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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20220307BHJP
   B23B 47/00 20060101ALI20220307BHJP
   B23B 47/18 20060101ALI20220307BHJP
   B23B 49/00 20060101ALI20220307BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALN20220307BHJP
【FI】
G05B19/18 W
B23B47/00 C
B23B47/18 C
B23B49/00 Z
B23Q11/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020182130
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000201870
【氏名又は名称】倉敷機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】江口 茂之
(72)【発明者】
【氏名】志田 淳
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第6739587(JP,B1)
【文献】特開2011-194550(JP,A)
【文献】特開2005-125450(JP,A)
【文献】特開2018-81487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18
B23B 47/00
B23B 47/18
B23B 49/00
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸頭に設けられたドリルの先端側を回転自在に支持し加工時にワークに当接するドリル先端側支持部を備え、このドリル先端側支持部は、加圧流体によりドリル軸方向先端側に付勢され、さらに前記ワークと当接することで前記付勢に抗してドリル軸方向基端側に移動するように構成された穿孔加工用の工作機械であって、前記ドリル先端側支持部と前記ワークとの当接を検知する当接検知手段と、前記当接後の前記ドリル先端側支持部のドリル軸方向基端側への移動量を検出する移動量検出手段と、前記移動量検出手段で検出した前記移動量が適正であるか否かを判定する移動量判定手段とを有することを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項1記載の工作機械において、前記当接検知手段は、流量センサを備え、前記ドリル先端側支持部と前記ワークとの当接により該ドリル先端側支持部がドリル軸方向基端側へ移動することによる前記加圧流体の流動を前記流量センサで検知することで、前記ドリル先端側支持部と前記ワークとの当接を検知するように構成されていることを特徴とする工作機械。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の工作機械において、前記移動量検出手段は、前記ワークのドリル軸方向基端側への移動量、若しくは前記主軸頭及び前記ドリル先端側支持部が設けられる主軸ユニットのドリル軸方向先端側への移動量に基づいて検出するように構成されていることを特徴とする工作機械。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の工作機械において、前記移動量判定手段は、前記ドリル先端側支持部の前記当接後のドリル軸方向基端側への移動量が所定量以上になった際に、前記ドリル先端側支持部の移動を停止させる信号を出力するように構成されていることを特徴とする工作機械。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の工作機械において、前記ドリル先端側支持部と前記ワークとの間隔が所定間隔になった際、前記ドリル先端側支持部と前記ワークとの接近移動速度を減速させる接近移動速度減速手段を備えることを特徴とする工作機械。
【請求項6】
請求項5記載の工作機械において、前記接近移動速度減速手段は、前記ドリル先端側支持部と前記ワークとの離間間隔を計測する計測部を有し、この計測部で計測した前記離間間隔が所定値になった際、前記接近移動速度を減速させるように構成されていることを特徴とする工作機械。
【請求項7】
主軸頭に設けられたドリルの先端側を回転自在に支持し加工時にワークに当接するドリル先端側支持部を備え、このドリル先端側支持部は、加圧流体によりドリル軸方向先端側に付勢され、さらに前記ワークと当接することで前記付勢に抗してドリル軸方向基端側に移動するように構成された穿孔加工用の工作機械であって、前記ドリル先端側支持部と前記ワークとの離間間隔を計測する計測部を有し、この計測部で計測される前記離間間隔が所定間隔になった際、前記ドリル先端側支持部と前記ワークとの接近移動速度を減速させる接近移動速度減速手段を備えることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔加工用の工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
穿孔加工用の工作機械においては、特に深穴加工に適する工作機械として例えば特許文献1に示すようなガンドリルマシンがある。
【0003】
このガンドリルマシンは、加工を開始する前に、ワークに対してガンドリルの先端側を回転自在に支持するドリル先端側支持部(ガイドブッシュ)を接近させ、ドリル先端側支持部をワークに一定の押力で押接した状態となる位置(加工開始位置)に配設し、このドリル先端側支持部をワークに押接させた状態で加工を行うものであり、従来、このドリル先端側支持部の加工開始位置への配設操作は、プログラムによる自動制御若しくは作業者による手動操作によって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6739587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来装置では、上記ドリル先端側支持部の加工開始位置への配設操作において、プログラムミスや操作ミスが生じた場合、ドリル先端側支持部が規定以上に押し込まれ主軸ユニット先端部に負荷がかかり、この主軸ユニット先端部に設けられるドリル先端側支持部やチップボックスなどが破損したり、ドリル先端側支持部が適正な加工開始位置にない状態で加工が開始され加工不良が発生したりするおそれがある。
【0006】
本発明は、このような従来装置の現状に鑑みなされたものであり、プログラムミスや操作ミスが生じた場合でも、ドリル先端側支持部が規定以上に押し込まれることを防止したり、ドリル先端側支持部が適正でない加工開始位置にある状態での加工開始を防止して、プログラムミスや操作ミスによる主軸ユニット先端部の破損や加工不良の発生を防止する工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
主軸頭1に設けられたドリル20の先端側を回転自在に支持し加工時にワーク30に当接するドリル先端側支持部2を備え、このドリル先端側支持部2は、加圧流体によりドリル軸方向先端側に付勢され、さらに前記ワーク30と当接することで前記付勢に抗してドリル軸方向基端側に移動するように構成された穿孔加工用の工作機械であって、前記ドリル先端側支持部2と前記ワーク30との当接を検知する当接検知手段と、前記当接後の前記ドリル先端側支持部2のドリル軸方向基端側への移動量を検出する移動量検出手段と、前記移動量検出手段で検出した前記移動量が適正であるか否かを判定する移動量判定手段とを有することを特徴とする工作機械に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の工作機械において、前記当接検知手段は、流量センサ3を備え、前記ドリル先端側支持部2と前記ワーク30との当接により該ドリル先端側支持部2がドリル軸方向基端側へ移動することによる前記加圧流体の流動を前記流量センサ3で検知することで、前記ドリル先端側支持部2と前記ワーク30との当接を検知するように構成されていることを特徴とする工作機械に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の工作機械において、前記移動量検出手段は、前記ワーク30のドリル軸方向基端側への移動量、若しくは前記主軸頭1及び前記ドリル先端側支持部2が設けられる主軸ユニット10のドリル軸方向先端側への移動量に基づいて検出するように構成されていることを特徴とする工作機械に係るものである。
【0011】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の工作機械において、前記移動量判定手段は、前記ドリル先端側支持部2の前記当接後のドリル軸方向基端側への移動量が所定量以上になった際に、前記ドリル先端側支持部2の移動を停止させる信号を出力するように構成されていることを特徴とする工作機械に係るものである。
【0012】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の工作機械において、前記ドリル先端側支持部2と前記ワーク30との間隔が所定間隔になった際、前記ドリル先端側支持部2と前記ワーク30との接近移動速度を減速させる接近移動速度減速手段を備えることを特徴とする工作機械に係るものである。
【0013】
また、請求項5記載の工作機械において、前記接近移動速度減速手段は、前記ドリル先端側支持部2と前記ワーク30との離間間隔を計測する計測部4を有し、この計測部4で計測した前記離間間隔が所定値になった際、前記接近移動速度を減速させるように構成されていることを特徴とする工作機械に係るものである。
【0014】
また、主軸頭1に設けられたドリル20の先端側を回転自在に支持し加工時にワーク30に当接するドリル先端側支持部2を備え、このドリル先端側支持部2は、加圧流体によりドリル軸方向先端側に付勢され、さらに前記ワーク30と当接することで前記付勢に抗してドリル軸方向基端側に移動するように構成された穿孔加工用の工作機械であって、前記ドリル先端側支持部2と前記ワーク30との離間間隔を計測する計測部4を有し、この計測部4で計測される前記離間間隔が所定間隔になった際、前記ドリル先端側支持部2と前記ワーク30との接近移動速度を減速させる接近移動速度減速手段を備えることを特徴とする工作機械に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、プログラムミスや操作ミスによる主軸ユニット先端部の破損や加工不良の発生を防止する工作機械となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例を示す説明概略図である。
図2】本実施例の処理状態(処理開始前)を示す処理状態説明断面図である。
図3】本実施例の処理状態(減速切り替え時)を示す処理状態説明断面図である。
図4】本実施例の処理状態(ワーク当接時)を示す処理状態説明断面図である。
図5】本実施例の使用状態(ドリル先端側支持部押し込み状態)を示す処理状態説明断面図である。
図6】本実施例のドリル先端側支持部押し込み適正範囲を示す説明図である。
図7】本実施例の使用状態(穿孔加工中)を示す処理状態説明断面図である。
図8】本実施例の処理手順を示すフローチャートである。
図9】本実施例の処理手順を示すフローチャートである。
図10】本実施例の別例(手動運転用)の処理手順を示すフローチャートである。
図11】本実施例の別例(手動運転用)の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
例えば、ドリル先端側支持部2を加工開始位置に配設するにあたり、ドリル先端側支持部2若しくはワーク30の移動によりドリル先端側支持部2がワーク30に接近し当接すると、このドリル先端側支持部2のワーク30への当接が当接検知手段により検知される。
【0019】
このドリル先端側支持部2のワーク30への当接後、さらにドリル先端側支持部2若しくはワーク30の移動により、ドリル先端側支持部2がドリル軸方向先端側に付勢する加圧流体の付勢に抗してドリル軸方向基端側に移動し(押し込まれ)、ドリル先端側支持部2が加工開始位置に配設されることとなる。
【0020】
この際、ドリル先端側支持部2のワーク30への当接後からのドリル軸方向基端側への移動量(押し込み量)を移動量検出手段により検出し、この移動量検出手段で検出したドリル先端側支持部2の移動量(押し込み量)が規定値以内であるか否を移動量判定手段で判定し、規定値以内であればドリル先端側支持部2が適正な加工開始位置状態になったと判断し、穿孔加工を開始する。また、ドリル先端側支持部2の移動量(押し込み量)が規定値外であれば穿孔加工を開始せず、例えば、アラームを出力し作業者に異常を知らせる。
【0021】
これにより、ドリル先端側支持部2が適正な加工開始位置にない状態で穿孔加工が開始されることが防止され、加工不良の発生を防止できる。
【0022】
また、例えば、移動量検出手段で検出するドリル先端側支持部2の移動量(押し込み量)を即時的(リアルタイム)に移動量判定手段で判定し、移動量検出手段で検出した移動量が規定値を超えた場合、直ちに移動量判定手段から移動を停止させる信号を出力することで、ドリル先端側支持部2が規定以上に移動して主軸頭側に負荷が掛かることが防止され、これによる主軸ユニット10の先端部に設けられたドリル先端側支持部2やチップボックス7などの破損を防止できる。
【0023】
このように、本発明は、ドリル先端側支持部の加工開始位置への配設操作において、プログラムミスや操作ミスが生じても、主軸ユニット10の先端部に設けられたドリル先端側支持部2やチップボックス7などの破損や加工不良の発生を防止することができる画期的な工作機械となる。
【実施例
【0024】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0025】
本実施例は、主軸頭1と、この主軸頭1に設けられたガンドリル20の先端側を回転自在に支持し加工時にワーク30に当接するドリル先端側支持部2と、このドリル先端側支持部2と前記主軸頭1との間に設けられ前記ガンドリル20の回転振れを抑制する振れ止め支持部5とを有する主軸ユニット10と、ワーク30が載置されこのワーク30を適宜な位置に移動させるテーブルユニット40とを備え、さらに、ドリル先端側支持部2を加工開始位置に配設する際、このドリル先端側支持部2がワーク30に接近した際にこのドリル先端側支持部2のワーク30に対する接近速度を低減しドリル先端側支持部2のワーク30への衝突を防止(軽減)する機能(接近動作制御機能)と、ドリル先端側支持部2が適正な加工開始位置に配設されているか否かを加工開始前に確認し、適正でない加工開始位置に配設されている状態で加工が開始されることを防止する機能(加工開始位置判定機能)を有するドリル先端側支持部衝突防止システムを備え、加工を開始する前に、ワーク30に対してガンドリル20の先端側を回転自在に支持するドリル先端側支持部2を接近させ、ドリル先端側支持部2をワーク30に一定の押力で押接した状態となる位置(加工開始位置)に配設し、このドリル先端側支持部2をワーク30に押接させた状態で加工を行う工作機械である。
【0026】
以下、本実施例に係る構成各部について詳述する。
【0027】
主軸頭1は、先端に主軸1aが回転自在に設けられ、ボールネジ機構(図示省略)により主軸ユニット10内を進退移動する構成とされ、上下方向(Y軸方向)の移動は主軸ユニット10の移動によりなされる構成である。
【0028】
具体的には、本実施例の主軸頭1は、図1に示すように、ボールネジ機構のネジ軸と並設されている主軸頭移動用レール6にスライド自在に設けられ、ボールネジ機構のモータの駆動により回転するネジ軸の回転動作により前進移動若しくは後退移動するように構成されている。
【0029】
また、ドリル先端側支持部2は、加工時、一定の押力でワーク30に押接するように、加圧流体によりドリル軸方向先端側に付勢され、さらにワーク30に当接することで前記付勢に抗してドリル軸方向基端側に移動する突没自在な構成である。
【0030】
具体的には、図2に示すように、ドリル先端側支持部2は、ガンドリル20が挿通される挿通孔2aを有しドリル軸方向に沿って移動可能に構成される本体部2Aと、この本体部2Aの移動をガイドするガイド部2Bとからなり、本体部2Aはガイド部2Bにドリル軸方向先端側に抜け止め状態に設けられ、ガイド部2Bには加圧流体としての作動油が加圧充填される油圧室2bが設けられ、この油圧室2bに圧入された作動油の加圧により本体部2Aが常時、ドリル軸方向先端側に向かって付勢されるように構成されている。
【0031】
また、このガイド部2Bは、油圧室2bと連通する作動油供給流路2cが連設されており、この作動油供給流路2cを介して作動油が油圧室2b内に圧流される構成であり、また、本実施例は、この作動油供給流路2cに流量センサ3が設けられており、この流量センサ3で作動油の流動を検知することができるように構成されている。
【0032】
また、振れ止め支持部5は、図1に示すように、主軸頭1とチップボックス7との間のガンドリル20を等分する位置に配設され、振れ止め部同期移動機構(図示省略)により主軸頭1の前進移動に同期して、ガンドリル20を等分する位置を保持しながらドリル軸方向に移動するように構成されている。
【0033】
具体的には、本実施例は三体の振れ止め支持部5を備え、各振れ止め支持部5は、ドリル軸方向に延設される移動用レール8にスライド自在に設けられる基体部5aと、この基体部5aに着脱自在に設けられガンドリル20を回転自在に支持するガンドリル挿通孔を有する支持部5bとからなり、振れ止め部同期移動機構により主軸頭1の移動速度に比してドリル軸方向先端側(ドリル先端側支持部側)のものほど低速で移動して、主軸頭1とチップボックス7との間のガンドリル20を等分する位置を保持しながら主軸頭1の前進移動に同期して前進移動するように構成されている。
【0034】
また、テーブルユニット40は、X軸方向(左右方向)、Z軸方向(前後方向、具体的には、ドリル先端側支持部2に対して接離する方向)、B軸方向(回動方向)に移動可能に構成され、また、各動作はプログラムにより自動制御される構成である。
【0035】
すなわち、本実施例は、主軸ユニット10のY軸方向の移動と、このテーブルユニット40のX軸方向、Z軸方向及びB軸方向の移動とによりワーク30をドリル先端側支持部2に対して相対移動させてドリル先端側支持部2が加工開始位置に配設されるように構成されている。
【0036】
また、ドリル先端側支持部衝突防止システムは、接近移動速度減速手段、当接検知手段、移動量検出手段及び移動量判定手段を備え、これらの手段によって上述した接近動作制御機能と加工開始位置判定機能とを有し、ドリル先端側支持部2の加工開始位置への配設操作において、プログラムミスが生じても、ドリル先端側支持部2のワーク30への衝突を防止すると共に、ドリル先端側支持部2が適正でない加工開始位置に配設されている状態で加工が開始されることを防止するように構成されている。
【0037】
具体的には、接近移動速度減速手段は、ドリル先端側支持部2とワーク30との離間間隔を計測する計測部4を有し、この計測部4で計測した前記離間間隔が所定値になった際に、接近移動速度を減速させるように構成されている。
【0038】
また、本実施例においては、計測部4はレーザセンサであり、本実施例の接近移動速度減速手段は、この計測部4を主軸ユニット10(具体的には、主軸ユニット10の正面側のドリル先端側支持部2の上方)に設け、この計測部4からワーク30の加工面30aに向けてレーザを照射してドリル先端側支持部2とワーク30の加工面30aとの離間間隔を計測し、この離間間隔が所定値(例えば50mm)になったらテーブルユニット40の移動を制御するテーブルユニット移動制御部(図示省略)に信号を出力し、この信号を受けたテーブルユニット移動制御部がテーブルユニット40の移動速度を減速(例えば600mm/minに減速)するように構成されている。
【0039】
なお、本実施例では、この計測部4を用いて、処理開始直後(ドリル先端側支持部2を加工開始位置に配設する動作が開始される前)にドリル先端側支持部2とワーク30との間の障害物の有無を確認し、障害物が無いことを確認した後、ワーク30(テーブルユニット40)の移動を開始するように構成されている。
【0040】
また、当接検知手段は、ドリル先端側支持部2が加工開始位置に配設される際、ドリル先端側支持部2のワーク30への当接を検知するものであり、本実施例の当接検知手段は、ドリル先端側支持部2の油圧機構の流量センサ3を用い、ドリル先端側支持部2のワーク30への当接によりこのドリル先端側支持部2が、このドリル先端側支持部2をドリル軸方向先端側に付勢する作動油の加圧力に抗してドリル軸方向基端側へ移動することにより生じる作動油の流動を流量センサ3で検知し、この検知のタイミングをドリル先端側支持部2のワーク30への当接のタイミングとして検出するように構成されている。
【0041】
また、移動量検出手段は、ドリル先端側支持部2がワーク30に当接した後のこのドリル先端側支持部2のドリル軸方向基端側への移動量、言い換えると、ドリル先端側支持部2の押し込み量を検出するものである。本実施例では、このドリル先端側支持部2の移動は、ワーク30の移動により生じることから、移動量の検出はテーブルユニット40のZ軸方向の移動データを用いている。
【0042】
また、移動量判定手段は、移動量検出手段で検出した移動量が適正であるか否かを判定するものであり、本実施例では、この移動量判定手段の判定結果がOKの場合、ドリル先端側支持部2が適正加工開始位置に配設されたと判断し次処理に進み、NGの場合、処理を中断しアラームを出力するように構成されている。
【0043】
また、この移動量判定手段においては、移動量検出手段で検出するドリル先端側支持部2の移動量(押し込み量)を即時的(リアルタイム)に検知し、移動量検出手段で検出した移動量が規定値を超えた場合、直ちに移動を停止させる信号を出力するように構成されている。
【0044】
上述したドリル先端側支持部衝突防止システムを備える本実施例の加工時の各処理動作について、図2図7に示す処理状態図及び図8図9に示すフローチャートに沿って説明する。
【0045】
先ず、加工開始前に、作業者の操作により、ガンドリル20の刃先20aがドリル先端側支持部2の先端から所定量(図中、L1)入り込んだ位置(本実施例ではドリル先端側支持部2の先端から10mm入り込んだ位置)になるようにガンドリル20を位置決めすると共に、加工開始位置におけるこのガンドリル20の刃先20aの位置をプログラムに設定する(例えば、本実施例ではドリル先端側支持部2の先端から5mm入り込んだ位置、すなわち、ドリル先端側支持部2が5mm押し込まれた状態が加工開始位置となるように設定している。)。
【0046】
この加工開始前準備の完了後、処理開始の信号の入力により処理動作が開始する。
【0047】
処理開始の信号が入力されると、先ず、計測部4(レーザセンサ)が作動し、ドリル先端側支持部2とワーク30との間の障害物の有無の確認を行なう。この障害物確認において、障害物を検知しなかった場合は、テーブルユニット40が移動を開始してワーク30がドリル先端側支持部2に接近移動し、障害物を検知した場合は、処理を停止し、アラームを出力する。
【0048】
また、このワーク30のドリル先端側支持部2への接近移動において、図3に示すように、ドリル先端側支持部2とワーク30との離間間隔を計測部4(レーザセンサ)にて計測し、離間間隔が所定の離間間隔L2になった時点で、ワーク30のドリル先端側支持部2に対する接近移動速度を減速させる(例えば、本実施例では離間間隔が50mmになった時点でワーク30の移動速度を600mm/minに減速させている。)。
【0049】
続いて、この減速した移動速度でワーク30がさらにドリル先端側支持部2に接近移動し、図4に示すように、ワーク30がドリル先端側支持部2の先端面に当接すると、このワーク30のドリル先端側支持部2への当接を当接検知手段(流量センサ3)が検知し、この当接検知手段によりワーク30がドリル先端側支持部2に当接した際のワーク30のZ軸方向の位置、具体的には、テーブルユニット40のZ軸座標が保存され、また、主軸ユニット10のY軸方向への移動と、テーブルユニット40のX軸方向及びB軸方向への移動に対してインターロックがかかり、主軸ユニット10のY軸方向と、テーブルユニット40のX軸方向及びB軸方向の夫々の位置が固定される。
【0050】
このワーク30のドリル先端側支持部2への当接を当接検知手段(流量センサ3)が検知し、Z軸座標が保存された後、ワーク30はガンドリル20の刃先20aがプログラムに設定(入力)した加工開始位置となるようドリル軸方向基端側に移動し、図5に示すように、ドリル先端側支持部2を押し込む(本実施例では、処理開始前にプログラムした設定値5mm押し込む。)。
【0051】
この際、ドリル先端側支持部2の押し込み量をワーク30のドリル軸方向基端側への移動量をテーブルユニット40のZ軸方向の移動データで即時的(リアルタイム)に検出し、プログラムミスでドリル先端側支持部2の押し込み量が5mmを超えた場合、押し込み動作が停止し、アラームを出力する。
【0052】
続いて、通常停止した際のドリル先端側支持部2のワーク30当接後からのドリル軸方向基端側への移動量(押し込み量)を移動量検出手段により検出し、この移動量検出手段で検出したドリル先端側支持部2の移動量(押し込み量)が、図6に示すような適正範囲内(本実施例の場合、2mm~5mm)であるか否を移動量判定手段で判定し、適正範囲内であればドリル先端側支持部2が適正な加工開始位置状態になったと判断し、図7に示すように、穿孔加工を開始する。
【0053】
なお、ドリル先端側支持部2の移動量(押し込み量)が適正範囲外であった場合、穿孔加工を開始せず、アラームを出力する。
【0054】
また、加工終了後は、ガンドリル20を退避位置に移動させた後、ワーク30がドリル先端側支持部2に対して離反移動し所定位置に移動し、作業終了となる。
【0055】
なお、本実施例はドリル先端側支持部2を加工開始位置に配設する処理動作をプログラムによる自動運転とした場合について説明したが、この処理動作については作業者が手動で操作する構成としても良く、作業者による手動操作の場合は、図10,11に示すフローチャートに沿って処理動作が行われる。
【0056】
以上のように構成される本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0057】
本実施例は、ドリル先端側支持部2を加工開始位置に配設する際に、計測部4でドリル先端側支持部2とワーク30の加工面30aとの離間間隔を計測し、この離間間隔が所定値になったらテーブルユニット40の移動を制御するテーブルユニット移動制御部に信号を出力し、この信号を受けたテーブルユニット移動制御部がテーブルユニット40の移動速度を減速するから、ワーク30のドリル先端側支持部2への当接による衝撃が軽減され、ワーク30及びドリル先端側支持部2の当接の衝撃による破損が防止される。
【0058】
また、本実施例は、ドリル先端側支持部2を加工開始位置に配設する際に、ワーク30がドリル先端側支持部2に当接した後のドリル軸方向基端側への移動量、すなわち、ドリル先端側支持部2の押し込み量を移動量検出手段により検出し、この移動量検出手段で検出したドリル先端側支持部2の押し込み量が規定値以内であるか否を移動量判定手段で判定するから、プログラムミスや操作ミスが生じた場合でも、ドリル先端側支持部2が規定以上に押し込まれることが防止され、また、ドリル先端側支持部2が適正でない加工開始位置にある状態での加工開始が防止され、プログラムミスや操作ミスによる主軸ユニット10先端部の破損や加工不良の発生が防止される工作機械となる。
【0059】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0060】
1 主軸頭
2 ドリル先端側支持部
3 流量センサ
4 計測部
10 主軸ユニット
20 ドリル
30 ワーク
【要約】
【課題】ドリル先端側支持部を加工開始位置に配設する際のプログラムミスや操作ミスによる主軸ユニット先端部の破損や加工不良の発生を防止する工作機械を提供する。
【解決手段】ドリル先端側支持部2が加工開始位置に配設される際のドリル先端側支持部2のワーク30への当接を検知する当接検知手段と、前記当接後のドリル先端側支持部2のドリル軸方向基端側への移動量を検出する移動量検出手段と、移動量検出手段で検出した移動量が適正であるか否かを判定する移動量判定手段とを有する工作機械。
【選択図】図1
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図11