(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】付加製造装置における材料の予熱
(51)【国際特許分類】
B29C 64/295 20170101AFI20220307BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220307BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220307BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220307BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220307BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220307BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20220307BHJP
B29C 64/371 20170101ALI20220307BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20220307BHJP
B29C 64/245 20170101ALI20220307BHJP
B29C 64/232 20170101ALI20220307BHJP
B29C 64/236 20170101ALI20220307BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20220307BHJP
B22F 12/41 20210101ALI20220307BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20220307BHJP
B22F 10/362 20210101ALI20220307BHJP
【FI】
B29C64/295
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/393
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y40/00
B29C64/371
B29C64/268
B29C64/245
B29C64/232
B29C64/236
B22F10/28
B22F12/41
B28B1/30
B22F10/362
(21)【出願番号】P 2019554041
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 IB2017057992
(87)【国際公開番号】W WO2018109735
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-10-28
(32)【優先日】2016-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(32)【優先日】2016-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(73)【特許権者】
【識別番号】506257272
【氏名又は名称】シーエスアイアール
【氏名又は名称原語表記】CSIR
(73)【特許権者】
【識別番号】519216194
【氏名又は名称】アエロスド イノベーション センター(ピーティーワイ)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】フェルミューレン マリウス
(72)【発明者】
【氏名】プロイスラー ディーター ライナー
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-166461(JP,A)
【文献】特開2016-153529(JP,A)
【文献】特開2011-140222(JP,A)
【文献】中国実用新案第203695959(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0251250(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0368052(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00、30/00、40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造装置であって、
材料ベッドを形成するために材料が作用可能に堆積され、前記材料ベッドの表面が材料領域を画定する造形プラットフォームと、
実質的に前記材料領域よりも小さく、前記材料領域の一部に形成される、前記材料ベッドの前記表面の走査領域において堆積した材料を硬化するように構成される走査部と、
そして
前記走査部と前記造形プラットフォームとの間に配置され、
2組の赤外線ランプおよび反射装置を含み、これらは前記材料領域の残りの部分ではなく実質的に前記走査領域において、前記赤外線ランプから前記材料ベッドの前期表面に対する放射を集束させるように構成されており、
前記反射装置は、前記走査領域のそれぞれの側に1つずつの、2つのミラーを含み、
そして、
それぞれの前記ミラーは、前記付加製造装置のY-Z平面で見たときに、楕円形の頂点領域を有し、その下に前記赤外線ランプのうちの1つが配置されている
ことにより、X軸に沿って延びる1つまたは複数の集束領域に放射線を供給して集束させるように成形および寸法設定されており、さらに、前記走査部からのエネルギビームが通過して前記材料ベッドの表面上に通過することを可能にする中央開口を画定する、
予熱装置と、
を備える付加製造装置。
【請求項2】
一方の前記造形プラットフォームと、他方の前記走査部および前記予熱装置とは、相対的に前記材料ベッドの前記表面に平行な方向に変位可能である、
請求項
1に記載の付加製造装置。
【請求項3】
前記走査部と前記予熱装置とは、前記予熱装置の予熱領域が前記走査領域と実質的に一致するように相対的に変位可能である、
請求項1
または2に記載の付加製造装置。
【請求項4】
使用時に生成される蒸気および/またはスパッタを抽出するための抽出口を有する少なくとも1つの抽出装置を含み、
前記少なくとも1つの
前記抽出口は、前記走査領域から蒸気および/またはスパッタが抽出できるように、前記予熱装置の一方側または両側に配置される、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の付加製造装置。
【請求項5】
前記抽出装置は前記予熱装置に取り付けられているか、または一体的に構成されている
請求項
4に記載の付加製造装置。
【請求項6】
前記抽出口は少なくとも1つの前記反射装置に配置されている
請求項
5に記載の付加製造装置。
【請求項7】
前記抽出装置は、前記反射装置に設けられた
前記抽出口およびガス出口およびノズルおよびガス入口および流れ制御手段を含み、
これらは、抽出口間またはノズルと
前記抽出口との間のガスの流れの方向を調整するように構成されている、
請求項
6に記載の付加製造装置。
【請求項8】
前記走査領域が実質的に2次元のストリップの形態である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の付加製造装置。
【請求項9】
前記走査部は、前記堆積した材料を硬化するためのエネルギビームを供給または案内するように構成された2次元走査部である、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の付加製造装置。
【請求項10】
前記造形プラットフォームと前記走査部とを相対的に移動可能にする移動装置を含む、
請求項1~
9のいずれか一項に記載の付加製造装置。
【請求項11】
前記走査部と前記予熱装置とは相対的に固定されており、
一方の前記走査部および前記予熱装置と、他方の前記造形プラットフォームとは、前記材料ベッドの前期表面と平行な方向において相対的に変位可能であり、それにより前記走査領域は前記付加製造装置のX軸および/またはY軸に沿って移動可能である
請求項
10に記載の付加製造装置。
【請求項12】
前記材料ベッドを形成するために前記造形プラットフォーム上に粉末材料の層を堆積するように構成された少なくとも1つの材料堆積装置を含む、
請求項1~
11のいずれか一項に記載の付加製造装置。
【請求項13】
使用時に、少なくとも1つの前記材料堆積装置に粉末材料を補充するように構成された少なくとも1つの材料供給装置を含む、
請求項
12に記載の付加製造装置。
【請求項14】
前記予熱装置は、材料を堆積する前記材料堆積装置が前記予熱装置と前記材料ベッドとの間を通過するためのクリアランスを設けるために、前記造形プラットフォームに対して作用可能に上方に変位可能である、
請求項
12または13に記載の付加製造装置。
【請求項15】
前記材料ベッドにおける、またはその近傍における、
前記予熱装置により設けられた集束領域の表面温度を測定するための少なくとも1つの温度センサを含み、
前記予熱装置の加熱レベルは、前記少なくとも1つの温度センサにより測定された温度に基づいて調整可能である
請求項1~
14のいずれか一項に記載の付加製造装置。
【請求項16】
プラットフォーム変位装置を含み、
それにより前記造形プラットフォームが作用可能に垂直方向に変位可能である、
請求項1~
15のいずれか一項に記載の付加製造装置。
【請求項17】
前記付加製造装置が複数の
前記予熱装置を含む、
請求項1~
16のいずれか一項に記載の付加製造装置。
【請求項18】
前記予熱装置は、前記付加製造装置のX軸に沿って間隔を空けて配置されている、
請求項
17に記載の付加製造装置。
【請求項19】
付加製造装置における材料予熱方法であって、
材料ベッドを形成するために造形プラットフォームに材料を堆積させ、前記材料ベッドの表面が材料領域を画定するステップと、
前記材料ベッドの表面において前記材料領域の一部であって実質的に前記材料領域よりも小さい走査領域に堆積した材料を硬化するように構成された走査部を提供するステップと、
そして
予熱装置を用いて、前記走査領域に内包される材料を予熱するステップと、を含み、
前記予熱装置は、2セットの赤外線ランプおよび反射装置を含み、これらは前記材料領域の残りの部分ではなく実質的に前記走査領域において、前記赤外線ランプから前期予熱領域に対する放射を集束させるように構成されており、
前記反射装置は、前記走査領域のそれぞれの側に1つずつの、2つのミラーを含み、
そして、
それぞれの前記ミラーは、前記付加製造装置のY-Z平面で見たときに、楕円形の頂点領域を有し、その下に前記赤外線ランプのうちの1つが配置されて
おり、
一方の造形プラットフォームと、他方の走査部および前記予熱装置とを、前記材料ベッドの表面と平行な方向に相対移動させるステップを含む、
材料予熱方法。
【請求項20】
前記予熱装置は、前記走査領域と実質的に一致する予熱領域において前記材料ベッドの前記表面にエネルギを集束させる、
請求項
19に記載の材料予熱方法。
【請求項21】
前記予熱装置の予熱領域が実質的に前記走査領域と一致するように、前記走査部および前記予熱装置が相対的に移動するステップを含む、
請求項
19に記載の材料予熱方法。
【請求項22】
前記材料領域を、それぞれが
前記走査領域とほぼ等しい面積を有する複数の2次元ストリップに分割するステップと、
そして
前記予熱装置および造形プラットフォームが相対的に移動している間に、
前記予熱装置を使用して一度に1つの
前記材料領域の2次元ストリップを予熱するステップと、を含む、
請求項
19~21のいずれか一項に記載の材料予熱方法。
【請求項23】
特定のストリップを予熱した後、次のストリップを予熱する前に当該ストリップに含まれる材料を硬化するステップを含む、
請求項
22に記載の材料予熱方法。
【請求項24】
前記予熱装置と前記造形プラットフォームとを相対的に変位させながら、実質的に連続的な材料の硬化および予熱するステップを含む、
請求項
22または23に記載の材料予熱方法。
【請求項25】
前記造形プラットフォームおよび/または前記走査部に対して相対的に変位可能な抽出装置を使用して、硬化中に生成される
蒸気および/またはスパッタを抽出するステップを含む
請求項
19~24のいずれか一項に記載の材料予熱方法。
【請求項26】
前記抽出装置は、前記反射装置に設けられた抽出口およびガス出口およびノズルおよびガス入口および流れ制御手段を含み、
これらは、抽出口間またはノズルと
前記抽出口との間のガスの流れの方向を調整するように構成されており、
前記材料予熱方法は、前記走査部の変位方向に対して反対の方向に抽出の方向を調整するステップを含む、
請求項
25に記載の材料予熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、付加製造に関する。より詳細には、本発明は付加製造装置および付加製造装置内の材料を予熱する方法に関する。本発明はまた、付加製造により物体を形成する方法、および付加製造装置用の予熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造(AM(Additive manufacturing))とは、三次元物体(以下、単に「物体」または「部品」と呼ぶ)を合成するために使用される様々なプロセスのことを指す。
所定のAM技術は「3D印刷」と呼ばれることがある。
【0003】
AMにおいて、部品は通常、3次元コンピュータ支援設計(CAD)モデルを2次元の層または画像にデジタル方式でスライスすることにより作られる。次にこれらの層は、典型的には粉末状または流体状の原料を養生、硬化、溶融または他の方法で形成することにより作られる。便宜上、用語「硬化する」または単に「形成する」は、以降、層が形成される特定の方法に関係なく、そのような層を形成することを指すために使用される。
【0004】
AMにおいて、部品は、金属、ポリマ、セラミック、樹脂および石膏などの様々な原材料から製造される。さらに、レーザ、電子ビーム、バインダおよびサーマルモジュールを含む様々な技術が層を硬化するために使用される。
【0005】
多くのAMプロセスは、材料ベッドの材料を層状に硬化し、最終的に所望の部品を形成するためにレーザまたは電子ビームを使用する。レーザベースのプロセスにおいては、レーザは、目的の層が正しく硬化されるようにCADモデルの幾何形状に基づいて走査部により誘導される。材料ベッドは、物体の新しい層がそれぞれ硬化されると徐々に下がる造形プラットフォームの上に支持される。次の層の粉末が固められて前の層と融合するために走査される前に、新しい材料層が材料ベッドに追加される。
【0006】
AMは、従来の製造方法を超える利点を提供し得る。これらの利点は、軽量化を可能にする非常に複雑な部品の製造や、可動部品、改善された冷却、部品へのより多くの機能の統合、および部品数の削減、を統合した部品の製造を可能にすることが含まれる。この方法はまた、原材料の再利用可能とし、ツーリングの必要性を排除するため、相対的に材料の消費が低下することを保証する。
【0007】
原材料を最終形態に硬化する前に原材料の温度を上昇させるため、AMにおいては予熱法が一般的に採用される。予熱は、材料がより容易に処理されること、および/または、より速い速度で処理されること、を確実にするために、あるいは硬化前の材料から水分を除去するため、に使用されてもよい。水分の存在は、物体に多孔性および/または他の欠陥をもたらす可能性がある。
【0008】
さらに、エネルギビームを使用してAM部品を製造する場合、溶融池の凝固収縮および大きな熱勾配のために材料に残留応力が生じる可能性がある。ある種の材料では、これらの残留応力は比較的大きく、そしてより大きな部品を製造するときには、部品に歪みおよび/または亀裂を生じさせることがある。材料は、このようなストレスを防止、軽減、または緩和するために予熱される。
【0009】
概して、AMシステムにおける予熱に関して3つの手法が存在することが明らかになっている。
【0010】
第1の手法は、通常「バルク予熱」と呼ばれている。バルク予熱では、造形プラットフォーム上の材料ベッドの温度は、材料ベッドの外側端部、または外側端部の近傍に配置される熱源により上昇する。熱伝達は、材料ベッドを通ることにより、そして熱源が造形プラットフォームの下に配置されている場合には、すでに硬化された層を通ることにより生じる。
【0011】
バルク予熱に関連するいくつかの不利点が、識別される。このアプローチは、比較的高いエネルギの入力、高品質の断熱、および熱源の実質的に連続的な制御、が必要となる。所望の予熱特性を確立し維持するためには、能動的な制御が必要となる。使用中の材料ベッドにおける適合性の欠如を考慮すると(いくつかの領域は硬化され、いくつかは粉末形態である)、バルク材料内で一定の温度を維持することは困難である。
【0012】
上記熱源の配置は問題がある可能性があることが明らかになっている。熱損失および粉末の不十分な熱伝導のために、材料ベッドにおける温度は、熱源に近い方が熱源からより離れた位置よりも高い。熱源が材料ベッドの下および/または側面に配置されるとき、材料ベッドの底部および/または側面は、実際に予熱が必要な材料ベッド表面よりも高い温度になり得る。
【0013】
熱源の温度が一定に保たれる場合、材料ベッドの表面の温度は、材料ベッドの体積が増加するにつれて徐々に低下する。材料ベッド表面の温度を一定に保つためには、熱源の温度を徐々に上げなければならない。バルク予熱技術を使用する場合、表面温度を理想温度に維持することを保証するためには、材料ベッド中の少なくとも一部の材料がその理想予熱温度よりも高く加熱され得ることが明らかになっている。これは、特定の材料に対して悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、過度に高い温度が長期間にわたって維持されると、材料ベッド中で未硬化粉末の焼結が起こり、その後の粉末のリサイクルが妨げられる可能性がある。そのような過度の温度はまた、チタンまたはアルミニウムなどの特定の金属において酸化物成長を引き起こす可能性がある。
【0014】
第2の一般的な予熱手法は「表面予熱」として知られている。表面予熱において、エネルギは、典型的には電磁放射により材料ベッドの表面に供給される。表面予熱システムは通常、抵抗加熱要素または非集束赤外線(IR(Infrared))技術を含む。
【0015】
材料ベッド表面に供給されるエネルギは、表面上で吸収されそして熱に変換される。次に、材料ベッドの残りの部分の少なくとも一部は、伝熱により加熱される。バルク予熱と比較した場合、表面予熱は、一般に、材料ベッドの表面温度を上昇させる方法としてエネルギ効率の良いものを提供することが明らかになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、既存の表面予熱システムもまた、幾つかの不利点が存在している。やはり、材料ベッドにおける適合性の欠如に照らして、操作の間、材料ベッドにおいて、特に硬化領域と粉末領域との間に、温度勾配が形成される可能性がある。所望の予熱温度を確立し維持するために、能動的な制御が必要となる。材料ベッドの表面全体が加熱されるので、必要な温度に達するためには比較的大きな加熱能力が必要となる。
【0017】
さらに、環境に対する対流および放射損失のために、高いエネルギ損失が生じる可能性があり、それは次に高いエネルギコストにつながる。高いエネルギ損失は、AM装置内に望ましくない熱を発生させ、それは装置の構成要素に対して有害となり得る。上述のように、長期間にわたって原材料の温度を高レベルに維持することはまた、特定の材料の材料特性にとって有害であり得る。
【0018】
また、熱源は、(走査部により供給される)材料を硬化することが要求されるエネルギビームを妨害しないように構成される必要があるため、材料ベッドの表面全体に亘り一定の温度を維持することは困難であることが明らかになっている。
【0019】
第3の予熱方法は、粉末供給材料を堆積直前または直後に予熱する方法である。粉末が粉末堆積装置から堆積されるため、粉末堆積装置内で粉末が加熱されるか、あるいは、堆積される粉末のストリップが加熱される。
【0020】
この第3の方法の利点は、材料が必要とされるときにのみ加熱されるので、典型的には、より少ないエネルギしか必要とされないことである。その欠点は、粉末が典型的には非常に薄い層に堆積されること、および、加熱された後そして硬化される前であっても、加熱された粉末の温度が急速に低下する傾向があることである。
【0021】
上記に加えて、既存の手法を使用する場合、蒸気およびスパッタの除去が困難であり得ることが明らかになっている。エネルギビームと粉末床材料との相互作用の結果として、蒸気とスパッタの両方が生じ得る。「スパッタ」として知られる大きな粒子は、粉末の層の堆積を妨げ、層の厚さに不規則性を引き起こす。「蒸気」として知られるより小さな粒子は、長期間にわたって空中に留まり、放射線の散乱および吸収を介して材料ベッドへのエネルギ伝達を妨げる可能性がある。水蒸気がかなりの量まで蓄積すると、火事や爆発を引き起こす可能性がある。したがって、スパッタおよび蒸気の除去は重要であり、その効率を改善するための必要性が認識されている。
【0022】
本発明は、少なくともある程度まで、これらの問題のいくつかを改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の態様によれば、以下のものを含む付加製造装置が提供される。材料ベッドを形成するために材料が操作可能に堆積され、材料ベッドの表面が材料領域を画定する造形プラットフォーム。材料ベッドの表面上における走査領域の堆積材料を硬化するように構成される走査部。走査領域は材料領域の一部を形成するものであり、実質的に材料領域よりも小さいものである。電磁エネルギを実質的に走査領域に集束させ、残りの材料領域には集束させないように構成された予熱装置。
【0024】
予熱装置は、走査領域と実質的に一致する予熱領域において材料ベッドの表面にエネルギを集束させるように構成されてもよい。
【0025】
一方の造形プラットフォームと、他方の走査部および予熱装置とは、材料ベッドの表面に平行な方向に相対的に変位可能であってもよい。
【0026】
走査部と予熱装置とは、予熱装置の予熱領域が走査領域と実質的に一致することを可能にするように相対的に変位可能であってもよい。
【0027】
走査領域は、実質的に2次元ストリップの形態であってもよい。ストリップはその幅よりも大きい長さを有するものであってもよい。ストリップは、装置のX軸に沿って造形プラットフォームの全幅にわたって延びる長さを有するものであってもよい。装置のY軸に沿ったストリップの幅は、エネルギビームのスポットサイズの少なくとも2倍であってもよい。Y軸に沿ったストリップの幅は、0.1mmから100mmの間であってもよい。走査領域はまた、例えば、クロスハッチングのための斜めのスキャンラインを提供するために、X軸またはY軸に対して傾斜していてもよい。
【0028】
走査部は2次元の走査部であってもよい。走査部は、材料を硬化させるために、レーザビームなどのエネルギビームを供給または案内するものであってもよい。
【0029】
装置はさらに、造形プラットフォームと走査部とが相対的に、例えばY軸を移動可能な移動装置を含むものであってもよい。一実施形態において、走査部および予熱装置は互いに固定されるものであり、造形プラットフォームは、走査部および予熱装置に対して材料ベッドの表面と平行な方向に変位可能である。本発明の別の実施形態では、走査部および予熱装置は、造形プラットフォームに対して一緒に変位可能である。このように、走査領域は材料領域を横切って移動可能である。したがって、移動装置は、走査領域が装置のY軸に沿って移動可能にするものであってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、走査部および予熱装置はまた、X軸に沿って造形プラットフォームに対して移動可能であってもよい。
【0031】
代替として、走査部がX軸に沿って移動可能であり、同時に、予熱装置がX軸方向に拡張されかつ固定されY軸方向にのみ移動可能となっているものであってもよい。
【0032】
予熱装置は電磁放射のエネルギ源を含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、予熱装置は、走査領域を照射するように構成された1列または複数列のダイオードレーザにより提供されてもよい。レーザは装置のX軸に沿って配置されてもよい。
【0034】
走査領域に亘って実質的に均一なエネルギ分布を提供するために、ビーム整形光学系が使用されてもよい。
【0035】
他の実施形態では、予熱装置は、使用時にランプからの放射を走査領域に集束させるように構成された少なくとも1つのランプおよび反射装置により提供されてもよい。少なくとも1つのランプは赤外線ランプであってもよい。少なくとも1つのランプは1つ以上のランプの組であってもよい。
【0036】
予熱装置は2つの赤外線ランプを含み、このランプは、走査部からのエネルギビームがランプの間を通過するように走査領域の両側に取り付けられてもよい。反射装置は、1つ以上のミラーが設けられていてもよい。上記1つ以上のミラーは任意の相応な幾何学形状を有してもよい。いくつかの実施形態では、装置のY-Z平面で見た場合に、1つ以上のミラーが楕円形の頂点領域を有していてもよく、これはランプからの放射を走査領域に集束させるのに役立つ。
【0037】
反射装置はまた、ランプからその長手方向の軸に沿って放出される放射を利用するように構成された1つ以上の平坦かつ直立の側面反射器を含んでいてもよい。
【0038】
予熱装置は、装置のX軸に沿った集束領域に放射を集束させるように構成されていてもよい。集束領域は、走査領域の幅の中心に沿って延びるストリップであってもよい。予熱装置の、例えばランプまたはミラーは、集束領域が走査領域に対して移動可能となるように調整可能であってもよい。
【0039】
予熱装置は、エネルギビームが材料ベッドに案内される開口部を画定してもよい。X軸に沿った開口部の長さは、少なくとも走査領域の長さであってもよい。Y軸に沿った開口部の幅は、走査部をY軸に沿って移動させながらフルストリップの走査を可能にするために、走査領域の幅の少なくとも2倍であってもよい。
【0040】
装置はさらに、材料ベッドを形成するために造形プラットフォーム上に粉末材料の層を堆積させるように構成された少なくとも1つの材料堆積装置を含んでもよい。装置はまた、使用時に、少なくとも1つの材料堆積装置に粉末材料を補充するように構成された少なくとも1つの材料供給装置を含んでもよい。
【0041】
予熱装置は、材料堆積装置が材料を堆積させる場合に、予熱装置と材料ベッドとの間を通過するためのクリアランスを設けるために、Z軸に沿っておよび/または造形プラットフォームに対して上方に移動動作が可能であってもよい。
【0042】
付加製造装置は、使用中に生成される蒸気および/またはスパッタを抽出するための抽出口を有する少なくとも1つの抽出装置を含んでもよい。上記抽出口は、走査領域から蒸気および/またはスパッタを抽出するように、予熱装置の片側または両側(すなわち対抗する側)に配置されてもよい。一実施形態では、1つ以上の抽出口が反射装置内に設けられるかまたは配置され、この付加製造装置は抽出口間のガスの流れの方向を調整するように構成された流れ制御手段を含んでもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、この付加製造装置は、走査領域の一方側に配置され、この付加製造装置のY軸に沿っている抽出口と、走査領域の反対側に配置され、抽出口を通して出るようにして走査領域の範囲のガスを浄化するためのノズルと、を含んでもよい。
【0044】
抽出装置は、予熱装置に取り付けられるかまたは予熱装置と一体であってもよく、材料堆積装置が材料を堆積するために抽出装置と材料ベッドとの間を通過するための間隙を提供するために、付加製造装置のZ軸に沿って上向きに変位可能であってもよい。
【0045】
抽出装置は、その片面または両面に抽出部材を含んでもよく、抽出部材は、抽出口およびノズルを含み、抽出口およびノズルは、操作中に、走査領域の一方側または両側すなわち反対側に配置されるように構成されていてもよい。
【0046】
抽出装置がその両側に抽出部材を含む場合、抽出部材は同時にまたは個別に作動してもよい。使用時に抽出の方向(抽出方向)を逆にするように抽出部材を調整されてもよい。
【0047】
上記付加製造装置は、材料ベッドの表面またはその近くに予熱装置により設けられた集束領域の表面温度を計測するための少なくとも1つの温度センサをさらに含んでもよい。予熱装置の加熱レベルは、使用中に、温度センサにより計測された温度に基づいて、連続的にまたは周期的に調整されてもよい。
【0048】
上記付加製造装置は、例えば上記付加製造装置のX軸に沿って離間して配置された複数の予熱装置を含んでいてもよい。隣接する予熱装置は、Y軸に沿って相対的にわずかにずれていてもよい。予熱装置は、Y軸に沿って造形プラットフォームに対して一緒にまたは互いに独立して移動可能であってもよい。
【0049】
上記付加製造装置は、造形プラットフォームは垂直方向に変位可能となるようにプラットフォーム変位構成を含んでもよい。
【0050】
本発明の他の態様によれば、以下のものを含む付加製造装置が提供される。材料ベッドを形成するために材料が作用可能に堆積され、材料ベッドの表面が材料領域を画定する造形プラットフォーム。走査領域が材料領域の一部を形成し、実質的に材料領域よりも小さいものであって、材料ベッドの表面上の走査領域に堆積材料を硬化するように構成された走査部。そして造形プラットフォームおよび予熱装置が走査領域と予熱領域とを一致させるように相対的に移動可能であって、予熱領域内で材料ベッドの材料表面にエネルギを集束させるように構成された予熱装置。
【0051】
本発明の他の態様によれば、付加製造装置内で材料を予熱する方法が提供され、その方法は以下のステップを含む。表面が材料領域を画定する材料ベッドを形成するために、材料を造形プラットフォームに堆積し、走査領域が材料領域の一部を形成し、実質的に材料領域よりも小さいものであって、材料ベッドの表面上の走査領域に堆積材料を硬化するように構成された走査部を提供し、そして材料領域の残りの部分ではなく、走査領域に、実質的にエネルギを集束させるように構成された予熱装置を使用して、走査領域に含まれる材料を予熱する。
【0052】
本発明の他の態様によれば、付加製造装置内で材料を予熱する方法が提供され、その方法は以下のステップを含む。表面が材料領域を画定する材料ベッドを形成するために、材料を造形プラットフォームに堆積し、走査領域が材料領域の一部を形成し、実質的に材料領域よりも小さいものであって、材料ベッドの表面上の走査領域に堆積材料を硬化するように構成された走査部を提供し、そして予熱装置はエネルギを予熱領域内の材料ベッドの表面に集束させるように構成されるものであって、走査領域と予熱領域とが一致するように、予熱装置および造形プラットフォームを相対的に移動する。
【0053】
上記方法は、材料領域を、各ストリップが走査領域の面積とほぼ等しい面積を有する複数の2次元ストリップに分割し、そして予熱装置と造形プラットフォームが相対的に動いている間に、材料領域の1つの2次元ストリップを1度に予熱するために予熱装置を使用する、というステップを含んでもよい。
【0054】
上記方法は、特定のストリップを予熱した後、次のストリップを予熱する前にストリップに含まれる材料を硬化することを含んでもよい。
【0055】
上記方法はまた、予熱装置と造形プラットフォームとを例えばY軸に沿って相対的に変位させながら、実質的に連続的な硬化および材料の予熱を行うステップを含んでもよい。
【0056】
上記方法はまた、走査部から走査領域に到達することでエネルギビームが硬化される材料に到達することを可能にするために、一方で造形プラットフォームを、他方で走査部および予熱装置を、相対的に移動させるステップを含んでもよい。
【0057】
本発明の別の態様によれば、付加製造により物体を形成する方法が提供され、この方法は、上述のような付加製造装置により実施されるものであり、以下のステップを含む。材料ベッドを形成するために造形プラットフォーム上に材料の層を連続的に堆積し、そして走査部を使用して材料の堆積層の1つ以上の部分を硬化する。各硬化された部分は物体の特定の断面または2次元スライスに対応する。ここで、部分の少なくともいくつかを硬化するために、特定の層がより小さな2次元ストリップに分割され、その層がそれぞれ予熱装置および走査部を使用して1度に1つの2次元ストリップに予熱および硬化される。
【0058】
堆積および硬化するステップは、少なくとも部分的に同時に実行されてもよい。
【0059】
硬化ステップは、造形プラットフォームおよび/または材料ベッドの一部が材料でコーティングされるとすぐに開始されてもよく、材料が堆積されている間に開始されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、少なくともいくつかの層を硬化するために、一方で造形プラットフォームが、他方で走査部および予熱装置が、材料ベッドの表面に対して平行な方向に相対的に変位されてもよい。
【0061】
連続的な走査を可能にするため、2次元ストリップ内の物体の部分が走査されている間に、走査部および造形プラットフォームが相対的に移動してもよい。
【0062】
走査部と造形プラットフォームとの間の相対移動速度は、任意の特定の2次元ストリップを走査するのにかかる時間に応じて変更することができる。
【0063】
上記方法は、特定の材料層を堆積して堆積した層を硬化した後であって、硬化するための材料層を堆積する前に、造形プラットフォームが、走査部から離れるように、Z軸に沿ってインクリメントしながら移動することを含んでもよい。
【0064】
本発明の別の態様によれば、付加製造装置に予熱装置が設けられ、上記付加製造装置は、材料ベッドを形成するための材料が作用可能に堆積される造形プラットフォームを含み、上記材料ベッドの表面は材料領域を画定し、さらに上記付加製造装置は上記材料ベッドの表面における走査領域内の堆積された材料を硬化するように構成された走査部を含み、上記走査領域は上記材料領域の一部を形成し、かつ上記走査領域は上記材料領域より小さいものであり、上記予熱装置は、少なくとも1つの予熱要素および、予熱要素から材料領域の残り部分ではなく走査領域へ実質的にエネルギを集束させるように構成された少なくとも1つの反射器または集束構成を含む。
【0065】
本発明の別の態様によれば、付加製造装置に予熱装置が設けられ、上記付加製造装置は、材料ベッドを形成するための材料が作用可能に堆積される造形プラットフォームを含み、上記材料ベッドの表面は材料領域を画定し、さらに上記付加製造装置は上記材料ベッドの表面における走査領域内の堆積された材料を硬化するように構成された走査部を含み、上記走査領域は上記材料領域の一部を形成し、かつ上記走査領域は上記材料領域より小さいものであり、上記予熱装置は、少なくとも1つの予熱要素および、予熱要素から予熱領域における上記材料ベッドの材料の表面にエネルギを集束させるように構成された少なくとも1つの反射器または集束構成を含み、上記造形プラットフォームおよび上記予熱装置は走査領域と予熱領域とが一致するように相対的に変位可能である。
【0066】
少なくとも1つの上記予熱要素は少なくとも1つのランプまたは少なくとも1つのレーザダイオードであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
添付の図面を参照して、例として本発明をさらに説明する。
【
図1】
図1は、本発明による付加製造装置の第1の実施形態の断面の三次元図である。
【
図3】
図3は、
図1の付加製造装置の制御系の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る付加製造装置の第2実施形態の正面断面図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る付加製造装置の第3実施形態の正面断面図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る付加製造装置の第4実施形態の正面断面図である。
【
図7】
図7は、本発明による付加製造装置の第5の実施形態の断面の3次元図である。
【
図9】
図9は、本発明に係る付加製造装置の第6の実施形態の正面断面図である。
【
図11】
図11は、本発明に係る付加製造装置の第七の実施形態を示す正面断面図である。
【
図13】
図13は、本発明に係る付加製造装置の第8の実施形態の正面断面図である。
【
図14】
図14は、本発明による付加製造装置の第9の実施形態の断面の三次元図である。
【
図15】
図15は、本発明による付加製造装置の第9の実施形態の断面の三次元図である。
【
図16】
図16は、本発明による付加製造装置の第10の実施形態の断面の三次元図である。
【
図17】
図17は、本発明による付加製造装置の第10の実施形態の断面の三次元図である。
【
図18】
図18は、本発明による付加製造装置の第11の実施形態の断面の三次元図である。
【
図19】
図19は、本発明による付加製造装置の第11の実施形態の断面の三次元図である。
【
図20】
図20は、本発明による付加製造装置を使用するときに採用することができる走査方法を示す図である。
【
図21】
図21は、本発明による付加製造装置を使用するときに採用することができる走査方法を示す図である。
【
図22】
図22は、本発明による付加製造装置を使用するときに採用することができる走査方法を示す図である。
【
図23】
図23は、本発明による付加製造装置を使用するときに採用することができる走査方法を示す図である。
【
図24】
図24は、本発明による付加製造装置を使用するときに採用することができる走査方法を示す図である。
【
図25】
図25は、本発明による付加製造装置を使用するときに採用することができる走査方法を示す図である。
【
図26】
図26は、本発明による付加製造装置の第12の実施形態の正面断面図である。
【
図28】
図28は、 本発明による付加製造装置の予熱装置と走査部の一例の立体概念図である。
【
図31】
図31は、 本発明に係る付加製造装置の予熱装置の一例を示す正面図である。
【
図32】
図32は、本発明に係る付加製造装置の他の予熱装置の一例を示す正面図である。
【
図33】
図33は、本発明による付加製造装置のさらなる予熱装置の一例の三次元概念図である。
【
図34】
図34は、本発明による付加製造装置のさらなる予熱装置の一例の三次元概念図である。
【
図35】
図35は、 本発明に係る付加製造装置のさらに他の予熱配置の一例の正面図を示す概念図である。
【
図36】
図36は、本発明による付加製造装置のさらに別の予熱装置の一例の正面図を示す概念図である。
【
図37】
図37は、本発明による付加製造装置の別の予熱装置の一例の三次元概念図である。
【
図39】
図39は、既知の付加製造装置および本発明の実施形態による装置によりそれぞれ採用される走査領域の概念図である。
【
図40】
図40は、既知の付加製造装置および本発明の実施形態による装置によりそれぞれ採用される走査領域の概念図である。
【
図41】
図41は、既知の付加製造装置および本発明の実施形態による装置によりそれぞれ採用されるビーム経路の概念図である。
【
図42】
図42は、既知の付加製造装置および本発明の実施形態による装置によりそれぞれ採用されるビーム経路の概念図である。
【
図43】
図43は、本発明による付加製造装置の予熱装置および走査部の三次元概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の以下の説明は、本発明の実施可能な教示として提供される。当業者は、本発明の有益な結果を依然として達成しながら、記載された実施形態に対して多くの変更がなされ得ることを認識するであろう。他の特徴を利用せずに本発明の特徴のいくつかを選択することにより本発明の所望の利益のいくつかを達成できることも明らかであろう。したがって、当業者は、本発明に対する修正および適合が可能であり、そして特定の状況においては望ましいことさえあり得、そして本発明の一部であることを認識するであろう。したがって、以下の説明は、本発明の原理の例示として提供されており、それを限定するものではない。
【0069】
付加製造装置10(以下、「付加製造」を「AM」とも称する)の実施の形態1を
図1および
図2に示す。
図1は座標系(軸X-Y-Z)も示しており、それを参照して付加製造装置10の構造および機能を以下に説明する。
【0070】
付加製造装置10は、造形プラットフォーム14を収容するハウジング12、材料容器16、材料堆積装置18、材料供給装置19、および造形プラットフォーム14の上方にZ軸に沿って離間して配置された2次元走査部20を含む。
【0071】
ハウジング12は、密閉容器であり、制御された処理環境を提供するために使用される。この実施形態において、環境は不活性ガスを含む。これは、真空チャンバや、アルゴン、ヘリウムまたは窒素を含む環境や、あるいは処理および/または処理される材料に有益な他の任意のガス環境が採用され得ることが理解されるであろう。
【0072】
造形プラットフォーム14は、ほぼ平面状であり、付加製造装置10のX軸とY軸とにより定義されるほぼ水平なX-Y平面内に延在するワーク領域28を規定する。造形プラットフォーム14は、加熱部22の形態において相補的な形状をしている予熱装置の上に配置されている。加熱部22は、間隔を置いて配置された複数の加熱体24を含む。加熱体は、抵抗加熱素子または誘導加熱素子であってもよい。加熱体24は、X-Y平面内で格子を形成するように配置されている。
【0073】
造形プラットフォーム14および加熱部22は、加熱部22の下方に配置された一対の直線状の造形プラットフォームのアクチュエータ26によりZ軸に沿って垂直方向に移動可能である。造形プラットフォームのアクチュエータ26は付加製造装置10のY軸に沿って離間している。
【0074】
材料堆積装置18は、使用時にワーク領域28を横切って移動して粉末材料の層を造形プラットフォーム14上に堆積させて材料ベッド25を形成するように構成される。材料供給装置19は、層間に粉末材料を材料堆積装置18に補充するように構成される。堆積層の厚さは典型的には30μmから1000μm程度である。材料容器16は、X-Y平面内で造形プラットフォーム14の周りに延材している。材料容器16は、断熱材料により断熱された側壁17を有する。
【0075】
断熱材の層21も加熱部22の底面に設けられている。
【0076】
付加製造装置10は、移動装置をさらに含む。移動装置は、Y軸に沿って延在し、走査部20が移動可能に取り付けられており、平行で垂直方向に離間した一対の走査レール30を含む。
【0077】
走査部20は検流計スキャナを含み、以下から明らかになるように、ワーク領域28に堆積した粉末材料を固体に硬化するためのレーザビームの形式であるエネルギビームを案内するように構成される。レーザビームのビーム経路27が
図1および
図2に示されている。
【0078】
走査部20は、エネルギ源連結器29においてレーザ(図示せず)の形式のエネルギ源に結合されており、動作中に連続して走査を行うように構成されている。使用中、材料ベッド25に対する走査部20の相対的な位置は、走査部20の動作中、リニアエンコーダ(図示せず)で絶えず測定される。位置データは、(
図3に示す)走査部20の制御システムに供給され、制御システムは、位置情報に基づいて走査パターンを制御/補正して、レーザビームが正確に材料を硬化するように案内される。これにより、走査部20は動作中に必要な走査パターンを走査することができる。これらの態様は、以下でさらに詳細に説明される。
【0079】
走査部20は、いわゆる「縮小走査領域」を有するエネルギビームを供給するように構成されている。換言すれば、走査部20は、Y軸に沿った所定の位置にあるとき、X-Y平面内におけるワーク領域28よりも実質的に小さく、従って材料ベッド25よりも実質的に小さい2次元走査領域を走査することができる。
図1および
図2に明確に示されているように、走査領域は、X軸に沿って造形プラットフォーム14の全幅に亘って延びている比較的に狭いストリップ48の形をしている。この例示的な実施形態では、ストリップ48は長さ600mmおよび幅20mmを有している。
【0080】
付加製造装置10はさらに、走査部20とワーク領域28との間に配置されたエンクロージャ32を含む。エンクロージャ32は、使用時にエネルギビームがワーク領域28および材料ベッド25上に向けられる開口底部および矩形開口部34をその上部に有する矩形箱状要素により形成される。エンクロージャ32は、Y軸に沿って延びる一対の平行で水平方向に離間したエンクロージャレール36に取り付けられている(レールのうちの1つは、断面図を示しているので図面には見えない)。
【0081】
移動装置はさらにリニアアクチュエータ(図示せず)を含む。リニアアクチュエータは、走査部20とエンクロージャ32とが整列されるように、あるいは、ビーム経路27がエンクロージャ32の開口部34と常に一致していることを登録または保証するように、走査部20およびエンクロージャ32を走査レール30およびエンクロージャレール36に沿って同時に動かすように構成される。この整列した位置は
図2に明確に示されている。
【0082】
この例では、レーザビームが材料ベッド25に確実に案内されるように、開口部34の長さは、走査ビームの長さ(600mm)と同じになっている。開口部34の幅は、走査部20が動いている間に、エンクロージャ32がビーム経路27と干渉することなく、ストリップが完全に走査されるために、走査ストリップの幅の少なくとも2倍でなければならない。この例では、開口部34の幅は50mmである。
【0083】
付加製造装置10は、
図1および
図2には示されていない制御システム38を含む。しかしながら、制御システム38の機能構成は
図3に示されている。
【0084】
制御システム38は、走査パターン生成器39、プロセッサ40、コントローラ41、補助システムセンサ42、および位置センサ43を含んでいる。
図3はまた、制御システム38に結合されている走査部20、補助システム44およびリニアアクチュエータ45を示している。
【0085】
走査パターン生成器39は、走査される部分のCADデータに関連付けられた各層およびストリップに対して走査される走査パターンを生成するように構成されている。走査パターンおよび走査手順は、以下の
図20から
図25を参照してより詳細に説明される。
【0086】
プロセッサ40は、走査パターン生成器39から走査パターンデータを受け取り、走査パターンデータをコントローラ41に送り、コントローラ41からフィードバックを受け取り、補助システム44を制御し、補助システムセンサ42からフィードバックを受け取り、そしてコントローラ41および補助システムセンサ42からのフィードバックを制御命令に処理する。
【0087】
コントローラ41は、付加製造装置10の走査部20およびリニアアクチュエータ45を制御し、位置センサ43から位置フィードバックを受け取り、位置フィードバックを動作命令および走査命令に処理し、プロセッサ40にフィードバックを提供するように構成される。
【0088】
次に、走査部20は、使用時において、コントローラ41から走査命令を受信し、エネルギビームを材料ベッド25上に導いて輪郭およびハッチングラインを走査するように構成される。
【0089】
リニアアクチュエータ45は、コントローラ41からの動作命令を受けて、走査部20が走査している間、走査部20およびエンクロージャ32を移動させるように構成されている。
【0090】
補助システムセンサ42は、付加製造装置10の補助システム44の状態に関するフィードバックをプロセッサ40に提供するように構成されている。実施形態に応じて、補助システム44は、予熱システム、材料堆積装置、抽出システム、造形プラットフォーム作動装置、プロセス監視制御システム、層品質監視システム、および雰囲気制御部のうちの1つ以上を含むことができる。
【0091】
位置センサ43は、造形プラットフォーム14に対する走査部20の位置を決定することができる位置エンコーダを含む。位置センサ43は、位置フィードバックをコントローラ41に送信するように構成される。
【0092】
走査レール30およびリニアアクチュエータ45は、制御システム38により制御され、造形プラットフォーム14がY軸に沿って静止している間に、走査部20を走査レール30に沿って移動し、エンクロージャ32をエンクロージャレール36に沿って移動することにより、走査部20およびエンクロージャ32を造形プラットフォーム14に対してY軸に沿って相対的に移動させる。
【0093】
使用中において、加熱部22は、ワーク領域28に堆積した材料をその融点より低い温度に加熱する。このことは、材料を溶融させるため、エネルギ源からより少ない入力エネルギが要求されることになるので、潜在的に生産速度を増加させるという利点を有している。さらに、そのことは、形成される材料中の残留応力を減少させるという利点を有している。例えば、あるチタン合金は、摂氏1604度から摂氏1660度の間でのみ溶けるのに対して、その合金の応力緩和は摂氏480度から摂氏650度の間で生じる。したがって、摂氏480度を超える予熱が材料ベッド25に加えられた場合に、急速凝固プロセス中に発生する熱応力は軽減される。予熱はまた、より延性のある微細構造を生じさせ、上記材料の降伏応力を下げることにより材料の亀裂感受性を減少させる。
【0094】
次に、付加製造装置10は付加製造により物体を形成する。連続した材料層がワーク領域28に堆積されて材料ベッド25を形成し、走査部20により案内されたエネルギビームを使用して、各堆積層における部分が硬化され、先に硬化された層に融合される。各硬化部分は、形成される物体の特定の断面または2次元スライスに対応し、エネルギビームは、当該CADモデルの幾何形状に従って材料ベッド25上の特定の領域に案内される。
【0095】
上述のように、走査部20は、縮小された走査領域を有し、造形プラットフォーム14の全長をY軸に沿った特定の位置から走査することはない。したがって、少なくともいくつかの層を硬化するために、(そのCADの幾何形状から取得された物体の2次元スライスである)個々の層は、より狭い2次元ストリップに分割される。次いで、その層の走査を完了するために、これらのより狭い2次元ストリップが、1度に1つずつ走査される。
【0096】
個々の2次元ストリップを走査するために、走査部20はY軸方向に連続的に移動する。制御システム38は、位置センサ43を使用して、第1の2次元ストリップに対してエンクロージャ32内の開口部34を通して走査できるように、走査部20およびエンクロージャ32が正しい位置にある時を検出し、走査を開始する。走査部20の速度は、走査部20およびエンクロージャ32が走査されるストリップを通過してしまう前にストリップ全体を確実に走査することができるように、走査すべき輪郭およびハッチングラインを考慮して、各走査ストリップの走査時間に基づいて計算される。走査部が走査ストリップの走査を完了すると、制御システム38は再び位置センサからの位置フィードバックを使用して、走査部20およびエンクロージャ32が所定の位置にあるときに、次の走査ストリップの走査を開始させる。このプロセスは、レイヤー全体が走査されるまで繰り返される。動作中の走査部が走査可能にするために、走査部は走査線の位置を補正するための位置センサフィードバックを連続的に使用してスキャナの位置を更新する。
【0097】
ワーク領域に特定の材料層を堆積し、ストリップごとに特定の堆積層の一部を硬化した後、造形プラットフォーム14は、上記の方法で硬化するため、ワーク領域28にさらなる材料層を堆積させる前に、直線状の造形プラットフォームアクチュエータ26を使用するとともに、Z軸に沿って走査部20から徐々に離れるように移動する。Z軸に沿った造形プラットフォームの移動は、堆積される材料層の厚さに対応することとなるものであり、これは、造形プラットフォームの上に形成される材料ベッドの上面が走査部20から一定の距離を維持するようにということである。
【0098】
材料が堆積される方向および各層が走査される方向は、層間で交互となってもよい。一例として、(
図1および
図2に見られるように)第1の材料層を左から右へ堆積させることができる。層の一部が堆積されるとすぐに、走査部20およびエンクロージャ32は、左から右へY軸に沿って材料堆積装置18を追従し、走査プロセスは、材料堆積装置18がまだ粉末を堆積させている間に開始することができる。完全な層が走査されると、材料堆積装置18はY軸に沿って右から左に移動して反対方向に材料を堆積することができる。この場合もやはり、層の一部が堆積されるとすぐに、走査部20およびエンクロージャ32は材料堆積装置18を追従し、層を右から左に走査することができる。このプロセスは、全ての層が処理されるまで続けられてもよい。
【0099】
走査方向が変化し、走査部20およびエンクロージャ32は常に材料堆積装置18をたどるので、材料堆積装置18とエンクロージャ32とは互いに行き違う必要がある。これを可能にするために、材料堆積装置18およびエンクロージャ32は異なるリニアレール上に取り付けられており、異なる機構により作動される。材料堆積装置18はエンクロージャレール36の下のレール47に配置され、そして、エンクロージャ32は、材料堆積装置18とのクリアランスを設定するためエンクロージャ32をZ軸に沿って上方に変位させる垂直変位機構49に結合されており、ワーク領域28を横切って材料を堆積させるときには、エンクロージャ32と材料ベッド25との間を通過する。
【0100】
走査部20は、ある時点で特定の2次元ストリップに収まって形成される物体の輪郭または周辺を走査でき、また、周辺に収まる物体の部分、あるいはその逆の場合に走査できる。
【0101】
第2の実施形態としてAM装置60(付加製造装置)を
図4に示す。AM装置60は、
図1および
図2の付加製造装置10と実質的に同様であり、同様の構成要素、領域および要素を示す場合は同様の参照番号が使用されている。
【0102】
付加製造装置60は、走査部20と造形プラットフォーム14との間に配置されたビームカバー62を含むという点で、
図1および
図2の付加製造装置10とは異なる。ビームカバー62は、その第1の端部64においてエンクロージャ32と一体的に形成されている一方で、その第2の端部66において走査部20のビーム出口領域と取り付けられている。
【0103】
ビームカバー62は、走査部20により提供されるエネルギビーム、および上述の縮小された走査領域を外部環境(例えば、塵埃および他の粒状材料)から隔離するように、実質的に構成されている。
【0104】
付加製造装置60はさらに、エンクロージャ32がエンクロージャレールによりY軸に沿って移動しないという点で、
図1および
図2の付加製造装置10とは異なる。代わりに、エンクロージャ32およびビームカバー62が一体的に形成され、ビームカバー62が走査部20に取り付けられているため、走査レール30に沿って走査部20が移動すればビームカバー62とエンクロージャ32が同時に移動し、これにより、ビーム経路27がエンクロージャ32の開口部34と常に一致することが保証されている。
【0105】
層間で走査方向を変えるときに材料堆積装置18とエンクロージャ32とが衝突しないようにするため、このエンクロージャは、材料堆積装置18をエンクロージャ32の下に通過させるように、Z軸方向に作動され得る。ビームカバー62は、エンクロージャ32がビームカバー62の内側に動くスライド配置を実現することにより、または、エンクロージャ32がZ軸を動くときに変形可能な柔軟なビームカバーを用いることにより、この動きを可能にする。
【0106】
第3の実施形態としてAM装置61(付加製造装置)を
図5に示す。AM装置61は、
図1および
図2の付加製造装置10と実質的に類似しており、同様の構成要素、領域および要素を示す場合は同様の参照番号が使用されている。
【0107】
この実施形態では、2つの材料堆積装置18Aおよび18Bが使用され、材料堆積装置18Aおよび18Bはエンクロージャ32の両側に設けられている。2つの材料供給装置19Aおよび19Bが用いられ、これらは造形プラットフォーム14の向かい合う側にある。このように、材料堆積装置18Aおよび18Bは、走査部20およびエンクロージャ32が材料ベッド25を横切ると材料を堆積する。この構成では、材料の堆積と材料の硬化は並行して行われる。走査部20が左から右へ移動する場合は、右側の材料堆積装置18Bが材料を堆積する。走査部20が右から左へ移動する場合は、左側の材料堆積装置18Aが材料を堆積する。左側の材料堆積装置18Aには左側の材料供給装置19Aにより材料が補充され、右側の材料堆積装置18Bには右側に材料供給装置19Bにより材料が補充される。エンクロージャ32は、Y軸移動のためにそれ自体の専用ガイドレール(図示せず)に取り付けられてもよく、または上述のように走査部20に取り付けられてもよい。
【0108】
第4の実施形態としてAM装置63(付加製造装置)を
図6に示す。AM装置60は、
図1および
図2の付加製造装置10と実質的に同様であり、同様の構成要素、領域および要素を示す場合に同様の参照番号が使用されている。
【0109】
この実施形態では、2つのレールに取り付けられた堆積装置18Cおよび18Dが使用されており、これらはエンクロージャ32の向かい合う側に取り付けられている。2つの材料供給装置19Cおよび19Dが使用され、これらは造形プラットフォーム14の向かい合う側にある。この構成では、左側の材料堆積装置18Cは、走査部20が右から左に移動するときに材料を堆積するために使用され、左側の材料供給装置19Cにより材料が補充される。右側の材料堆積装置18Dは、走査部20が左から右に並進移動するときに材料を堆積し、右側の材料供給装置19Dにより材料が補充される。
【0110】
この実施形態では、材料堆積装置18Cおよび18DがエンクロージャをY軸に沿って行き違いさせる必要がないので、エンクロージャ32はZ軸に沿って作動されない。
【0111】
第5の実施形態としてAM装置70(付加製造装置)を
図7および
図8に示す。AM装置70は、
図1および
図2の付加製造装置10と実質的に同様であり、同様の構成要素、領域および要素を示す場合に同様の参照番号が再び使用されている。
【0112】
AM装置70は、Z軸に沿って走査部20の真下に配置されたカバープレート72を含むという点で
図1および
図2の付加製造装置10とは異なる。カバープレート72は、ほぼ平面状であり、材料ベッド25に対して平行に延びている。
【0113】
カバープレート72は、走査部20の本体を分離し、よって、光学チャンバ73を、物体が動作上形成されている処理チャンバ74から分離している。
【0114】
光学システムの機能は、高温下および空気中の汚染物質の存在下で、悪影響を受けて損傷が発生することが知られており、そのいずれもが処理チャンバ74内に存在する可能性がある。カバープレート72は、走査部20のビーム出口領域を確実に開いたままにして材料の走査を可能にしながら、光学チャンバ73を処理チャンバ74から分離するように構成されている。カバープレート72は、走査部20の左右にある2つの別々の薄いシート材料からなり、それらは走査部20において互いに接続されている。各材料シートは、走査部がカバープレート機構76に向かって移動すると、カバープレート機構76に巻き取られ、走査部20がカバープレート機構76から離れると機構76から繰り出される。巻き取りおよび繰り出しは、コイルばねを使用することにより、あるいはシートを能動的に巻き取りまたは繰り出しするためのモータを使用することにより実現できる。
【0115】
カバープレート72の縁部は、処理チャンバ74と光学チャンバ73との間の分離を保証するために、Y軸に沿ってシールを有する長手方向カバープレートガイド78の内側を走っている。シールはまた、カバープレート72が動作中に水平位置に維持されることを保証する。
【0116】
図7および
図8のAM装置70はまた、付加製造装置10のエンクロージャ32の代わりにストリップ48に近接して加熱及び抽出装置77を含むという点で
図1および
図2の付加製造装置10とは異なる。加熱及び抽出装置77は、走査されている領域内の材料の局所的な加熱を可能にし、それは加熱部22の必要性または付加を不要とし、それによりエネルギ容量および/またはZ方向の材料の熱勾配を減少させる。熱勾配を減少させることは、微細構造制御を可能にし、そして熱により誘発される残留応力を減少させ得る。本発明の実施形態による加熱配置は、以下により詳細に説明される。
【0117】
加熱及び抽出装置77は、
図1および
図2のエンクロージャ32と同じ方法で(すなわち、水平ガイドレールにより)走査部20と共にY軸に沿って移動可能である。
【0118】
第6の実施形態としてAM装置150(付加製造装置)を
図9および
図10に示す。AM装置150は、
図1および
図2の付加製造装置10と実質的に同様であり、同様の構成要素、領域および要素を示す場合に同様の参照番号が再び使用されている。
【0119】
AM装置150は、エンクロージャ32を含まないという点において
図1および
図2の付加製造装置10とは異なる。代わりに、AM装置150は、走査領域(すなわち、走査されているストリップ48内の領域)から蒸気、スパッタなどを抽出するための抽出装置152を含む。
【0120】
抽出装置152は、
図10に最もよく示されているように、上面視が長方形であってストリップ48または走査領域の周りに延材するフレーム部材160を含む。2つの上方に延びる抽出部材162、164がストリップ48または走査領域に向かい合う側でフレーム部材160に取り付けられている。各抽出部材162、164は、その下端に、ストリップ48または領域に直接隣接する細長い抽出開口またはノズル170、172を画定し、その上端に円形の抽出口166、168を画定する。抽出口166、168は、使用時には可撓性ホース(図示せず)を介して抽出ポンプ(図示せず)に接続されている。抽出部材162、164は、ビーム経路から離れた走査領域から蒸気および/またはスパッタを抽出するように構成される。抽出部材162、164は、同時に作動してもよく、または抽出部材162、164のうち1つのみが特定の時点で作動してもよい。
【0121】
典型的には、抽出装置152が動かされているとき、その先導側から離れる抽出方向で蒸気/スパッタを抽出することが望ましい。これを連続的に達成するために、走査部20および抽出装置152の移動方向の変化に従って抽出方向は、逆にすることができる。言い換えれば、走査部20を一方向に移動させるとき、抽出部材162は作用可能であり、抽出部材164が非アクティブであり得る。走査部を別の方向(この場合は反対方向)に移動させるとき、抽出部材164は作用可能であり、抽出部材162が非アクティブであり得る。抽出はノズル170、172を通して行われ、蒸気/スパッタは抽出口166、168を通して放出される。これにより、使用時に抽出方向が走査領域から離れることを保証できる。
【0122】
したがって、抽出装置152は、ストリップ48または走査領域の両側にガス抽出システムを提供し、ガス流は、走査領域において円形の抽出口166、168から細長い抽出ノズル170、172へと均等に分配され、これにより、ビーム経路と干渉しないで、ストリップ48からの抽出が行われる。
【0123】
抽出装置152は、2対のガイドレールを含む移動装置により、造形プラットフォーム14に対してY方向およびZ方向に移動可能である。具体的には、抽出装置152のフレーム部材160は、
図9および
図10に示すように、一対のY軸ガイドレール158および一組のZ軸ガイドレール156に取り付けられている。このようにして、抽出装置152を水平またはY方向に移動させて、抽出装置152を走査部20と確実に一致させたままにすることができる。さらに、抽出装置152は、上述のように、使用中に材料堆積装置18の移動が妨げられないように、独立してZ方向に上下に移動することができる。抽出装置152は、リニアアクチュエータ(図示せず)により動作可能に動かされる。
【0124】
第7の実施形態としてAM装置180(付加製造装置)を
図11および
図12に示す。AM装置180は、
図1および
図2の付加製造装置10と実質的に同様であり、同様の構成要素、領域および要素を示す場合に同様の参照番号が再び使用されている。
【0125】
AM装置180は、エンクロージャ32を含まないという点で
図1および
図2の付加製造装置10とは異なる。代わりに、AM装置150は、
図9および
図10を参照して説明したように抽出装置152を含む。AM装置180は、抽出装置152の内面に固定された赤外線加熱装置182をさらに含み、走査されている領域内の材料の局所的な加熱を可能にし、加熱部22の必要性を取り除き、それによりエネルギ容量および/またはZ方向の材料の熱勾配を減少させる。加熱装置182は、抽出装置152と共にY軸およびZ軸に沿って移動するように固定されている。加熱装置182のような加熱装置の特徴は以下により詳細に説明される。
【0126】
図7および
図8を参照して説明したように、AM装置180は、走査部20の本体を分離するカバープレート72をさらに含むため、光学チャンバ73と物体を動作可能に形成する処理チャンバ74とを分離する。
【0127】
第8の実施形態としてAM装置80(付加製造装置)を
図13に示す。この実施形態では、走査部84がY軸方向で静止している間に、造形プラットフォーム82および処理チャンバ86内の他の構成要素の移動により、造形プラットフォーム82および走査部84がY軸に沿って相対的に移動するように構成されている。
【0128】
言い換えれば、走査部84は、固定的に取り付けられている一方で、造形プラットフォーム82は、Y軸に沿って移動可能であって、ワーク領域88に堆積された材料の各層がストリップ毎に走査されることを可能にする。
【0129】
この実施形態では、造形プラットフォーム82、加熱ユニット90、材料容器92、および造形プラットフォームアクチュエータ94は、Y軸に沿って動作可能に移動するように造形プラットフォームレール96に取り付けられている。走査部84、ビームカバー98、エンクロージャ100、材料堆積装置102、および材料供給機構104は、処理チャンバ86の壁に固定的に取り付けられている。
【0130】
この実施形態では、2つの材料堆積装置102および2つの材料供給機構104が使用されている。造形プラットフォーム82が右方向に移動する間に左側の材料堆積装置102が材料を堆積し、造形プラットフォーム82が左方向に移動する間に右の材料堆積装置102が材料を堆積する。走査部84は、材料堆積装置102が材料を堆積している間に材料を走査できる。
【0131】
比較的敏感な光学系(すなわち走査部84)を定位置に固定する一方で、より堅牢な構成要素(造形プラットフォームなど)をその光学系に対して動作可能に動かすことは、有利であり得ることが分かった。
【0132】
第9の実施形態としてAM装置105(付加製造装置)を
図14および
図15に示す。本実施形態において、走査部106およびエンクロージャ/ビームカバー107は、二軸のガントリーシステム108に取り付けられている。ガントリーシステム108は、走査部106をX軸およびY軸に沿って移動させることを可能にする一対のX軸レール108Aおよび一対のY軸レール108Bを提供する。これは、走査部106が造形プラットフォーム109に対してY軸に沿って移動可能であるだけではないという点で上述の実施形態と異なる。
【0133】
同様の性能を備えるために、走査部、エンクロージャおよび材料堆積装置が定位置に据え付けられる一方で、造形プラットフォーム109がX軸およびY軸に沿って移動可能であってもよいことを理解されたい。
【0134】
図15に最もよく示されるように、この構成により、造形プラットフォーム109をX軸に沿って拡大することが可能になる。走査部106をX軸に沿って平行移動させることにより、造形プラットフォーム109の異なる部分109Aおよび109Bを走査することができる。
【0135】
第10の実施形態としてのAM装置130(付加製造装置)を
図16および
図17に示す。AM装置130は、
図14および
図15の付加製造装置105と実質的に類似しており、同様の構成要素、領域および要素を示す場合には同様の参照番号が使用されている。しかしながら、本実施形態においては、造形プラットフォーム132は、
図14および
図15の実施形態のように、X-Y平面内で長方形ではない。代わりに、造形プラットフォーム132はX-Y平面内で弓形である。この形状は主に例として示されていること、およびいくつかのカスタム構成を使用できることを理解されたい。そのようなカスタム構成は、ある装置がある特定の種類の形状を作り出すことを常にあるいは殆どの場合に要求されるという場合に利点を有すると考えられる。例えば、航空宇宙産業では、航空機の胴体内のリブは通常、(航空機の胴体の直径により定義される)共通の半径を有するかなり細長い部品である。これらの部品については、矩形の造形プラットフォームは、これらの部品の形状を許容するために比較的大きくならなければならず、よって、理想的なソリューションとならないかもしれない一方で、X軸およびY軸の間の同期動作が造形プラットフォームにおおけるカスタム形状の走査を可能とする点において、ガントリーに設けられた走査部は、これらのタイプの部品をより効率的に製造可能である。
【0136】
第11の実施形態としてのAM装置190(付加製造装置)を
図18および
図19に示す。AM装置190は、
図16および
図17のAM装置130と実質的に同様であり、同様の構成要素、領域、および要素を指すのに同様の参照番号が使用されているが、AM装置190は、エンクロージャ/ビームカバー107を欠く点が異なり、代わりに、
図9および
図10を参照して説明したような、独立して移動可能な抽出装置152を組み込んでいる。
【0137】
図20から
図25は、本発明によるAM装置を使用するときに採用することができる走査方式を示している。
【0138】
通常、走査方式は、輪郭(部品のエッジ)を走査するために使用される線分(開始座標と終了座標を含む)と(この輪郭の内側の領域を埋めるための)ハッチングラインから構成される。
【0139】
図20は、そのCADの幾何形状から得られた部品の2次元スライス110を、より小さい2次元ストリップ112~119に分割できることを示している。ストリップ112~119の寸法は、固定でも可変でもよいことを理解されたい。
【0140】
部品のスライス110は、走査部、造形プラットフォーム、およびエンクロージャまたはビームカバーなどの他の構成要素が、相対的に移動しながら各ストリップ112~119を別々に走査することにより走査される。加熱システムおよび抽出システムは、走査部および/または造形プラットフォームと一緒に/同時に移動してもよい。
【0141】
図21は、各ストリップ112~114に対する例示的な走査パターンを示す。各ストリップの輪郭120およびハッチングライン122は、
図21のストリップ112に示すように、次のストリップが走査される前に完了する。
【0142】
すべての関連するハードウェア要素(例えば、走査部、エンクロージャ、加熱および抽出システム)が正しい位置にある前にストリップが走査されないことを保証するために、位置検出装置(例えば位置エンコーダ)が使用されてもよく、それにより、走査部がエンクロージャおよび/または他の機構要素により形成される縮小領域のみを走査することが保証される。
【0143】
ストリップ112および113を参照して例示的な走査シーケンスを
図22に示す。
図22に示すように、各ストリップの輪郭が最初に走査され、続いてそのストリップのハッチングラインが走査される。次のストリップは、前のストリップが完了したときにのみ走査される。輪郭は、ハッチングラインの前、後、またはその前後に走査され得ることに留意されたい。
【0144】
ハッチングラインは、X-Y平面内において様々な角度で走査され得る。全てのストリップのハッチングラインは、
図23に示すように、実質的に平行であってもよく、異なるストリップのハッチングラインは、
図24に示すように、異なる角度で推移してもよく、そして/または、
図25に示すように、ハッチングラインの角度は同じストリップ内で変化してもよい。後続の層の重なり合う領域におけるハッチングラインもまた異なる角度をなしていてもよい。
【0145】
第12の実施形態としてのAM装置210(付加製造装置)を
図26に示す。AM装置210は、
図7および
図8を参照して説明したAM装置70と実質的に類似しているが、特に本発明の実施形態による加熱配置に関して所定の態様を強調するため、装置210を以下により詳細に説明する。
【0146】
AM装置210は、造形プラットフォーム214、材料容器216、材料堆積装置218、材料供給装置219および造形プラットフォーム214の上方にAM装置210のZ軸に沿って離間した2次元走査部220を収容するハウジング212を含む。
【0147】
ハウジング212は密閉されたエンクロージャであり、上述のように制御された処理環境を提供するために使用されてもよい。
【0148】
造形プラットフォーム214は、概して平面状であり、造形プラットフォーム214の下に配置された一対のリニア造形プラットフォームのアクチュエータ222の形におけるプラットフォーム変位装置により、Z軸に沿って垂直方向に変位可能である。造形プラットフォームのアクチュエータ222はAM装置210のY軸に沿って離間している。
【0149】
材料堆積装置218は、使用時に、造形プラットフォーム214の上方に画定されたワーク領域224を横切って移動し、造形プラットフォーム214上に粉末材料の層を堆積させて材料ベッド226を形成するように構成される。材料供給装置219は、層間において粉末材料を材料堆積装置218に補充するように構成されている。各堆積層の厚さは、通常、30μmから1000μm程度である。材料容器216は、X-Y平面において、造形プラットフォーム214の周りに延材する。材料容器216は、断熱材料により断熱された側壁217を有する。
【0150】
断熱材料の層221も造形プラットフォーム214の下に設けられている。さらに、補助加熱部223が造形プラットフォーム214と層221との間に配置されている。補助加熱部223は、間隔を置いて配置された複数の加熱体225を含む。加熱体225は、抵抗加熱素子または誘導加熱素子であってもよい。加熱体225は、X-Y平面内に格子を形成するように配置されている。
【0151】
AM装置210はさらに、平行であって垂直方向に離間してY軸に沿って延材する一対の走査レール230を含む移動装置を含み、走査部220は移動可能に取り付けられている。
【0152】
以下から明らかになるように、走査部220は検流計スキャナを含み、ワーク領域224内に堆積された粉末材料を固体物体に硬化するために、レーザビームの形態のエネルギビームを導くように構成される。レーザビームのビーム経路232が
図26に示されている。
【0153】
走査部220は、エネルギ源結合部234でファイバ供給レーザ(図示せず)の形態のエネルギ源に結合されており、動作中に連続走査で使用するように構成されている。使用中、材料ベッド225に対する走査部220の位置は、移動中にリニアエンコーダ(図示せず)により継続的に測定される。位置データは、走査部220の制御システム(
図27に示す)に供給され、制御システムは、位置情報に基づいて走査パターンを制御/補正し、レーザビームは、正確に材料を硬化するように案内される。これにより、走査部220は動作中に必要な走査パターンを走査できる。これらの態様は、以下でさらに詳細に説明される。
【0154】
走査部220は、いわゆる「縮小走査領域」を走査するためのエネルギビームを供給するように構成されている。そのような走査領域(「S」)は、
図33、34、37、39および40に最もよく示されている。したがって、走査部220は、Y軸に沿った所定の位置にある場合、X-Y平面内のワーク領域224の一部であって、実質的にそれよりも小さく形成されるものであって、また、材料ベッド226の表面236により画定される材料領域よりも実質的に小さい、2次元走査領域を走査できる。特に、走査領域は、材料ベッド226のY方向の長さよりも実質的に狭い一方で、材料ベッド226の表面236のX方向の全幅に亘って広がってもよく、それにより、相対的に高いアスペクト比で領域を形成してもよい。そのような材料領域(「M」)もまた
図33、34、37、39および40に最もよく示されており、これらの態様は以下により詳細に説明される。
【0155】
AM装置210は、走査部220と造形プラットフォーム214との間に配置された予熱装置238をさらに含む。予熱装置238は、2組の赤外線ランプ242と、この赤外線ランプ242からの放射を、本実施形態においては走査部220の走査領域と一致する予熱領域に、集束させるように構成された反射装置244とを含む。
【0156】
赤外線ランプ242は、動作中に走査部220からのエネルギビーム232がランプ242と反射装置244との間を通過するように、走査領域の両側に取り付けられる。反射装置244は、走査領域の両側に1つずつの、2つのミラーにより設けられる。各ミラーは、Y-Z平面で見たときに、楕円形の頂点領域250を有し、その下にランプ242のうちの1つが配置されている。
【0157】
反射装置244は、走査部220のエネルギビーム232がミラー間の予熱装置238を介して材料ベッド226上に通過することを可能にする中央の開口部246を画定するように形成されている。
【0158】
予熱装置238は、操作中に発生する蒸気およびスパッタを抽出するために、一方のミラーの下側に配置された抽出口248およびガス出口249の形態の一体型抽出装置を含む。予熱装置238の構成要素および機能は、以下でさらに詳細に説明される。
【0159】
予熱装置238は、平行で水平方向に間隔を置いてY軸に沿って延びるように配置された一対の加熱ガイドレール240に取り付けられている(一方のレールは断面図であるので
図26では見えない)。
【0160】
移動装置はさらにリニアアクチュエータ(図示せず)を含む。リニアアクチュエータは、走査部220および予熱装置238が垂直方向に整列した状態でエネルギビーム232が予熱装置238の中央の開口部246を通過することができるように、走査部220および予熱装置238を走査レール230および加熱ガイドレール240に沿ってそれぞれ同時に移動させるように構成されている。
【0161】
この例では、開口部246の長さは、レーザビームを材料ベッド226上に案内されることを保証するために、走査ストリップの長さ(600mm)と同じである。走査部220の移動中に予熱装置238とビーム経路232とが干渉することなくストリップが完全に走査されることを保証するために、開口部246の幅は、走査ストリップの幅の少なくとも2倍であることが好ましいことが分かった。この例では、開口部246の幅は50mmである。
【0162】
走査方向を変えることができ、走査部220と予熱装置238は材料堆積装置218に追従するので、材料堆積装置218と予熱装置238は通常互いに行き違う必要がある。これを可能にするために、材料堆積装置218および予熱装置238は異なるリニアレール上に取り付けられ、異なる機構により作動される。材料堆積装置218がワーク領域224を横切って材料を堆積させる場合に予熱装置238と材料ベッド226との間を通過するための間隙を設けるため、材料堆積装置218は予熱装置238のレール240の下のレール247に取り付けられ、予熱装置238はさらにZ軸に沿って予熱装置238を上方に変位させるように構成された垂直変位機構251に結合される。
【0163】
他の実施形態では、走査部220および予熱装置238は、Y軸に沿って相対的に移動可能であり得ることを理解されたい。このような場合、使用時に、走査領域が予熱装置238の予熱領域と一致するように、走査部220および予熱装置238を適切なときに整列してもよい。
【0164】
AM装置210は、制御システム252をさらに含む。制御システム252の機能構成要素を
図27に示す。
【0165】
制御システム252は、走査パターン生成器253、プロセッサ254、コントローラ255、予熱温度センサ256A、補助システムセンサ256Bおよび位置センサ257を含む。
図27は、走査部220、予熱装置238、補助システム258、およびリニアアクチュエータ259も示しており、これらはすべて制御システム252に通信可能に接続されている。
【0166】
走査パターン生成器253は、走査される部分のCADデータに基づいた、またはそれに関連付けられた、各層およびストリップに対して走査すべき走査パターンを生成するように構成される。
【0167】
プロセッサ254は、走査パターン生成器253から走査パターンデータを受け取り、走査パターンデータをコントローラ255に送り、コントローラ255からフィードバックを受け取り、補助システム258および予熱装置238を制御し、予熱温度センサ256Aおよび補助システムセンサ256Bからのフィードバックを受け取り、コントローラ255、予熱温度センサ256Aおよび補助システムセンサ256Bからのフィードバックを制御命令に処理する。
【0168】
コントローラ255は、AM装置210の走査部220およびリニアアクチュエータ259を制御し、位置センサ257から位置フィードバックを受け取り、位置フィードバックを移動命令および走査命令に処理し、プロセッサ254にフィードバックを提供するように構成される。
【0169】
次に、走査部220は、コントローラ255から走査命令を受信し、使用時に、エネルギビームを材料ベッド226上に制御/案内/方向付けして輪郭およびハッチングラインを走査するように構成されている。
【0170】
リニアアクチュエータ259は、コントローラ255から移動命令を受信し、走査部220が走査している間に走査部220および予熱装置238を移動させるように構成される。
【0171】
予熱温度センサ256Aは、材料ベッド226の表面236の温度を測定してプロセッサ254にフィードバックを提供するように構成されている。
【0172】
補助システムセンサ256Bは、AM装置210の補助システム258の状態に関するフィードバックをプロセッサ254に提供するように構成される。実施形態に応じて、補助システム258は、材料堆積装置、抽出システム、造形プラットフォーム作動装置、プロセス監視制御システム、層品質監視システム、および雰囲気制御ユニットのうちの1つ以上を含むことができる。
【0173】
位置センサ257は、造形プラットフォーム214に対する走査部220の位置を決定することができる位置エンコーダを含む。位置センサ257は、位置フィードバックをコントローラ255に送信するように構成される。
【0174】
上述の移動装置は、造形プラットフォーム214がY軸方向に静止している間に、走査部220および予熱装置238を移動させることを可能にする。このようにして、予熱装置238の予熱領域と走査部220の走査領域とは、表面236により画定された材料領域を横切って同期して移動することができる。
【0175】
使用時において、材料堆積装置218を用いて造形プラットフォーム214上に材料の層を堆積させて材料ベッド226を形成する。各層が堆積された後、または層が堆積されている間、堆積された層の一部は予熱装置238を用いて予熱され、走査部220を用いて走査される。一体型抽出装置は、走査領域から蒸気とスパッタを連続的に抽出する。硬化された部分のそれぞれは、形成されるべき物体の特定の断面または2次元スライスに対応することを理解されたい。
【0176】
AM装置210は、材料領域全体を走査部220で走査されないか、または予熱装置238で一度にまたは同時に予熱されないように構成される(すなわち、領域全体を同時に走査し加熱することができない)。代わりに、AM装置210は材料領域を複数の2次元ストリップに分割するように構成され、各ストリップは走査領域のそれに等しい領域を有する。したがって、予熱装置238は材料領域を横切って移動して材料領域を連続的に予熱し、エネルギを走査領域に集束させ、残りの材料領域には集束させないように構成されている。走査部220は、予熱装置238および走査部220がY軸に沿って移動している間に、ストリップに含まれる材料を連続的に硬化するために使用される。予熱装置223(補助加熱部)は、完全な材料ベッド226を所定の温度に予熱し、予熱装置238が走査領域を横切って温度をさらに上昇させるのを可能にするために使用される。場合により、予熱装置238は予熱装置223(補助加熱部)を不要にする。
【0177】
予熱装置238は、走査領域に堆積した材料をその融点より低い温度に加熱する。これは、材料を溶融するためにエネルギ源から必要とされる投入エネルギがより少ないので、潜在的に生産速度を増加させるという利点を有する。さらに、そしてより重要なことに、それは形成される材料中の残留応力を減少させるという利点を有する。例えば、あるチタン合金の応力緩和は摂氏480度から摂氏650度の間で起こる一方、合金は摂氏1604度から摂氏1660度の間でのみ溶融する。したがって、摂氏480度を超える予熱が材料ベッド226に加えられると、急速凝固プロセス中に発生する熱応力が軽減されるであろう。
【0178】
特定の材料層を堆積し、堆積した層をストリップごとに硬化した後、硬化のためのさらなる材料層を堆積する前に、造形プラットフォーム214をZ軸に沿って漸進的に下げる。Z軸に沿った造形プラットフォーム214の移動は、堆積される材料層の厚さに対応することとなるものであり、これは、材料ベッド226の表面236が走査部220および予熱装置238から一定の距離を維持するようにということである。
【0179】
走査部220は、ある時点で特定の2次元ストリップに収まって形成される物体の輪郭または周辺を走査でき、続いて、既に述べたように、周囲に収まる物体の部分を走査できる。
【0180】
走査部220は、X軸またはY軸に対して斜めの経路に沿って走査してもよい。代替の実施形態では、予熱装置238はX-Y平面内で角度的に変位可能であり得る。例えば、予熱装置238は、走査領域がX-Y平面に沿って延びる方向を変えるために、連続する層の間で45度回転させることができる。このようにして、異なる層のハッチングラインを異なる角度で走査することができる(すなわち、「クロスハッチング」である)。これは部品の均一性および/または他の材料特性を改善することができる。
【0181】
本発明の実施形態において採用され得る様々な加熱配置構成が、
図28から
図38に示されている。
【0182】
図28~
図30は、走査部260および予熱装置262を示しており、これらは
図26を参照して説明したものと実質的に同様である。予熱装置262は、2つの略楕円形ミラー264と2組の赤外線ランプ266とを含み、上述のように、走査部260のエネルギビーム270が予熱装置262を通過して材料ベッド(図示せず)の表面272上に通過することを可能にする中央開口268を画定する。
【0183】
図31および
図32は、予熱装置274、276を、付加製造装置のほぼX軸に沿って延びる1つまたは複数の集束領域に放射線を供給して集束させるように成形および寸法設定することができる方法を示している。
【0184】
図31において、予熱装置274のランプ278および反射器280は、集束領域282が走査領域の幅の中心に沿って延びるX軸に沿った狭いストリップ(したがってY軸に沿った点として示される)であるように構成される。さらに、走査部は、エネルギビーム284を最も高い予熱温度を有する材料ベッド上の領域であるこの集束領域282に導くように構成される。
【0185】
図32において、予熱装置276のそれぞれのランプ286および反射器288は、方向矢印290により示されるように、Y軸に沿って移動可能であり、それらのそれぞれの集束領域292、294の位置をY軸に沿って調整可能であり、一方で走査部のエネルギビーム296が予熱装置276を通過することを可能にしたままである。
図32に示す例では、エネルギビーム296は、間隔をあけて配置された集束領域292、294の間のゾーンに導かれ、上記の点よりも広い(
図31参照)。
【0186】
図33の予熱装置298は、平らで直立した側面反射器300を含む。典型的には、加熱装置298は楕円形反射体302の各面に1つずつこのような側面反射体を含む。1つまたは複数の側面反射体を使用すると、材料表面全体にわたってより均一に加熱され、抽出方法の効率が向上することが分かった。
【0187】
図34の予熱装置304は、楕円形の反射器310のうちの1つの下部領域に組み込まれた抽出口306およびガス出口308の形態の一体型抽出装置を含む。これにより、おそらく加熱と同時に、動作中に発生した蒸気およびスパッタの抽出が可能になる。
【0188】
図35の加熱装置312は、楕円形の反射器314の1つの下部領域に組み込まれており、走査領域の一方の側に配置された抽出口316およびガス出口318を含む抽出装置を有する。加熱装置312は、他方の楕円形の反射器314の下方領域に組み込まれ、走査領域の反対側にガス入口319を伴うノズル317をさらに有し、これは、ガスを走査領域に供給して抽出口316を介してエネルギビーム320から遠ざける。このAM装置は、抽出口間またはノズルと抽出口との間のガスの流れの方向を調整するように構成された任意の適切な流れ制御手段を含み得る。
【0189】
別の実施形態では、加熱装置は、楕円形の反射器のそれぞれの下部領域に、抽出口とガス出口と、ガス入口を有するノズルとを組み込んでもよい。そのような場合、付加製造装置は、加熱装置の移動方向および/または特定の期間中に走査が行われる方向に応じて、抽出口間で抽出を切り替えることができるように構成することができる。例えば、走査が左から右へ行われるとき、蒸気がエネルギビームから確実に引き出されるように、抽出を左から行うことができ、逆もまた同様である。
【0190】
図36の予熱装置322は、略円筒形のスリーブ328により楕円形の反射器326のうちの1つに取り付けられた少なくとも1つの温度センサ324を含む。センサ324は、材料ベッドの表面上の温度を測定するように構成されている。この例では、破線330で示されるように、走査領域の温度が測定される。予熱装置322の加熱レベルは、使用中に、温度センサ324により測定された温度に基づいて、連続的にまたは周期的に調整することができる。
【0191】
図37および
図38の例では、複数の予熱装置332、334、336が設けられ、予熱装置332、334、336はAM装置のX軸に沿って間隔を空けて配置されている。
図38に最もよく示されているように、ランプを設置することを可能にするために、隣接する予熱構成はY軸に沿って互いに対してわずかにずれている。全ての予熱装置の集束位置がX軸に沿って整列することを保証するために、予熱装置は適宜回転されている。予熱装置は、Y軸に沿って造形プラットフォームに対して一緒にまたは互いに独立して移動可能であってもよい。さらに、予熱装置のランプは一緒にまたは互いに独立して励起されてもよい。
【0192】
図39~42は、本発明342の実施形態に従って設けられる走査領域Sおよびビーム経路Pと比較した、既存の付加製造装置340(図中で「従来技術」と記されている)に設けられ得る走査領域Sおよびビーム経路Pを示す。参考のために、走査部341およびエネルギ源カップリング343も示されている。
【0193】
走査部341が固定されている既存の付加製造装置340の場合、ビーム経路Pにより画定される走査領域Sのサイズは通常、実質的に材料領域Mのサイズに対応し、典型的には円形または正方形の領域である。走査領域Sの寸法は、付加製造装置の光学的レイアウトに応じて変わり得るが、例えば300mm×300mm程度であり得る。有用な走査領域の寸法は、十分に小さいエネルギビームスポットサイズを維持する能力により制限される。レーザビームの場合、有用な領域はレーザビームの品質と集光光学系の限界により決まる。
【0194】
光学レイアウトを変更することにより、上記の寸法を例えば600mm×600mmに増大させることが可能であることが知られている。上述のように、本発明の走査領域は、材料ベッドの表面により画定される材料領域M全体を覆わないストリップの形になるように縮小される。この例では、ビーム経路Pにより形成されたストリップSは、付加製造装置のX軸に沿って造形プラットフォームの全幅にわたって延びている。この例では、走査領域のサイズは600mm×20mmである。材料領域のサイズは、Y方向にはるかに大きくすることができ、この例では1200mmである。したがって、Y方向におけるシステムのサイズは、光学システムにより制約されるのではなく、機械的考察によりのみ制約される。したがって、使用において、層の予熱および硬化はストリップごとに行われる。
【0195】
別の予熱装置344が
図43および
図44に概念的に示されている。参考のために、走査部345およびエネルギ源カップリング346も示されている。この実施形態では、予熱装置344は、(材料領域Mのサブセットを形成する)走査領域Sを照射するように構成されたダイオードレーザ347のアレイにより設けられる。レーザ347は、
図43に示すようにX軸に沿って配置され、ビーム整形光学系348と組み合わせて使用される。レーザビーム経路Lは、走査領域Sを画定する方法を説明するために示されている。
【0196】
ダイオードレーザの比較的速いスイッチングおよび高いパワー密度は急速な加熱を提供することができ、そして比較的均一な予熱が起こるように、未硬化の粉末と既に硬化した粉末との間の熱伝導の差を最小にするのを助け得る。
【0197】
本発明の実施形態は、既存の粉末ベッド溶融のAMプロセスおよび/またはAMで使用される構成要素に関連する問題の少なくともいくつかを改善すると考えられる。
【0198】
2次元のスキャナおよび/または抽出装置および/または加熱装置および/または造形プラットフォームを設けることで、使用に材料ベッドの表面に対してほぼ平行な方向に相対的に移動させることができるという方法よりも多くの利点が得られる。
【0199】
本発明を実施すると、AMシステムのサイズ、そしてまたこのシステムで製造できる部品のサイズを劇的に増大させることができると考えられる。走査部および/または抽出装置および/または加熱装置および/または造形プラットフォームは、Y軸に沿って機械的に動かすことができるが、必要に応じて追加の構成要素をX軸に沿って使用することができる。走査部および/または抽出装置および/または加熱装置をX軸に沿って作動させて、X軸に沿った造形容積を増大させるか、または独特の形状を作り出すことを可能にすることができる。場合によりは、走査部および/または抽出装置および/または加熱装置および/または造形プラットフォームは、Y軸およびX軸に沿って機械的に移動することができる。
【0200】
単一の走査部、ひいては単一のエネルギビームを使用することができるので、同じAMシステム内の異なる走査部間の重複領域に関連する問題は回避される。さらに、単一の走査部を使用すると、平均故障間隔が短くなり、したがって「スクラップ」部品を製造するリスクが減少すると考えられる。
【0201】
ポリゴンタイプのスキャナの実装とは対照的に、2次元スキャナは、限定された走査領域内で輪郭を走査することを可能にし、
図20から
図25を参照して説明した方法を含むがこれに限定されない様々な走査方法を実施することができる。
【0202】
図面には示されていないが、AM装置は、X軸に沿って離間してY軸に沿って造形プラットフォームに対して移動可能な複数の走査部(またはその逆)を含めることにより拡大することができ、これらは走査部自体が移動してもよいし、造形プラットフォームが移動してもよい。
【0203】
従来の走査方法は、(特に輪郭に関して)広い領域を走査することを必要とし得る。そのような方法を採用する場合、予熱、蒸気抽出および/またはスパッタ除去を実行することは困難であり得る。本発明の実施形態では、走査領域が縮小され、走査される各層が複数のストリップに分割され、それらが1つずつ走査される。これにより、場合によっては、これらのシステムが走査部および/または造形プラットフォームとともに移動する場合、予熱、蒸気抽出およびスパッタ除去がより効率的、且つ、小さい距離に亘って実行される。
【0204】
さらに、走査部の走査領域を減少させることにより、走査部と材料ベッドとの間に比較的大きい入射角を有することに関連する問題は、造形物の1方向について回避することができる。
【0205】
本発明で使用される縮小走査領域は、いくつかのさらなる利点を有する。例えば、走査領域に近接している蒸気およびスパッタ除去システム、および/または予熱システムのような、局所抽出装置を導入することが可能であると考えられる。これらのシステムは、常に縮小された走査領域で機能しながら、走査部と同じ方法で造形プラットフォームに対して移動できる。
【0206】
抽出および加熱システムは、それら自身のレールまたはガイドに取り付けることができる。これは、動きの方向を変える場合に有用であり得る。例えば、加熱が常に走査領域の前で行われるようにするなど、加熱領域は走査領域に対して移動させることができる。これはまた、蒸気/スパッタがビーム経路を通って抽出されないようにすることにより、抽出の方向が走査領域から離れることを確実にし得る。
【0207】
例えば、走査部は第1のリニアガイドまたは移動装置に取り付けられ、個々の作動装置で作動される一方、抽出装置は第2のリニアガイドまたは移動装置に取り付けられ、異なる作動装置で作動されることが望ましい。その結果、走査部に対する抽出装置の位置を調整することができる。これは、左から右へ移動するときと右から左へ移動するときとで異なる要求を補償するために移動方向を変更するときに有利である。1つの利点は、例えば、加熱領域が常に走査部の走査経路において少し前方に確実に位置するために、加熱装置による加熱領域が、走査領域に対して相対的に移動可能であり、移動方向が独立し得ることである。よって、走査部の移動方向が左から右である場合、抽出装置は走査部のわずかに左側に配置することができ、逆もまた同様である。
【0208】
これはまた、走査角度の変化を可能にし得るものであり、例えば、後方反射がAM装置の選択肢を損なうというリスクを減らすために、粉末ベッドに対してわずかな角度、例えば約3度で走査することが有利であり得る。走査部と抽出装置とを互いにオフセットすることを可能にすることにより、走査部が常に粉末ベッドの面に対して垂直以外の角度で走査することを確実にすることが可能である。
【0209】
さらに、走査部の走査領域が制限され、連続走査が採用されるので、走査部が所定のストリップを走査している間にワーク領域に原材料の層を堆積させることが可能であり、それによりAMシステムの全体効率が改善される。
【0210】
本発明の実施形態は、集束されたエネルギ源により硬化されようとしている材料ベッドの表面を選択的に予熱するための放射エネルギ源をさらに提供する。走査領域(および予熱領域)は、材料領域よりも実質的に小さい2次元領域に縮小され、走査領域は動作中に材料領域上で並進移動することができる。
【0211】
比較的小さな領域だけを加熱すればよいので、必要なエネルギは少ない。代替的に、または追加的に、同じ又は場合によっては、さらに低い全体のエネルギ入力により、より高い温度及び加熱速度を達成することができる。
【0212】
本発明は、粉末ベッド面積全体とは対照的に比較的小さい面積のみを加熱することにより、付加製造装置の必要エネルギ量を低減し、予熱の効率を高めることができると考えられる。予熱されるべき領域と一致する材料ベッドの表面上の設置面を得ることで、適切な光学的または電磁気的技術を用いて放射線を集束させることができる。
【0213】
本発明は、材料に対する加熱プロファイルの均一性の観点から、現在の表面加熱方法よりも有利であるとも考えられる。従来の表面加熱方法では、加熱機構はビーム経路と干渉することができず、したがって加熱機構は典型的には走査部の周囲に沿って配置される。提案された技術は、縮小された走査領域を利用し、予熱装置は粉末ベッド上においてX方向に均一に分配され、実質的に均一な加熱プロファイルを作り出す。
【0214】
比較的小さい領域での高温予熱を利用することにより、硬化のために走査部から材料ベッドに伝達する必要エネルギ量が減少する。低減された必要エネルギ伝達量は、より短い相互作用時間、したがってより高い走査速度をもたらす。より高い温度もまた冷却速度を低下させる可能性があり、それは次に物体内の残留応力を低減させ、より延性のある微細構造を生成する可能性がある。高い予熱温度はまた、材料の応力緩和に影響を及ぼし、残留応力をさらに減少させる可能性がある。
【0215】
硬化が行われている領域を選択的に加熱することには、未硬化粉末が高温にある時間を制限するので、明らかな利点があると考えられる。したがって、本明細書に記載の技術および構成は、歪み、多孔性および酸化などの材料の劣化および欠陥を低減することができる。
【0216】
この方法はまた、材料の加熱と材料の硬化が並行して起こり、それによりプロセスの効率が向上するという利点もある。
【0217】
さらに、特定の時点で加熱される原料が少なくなる。これにより、焼結や酸化の増加などの影響による原料の温度による劣化を低減または解消できる。結果として、より多くの未硬化の粉末をリサイクルに利用することができ、製造の全体的なコストを削減することができる。
【0218】
付加製造装置へのより低い全体エネルギの入力により、その構成要素に対する熱負荷、したがってそれらの冷却要件が低減され得る。
【0219】
伝統的なバルク加熱方法と提案された局所的表面加熱方法とを組み合わせることにも利点があることが分かった。局所予熱は加工が行われる温度を上昇させることができるが、バルク予熱は材料の特定の温度に達するために効果的に使用することができる。表面加熱は、底部から加熱するときに材料内で(Z軸に沿って)予想される熱勾配を補償することができるので有利である。短時間の高温への局部加熱もまた、酸化のような予熱のいくつかの悪影響を減らし得る。
【0220】
スパッタおよび蒸気除去を改善するために、走査方向に対して垂直に層状ガス流を供給することが望ましい。従来のシステムでは、走査は典型的には多方向性であり、流れは材料ベッド全体にわたって維持されるので、これは不可能であり得る。走査領域を高アスペクト比の領域に制限することにより、本明細書に記載されているような空気力学的抽出装置を走査領域に近接して取り付けることができ、それによりこれらのシステムの効率を改善できるので、この問題は解決できる。蒸気および/またはスパッタが発生する領域の近くに抽出装置を取り付けることにより、同様の抽出結果を達成するために必要な流量を減らすことも可能である。流速が速いと粉末材料が乱され、得られる部品の品質が低下し、粉末で雰囲気が汚染される可能性があるため、これは有利である。これらの技術を使用することにより、効果的な蒸気およびスパッタの除去を維持しながら材料表面のサイズを大きくすることが可能である。