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特許7035198尿素基含有のタレ防止用レオロジー制御剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】尿素基含有のタレ防止用レオロジー制御剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 71/02 20060101AFI20220307BHJP
   C09D 175/02 20060101ALI20220307BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20220307BHJP
【FI】
C08G71/02
C09D175/02
C09D7/20
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020534590
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018086357
(87)【国際公開番号】W WO2019122222
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-08-14
(31)【優先権主張番号】17209527.5
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598067245
【氏名又は名称】ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クナプケ-ボンガルツ クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ナゲルスディイク レネ
(72)【発明者】
【氏名】ビューネ シルビア
(72)【発明者】
【氏名】クライン アグネッタ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス ベルトホルト
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0158022(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G71/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
-X-(C=O)-[NH-R-NH-(C=O)-NH-R-NH-(C=O
)]-NH-R-NH-(C=O)-X-R (I)
の1種以上の化学種を含み、式中、
は、独立して、4個~200個の炭素原子を有する有機基から選択され、
Xは、Oであり
は、独立して、4個~40個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択され、
は、独立して、2個~40個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択され、ここで、前記式(I)の1種以上の化学種に含まれる全てのR基の平均で76mol%~100mol%は、2個または3個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、
nは、2~150の整数である、尿素基含有生成物。
【請求項2】
全てのR基の少なくとも80mol%は、エチレン基である、請求項1に記載の尿素基含有生成物。
【請求項3】
は、
-[O-(C=O)-R
によって表され、
は、互いに独立して、6個~40個の炭素原子を有する芳香族ヒドロカルビル基または1個~40個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビル基であり、
は、互いに独立して、
2個~18個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状のアルキレン基、または基CHR-CHRであり、ここで、一方のRは水素であり、もう一方のRdは、6個~12個の炭素原子を有する芳香族基、および式CH-O-(C=O)-Rの基からなる群から選択され、ここで、m=0または1であり、Rは、1個~15個の炭素原子を有する脂肪族基または6個~20個の炭素原子を有す
る芳香族基であり、t=0~98であり、互いに独立して、t個の残基[O-(C=O)-R]においてs=0または1であるが、但し、R中の炭素原子の数とt個の残基[O-(C=O)-R]中の炭素原子の数との和は、(i)Rが脂肪族であれば4~200であり、(ii)Rが芳香族であれば6~200であることを条件とする、請求項1又は2に記載の尿素基含有生成物。
【請求項4】
は、
【化1】

から選択され、アスタリスク記号*は、Rが式(I)の化学種における隣接するNH基に結合している位置を表す、請求項1~のいずれか一項に記載の尿素基含有生成物。
【請求項5】
1種以上の成分R-XHを1種以上のジイソシアネートOCN-R-NCOと反応させて、以下の式(II)
-X-(CO)-NH-R-NCO (II)
を有する1種以上のモノイソシアナト付加物を形成し、
引き続き、式(II)を有するモノイソシアナト付加物および1種以上のジイソシアネートOCN-R-NCOの混合物を1種以上のジアミンHN-R-NHと反応させる(式中、R、R、RおよびXは、独立して、前記式(I)の化学種と同様に規定される)ことによって、請求項1~のいずれか一項に規定される尿素基含有生成物を製造する方法。
【請求項6】
液体組成物であって、請求項1~のいずれか一項に記載の尿素基含有生成物と、キャリア媒体を含む液体組成物。
【請求項7】
前記キャリア媒体は、アミド、スルホキシドおよび/またはイオン液体を含む、請求項に記載の液体組成物。
【請求項8】
(a)、(b)および(c)の量は、前記液体組成物の総重量を基準として、
(a)5重量%~70重量%の本発明による1種以上の尿素基含有生成物と、
(b)30重量%~95重量%の前記キャリア媒体と、
(c)0重量%~8重量%の1種以上のイオノゲン化合物と、
を含むまたはそれらからなる、請求項6または7に記載の液体組成物。
【請求項9】
コーティング組成物、クリアコート組成物、ラッカー、カラーレジスト、プラスチック配合物、顔料ペースト、エフェクト顔料ペースト、シーラント配合物、ワイヤエナメル、化粧品配合物、セラミック配合物、接着剤配合物、採ガスおよび採油で使用するための液体配合物、電機部品および回路の製造用の組成物、エネルギー貯蔵媒体で使用するための液体配合物、洗浄剤、ポッティング用コンパウンド、建材配合物、潤滑剤、充填用コンパウンド、ワックスエマルジョン、金属加工用製品または金属加工液、スプレー剤の形の液体配合物、いわゆる沈着助剤、インキ、印刷インキおよびインクジェットインキからなる群から選択される、請求項6または7に記載の液体組成物。
【請求項10】
前記液体組成物は、1成分クリアコート組成物または2成分クリアコート組成物であるクリアコート組成物の群からのコーティング組成物であることを特徴とする、請求項に記載の液体組成物。
【請求項11】
前記液体組成物が、2成分クリアコート組成物であって、
請求項1~5のいずれか一項に規定される尿素基含有生成物および反応性基を有するポリマーバインダーを含有する基礎成分(A)と、
前記基礎成分(A)のポリマーバインダーの前記反応性基に対して反応性である反応性基を有する架橋剤を含有する架橋成分(B)と、
を含む、請求項10に記載の液体組成物。
【請求項12】
レオロジー制御添加剤としての、請求項6~8のいずれか一項に記載の液体組成物の使用。
【請求項13】
前記レオロジー制御添加剤は、コーティング組成物、クリアコート組成物、ラッカー、カラーレジスト、プラスチック配合物、顔料ペースト、エフェクト顔料ペースト、シーラント配合物、ワイヤエナメル、化粧品配合物、セラミック配合物、接着剤配合物、採ガスおよび採油で使用するための液体配合物、電機部品および回路の製造用の組成物、エネルギー貯蔵媒体で使用するための液体配合物、洗浄剤、ポッティング用コンパウンド、建材配合物、潤滑剤、充填用コンパウンド、ワックスエマルジョン、金属加工用製品、金属加工液、スプレー剤の形の液体配合物、いわゆる沈着助剤、インキ、印刷インキおよびインクジェットインキのレオロジーを制御するために使用される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項6~8のいずれか一項に記載の液体組成物を、コーティング組成物、クリアコート組成物、ラッカー、カラーレジスト、プラスチック配合物、顔料ペースト、エフェクト顔料ペースト、シーラント配合物、ワイヤエナメル、化粧品配合物、セラミック配合物、接着剤配合物、採ガスおよび採油で使用するための液体配合物、電機部品および回路の製造用の液体配合物、エネルギー貯蔵媒体で使用するための液体配合物、洗浄剤、ポッティング用コンパウンド、建材配合物、潤滑剤、充填用コンパウンド、ワックスエマルジョン、金属加工用製品、金属加工液、スプレー剤の形の液体配合物、いわゆる沈着助剤、インキ、印刷インキおよびインクジェットインキに添加する工程を含む、レオロジー調整方法。
【請求項15】
i.コーティング組成物である、請求項に規定される液体組成物、または
ii.請求項10もしくは11に規定される液体組成物
でコーティングされた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素基含有生成物、それらの調製、およびレオロジー制御剤(以下で、「レオロジー添加剤」または「レオロジー剤」とも呼ばれる)としてのそれらの使用に関する。さらに、本発明は、尿素基含有生成物を含むレオロジー制御剤およびそれらの使用に関する。本発明は更に、尿素基含有生成物を含む液体組成物、および該液体組成物でコーティングされた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
液体コーティング系のレオロジーは、主に有機変性されたベントナイト、シリカ、硬化ひまし油、およびポリアミドワックスを使用して制御される。これらの物質は殆どが乾燥固体であることから、溶剤および剪断力を使用して半完成品に加工し、および/または狙い通りの温度制御によって液体コーティング系へと導入しなければならない。これらの温度が認められない場合に、完成したコーティング系には微結晶が発生し、粗悪なレオロジー性能につながるだけでなく、コーティング中の欠陥につながることもある。
【0003】
これらのレオロジー助剤は頻繁に、明澄透明なコーティングに曇りおよびヘイズの事態をもたらす。さらに、処理の間に粉塵を引き起こす乾燥粉末状製品を用いて作業するのは、技術的に好ましくない場合がある。
【0004】
レオロジー制御のための他の解決策は、特許文献1の欧州特許出願に示されている。ここでは、被膜形成性樹脂の溶液の存在下でイソシアネートをアミンと反応させることで、微結晶性の針状結晶を形成する尿素が形成される。このように変性されたこれらの被膜形成性バインダーは、レオロジー制御バインダーおよびタレ抑制性バインダーとして、いわゆる「タレ制御剤」の形で使用される。
【0005】
レオロジー制御に関するその他の提案は、特許文献2および特許文献3に記載されており、そこでは、バインダーの存在を必須として、ポリイソシアネートまたはポリイソシアヌレートをモノアミンまたはポリアミンと反応させて、ポリ尿素が形成される。
【0006】
特許文献4は、脂肪または油を増粘するために使用される尿素を記載している。これらの増粘剤は、増粘すべき脂肪または油中で、第一級アミンとジイソシアネートとを化学量論的に反応させることによって調製される。
【0007】
特許文献5の特許明細書も同様に、油をその場で増粘することを記載している。この場合に、増粘すべき油中で、第一級単官能性アミンとポリオキシアルキレンジアミンとの混合物をジイソシアネートと反応させている。
【0008】
特許文献6および特許文献7は両者とも、イソシアネートとジアミンまたはトリアミンとの反応によって得られる尿素誘導体を使用した成形コンパウンド(バルク成形コンパウンド、BMC、およびシート成形コンパウンド、SMC)の増粘を記載している。イソシアネート成分として、脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートを使用することが可能であるが、ジイソシアネートとポリエーテルジオールまたはポリエステルジオールとの反応生成物を使用することも可能である。アミン成分として、低分子量ジアミンおよびトリアミンならびにポリアミンが使用される。尿素化合物は、対応する樹脂にアミン成分およびイソシアネート成分を混合することによって調製される。
【0009】
上記の先行技術に記載された殆どの生成物の不利点は、該生成物が常にレオロジーに影響すると考えられる増粘すべき媒体中で調製されるべきであることである。したがって、該生成物は増粘すべき媒体とは無関係ではない。それらの生成物は貯蔵時に安定ではなく、その代わりに少し経ってから塊および/または滓を生ずる。更なる不利点は、これらのチキソトロピー化媒体を、しばしばプレゲルの助力により調製せねばならないことである。この粘性のプレゲルは、長時間放置した後には破砕せずに混和することができなくなるため、一般的にその調製直後に処理せねばならない。したがって、完成した配合物を後になってから修正することは不可能である。先行技術の殆どのレオロジー制御剤は単独で調製することはできず、被膜形成剤の存在下でのみ調製することができる。したがって、それらの実用性は限られている。
【0010】
特許文献8は、チキソトロープ剤として有効である、尿素-ウレタンを含む溶液を調製する方法、およびコーティング材料の増粘のためのこの溶液の使用を記載している。これらの尿素-ウレタンは、モノヒドロキシ化合物を過剰のトリレンジイソシアネートと反応させ、その反応混合物からトリレンジイソシアネートの未反応部を除去し、得られたモノイソシアネート付加物をジアミンと2:1のモル比で溶剤中で更に反応させて、尿素-ウレタンを形成することによって得られる。特許文献9は、モノヒドロキシ化合物とジイソシアネートおよびジアミンとを化学量論的に反応させることによって得られる類似の尿素-ウレタンを記載している。
【0011】
特許文献10の特許明細書は、第一に、過剰のジイソシアネートをポリオールと反応させて、両側にNCO末端を有するウレタンポリマーを過剰のジイソシアネートと一緒に形成した後に、第二に、一方で両側にNCO末端を有するウレタンプレポリマーおよび過剰のジイソシアネートの混合物と、他方で第一級モノアミンおよび第一級ジアミンの混合物とを反応させることによって得ることができる高分子尿素-ウレタンを記載している。使用される反応媒体は、極性非プロトン性溶剤である。こうして得られた尿素-ウレタン溶液は、液体ポリマー系においてレオロジー制御剤として使用される。
【0012】
特許文献11の特許明細書は、噴霧乾燥によって(ポリ)尿素粉末を製造する方法を記載している。得られる(ポリ)尿素粉末は、モノ尿素化合物またはポリ尿素化合物のいずれかからなっていてよく、好ましくは低分子量を有する。これらの(ポリ)尿素化合物は、好ましくは少しの尿素基しか有しない。該(ポリ)尿素粉末は、潤滑剤、増粘剤および/または処理剤として適していると言われる組成物での使用が意図される。これらの目的のために、該(ポリ)尿素粉末は、基油および/または溶剤中への分散が意図される。調製または使用の間に、該(ポリ)尿素粒子は、固体または懸濁液の形で存在する。
【0013】
特許文献12は、レオロジー添加剤として有効であり、15重量%~95重量%の酸素化合物と、5重量%~75重量%の尿素化合物と、0重量%~50重量%のイオノゲン化合物と、0重量%~35重量%の有機溶剤とを含有する組成物を開示している。しかしながら、特に大きな層厚でのタレ抵抗性は依然として改善の必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】欧州特許出願公開第0198519号明細書
【文献】米国特許第4,311,622号明細書
【文献】米国特許第4,677,028号明細書
【文献】国際公開第02/04579号パンフレット
【文献】米国特許第5,554,586号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0182205号明細書
【文献】国際公開第95/09201号パンフレット
【文献】欧州特許第1188779号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0006252号明細書
【文献】独国特許発明第000010241853号明細書
【文献】欧州特許第1630191号明細書
【文献】欧州特許第2931771号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の課題は、新しいレオロジー制御剤を提供することであった。これらの新しいレオロジー制御剤は、上述の明細書に記載される不利点を有しないべきである。より具体的には、その目的は、顕著なタレ防止挙動を有するレオロジー制御剤を見出すことであった。特に、垂れることなく、塗布されたコーティングの大きな層厚が得られるべきである。この効果に付随して、例えば、フローカップ(例えば、DINカップ)法により測定される流動粘度が少ししか増加しないべきである。さらに、レオロジー制御剤は、バインダー等の増粘すべき媒体に縛られるべきでなく、その代わりに、配合物の製造方法の任意の時点で完成した添加剤として添加することが可能であるべきである。
【0016】
上記新しいレオロジー制御剤は、強力なレオロジー活性によって区別されるべきである。さらに、それらのレオロジー制御剤は、コーティング系、特にクリアコート組成物のタレの特徴を調整するのに適しているべきである。そのようなクリアコート組成物は、好ましくは、自動車OEMコーティングならびに自動車補修コーティングおよび自動車再仕上げコーティングを含む自動車コーティングに適しているべきである。
【0017】
アルコールおよびケトン等の極性溶剤を含む系でも同様に、上記レオロジー制御剤は良好な相溶性および良好なレオロジー活性を示すべきである。このクラスの物質によって、種々の極性を有する媒体中で使用するためのレオロジー制御剤を得ることが可能であるべきである。
【0018】
さらに、上記新しいレオロジー剤は容易に入手可能であり、処理が容易であることが望ましく、該レオロジー剤がダストフリーであり、多大なコストまたは複雑さなしに他の系へと混和することができれば有利である。さらに、それらのレオロジー剤は理想的には透明であり、例えばペイント中に滓を形成する傾向を有しないべきである。高い透明性および滓を形成しない傾向等の特性は、基材上の硬化したコーティング層の透明性および光沢に対する影響を最小限にせねばならない自動車OEMおよび補修/再仕上げコーティングの分野で必要とされる高品質コーティング用のクリアコート組成物において特に重要である。したがって、特に望ましい一実施形態では、レオロジー剤は溶液の形で存在すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くべきことに、上記課題は、式(I)
-X-(C=O)-[NH-R-NH-(C=O)-NH-R-NH-(C=O)]-NH-R-NH-(C=O)-X-R (I)
の1種以上の化学種を含み、式中、
は、独立して、4個~200個の炭素原子、好ましくは4個~150個の炭素原子、最も好ましくは4個~100個の炭素原子を有する有機基から選択され、
Xは、OまたはNRであり、ここで、Rは、水素原子、1個~30個の炭素原子を有する脂肪族基、または6個~30個の炭素原子を有する芳香族基であり、
は、独立して、4個~40個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択され、
は、独立して、2個~40個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択され、ここで、上記式(I)の1種以上の化学種に含まれる全てのR基の平均で76mol%~100mol%は、2個または3個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、
nは、2~150、好ましくは2~100、より好ましくは2~60、更により好ましくは2~40または2~20、最も好ましくは2~10または3~10の整数である、尿素基含有生成物を提供することによって解決され得ることが判明した。
【0020】
「尿素基含有生成物」という用語は、上記規定の式(I)の1種以上の化学種を含む任意の生成物、特に任意の反応生成物を意味する。全てのR基の76mol%~100mol%の平均は、式(I)の尿素含有生成物に含まれるR基の総モル数に対して計算される。したがって、ヒドロカルビル基Rの平均で76mol%~100mol%が2個または3個の炭素原子を有するヒドロカルビル基でなければならないという条件は、式(I)の全ての化学種の集合がこの要件を満たすのであれば、尿素基含有生成物が2個または3個の炭素原子を有する残基Rを含まない単一の化学種を含むとしても満たされる。
【0021】
「有機基」という用語は、「脂肪族基」および「芳香族基」から選択される炭素含有基を意味し、ここで、「脂肪族基」という用語は、非芳香族の非環式および環式の飽和および不飽和の炭素含有基を包含する。しかしながら、有機基はまた、脂肪族部および芳香族部を同時に含んでもよい。例えば、1つ以上の芳香族基を置換基として含む脂肪族基は、芳香脂肪族基と呼ばれる。当然ながら、芳香族基が脂肪族置換基を含んでもよい。有機基はまた、1個以上のヘテロ原子を含んでもよい。好ましいヘテロ原子は酸素原子、窒素原子、硫黄原子およびハロゲン化物原子である。最も好ましいヘテロ原子は酸素および窒素である。
【0022】
「ヒドロカルビル基」という用語は、炭素原子および水素原子のみからなる有機基を指す。
【0023】
式(I)の化学種

基Rは、独立して、4個~200個の炭素原子、好ましくは4個~150個の炭素原子、最も好ましくは4個~100個の炭素原子を有する有機基から選択される。R基は、好ましくは、4個~150個の炭素原子を有する脂肪族基または6個~150個の炭素原子を有する芳香族基である。Rが脂肪族部および芳香族部を含むのであれば、Xに結合されるR中の原子が芳香族部の一部ではない場合に、Rは芳香脂肪族基である。
【0024】
本明細書で使用される「脂肪族基」という用語は、芳香族構造を含まない非環式または環式の飽和または不飽和の炭素化合物の基を指す(IUPAC化学用語集(IUPAC Compendium of Chemical Terminology),第2版(「ゴールドブック」)A.D.マクノート(A. D. McNaught)およびA.ウィルキンソン(A. Wilkinson),ブラックウェル科学出版(Blackwell Scientific Publications),オックスフォード(1997)XMLオンライン修正版:http://goldbook.iupac.org(2006~)M.ニック(M. Nic),J.ジラート(J. Jirat),B.コサタ(B. Kosata)により作成;アップデート A.ジェンキンス(A. Jenkins)により編集,ISBN 0-9678550-9-8,https://doi.org/10.1351/goldbookを参照)。したがって、脂肪族基(groups or radicals)は、例えば酸素または窒素等のヘテロ原子を含み得る。一例としては、酸素は脂肪族基中にエーテル基および/またはエステル基の形で存在し得る。例えば、ポリオキシアルキレン基は、ヘテロ原子(この場合は酸素)含有脂肪族基である。
【0025】
好ましくは、Rは、4個~150個、より好ましくは6個~125個、最も好ましくは8個~100個または8個~70個の炭素原子を有する脂肪族基である。そのような脂肪族基Rは、飽和または不飽和で分岐状または線状であってよく、ヘテロ原子、特に好ましくは酸素原子および/または窒素原子をヘテロ原子として含み得る。ヘテロ原子は、単一原子として、例えばエーテル基もしくはチオエーテル基を形成する-O-もしくは-S-として含まれ、または炭素および/もしくは水素含有官能基の形で、例えばエステル基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基もしくはヒドロキシル基として含まれ得る。Rが、尿素基含有生成物を形成する条件下でイソシアネート基に反応性である、例えばアミン基およびヒドロキシル基またはカルボキシル基のような官能基を含むのであれば、これらの官能基を保護基で封鎖せねばならない。保護基は、尿素基含有生成物の形成反応を経た後に除去される。適切な封鎖剤および該封鎖剤を除去する手段は当業者に知られている。アミノ基はまた、塩化形または第四級化形であってもよい。カルボキシル基は、同様に塩化形であってもよい。
【0026】
好ましい実施形態では、Rは、以下の式:
-[O-(C=O)-R
(式中、
は、互いに独立して、6個~40個の炭素原子を有する芳香族ヒドロカルビル基または1個~40個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビル基、より好ましくは1個~40個の炭素原子を有する線状のアルキル基または3個~40個の炭素原子を有する分岐状のアルキル基または4個~40個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状のアルケニル基であり、非常に好ましい実施形態では、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-デシル、イソデシル、n-ウンデシル、イソウンデシル、n-ドデシル、イソドデシル、n-トリデシル、イソトリデシル、n-テトラデシル、イソテトラデシル、n-ペンタデシル、イソペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル、オレイルから選択され、
は、互いに独立して、
2個~18個、好ましくは2個~6個、より好ましくは2個~5個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状のアルキレン基、または
基CHR-CHR
であり、ここで、一方のRは水素であり、もう一方のRは、
6個~12個の炭素原子を有する芳香族基、好ましくはフェニル、および
式CH-O-(C=O)-Rの基
からなる群から選択され、ここで、
m=0または1であり、
は、1個~15個、好ましくは2個~12個、最も好ましくは2個~10個の炭素原子を有する脂肪族基、または
6個~20個、好ましくは6個~12個、最も好ましくは6個~8個の炭素原子を有する芳香族基であり、
t=0~98、好ましくは0~90、最も好ましくは0~80または更に0~60であり、かつ
互いに独立して、t個の残基[O-(C=O)-R]においてs=0または1であるが、
但し、R中の炭素原子の数とt個の残基[O-(C=O)-R]中の炭素原子の数との和は、
(i)Rが脂肪族であれば4~200であり、
(ii)Rが芳香族であれば6~200であることを条件とする)を特徴とし得る。
【0027】
t=0であれば、R=Rであり、そのような場合に、Rが、6個~20個の炭素原子を有する芳香族ヒドロカルビル基または4個~50個、より好ましくは4個~30個、最も好ましくは4個~20個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビル基であることが好ましい。
【0028】
t≧1およびs=0である場合に、Rは、R末端を有するエーテル残基(t=1)またはポリエーテル残基(t≧2)である。そのような場合に、t個の残基[O-R]が、独立して2個~8個の炭素原子、より好ましくは2個~4個、または更に2個および/または3個の炭素原子を含むことが好ましい。少なくとも2つの異なる種類の残基[O-R]が含まれる場合に、それらの残基は、任意のシーケンスで、特にランダムシーケンス、グラジエントシーケンスまたは2つ以上のブロックで含まれ得る。そのようなエーテル基は、オキシランのモノアルコールR-OHへの開環付加または開環付加重合によって形成され得る。好ましいオキシランは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの混合物である。しかしながら、例えばスチレンオキシド、グリシジルエーテルおよびグリシジルエステルのような他のオキシランを使用することもできる。スチレンオキシドが使用される場合に、式CHR-CHRにおける一方のRは水素を表し、もう一方のRはフェニルを表す。グリシジルエーテルが使用される場合に、式CHR-CHRにおける一方のRは水素を表し、もう一方のRはCH-O-(C=O)-R(m=0)を表す。グリシジルエステルが使用される場合に、式CHR-CHRにおける一方のRは水素を表し、もう一方のRはCH-O-(C=O)-R(m=1)を表す。s=0の場合の好ましい実施形態では、Rは、1個~18個、好ましくは1個~12個、更により好ましくは1個~4個の炭素原子を有する線状または分岐状の飽和ヒドロカルビル基であり、Rはエチレン基およびプロピレン基から選択される。
【0029】
s=1である場合に、Rは、CHR-CHRを表すのではなく、Rについて上記の線状または分岐状のアルキレン基を表すことが好ましい。
【0030】
t≧1およびs=1である場合に、Rは、R末端を有するエステル残基(t=1)またはポリエステル残基(t≧2)である。そのような場合に、t個の残基[O-(C=O)-R]が、独立して3個~5個の炭素原子を含むことが好ましい。少なくとも2つの異なる種類の残基[O-(C=O)-R]が含まれる場合に、それらの残基は、任意のシーケンスで、特にランダムシーケンス、グラジエントシーケンスまたは2つ以上のブロックで含まれ得る。そのようなエステル基は、連鎖開始剤としてモノアルコールR-OHを使用するラクトンの開環重合によって形成され得る。好ましいラクトンは、ε-カプロラクトンおよびδ-バレロラクトンならびにそれらの混合物である。
【0031】
t≧2であり、残基[O-(C=O)-R]の少なくとも1つにおいてs=1であり、少なくとも1つの更なる残基[O-(C=O)-R]においてs=0である場合に、Rには、エーテル基およびエステル基が含まれている。両方の種類の基はランダムに分布し得る。しかしながら、2つ以上の残基についてs=1であり、2つ以上の残基についてs=0である場合に、s=1である残基が1つ以上のブロックを形成し、s=0である残基も1つ以上のブロックを形成することが好ましい。各ブロック内で、ランダム構成、グラジエント構成またはブロック構成が実現され得る。
【0032】
X基
基Xは、OおよびNR基から選択され、ここで、Rは水素、1個~30個の炭素原子、好ましくは1個~20個、より好ましくは1個~10個、最も好ましくは1個~7個の炭素原子を有する脂肪族基または6個~30個の炭素原子、好ましくは6個~20個、より好ましくは6個~10個、最も好ましくは6個または7個の炭素原子を有する芳香族基である。
【0033】
が脂肪族基である場合に、Rは、最も好ましくは、前段落で規定された炭素原子数を含むヒドロカルビル基である。Rが芳香族基である場合に、Rは、最も好ましくは、前段落で規定された炭素原子数を含むヒドロカルビル基である。最も好ましくは、Rは水素である。
【0034】
好ましくは、XはOまたはNH、最も好ましくはOを表す。
【0035】

基Rは、独立して、4個~40個の炭素原子、好ましくは5個~20個、より好ましくは6個~15個、最も好ましくは7個~13個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。ヒドロカルビル基Rは芳香族または脂肪族である。脂肪族ヒドロカルビル基の場合に、環状脂肪族ヒドロカルビル基が好ましい。R基は、式(I)の化学種の隣接するNH基に結合しているだけなので、二価の基である。
【0036】
好ましい基Rは、
【化1】

(式中、アスタリスク記号*は、Rが式(I)の化学種における隣接するNH基に結合している位置を表す)から選択される。上記の基のうち最も好ましい基は、トルイレン基(2,4-異性体および2,6-異性体ならびにそれらの混合物)および3-メチレン-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル基であり、そのうちトルイレン基、特に2,4-異性体および2,6-異性体ならびにそれらの混合物が最も好ましい。
【0037】

基Rは、独立して、2個~40個の炭素原子、好ましくは2個~20個の炭素原子、より好ましくは2個~12個、最も好ましくは2個~8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択されるが、但し、式(I)の1つ以上の化学種に含まれる全てのR基の平均で76mol%~100mol%、好ましくは78mol%~100mol%、より好ましくは80mol%~100mol%、更により好ましくは84mol%または85mol%~100mol%、最も好ましくは90mol%~100mol%または95mol%~100mol%は、2個または3個の炭素原子、最も好ましくは2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であることを条件とする。非常に具体的な実施形態では、式(I)の1つ以上の化学種に含まれる全てのR基の100mol%は、2個または3個の炭素原子、最も好ましくは2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。特に好ましい全てのR基は、2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、すなわちエチレン基である。R基は、式(I)の化学種の隣接するNH基に結合しているだけなので、二価の基である。Rが3個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である場合に、Rは-CH-CH-CH-、-CHCH(CH)-または-CH(CH)-CH-のいずれかであってよく、そのうち「メチル置換されたエチレン」基-CHCH(CH)-または-CH(CH)-CH-が好ましい。しかしながら、最も好ましいRは、非置換のエチレン基を表す。
【0038】
2個または3個の炭素原子を有するヒドロカルビル基の基が、2個だけの炭素原子を有するヒドロカルビル基からなるか、または3個だけの炭素原子を有するヒドロカルビル基からなるか、または2個の炭素原子および3個の炭素原子をそれぞれ有するヒドロカルビル基の混合物からなる可能性にかかわらず、上述の全ての条件のパーセンテージ範囲が適用される。最も好ましい上述の条件のパーセンテージ範囲は、2個または3個の炭素原子を有するヒドロカルビル基の基が-CH-CH-基からなる場合に適用される。
【0039】
適切なR基の例は、-(CH-(ここで、p=2~20、好ましくはp=2~16、より好ましくはp=2~12)、-CHCH(CH)-、-CHC(CHCH-、基Rについて示された二価の基3-メチレン-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル、シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-ジシクロヘキシルメタンの二価の基、パラキシリレン基およびメタキシリレン基、ジフェニルメタン、3,3-ジメチル-ジフェニルメタンおよびベンゼンの二価の基である。
【0040】
本発明の尿素基含有生成物の製造
簡潔には、本発明の尿素基含有生成物は、最初に1種以上の成分R-XHを1種以上のジイソシアネートOCN-R-NCOと反応させて、以下の式(II)
-X-(CO)-NH-R-NCO (II)
(式中、R、RおよびXは上記のように規定される)を有する1種以上のモノイソシアナト付加物を形成することによって得ることができる。この反応は通常、副生成物の形成を防ぐためにモル過剰のジイソシアネートOCN-R-NCOを用いて行われる。過剰のジイソシアネートOCN-R-NCOは、後続の第2工程を実施する前に、例えば蒸留によって除去することができる。しかしながら、それに代えて、第1工程で使用されるジイソシアネートOCN-R-NCOの少なくとも幾らかが第2工程で使用されるものと同じであれば、過剰量のジイソシアネートOCN-R-NCOを混合物中に残すことが可能である。第1工程で使用されるジイソシアネートOCN-R-NCOが第2工程で使用されるものと同じであり、第1工程で使用される過剰量が第2工程で混合物を形成するために使用される量に等しい場合に、すなわち、第1工程で得られた粗生成物は、第2工程で形成されるべき混合物と同じであり、第2工程を省くことさえも可能であり、直接的に第3工程を進めることができる。
【0041】
第2工程では、式(II)の1種以上の付加物を1種以上のジイソシアネートOCN-R-NCO(ここで、Rは上記のように規定される)と混合することで、混合物が形成される。
【0042】
第3工程では、この混合物を1種以上のジアミンHN-R-NH(ここで、Rは上記のように規定される)と更に反応させることで、式(I)の1種以上の化学種を含む本発明の尿素基含有生成物が得られる。
【0043】
化学量論
nの値は、式(II)の化学種と、ジイソシアネートOCN-R-NCOと、ジアミンHN-R-NHとの間の化学量論によって調整することができる。式(II)の化学種が、式(I)の化学種の2つの末端部を形成することとなる。ジイソシアネートOCN-R-NCOとジアミンNH-R-NHとのモル比は、およそm:(m+1)であり、ここで、m=n-1であり、nは上記のように規定される。一例として、2molのOCN-R-NCOを2molの式(II)による付加物と混合して、この混合物を3molのHN-R-NHと反応させる場合に、すなわちm=2である場合に、平均でnが3である尿素基含有生成物が得られることとなる。式(II)の化学種の数が多いほど、そしてmの数が少ないほど、式(I)の化学種の数平均分子量および重量平均分子量は低くなる。
【0044】
安定剤
反応はイオノゲン化合物の存在下で行うことができる。イオノゲン化合物としては、好ましくは、元素の周期律表の主族IおよびIIの元素(アルカリ金属およびアルカリ土類金属)のカチオンまたはアンモニウムイオン、好ましくはリチウムカチオン、カルシウムカチオンまたはマグネシウムカチオン、特に好ましくはリチウムカチオンおよびカルシウムカチオンを含み、アニオンとして、好ましくは一価アニオン、特に好ましくはハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、ギ酸イオン、酢酸イオンおよび/または硝酸イオン、最も特に好ましくは塩化物イオン、酢酸イオンおよび/または硝酸イオンを含む塩が使用される。
【0045】
イオノゲン化合物として特に好ましいのは、例えば、塩化リチウムまたは硝酸リチウム等の可溶性無機リチウム塩である。イオン液体がキャリアおよび/または溶媒として使用される場合に、上記の安定剤の使用を省くことが可能である。
【0046】
本発明の文脈において、いわゆるイオン液体(すなわち、80℃以下の融点を有する有機塩)はイオノゲン化合物という用語に属さず、むしろ溶媒および/またはキャリア媒体に属する。
【0047】
イオノゲン化合物、好ましくはリチウム化合物の量は、1種以上のジアミンHN-R-NHのモル量の、好ましくは0.2倍~2.5倍、より好ましくは0.1倍~1.5倍、更により好ましくは0.6倍~1.0倍である。
【0048】
本発明のポリ尿素を調製する方法において、レオロジー制御剤系の貯蔵安定性を高めるために、リチウム化合物または液体塩を使用することが有利である。
【0049】
溶剤
反応は通常、非プロトン性極性有機溶剤中で行われる。適切な溶剤は、アミド、好ましくは環状アミド(すなわちラクタム)およびスルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシドの群から選択される。同様に、80℃以下の融点を有する有機塩であるイオン液体を、上述の非プロトン性有機溶剤の代わりに、または該溶剤と組み合わせて使用することができる。本発明の尿素基含有生成物の製造に使用することができる更に適切な非プロトン性溶剤は、液体組成物の節でレオロジー制御剤のための適切なキャリア媒体として列挙されている。特に適切なのは、N-アルキル-ラクタム、好ましくはN-アルキルブチロラクタム、および更により好ましくはN-ブチル-ブチロラクタムのようなN-C1~6-アルキル-ブチロラクタムの群から選択される溶剤である。溶剤は、本発明の液体組成物のキャリア媒体として用いることができる。
【0050】
反応温度および反応時間
反応温度、反応時間および投入速度等のそれぞれの反応条件の選択は当業者に知られており、実施例でより詳細に例示されている。
【0051】
反応物
成分R-XH
適切な成分R-XHは、RおよびXが上記のように規定される成分である。
【0052】
有機基Rは、例えば、エーテル基、エステル基もしくはアミド基またはヘテロ芳香族部等の極性官能基を含み得る。また、アミン基およびヒドロキシル基が存在してもよく、その際、これらの官能基は封鎖されている。カルボキシル基が存在する場合には、それらも封鎖されていてよい。保護基は、尿素基含有生成物の形成反応を経た後に除去される。適切な封鎖剤および該封鎖剤を除去する手段は当業者に知られている。アミノ基はまた、塩化形または第四級化形であってもよい。カルボキシル基は、同様に塩化形であってもよい。好ましくは、残基Rは、本発明の尿素含有生成物の形成の条件下でイソシアネート基と反応しやすい官能基を含まず、特に好ましいRは、第一級アミノ基、第二級アミノ基、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含まない。
【0053】
-OH
Xが酸素であり、Rが上記のように規定される成分R-XHの具体例は、4個~100個の炭素原子を有する飽和の線状、分岐状もしくは環状の脂肪族モノアルコール、または6個~100個の炭素原子を有する芳香族モノアルコールである。
【0054】
そのようなモノアルコールの例は、n-ブタノール、2-エチルヘキサノール、イソトリデシルアルコール、C10~C24の鎖長を有するゲルベアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、シクロヘキサノールまたはそれらのアルキル置換誘導体、およびベンジルアルコールである。
【0055】
極性を調整するのに特に適しているのは、上記のアルコールのアルコキシル化生成物であり、その場合に、アルコキシル化の開始成分として、例えばメタノールまたはアリルアルコール等の低級アルコールを使用することも可能であり、その際、メチル基およびアリル基は、上記に規定される基Rについての例である。こうして調製されたポリエーテルは、好ましくは、とりわけ、エチレンオキシド単位および/またはプロピレンオキシド単位、またはあまり好ましくないが、ブチレンオキシド単位およびスチレンオキシド単位を鎖中に含み、これらの単位、特にエチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位を任意の順序で、例えばランダム分布で、グラジエントとして、またはブロックで有することができる。アルコキシル化を開始するために、例えばフェノールまたはアルキルフェノールのような置換フェノール等の芳香族アルコールを出発成分として使用することも可能である。
【0056】
本発明の尿素基含有生成物の相溶性を、該生成物を含む配合物に適合させるために、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトンと上記のアルコールまたはアルコキシル化アルコールとの反応によって、エステル基またはポリエステル基をアルコール成分に導入することも可能である。
【0057】
モノアルコールR-OHは、以下に示されるモノアミンR-NHRよりも好ましい。
【0058】
-NHR
XがNRであり、RおよびRが上記のように規定される成分R-XHの具体例は、好ましくは4個~100個の炭素原子を有する線状、分岐状もしくは環状のアミンである脂肪族モノアミンまたは6個~100個の炭素原子を有する芳香族モノアミンである。
【0059】
が更にヒドロカルビル基であると規定されるそのようなモノアミンの例は、ブチルアミン、sec-ブチルアミンおよびtert-ブチルアミン、3-メチル-1-ブタンアミン、ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、ココイルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリデシルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン、ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミン、1-メチルベンジルアミンならびにAkzo Nobel社製のArmeenの商品名で知られるC12~C22アミンの混合物である。
【0060】
がヘテロ原子を含むそのようなモノアミンの例は、2-エトキシエチルアミン、3-メトキシ-1-プロピルアミン、1-メトキシメチルプロピルアミン、1,1-ジメトキシ-2-プロピルアミン、3-エトキシ-1-プロピルアミン、3-ブトキシ-1-プロピルアミン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1-プロピルアミン、3-トリデシルオキシ-プロピルアミン、3-ステアリルオキシプロピルアミン、p-メトキシベンジルアミン、3,4-ジメトキシベンジルアミン、p-メトキシフェニルエチルアミン、3,4-ジメトキシフェニルエチルアミン、2-メチル-4-メトキシアニリン、2,5-ジメトキシアニリン、フルフリルアミン、テトラヒドロフルフリルアミン、2-(4-モルホリニル)エチルアミン、4-(3-アミノプロピル)モルホリン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンである。
【0061】
本発明によれば、例えばHuntsman社製の商品名Jeffamine(登録商標)M600、M1000、M2005、M2070、M2095、XTJ-435およびXTJ-436として知られる、アルキレンオキシド単位、特にエチレンオキシド単位および/またはプロピレンオキシド単位を含むポリオキシアルキレンモノアミンを使用することが可能である。
【0062】
適当な第二級アミン(R≠H)は、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジトリデシルアミン、ジオクタデシルアミンまたはジフェニルアミンである。
【0063】
ジイソシアネートOCN-R-NCO
適切なジイソシアネートOCN-R-NCOは、Rが上記のように規定されるジイソシアネートである。
【0064】
そのようなジイソシアネートの具体例は、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネートおよびそれらの混合物、p-キシリレンジイソシアネートおよびm-キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチル-1,3-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ビスフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,4’-ジイソシアナトジフェニルメタンおよび4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタンの異性体混合物、ならびに二量化脂肪酸炭化水素骨格に基づく二量体ジイソシアネートである。
【0065】
ジアミンHN-R-NH
適切なジアミンHN-R-NHは、Rが上記のように規定されるジアミンである。
【0066】
そのようなジアミンの具体例は、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミンおよび1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、ネオペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミンのような非環式脂肪族ジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミンのような環状脂肪族ジアミン、ならびにパラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミンまたは異性体キシリレンジアミンのような芳香脂肪族ジアミン、ならびに4,4-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンおよび異性体フェニレンジアミンのような芳香族ジアミンである。
【0067】
好ましいジアミンは、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパンおよび1,3-ジアミノプロパンから選択される。より好ましくは、ジアミンはエチレンジアミンおよび1,2-ジアミノプロパンから選択される。最も好ましいジアミンは、エチレンジアミンであり、これは、ヒドロカルビル基Rの平均で76mol%~100mol%が2個または3個の炭素原子を有するヒドロカルビル基でなければならないという条件の充足に寄与する。
【0068】
本発明の尿素基含有生成物を含む液体組成物
本発明による「液体組成物」という用語は、23℃および100kPaで液体、すなわち流動性である組成物、すなわち、少なくとも2種の物質体であって、該少なくとも2種の物質の1つが本発明の尿素基含有生成物である物質体を示す。
【0069】
本明細書で使用される液体組成物という用語は、本発明の少なくとも1種の尿素基含有生成物を含むレオロジー制御剤と、好ましくはキャリア媒体と、本発明の少なくとも1種の尿素基含有生成物およびキャリア媒体とは異なる更なる成分とをそれ自体が含有する半完成品および最終製品も含む。半完成品の一例は、顔料および/または充填剤および分散剤等を含むミルベースであり、一方で、最終製品の一例は、そのようなミルベースを含有するコーティング組成物である。
【0070】
本発明の液体組成物は、被膜形成性樹脂等の成分を含み得る。被膜形成性樹脂の例は、ポリウレタン(1成分系および2成分系)、ポリアスパラギン酸、ポリアクリレート、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂およびエポキシ樹脂、PVCプラスチゾル、PVCオルガノゾル、熱可塑性樹脂、ならびに不飽和ポリエステル樹脂である。そのような液体組成物は、好ましくは、通常の熱処理によって固体状態に変換されるが、例えば、フリーラジカル共重合または重付加等の他の機序によっても変換される。そのような液体組成物は、例えば、溶剤系、水性、または無溶剤である。
【0071】
最も単純な場合は、液体組成物は、本発明の尿素基含有生成物およびキャリア媒体からなる。キャリア媒体は、本発明の尿素基含有生成物の製造が行われた溶剤または溶剤の混合物であり得る。そのような場合に、液体組成物は、好ましくは実質的に明澄ないし混濁しており、好ましくは低粘度ないし中粘度を有し、好ましい活性成分の割合、すなわち液体組成物の総重量を基準に5重量%~70重量%、より好ましくは10重量%~55重量%、最も好ましくは15重量%~50重量%または20重量%~45重量%の本発明の尿素基含有生成物の割合を有する溶液または分散液を形成する。
【0072】
液体組成物は、例えば、本発明の少なくとも1種の尿素基含有生成物を含むレオロジー制御剤として使用することができる。キャリア媒体の例は、極性または非極性であり得る有機溶剤である。尿素基含有生成物は、例えば、キャリア媒体中の溶液または分散液で存在し得る。レオロジー制御剤自体は、溶液、エマルジョンもしくは懸濁液等の分散液、ゲルまたはペーストの形態を取り得る。レオロジー制御剤が溶液の形態であるべき場合に、極性非プロトン性溶剤を使用することが好ましい。
【0073】
好ましくは、本発明によるレオロジー制御剤は、非プロトン性有機溶剤中の溶液として存在する。特に適切なのは、極性非プロトン性有機溶剤、非常に具体的には、線状アミド、ラクタム、スルホキシドおよびイオン液体(すなわち、80℃以下の融点を有する有機塩)からなる群から選択される溶剤である。したがって、そのような溶剤をキャリア媒体として使用すること、および/または本発明のレオロジー制御剤の調製をこれらの極性非プロトン性有機溶剤またはイオン液体中で実施することが好ましい。
【0074】
そのような液体組成物は、好ましくは、
(a)5重量%~70重量%の本発明による1種以上の尿素基含有生成物と、
(b)30重量%~95重量%の1種以上の極性非プロトン性溶剤および/またはイオン液体と、
(c)0重量%~8重量%の1種以上のイオノゲン化合物と、
を含むまたはそれらからなり、
(a)、(b)および(c)の量は液体組成物の総重量を基準とする。
【0075】
より好ましくは、そのような液体組成物は、
(a)10.0重量%~55.0重量%の本発明による1種以上の尿素基含有生成物と、
(b)44.8重量%~89.8重量%の1種以上の極性非プロトン性溶剤および/またはイオン液体と、
(c)0.2重量%~6.0重量%の1種以上のイオノゲン化合物と、
を含むまたはそれらからなり、
(a)、(b)および(c)の量は液体組成物の総重量を基準とする。
【0076】
更により好ましくは、そのような液体組成物は、
(a)15.0重量%~50.0重量%の本発明による1種以上の尿素基含有生成物と、
(b)49.5重量%~84.5重量%の1種以上の極性非プロトン性溶剤および/またはイオン液体と、
(c)0.5重量%~5.0重量%の1種以上のイオノゲン化合物と、
を含むまたはそれらからなり、
(a)、(b)および(c)の量は液体組成物の総重量を基準とする。
【0077】
最も好ましくは、そのような液体組成物は、
(a)20.0重量%~45.0重量%の本発明による1種以上の尿素基含有生成物と、
(b)54.0重量%~79.0重量%の1種以上の極性非プロトン性溶剤および/またはイオン液体と、
(c)1.0重量%~4.0重量%の1種以上のイオノゲン化合物と、
を含むまたはそれらからなり、
(a)、(b)および(c)の量は液体組成物の総重量を基準とする。
【0078】
特に好ましい極性非プロトン性有機溶剤は、置換または非置換の、好ましくは非置換のN-アルキルブチロラクタム、ジアルキルスルホキシド、置換または非置換のアミド、特にカルボキサミドである。N-アルキルブチロラクタムの例は、N-メチルブチロラクタム、N-エチルブチロラクタム、N-ブチルブチロラクタム、N-オクチルブチロラクタムおよびN-ヒドロキシエチルブチロラクタムである。ジアルキルスルホキシドの一例は、ジメチルスルホキシドである。線状アミドの例は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジアルキルアミドアルキルエステル、N,N-ジアルキルアミドアルキルエーテル、ヘキサメチルリン酸トリアミドおよびアシルモルホリンである。溶剤として適切な好ましいイオン液体は、置換されたイミダゾリウム塩、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチル硫酸塩、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムエチル硫酸塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアン酸塩および1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアン酸塩である。溶剤およびイオン液体は、組み合わせて使用することもできる。
【0079】
溶剤の中で、ジメチルスルホキシド、特に、窒素に結合したアルキル基が線状または分岐状、好ましくは線状であり、アルキル基が1個~20個または、好ましくは1個~16個、より好ましくは1個~12個、最も好ましくは3個~10個の炭素原子を有するN-アルキルブチロラクタム、更にまた、N、N-ジメチルアミドアルキルエステル、N、N-ジメチルアミドアルキルエーテル、ホルミルモルホリンおよびアセチルモルホリンが好ましい。
【0080】
用途に応じて、対応する水との混和性を有するそれらの溶剤、例えばN-メチルブチロラクタム、N-エチルブチロラクタム、N-プロピルブチロラクタム、N-ブチルブチロラクタムおよびジメチルスルホキシドが特に好ましい。
【0081】
液体組成物、特に液体レオロジー制御剤中で使用される1種以上の溶剤の可溶化特性を高めるために、イオノゲン化合物を使用することができる。イオノゲン化合物としては、好ましくは、元素の周期律表の主族IおよびIIの元素(アルカリ金属およびアルカリ土類金属)のカチオンまたはアンモニウムイオン、好ましくはリチウムカチオン、カルシウムカチオンまたはマグネシウムカチオン、特に好ましくはリチウムカチオンおよびカルシウムカチオンを含み、アニオンとして、好ましくは一価アニオン、特に好ましくはハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、ギ酸イオン、酢酸イオンおよび/または硝酸イオン、最も特に好ましくは塩化物イオン、酢酸イオンおよび/または硝酸イオンを含む塩が使用される。
【0082】
本発明の少なくとも1種の尿素基含有生成物と、好ましくはキャリア媒体とを含むレオロジー制御剤は、コーティング組成物およびポリマー系へと容易に混和することができる。液体組成物を用いた作業は、例えば、該液体組成物をダストフリー形で処理することができ、容易にポンプ圧送および投入が可能であり、実質的に透明であり、特に良好な他の系との相溶性を示し、ペイントおよびコーティング中に滓を生じないという更なる利点を有する。
【0083】
本発明はまた、半完成品および最終製品の形である液体組成物のレオロジー制御のための、本発明の尿素基含有生成物またはそれらの生成物を含むレオロジー制御剤の使用に関する。そのような液体組成物は、好ましくは、コーティング組成物、最も好ましくはクリアコート組成物、プラスチック配合物、顔料ペースト(例えば、エフェクト顔料ペースト)、シーラント配合物、化粧品配合物、セラミック配合物、接着剤配合物、または採ガスもしくは採油で使用するための液体配合物、電機部品および回路の製造用の配合物、エネルギー貯蔵媒体、洗浄剤、ポッティング用コンパウンド、建材配合物、潤滑剤、充填用コンパウンド、ワックスエマルジョン、金属加工用製品、金属加工液、スプレー剤の形の組成物(例えば、植物保護剤における、または一般にドリフト低減に使用される、いわゆる沈着助剤として)、印刷インキで、またはインキ、例えばインクジェットインキとして使用するための液体配合物から選択される。本発明は、好ましくは、本発明による液体組成物の総重量を基準に0.05重量%~10.00重量%、好ましくは0.10重量%~8.00重量%、更により好ましくは0.20重量%~5.00重量%の本発明の尿素基含有生成物を含む、本発明のレオロジー制御剤の形の液体組成物に関する。
【0084】
コーティング組成物、特にクリアコート組成物のレオロジー制御のためのレオロジー制御剤としての、本発明の尿素基含有生成物の使用が特に好ましい。
【0085】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明による尿素基含有生成物を含有する液体組成物は、クリアコート組成物、好ましくは1成分クリアコート組成物または2成分クリアコート組成物、最も好ましくは2成分クリアコート組成物である。2成分クリアコート組成物は、架橋剤を含む架橋成分をポリマーバインダーを含む基礎成分と混合した際の化学反応により硬化するコーティング組成物である。架橋剤は、架橋成分を基礎成分と混合した際にポリマーバインダーの反応性基と反応する反応性基を有する。好ましくは、架橋剤は、ポリイソシアネートの群から選択され、一方で、ポリマーバインダーは、好ましくは、ポリオール、最も好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリ(メタ)アクリレートポリオールの群から選択される。
【0086】
本発明の2成分クリアコート組成物は、自動車OEMおよび補修コーティング用途において、特に再仕上げおよび補修コーティング用のコーティング組成物として適している。
【0087】
本発明の更に別の主題は、液体組成物でコーティングされた物品であって、該液体組成物がコーティング組成物、更により好ましくは、上記の1成分クリアコート組成物または2成分クリアコート組成物等のクリアコート組成物である、物品である。
【0088】
本発明の尿素基含有生成物および本発明のレオロジー制御添加剤が使用され得る更なる液体組成物は、好ましくは、溶剤系または無溶剤のペイント、印刷用インキ、ならびに例えばプラスチックのワニス処理用ラッカー、ワイヤエナメル、食品および種子をコーティングするためのコーティング組成物、ならびに例えば液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイにおけるカラーフィルターのために使用される、いわゆるカラーレジストのようなインキおよびラッカーである。ラッカーの利用分野には、一般に非常に高い割合の固形分と少ない割合の液体成分とを含むペースト状材料、例えばいわゆる顔料ペースト、または更にエフェクト顔料、例えば金属エフェクト顔料、例えば、アルミニウム顔料、銀顔料、真鍮顔料、亜鉛顔料、銅顔料、青銅顔料、例えばゴールドブロンズ、ファイヤーダイドブロンズ(fire-dyed bronze)または酸化鉄アルミニウム顔料を基礎とするペーストが含まれる。エフェクト顔料には、例えば、干渉顔料または真珠光沢顔料、例えば、金属酸化物マイカ顔料、フィッシュシルバー(fish silver)、酸化ビスマス塩化物または塩基性炭酸鉛も含まれる。
【0089】
プラスチック配合物は、好ましくは、化学的架橋過程(「硬化」)によって熱硬化性樹脂へと変換されるプラスチック材料を製造するための(液体)出発材料であり得る。好ましいプラスチック調製物は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂(例えば、メラミン-ホルムアルデヒドまたは尿素-ホルムアルデヒド)である。これらは、非常に様々な条件下で、例えば、室温(低温硬化系)または高温(高温硬化系)で、任意に圧力を加えて(「密閉型」用途、シート成形コンパウンドまたはバルク成形コンパウンド)硬化させることができる。プラスチック配合物には、PVCプラスチゾルも含まれる。
【0090】
化粧品調製物は、いわゆるパーソナルケア分野またはヘルスケア分野で使用される様々な液体組成物、例えば、ローション、クリーム、例えば練り歯磨き等のペースト、例えばシェービングフォーム等のフォーム、例えばシェービングジェル、シャワージェル等のジェルまたはジェル配合物中の活性成分、ヘアシャンプー、液体石鹸、マニキュア、リップスティックおよび染髪剤であり得る。
【0091】
いわゆるワックスエマルジョンは、好ましくは、水または有機媒体中の室温で粒状形の固体ワックスの分散液である。
【0092】
建材配合物は、建築分野で使用され、硬化後に固化する液体またはペースト状の材料であり得る。例えば、コンクリート、セメント、モルタル、タイル用接着剤およびプラスター等の水硬性バインダーである。
【0093】
金属加工液は、切削液、穿孔液(例えば、金属加工で使用される)、離型剤(しばしば、水性エマルジョンの形で、例えばアルミニウムダイカストおよび鋳造用途)、鋳物洗浄(鋳物コーティング)および金属の表面処理(例えば「表面仕上げ」、表面処理およびメッキ)用の液体であり得る。
【0094】
潤滑剤は、摩擦および摩耗を軽減するだけでなく、動力、冷却、振動減衰、密閉作用および腐食防止をもたらすために用いられ、ここでは、液体潤滑剤が好ましい。
【0095】
採ガスおよび採油で使用するための液体配合物は、好ましくは、鉱床の開発において、またはその後のその採掘(例えば、掘削、仕上げ、刺激および生産)においても使用される油性流体である。ここでは、掘削流体とも呼ばれる掘削泥が好ましい。対応する配合物の利用分野は、例えば、いわゆる「水圧破砕法」である。更なる利用分野は、水性掘削泥である。
【0096】
洗浄剤は、広範囲の物体を洗浄するために使用することができる。洗浄剤は、不純物、残留物および付着物の除去に影響し、またはそれらを補助する。洗浄剤には、洗剤(例えば、テキスタイル、その前駆物質、皮革および食器の洗浄用)およびパーソナルケア製品も含まれる。
【0097】
接着剤は、処理条件下で液体であり、表面接着および内部強度によって部材を接合することができるあらゆる接着剤材料であり得る。
【0098】
レオロジー制御剤は、好ましくはそれらが使用される組成物の貯蔵安定性を高めるために、沈降防止剤として更に有用である。
【0099】
本発明の上記液体組成物のいずれも、通常の添加剤を更に含み得る。添加剤の例は、粘着防止剤、安定剤、酸化防止剤、顔料、湿潤剤、分散剤、乳化剤、UV吸収剤、フリーラジカルスカベンジャー、スリップ添加剤、消泡剤、接着促進剤、レベリング剤、ワックス、ナノ粒子、被膜形成助剤、難燃剤および本発明のレオロジー制御添加剤とは異なるレオロジー添加剤である。好ましい添加剤は、湿潤剤、分散剤および/または乳化剤、ならびに本発明のレオロジー制御添加剤とは異なるレオロジー添加剤である。本発明による尿素基含有生成物は優れた増粘特性を提供するが、所望であれば、該尿素基含有生成物を、他のレオロジー制御剤と組み合わせて使用することが可能である。他のレオロジー制御剤の例には、粘土系増粘剤(有機粘土を含む)、他の尿素化合物、(ポリ)アミド、多糖類(セルロース誘導体、グアー、キサンタン等)、ポリアクリレートまたは会合性増粘剤が含まれる。特定の例では、本発明の尿素基含有生成物は、そのレオロジー挙動に関して変更が必要である液体組成物の低剪断性能、中剪断性能および/または高剪断性能に影響を与える他の増粘剤と組み合わせて使用することができる。
【0100】
本発明の尿素基含有生成物は、好ましくは、液体組成物において、該液体組成物が半完成品または最終製品である場合に、該液体組成物の総重量を基準に、好ましくは0.05重量%~10.00重量%、より好ましくは0.10重量%~8.00重量%、非常に好ましくは0.20重量%~5.00重量%、更により好ましくは0.50重量%~2.50重量%の尿素基含有生成物が存在するように使用される。
【0101】
本発明を、実施例を参照して以下で更に説明する。
【実施例
【0102】
合成例
【表1】
【0103】
中間体A1~A4の製造:
欧州特許第1188779号明細書に記載される手順に従ってジイソシアネートをモノアルコールと反応させて、1つのウレタン基および1つのNCO基を含むモノ付加物(中間体)を形成した。
【0104】
【表2】
【0105】
工程1:
2molのジイソシアネートおよび200ppmの塩化ベンゾイルを、撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ中に量り入れ、40℃に加熱した。引き続き、1molのモノアルコール(上記の表による)を30分かけて反応混合物に滴加した。反応混合物を60℃で更に5時間撹拌した。過剰のジイソシアネートを含有する明澄な淡黄色の液体粗製中間体が得られる。
【0106】
工程2:
工程1で得られた粗製中間体に含まれる過剰のジイソシアネートを蒸留により除去することで、中間体A1~A3を得た。
【0107】
比較例C1~C10(本発明によるものでない)
以下の反応の完結性を、NCO含有量およびアミン価を測定することにより湿式化学的方法で評価した。
【0108】
比較レオロジー添加剤C1:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、1.600g(0.037mol)の塩化リチウムを105gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、1.100g(0.018mol)のエチレンジアミンおよび2.500g(0.018mol)のm-キシリレンジアミン(m-XDA)を添加し、軽く均質化した。35.600g(0.024mol)の付加物A2および4.300g(0.024mol)のTDI T80の均一な混合物を反応混合物に25分かけて滴加した。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。僅かに混濁した黄色の液体生成物が得られた。
【0109】
比較レオロジー添加剤C2:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、1.400g(0.033mol)の塩化リチウムを105gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、2.900g(0.033mol)の1,4-ジアミノブタンを添加し、軽く均質化した。37.000g(0.022mol)の付加物A2および3.800g(0.022mol)のTDI T80の均一な混合物を反応混合物に20分かけて滴加した。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。僅かに混濁した黄色の液体生成物が得られた。
【0110】
比較レオロジー添加剤C3:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、1.400g(0.033mol)の塩化リチウムを105gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、3.800g(0.033mol)の1,6-ジアミノヘキサンを添加し、軽く均質化した。37.500g(0.022mol)の付加物A2および3.800g(0.022mol)のTDI T80の均一な混合物を反応混合物に20分かけて滴加した。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。明澄な淡褐色の液体生成物が得られた。
【0111】
比較レオロジー添加剤C4:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、1.300g(0.031mol)の塩化リチウムを104.3gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、4.500g(0.031mol)の1,8-ジアミノオクタンを添加し、軽く均質化した。35.300g(0.021mol)の付加物A2および3.600g(0.021mol)のTDI T80の均一な混合物を反応混合物に20分かけて滴加した。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。明澄な淡褐色の液体生成物が得られた。
【0112】
比較レオロジー添加剤C5:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、1.500g(0.036mol)の塩化リチウムを105gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、4.900g(0.036mol)のm-キシリレンジアミンを添加し、軽く均質化した。34.400g(0.024mol)の付加物A2および4.200g(0.024mol)のTDI T80の均一な混合物を反応混合物に30分かけて滴加した。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。明澄な淡褐色の液体生成物が得られた。
【0113】
比較レオロジー添加剤C6:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、1.400g(0.033mol)の塩化リチウムを105gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、4.800g(0.033mol)の1,3-ビス-アミノメチルシクロヘキサンを添加し、軽く均質化した。34.900g(0.022mol)の付加物A2および3.900g(0.022mol)のTDI T80の均一な混合物を反応混合物に35分かけて滴加した。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。混濁した黄色の液体生成物が得られた。
【0114】
比較レオロジー添加剤C7:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、1.400g(0.033mol)の塩化リチウムを105gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、6.300g(0.033mol)のオクタヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデンジメチルアミンを添加し、軽く均質化した。33.600g(0.022mol)の付加物A2および3.700g(0.022mol)のTDI T80の均一な混合物を反応混合物に20分かけて滴加した。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。明澄な黄色の液体生成物が得られた。
【0115】
比較レオロジー添加剤C8:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、2.200g(0.053mol)の塩化リチウムを140gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、2.400g(0.040mol)のエチレンジアミンおよび1.800g(0.013mol)のm-キシリレンジアミンを添加し、軽く均質化した。混合物は混濁した。47.500g(0.035mol)の付加物A2および6.100g(0.035mol)のTDI T65の均一な混合物を反応混合物に20分かけて滴加した。添加の間に、反応混合物は完全に透き通った。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。僅かに混濁した黄色の液体生成物が得られた。
【0116】
比較レオロジー添加剤C9:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、2.300g(0.053mol)の塩化リチウムを140gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、2.400g(0.040mol)のエチレンジアミンおよび1.200g(0.013mol)の1,4-ジアミノブタンを添加し、軽く均質化した。混合物は混濁した。48.000g(0.036mol)の付加物A2および6.200g(0.036mol)のTDI T65の均一な混合物を反応混合物に15分かけて滴加した。添加の間に、反応混合物は完全に透き通った。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。僅かに混濁した黄色の液体生成物が得られた。
【0117】
比較レオロジー添加剤C10:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、0.540g(0.0128mol)の塩化リチウムを105gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、0.770g(0.0128mol)のエチレンジアミンを添加し、軽く均質化した。混合物は混濁した。42.930g(0.0256mol)の付加物A2を反応混合物に25分かけて滴加した。添加の間に、反応混合物は完全に透き通った。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。明澄な淡黄色の液体生成物が得られた。
【0118】
実施例(本発明による)
以下の反応の完結性を、NCO含有量およびアミン価を測定することにより湿式化学的方法で評価した。
【0119】
本発明によるレオロジー添加剤E1:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、1.400g(0.0332mol)の塩化リチウムを105gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、2.000g(0.0332mol)のエチレンジアミンを添加し、軽く均質化した。混合物は混濁した。37.800g(0.0221mol)の付加物A2および3.900g(0.0221mol)のTDI T80の均一な混合物を反応混合物に25分かけて滴加した。添加の間に、反応混合物は完全に透き通った。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。明澄な淡褐色の液体生成物が得られた。
【0120】
本発明によるレオロジー添加剤E2:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、2.100g(0.049mol)の塩化リチウムを140gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、2.900g(0.049mol)のエチレンジアミンを添加し、軽く均質化した。混合物は混濁した。付加物A4の製造の工程1で得られた55.000gの生成物(0.098molの過剰なTDIを含有する;「粗製中間体」)を反応混合物に30分かけて滴加した。添加の間に、反応混合物は完全に透き通った。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。僅かに混濁した黄色の液体生成物が得られた。
【0121】
本発明によるレオロジー添加剤E3:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、1.900g(0.0440mol)の塩化リチウムを105gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、2.600g(0.0440mol)のエチレンジアミンを添加し、軽く均質化した。混合物は混濁した。21.300g(0.0147mol)の付加物A2、14.100g(0.0147mol)の付加物A3および5.100g(0.0293mol)のTDI T80の均一な混合物を反応混合物に18分かけて滴加した。添加の間に、反応混合物は完全に透き通った。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。明澄な橙色の液体生成物が得られた。
【0122】
本発明によるレオロジー添加剤E4:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、2.200g(0.0521mol)の塩化リチウムを105gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、3.100g(0.0521mol)のエチレンジアミンを添加し、軽く均質化した。混合物は混濁した。25.200g(0.0174mol)の付加物A2、8.400g(0.0174mol)の付加物A1および6.000g(0.0347mol)のTDI T80の均一な混合物を反応混合物に20分かけて滴加した。添加の間に、反応混合物は完全に透き通った。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。明澄な橙色の液体生成物が得られた。
【0123】
本発明によるレオロジー添加剤E5:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、2.000g(0.047mol)の塩化リチウムを140gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、2.800g(0.047mol)のエチレンジアミンを添加し、軽く均質化した。混合物は混濁した。49.800g(0.031mol)の付加物A2および5.400g(0.031mol)のTDI T65の均一な混合物を反応混合物に10分かけて滴加した。添加の間に、反応混合物は完全に透き通った。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。僅かに混濁した黄色の液体生成物が得られた。
【0124】
本発明によるレオロジー添加剤E6:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、2.200g(0.053mol)の塩化リチウムを141.7gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、2.860g(0.048mol)のエチレンジアミンおよび0.770g(0.0057mol)のm-キシリレンジアミンを添加し、軽く均質化した。混合物は混濁した。48.800g(0.035mol)の付加物A2および6.100g(0.035mol)のTDI T65の均一な混合物を反応混合物に20分かけて滴加した。添加の間に、反応混合物は完全に透き通った。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。明澄な黄色の液体生成物が得られた。
【0125】
本発明によるレオロジー添加剤E7:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、2.200g(0.053mol)の塩化リチウムを142.1gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、2.700g(0.045mol)のエチレンジアミンおよび1.09g(0.008mol)のm-キシリレンジアミンを添加し、軽く均質化した。混合物は混濁した。48.800g(0.035mol)の付加物A2および6.100g(0.035mol)のTDI T65の均一な混合物を反応混合物に20分かけて滴加した。添加の間に、反応混合物は完全に透き通った。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。明澄な黄色の液体生成物が得られた。
【0126】
本発明によるレオロジー添加剤E8:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、2.200g(0.053mol)の塩化リチウムを141.05gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、3.020g(0.050mol)のエチレンジアミンおよび0.360g(0.0026mol)のm-キシリレンジアミンを添加し、軽く均質化した。混合物は混濁した。48.800g(0.035mol)の付加物A2および6.100g(0.035mol)のTDI T65の均一な混合物を反応混合物に20分かけて滴加した。添加の間に、反応混合物は完全に透き通った。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。明澄な黄色の液体生成物が得られた。
【0127】
本発明によるレオロジー添加剤E9:
撹拌機、還流冷却器および窒素注入口を備えたガラスフラスコ内で、2.200g(0.053mol)の塩化リチウムを141.1gのN-ブチルブチロラクタム中で撹拌しながら30分かけて溶解させることで、明澄な溶液が得られた。引き続き、2.860g(0.048mol)のエチレンジアミンおよび0.490g(0.0056mol)の1,4-ジアミノブタンを添加し、軽く均質化した。混合物は混濁した。48.800g(0.035mol)の付加物A2および6.100g(0.035mol)のTDI T65の均一な混合物を反応混合物に15分かけて滴加した。添加の間に、反応混合物は完全に透き通った。反応混合物を80℃で更に3時間撹拌した。僅かに混濁した黄色の液体生成物が得られた。
【0128】
【表3A】
【0129】
【表3B】
【0130】
利用例および試験
【表4】
【0131】
試験系1:自動車補修用の2成分PUクリアコート
クリアコート組成物を、表5に示される配合に従って調製した。200gの成分Aを870mlのポリエチレン製ビーカーに量り入れ、式(I)による化学種を含む8gのレオロジー制御添加剤を、Dispermat CV(Getzmann社)を使用して4cmの歯付ディスクで1000rpmで2分間混和した。引き続き、試料を室温で48時間貯蔵した。塗布のために、クリアコート組成物が光学的に均質になるまで、スパチュラで掻き混ぜることにより、100gの成分Bの添加を行った。次に、DIN4mm流出カップ(BYK-Gardner GmbH社)を使用して、クリアコート組成物の流出時間を測定した。塗布のために21秒(±1秒)のDIN4流出時間を有する程度まで、クリアコート組成物を溶剤混合物(酢酸ブチル/Dowanol PMA;40:60(重量/重量))で希釈した。クリアコート組成物の塗布は、鉛直に吊された下塗りされた穴あき鋼板(保護コーティングを備えた16個の10mmの穴を含むN/16300500L冷間圧延極薄板(灰色/白色、塗布面灰色300×500×0.60~0.70mm))上に空気式スプレー塗布(LacTec塗装工場、スプレーガンDe VILBISS 797「エアキャップ」、1.3mmノズル、エアー流速:0.6m/s)によって行った。クリアコート組成物を3回のスプレー経路で塗布し、クリアコート組成物のタレ限界を測定した(クリアラッカーの乾燥塗膜厚は20μmから70μmの間であった)。スプレー塗布後に、コーティングされた薄板を室温で10分間鉛直状態で通気した後に、VTL60/90リフロー炉(Voetsch Industrietechnik GmbH社製)内で60℃で60分間鉛直状態で乾燥させた。24時間後に、穴あき板上の穴の下にクリアコートの蓄積がなかった(明確な滴または流れの形成がなかった)箇所を視覚的に調べることにより、タレ限界を測定した。測定される穴の上下の乾燥層厚の測定は、3重の測定後に平均を取ることによって乾燥被膜測定装置Byko-Test 1500(BYK-Gardner GmbH社)によって行った。試験結果を表6に示す。
【0132】
【表5】
【0133】
【表6】
【0134】
表6では、驚くべきことに、本発明によるものでないクリアコート組成物0(参照、添加剤なし)ならびに本発明によるものでないクリアコート組成物1~7(本発明によるものでないレオロジー添加剤C1~C7が使用される)が、本発明によるクリアコート組成物8~12(本発明によるレオロジー添加剤E1~E5が使用される)のタレ限界よりはるかに低いタレ限界を有することが明らかに示されている。したがって、本発明によるクリアコート組成物のタレ抵抗性は、本発明によるものでないクリアコート組成物と比較してはるかに高い。
【0135】
試験系2:自動車補修用の2成分PUクリアコート
使用されるクリアコート組成物は、表5によるクリアコート組成物である。クリアコート組成物は、試験系1について記載されたのと同じ手順に従って調製した。使用されるレオロジー添加剤は表7に示されている。試験は試験系1と同様に行った。試験系1との唯一の違いは、空気式スプレー塗布用のスプレー装置をEisenmann LaTec GmbH社のスプレーユニット(スプレーガンAGMD Pro(De Vilbiss社)、1.2mmノズル De Vilbiss GTI PRO High Efficiency TE 40 C;エアー流速:0.6m/s)に変更したことであった。タレ限界試験の結果を表7に示す。
【0136】
【表7】
【0137】
表7は、比較レオロジー添加剤C8(その製造に75mol%のエチレンジアミンおよび25mol%のm-キシリレンジアミンの混合物が使用される)および比較レオロジー添加剤C9(その製造に75mol%のエチレンジアミンおよび25mol%の1,4-ジアミノブタンの混合物が使用される)が、それぞれの本発明によるものでないクリアコート組成物15および16において低いタレ限界を引き起こすことを示している。エチレンジアミンとm-キシリレンジアミンとのモル比が、例えば85:15(E7)、90:10(E6)および95:5(E8)に高められると、クリアコート組成物について、はるかに高いタレ抵抗性が得られる。エチレンジアミンと1,4-ジアミノブタンとのモル比が90:10(E9)に高められると、同じことが当てはまる。クリアコート21は、比較レオロジー添加剤C10が低いタレ限界を引き起こすことを裏付けている。比較レオロジー添加剤C10は、nが1である式(I)の尿素基含有化合物を表す。