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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】ホイール保持装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 30/06 20060101AFI20220307BHJP
   B60C 25/132 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B60B30/06 B
B60C25/132 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020501921
(86)(22)【出願日】2018-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2018006420
(87)【国際公開番号】W WO2019163049
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】391006430
【氏名又は名称】中央精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船戸 淳司
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6062289(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0010762(KR,A)
【文献】実開昭62-36903(JP,U)
【文献】登録実用新案第3205394(JP,U)
【文献】特開平5-193318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0049616(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 30/00 - 30/10
B60B 29/00
B60C 25/00 - 25/20
B66C 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に互いに離間して配置される一対の保持部材と、
前記一対の保持部材同士の前記第1の方向の距離を変更するように前記一対の保持部材の少なくとも一方を移動させる移動部と、
を備え、
各前記保持部材には、
ホイールのフランジを支持する支持面と、
他方の前記保持部材とは反対側の端部側に位置し、かつ、前記支持面に支持された前記ホイールの前記フランジに前記ホイールの外周側から係合可能な係合部と、
が形成されており、
前記各保持部材には、さらに、前記支持面に対して前記他方の保持部材側に位置する突出部が形成されている、
ことを特徴とするホイール保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載のホイール保持装置において、
前記係合部は、前記支持面を含む仮想平面からの高さが、前記保持部材の前記反対側の端部に向かうに連れて低くなる傾斜部を含む、
ことを特徴とするホイール保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、ホイール保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイール保持装置は、タイヤが組み付けられる前のホイールを保持するための装置である。ホイール保持装置に保持されたホイールにタイヤを組み付けることにより、タイヤ組付体が形成される。
【0003】
従来、ホイールを支持する支持部と、支持部に支持されたホイールの外周部を保持する一対の保持部と、を備えるホイール保持装置が知られている(特許文献1参照)。一対の保持部は、支持部とは別体として形成されており、支持部に支持されたホイールを介して互いに対向するように配置されている。各保持部は、テーブルと、該テーブルに対してホイールに向けて前進移動可能に設けられた支柱と、を含む。一対の保持部における支柱が、それぞれ、テーブル上を前進移動してホイールの外周部を挟み込むように押圧することにより、支持部に支持されたホイールが保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-162105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ホイール保持装置は、サイズ(径)が互いに異なる複数種類のサイズのホイールを保持することが求められる。上述した従来のホイール保持装置では、各保持部のうち、支柱が移動可能に設けられているため、複数種類のホイールを保持することは可能である。しかし、従来のホイール装置は、各保持部におけるテーブルが固定配置されている。このため、例えばサイズが比較的に小さいホイールを保持する場合、該ホイールのすぐ外側にテーブルが位置することになり、ホイールにタイヤを組付ける際に、タイヤがテーブルに干渉し、組み付けが困難になるおそれがある。
【0006】
本明細書では、上述した課題の少なくとも一部を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示されるホイール保持装置は、第1の方向に互いに離間して配置される一対の保持部材と、前記一対の保持部材同士の前記第1の方向の距離を変更するように前記一対の保持部材の少なくとも一方を移動させる移動部と、を備え、各前記保持部材には、ホイールのフランジを支持する支持面と、他方の前記保持部材とは反対側の端部側に位置し、かつ、前記支持面に支持された前記ホイールの前記フランジに前記ホイールの外周側から係合可能な係合部と、が形成されている。本ホイール保持装置では、ホイールのフランジが、一対の保持部材に形成された支持面に支持される。移動部によって、一対の保持部材同士の距離を短くすることにより、ホイールのフランジが一対の保持部材に形成された係合部に係合され、その結果、ホイールがホイール保持装置に保持される。また、このような構成であれば、径が互いに異なる複数種類のホイールを保持することができる。また、その際、ホイールの径の大小に関係なく、保持部材のうち、ホイールのフランジの外周側に突出する部分のサイズは一律である。これにより、ホイールのフランジの外周側において該ホイールに組み付けられたタイヤの配置スペースが、ホイールの径の大小に起因して変動することを抑制することができる。
【0009】
(2)上記ホイール保持装置において、前記各保持部材には、さらに、前記支持面に対して前記他方の保持部材側に位置する突出部が形成されている構成としてもよい。本ホイール保持装置では、ホイールにタイヤを組み付けた後、移動部によって、一対の保持部材同士の距離を長くすることにより、ホイール保持装置に保持されたタイヤ付のホイールを離脱させる。この際、ホイールの内周面が、一対の保持部材に形成された突出部に突き当たることによって、ホイールのフランジが保持部材から脱落することを抑制することができる。
【0010】
(3)上記ホイール保持装置において、前記係合部は、前記支持面を含む仮想平面からの高さが、前記保持部材の前記反対側の端部に向かうに連れて低くなる傾斜部を含む、ことを特徴とする構成としてもよい。本ホイール保持装置では、係合部は、支持面を含む仮想平面からの高さが、保持部材の反対側の端部に向かうに連れて低くなる傾斜部を含む。これにより、係合部全体の高さが低くなることに起因してホイールのフランジへの係合力が低下することを抑制しつつ、ホイールに組み付けられたタイヤから係合部への押圧力を抑制することができる。
【0011】
本明細書によって開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、タイヤ組付体の製造方法やホイールの保持(着脱)方法およびホイール保持装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態におけるホイール保持装置10の外観構成を概略的に示すYZ平面図である。
図2】本実施形態におけるホイール保持装置10の外観構成を概略的に示すXY平面図である。
図3】一対の保持部材100L,100Rがホイール320を保持した状態を示す説明図である。
図4】一対の保持部材100L,100Rによるホイール320の保持状態が解除される過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.実施形態:
A-1.構成:
図1は、本実施形態におけるホイール保持装置10の外観構成を概略的に示すYZ平面図(側面図)であり、図2は、本実施形態におけるホイール保持装置10の外観構成を概略的に示すXY平面図(上面図)である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。図1には、図1のX1の部分が拡大して示されている。本明細書では、便宜的に、Z方向を上下方向と呼び(Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶ)、Y方向を左右方向と呼び(Y軸正方向を右方向と呼び、Y軸負方向を左方向と呼ぶ)、X方向を前後方向と呼ぶ(X軸正方向を前方向と呼び、X軸負方向を後ろ方向と呼ぶ)ものとする。図3以降についても同様である。
【0014】
A-1-1.タイヤ組付体300の構成:
タイヤ組付体300は、車両用のホイール320と、該ホイール320に組み付けられたタイヤ310とを含む(後述の図3および図4参照)。図1では、ホイール320が、ホイール320の回転軸方向が上下方向(Z方向)に略一致するように配置されている。以下、図1において、ホイール320(タイヤ組付体300)に対して上側(Z軸正方向側)を「アウター側」といい、下側(Z軸負方向側)を「インナー側」という。ホイール320が車両本体(図示せず)に装着された場合、ホイール320のアウター側は、車両本体とは反対側に向けられ、ホイール320のインナー側は、車両本体側に向けられる。なお、各図に示すホイール320(タイヤ組付体300)の形態はあくまでも例示であり、これ以外の様々な形態でもあるとしてもよい。
【0015】
ホイール320は、例えばアルミニウム合金やマグネシウム合金などの軽合金により形成されている。ホイール320は、略円筒状のホイールリム330と、該ホイールリム330の内周側に配置されたホイールディスク340と、を備える。ホイールリム330は、一対のフランジ部332U,332Dと、一対のビードシート部334U,334Dと、ビードシート部334U,334Dよりもホイール320の径方向内側に凹んでいるドロップ部336と、を含む。ホイールディスク340は、ホイールリム330における上側(アウター側)に位置しており、ハブ取付部342(センターボア)と、複数のスポーク部344とを含む。なお、ホイール320は、ホイールリム330とホイールディスク340とが一体成形された、いわゆる1ピースタイプでもよいし、ホイールリム330とホイールディスク340とが別体である、いわゆる2ピースタイプでもよい。以下、図1において上側(アウター側)に位置するフランジ部332Uおよびビードシート部334Uを、上側フランジ部332Uおよび上側ビードシート部334Uと呼び、下側(インナー側)に位置するフランジ部332Dおよびビードシート部334Dを、下側フランジ部332Dおよび下側ビードシート部334Dと呼ぶものとする。
【0016】
タイヤ310は、例えば、原料ゴム(天然ゴムや合成ゴム)、タイヤコード、補強材、ビードワイヤーや配合剤を含んで形成されている。タイヤ310は、一対のサイドウォール312U,312Dと、一対のビード部314U,314Dと、トレッド面316と、を含む。以下、上側(アウター側)に位置するサイドウォール312Uおよびビード部314Uを、上側サイドウォール312Uおよび上側ビード部314Uと呼び、下側(インナー側)に位置するサイドウォール312Dおよびビード部314Dを、下側サイドウォール312Dおよび下側ビード部314Dと呼ぶものとする。
【0017】
A-1-2.ホイール保持装置10の構成:
ホイール保持装置10は、ホイール320にタイヤ310を組み付ける組付工程において、タイヤ310の組付前にホイール320を保持(装着)し、タイヤ310の組付後にホイール320の保持状態を解除(離脱)するための装置である。具体的には、図1および図2に示すように、ホイール保持装置10は、一対の保持部材100L,100Rと、移動部200と、を備える。なお、移動部200は、設置台400の上に配置されている。
【0018】
(保持部材100L,100R)
一対の保持部材100L,100Rは、左右方向(Y方向)に互いに離間し、かつ対向するように配置されている。各保持部材100L,100Rは、一対の保持部110と、連結部120とを、含む。一対の保持部110は、前後方向(X方向)に並んで配置される。連結部120は、一対の保持部110同士を連結している。各保持部110は、ベース部112と、係合部116と、突出部118と、を含む。ベース部112は、略平板状であり、上面の一部が、ホイール320の下側フランジ部332Dを支持する支持面114とされている。
【0019】
係合部116は、該係合部116を含む保持部材と左右方向に対向する他方の保持部材とは反対側の端部側に位置する。例えば、右側の保持部材100Rでは、係合部116は、保持部110のベース部112の右端部側(左側の保持部材100Lとは反対側)に位置する。具体的には、係合部116は、保持部110のベース部112において、支持面114に対して右側(左側の保持部材100Lとは反対側)に位置する。また、係合部116は、支持面114に支持されたホイール320の下側フランジ部332Dにホイール320の外周側から係合可能な構成(例えば鍵状)である。
【0020】
係合部116には、内周部115と、外周部117とが形成されている。内周部115は、係合部116の内周側(支持面114側)に位置するとともに支持面114に連続的につながっており、かつ、支持面114を含む仮想平面V(図1のX1参照)から上下方向(Z方向)に離間するに連れて他の保持部材に近づくように傾斜している。外周部117は、係合部116の外周側に位置しており、かつ、仮想平面Vからの高さが、他の保持部材とは反対側に向かうに連れて低くなるように傾斜している。例えば、右側の保持部材100Rでは、係合部116の内周側(左側)に位置する内周部115は、支持面114に連続的につながっており、かつ、該内周部115の上側先端に向かうに連れて左側の保持部材100L(内周側)に近づくように傾斜している。外周部117も、上側先端に向かうに連れて左側の保持部材100L(内周側)に近づくように傾斜している。なお、図2に示すように、同じ保持部材を構成する一対の保持部110のそれぞれに形成された係合部116の上下方向視での形状は、同心円上の略円弧状である。左右方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当し、外周部117は、特許請求の範囲における傾斜部に相当する。
【0021】
突出部118は、支持面114に対して他方の保持部材側に位置する。例えば、右側の保持部材100Rでは、突出部118は、支持面114の左側に位置する。また、突出部118は、左右方向(Y方向)において係合部116と略対向している。また、突出部118は、上下方向(Z方向)に伸びる円柱状であり、また、突出部118の上側先端部は半球状になっている。
【0022】
(移動部200)
移動部200は、一対の保持部材100L,100R同士の左右方向(Y方向)の距離を変更する。具体的には、移動部200は、ガイド機構210と、伝達機構220と、駆動機構230と、を備える。ガイド機構210は、一対のポールねじ212L、212Rと、二対の軸受け214と、一対のガイドレール216と、を含む。各ガイドレール216は、左右方向に沿って伸びる棒状体であり、一対のガイドレール216は、前後方向(X方向)に間隔を空けて並べられている。各保持部材100L,100Rの一対の保持部110は、一対のガイドレール216上に移動可能に配置されている。
【0023】
一対のポールねじ212L、212Rは、一対の保持部材100L,100Rに対応して、左右方向に並ぶように配置されている。各ポールねじ212L、212Rは、左右方向に伸びる棒状体であり、外周面には略全長にわたって、ねじ溝が形成されている。また、各ポールねじ212L、212Rは、一対の軸受け214に回転可能に支持されている。各ポールねじ212L、212Rの一端側は、一対の保持部材100L,100Rの一方の連結部120に貫通形成されたねじ穴に螺合されており、他端側は、伝達機構220に連結されている。これにより、各ポールねじ212L、212Rが回転すると、各保持部材100L,100Rが左右方向に移動する。例えば、右側の保持部材100Rでは、右側のポールねじ212Rの右端部側が、右側の保持部材100Rの連結部120に形成されたねじ穴に螺合されており、左端側が、伝達機構220に連結されており、右側のポールねじ212Rが回転すると、右側の保持部材100Rが左右方向に移動する。
【0024】
伝達機構220は、駆動機構230からの駆動力を、ガイド機構210に伝達する。具体的には、伝達機構220は、第1のローラ224と、第2のローラ226と、第1のローラ224と第2のローラ226とに掛けられた環状のベルト222と、を含む。第1のローラ224は、ガイド機構210の各ポールねじ212L、212Rに連結されており、第1のローラ224が一方向に回転すると、一対のポールねじ212L、212Rが回転し、これに伴って、一対の保持部材100L,100Rが互いに離間するように移動する。一方、第1のローラ224が他方向に回転すると、一対のポールねじ212L、212Rが逆回転し、これに伴って、一対の保持部材100L,100Rが互いに近づくように移動する。第2のローラ226は、駆動機構230に連結されており、駆動機構230からの駆動力によって回転する。第2のローラ226が回転すると、ベルト222を介して、第1のローラ224が回転する。
【0025】
駆動機構230は、サーボモータ232を含み、サーボモータ232の回転軸が第2のローラ226に連結されている。サーボモータ232が回転駆動すると、伝達機構220のベルト222が回転動作し、ガイド機構210の一対の保持部材100L,100R同士の距離が変更される。
【0026】
A-2.ホイール保持装置10におけるホイール320の保持と解除:
(ホイール320の保持)
図3は、一対の保持部材100L,100Rがホイール320を保持した状態を示す説明図である。図3Aには、図3Bに比べて、サイズ(径)が大きい種類のホイール320が保持された状態が示されている。また、仮想線Qは、ホイール320が保持された状態におけるホイール320の回転軸Oの当初の位置を示す(後述の図4も同じ)。ホイール320をホイール保持装置10に保持させるには、まず、移動部200により、保持対象のホイール320の下側フランジ部332Dが、図1に示すように、一対の保持部材100L,100Rの各支持面114上に配置可能になるように、一対の保持部材100L,100R同士の距離を変更する。例えば、保持対象のホイール320のサイズが比較的に大きければ、一対の保持部材100L,100R同士の距離を長くし(図3A参照)、保持対象のホイール320のサイズが比較的に小さければ、一対の保持部材100L,100R同士の距離を短くする(図3B参照)。そして、保持対象のホイール320を、一対の保持部材100L,100Rの各支持面114上に配置する。このとき、各保持部材100L,100Rにおいて、保持対象のホイール320の下側フランジ部332Dは、例えば、左右方向(Y方向)において、係合部116と突出部118との間に位置する。
【0027】
次に、移動部200により、一対の保持部材100L,100Rのそれぞれが、互いに同時、かつ略同じ速度で、ホイール320側に近づくように、一対の保持部材100L,100Rの移動を開始させる。その後、移動部200により、一対の保持部材100L,100Rのそれぞれの係合部116が、保持対象のホイール320の下側フランジ部332Dに係合可能な位置に到達したら、一対の保持部材100L,100Rの移動を停止させる。これにより、図3Aおよび図3Bに示すように、保持対象のホイール320のサイズの大小に関係なく、下側フランジ部332Dに一対の保持部材100L,100Rの係合部116を係合させることにより、ホイール320をホイール保持装置10に保持させることができる。
【0028】
次に、ホイール保持装置10に保持されたホイール320にタイヤ310を組み付ける。具体的には、図示しない組付装置によって、ホイール320にタイヤ310を組み付けて、タイヤ組付体300が形成される。より具体的には、タイヤ310の上側ビード部314Uが、ホイール320の上側ビードシート部334U上に位置し、タイヤ310の下側ビード部314Dが、ホイール320の下側ビードシート部334D上に位置する。
【0029】
ここで、一般に、タイヤ310は、ビード部314U,314Dからサイドウォール312U,312Dに向かうに連れてタイヤ310の上下方向(Z方向)の幅が広くなっている。このため、図3Aおよび図3Bに示すように、ホイール320に組み付けられたタイヤ310の下側ビード部314Dの一部および下側サイドウォール312Dは、ホイール320の下側フランジ部332Dよりも下側に位置することになる。そうすると、係合部116における特に外周側がタイヤ310と干渉し、タイヤ310から係合部116への押圧力が強くなり、その結果、後述するホイール320の保持状態の解除工程において、ホイール320の下側フランジ部332Dが係合部116から抜け難くなる。
【0030】
ここで、仮に、係合部116とタイヤ310との干渉を抑制するために、係合部116の高さを低くすると、係合部116による係合力が低下し、ホイール320の保持力が低下するおそれがある。これに対して、本実施形態では、上述したように、係合部116の外周部117は、仮想平面Vからの高さが、他の保持部材とは反対側に向かうに連れて低くなるように傾斜している。これにより、係合部116全体の高さが低くなることに起因してホイール320の下側フランジ部332Dへの係合力が低下することを抑制しつつ、ホイール320に組み付けられたタイヤ310から係合部116への押圧力を抑制することができる。
【0031】
(ホイール320の保持状態の解除)
図4は、一対の保持部材100L,100Rによるホイール320の保持状態が解除される過程を示す説明図である。組付工程後、タイヤ組付体300のホイール320が一対の保持部材100L,100Rに保持された保持状態(図3に示す状態)を解除する。具体的には、移動部200により、一対の保持部材100L,100R同士の距離が長くなるように、一対の保持部材100L,100Rを移動させる。この際、ホイール320(タイヤ組付体300)が、一対の保持部材100L,100Rの一方に引きずられて、回転軸Oが仮想線Qから左右方向にずれることがある。その要因としては、例えば、一対の保持部材100L,100Rのそれぞれの支持面114について、ホイール320との摩擦抵抗が異なることが考えられる。また、図3図4に示すように、タイヤ310から係合部116への押圧力によって係合部116と下側フランジ部332Dとの係合が解除され難くなっていることが考えられる。
【0032】
図4Aおよび図4Bには、右側の保持部材100Rの係合部116とホイール320の下側フランジ部332Dとの係合が解除されない状態が示されている。このために、一対の保持部材100L,100R同士の距離が長くなるに伴って、ホイール320の回転軸Oが仮想線Qから右側にずれるように、ホイール320が引きずられている。ここで、仮に、左側の保持部材100Lに突出部118が形成されていないとすると、ホイール320の下側フランジ部332Dが、左側の保持部材100Lにおける支持面114から脱落する。しかし、左側の保持部材100Lに突出部118が形成されている。このため、図4Bに示すように、左側の保持部材100Lの突出部118がホイール320の内周面に当接し(図4B参照)、ホイール320の右側への移動が規制されることにより、ホイール320の下側フランジ部332Dが、左側の保持部材100Lにおける支持面114から脱落することが抑制される。また、タイヤ310から係合部116への押圧力によって係合部116と下側フランジ部332Dとの係合が解除され難くなっていたとしても、突出部118によりホイール320の移動が規制されることによって、係合部116と下側フランジ部332Dとの係合を解除することができる。これにより、図4Cに示すように、保持部材100L,100Rからのホイール320の脱落を抑制しつつ、ホイール320の保持状態を解除し、ホイール320をホイール保持装置10から離脱させることができる。
【0033】
A-3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態では、ホイール320のフランジ部332U,332Dが、一対の保持部材100L,100Rに形成された支持面114に支持される。移動部200によって、一対の保持部材100L,100R同士の距離を短くすることにより、ホイール320のフランジ部332U,332Dが一対の保持部材100L,100Rに形成された係合部116に係合され、その結果、ホイール320がホイール保持装置10に保持される。また、このような構成であれば、径が互いに異なる複数種類のホイール320を保持することができる。また、その際、ホイール320の径の大小に関係なく、保持部材100L,100Rのうち、ホイール320のフランジ部332U,332Dの外周側に突出する部分のサイズは一律である。これにより、ホイール320のフランジ部332U,332Dの外周側において該ホイール320に組み付けられたタイヤ310の配置スペースが、ホイール320の径の大小に起因して変動することを抑制することができる。より具体的には、本実施形態では、ホイール320を支持する支持面114と、ホイール320を保持する係合部116とが、保持部材100L,100Rに形成されることにより一体的に移動可能とされている。このため、例えば図3Bに示すように、サイズが比較的に小さいホイール320であっても、ホイール320のすぐ外側にはタイヤ310と干渉するものはない。したがって、ホイール320にタイヤ310を円滑に取り付けることができる。
【0034】
また、本実施形態では、ホイール320にタイヤ310を組み付けた後、移動部200によって、一対の保持部材100L,100R同士の距離を長くすることにより、ホイール保持装置10に保持されたタイヤ付のホイール320を離脱させる。この際、ホイール320の内周面が、一対の保持部材100L,100Rに形成された突出部118に突き当たることによって、ホイール320のフランジ部332U,332Dが保持部材100L,100Rから脱落することを抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、係合部116は、支持面114を含む仮想平面Vからの高さが、保持部材100L,100Rの反対側の端部に向かうに連れて低くなる外周部117を含む。これにより、係合部116全体の高さが低くなることに起因してホイール320のフランジ部332U,332Dへの係合力が低下することを抑制しつつ、ホイール320に組み付けられたタイヤ310から係合部116への押圧力を抑制することができる。なお、タイヤ310が、例えば超扁平タイヤなど、比較的に硬いゴム材料により形成されたタイヤであるほど、タイヤの反発力が大きいため、本発明を適用することが特に有用である。
【0036】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0037】
上記実施形態におけるホイール保持装置10の構成はあくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、1つの保持部材100L,100Rは、一対の保持部110を含むとしているが、1つ、または、3つ以上の保持部110を含むとしてもよい。また、各保持部材100L,100Rは、突出部118を含まないとしてもよい。
【0038】
また、上記実施形態において、係合部116は、外周部117を含まないとしてもよい。また、上記実施形態において、突出部118は、左右方向(Y方向)において係合部116と対向していなくてもよく、少なくとも、支持面114に対して他方の保持部材側に位置していればよい。また、突出部118の上側先端部は、半球状以上の形状(例えば平坦状など)になっているとしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、移動部200は、一対の保持部材100L,100Rの両方を移動させて、一対の保持部材100L,100R同士の距離を変更するとしたが、一対の保持部材100L,100Rの一方だけを移動させるとしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態におけるタイヤ組付体300の製造方法はあくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、一対の保持部材100L,100Rは、ホイール320を、アウター側を下にした状態で保持するようにしてもよい。また、ホイール保持装置10は、ホイール320を、回転軸Oが鉛直方向に沿うように横にした状態で支持するものに限られない。例えば、ホイール保持装置10は、ホイール320を、回転軸Oが水平方向に沿うように縦にした状態で保持する構成でもよい。
【符号の説明】
【0041】
10:ホイール保持装置 100L,100R:保持部材 110:保持部 112:ベース部 114:支持面 115:内周部 116:係合部 117:外周部 118:突出部 120:連結部 200:移動部 210:ガイド機構 212L、212R:ポールねじ 214:軸受け 216:ガイドレール 220:伝達機構 222:ベルト 224:第1のローラ 226:第2のローラ 230:駆動機構 232:サーボモータ 300:タイヤ組付体 310:タイヤ 312U,312D:サイドウォール 314U,314D:ビード部 316:トレッド面 320:ホイール 330:ホイールリム 332U,332D:フランジ部 334U,334D:ビードシート部 336:ドロップ部 340:ホイールディスク 342:ハブ取付部 344:スポーク部 400:設置台 O:回転軸 Q:仮想線 V:仮想平面
図1
図2
図3
図4