタキセル負荷ミセルによる血管擬態形成のインビトロ阻害を示す画像である。画像は、mPEG-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX及びタキソールの血管擬態モデルに対する阻害を、血管擬態形成をより有意に阻害したVAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX及びVAP-ミセル/PTXと比較して示す。
図31】パクリタキセル負荷ミセルの皮下腫瘍増殖の阻害を示すグラフである。グラフAは、ヌードマウスにおける各群の腫瘍容積の経時変化を示す曲線であり、それぞれの投与群において腫瘍の増殖が阻害された。VAP-ミセル/PTX及びVAP-ミセル/PTXでは、VAP-ミセル/PTXと著しく異なる(n=8、***p<0.001)。ヌードマウスを犠死させた後、採取した腫瘍を秤量し、統計的に分析した(グラフB)。VAP-ミセル/PTX及びVAP-ミセル/PTX群の腫瘍重量は、VAP-ミセル/PTXの腫瘍重量よりも有意に小さかった(n=8、***p<0.001)。
図32】TUNEL染色の結果を示す画像である。画像は、腫瘍アポトーシスを促進する、mPEG-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTXのTUNEL染色画像(バー=50μm)を示し、アポトーシス細胞は、黄褐色又は褐色の核を示した。
図33】CD31/PAS二重染色結果を示す画像である。画像は、血管新生を阻害する、mPEG-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTXのCD31/PAS染色画像(バー=100μm)を示し、新生血管細胞の核は、黄褐色又は褐色である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明は以下の実施例によりさらに理解されるが、本発明は下記の説明の範囲に制限されない。
【実施例1】
【0065】
VAP、VAP-フルオレセイン、VAP-Cy7、VAP-薬物、VAP-PEG-PLAの合成及び特性評価
1.VAP、VAP及びVAP、VAP-Cys、VAP-Cys及びVAP-Cysの合成及び特性評価
D型アミノ酸からなる、設計したVAP(配列S)、VAP-Cys(配列S)及びVAP(配列P)、VAP-Cys(配列C)並びにL型アミノ酸からなる、VAP(配列SNTRVAP)及びVAP-Cys(配列SNTRVAPC)を固相ペプチド合成により合成した。
【0066】
具体的方法:標準Boc基固相ペプチド合成方法により、アミノ酸をPAM樹脂と順次共役させ、HBTU/DIEAを縮合剤として及びTFAを脱保護剤として使用して反応を実行した。すべてのアミノ酸を共役後、P-クレゾールを含むフッ化水素により樹脂を切り出し、氷浴中で1時間撹拌した。フッ化水素を減圧下で除去し、沈殿物を形成して、氷冷したジエチルエーテルで3回洗浄した。沈殿物を20%のアセトニトリル中に再溶解し、ろ液を採取し、次いで、回転蒸発させて粗ペプチド溶液を得た。分取HPLCによりアセトニトリル/水(0.1%TFAを含む)を溶離剤として用いて粗ペプチドを精製した。VAP、VAP-Cys、VAP、VAP-Cys、VAP及びVAP-Cysの純度及び分子量(Mw)についてHPLC及びESI-MSにより特性を評価した。HPLCスペクトル及び質量スペクトルを図1、2、3、4、5及び6に示す。
【0067】
2.VAP-フルオレセイン及びVAP-Cy7の合成及び特性評価
上記のステップで得られたVAP-Cys、VAP-Cys又はVAP-Cysを0.1MのPBS溶液(pH7.2)中に溶解し、フルオレセイン-5-マレイミドをDMF中に溶解した。混合後、反応液を磁気的に撹拌し、HPLCによりモニターした。VAP-Cys、VAP-Cys又はVAP-Cysが完全に反応すると反応が停止し、分取HPLCによりアセトニトリル/水(0.1%TFAを含む)を溶離剤として用いて反応液を精製、凍結乾燥してVAP-フルオレセイン、VAP-フルオレセイン又はVAP-フルオレセインを得た。HPLCスペクトル及び質量スペクトルを図7、8、及び9に示す。
【0068】
VAP-Cy7の調製方法は上記と同様である。HPLCスペクトル及び質量スペクトルを図10、11、及び12に示す。
【0069】
3.VAP-DTPA-Gd及びVAP-DTPA-99mTcの調製
DMF中に溶解したマレイミド-DTPAを混合し、VAP-Cys、VAP-Cys又はVAP-Cys含有PBS溶液と共に撹拌して上記のように反応させた。分取HPLC及び乾燥凍結を適用して純粋なVAP-DTPA、VAP-DTPA又はVAP-DTPAを得、その後、Gd又は99mTcでキレート化してVAP-DTPA-Gd又はVAP-DTPA-99mTcを得た。
【0070】
4.VAP-薬物複合体の調製
ケトン又はアルデヒド基を含む薬物と共役するVAPの例としてVAP-ドキソルビシン複合体を調製した。チオール化VAP(VAP又はVAP又はVAP)9.4mgをPBS(0.1mM、pH7.0)3mL中に溶解し、10倍モル量のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を加え、4℃で20分間撹拌した。次いで、4倍モル量のドキソルビシンマレイミドヒドラジン誘導体(MAL-DOX)を加え、室温、暗所で1時間反応させた。分取HPLCにより反応液を精製し、凍結乾燥してVAP又はVAP又はVAP-ドキソルビシン複合体を得た。HPLC及びMSにより複合体の特性を評価した。結果を図13に示す。
【0071】
ヒドロキシ又はアミノ基をジスルフィド結合により含む薬物と共役するVAPの例としてVAP-パクリタキセル複合体を調製した。パクリタキセル200mgをクロロホルム10mL中に溶解し、0~5℃まで冷却して、DCCを39.99mg及び3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸を60.4mg連続的に加え、次いで、反応液の温度を室温まで上昇させて一晩反応させた。反応液をろ過し、カラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH=50:1~15:1、V/V溶出)により精製してパクリタキセル3-(2-ピリジニル)-プロピオン酸誘導体を得た。パクリタキセル3-(2-ピリジニル)-プロピオン酸誘導体をDMF5mL中に溶解し、1.5倍モル量のVAP-CysをPBS/DMF中に溶解した。パクリタキセル3-(2-ピリジニル)-プロピオン酸誘導体をチオールペプチド溶液に滴加し、溶液のpHを4~5に維持して室温で6時間反応させた。分取HPLC精製及び凍結乾燥によりVAP-パクリタキセル複合体を得た。
【0072】
ホウ酸基を含む薬物と共役するVAPの例としてVAP-ボルテゾミブ複合体を調製した。VAPの合成及び窒素末端におけるトリフルオロ酢酸によるBoc脱保護に従ってアミノ酸を樹脂と順次共役後、3倍モル量の無水コハク酸をDMF中に溶解したDIEAと共に加え、室温で30分間反応させた。樹脂を洗浄後、5倍モル量のトリメチルクロロシランを加え、室温で1時間反応させてドパミンを保護し、HBTU/DIEAを縮合剤として使用した。フッ化水素により樹脂を切り出し、VAP-ドパミン誘導体を分取HPLCにより精製した。VAP-ドパミン誘導体をボルテゾミブとpH7.4の緩衝液中1:1のモル比で混合してVAP-ボルテゾミブ複合体を得た。
【0073】
ペプチド薬と共役するVAPの例としてVAP-PMIを調製した。VAP-薬物複合体を固相ペプチド合成方法により直接得た。具体的方法:VAP-PMIポリペプチド配列の設計後、VAPの調製と同様の方法によりVAP-PMIのアミノ酸を樹脂と順次共役させ、フッ化水素による切出し及び精製の後にVAP-PMI融合ペプチドを得た。
【0074】
5.VAP-PEG-PLAの合成及び特性評価
ペプチドの遊離スルフヒドリル基とMal-PEG-PLA中のマレイミド基との反応によりポリマー物質の合成を達成した。Mal-PEG-PLA40mgをアセトニトリル5mL中に溶解し、回転蒸発させて膜を形成し、PBS(pH8.0、0.2M)3mLを加えて水和し、37℃でミセルを形成した。次いで、8時間以内にVAP-Cysを9.6mg加えて一晩反応させた。過剰なVAP-Cysを透析により除去し、HPLCにより反応を検出した。VAP-PEG-PLAを凍結乾燥し、H-NMRにより特性を評価した(図14)。
【実施例2】
【0075】
VAPの血清安定性の検討
VAP、VAP及びVAPそれぞれ1mg/mLを蒸留水中に溶解し、次いで0.1mLの各VAP溶液を25%のマウス血清0.9mL中に加え、37℃でインキュベートした。0及び15分、0.5、1、2及び4時間の時点で溶液100μLを採り出し、トリクロロ酢酸(TCA)20μLを沈殿した血清タンパク質に加え、4℃で20分間静置後、溶液を12,000rpmで10分間遠心分離した。上清20μLを採り出してHPLC分析を行った。血清安定性の結果(図15)により、VAP及びVAPがVAPよりも良好な血清安定性を有することが示された。
【実施例3】
【0076】
VAPのグルコース調節タンパク質GRP78に対する結合能の実験
ビアコアシステムによりプレ結合分析を実施し、CM5チップに結合するGRP78の最適pHとしてpH5.0を選択した。組換えヒトGRP78をCM5チップと共役し、RU値を所定の値に到達させた。VAP、VAP、及びVAP溶液を0.3125、0.625、1.25、2.5、5、10及び20μMの濃度でそれぞれ調製した。低濃度から高濃度で試料を注入した。VAP、VAP及びVAPのタンパク質に対する結合能をBiacore T200 Evaluationソフトウェアにより分析し、K値及びKd値をそれぞれ算出した(図16)。
【実施例4】
【0077】
GRP78の細胞内分布の検討
3種の細胞(U87、HUVEC及びHEK293)をGRP78分布実験用に選択し、細胞中のGRP78の分布を膜破裂の有無により検討した。細胞を共焦点顕微鏡皿内に播種し、PBSで3回洗浄して、10μMのDIOパラホルムアルデヒド溶液で8分間固定した。1%のBSAにより37℃で30分間ブロッキングし、PBSで3回洗浄した後、1%のBSAで希釈した抗GRP78抗体と共に細胞を加え、37℃で4時間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで2回洗浄し、1%のBSAで希釈した二次抗体と共に加え、37℃で2時間インキュベートし、PBSで2回、毎回5分間洗浄した。DAPIで10分間染色、PBSで3回洗浄し、グリセリンで封着した後、レーザー共焦点顕微鏡で細胞を観察した。結果を図17に示す。
【実施例5】
【0078】
VAPアッセイにおけるインビトロ細胞標的化
1.VAPの神経膠腫細胞U87に対するインビトロ標的化
単層培養した対数増殖期の神経膠腫細胞(U87細胞)を0.25%のトリプシンで消化した。10%のウシ胎仔血清を含むDMEM培養液を使用して単一細胞懸濁液を調製する。培養プレートを二酸化炭素インキュベーターに移し、1mLのウェル容積の12ウェルプレート中に細胞を1ウェル当り1×10細胞の密度で37℃、5%CO及び飽和湿度で一晩培養した。次いで、10%のウシ胎仔血清を含むDMEM培養液で調製した、5μMの濃度のFAM、VAP-フルオレセイン、VAP-フルオレセイン及びVAP-フルオレセイン溶液とDMEM培地を交換し、37℃で4時間インキュベートし、上清を吸引した。細胞をPBS溶液で3回洗浄し、ホルムアルデヒドで固定し、DAPIで染色した。共焦点レーザー顕微鏡により蛍光画像を取得した。細胞内移行の写真を図18Aに示す。細胞をPBSで3回洗浄し、次いで、フローサイトメトリーにより検出した。フローサイトメトリー分析の結果を図18Bに示す。
【0079】
2.VAPのヒト臍帯静脈内皮細胞に対するインビトロ標的化
単層培養した対数増殖期のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC細胞)を上記のように試験した。内部移行写真を図19Aに示し、フローサイトメトリー分析の結果を図19Bに示す。
【0080】
3.インビトロにおけるVAPのU87腫瘍凝集塊に対する標的化
2%の低分子量アガロース溶液を48ウェルプレートに1ウェル当り150μLで熱いうちに加え、室温に置いて冷却及び固化させた。次いで、U87細胞懸濁液400μLを各ウェルに播種し、細胞密度を2×10細胞/ウェルとした。二酸化炭素インキュベーター内で37℃、5%CO及び飽和湿度で7日間インキュベートすることにより腫瘍凝集塊を確立した。次いで、10%のウシ胎仔血清を含むDMEM培養液で調製した、5μMの濃度のFITC、VAP-フルオレセイン、VAP-フルオレセイン及びVAP-フルオレセイン溶液と培養液を交換し、37℃で4時間置き、上清を吸引した。腫瘍凝集塊をPBSで3回洗浄し、パラホルムアルデヒドで15分間固定し、次いで、共焦点顕微鏡により観察した。写真を図20Aに示す。
【0081】
4.VAP相互競合阻害試験
9つの群(ブランク対照群、VAP-フルオレセイン、VAP-フルオレセイン、VAP-フルオレセイン、VAP-フルオレセイン(+VAP)、VAP-フルオレセイン(+VAP)、VAP-フルオレセイン(+VAP)、VAP-フルオレセイン(+VAP)、VAP-フルオレセイン(+VAP)、VAP-フルオレセイン(+VAP)、VAP-フルオレセイン(+VAP)、VAP-フルオレセイン(+VAP)、VAP-フルオレセイン(+VAP))を各群につき3つのチューブを用いて設定して、VAPペプチド間の相互競合阻害を検討した。U87細胞をトリプシンにより消化してEPチューブに移し、PBSで3回洗浄してトリプシンを除去し、4℃で20分間前処理した。調製したペプチド溶液(非蛍光標識)をまた4℃に置いて低温で前処理し、次いで、ペプチド溶液を細胞と混合し、2時間刺激を与えて細胞表面の受容体タンパク質を飽和させた。次いで、蛍光物質で標識したペプチド溶液を加えた。4℃で一晩静置後、細胞をPBSで3回洗浄し、フローサイトメトリーにより分析した(図21に示す)。
【実施例6】
【0082】
VAPアッセイにおけるインビボ腫瘍標的化
初めに、皮下腫瘍動物モデルを次のように構築した。対数増殖期のU87細胞をトリプシンで消化し、次いで、3×10/mLの濃度の細胞懸濁液100μLをヌードマウスの右背側に播種した。マウスをSPFクラスに飼育し、腫瘍サイズを定期的に観察した。腫瘍サイズが200mmになると、壊死のない通常の腫瘍形状である腫瘍担持ヌードマウスを選定し、集団で試験した。Cy7並びにVAP-Cy7、VAP-Cy7及びVAP-Cy7溶液を1マウス当り0.15μmolの用量で腫瘍担持ヌードマウスモデルに尾静脈を介して注射した。2時間後、ヌードマウスを犠死させ、腫瘍を採取し、IVISイメージングシステムによりエクスビボ蛍光造影に露光した(図22Aに示す)。さらに、蛍光強度の半定量分析値を算出した(図22Bに示す)。
【実施例7】
【0083】
VAP-DOXの薬力学及び薬物動態の検証
1.U87皮下腫瘍の阻害効果試験
U87皮下腫瘍担持マウスモデルを構築し、腫瘍サイズが100mmになると、集団で試験した。皮下腫瘍担持モデルマウスに生理食塩水、DOX、MAL-DOX(高及び低用量)及びVAP-DOX(高及び低用量)並びにRGD-DOX(インテグリンリガンドc(RGDyK)及びMAL-DOXを用いてVAP-DOXによるものと同様の方法によって調製した薬物複合体)を5回投与し、各投与間の間隔は2日とした。DOXの総用量は、低用量の1.25mg/kgを除いて2.5mg/kgであった。腫瘍の長径(a)及び短径(b)をノギスにより1日おきに測定し、ヌードマウスの腫瘍容積を式により算出して腫瘍容積の経時変化曲線をプロットし、各群の統計的有意差を算出した。式:
V腫瘍容積 = 0.5 (a × b2)
により腫瘍容積を算出した。
【0084】
投与21日後、すべてのヌードマウスを犠死させ、採取した皮下腫瘍を秤量し、各群の統計的有意差及び腫瘍阻害率を算出した(図23)。
【0085】
2.頭蓋内神経膠腫の抗神経膠芽腫効果試験
ヌードマウスに麻酔し、定位固定装置で固定した後、ヌードマウスにおいて対数増殖期のU87細胞(各マウスについてPBS緩衝液5μL中に分散した5×10細胞)を右線条体内(前腸骨稜の前0.6mm、横方向1.8mm、及び深さ3mm)に移植することにより頭蓋内U87腫瘍担持モデルを確立した。裸のマウスの状態を定期的に観察した。移植10、13、16、19及び22日後にPBS、DOX、MAL-DOX、VAP、VAP-DOXを(高、中及び低用量で)それぞれマウスに尾静脈内投与した。DOXの総用量は、低用量の2.5mg/Kg及び中用量の5mg/kgを除いて10mg/Kgであった。VAPの用量は、高用量のVAP-DOXに含まれるVAPの量であった。マウスの生存期間を記録した(図24)。
【0086】
3.VAP-DOXの薬物動態試験
200μLのDOX、VAP-DOX及びMAL-DOX(10mg/kgのDOXを含む)をICRマウスに尾静脈を介してそれぞれ注射した。1、5、15、30及び45分、1、2、4及び6時間の時点で血液試料50μLを採取し、PBSで4倍に希釈した。これを蛍光物質Ex 485/Em 590により測定し、薬物濃度-時間曲線及び主組織における分布量をプロットした(図25)。
【実施例8】
【0087】
ミセルのインビトロ腫瘍凝集塊標的化能の評価
1.クマリン6負荷ミセルの調製
1mgのVAP-PEG-PLA、9mgのmPEG-PLA及び5μgのクマリン6(C6)をアセトニトリル2mL中に溶解し、減圧下(約0.085MPa)、37℃、水浴中で蒸発させて薄膜を形成した。これを生理食塩水2mLで水和させ、CL-4Bカラムクロマトグラフィーにより遊離のクマリンを除去してクマリン6負荷ミセル(VAP-ミセル/C6)を得た。
【0088】
2.VAP-ミセル/C6ミセルアッセイにおけるインビトロU87腫瘍凝集塊標的化
2%の低分子量アガロース溶液を1ウェル当り150μLで48ウェルプレートに熱いうちに加え、U87細胞を1ウェル当り2×10/400μLの密度で48ウェルプレートに播種した。二酸化炭素インキュベーター内で37℃、5%CO及び飽和湿度で7日間インキュベートした後に腫瘍凝集塊を形成した。次いで、10%のFBSを含むDMEM培養液で調製した、5ng/mLの濃度のミセル/C6、VAPミセル/C6、VAPミセル/C6及びVAPミセル/C6と培養液を交換した。37℃で4時間インキュベートした後、上清を吸引して腫瘍凝集塊をPBSで3回洗浄し、パラホルムアルデヒドで15分間固定し、次いで、共焦点顕微鏡を使用して造影した。写真を図20Bに示す。
【実施例9】
【0089】
VAPミセルのインビボ標的化の検証
1.DiR負荷ミセルの調製
VAP-PEG-PLAを1mg、mPEG-PLAを9mg及びDiRを1mg秤量し、クマリン6負荷ミセルの方法に従ってDiR負荷ミセル(VAP-ミセル/DiR)を調製した。
【0090】
2.VAP-ミセル/DiRのインビボ標的化の検証
100μLのPBS、mPEG-ミセル/DiR、VAP-ミセル/DiR、VAP-ミセル/DiR及びVAP-ミセル/DiRをそれぞれU87皮下腫瘍担持モデルヌードマウスに尾静脈を介して注射した。2、4、8、12及び24時間の時点でヌードマウスに麻酔し、ヌードマウスにおけるDiR蛍光の分布をIVISイメージングシステムにより記録して蛍光強度を半定量的に算出した(図26に示す)。
【実施例10】
【0091】
パクリタキセル負荷VAPミセルの抗神経膠腫効果のインビトロ評価
1.パクリタキセル負荷ミセルの調製及び特性評価
VAP-PEG-PLAを1mg、mPEG-PLAを9mg及びパクリタキセルを2mg秤量し、パクリタキセル負荷VAPミセル(VAP-ミセル/PTX)をクマリン6負荷ミセルの方法に従って調製した。粒子サイズ及び分布を図27に示す。
【0092】
2.抗神経膠腫効果のインビトロ評価
U87細胞を96ウェルプレートに4.0×10細胞/ウェルで播種した。24時間後、200μLの一連の濃度のVAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX及びmPEG-ミセル/PTX並びにタキソールと培養液を交換した。72時間後、MTT溶液20μLを各ウェルに加え、さらに4時間インキュベートした。培養液を廃棄し、DMSOを150μL加え、紫色の粒子が溶解するまで溶液を振盪した。マイクロプレートリーダーにより590nmで吸光度値を測定し、MTTアッセイにより細胞生存率を判定し、細胞生存率及び半致死量を算出した(図28に示す)。
【0093】
3.VAP-ミセル/PTXの血管新生に対する阻害アッセイ
Matrigel基質50μLを24ウェル培養プレートの各ウェル内に加え、37℃のインキュベーター内で30分間インキュベートして凝固させた。HUVEC細胞を0.25%のトリプシンで消化し、1μMのパクリタキセルVAPミセル又は遊離のパクリタキセル薬液を含むDMEM培地と混合して単一細胞懸濁液を調製し、1ウェル当り1×10細胞をプレコートした24ウェル培養プレート上に37℃、5%CO及び飽和湿度で培養した。12時間後、管形成を観察した(図29に示す)。
【0094】
4.VAPミセル/PTXによる血管擬態の阻害アッセイ
Matrigel基質50μLを24ウェル培養プレートの各ウェル内に加え、37℃のインキュベーター内で30分間インキュベートして凝固させた。U87細胞を0.25%のトリプシンで消化し、1μMのパクリタキセルVAPミセル又は遊離のパクリタキセル薬液を含むDMEM培地と混合して単一細胞懸濁液を調製し、1ウェル当り1×10細胞をプレコートした24ウェル培養プレート上に37℃、5%CO及び飽和湿度で培養した。12時間後、管形成を観察した(図30に示す)。
【実施例11】
【0095】
VAP-ミセル/PTXのインビボ抗神経膠腫効果アッセイ
1.インビボ抗神経膠腫効果アッセイ
U87皮下腫瘍動物モデルを構築し、腫瘍サイズが100mmになると、集団で試験した。100μlの生理食塩水、タキソール、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX、VAP-ミセル/PTX及びmPEG-ミセル/PTXを皮下腫瘍担持モデルマウスに3日おきに5回注射し、各投与間の間隔は2日とした。パクリタキセル総用量は25mg/kgであった。腫瘍の長径(a)及び短径(b)をノギスにより1日おきに測定し、ヌードマウスの腫瘍容積を式により算出して腫瘍容積の経時変化曲線をプロットし、各群の統計的有意差を算出した。式:
V腫瘍容積 = 0.5 (a × b2)
によりヌードマウスの各群の腫瘍容積を算出した。
【0096】
投与18日後(播種24日後)、すべてのヌードマウスを犠死させ、採取した皮下腫瘍を秤量し、各群の統計的有意差を算出した(図31に示す)。
【0097】
2.VAP-ミセル/PTXのプロアポトーシスアッセイ
投与完了後14日目に、腫瘍担持ヌードマウスの腫瘍を採取し、固定して凍結切片とし、腫瘍アポトーシスをTUNELにより検定した。細胞アポトーシスを検出するために行った、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼによるdUTP切断末端標識法(TUNEL)の手順を次に記載する。パラフィン切片を従来法により脱脂し、PBSで3回、毎回3分すすぎ、0.3%のH溶液を用いて室温で20分間処理し、20μg/mLのプロテイナーゼKにより37℃で20分間消化し、PBSで3回、毎回3分すすぎ、各切片に30μLのTUNEL溶液(TDT及びビオチン-dNTP)を加え、37℃で60分間置いた。陽性結果では、核が黄褐色又は褐色であり、核中の陽性の褐色粒子は、アポトーシス細胞であるとみなした。5つの拡大領域内のアポトーシス陽性細胞の数を光学顕微鏡下で連続的に計数した。領域内の陽性細胞の割合は、アポトーシス指数であり、結果を図32に示す。
【0098】
3.VAP-ミセル/PTXの血管新生アッセイにおける阻害
投与完了後14日目に、腫瘍担持ヌードマウスの腫瘍を採取、固定し、パラフィンに包埋して薄片を作製した。CD31免疫組織染色/過ヨウ素酸シッフ(PAS)二重染色を実施した。5つの拡大領域内のCD31陽性血管の数を光学顕微鏡下で連続的に計数した。結果を図33に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33