(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】ベンゼン並びにメタノール及び/又はジメヒルエーテルからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する流動床反応器及び生産方法
(51)【国際特許分類】
B01J 8/24 20060101AFI20220307BHJP
C07C 2/88 20060101ALI20220307BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20220307BHJP
C07C 1/24 20060101ALI20220307BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20220307BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20220307BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20220307BHJP
C07C 1/20 20060101ALI20220307BHJP
B01J 38/00 20060101ALI20220307BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20220307BHJP
B01J 29/90 20060101ALI20220307BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220307BHJP
【FI】
B01J8/24 311
C07C2/88
C07C15/08
C07C1/24
C07C11/04
C07C11/06
C07C11/08
C07C1/20
B01J8/24 301
B01J38/00 Z
B01J29/40 Z
B01J29/40 A
B01J29/90 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019555175
(86)(22)【出願日】2017-11-24
(86)【国際出願番号】 CN2017112812
(87)【国際公開番号】W WO2018196362
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-11-21
(31)【優先権主張番号】201710288532.3
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】イエ,マオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,タオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジンリン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,チョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ジア,ジンミン
(72)【発明者】
【氏名】タン,ハイロン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,チャンチン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャンガオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チェン
(72)【発明者】
【氏名】リ,フア
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,インフェン
(72)【発明者】
【氏名】リ,チェンゴン
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101940898(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0182123(US,A1)
【文献】特表2003-517027(JP,A)
【文献】特表2014-531400(JP,A)
【文献】米国特許第02539415(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/00- 8/46、
21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07B 31/00-61/00、
63/00-63/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゼン並びにメタノール及び/又はジメチルエーテルからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するために用いられる流動床反応器であって、
反応領域と、
前記反応領域の底部に位置し、流動床反応器にベンゼンを含む第1のガスを供給するように構成された第1の分配器と、
前記第1の分配器の上方に配置され、流動床反応器にメタノール及び/又はジメチルエーテルを含む第2のガスを供給するように構成された第2の分配器と、を備え、
前記第2の分配器は、吸気管と、複数の微孔コア管と、複数の吸気環状管と、を備え、
前記吸気管は、前記複数の微孔コア管のガス経路に接続されて、前記流動床
反応器の外部から前記流動床
反応器内の前記複数の微孔コア管へ前記第2のガスを導入するように構成され、
前記複数の吸気環状管は、前記吸気管のガス経路に接続され、かつ前記第1の分配器のガス流れ方向と垂直な平面に配置され、
前記微孔コア管は、前記吸気環状管に設けられ、かつ前記吸気環状管が配置された平面に垂直であり、前記第2のガスを前記第2の分配器が存在する3次元空間に分配するように、前記微孔コア管の側面と端面に複数の微孔が設けられている
ことを特徴とする流動床反応器。
【請求項2】
前記第1の分配器は、二次元ガス分配器であり、前記流動床
反応器の
前記反応領域の底部における前記第1の分配器が位置する平面から前記第1のガスを分配させることを特徴とする請求項1に記載の流動床反応器。
【請求項3】
前記第2の分配器は、三次元ガス分配器であり、前記流動床
反応器における前記第2の分配器が位置する反応領域に前記第2のガスを分配させることを特徴とする請求項1に記載の流動床反応器。
【請求項4】
前記第1の分配器は、樹枝状ガス分配器又はブラストキャップ付ガス分配器であることを特徴とする請求項1に記載の流動床反応器。
【請求項5】
前記微孔コア管は、セラミック製微孔管又は粉末冶金微孔管であることを特徴とする請求項1に記載の流動床反応器。
【請求項6】
前記複数の微孔コア管は、相互に平行に配列され、
前記複数の吸気環状管は、同一平面において同心環状又は同一平面において平面螺旋状をなすように配列されていることを特徴とする請求項1に記載の流動床反応器。
【請求項7】
前記流動床反応器は、さらに、沈降領域、気固分離器、ストリッピング領域及び再生触媒輸送管を備え、
前記沈降領域が前記反応領域の上方に位置し、前記沈降領域内には前記気固分離器が設置され、前記ストリッピング領域が前記反応領域の下方に位置し、前記再生触媒輸送管が前記反応領域に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の流動床反応器。
【請求項8】
前記再生触媒輸送管は、反応領域の上部に接続されていることを特徴とする請求項7に記載の流動床反応器。
【請求項9】
前記再生触媒輸送管は、反応領域の底部に接続されていることを特徴とする請求項7に記載の流動床反応器。
【請求項10】
ベンゼン並びにメタノール及び/又はジメチルエーテルからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する方法であって、請求項1~9のいずれか1項に記載の流動床反応器のうちの少なくとも1つが用いられ、少なくとも、
ベンゼンを含む、又はメタノール及び/又はジメチルエーテルとベンゼンとを含む流れAが第1の分配器を経て、触媒を含む流動床反応器の反応領域に入るステップ(1)と、
メタノール及び/又はジメチルエーテルを含む流れBが第2の分配器を経て流動床反応器の前記反応領域に入るステップ(2)と、
前記反応領域において、流れA及び/又は流れB中のメタノール及び/又はジメチルエーテル、ベンゼンが触媒と接触し、パラキシレンと低級オレフィンとを含む流れCを生成するステップ(3)と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記ベンゼン並びにメタノール及び/又はジメチルエーテルからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する方法は、さらに、
前記触媒が反応領域においてカーボンが堆積することで再生対象触媒となり、再生対象触媒がストリッピングされて再生器に入って再生され、再生触媒が得られ、再生触媒が再生触媒輸送管を介して流動床反応器に入るステップ(4)と、
を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記流れB中のメタノール及び/又はジメチルエーテルと流れA中のメタノール及び/又はジメチルエーテルとの質量比は、1:1~20:1であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記流れA中のメタノール及びジメチルエーテルの合計含有量は、0質量%~30質量%であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
第1の分配器から入る流れA中のメタノール及びジメチルエーテルの合計含有量は、2質量%~20質量%であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記流動床反応器において、気相線速度は、0.2m/s~2m/s、反応温度は、300℃~600℃であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記再生器において、気相線速度は、0.2m/s~2m/s、再生温度は、500℃~800℃であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、パラキシレン(PX)を生産し低級オレフィンを併産する流動床における分配器、反応器及び生産方法に関し、特に、ベンゼンのメタノールによるアルキル化によりパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する流動床反応器及び生産方法に適用でき、化学及び化学工業の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
パラキシレン(PX)は、石油化学業界の基本的な有機原料の1つであり、化学繊維、合成樹脂、農薬、医薬品や高分子材料などの様々な分野に幅広く使用されている。現在、パラキシレンは、主にトルエン、C9芳香族炭化水素及び混合キシレンを原料として、不均化、異性化、吸着分離または深冷分離によって生産される。その生成物中のパラキシレンの含有量が熱力学によりバランスよく制御されるので、パラキシレンはC8混合芳香族炭化水素のうちの24%以下だけを占め、プロセスにおいて材料の循環処理量が大きく、設備が巨大であり、そして運用コストが高い。特にキシレン中の3つの異性体は沸点の差が非常に小さく、従来の蒸留技術によって高純度のパラキシレンを得ることは困難であり、高価な吸着分離プロセスを使用しなければならない。近年、中国内外の多くの特許には、パラキシレンの新しい生産スキームが開示されており、その中でも、ベンゼンのメタノールによるアルキル化技術は、パラキシレンを高い選択率で生産するための新しい方法であり、これは産業界において重視化されて多くの注目を集めている。
【0003】
低級オレフィンであるエチレン、プロピレン及びブテンは、2種の基本的な石油化学工業用の原料であり、それらの需要量が高まっている。エチレン及びプロピレンは、主にナフサを原料として生産され、石油由来である。近年、エチレン及びプロピレンを製造するための非石油経路、特にメタノール転化による低級オレフィン(MTO)の製造経路がますます注目されており、この経路は、中国の石油に対する需要や石油への依存を緩和させるための石油代替戦略を達成するための重要な方法である。
【0004】
トルエンのメタノールによるアルキル化によりパラキシレンを製造すること、及びベンゼンのメタノールによるアルキル化によりトルエンとキシレンを製造することは、いずれも芳香族炭化水素を増産するための新方法である。トルエンのメタノールによる形状選択的アルキル化は高選択性のパラキシレン製品を製造できるものの、該過程に必要なトルエンは芳香族炭化水素複合施設(aromatics complex unit)でパラキシレンを生産する中間原料でもあり、市場で不足している。ベンゼンは芳香族炭化水素複合施設の副産物であり、概算で年産80万トンのPX芳香族炭化水素複合施設が約30万トンのベンゼンを副産でき、従ってベンゼンを原料としてメタノールによりアルキル化させてトルエンとキシレンを生産することは、芳香族炭化水素を増産するための効果的な方法の1つである。
【0005】
従来のトルエンアルキル化方法は、反応器の上流側にトルエンとメタノールを混合し、その後混合物を反応器に供給することを含む。反応器の種類は、固定床と流動床を含む。トルエンの転化率を向上させるために、反応物を段階的に注入することは、各種の固定床と流動床のプロセスに用いられている。
【0006】
現在、ベンゼンのメタノールによるアルキル化に関する特許技術のほとんどは、トルエンと混合キシレンを増産することを目的とするが、パラキシレンの収率が低い。
【0007】
MTO反応とアルキル化反応との競争は、ベンゼン及び/又はトルエンの転化率、パラキシレンの収率及び低級オレフィンの選択性へ影響を与える主な要素である。パラキシレンと低級オレフィンの製造は、反応過程が酸触媒反応である。ZSM-5分子篩触媒に基づくベンゼン及び/又はベンゼンのメタノールによるアルキル化によりパラキシレンを生産する反応プロセスには、メタノールからオレフィンを製造する反応が必然的に存在する。この反応プロセスには、主に以下の複数の反応が発生する。
C6H6+CH3OH→C6H5-CH3+H2O (1)
C6H5-CH3+CH3OH→C6H4-(CH3)2+H2O (2)
nCH3OH→(CH2)n+nH2O n=2,3 (3)
以上の分析からわかるように、本技術分野では、触媒の設計及び反応器設計の2つの点から、アルキル化反応とMTO反応の競争を調整して最適化させ、ベンゼンの転化率、パラキシレンの収率及び低級オレフィンの収率を相乗的に向上させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願の一形態によれば、ベンゼン並びにメタノール及び/又はジメヒルエーテルからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する流動床反応器を提供しており、原料反応レートの差が大きな共同供給系において、異なる原料流れを異なる領域において分配させて供給することによって、物質移動を制御し、更に共同供給系を調整して最適化させ、反応収率を向上させる。ベンゼンのメタノール(ジメヒルエーテルを含む)によるアルキル化によりパラキシレンを製造する反応には、アルキル化反応とMTO反応の反応レートの差が大きく、MTO反応がアルキル化反応物を急速に消費して、アルキル化反応を抑制し、したがって、ベンゼンの転化率とパラキシレンの収率が低い。本願に係る流動床反応器は、メタノールとベンゼンの物質移動過程を制御することによって、アルキル化反応とMTO反応の競争を調整して、最適化させ、それによりベンゼンの転化率とパラキシレンの収率を相乗的に向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願のベンゼン並びにメタノール及び/又はジメヒルエーテルからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する流動床反応器は、流動床反応器の反応領域の底部に位置する第1の分配器と、第1の分配器のガス流れ方向の下流側の少なくとも1つの領域に位置する第2の分配器と、を備える。
【0010】
メタノールは、ベンゼン及び/又はトルエンとメタノールのアルキル化反応の原料でありながら、MTO反応の原料であるが、MTO反応レートがベンゼン及び/又はトルエンとメタノールのアルキル化の反応レートより遥かに高い。本発明者らの実験的研究から、ベンゼンとメタノールを同時に供給し、原料中のメタノールの含有量が低い場合は、MTO反応によりほとんどのメタノール(アルキル化反応物)が急速に消費されて、ベンゼン及び/又はトルエンとメタノールのアルキル化反応が抑制され、パラキシレンの収率が低いことが明らかになった。原料中のメタノールの含有量が過度に過剰である場合、分子篩細孔内におけるメタノールとベンゼン及び/又はトルエンの拡散速度が異なるため、単位時間あたりのベンゼン及び/又はトルエンの吸着量が低く、ベンゼン及び/又はトルエンとメタノールのアルキル化反応も損なう。従って、反応領域内のメタノールとベンゼン及び/又はトルエンの濃度を最適化させることは、ベンゼンの転化率とパラキシレンの収率を向上させるための効果的な方法の1つである。
【0011】
本願においては、低級オレフィンは、エチレン、プロピレン、ブテンを含む。
【0012】
本願においては、「メタノール及び/又はジメヒルエーテル」は、供給材料中のメタノールが完全に又は一部的にジメチルエーテルで代替することができ、メタノールのみを含む、ジメチルエーテのみを含む、又はメタノールとジメチルエーテルの両方を含むといった3種の状況を含む。たとえば「メタノール及び/又はジメヒルエーテル、ベンゼンを含む」は、メタノールとベンゼンを含む、ジメヒルエーテルとベンゼンを含む、又はメタノール、ジメヒルエーテル及びベンゼンを含むといった3種の状況を含む。特に断らない限り、本願におけるメタノールは、いずれも完全に又は一部的にジメチルエーテルで代替することができ、メタノールの量に関しては、ジメチルエーテルを同じ炭素原子数のメタノールに換算して計算するようにしてもよい。
【0013】
好ましくは、前記第2の分配器は、吸気管と、微孔コア管と、吸気環状管と、を備え、
前記吸気管は、前記微孔コア管のガス経路に接続され、前記流動床反応器の外部から前記流動床反応器内の前記微孔コア管へガスを導入し、
前記吸気環状管は、前記吸気管ガス経路に接続され、前記第1の分配器のガス流れ方向と垂直な平面に配置され、
前記微孔コア管は、前記吸気環状管に配置されて前記吸気環状管が配置された平面に垂直である。
【0014】
好ましくは、流れAは、前記第1の分配器を経て流動床反応器の反応領域に入り、流れBは、前記第2の分配器を経て流動床反応器の反応領域に入って前記流れAの少なくとも一部のガスと接触する。
【0015】
好ましくは、前記第1の分配器は、二次元ガス分配器であり、ガスを前記流動床反応器の反応領域の底部における前記第1の分配器が位置する平面に分配させる。
【0016】
好ましくは、前記第2の分配器は、三次元ガス分配器であり、ガスを前記流動床反応器における前記第2の分配器が位置する少なくとも一部の反応空間に分配させる。
【0017】
本願においては、「少なくとも一部の反応空間」とは、反応領域内の少なくとも一部の空間を意味する。
【0018】
好ましくは、前記第1の分配器は、樹枝状ガス分配器(branched pipe distributor)及び/又はブラストキャップ付ガス分配器(plate distributor with blast caps)である。
【0019】
好ましくは、前記第2の分配器は、微孔ガス分配器である。
【0020】
さらに好ましくは、前記微孔コア管は、セラミック製微孔管及び/又は粉末冶金微孔管である。
【0021】
さらに好ましくは、前記微孔コア管の側面と端面は、穴径が0.5μm~50μmの微孔を有する。
【0022】
さらに好ましくは、前記微孔コア管の側面と端面は、空隙率が25%~50%の微孔を有する。
【0023】
さらに好ましくは、前記微孔コア管の管内のガス速度は、0.1m/s~10m/sである。
【0024】
またさらに好ましくは、前記微孔コア管の管内のガス速度は、1m/s~10m/sである。
【0025】
またさらに好ましくは、前記微孔コア管は、複数あり且つ相互に平行に配列され、前記吸気環状管は、複数あり且つ同一平面内において同心環状又は平面螺旋状に配列される。
【0026】
好ましくは、前記流動床反応器は、反応領域と、沈降領域と、気固分離器と、ストリッピング領域と、再生触媒輸送管と、を備え、
前記第1の分配器は、前記反応領域の底部に配置され、前記第2の分配器は、前記第1の分配器の上に配置され、前記沈降領域が前記反応領域の上方に位置し、前記沈降領域内には前記気固分離器が設置され、前記ストリッピング領域が前記反応領域の下方に位置し、前記再生触媒輸送管が前記反応領域に接続される。
【0027】
一実施形態としては、前記再生触媒輸送管は、反応領域の上部に接続される。
【0028】
一実施形態としては、前記再生触媒輸送管は、反応領域の底部に接続される。
【0029】
本願の発明者は、研究から明らかなように、ベンゼンとメタノールの共同供給方式を用いるので、反応器の軸方向に沿って上流側から下流側に向かってメタノールの濃度が急速に低下し、ゼロに近くなる一方、ベンゼンの濃度がゆっくりと低下し、反応器の上流側領域においては、アルキル化の反応レートがベンゼンの触媒チャネル内における物質移動レートにより制限されるのに対して、反応器の下流側領域においては、メタノールが急速に消費されて、メタノールの拡散推進力が急速に低下するに伴って、アルキル化の反応レートがメタノールの触媒チャネル内における物質移動レートより制限されるようになり、一般的には、混合物の共同供給方式を用いることによって、ベンゼンの転化率が低い。以上の分析からわかるように、反応器内において安定したメタノールの濃度を維持することは、アルキル化反応を促進するための効果的な方法の1つである。
【0030】
本願の他の形態によれば、ベンゼン並びにメタノール及び/又はジメヒルエーテルからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する方法を提供する。異なる原料流れを異なる領域において分配させて供給することによって、物質移動を制御し、更に共同供給系を調整して、最適化させ、反応収率を向上させる。ベンゼン・メタノールのアルキル化によりパラキシレンを製造する反応において、アルキル化反応とMTO反応との反応レートの差が大きく、MTO反応がアルキル化反応を抑制するので、ベンゼンの転化率が低い。本願に係る流動床反応器は、物質移動を制御することによって、アルキル化反応とMTO反応の競争を調整して、最適化させ、それによりベンゼンの転化率とパラキシレンの収率を向上させる。
【0031】
本願に係るパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する方法は、上記任意の流動床反応器のうちの少なくとも1つを用い、前記したパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する方法は、少なくとも、
ベンゼンを含む、又はメタノール及び/又はジメチルエーテとベンゼンを含む流れAが第1の分配器を経て、触媒を含む流動床反応器の反応領域に入るステップ(1)と、
メタノール及び/又はジメチルエーテを含む流れBが第2の分配器を経て流動床反応器の前記反応領域に入るステップ(2)と、
前記反応領域において、流れA及び/又は流れB中のメタノール及び/又はジメチルエーテ、ベンゼンが触媒と接触し、パラキシレンと低級オレフィンを含む流れCを生成するステップ(3)と、を含む。
【0032】
好ましくは、前記したパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する方法は、さらに、
前記流れCが沈降領域と気固分離器に入り、流れCから分離した後に、低級オレフィン、パラキシレン、鎖式炭化水素副生成物、芳香族炭化水素副生成物と未転化のベンゼン、未転化のメタノール及び/又はジメチルエーテを得るステップ(4)と、
未転化のメタノール及び/又はジメチルエーテが前記第2の分配器を介して流動床反応器に戻り、芳香族炭化水素副生成物と未転化のベンゼンが第1の分配器を介して流動床反応器に戻るステップ(5)と、
前記触媒が反応領域においてカーボンが堆積することで再生対象触媒となり、再生対象触媒がストリッピングされて再生器に入って再生され、再生触媒が得られ、再生触媒が再生触媒輸送管を介して流動床反応器に入るステップ(6)と、を含む。
【0033】
鎖式炭化水素副生成物は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、C5+鎖式炭化水素のうちの少なくとも1種を含む。芳香族炭化水素副生成物は、ベンゼン、エチルベンゼン、オルトキシレン、メタキシレン、C9+芳香族炭化水素のうちの少なくとも1種を含む。
【0034】
本願においては、低級オレフィンは、エチレン、プロピレン、ブテンのうちの少なくとも1種を含む。
【0035】
本願においては、「メタノール及び/又はジメチルエーテ」は、供給材料中のメタノールが完全に又は一部的にジメチルエーテルで代替することができることを意味し、メタノールのみを含む、ジメチルエーテのみを含む、又はメタノールとジメチルエーテルの両方を含むといった3種の状況を含む。
【0036】
本願においては、「メタノール及び/又はジメチルエーテ並びにベンゼン」は、メタノールとベンゼン、ジメチルエーテとベンゼン、又はメタノール、ジメチルエーテル及びベンゼンといった3種の状況を含む。
【0037】
特に断らない限り、本願におけるメタノールは、いずれも完全に又は一部的にジメチルエーテルで代替することができ、メタノールの量に関しては、ジメチルエーテルを同じ炭素原子数のメタノールに換算して計算するようにしてもよい。
【0038】
好ましくは、第2の分配器から入る流れB中のメタノールと第1の分配器から入る流れA中のメタノールとの質量比は、1:1~20:1である。ここでいうメタノールの質量比は、ジメチルエーテル(含有する場合)を同じ炭素原子数のメタノールに転化して比較して得られるものである。
【0039】
好ましくは、前記流れA中のメタノールとジメチルエーテルの合計含有量は、0質量%~30質量%である。すなわち、第1の分配器から入る流れAには、メタノールが含まれず、又は第1の分配器から入る流れA中のメタノールの含有量が30質量%以下である。
【0040】
好ましくは、前記流れA中のメタノールとジメチルエーテルの合計含有量は、2質量%~20質量%である。
【0041】
好ましくは、前記流動床反応器の気相線速度は、0.2m/s~2m/s、反応温度は、300℃~600℃である。
【0042】
好ましくは、前記再生器の気相線速度は、0.2m/s~2m/s、再生温度は、500℃~800℃である。
【0043】
本願は、反応器の設計及びプロセスの配置から、ベンゼンに対するメタノール及び/又はジメチルエーテの濃度を制御することで、アルキル化反応とMTO反応の競争を調整して、最適化させ、パラキシレンの収率と低級オレフィンの選択性を向上させ、MTO反応がほとんどのメタノール及び/又はジメチルエーテを急速に消費することでアルキル化反応が抑制されるような状況、及びメタノール及び/又はジメチルエーテの含有量が過剰すぎ、大量のMTO反応が発生し、単位時間の触媒のベンゼンの吸着量が低いため、アルキル化反応を損なう状況が発生しないことを確保する。
【0044】
本願による有益な効果は、以下を含む。
(1)本願に係る流動床反応器は、原料反応レートの差が大きな共同供給系において、異なる原料流れを異なる領域において分配させて供給することによって、物質移動を制御し、更に共同供給系を調整して、最適化させ、反応収率を向上させる。
【0045】
(2)本願に係る流動床反応器は、ベンゼン並びにメタノール及び/又はジメヒルエーテルからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する反応に適用され、異なる原料流れを異なる領域において分配させて供給すること及び選択的な再循環によって、反応収率を向上させる。
【0046】
(3)本願に係るベンゼン並びにメタノール及び/又はジメヒルエーテルからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する方法は、高いベンゼンの転化率とパラキシレンの選択性を両立させ、ベンゼンの転化率が40%より大きく、生成物中のキシレン異性体におけるパラキシレンの選択性が90%より大きく、芳香族炭化水素に基づくパラキシレンの質量の単通収率が25%より大きく、メタノールの転化率が90%より大きく、C1―C6鎖式炭化水素成分における(エチレン+プロピレン+ブテン)の選択性が70%より大きく、良好な技術的効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本願の一実施形態における流動床反応器の構造模式図である。
【
図2】本願の一実施形態における流動床反応器の構造模式図である。
【
図3】本願の一実施形態における反応領域の微孔ガス分配器の側面図である。
【
図4】本願の一実施形態における反応領域の微孔ガス分配器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、実施例を参照しながら本発明について更に説明するが、本願は、これら実施例に制限されない。
【0049】
特に断らない限り、本願の実施例における原料と触媒は、いずれも市販品として購入するものである。
【0050】
本願の一実施形態によれば、ベンゼン・メタノールからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する流動床反応器は、
図1と
図2に示すように、第1のガス分配器1、第2のガス分配器2、反応領域3、沈降領域4、気固分離器5、ストリッピング領域6、及び再生触媒輸送管7を備える。
【0051】
第1のガス分配器1は、反応領域3の底部に配置され、第2のガス分配器2は、第1のガス分配器1の上に配置され、沈降領域4は、反応領域3の上方に位置し、沈降領域4内には気固分離器5が設置され、頂部には製品出口が設けられ、ストリッピング領域6は、反応領域3の下方に位置し、再生触媒輸送管7は、反応領域3の上部又は底部に接続される。再生触媒が再生触媒輸送管7を経て反応領域に入り、再生対象触媒がストリッピング領域6を経て再生器に入って再生される。
【0052】
本願の一実施形態としては、第1の気体分配器1は、樹枝状ガス分配器であってもよい。
【0053】
本願の一実施形態としては、第1の気体分配器1は、ブラストキャップ付ガス分配器のうちの1種であってもよい。
【0054】
本願の一実施形態としては、第2の気体分配器2は、微孔ガス分配器である。
【0055】
本願の一実施形態としては、微孔ガス分配器は、
図3に示すように、吸気管2-1と、複数の吸気環状管2-2と、を備え、吸気環状管2-2が反応器の軸線を中心とし、吸気環状管2-2には複数の微孔コア管2-3が均等に配置されており、ガスが吸気管2-1と吸気環状管2-2を介して微孔コア管2-3に入り、微孔コア管2-3の一端は、吸気環状管2-2に接続され、他端は、密閉している。ガスが微孔コア管2-3における微孔を介して排出される。
【0056】
前記微孔コア管2-3としては、セラミック製微孔管、粉末冶金微孔管を用いることができ、微孔コア管2-3の間隔が50mmより大きい。
【0057】
図3及び
図4に示すように、本願の一実施形態においては、前記微孔コア管2-3は、合計12個あり、吸気環状管2-2に均等に配置され且つ環状管が配置された平面に垂直であり、縦方向に平行に配列される。
【0058】
前記微孔コア管2-3の側面と端面は、いずれも均一な微孔構造を有し、微孔の穴径は、0.5μm~50μm、空隙率は、25~50%、管内のガス速度は、0.1m/s~10m/sである。好ましくは、管内のガス速度は、1m/s~10m/sである。
【0059】
本願の一実施形態としては、微孔コア管2-3が反応領域3に配置されることで、気泡の成長を抑制し、ガスのバックミキシングを減少させ、濃厚相と希薄相の間の物質移動を促進し、反応レートを向上させることができる。
【0060】
本願一実施形態としては、用いる触媒は、ZSM-5分子篩触媒である。
【0061】
ベンゼン、メタノール及び/又はジメチルエーテの共同供給方式を用いるので、反応器の軸方向に沿って上流側から下流側に向かってメタノール及び/又はジメチルエーテの濃度が急速に低下するため、ゼロに近くなる一方、ベンゼンの濃度がゆっくりと低下し、反応器の上流側領域においては、アルキル化の反応レートがベンゼンの触媒多孔質チャネルにおける物質移動レートにより制限されるのに対して、反応器の下流側領域においては、メタノールが急速に消費されて、メタノールの拡散推進力が急速に低下するに伴って、アルキル化の反応レートがメタノールの触媒多孔質チャネルにおける物質移動レートにより制限されるようになる。反応器において安定したメタノールの濃度を維持することは、アルキル化反応を促進するための効果的な方法の1つである。
【0062】
本願の一実施形態としては、第1のガス分配器1は、二次元ガス分配器であり、すなわち、原料ガスを第1のガス分配器1が位置する平面に均一に分配させる。
【0063】
本願の一実施形態としては、第2のガス分配器2(微孔ガス分配器)は、三次元ガス分配器であり、すなわち、原料ガスを第2のガス分配器2が位置する三次元空間に均一に分配させる。
【0064】
本願の一実施形態としては、ベンゼンと芳香族炭化水素副生成物は、第1のガス分配器1から入り、反応の進行に連れて、ベンゼンの濃度が反応器の軸線方向に沿って上流側から下流側に向かって徐々に低下する。
【0065】
本願の一実施形態としては、一部のメタノール及び/又はジメチルエーテは、第1のガス分配器1から入り、他の一部のメタノール及び/又はジメチルエーテは、第2のガス分配器2から入り、微孔コア管2-3に密に配置されている微孔を介して微孔コア管2-3の周囲の反応領域3へ分配される。従って、第2のガス分配器2が位置する領域においては、メタノールの濃度がほぼ安定化しており、反応領域3の下流側領域のみに、メタノールの濃度が急速に低下する。第2のガス分配器2が位置する領域においては、メタノールの濃度が高く、ベンゼン及び/又はトルエンのアルキル化の反応レートを大幅に向上させることができる。
【0066】
本願の一実施形態としては、パラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する方法は、
メタノールとベンゼンの混合物が第1のガス分配器から流動床反応器の反応領域に入るステップ(1)と、
第1のガス分配器から入ったメタノールとの質量比が、1:1~20:1となるように、メタノールが第2のガス分配器から流動床反応器の反応領域に入るステップ(2)と、
反応領域において、ベンゼン、メタノールが触媒と接触し、パラキシレンと低級オレフィンを含む気相流れを生成するステップ(3)と、
前記気相流れが沈降領域、気固分離器に入り、製品出口を介して後続の分離段階に入り、分離後に、エチレン;プロピレン;ブテン;パラキシレン;ジメチルエーテル;ベンゼン、エタン、プロパン、ブタン及びC5+鎖式炭化水素等を含む鎖式炭化水素副生成物;ベンゼン、エチルベンゼン、オルトキシレン、メタキシレン及びC9+芳香族炭化水素等を含む芳香族炭化水素副生成物;並びに未転化のメタノールとベンゼンを得るステップ(4)と、
ジメチルエーテルと未転化のメタノールを原料として第2のガス分配器を介して流動床反応器に戻して再循環させ、芳香族炭化水素副生成物と未転化のベンゼンを原料として第1のガス分配器を介して流動床反応器に戻して再循環させるステップ(5)と、
前記触媒が反応領域においてカーボンが堆積することで再生対象触媒となり、再生対象触媒がストリッピングされ、流動床再生器に入って再生され、再生触媒が再生触媒輸送管を介して流動床反応器に入るステップ(6)と、を含む。
【0067】
上記方法においては、流動床反応器の気相線速度は、0.2 m/s~2m/s、温度は、300℃~600℃、流動床再生器の気相線速度は、0.2 m/s~2m/s、温度は、500℃~800℃である。
【0068】
実施例1
図1に示される流動床反応器においてパラキシレンと低級オレフィンを生産し、流動床反応器は、第1のガス分配器1と、第2のガス分配器2と、反応領域3と、沈降領域4と、気固分離器5と、ストリッピング領域6と、再生触媒輸送管7と、を備え、第1のガス分配器1は、反応領域3の底部に配置され、第2のガス分配器2は、反応領域3内に配置され、沈降領域4は、反応領域3の上方に位置し、沈降領域4内には気固分離器5が設置され、頂部には製品出口が設けられ、ストリッピング領域6は、反応領域3の下方に位置し、反応領域3の上部は、再生触媒輸送管7に接続される。
【0069】
第1のガス分配器1は、樹枝状ガス分配器であり、第2のガス分配器2は、微孔ガス分配器である。
【0070】
図3に示すように、微孔ガス分配器は、吸気管2-1と、吸気環状管2-2と、微孔コア管2-3と、を備える。
図4に示すように、吸気管2-1は、2つの吸気環状管2-2を接続し、吸気環状管2-2には12個の微孔コア管2-3が均等に配置されており、微孔コア管2-3は、粉末冶金微孔管であり、微孔コア管の間隔は、150mm、微孔の穴径は、1μm、空隙率は、35%、管内におけるガス速度は、5m/sである。
【0071】
流動床反応器における触媒は、ZSM-5分子篩触媒である。
【0072】
流れA:ベンゼン、芳香族炭化水素副生成物及びメタノールの混合物。流れAは、第1のガス分配器1を経て流動床反応器の反応領域3に入り、流れAの混合物中のメタノールの含有量は、4質量%である。
【0073】
流れB:メタノール。流れBは、第2のガス分配器2から流動床反応器の反応領域3に入り、第2のガス分配器2からのメタノールと第1のガス分配器1からのメタノールとの質量比は、9:1であり、流動床反応器の気相線速度は、0.8m/s~1.0m/sであり、温度は、450℃であり、反応領域3内の反応物が触媒と接触し、パラキシレンと低級オレフィンを含む気相流れを生成する。前記気相流れは、沈降領域4、気固分離器5に入り、製品出口を介して後続の分離段階に入る。前記触媒は、反応領域においてカーボンが堆積することで再生対象触媒となり、再生対象触媒がストリッピングされて、流動床再生器に入って再生され、流動床再生器の気相線速度は、1.0m/sであり、温度は、650℃であり、再生触媒が再生触媒輸送管7を介して流動床反応器に入る。
【0074】
ガスクロマトグラフィーで生成物構成を分析した結果、ベンゼンの転化率は、41%、メタノールの転化率は、99%、芳香族炭化水素に基づくパラキシレンの質量の単通収率は、26%、生成物中のキシレン異性体におけるパラキシレンの選択性は、99%、C1~C6鎖式炭化水素成分における低級オレフィン(エチレン+プロピレン+ブテン)の選択性は、78%であった。
【0075】
実施例2
図1に示す流動床反応器においてパラキシレンと低級オレフィンを生産し、流動床反応器は、第1のガス分配器1と、第2のガス分配器2と、反応領域3と、沈降領域4と、気固分離器5と、ストリッピング領域6と、再生触媒輸送管7と、を備え、第1のガス分配器1は、反応領域3の底部に配置され、第2のガス分配器2は、反応領域3に配置され、沈降領域4は、反応領域3の上方に位置し、沈降領域4内には気固分離器5が設置され、頂部には製品出口が設けられ、ストリッピング領域6は、反応領域3の下方に位置し、反応領域3の上部は、再生触媒輸送管7に接続される。
【0076】
第1のガス分配器1は、樹枝状ガス分配器、第2のガス分配器2は、微孔ガス分配器である。
【0077】
微孔ガス分配器は、
図3に示すように、吸気管2-1と、吸気環状管2-2と、微孔コア管2-3と、を備える。
図4に示すように、吸気管2-1は、2つの吸気環状管2-2を接続し、吸気環状管2-2には12個の微孔コア管2-3が均等に配置されており、微孔コア管2-3は、セラミック製微孔管であり、微孔コア管2-3の間隔は、150mm~200mm、微孔の穴径は、20μm~40μm、空隙率は、45%、管内におけるガス速度は、4m/sである。
【0078】
流動床反応器中の触媒は、ZSM-5分子篩触媒である。
【0079】
流れA:ベンゼン、芳香族炭化水素副生成物及びジメチルエーテルの混合物。流れAは、第1のガス分配器1から流動床反応器の反応領域3に入り、流れAの混合物中のジメチルエーテルの含有量は、10質量%である。
【0080】
流れB:メタノール。流れBは、第2のガス分配器2から流動床反応器の反応領域3に入り、第2のガス分配器2からのメタノールと第1のガス分配器1からのメタノールとの質量比は、19:1である。流動床反応器の気相線速度は、1.3m/s~1.5m/s、温度は、500℃であり、反応領域3において、反応物が触媒と接触し、パラキシレンと低級オレフィンを含む気相流れを生成し、前記気相流れが沈降領域4、気固分離器5に入り、製品出口を介して後続の分離段階に入り、前記触媒が反応領域においてカーボンが堆積することで再生対象触媒となり、再生対象触媒がストリッピングされて、流動床再生器に入って再生され、流動床再生器の気相線速度は、1.5m/s、温度は、600℃であり、再生触媒が再生触媒輸送管7を介して流動床反応器に入る。
【0081】
ガスクロマトグラフィーで生成物構成を分析した結果、ベンゼンの転化率は、45%、メタノールの転化率は、91%、芳香族炭化水素に基づくパラキシレンの質量の単通収率は、37%、生成物中のキシレン異性体におけるパラキシレンの選択性は、92%、C1~C6鎖式炭化水素成分における低級オレフィン(エチレン+プロピレン+ブテン)の選択性は、71%であった。
【0082】
実施例3
図1に示す流動床反応器においてパラキシレンと低級オレフィンを生産し、流動床反応器は、第1のガス分配器1と、第2のガス分配器2と、反応領域3と、沈降領域4と、気固分離器5と、ストリッピング領域6と、再生触媒輸送管7と、を備え、第1のガス分配器1は、反応領域3の底部に配置され、第2のガス分配器2は、反応領域3に配置され、沈降領域4は、反応領域3の上方に位置し、沈降領域4内には気固分離器5が設置され、頂部には製品出口が設けられ、ストリッピング領域6は、反応領域3の下方に位置し、反応領域3の上部は、再生触媒輸送管7に接続される。
【0083】
第1のガス分配器1は、ブラストキャップ付ガス分配器、第2のガス分配器2は、微孔ガス分配器である。
【0084】
微孔ガス分配器は、
図3に示すように、吸気管2-1と、吸気環状管2-2と、微孔コア管2-3と、を備える。
図4に示すように、吸気管2-1は、2つの吸気環状管2-2を接続し、吸気環状管2-2には12個の微孔コア管2-3が均等に配置されており、微孔コア管2-3は、セラミック製微孔管であり、微孔コア管2-3の間隔は、100mm~150mm、微孔の穴径は、5μm~20μm、空隙率は、45%、管内のガス速度は、8m/sである。
【0085】
流動床反応器中の触媒は、ZSM-5分子篩触媒である。
【0086】
流れA:ベンゼン、芳香族炭化水素副生成物、メタノール及びジメチルエーテルの混合物。流れAは、第1のガス分配器1から流動床反応器の反応領域3に入り、流れAの混合物中のメタノール(ジメヒルエーテルを同じ炭素原子数のメタノールに換算して計算する)の含有量は、8質量%である。
【0087】
流れB:メタノール及びジメチルエーテル。流れBは、第2のガス分配器2から流動床反応器の反応領域3に入り、第2のガス分配器2からのメタノールと第1のガス分配器1からのメタノールとの質量比は、9:1である。流動床反応器の気相線速度は、0.2m/s~0.3m/s、温度は、550℃であり、反応領域3において、反応物が触媒と接触し、パラキシレンと低級オレフィンを含む気相流れCを生成し、前記気相流れが沈降領域4、気固分離器5に入り、製品出口を介して後続の分離段階に入り、前記触媒が反応領域においてカーボンが堆積することで再生対象触媒となり、再生対象触媒がストリッピングされて、流動床再生器に入って再生され、流動床再生器の気相線速度は、1.0m/s、温度は、700℃であり、再生触媒が再生触媒輸送管7を介して流動床反応器に入る。
【0088】
ガスクロマトグラフィーで生成物構成を分析した結果、ベンゼンの転化率は、42%、メタノールの転化率は、94%、芳香族炭化水素に基づくパラキシレンの質量の単通収率は、29%、生成物中のキシレン異性体におけるパラキシレンの選択性は、95%、C1~C6鎖式炭化水素成分における低級オレフィン(エチレン+プロピレン+ブテン)の選択性は、74%であった。
【0089】
実施例4
図2に示す流動床反応器においてパラキシレンと低級オレフィンを生産し、流動床反応器は、第1のガス分配器1と、第2のガス分配器2と、反応領域3と、沈降領域4と、気固分離器5、ストリッピング領域6と、再生触媒輸送管7と、を備え、第1のガス分配器1は、反応領域3の底部に配置され、第2のガス分配器2は、反応領域3に配置され、沈降領域4は、反応領域3の上方に位置し、沈降領域4内には気固分離器5が設置され、頂部には製品出口が設けられ、ストリッピング領域6は、反応領域3の下方に位置し、反応領域3の底部は、再生触媒輸送管7に接続される。
【0090】
第1のガス分配器1は、樹枝状ガス分配器、第2のガス分配器2は、微孔ガス分配器である。
【0091】
微孔ガス分配器は、
図3に示すように、吸気管2-1と、吸気環状管2-2と、微孔コア管2-3と、を備える。
図4に示すように、吸気管2-1は、2つの吸気環状管2-2を接続し、吸気環状管2-2には12個の微孔コア管2-3が均等に配置されており、微孔コア管は、セラミック製微孔管であり、微孔コア管の間隔は、150mm~200mm、微孔の穴径は、5μm~20μm、空隙率は、40%、管内のガス速度は、6m/sである。
【0092】
流動床反応器中の触媒は、ZSM-5分子篩触媒である。
【0093】
流れA:ベンゼン、芳香族炭化水素副生成物、メタノールの混合物。流れAは、第1のガス分配器1から流動床反応器の反応領域3に入り、流れAの混合物中のメタノールの含有量は、20質量%である。
【0094】
流れB:メタノール。流れBは、第2のガス分配器2から流動床反応器の反応領域3に入り、第2のガス分配器2からのメタノールと第1のガス分配器1からのメタノールとの質量比は、5:1である。流動床反応器の気相線速度は、1.5m/s~1.7m/s、温度は、530℃であり、反応領域3において、反応物が触媒と接触し、パラキシレンと低級オレフィンを含む気相流れを生成し、前記気相流れが沈降領域4、気固分離器5に入り、製品出口を介して後続の分離段階に入り、前記触媒が反応領域にカーボンを堆積されて再生対象触媒となり、再生対象触媒がストリッピングされて、流動床再生器に入って再生され、流動床再生器の気相線速度は、2.0m/s、温度は、700℃であり、再生触媒が再生触媒輸送管7を介して流動床反応器に入る。
【0095】
ガスクロマトグラフィーで生成物構成を分析した結果、ベンゼンの転化率は、43%、メタノールの転化率は、92%、芳香族炭化水素に基づくパラキシレンの質量の単通収率は、32%、生成物中のキシレン異性体におけるパラキシレンの選択性は、93%、C1-C6鎖式炭化水素成分における低級オレフィン(エチレン+プロピレン+ブテン)の選択性は、73%であった。
【0096】
上記の説明は、本出願のいくつかの実施例に過ぎず、本願を何らかの形式で制限するものではなく、本願について、以上のように好適な実施例として開示されているが、本願を限定するためのものではない。当業者であれば、本願の技術案から逸脱することなく、上記開示された技術的内容に基づいて行われる変更や修正は、いずれも均等の実施例に相当し、いずれも技術案の範囲に属する。
【符号の説明】
【0097】
図面における符号は、以下のとおりである。
1-第1のガス分配器、2-第2のガス分配器、3-反応領域、4-沈降領域、5-気固分離器、6-ストリッピング領域、7-再生触媒輸送管
2-1-吸気管、2-2-吸気環状管、2-3-微孔コア管