(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】容量性結合による本質的に安全な離間
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20220307BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20220307BHJP
G08C 17/06 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
H04L25/02 303Z
G08C19/00 M
G08C17/06
(21)【出願番号】P 2019547452
(86)(22)【出願日】2018-02-15
(86)【国際出願番号】 US2018018324
(87)【国際公開番号】W WO2018160363
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2019-10-24
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ストーン,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】キエルブ,ジョン
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-523699(JP,A)
【文献】実開昭57-173329(JP,U)
【文献】特開平09-008427(JP,A)
【文献】特開2000-163551(JP,A)
【文献】特開2016-072810(JP,A)
【文献】国際公開第98/44687(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0301690(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
G08C 19/00
G08C 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
本質的に安全な物理的離間仕様に準拠した厚さを有するプリント回路基板と、
前記プリント回路基板の両側面に配置され且つ第1のコンデンサを形成するように配設された第1の容量性プレート対であって、前記第1のコンデンサは、前記第1のコンデンサのための誘電材料を形成する前記プリント回路基板の絶縁層を有する第1の容量性プレート対と、
前記プリント回路基板の両側面に配置され且つ第2のコンデンサを形成するように配置された第2の容量性プレート対であって、前記第2のコンデンサは、前記第2のコンデンサのための誘電材料を形成する前記プリント回路基板の絶縁層を有する第2の容量性プレート対と、
前記第1及び第2のコンデンサに結合された変調器であって、入力信号周波数を有する入力信号を受信し、前記入力信号が低位状態にあるときに発振するように構成される発振回路を含み、前記入力信号よりも高い周波数を有する変調信号を提供するように構成されている変調器と、
前記第1及び第2のコンデンサに結合された復調器であって、前記変調信号を検出し、前記入力信号周波数を有する復調信号を提供するように構成されている復調器と、
を備えている、
上記装置。
【請求項2】
前記変調器は、前記入力信号よりも10倍から15倍の間の高い周波数を有する前記変調信号を提供するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の容量性プレート対の各々は、約0.20インチ×0.20インチのサイズを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の容量性プレート対の各々は、0.04平方インチの面積を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記プリント回路基板は、約0.2mmから約0.5mmの間の厚さを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のコンデンサは、約2.0pFの静電容量を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記プリント回路基板は、FR-4プリント回路基板材料で形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記発振回路は、マルチバイブレータである、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記入力信号は、約28kHzの周波数を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記復調器は、シュミットトリガバッファを駆動するトランジスタを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記復調器は、1.0pF未満のエミッタ容量を有するトランジスタを有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記プリント回路基板の両側面に配置され且つ第3のコンデンサを形成するように配設された第3の容量性プレート対をさらに備え、前記第3のコンデンサは、前記第3のコンデンサの誘電材料を形成する前記プリント回路基板の絶縁層を有する、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
産業環境において、制御システムは、産業プロセス及び化学プロセスなどの在庫を監視及び制御するために用いられる。通常、制御システムは、産業プロセスの重要な場所に分散され、プロセス制御ループによって制御室の制御回路に結合されたフィールド機器を用いてこれらの機能を実行する。「フィールド機器」という用語は、分散制御又はプロセス監視のシステム(産業プロセスの測定、制御、監視に使用される現在知られているか又は未だ知られていない全ての機器を含む)で機能を実行する機器を指す。通常、このようなフィールド機器は、比較的厳しい環境の屋外に設置されうるように、且つ温度、湿度、振動、及び機械的衝撃の気候学的に極端な条件に耐えうるように、フィールド硬化筐体を備えている。通常、フィールド機器は比較的低電力で動作する。例えば、比較的低電圧(12~42VDC)で動作する既知の4~20mAループから動作電力の全てを受け取るいくつかのフィールド機器が現在利用可能である。
【0002】
いくつかのフィールド機器は、トランスデューサを含む。トランスデューサは、物理的な入力に基づいて出力信号を生成する装置、又は入力信号に基づいて物理的な出力を生成する装置のいずれかを意味すると理解されている。通常、トランスデューサは、入力を異なる形式を有する出力に変換する。トランスデューサの種類には、さまざまな分析機器、圧力センサー、サーミスター、熱電対、ひずみゲージ、流量送信器、ポジショナー、アクチュエータ、ソレノイド、指示ライトなどが含まれる。
【0003】
通常、各フィールド機器はまた、プロセス制御ループを介してプロセス制御室と通信するために用いられる通信回路を含む。いくつかの設置において、プロセス制御ループはまた、フィールド機器に電力を供給するために、調整された電流及び/又は電圧をフィールド機器に供給するために用いられる。プロセス制御ループはまた、アナログ形式又はデジタル形式のデータを伝送する。
【0004】
従来から、アナログフィールド機器は、2線式プロセス制御電流ループによって制御室に接続され、各機器は単一の2線式制御ループにより制御部に接続されていた。2本のワイヤ間の電圧差は、アナログの場合は12~45ボルト、デジタルモードの場合は9~50ボルトの電圧範囲内に維持される。一部のアナログフィールド機器は、電流ループを流れる電流を、検知されたプロセス変数に比例する電流に変調することにより、制御室に信号を送信する。他のアナログフィールド機器は、制御室によって設定されたループを流れる電流の大きさに基づいて、制御室の制御の下でアクションを実行しうる。追加又は代替として、プロセス制御ループは、フィールド機器との通信のためにデジタル信号を伝送できる。
【0005】
フィールド機器が動作する環境は、引火性又は可燃性の物質の存在によってしばしば危険にさらされる。これらのエリアにおいては、部品の火花又は高温表面温度が、局所大気を発火させ爆発を伝搬させる可能性がある。これらのエリアは、危険な(分類された)エリアと呼ばれる。不要な発火を防ぐ方法として、本質的な安全仕様が、フィールド機器の限られたエネルギーと温度を確保する手段として開発された。本質的な安全要件を順守することは、たとえ障害状態であっても、回路又は機器自体が揮発性環境に点火できないことを確実にするのを助ける。本質的な安全要件の一例は、1988年10月にFactory Mutual Research社によって公布された「APPROVAL STANDARD INTRINSICALLY SAFE APARATUS AND ASSOCAITED APPARATUS FOR USE IN CLASS I, II AND III DIVISION 1 HAZARDOUS (CLASSIFIED) LOCATIONS, CLASS 3610(Class I、II、及びIIIの区分1の危険な分類された位置で使用するための本質的に安全な装置及び関連装置の承認された規格、クラス3610)」に記載されている。追加の又は代替の承認は、工業規格、例えば、カナダ規格協会(CSA)や欧州セネレック規格(European Cenelec Standards))などにも記載されている。
【0006】
本質的な安全基準に準拠するために使用できる1つの技術は、物理的な障壁で部品を離間させることである。離間の程度は、物理的な障壁を形成するために用いられる特定の材料と障壁が耐えなければならない電圧とに依存する。光アイソレータは、本質的な安全基準に従って離間されているならば、障壁(バリア)を横断してデータを送信するために使用されることが知られている。
【0007】
光アイソレータ(オプトアイソレータ又は光カプラとしても知られる)は、電磁スペクトルの異なる周波数を用いて2つの絶縁回路間で電気信号を転送する電気的装置である。回路間の絶縁は、回路の1つに誘導された又は誘導ではなく存在する大きな電圧又は電流が他の回路に転送又は結合されるのを防ぐ。通常、光アイソレータは、回路間で測定可能な程の電力を伝送できないが、絶縁された回路間で信号を伝達できる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
通信装置が提供される。本装置は、本質的に安全な物理的離間仕様に適合する厚さを有するプリント回路基板を含む。第1の容量性プレートの対は、上記プリント回路基板の両側面に配置され且つ第1のコンデンサを形成するように配設され、上記第1のコンデンサは、上記第1のコンデンサのための誘電材料を形成する上記プリント回路基板の絶縁層を有する。第2の容量性プレートの対は、上記プリント回路基板の両側面に配置され且つ第2のコンデンサを形成するように配設され、上記第2のコンデンサは、上記第2のコンデンサのための誘電材料を形成する上記プリント回路基板の絶縁層を有する。変調器は、上記第1及び第2のコンデンサに結合され、入力信号周波数を有する入力信号を受信し、上記入力信号よりも高い周波数を有する変調信号を提供するように構成されている。復調器は、上記第1及び第2のコンデンサに結合され、上記変調信号を検出し、上記入力信号周波数を有する復調信号を提供するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】従来技術による、本質的な安全要件に従って通信を容易にするために用いられる光アイソレータの概略図である。
【
図2】本発明の1実施形態による、容量性結合を用いて物理的障壁を横断して電気信号を伝達するために使用される回路構成要素のブロック図である。
【
図3】本発明の1実施形態による、コンデンサを横断して結合するために低周波数通信信号を変調するために使用されうる1つの例示的な非安定マルチバイブレータの回路図である。
【
図4】本発明の1実施形態による通信信号及び変調器出力を示すタイミング図である。
【
図5】本発明の1実施形態による、コンデンサを横断して結合するための低周波数通信信号を変調するために使用できる代替の非安定マルチバイブレータ回路の回路図である。
【
図6A】本発明の1実施形態による、コンデンサプレートの誘電体として使用される絶縁回路基板材料によって離間された銅パッドを示す回路基板の一部分の断面図である。
【
図6B】本発明の1実施形態による、双方向通信を提供するために形成された3つの別個の回路基板ベースの結合コンデンサを示す概略図である。
【
図7】本発明の1実施形態による、容量性結合信号を復調して元の低周波数通信信号を提供する復調回路の回路図である。
【
図8】本発明の1実施形態による、回路基板ベースのコンデンサを横断して低周波数通信信号を伝達する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
多くの電子製品(上述された様々なフィールド機器を含む)において、光カプラが、敏感な環境における動作のための本質的な安全要件を満たしうる通信を提供するために用いられている。これらの光カプラが用いられるのは、それらが一般的に、本質的な安全要件を満たしうるところの、市場における2つの製品のうちの1つであるからである。トランス(製品の1つのタイプ)も本質的に安全な電気的絶縁を提供するために使用されうるが、一般的にスペースとコストが法外であると考えられている。一方、光カプラ又は光アイソレータは、光を検出する光トランジスタから電気的及び物理的に離間された発光ダイオードを用いる。2つの部分は、本質的な安全間隔要件を満たすために互いに間隔を空けられ、そして光を用いて空間を横断して信号を転送する。
【0011】
図1は、従来技術による、本質的な安全要件に従って通信を容易にするために用いられる光アイソレータの概略図である。一般に、通信入力信号100は、光カプラ102への入力として与えられる。この入力信号は、発光ダイオード104に光106を生成させる。光106は、物理的空間108を横断して伝わり又は移動し、光トランジスタ110によって検出される。光トランジスタ110からの信号は、通常は反転されているが、通信入力に実質的に関連している。従って、光トランジスタ110からの信号は、通信出力112として提供される。このようにして、通信信号は、本質的な安全要件を満たすため又は所望の離間性を提供するための離間ギャップ108を横断して伝達されうる。理解されうるように、通信入力(例えば、DCオフセット、電力サージ、又はその他の関連事項)を提供する回路に電気的な問題がある場合に、そのような回路状態は出力回路に伝達されない。代わりに、通信信号自体は空間108を通過するが、感知されうるほどの電気エネルギーは通過しないであろう。
【0012】
光カプラは、本質的な安全コンプライアンスを促進しつつ、低コストで比較的効率的な信号の通信を提供してきたが、光カプラに制限がないわけではない。経年劣化、環境条件、及びパッケージングの問題により、光カプラは、もはや動作しなくなるまでに劣化する可能性がある。例えば、発光ダイオード104及び光トランジスタ110を包むゲルは、光カプラが経年劣化するにつれて透明度が低くなる。ゲルが十分に不透明になると、光トランジスタが受け取る光の量は、出力信号が通信障害を惹起するのに十分なほど低下させられるまでに減少させられる場合がある。
【0013】
本発明の実施形態によれば、電気的に絶縁された通信回路の本質的な安全要件は、プリント回路基板を介して通信信号を容量性結合する回路を提供することにより満たされる。プリント回路基板を介したこの容量性結合は、導電性パッド(1実施形態においては銅で形成される)をコンデンサ板として用いて、プリント回路基板上に2層のコンデンサを作成することによって提供される。本質的な安全間隔要件は、銅パッド間の必要な本質的な安全間隔(保護カテゴリの60ボルトピークレベルに対して0.5mm)を維持しながら、コンデンサの誘電物質としてプリント基板の硬質絶縁を利用することによって満たされる。形成されるコンデンサの容量値は比較的低くなる。現代のフィールド機器の絶縁回路間の通信に使用される信号は、比較的低い周波数(例えば28kHz)である場合がある。比較的低価格のプリント基板ベースのコンデンサを横断して低周波数通信信号を転送するために、入力信号はより高い周波数の信号に変調される。高周波数信号を用いると、低容量のプリント基板ベースのコンデンサを介して結合されるエネルギーが増加する。
【0014】
図2は、本発明の1実施形態による、本質的な安全要件を満たす容量性結合通信を提供するための回路ブロックの概略図である。最初に、比較的低周波数の通信信号(例えば28kHzの周波数を有する信号)が、ブロック150で提供される。次いで、信号は、より高い周波数の信号を生成する変調器152に伝達される。いくつかの実施形態において、変調器152はマルチバイブレータ回路の形で提供される。しかし当業者は、入力信号を受信し、この入力信号を変調するために、対応するより高い周波数の信号を生成しうる任意の回路装置が使用されうることを理解するであろう。次いで、変調された高周波数信号は、プリント回路基板ベースのコンデンサ154に提供される。
図6A及び
図6Bについて以下に詳細に説明されるように、このプリント回路基板コンデンサは、一般に、プリント回路基板の両側面に配置され、プリント回路基板の絶縁材料がコンデンサの誘電材料として機能するように配置される一対の銅パッドの形態で提供される。ひとたび信号がプリント回路基板のコンデンサを通過すると、信号は復調回路156に提供され、信号は復調されて増幅される。最後に、ブロック158で示されるように、再生された低周波数信号は復調器156から提供される。
図2に示されたブロックの各々は、以下に詳細に説明されるであろう。
【0015】
低周波数通信信号150は、一般的に、現代のフィールド機器により用いられる通信信号である。そのようなフィールド機器の一例は、2つの電気的に絶縁された本質的に安全な絶縁回路間で通信するために低周波数通信を用いる温度送信器である。上述されたように、信号の周波数は一般に28kHzのオーダーである。しかし、当業者は、これとは異なる周波数の低周波数信号、及びプリント回路基板コンデンサを横断するための適切な変調が、本発明の実施形態によって提供されうることを理解するであろう。
【0016】
変調器152は、低周波数通信信号150を受信し、関連する高周波数信号を提供するように構成された回路装置である。1実施形態において、低周波数通信信号150は、非安定マルチバイブレータを使用して変調される。
図3は、1つの例示的な非安定マルチバイブレータの回路図であり、その非安定マルチバイブレータは、低容量のプリント回路基板ベースのコンデンサを横断するエネルギー伝達を増加させるために用いられうる。1実施形態において、非安定マルチバイブレータは、通信信号が低位(ロー)の場合にのみ振動する。これは、通信が発生していないときに通信信号が高位(ハイ)に保持され、そして電力を節約するために、通信が発生していないときにマルチバイブレータがアイドル状態であることが好ましいためである。1実施形態においては、変調は、低周波数通信信号の周波数の約15~20倍になることを目標とする。これにより、低価格のプリント基板ベースのコンデンサを横断して結合されるエネルギー量と、非安定マルチバイブレータで消費される電力との間の合理的なトレードオフが提供される。
図3に示されるように、低周波数通信信号150は、接地端子160と入力信号端子162との間を横断して供給される。大きな抵抗の抵抗器164が、入力端子162と接地端子160との間を横断するように結合される。1実施形態においては、大きな抵抗の抵抗器164は1MΩのオーダーの抵抗を有する。
図3に示されたように、非安定マルチバイブレータは、一対のNORゲート166、168を用いて生成される。信号線162は、NORゲート168の両方の入力に結合された出力170を有するNORゲート166の第1入力168に結合される。NORゲート168の出力172は、コンデンサ176を介して第1NORゲート166の第2入力174へフィードバックされる。1実施形態においては、コンデンサ176は27pFの値を有する。さらに、抵抗器178は、出力170をフィードバック線180に結合する。1実施形態においては、抵抗器178は約287kΩの抵抗を有する。抵抗器178及びコンデンサ176の値を選択することにより、非安定マルチバイブレータの適切な発振を選択できる。上述されたように、1実施形態において、変調器は、入力信号の周波数の15~20倍の周波数を提供するように選択される。さらに、
図3に示されるように、接地端子160は、プリント回路基板上の接地パッド182に結合され、一方、出力172は、プリント回路基板上の信号パッド184に結合されている。以下により詳細に説明されるように、プリント回路基板上のパッドは、本発明の実施形態によって変調された通信信号を結合するコンデンサを形成する。
【0017】
図4は、様々な時刻における通信信号及び変調器出力を示すタイミング図である。ライン200に示されるように、低周波数通信信号は、時刻t1で高位状態から低位状態に遷移する。低周波数通信信号は、高位状態に戻る時刻t2まで低位状態のままである。低周波数通信信号における低位から高位への遷移の間のこの周波数は、28kHzのオーダーの信号でありうる。上述のように、この周波数は、本発明の実施形態による、本質的な安全間隔要件に準拠するプリント回路基板ベースのコンデンサを横断して効果的に結合されるには低すぎる可能性がある。従って、変調器152は、プリント回路基板ベースのコンデンサを横断して効果的に遷移又は結合される高周波数信号を生成するために用いられる。
図4に示されるように、低周波数通信信号200が低位状態に遷移する時刻t1で、マルチバイブレータ出力202は低位状態と高位状態の間で発振を開始する。判るように、時刻t1とt2の間の期間において、マルチバイブレータの出力は、高位と低位の間で約32回遷移する。これにより、プリント基板ベースのコンデンサを横断して効率的に通過するのに十分な周波数の信号が提供される。
図4はまた、変調が低位/高位入力でオン/オフになる別のシナリオを示している。再び、低周波数通信信号204が低位状態に移行する各インスタンスについて、非安定マルチバイブレータ出力206は、高位状態と低位状態の間で振動を開始し、低周波数通信信号がその高位状態に戻るまで、そのような振動状態のままである。このようにして、非安定マルチバイブレータは、通信入力信号が低位のときにのみ振動する。これは、通信が発生していないときに低周波数通信信号が高位に保持されるためで、マルチバイブレータの電力を節約する。
【0018】
上述のように、変調器は、任意の適切な回路で提供されうる。
図5は、NAND変調器回路を使用して形成される非安定マルチバイブレータの回路図である。このマルチバイブレータにおいては、通信入力信号が高位状態に保持されている場合にのみ振動が発生する。この設計は、通信が発生していないときに低位に保たれる入力通信回路に最適又はより効率的である。見て分かるように、回路152は、
図3のNORゲートがNANDゲートに置き換えられている以外は、
図3に示された回路に類似している。
【0019】
図6A及び
図6Bは、本発明の実施形態による、本質的に安全な絶縁方式で通信信号を結合するためのプリント回路基板ベースの3つのコンデンサの構造及び配置図を示す。
図6A及び
図6Bに示されるように、コンデンサは、プリント回路基板材料自体で形成されている。プリント回路基板は任意の適切なプリント回路基板材料で形成されうるが、1つの特定の例ではFR-4プリント回路基板材料を使用する。FR-4は、ガラス繊維織物と難燃性のエポキシ樹脂結合剤で構成される複合材料である。
【0020】
プリント回路基板材料は、絶縁材料304の第1の側に配設された第1の銅層300と、第2の側に配設された第2の銅層302とを有する。
図6Aに示された例において、これらの銅層は完成品の1オンス銅で形成されている。銅パッド間の絶縁材料304は、コンデンサの誘電体として用いられる。このように、プリント回路基板の硬質絶縁体304を誘電体として使用し、材料304の複数の向き合う層に複数の銅パッドを配設することにより、プリント回路基板上にコンデンサが作成される。プリント回路基板(誘電体)の厚さは、保護カテゴリの60ボルトピークレベルの本質的な安全間隔に必要である0.5mmでなければならない。一部の本質的な安全仕様、例えば付属書Fにおいては、間隔はさらに、例えば0.2mmまでに減らされうる。
図6Bに示されるように、3つのコンデンサが3組の銅パッドを用いて作成される。最初の2つのコンデンサ306、308は、絶縁障壁を横断して信号をどちらの方向にも結合するために用いられる。第3のコンデンサ310は、AC帰路を可能にするために回路コモンを結合するためのものである。以下の式とパラメータを用いて、コンデンサの静電容量が計算されうる。0.20インチ×0.20インチのパッドと0.5 mmのプリント回路基板の誘電体厚を用いると、1.93pFの静電容量が生成されると推定される。
【0021】
【0022】
ここで、k=4.3(FR-4ボード材料の概算値)、
【数2】
A=銅パッドの面積、d=パッド間の距離である。
【0023】
変調された信号がプリント基板ベースのコンデンサを横断して結合されると、その信号は復調及び増幅される必要がある。
図7は、そのような復調及び増幅に用いられうる1つの例示的な回路装置の回路図である。プリント回路基板ベースのコンデンサの静電容量は非常に低いため、復調器には、オランダ国、アイントホーヴェン(Eindhoven)のNXP Semiconductors Netherlands BV から入手可能な商品名BFU550A RFトランジスタで販売されているような、非常に小さなベース‐エミッタ間静電容量のトランジスタが必要である。このトランジスタは、0.98pFのエミッタ容量Ceを有する。プリント回路基板ベースのコンデンサと、トランジスタQ1のベース‐エミッタ間静電容量(参照符号400で示される)とは、変調信号用の分圧器を形成する。プリント基板ベースのコンデンサがQ1ベース‐エミッタ間容量に対して大きいほど、変調信号の振幅はQ1のベースで大きくなり、そしてより復調しやすくなる。トランジスタQ1へのAC入力信号は、抵抗器R1及びR2(それぞれ参照番号402、404で示される)によってシフトされるDCレベルである。このレベルシフトは、Q1を最適にオン/オフするために提供される。Q1のコレクターの出力406は、機器の受信回路に必要なレベルに振幅を調整するシュミットトリガー非反転バッファーを駆動する。出力はノード410で提供され、再生された低周波数通信信号158(
図2に示される)になる。再生された信号にはわずかな時間遅延があるが、メッセージのタイミングとの関係では重要ではない。
【0024】
図8は、本発明の実施形態による、本質的な安全要件を満たしつつ、プリント回路基板ベースのコンデンサを横断して低周波数通信信号を伝達する方法の流れ図である。方法500は、ブロック502で始まり、そこでは比較的低い周波数の通信信号が受信される。上記のように、低周波数通信信号の例には、約28kHzの範囲の信号が含まれる。次にブロック504で、低周波数通信信号は、対応する高周波数通信信号に変調される。1例において、この変調は、比較的低周波数の入力信号よりも約15~20倍高い周波数を有する変調信号を含む。次に、ブロック506で示されるように、変調信号は、プリント回路基板材料自体で形成された1つ又は複数のコンデンサに提供され、それを通過する。
図6A及び
図6Bに対して示されたように、コンデンサは、一般に、プリント回路基板材料の絶縁材料(この絶縁材料がコンデンサのための誘電体として用いられる)の両側面に形成された銅板を用いて提供される。適切なプリント回路基板材料の一例は、一般的な商品名FR4で販売されているものである。次に、ブロック508で、復調器及び適切な増幅器を使用して、変調信号が復調及び復元される。このようにして、トランスや光アイソレータを使用せずに、本質的に安全な物理的間隔の要件を満たすことができる信号を送信又は伝達できる。