(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】熱輸送デバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 3/08 20060101AFI20220307BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20220307BHJP
F28D 9/00 20060101ALN20220307BHJP
【FI】
F28F3/08 311
F28F21/08 F
F28D9/00
(21)【出願番号】P 2020526783
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2018024384
(87)【国際公開番号】W WO2020003412
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】307009034
【氏名又は名称】株式会社WELCON
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 真吾
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-066692(JP,A)
【文献】特開2018-066534(JP,A)
【文献】特開2010-117126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/08,21/08
F28D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体が流通する第1流路および第2流体が流通する第2流路を有する熱輸送デバイスであって、
下記[要件1]~[要件3]を満たす断面Aを得ることができる、熱輸送デバイス。
[要件1]前記断面Aは、前記第2流路に対して直角の断面である。
断面A内は連続一体性があり、金属からなる。
[要件2]前記断面Aにおいて、前記第2流路の孔が凹部と凸部とを交互にする複数の仕切板によって区切られ、複数の前記仕切板は層状かつ平行に配置されていて、少なくとも1組の隣り合う2つの前記仕切板を仕切板Bおよび仕切板Cとし、前記仕切板Bの表面において最も前記仕切板Cに近い凸部の頂点である点αと、前記仕切板Cの表面において最も前記仕切板Bに近い凸部の頂点である点βとを比較した場合に、点αは点βよりも前記仕切板Cの側に存在している。
[要件3]前記仕切板の内部に前記第1流路が存在しており、前記第1流路は前記第2流路と平行ではない。
【請求項2】
平板Pの主面の少なくとも一部を除去加工して、その主面に凹みを形成し、その凹みが形成されている部分である加工部を前記主面内に含む加工平板Qを得る平板加工工程と、
上面平板Rと前記加工平板Qとの間に第1流体が流通する前記加工部からなる第1流路が形成されるように、前記上面平板Rと前記加工平板Qとの主面同士を密着させ、前記上面平板Rおよび前記加工平板Qの主面同士を接合して第1流路プレートを得る第1接合工程と、
前記第1流路が変形するように、前記第1流路プレートの主面の少なくとも一部を塑性加工し、その主面に凹みを形成することで、その凹みが形成されている部分である塑性変形部を主面内に含む、第2流路プレートを得る塑性加工工程と、
複数の前記第2流路プレートを重ね、前記第2流路プレートと別の前記第2流路プレートとの間に前記第1流路と平行ではない第2流体が流通する第2流路が形成されるように、複数の前記第2流路プレートの主面同士をスペーサー
Yを介して接合する第2接合工程と、
を備える熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項3】
平板Pの主面の少なくとも一部を塑性加工して、その主面に凹みを形成し、その凹みが形成されている部分である加工部を前記主面内に含む加工平板Qを得る平板加工工程と、
前記加工平板Qと主面同士を密着させても前記加工部と接する部分がないように加工された平板状のスペーサーXを用意し、前記加工平板Qと前記スペーサーXとの主面同士を接触させ、上面平板Rおよび下面平板Sによって前記スペーサーXと共に前記加工平板Qを挟み、その後、前記上面平板Rと前記下面平板Sとの間に前記加工部はなく前記スペーサーXのみが存在している部分においては、前記上面平板Rと前記下面平板Sとの間に隙間がなく、前記上面平板Rと前記下面平板Sとの間に前記加工部はあり前記スペーサーXは存在しない部分においては、前記上面平板Rと前記下面平板Sとの間に第1流体が流通する第1流路が形成されるように、前記上面平板R、前記加工平板Q、前記スペーサーXおよび前記下面平板Sの主面同士を接合して第1流路プレートを得る第1接合工程と、
前記第1流路が変形するように、前記第1流路プレートの主面の少なくとも一部を塑性加工し、その主面に凹みを形成することで、その凹みが形成されている部分である塑性変形部を主面内に含む、第2流路プレートを得る塑性加工工程と、
複数の前記第2流路プレートを重ね、前記第2流路プレートと別の前記第2流路プレートとの間に前記第1流路と平行ではない第2流体が流通する第2流路が形成されるように、複数の前記第2流路プレートの主面同士をスペーサー
Yを介して接合する第2接合工程と、
を備える熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第2接合工程において、
前記第2流路プレートと主面同士を密着させても前記塑性変形部と接する部分がないように加工されている平板状の
前記スペーサーYを用意し、
1枚目の前記第2流路プレート、1枚目の前記スペーサーY、2枚目の前記第2流路プレート、および2枚目の前記スペーサーYをこの順に重ね、各々の主面同士を接合する操作を含む、
請求項2または3に記載の熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第1接合工程において、
前記上面平板R
および前記加工平板
Qの主面同士を拡散接合によって接合する、請求項2~4のいずれかに記載の熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記第2接合工程において、
前記第2流路プレートおよび前記スペーサーYの主面同士を拡散接合によって接合する、請求項2~5のいずれかに記載の熱輸送デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱輸送デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2流体間にて熱交換させることで機能を果たす熱輸送デバイスとして、熱交換器、蒸発器、凝縮器、エアコン等の室外機、室内機、ラジエーター、反応器、燃料電池関連部品、インクジェット用部品などが挙げられる。
例えば特許文献1には、
図12に示す熱交換器が示されている。
図12は従来の熱交換器の概略斜視図である。
図12に示す熱交換器101は拡散接合によって形成されたものであり、熱交換される異なる2種類の冷媒を流通させる第1の流体通路102を一主面に形成したプレートと、この第1の流体通路102と直交する方向に形成された第2の流体通路104を一主面に形成したプレートとを重ね合わせ、これらを真空中で加圧および加熱することにより接合一体化されて形成されている。このように構成された熱交換器101は、上下に積層された各プレートの第1の流体通路102を流れる第1の冷媒と、第2の流体通路104を流れる第2の冷媒とが熱交換するようになっている。また、熱交換器101内を流れる冷媒の流体通路102、104は、
図12に示すように、その積層方向において交互に組み合わせるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は2流体間の熱通過率を高める方法を検討した。
そして、第1の流体通路が
図12に示すような直線的なものではなく蛇行した流路であり、さらに、複数の第1の流体通路の間隔が狭く、かつ、その狭い第1の流体通路の間を第2の流体が流通するものは熱通過率が高くなると考えた。
ただし、熱交換器全体の強度を保ちつつ、かつ低コストを実現しながら、複雑な流路構造とすることは極めて困難である。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決することを目的とする。
すなわち、一方の流路が蛇行していて、それら流路の間隔が狭く、その狭い流路間を他方の流体が流通するために熱通過率が高く、その結果、小型化、軽量化または薄型化等を達成することができる熱輸送デバイスを提供することを目的とする。また、そのようなそのような熱輸送デバイスであって、強度が高い熱輸送デバイスを低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)~(6)である。
(1)第1流体が流通する第1流路および第2流体が流通する第2流路を有する熱輸送デバイスであって、
下記[要件1]~[要件3]を満たす断面Aを得ることができる、熱輸送デバイス。
[要件1]前記断面Aは、前記第2流路に対して直角の断面である。
[要件2]前記断面Aにおいて、前記第2流路の孔が凹部と凸部とを交互にする複数の仕切板によって区切られ、複数の前記仕切板は層状かつ平行に配置されていて、少なくとも1組の隣り合う2つの前記仕切板を仕切板Bおよび仕切板Cとし、前記仕切板Bの表面において最も前記仕切板Cに近い凸部の頂点である点αと、前記仕切板Cの表面において最も前記仕切板Bに近い凸部の頂点である点βとを比較した場合に、点αは点βよりも前記仕切板Cの側に存在している。
[要件3]前記仕切板の内部に前記第1流路が存在しており、前記第1流路は前記第2流路と平行ではない。
(2)平板Pの主面の少なくとも一部を除去加工して、その主面に凹みを形成し、その凹みが形成されている部分である加工部を前記主面内に含む加工平板Qを得る平板加工工程と、
上面平板Rと前記加工平板Qとの間に第1流体が流通する前記加工部からなる第1流路が形成されるように、前記上面平板Rと前記加工平板Qとの主面同士を密着させ、前記上面平板Rおよび前記加工平板Qの主面同士を接合して第1流路プレートを得る第1接合工程と、
前記第1流路が変形するように、前記第1流路プレートの主面の少なくとも一部を塑性加工し、その主面に凹みを形成することで、その凹みが形成されている部分である塑性変形部を主面内に含む、第2流路プレートを得る塑性加工工程と、
複数の前記第2流路プレートを重ね、前記第2流路プレートと別の前記第2流路プレートとの間に前記第1流路と平行ではない第2流体が流通する第2流路が形成されるように、複数の前記第2流路プレートの主面同士をスペーサーを介して接合する第2接合工程と、
を備える熱輸送デバイスの製造方法。
(3)平板Pの主面の少なくとも一部を塑性加工して、その主面に凹みを形成し、その凹みが形成されている部分である加工部を前記主面内に含む加工平板Qを得る平板加工工程と、
前記加工平板Qと主面同士を密着させても前記加工部と接する部分がないように加工された平板状のスペーサーXを用意し、前記加工平板Qと前記スペーサーXとの主面同士を接触させ、上面平板Rおよび下面平板Sによって前記スペーサーXと共に前記加工平板Qを挟み、その後、前記上面平板Rと前記下面平板Sとの間に前記加工部はなく前記スペーサーXのみが存在している部分においては、前記上面平板Rと前記下面平板Sとの間に隙間がなく、前記上面平板Rと前記下面平板Sとの間に前記加工部はあり前記スペーサーXは存在しない部分においては、前記上面平板Rと前記下面平板Sとの間に第1流体が流通する第1流路が形成されるように、前記上面平板R、前記加工平板Q、前記スペーサーXおよび前記下面平板Sの主面同士を接合して第1流路プレートを得る第1接合工程と、
前記第1流路が変形するように、前記第1流路プレートの主面の少なくとも一部を塑性加工し、その主面に凹みを形成することで、その凹みが形成されている部分である塑性変形部を主面内に含む、第2流路プレートを得る塑性加工工程と、
複数の前記第2流路プレートを重ね、前記第2流路プレートと別の前記第2流路プレートとの間に前記第1流路と平行ではない第2流体が流通する第2流路が形成されるように、複数の前記第2流路プレートの主面同士をスペーサーを介して接合する第2接合工程と、
を備える熱輸送デバイスの製造方法。
(4)前記第2接合工程において、
前記第2流路プレートと主面同士を密着させても前記塑性変形部と接する部分がないように加工されている平板状のスペーサーYを用意し、
1枚目の前記第2流路プレート、1枚目の前記スペーサーY、2枚目の前記第2流路プレート、および2枚目の前記スペーサーYをこの順に重ね、各々の主面同士を接合する操作を含む、上記(2)または(3)に記載の熱輸送デバイスの製造方法。
(5)前記第1接合工程において、
前記上面平板R、前記加工平板Q、前記下面平板Sおよび前記スペーサーXからなる群から選ばれる少なくとも2つの主面同士を拡散接合によって接合する、上記(2)~(4)のいずれかに記載の熱輸送デバイスの製造方法。
(6)前記第2接合工程において、
前記第2流路プレートおよび前記スペーサーYの主面同士を拡散接合によって接合する、上記(2)~(5)のいずれかに記載の熱輸送デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一方の流路が蛇行していて、それら流路の間隔が狭く、その狭い流路間を他方の流体が流通するために熱通過率が高く、その結果、小型化、軽量化または薄型化等を達成することができる熱輸送デバイスを提供することができる。また、そのような熱輸送デバイスであって、強度が高い熱輸送デバイスを低コストで製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)は本発明のデバイスの概略斜視図(例示)であり、
図1(b)は
図1(a)におけるa-a'線断面図である。
【
図2】
図2(a)は別の本発明のデバイスの概略斜視図(例示)であり、
図2(b)は
図2(a)におけるb-b'線断面図である。
【
図3】
図3(a)はさらに別の本発明のデバイスの概略斜視図(例示)であり、
図3(b)は
図3(a)におけるc-c'線断面図である。
【
図4】本発明のデバイスを上方から見たときに、第1流路のみが透過して見えたと仮定した場合の第1流路の構成例を示す図である。
【
図5】本発明のデバイスの概略斜視図(例示)である。
【
図6】本発明の製造方法における平板加工工程を説明するための概略図である。
【
図7】本発明の製造方法における別の平板加工工程を説明するための概略図である。
【
図8】本発明の製造方法における第1接合工程を説明するための概略図である。
【
図9】本発明の製造方法における別の第1接合工程を説明するための概略図である。
【
図10】本発明の製造方法における塑性加工工程を説明するための概略図である。
【
図11】本発明の製造方法における第2接合工程を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について説明する。
本発明は、第1流体が流通する第1流路および第2流体が流通する第2流路を有する熱輸送デバイスであって、下記[要件1]~[要件3]を満たす断面Aを得ることができる、熱輸送デバイスである。
[要件1]前記断面Aは、前記第2流路に対して直角の断面である。
[要件2]前記断面Aにおいて、前記第2流路の孔が凹部と凸部とを交互にする複数の仕切板によって区切られ、複数の前記仕切板は層状かつ平行に配置されていて、少なくとも1組の隣り合う2つの前記仕切板を仕切板Bおよび仕切板Cとし、前記仕切板Bの表面において最も前記仕切板Cに近い凸部の頂点である点αと、前記仕切板Cの表面において最も前記仕切板Bに近い凸部の頂点である点βとを比較した場合に、点αは点βよりも前記仕切板Cの側に存在している。
[要件3]前記仕切板の内部に前記第1流路が存在しており、前記第1流路は前記第2流路と平行ではない。
このような熱輸送デバイスを、以下では「本発明のデバイス」ともいう。
【0010】
また、本発明は、平板Pの主面の少なくとも一部を除去加工して、その主面に凹みを形成し、その凹みが形成されている部分である加工部を前記主面内に含む加工平板Qを得る平板加工工程と、上面平板Rと前記加工平板Qとの間に第1流体が流通する前記加工部からなる第1流路が形成されるように、前記上面平板Rと前記加工平板Qとの主面同士を密着させ、前記上面平板Rおよび前記加工平板Qの主面同士を接合して第1流路プレートを得る第1接合工程と、前記第1流路が変形するように、前記第1流路プレートの主面の少なくとも一部を塑性加工し、その主面に凹みを形成することで、その凹みが形成されている部分である塑性変形部を主面内に含む、第2流路プレートを得る塑性加工工程と、複数の前記第2流路プレートを重ね、前記第2流路プレートと別の前記第2流路プレートとの間に前記第1流路と平行ではない第2流体が流通する第2流路が形成されるように、複数の前記第2流路プレートの主面同士をスペーサーを介して接合する第2接合工程と、を備える熱輸送デバイスの製造方法である。
このような熱輸送デバイスの製造方法を、以下では「本発明の第1の製造方法」ともいう。
【0011】
また、本発明は、平板Pの主面の少なくとも一部を塑性加工して、その主面に凹みを形成し、その凹みが形成されている部分である加工部を前記主面内に含む加工平板Qを得る平板加工工程と、前記加工平板Qと主面同士を密着させても前記加工部と接する部分がないように加工された平板状のスペーサーXを用意し、前記加工平板Qと前記スペーサーXとの主面同士を接触させ、上面平板Rおよび下面平板Sによって前記スペーサーXと共に前記加工平板Qを挟み、その後、前記上面平板Rと前記下面平板Sとの間に前記加工部はなく前記スペーサーXのみが存在している部分においては、前記上面平板Rと前記下面平板Sとの間に隙間がなく、前記上面平板Rと前記下面平板Sとの間に前記加工部はあり前記スペーサーXは存在しない部分においては、前記上面平板Rと前記下面平板Sとの間に第1流体が流通する第1流路が形成されるように、前記上面平板R、前記加工平板Q、前記スペーサーXおよび前記下面平板Sの主面同士を接合して第1流路プレートを得る第1接合工程と、前記第1流路が変形するように、前記第1流路プレートの主面の少なくとも一部を塑性加工し、その主面に凹みを形成することで、その凹みが形成されている部分である塑性変形部を主面内に含む、第2流路プレートを得る塑性加工工程と、複数の前記第2流路プレートを重ね、前記第2流路プレートと別の前記第2流路プレートとの間に前記第1流路と平行ではない第2流体が流通する第2流路が形成されるように、複数の前記第2流路プレートの主面同士をスペーサーを介して接合する第2接合工程と、を備える熱輸送デバイスの製造方法である。
このような熱輸送デバイスの製造方法を、以下では「本発明の第2の製造方法」ともいう。
【0012】
以下において単に「本発明の製造方法」と記した場合、「本発明の第1の製造方法」および「本発明の第2の製造方法」のいずれをも意味しているものとする。
【0013】
本発明のデバイスは、本発明の製造方法によって好ましく製造することができる。
【0014】
<本発明のデバイス>
初めに、本発明のデバイスについて説明する。
本発明のデバイスは第1流体が流通する第1流路および第2流体が流通する第2流路を有する熱輸送デバイスであり、例えば、冷凍機器や空調機器に含まれる熱交換器として好ましく用いることができる。その他、コンピューター等の電子機器を冷却するために用いられる冷却デバイスとしても、用いることができる。
【0015】
第1流体および第2流体は特に限定されず、例えば従来公知の冷媒を用いることができる。具体的には水(純水等)、アルコール(エタノール等)、フロン、代替フロン等を用いることができる。
【0016】
第1流路および第2流路の断面形状や直径等は特に限定されない。例えば、第1流路は、断面が略円形で、その直径(等面積円相当径)が0.05~5mmであってよく、0.2~2mmであることが好ましい。
【0017】
第1流路と第2流路との最短距離が短いほど、熱通過率を高めることができるため好ましいが、逆に長いほど、本発明のデバイスの強度を高めることができるため好ましい。本発明のデバイスに求められる性能によって、第1流路と第2流路との距離の最適値を選択することができる。例えば、第1流路と第2流路との最短距離は0.05~1mmであってよく、0.1~0.3mmであることが好ましい。
【0018】
本発明のデバイスについて、概略図を用いて説明する。
図1(a)は、本発明のデバイスの概略斜視図を示しており、
図1(b)は
図1(a)おけるa-a'線断面図を示している。
図1に例示した本発明のデバイス1では、
図1(a)に示すように、第1流体が流通する第1流路2と、第2流体が流通する第2流路4とがおおむね直交している。
しかしながら、本発明のデバイスでは、第1流体が流通する第1流路2と、第2流体が流通する第2流路4とが直交していなくてもよい。
例えば、
図2に例示する本発明のデバイスのように、第2流路4に対して、第1流路2が直交しない方向に形成されていてもよい。
また、例えば、
図3に例示する本発明のデバイスのように、第2流路4がジグザグ(ヘリンボーンパターン)であってもよい。
なお、
図1~3において「2p」は第1流路の入口もしくは出口の孔または断面に現れた第1流路の孔を示しており、「4p」は第2流路の入口もしくは出口の孔を示している。
【0019】
本発明のデバイスは、下記[要件1]~[要件3]を満たす断面Aを得ることができる、熱輸送デバイスである。
【0020】
[要件1]
図1~3に例示するような本発明のデバイスは、本発明のデバイスを第2流路に対して直角の方向にて切断することで、
図1(b)、
図2(b)および
図3(b)に例示するような断面Aを得ることができる。
なお、断面Aは、本発明のデバイスにおける全ての第2流路に対して直角の方向の断面でなくてもよい。第2流路の構成によっては、全ての第2流路に対して直角の断面を得ることができない場合もありえる。そのような場合は、本発明のデバイスにおける第2流路の一部に対して(本発明のデバイスにおける、できるだけ多くの第2流路に対して)直角の方向の断面を、本発明のデバイスにおける断面Aとする。
【0021】
例えば
図1に示した本発明のデバイス1の場合であれば、第2流路は直線的に形成されているので、この流路に対して直角の方向の断面、すなわち、
図1(a)におけるa-a'線断面が断面Aとなり、これを図示すれば
図1(b)のようになる。
また、例えば
図2に示した本発明のデバイス1の場合も第2流路は直線的に形成されているので、この流路に対して直角の方向の断面、すなわち、
図2(a)におけるb-b'線断面が断面Aとなり、これを図示すれば
図2(b)のようになる。なお、
図2(a)に示すように第1流路2が第2流路4に対して斜め方向に形成されている場合、
図2(b)に示すように、断面Aにおいては第1流路の孔2pが複数個現れる可能性がある。また、理解を容易にするために
図2(b)には第1流路2の位置(または第1流路2が断面Aから透けて見えたと仮定した場合の線)を点線で示しているが、
図2(b)の場合、実際は
図2(b)に第1流路2の孔2pのみが現れるはずである。
また、例えば
図3に示した本発明のデバイス1の場合、第2流路は直線的に形成されていないが、この流路に対して直角の方向の断面を得ることは可能である。すなわち、
図3(a)におけるc-c'線断面が断面Aとなり、これを図示すれば
図3(b)のようになる。
【0022】
なお、
図1~
図3における第1流路および第2流路は理解を容易にするために極めて単純な構成の流路を図示している。例えば本発明のデバイスを上方から見たときに、第1流路のみが透過して見えたとすると、
図4のような流路を構成している場合もある。その他、第1流路および第2流路の形状等は、コルゲートパターン(平行波型)、ヘリンボーン型(ニシンの骨型)、ダブルヘリンボーン型などもあり得る。
【0023】
[要件2]
図1(b)、
図2(b)および
図3(b)に例示したように、本発明のデバイスでは断面Aにおいて、第2流路の孔(4p)が凹部と凸部とを交互にする複数の仕切板6によって区切られ、複数の前記仕切板は層状かつ平行に配置されている。ここで平行とは略平行を意味する。
そして、少なくとも1組の隣り合う2つの仕切板6を仕切板Bおよび仕切板Cとする。また、仕切板Bの表面において最も仕切板Cに近い凸部の頂点を点αとする。また、仕切板Cの表面において最も仕切板Bに近い凸部の頂点を点βとする。
このような本発明のデバイスでは、点αと点βとを比較した場合、
図1(b)、
図2(b)および
図3(b)に示したように、点αは点βよりも仕切板Cの側に存在している。これは仕切板の間隔が非常に狭いことを意味しており、これによって、本発明のデバイスの熱通過率が高まる。
隣り合う2つの仕切板6のほとんど、または全てにおいて、上記の状態、すなわち、点αは点βよりも仕切板Cの側に存在している状態であることが好ましい。
【0024】
[要件3]
本発明のデバイスでは、
図1(b)、
図2(b)および
図3(b)に示したように、仕切板6の内部に第1流路2が存在している。これらの図に示したように、第1流路2は凹部と凸部とを交互にする仕切板の内部に存在しているため、第1流路も仕切板の形状に沿って蛇行していることになる。
また、第1流路2と第2流路4とは平行ではない。すなわち、第1流体が流通する方向と、第2流体が流通する方向とは平行ではない。
【0025】
このような本発明のデバイスは、一方の流路が蛇行していて、それら流路の間隔が狭く、その狭い流路間を他方の流体が流通するために熱通過率が高く、その結果、小型化、軽量化または薄型化等を達成することができる。
【0026】
本発明のデバイスは板状であってもよいが、板状の本発明のデバイスを変形させて、例えば
図5のような筒状のものとすることもできる。
【0027】
<本発明の製造方法>
次に本発明の製造方法について説明する。
前述の本発明のデバイスは、本発明の製造方法によって好ましく製造することができる。
【0028】
本発明の製造方法は、平板加工工程と、第1接合工程と、塑性加工工程と、第2接合工程と、を備える。
【0029】
<平板加工工程>
本発明の製造方法における平板加工工程について、
図6、
図7を用いて説明する。
平板加工工程では、初めに、平板Pを用意する(
図6(a)、
図7(a))。
平板Pは金属製の平板であることが好ましく、ステンレス、アルミ、鉄、鋼、銅、チタン、インコネル、ハステロイからなる平板であることがより好ましい。
大きさや厚さは特に限定されないが、厚さは0.05~5mm程度であることが好ましく、0.2~2mm程度であることがより好ましい。
【0030】
次に、平板Pの主面の少なくとも一部を加工して、その主面に凹みを形成する。
例えば
図6(b)、
図7(b)に示すように、平板Pの主面10の少なくとも一部を加工して、その主面10に凹み12を形成する。
そして、その凹みが形成されている部分である加工部14を主面10内に含む加工平板Qを得る。
【0031】
ここで、本発明の第1の製造方法では、平板Pの主面の少なくとも一部を除去加工して、その主面に凹みを形成する。
ここで除去加工は、平板Pの主面の少なくとも一部を除去することで、その主面に凹みを形成することができる手段であれば特に限定されない。除去加工は、エッチング加工または切削加工であることが好ましい。
図6(b)に示した凹み12は、除去加工した場合の凹みを示している。
【0032】
また、本発明の第2の製造方法では、平板Pの主面の少なくとも一部を塑性加工して、その主面に凹みを形成する。
ここで塑性加工は、平板Pの主面の少なくとも一部を塑性変形することで、その主面に凹みを形成することができる手段であれば特に限定されない。塑性加工は、プレス加工またはギアロールを用いた加工であることが好ましい。ギアロールを用いた加工とは、2つのギアロールの間に板状または帯状の金属等を挟み込んで加工する方法であり、特開平11-147149号公報、特開2004-025257号公報に示されている方法が例示される。
図7(b)に示した凹み12は、塑性加工した場合の凹みを示している。
【0033】
<第1接合工程>
次に、本発明の第1の製造方法における第1接合工程について、
図8を用いて説明する。
本発明の第1の製造方法における第1接合工程では、初めに上面平板Rを用意する(
図8(a))。
上面平板Rの材質、大きさ、厚さ等は特に限定されないが、前述の平板Pと同様のものであることが好ましい。
【0034】
次に、上面平板Rと加工平板Qとの主面同士を密着させる(
図8(b))。ここで、加工部14の凹みが形成されている加工平板Qの主面が上面平板Rに対向させ密着させる。
その後、上面平板Rと加工平板Qとの主面同士を接合することで、上面平板Rと加工平板Qとの間に加工部14からなる第1流路2を備える第1流路プレート20を得ることができる(
図8(c))。
【0035】
次に、本発明の第2の製造方法における第1接合工程について、
図9を用いて説明する。
本発明の第2の製造方法における第1接合工程では、初めに上面平板Rおよび下面平板Sを用意する(
図9(a))。
上面平板Rおよび下面平板Sの材質、大きさ、厚さ等は特に限定されないが、前述の平板Pと同様のものであることが好ましい。
【0036】
また、加工平板Qと主面同士を密着させても加工部14と接する部分がないように加工された平板状のスペーサーXを用意する(
図9(a))。
【0037】
スペーサーXは、例えば上面平板Rと同様の材質であって、上面平板Rよりもわずかに大きいサイズのものを用意し、それを打ち抜き加工して得ることができる。
ここで、加工平板Qの加工部14はプレス加工等の塑性加工によって形成されているため、加工平板Qにおける一方の主面に凹部(凹み12)が形成され、他方の主面には凸部γが形成されている。そこで、スペーサーXの厚さは、この加工平板Qの凸部γの程度によって調整する。すなわち、後述する
図9(b)の状態にしたときに、凸部γの山の先端が下面平板Sと接しないように加工平板Qの厚さを調整する。ただし、後述する
図9(b)の状態にしたときに、凸部γの山の先端が下面平板Sの主面と接するように加工平板Qの厚さを調整することが好ましい。その凸部γの山の先端と下面平板Sの主面とが接合することで、得られる熱輸送デバイスの強度がより高くなり、好ましい。
【0038】
次に、加工平板QとスペーサーXとの主面同士を接触させる。ここで、
図9(a)に示すように、加工平板Qの加工部14における凸部γの側の主面をスペーサーXの主面と接触させる。
そして、上面平板Rおよび下面平板SによってスペーサーXと共に加工平板Qを挟み、
図9(b)の状態とする。なお、
図9(b)は上面平板Rおよび下面平板Sの長手方向(図の左右方向)に平行であって主面に垂直な方向に切った場合の図を示している。
この場合、上面平板Rと下面平板Sとの間に前記加工部14は存在せずスペーサーXのみが存在している部分(
図9(b)において「δ」で示す部分)においては、上面平板Rと下面平板Sとの間に隙間がないことが好ましい。そして、上面平板R、加工平板Q、スペーサーXおよび下面平板Sの主面同士を接合すると、上面平板Rと下面平板Sとの間に加工部は存在しスペーサーXは存在しない部分(
図9(b)において「ε」で示す部分)においては上面平板Rと下面平板Sとの間に第1流体が流通する第1流路2を備える第1流路プレート20を得ることができる(
図9(c))。
【0039】
このような本発明の製造方法における第1接合工程において、上面平板R、加工平板Q、下面平板SおよびスペーサーXからなる群から選ばれる少なくとも2つの主面同士を拡散接合によって接合することが好ましい。
本発明の第1の製造方法における第1接合工程では、上面平板Rと加工平板Qとの主面同士をろう付け等によって接合することは可能であるが、拡散接合によって接合することが好ましい。
本発明の第2の製造方法における第1接合工程では、上面平板R、加工平板Q、下面平板SおよびスペーサーXからなる群から選ばれる少なくとも2つの主面同士をろう付け等によって接合することは可能であるが、拡散接合によって接合することが好ましく、上面平板R、加工平板Q、下面平板SおよびスペーサーXの主面同士を拡散接合によって接合することがより好ましい。
得られる熱輸送デバイスの強度がより高くなるからである。
【0040】
<塑性加工工程>
次に、本発明の製造方法における塑性加工工程について、
図10を用いて説明する。
塑性加工工程では、第1流路プレートを用意する。ここでは
図9(c)に示した第1流路プレート20を例示したが、
図8(c)に示した第1流路プレート20であっても同様となる。
【0041】
次に、第1流路が変形するように、第1流路プレートの主面の少なくとも一部を塑性加工して、その主面に凹み32を形成する(
図10(b))。ここで、その凹み32が形成されている部分を塑性変形部34とする。
これによって、塑性変形部34を主面内に含む、第2流路プレート30を得ることができる。
【0042】
<第2接合工程>
次に、本発明の製造方法における第2接合工程について説明する。
第2接合工程では、複数の第2流路プレート30を重ね、第2流路プレート30と別の第2流路プレート30との間に第1流路2と平行ではない第2流体が流通する第2流路4が形成されるように、複数の第2流路プレートの主面同士をスペーサーを介して接合する。
【0043】
図11は第2接合工程の好適態様を示している。なお、本発明の製造方法における第2接合工程は、
図11を用いて説明する好適態様に限定されない。
この態様では、初めに、第2流路プレート30と主面同士を密着させても塑性変形部34と接する部分がないように加工されている平板状のスペーサーYを用意する。なお、本発明の製造方法においてスペーサーは平板状でなくてもよい。第2流路プレート30同士の間隔を保つことできるものであればよく、例えば点状や柱状のもの等であってもよい。
スペーサーYは、例えば上面平板Rと同様の材質であって、上面平板Rよりもわずかに大きいサイズのものを用意し、それを打ち抜き加工して得ることができる。
ここで、第2流路プレート30の塑性変形部34は塑性加工によって形成されているため、第2流路プレート30における一方の主面に凹部(凹み)が形成され、他方の主面には凸部が形成されている。そこで、スペーサーYの厚さは、この第2流路プレート30の凸部の程度によって調整する。すなわち、後述する
図11(b)の状態にしたときに、第2流路プレート30-2における凸部の先端αが、別の第2流路プレート30-1と接しないものの、
図1(b)等で説明したように、これらの間隔が狭くなるように調整する。具体的には、
図1(b)等で説明したように、第2流路プレート30-2と、これに1つのスペーサーY-1を挟んで隣り合う別の第2流路プレート30-1とにおいて、前者において最も後者に近い凸部の頂点を点αと、後者において最も前者に近い凸部の頂点を点βとしたときに、
図1(b)、
図2(b)および
図3(b)に示したように、点αは点βよりも後者に近い側に存在している。これは第2流路プレートの間隔が非常に狭いことを意味しており、これによって、得られる本発明のデバイスの熱通過率が高まる。
【0044】
次に、複数の第2流路プレート30を重ねる。具体的には、
図11(a)、(b)に示すように、1枚目の前記第2流路プレート30-1、1枚目のスペーサーY-1、2枚目の第2流路プレート30-2、および2枚目のスペーサーY-2をこの順に重ねる。
【0045】
その後、各々の主面同士を接合する。
【0046】
第2接合工程では、第2流路プレートおよびスペーサーYの主面同士を拡散接合によって接合することが好ましい。
この場合、得られる熱輸送デバイスの強度がより高くなるからである。
【符号の説明】
【0047】
1 本発明のデバイス
2 第1流路
2p 第1流路の入口または出口
4 第2流路
4p 第2流路の入口または出口
6、B、C 仕切板
10 平板Pの主面
12 凹み
14 加工部
20 第1流路プレート
30 第2流路プレート
32 凹み
34 塑性変形部
101 熱交換器
102 第1の流体通路
104 第2の流体通路