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  • 特許-気体圧縮機、及び、その制御方法 図1
  • 特許-気体圧縮機、及び、その制御方法 図2
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  • 特許-気体圧縮機、及び、その制御方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】気体圧縮機、及び、その制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
F04B49/06 341L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020548070
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2019029510
(87)【国際公開番号】W WO2020066267
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2018181426
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】青柳 則夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 明弘
(72)【発明者】
【氏名】兼本 喜之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 広明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 史紀
(72)【発明者】
【氏名】岡 大地
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203463(JP,A)
【文献】特開2014-152698(JP,A)
【文献】特開平11-287188(JP,A)
【文献】特開2012-149548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機本体と該圧縮機本体を駆動するモータと該モータを回転数制御するインバータで構成された圧縮機ユニットを複数有し、各インバータを制御する制御装置を備え、各圧縮機本体の吐出配管は一つの主吐出配管に合流しており、各インバータでそれぞれの圧縮機本体のモータの駆動周波数を制御することで前記吐出配管の圧力を制御し前記主吐出配管の吐出圧力を制御する気体圧縮機であって、
前記制御装置は、前記圧縮機本体のモータの駆動周波数が上限周波数に達する前の駆動周波数を上げている時点での前記主吐出配管の吐出圧力の時間経過に伴う変化量と、その圧力値から、該圧縮機本体のモータの駆動周波数増加によるリカバリが可能かを判断し、前記吐出圧力の時間経過に伴う変化量と前記圧力値から、前記圧縮機本体の吐出余力残量と不足気体量を演算し、前記吐出余力残量が前記不足気体量より少ない場合、前記圧縮機本体の運転台数を増加させることを特徴とする気体圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の気体圧縮機であって、
前記制御装置は、前記圧縮機本体の運転台数を増加させた直後は、前記モータの回転数が定常値になるのを確認した後、次の前記圧縮機本体の運転台数増加の制御を行うことを特徴とする気体圧縮機。
【請求項3】
圧縮機本体と該圧縮機本体を駆動するモータと該モータを回転数制御するインバータで構成された圧縮機ユニットを複数有し、各圧縮機本体の吐出配管は一つの主吐出配管に合流しており、それぞれの圧縮機本体の駆動周波数を制御することで前記主吐出配管の吐出圧力を制御する気体圧縮機の制御方法であって、
前記圧縮機本体のモータの駆動周波数が上限周波数に達する前の駆動周波数を上げている時点での前記主吐出配管の吐出圧力の時間経過に伴う変化量と、その圧力値から、該圧縮機本体のモータの駆動周波数増加によるリカバリが可能かを判断し、前記吐出圧力の時間経過に伴う変化量と前記圧力値から、前記圧縮機本体の吐出余力残量と不足気体量を演算し、前記吐出余力残量が前記不足気体量より少ない場合、前記圧縮機本体の運転台数を増加させることを特徴とする気体圧縮機の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の気体圧縮機の制御方法であって、
前記圧縮機本体の運転台数を増加させた直後は、前記モータの回転数が定常値になるのを確認した後、次の前記圧縮機本体の運転台数増加の制御を行うことを特徴とする気体圧縮機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体圧縮機に係り、特に複数台の圧縮機本体を備えた気体圧縮機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数台の圧縮機本体を備えた圧縮機の制御方法の背景技術として特許文献1がある。特許文献1には、インバータにより回転数制御される並列配置された複数台の圧縮機本体と、これらの圧縮機本体の各吐出流路を合流させた一本の主吐出流路とを備え、この主吐出流路における吐出圧力を一定に保つように制御される圧縮機の運転方法において、吐出圧力の調整のために、圧縮機本体の内の運転状態にある圧縮機本体の全てに対して常時平等に回転数制御を行うとともに、主吐出流路への圧縮ガス供給が過剰で、運転中の圧縮機本体の台数を一つ減少させても足りる場合には、この台数を減少させる一方、運転中の圧縮機本体を全負荷運転させても上記圧縮ガス供給が不足している場合には、台数を一つ増大させるようにした、点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-122078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、インバータによる回転数制御により圧縮機の吐出圧力を制御しており、使用空気量の増加とともに、吐出圧力が低下し目標値圧力よりも低い場合には、インバータにモータの回転数を上げさせる指令回転数信号が出力される。しかし、圧縮機本体を全負荷運転させても圧縮空気量の供給が不足すると吐出圧力が低下する。そのため、運転中の圧縮機本体の台数がNの場合において、検出された吐出圧力が予め定めた下限設定圧力よりも低い場合は、無条件で圧縮機本体の運転台数を追加するように台数制御する。しかしながら、圧力の増減の遅延時間を考慮していないため、使用空気量の急激な増加の場合、圧縮機の吐出圧力が必要以上に減少してしまう圧力のアンダーシュートや制御遅延が発生するという課題について考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、これらの課題に鑑み、圧縮機本体の台数制御において、吐出圧力の変動を低減できる気体圧縮機、及び、その制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、圧縮機本体と圧縮機本体を駆動するモータとモータを回転数制御するインバータで構成された圧縮機ユニットを複数有し、各インバータを制御する制御装置を備え、各圧縮機本体の吐出配管は一つの主吐出配管に合流しており、各インバータでそれぞれの圧縮機本体の駆動周波数を制御することで吐出配管の圧力を制御し主吐出配管の吐出圧力を制御する気体圧縮機であって、制御装置は、圧縮機本体のモータの駆動周波数が上限周波数に達する前の駆動周波数を上げている時点での主吐出配管の吐出圧力の時間経過に伴う変化量と、その圧力値から、圧縮機本体のモータの駆動周波数増加によるリカバリが可能かを判断し、圧縮機本体の運転台数増加を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧縮機本体の台数制御において、吐出圧力の変動を低減できる気体圧縮機、及び、その制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1における気体圧縮機の背面斜視図である。
図2】実施例1の前提となる運転台数増加制御を説明する図である。
図3】実施例1における運転台数増加制御を説明する図である。
図4】実施例1における運転台数増加制御の処理フロー図である。
図5】実施例1における圧縮機1台当たりの吐出し空気量q(P)の特性を説明する図である。
図6】実施例1における単位圧力勾配当たりの不足空気量k(P)の特性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0010】
本実施例における気体圧縮機は圧縮機本体を複数台搭載した気体圧縮機を前提としている。また、本実施例では、空気を圧縮する気体圧縮機を例に説明する。
【0011】
図1は、本実施例における気体圧縮機の背面斜視図である。図1では、背面パネル30、側面パネル31、上面パネル32、を外した状態を示しており、本実施例では、図1に示すように、3段の圧縮機ユニットから構成され、それぞれの圧縮機ユニットは、それぞれ圧縮機本体10、11、12と、インバータ20、21、22で構成される。また、それぞれの圧縮機本体10、11、12は、それぞれのインバータ20、21、22によって、圧縮機本体を駆動するそれぞれのモータ(図中では隠れていて見えない)の駆動周波数を制御する。また、各インバータを制御する制御装置(図中では隠れていて見えない)を備える。また、それぞれの圧縮機本体の吐出配管は一つの主吐出配管に合流しており、各インバータでそれぞれの圧縮機本体のモータの駆動周波数を制御しモータの回転数制御を行うことで吐出配管の圧力を制御し主吐出配管の吐出圧力を制御する。すなわち、制御装置は、それぞれの圧縮機本体の吐出圧力をインバータによる回転数制御することで気体圧縮機全体の吐出圧力を制御する。例えば、気体圧縮機の出力22KWに対しては、7.5KWの圧縮機本体を3台で対応可能となる。
【0012】
図2は、本実施例の前提となる運転台数増加制御を説明する図である。図2は、使用空気量が増加し、運転周波数を増加させても空気量が不足の場合に、圧縮機本体の運転台数を増加させる処理である。図2において、(a)は、気体圧縮機の吐出圧力(以降、特に断わらない限り、気体圧縮機の吐出圧力、すなわち主吐出配管での吐出圧力を単に吐出圧力と称す)の時間経過を示しており、(b)、(c)は圧縮機本体1、2のモータの駆動周波数(以降、圧縮機本体の駆動周波数と称す)の時間経過を示している。図2において、圧縮機本体1を主機、圧縮機本体2を追従機とした場合、期間TP1では主機のみでインバータによる回転数制御で気体圧縮機の吐出圧力はPID制御により一定圧力になるように制御されている場合を想定している。ここで、使用空気量が増加した場合、インバータによる回転数制御で圧縮機本体1の駆動周波数を上げるように制御する。そして、時刻T1で上限周波数に達すると、それ以上周波数を上げられないので、気体圧縮機の吐出圧力は減少する。そして、時刻T2で吐出圧力が下限圧力に達すると、圧縮機本体の動作台数を増加させる処理を行う。すなわち、圧縮機本体2に対して指令値を出して圧縮機本体2の駆動周波数を増加させ、圧縮機本体2による吐出圧力増加を図る。
【0013】
ここで、使用空気量の急激な増加の場合、圧縮機本体2のインバータによる回転数制御が間に合わず、圧縮機の吐出圧力が必要以上に上昇せず、生成圧縮空気量が使用圧縮空気量を下回り、吐出圧力が下限圧力値を下回り圧力のアンダーシュートが発生する。
【0014】
そこで、本実施例では、圧縮機本体の駆動周波数が上限周波数に達する前の駆動周波数を上げている時点での吐出圧力の時間経過に伴う変化量と、その圧力値から、圧縮機本体の駆動周波数増加によるリカバリが可能かを判断し、圧縮機本体の運転台数増加を制御する。
【0015】
図3は、本実施例における運転台数増加制御を説明する図である。図3において、条件は図2と同じであり、図2と異なる点は、(d)に空気消費量を示し、(b)、(c)において、圧縮機本体1の駆動周波数が上限周波数に達する前の駆動周波数を上げている時点の時刻T3に、吐出圧力の時間経過に伴う変化量、すなわち傾きTdを求める。すなわち、式(1)を演算する。
【0016】
【数1】
【0017】
ここで、P0:測定圧力、P0(t-1):1秒前の測定圧力である。
【0018】
そして、吐出圧力の傾きTdと吐出圧力値P0から、圧縮機本体の駆動周波数の増加可能分fpにより、空気消費量kpをリカバリが可能かを判断し、圧縮機本体の運転台数増加を制御する。すなわち、吐出余力残量が不足空気量よりも少ない場合、圧縮機本体の運転台数を増加する。これにより、早めに圧力低下を抑えることが出来、使用空気量の急激な増加による吐出圧力の低下を防止することが可能となる。
【0019】
図4は、本実施例における運転台数増加制御の処理フローである。図4において、まずステップS10で、動作中の圧縮機本体の駆動周波数f0が規定周波数以上であるかを判断する。ここでは、圧力によって規定された最高駆動周波数fmax(P)との比が運転台数増加判定駆動周波数比Rfよりも大きいかを判断し、例えば90%以上であればS11に進む。ステップS11では、吐出圧力P0が目標制御圧力Pt以下かつ圧力低下中かを判断する。Yesの場合は、S12に進み、吐出圧力の傾き、すなわち、時間経過に伴う変化量である圧力勾配dP/dt=(Po-Po(t-1))/dtを算出する。また、ステップS13で、吐出余力残量演算を行なう。具体的には、式(2)を演算する。
【0020】
【数2】
【0021】
ここで、q(P):圧縮機1台当たりの吐出し空気量、n:運転台数である。
【0022】
なお、圧縮機1台当たりの吐出し空気量q(P)は、図5に示すような特性有している。すなわち、圧力P0の増加に対して単調減少する。
【0023】
次に、ステップS14で、不足空気量演算を行なう。具体的には、式(3)を演算する。
【0024】
【数3】
【0025】
ここで、k(P):単位圧力勾配(-0.01MPa/s)当たりの不足空気量である。
【0026】
なお、単位圧力勾配当たりの不足空気量k(P)は、図6に示すような特性有している。すなわち、圧力P0の増加に対して単調減少する。
【0027】
そして、ステップS15で、余力の過不足判定を行う。すなわち、ステップS13で求めた吐出余力残量がステップS14で求めた不足空気量よりも小さいかを判断する。そして、吐出余力残量が不足空気量よりも少ない場合、ステップS16で圧縮機本体の運転台数を増加する。また、吐出余力残量が不足空気量よりも大きい場合は、ステップS17に移行し、圧縮機本体の駆動周波数を増加しモータの回転数を増加させる。
【0028】
ステップS11でNoの場合は、P0が目標制御圧力Pt以下でもなく圧力低下中でもないので、S17に進み、圧縮機本体の駆動周波数を下げモータの回転数を減少させる。
【0029】
また、ステップS10でNoの場合は、駆動周波数f0が規定周波数以内であるので、S19に進み、通常の回転数制御を行い、吐出圧力P0が目標制御圧力Pt以下であれば、ステップS20で圧縮機本体の駆動周波数を増加し、吐出圧力P0が目標制御圧力Pt以下でなければ、ステップS21で圧縮機本体の駆動周波数を下げる。
【0030】
以上の処理を終えるとステップS22で最初の戻り、以上の処理を繰り返す。
【0031】
このように、本実施例によれば、圧縮機本体の駆動周波数が上限周波数に達する前の駆動周波数を上げている時点での主吐出配管の吐出圧力の時間経過に伴う変化量と、その圧力値から、圧縮機本体の駆動周波数増加によるリカバリが可能かを判断し、圧縮機本体の運転台数増加を制御するので、使用空気量の急激な増加の場合の圧縮機の吐出圧力が必要以上に減少してしまう圧力のアンダーシュートや制御遅延が発生することを抑制でき、圧縮機本体の台数制御において、吐出圧力の変動を低減できる気体圧縮機、及び、その制御方法を提供することができる。
【実施例2】
【0032】
本実施例は、運転台数を増加させた直後、さらに、運転台数増加制御を行なった場合の不具合を抑制する例について説明する。
【0033】
実施例1における運転台数増加制御を行い、運転台数を増加させた直後は、追加運転した圧縮機本体は、インバータ制御により圧縮機本体の駆動周波数を増加させ、圧縮機本体を駆動するモータの回転数を上げて、インバータによる回転数制御で気体圧縮機の吐出圧力はPID制御により一定圧力になるように制御される。ここで、一定圧力になるまでには制御遅延が発生するため、例えば、運転台数を増加させた直後に、次の運転台数増加制御を行ってしまうと、過渡状態での吐出圧力や圧縮機本体の駆動周波数を用いて運転台数増加制御を行うことになり、誤動作を起こしてしまうことが考えられる。
【0034】
そこで、圧縮機本体の運転台数を増加させた直後は、所定時間経過するまでは、次の運転台数増加の制御を行なわないようにする。また、圧縮機本体の運転台数を増加させた直後は、圧縮機本体を駆動するモータの回転数が定常値になるのを確認した後、次の運転台数増加の制御を行うようにする。
【0035】
これにより、運転台数を増加させた直後の過渡状態での吐出圧力や圧縮機本体の駆動周波数を用いた運転台数増加制御を行うことを抑制でき、誤動作を起こしてしまうことを防止できる。
【0036】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10、11、12:圧縮機本体、20、21、22:インバータ、30:背面パネル、31:側面パネル、32:上面パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6