(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】フライトシミュレーション
(51)【国際特許分類】
B64F 5/00 20170101AFI20220307BHJP
B64C 13/12 20060101ALI20220307BHJP
B64C 19/00 20060101ALI20220307BHJP
G09B 9/16 20060101ALI20220307BHJP
G09B 9/30 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B64F5/00
B64C13/12
B64C19/00
G09B9/16
G09B9/30
(21)【出願番号】P 2020560607
(86)(22)【出願日】2019-01-14
(86)【国際出願番号】 GB2019050084
(87)【国際公開番号】W WO2019145675
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-08-11
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390038014
【氏名又は名称】ビ-エイイ- システムズ パブリック リミテッド カンパニ-
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS plc
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ハドフィールド、リチャード・スティーブン
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0267330(US,A1)
【文献】国際公開第2003/096303(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 5/00
B64C 13/12
B64C 19/00
G09B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のライブフライト中のフライトシナリオをシミュレートするための方法であって、前記シミュレートされたフライトシナリオは、前記航空機のライブフライト特性とは異なるフライト特性を備え、前記方法は、
(i)シミュレートされた高度における前記シミュレートされたフライトシナリオに関連するシーンを備える画像を生成すること(60)と、
(ii)前記航空機について受信されたライブフライトデータを使用して、所定のフライトモデル(65)を参照して、前記シミュレートされた高度における前記シミュレートされたフライトシナリオについてのシミュレートされたフライトデータを計算することと、
(iii)表示されシミュレートされたフライトデータに対応する速度及び方向に
、表示されたシーンを通る前記航空機の移動をシミュレートするために、前記生成されたシーン画像
の表示を制御しつつ、前記計算されシミュレートされたフライトデータを前記航空機の表示システム(35)上に表示することと
、
(iv)前記シミュレートされたフライトシナリオにおいてパイロットによるフライト制御アクション(70)に対する前記航空機の予想される応答をシミュレートするために、前記パイロットによる前記フライト制御アクション(70)に対する前記航空機のフライト制御システム(30)の前記応答を調整すること
を備える、方法。
【請求項2】
前記シミュレートされたフライトデータは、地球に対するシミュレートされた航空機の速度、シミュレートされた高度、シミュレートされたフライトの方向、及びシミュレートされた航空機の向きのうちの1つ又は複数を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(ii)は、前記シミュレートされた高度で飛行しているときの前記フライトモデル(65)において定義された前記航空機の所定のフライト特性と比較して、ライブフライトの前記高度で飛行しているときの前記航空機のフライト特性の差を補償するために、受信されたライブフライトデータを変換することを備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(iv)は、前記シミュレートされたフライトシナリオに従って飛行するときの異なるタイプの航空機の予想される応答をシミュレートするために、前記パイロットによるフライト制御アクション(70)に対する前記航空機の前記フライト制御システム(30)の前記応答を調整することを備える、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
(iv)は、前記航空機の前記応答を、前記パイロットが、インセプタ(30)又はスロットル制御装置(30)の動き(70)に対して調整することを備える、請求項
1又は
4に記載の方法。
【請求項6】
ライブフライトの前記高度は、前記シミュレートされた高度よりも高い、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シミュレートされたフライトシナリオは、前記表示されたシーン画像に表される地形を通る低高度飛行のシミュレーションを備える、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記シミュレートされたフライトシナリオは、前記表示されたシーン画像に表された航空機キャリアのフライトデッキへの前記航空機の着陸をシミュレートする目的で、航空機キャリアのフライトデッキのシミュレーションを備える、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記航空機のディスプレイ(35)は、前記航空機のパイロットによって着用されるヘルメットマウントディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、及びヘッドダウンディスプレイのうちの1つ又は複数を備える、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(v)前記航空機の潜在的に危険な状態を検出した場合に、前記シミュレートされたフライトシナリオの画像及び前記シミュレートされたフライトデータの画像の前記表示を終了すること
を備える、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記潜在的に危険な状態は、前記航空機の許容できないライブフライト特性の検出、前記航空機の所定の距離内の別の航空機又は物体の存在、前記パイロットの能力不足又は能力低下のうちの1つ又は複数を備える、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
航空機のライブフライト中のフライトシナリオをシミュレートするための、航空機の表示システム(35)に関連付けられた航空機フライトシミュレータであって、
シミュレートされたフライトシナリオのシーン画像を前記表示システム(35)に生成および出力するための風景生成器(60)と、
1つ又は複数のシミュレートされたフライトシナリオに従って飛行するときに前記航空機の予想されるフライト特性をモデル化するためのフライトモデル(65)と、
前記フライトモデル(65)によってモデル化されたフライト特性に従って前記風景生成器(60)の前記出力を制御し、それによって、前記航空機のライブフライト中に前記航空機のパイロットにフライトシミュレーション経験を提供するためのフライトシミュレーションコントローラと
、ここにおいて、前記フライトシミュレーションコントローラは、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成される、
を備える、航空機フライトシミュレータ。
【請求項13】
前記航空機のライブフライト中に1つ又は複数のフライトシナリオをシミュレートするように構成された航空機であって、前記航空機は、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法を実施する、航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のライブフライト中にフライトシナリオをシミュレートするための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上設置型フライト訓練シミュレータは、実際のフライト条件を再現することを意図して、シミュレータを動作させるパイロットに視覚的フライトシミュレーション経験と物理的フライトシミュレーション経験との両方を提供することができる。地上設置型シミュレータは、特に、着陸及び低高度飛行などの特定のフライトシナリオに従って、特定のタイプの航空機及びフライトの動作における訓練をパイロットに提供するために使用される。しかしながら、既知の地上設置型シミュレータは、パイロットに提供できる経験の範囲が限られている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で開示される第1の態様によれば、航空機のライブフライト中のフライトシナリオをシミュレートするための方法が提供され、シミュレートされたフライトシナリオは、航空機のライブフライト特性とは異なるフライト特性を備え、方法は、
(i)シミュレートされた高度におけるシミュレートされたフライトシナリオに関連するシーンを備える画像を生成することと、
(ii)航空機について受信されたライブフライトデータを使用して、所定のフライトモデルを参照して、シミュレートされた高度におけるシミュレートされたフライトシナリオについてのシミュレートされたフライトデータを計算することと、
(iii)表示されシミュレートされたフライトデータに対応する速度及び方向に、表示されたシーンを通る航空機の移動をシミュレートするために、生成されたシーン画像の表示を制御しつつ、計算されシミュレートされたフライトデータを航空機の表示システム上に表示することと
を備える。
【0004】
本明細書に開示される実施形態は、航空機のパイロットに、航空機を飛行させるか又はその着陸を練習するための仮想地形を表示し、受信されたライブフライトデータから導出されるシミュレートされたフライトデータを生成及び表示することを目的とする。航空機のライブフライト中のシミュレートされたフライトの性能は、パイロットが、地上設置型フライトシミュレータにおいて典型的に提供されるよりも現実的な経験をもつことを可能にする。
【0005】
一例では、シミュレートされたフライトデータは、地球に対するシミュレートされた航空機の速度、シミュレートされた高度、シミュレートされたフライトの方向、及びシミュレートされた航空機の向きのうちの1つ又は複数を備える。シミュレートされたフライトデータは、航空機ディスプレイシステムにおいて従来のようにシンボル及びデータの組み合わせとして表示され得る。
【0006】
一例では、(ii)は、シミュレートされた高度で飛行しているときのフライトモデルにおいて定義された航空機の所定のフライト特性と比較して、ライブフライトの高度で飛行しているときの航空機のフライト特性の差を補償するために、受信されたライブフライトデータを変換することを備える。
【0007】
一例では、方法は、
(iv)シミュレートされたフライトシナリオにおいてパイロットによるフライト制御アクションに対する航空機の予想される応答をシミュレートするために、パイロットによるフライト制御アクションに対する航空機のフライト制御システムの応答を調整すること
を備える。
【0008】
一例では、(iv)は、シミュレートされたフライトシナリオに従って飛行するときの異なるタイプの航空機の予想される応答をシミュレートするために、パイロットによるフライト制御アクションに対する航空機のフライト制御システムの応答を調整することを備える。
【0009】
これは、例えば、練習機のパイロットが、例えば最前線の戦闘機でのシミュレートされたフライトシナリオを飛行する感覚をもつことを可能にする。
【0010】
一例では、(iv)は、航空機の応答を、パイロットが、インセプタ又はスロットル制御装置の動きに対して調整することを備える。このようにして、パイロットは、シミュレートされたフライトシナリオに従って、航空機又は異なる航空機を飛行するときに予想される力を経験し得る。
【0011】
一例では、ライブフライトの高度は、シミュレートされた高度よりも高い。このようにして、シミュレートされたフライトシナリオを安全な高度で実践することができる。
【0012】
一例では、シミュレートされたフライトシナリオは、表示されたシーン画像に表される地形を通る低高度飛行のシミュレーションを備える。
【0013】
一例では、シミュレートされたフライトシナリオは、表示されたシーン画像に表された航空機キャリアのフライトデッキへの航空機の着陸をシミュレートする目的で、航空機キャリアのフライトデッキのシミュレーションを備える。
【0014】
一例では、航空機のディスプレイは、航空機のパイロットによって着用されるヘルメットマウントディスプレイである。代替的に、又は追加的に、航空機のディスプレイは、ヘッドアップ又はヘッドダウンディスプレイである。
【0015】
一例では、方法は、
(v)航空機の潜在的に危険な状態を検出した場合に、シミュレートされたフライトシナリオの画像及びシミュレートされたフライトデータの画像の表示を終了することを備える。潜在的に危険な状態は、航空機の許容できないライブフライト特性の検出、航空機の所定の距離内の別の航空機又は物体の存在、パイロットの能力不足又は能力低下のうちの1つ又は複数を備え得る。
【0016】
本明細書で開示される第2の態様によれば、航空機のライブフライト中のフライトシナリオをシミュレートするための、航空機の表示システムに関連付けられた航空機フライトシミュレータが提供され、
シミュレートされたフライトシナリオのシーン画像を表示システムに生成および出力するための風景生成器と、
1つ又は複数のシミュレートされたフライトシナリオに従って飛行するときに航空機の予想されるフライト特性をモデル化するためのフライトモデルと、
フライトモデルによってモデル化されたフライト特性に従って風景生成器の出力を制御し、それによって、航空機のライブフライト中に航空機のパイロットにフライトシミュレーション経験を提供するためのフライトシミュレーションコントローラと
を備える。
【0017】
航空機フライトシミュレータの一例では、フライトシミュレーションコントローラは、本明細書で開示される第1の態様による上述の方法を実施するように構成される。
【0018】
本明細書で開示される第3の態様によれば、航空機のライブフライト中に1つ又は複数のフライトシナリオをシミュレートするように構成された航空機が提供され、航空機は、本明細書で開示される第1の態様による上述の方法を実施する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の例示的な実施形態を、ここで添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【
図1】
図1は、例示的な地上設置型フライトシミュレータの機能を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、航空機の特徴及び機能の例示的なセットを示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本開示による航空機の特徴及び機能の例示的なセットを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、航空機のライブフライト中に、例えば訓練目的で、航空機でのフライトシナリオをシミュレートするように構成されたフライトシミュレート方法及び装置の実施形態について説明する。特に、航空機のパイロットは、安全な高度で飛行している間、シミュレートされたフライトシナリオに従って航空機を飛行させることができる。シミュレートされたフライトシナリオは、低高度の飛行又は着陸シナリオを含む訓練フライトシナリオを備え得る。シミュレートされた着陸シナリオは、例えば、様々な条件又は場所におけるシミュレートされた航空機キャリアフライトデッキ又は他のシミュレートされた着陸タイプであり得る。
【0021】
低高度飛行は、乗組員にとって危険であり得、フライト経路上に住んでいる人々に混乱を引き起こす。したがって、より高く安全な高度で飛行している間に訓練フライトシナリオをシミュレートできることは、いくつかの方法で有益である。特に、ライブフライト中に提供されるシミュレーションは、パイロットが、地上設置型フライトシミュレータにおいて典型的に提供されるより限定された経験ではなく、ライブフライトにおいて予想される重力(g-forces)及び他の要因を経験することを可能にする。比較のために、
図1を参照して、典型的な地上設置型フライトシミュレータを最初に説明する。
【0022】
図1を参照すると、典型的な地上設置型フライトシミュレータの原理的な特徴及び機能を示すブロック図が提供されている。風景生成器5は、航空機の実際のフライト中にパイロットがコックピットから見るであろう変化するシーンの画像を1つ又は複数のディスプレイ10に出力する。航空機コックピットの他の特徴は、フライト制御インセプタ及びスロットル制御などの物理的特徴と、1つ又は複数のディスプレイ10に生成及び出力され得るコックピット計器などの特徴の画像との組み合わせを用いてエミュレートされ得る(15)。
【0023】
フライト制御インセプタ又はスロットル制御の移動などのパイロットアクション20は、生成された風景(5)及び任意のエミュレートされたコックピット計器(15)を含む、表示された画像に適切な変化を引き起こすための事前構成されたフライトモデル物理特性25に従って解釈される。1つ又は複数のディスプレイ10は、風景生成器5によって出力された画像を表示するための、及びコックピットエミュレーション15の目的のためのスクリーン、ヘッドアップ又はヘッドダウンディスプレイ、及びヘッドマウントディスプレイ又はヘルメットマウントディスプレイのうちの任意の1つ又は複数を含み得る。
【0024】
従来の航空機では、ここで
図2を参照して概略的に説明されるように、典型的には、フライトシミュレーションの目的のために提供される特徴はない。
【0025】
図2を参照すると、ブロック図は、コックピットシステム30を含む航空機の特徴及び機能の例示的なセットを示しており、典型的には、パイロットのフライト制御及びコックピット計器を備える。1つ又は複数のディスプレイ35は、航空機内のフライト制御コンピュータ40並びに他の画像及びデータソースによる出力を表示するために提供される。表示される出力は、ディスプレイに対して、航空機に対して、又は地球に対して固定されて表示され得る、フライトデータ、シンボル、及び他のディスプレイアーティファクトを含み得る。フライト制御コンピュータ40は、航空機のフライト操縦翼面の対応する動きを引き起こすために、例えばフライト制御の動きのようなパイロットアクション45を解釈して、航空機のフライトを制御する。フライト制御コンピュータ40は、航空機のフライトセンサ50による出力と、航空機の制御における予め設定されたフライト制御基準及びモデルとを考慮する。フライト制御コンピュータ40はまた、コックピットシステム30のフライト制御インセプタを通してパイロットに提供される任意の触覚フィードバックの量を制御し得る。
【0026】
ここで、本明細書に開示される実施形態による航空機を、
図3を参照して説明する。そのような航空機は、
図1を参照して上述した地上設置型シミュレータの特定の機能的特徴を実施するように構成され得る。そのような航空機は、オプションで、シミュレートされたフライトシナリオに従って飛行するときに予想されるものとより一致するパイロット経験を提供するために、フライトシミュレーションモードの動作中に航空機の応答を変更するための特徴を組み込み得る。
【0027】
図3を参照すると、ブロック図は、パイロットがライブ飛行中にシミュレートされたフライトシナリオに従って航空機を飛行させることを経験するのを可能にする追加の特徴を組み込んだ航空機の構成要素を示す。コックピットシステム30、1つ又は複数のディスプレイ35、フライト制御コンピュータ40、及びフライトセンサ50は、
図2に示すように、従来の航空機の場合と同様に設けられる。しかしながら、フライト制御コンピュータ40は、フライトシミュレーションモードの動作を実施するためのシミュレーション制御機能を含むように修正されてもよい。代替的に又は追加的に、航空機のシミュレーションモードの動作のためのシミュレーション制御機能の一部又は全部を実施するために、さらなるデータ処理能力が追加されてもよい(
図3には図示せず)。
【0028】
特に、シミュレーション制御機能は、シミュレートされたフライトシナリオに従って飛行するときに予想されるようなコックピットからの視界をシミュレートする、変化する実物そっくりの現実世界(life-like real-world)のシーン及び/又はムービングマップの画像又はビデオを1つ又は複数のディスプレイ35に出力するように構成された風景生成器60を制御する。風景生成器60は、選択された領域のデジタル地形標高データ(DTED)、航空写真からキャプチャされた画像及びビデオを含む、各シミュレートされたフライトシナリオに関連するシーン画像及びビデオを記憶し得る。あるいは、生成された画像に示される特徴を合成してもよい。
【0029】
シミュレーション制御機能はまた、フライトモデル65と対話するように構成される。フライトモデル65は、1つ又は複数のシミュレートされたフライトシナリオに従って飛行するときに航空機の予想されるフライト特性をモデル化するように構成される。フライトモデル65は、風景生成器60によって出力される表示されたシーン画像又はビデオに重ね合わせるために、特に、1つ又は複数のディスプレイ35に出力するためのシミュレートされたフライトデータを生成するように構成される。フライトモデル65は、位置データ、対気/対地速度、方向、高度、及び地球に対する航空機の向きを含む、フライトセンサ50から受信した実際のフライトデータを、1つ又は複数のディスプレイ35に出力するためのシミュレートされたフライトデータに変換する。
【0030】
変換は、例えば、シミュレートされたフライトシナリオに従って飛行するときの航空機の予想されるフライト特性と比較した、実際のフライトにおける航空機のフライト特性のモデル化された差に従って行われる。例えば、表示されシミュレートされた高度、対気速度、対地速度、及び地球に対する航空機の向き、並びにこれらのデータのうちのいずれかにおけるシミュレートされた変化率のうちの任意の1つ又は複数は、それぞれの感知された(50)高度、対気速度、対地速度、及び地球に対する航空機の向き、並びにこれらのデータにおける感知された変化率から、フライトモデル65に従って変換される。
【0031】
没入型で現実的なシミュレーションを提供するために、シミュレーション制御機能は、フライトモデル65によって生成されたシミュレートされたフライトデータに基づいて、表示されたシーン画像を更新するように風景生成器60を制御する。その目的は、シミュレートされたシーンを通して、飛行の実際通りの印象(true impression)をパイロットに与えることである。訓練目的のために提供される場合、訓練が価値のあるものであるために、訓練中にパイロットが発達させる筋肉の記憶(muscle memory)は、訓練シナリオを正しく反映する必要がある。これを達成するために、パイロットはまた、現実的なフライトの重力(g-forces)及び航空機を飛行させる物理的及び精神的要件を経験する必要がある。
【0032】
フライトモデル65は、航空機がシミュレーションモードで動作しているときにパイロットアクション70に対するコックピットシステム30内のフライト制御の応答に対する調整をモデル化するように構成されてもよく、その結果、パイロットは、シミュレートされたフライト条件下で予想されるのと同じ又は同様の力を経験する。これらの調整は、パイロットアクション70に対する航空機の応答、及びパイロットアクション70に応答してパイロットに提供される触覚フィードバックのいずれか又は両方に関連し得る。いずれの場合も、フライト制御コンピュータ40は、シミュレーションモードで動作するときにフライトモデル65によって決定された調整を実施するように構成され得る。
【0033】
コックピットシステム30に設けられたインセプタシステムは、航空機に応答してモデル化された(65)変化のうちのいくつかを実施するように構成されてもよく、これらの変化は、例えば、インセプタシステムを通してパイロットに提供される触覚フィードバックの変化に関連する。完全にアクティブなインセプタシステムが提供される場合、パイロットによって加えられたインセプタの動きの効果、及びインセプタを通して提供される触覚フィードバックは、シミュレートされたフライトシナリオの予想されるフライト特性を達成するように調整され得る。
【0034】
フライトモデル65によってモデル化された調整は、例えば、以下を含み得る:
・パイロットアクション70に対する航空機の応答、及び/又は所与のパイロットアクション70に応答して加えられる触覚力の差。
・シミュレーションで表示されるロールレート(roll rate)の差 ― 例えば、ロールレートは、より早い速度で同じ制御入力(70)に対して増加する。
・所与の変化するインセプタ入力(70)に対して感じられると予想される変化する重力(g-forces)の差 ― 例えば、より早い速度でのピッチ制御入力(70)の所与の変化は、重力(g-forces)のより高い変化を引き起こす。
・スロットル応答及びアフターバーナー係合点の差 ― 例えば、スロットル応答及びアフターバーナー係合点は、スロットル位置と同様に航空機速度に依存する。
・フライト操縦翼面、例えばフラップ及び舵、並びに他の着陸補助具が展開される速度の差 ― 例えば、フラップ及び他の着陸補助具が展開される速度は、高度によって変化し得る。
・例えば、異なるタイプの航空機をパイロットが飛行しているかのように応答し、かつパイロットにフィードバックを提供するように航空機のインセプタ30及びディスプレイシステム35を構成するための機体の差。例えば、航空機は練習機であってもよく、フライトモデル65は、練習機のフライト特性と「最前線の」戦闘機のフライト特性との間の差をモデル化するように構成されてもよい。
【0035】
いずれの場合も、それぞれのシミュレートされたフライトデータは、モデル化された差に従ってフライトモデル65を参照して調整及び表示されてもよく、当業者には明らかなように、航空機に対して感知された(50)実際のフライト特性を考慮すると、シミュレートされたフライトシナリオに適切である。
【0036】
例えば、シミュレートされた高度よりも高い高度では、航空機の失速速度は、低減された空気密度に起因してより高くなる。海面近くでの飛行をシミュレートする場合、表示されるシミュレートされた対気速度は、航空機の実際の対気速度未満である必要がある。シミュレートされた風景生成器60は、航空機の実際の対地速度ではなく、このシミュレートされた対地速度に従って、シミュレートされた制御機能によって制御される。同様に、より速く飛行することは、同じ半径の旋回(turn)においてより多くの重力(g-forces)を生成する。しかしながら、同じバンク角に対して同じ旋回率が経験されるので、シミュレーションを通じて低減された対地速度を表示することによって、正確なシミュレートされた航空機挙動を達成することができる。
【0037】
現代の航空機は、ヘッドアップディスプレイ、より最近ではヘルメットマウントディスプレイを利用する。これらのディスプレイは、従来、パイロットがコックピットシステム30内に設けられた計器を見る必要がないように、航空機の速度、高度、並びに旋回及び上昇率を提示する。本発明は、コックピットシステム30に設けられた計器を実際の状態のまま使用することができ、航空機の実際のフライトに応じたフライトデータを表示することができる。しかしながら、ヘッドアップ又はヘルメットマウントディスプレイ35上に表示するためのフライトデータ出力は、シミュレートされたフライトシナリオに対応し得る。
【0038】
シミュレートされたフライトシナリオは、典型的な地上設置型シミュレーションにおいて提示されるデータ及びイメージと同様の、フライトにおいて使用するためのデータ及びイメージを提示し得る。これらは、例えば、表面高さ、表面イメージ、及び垂直障害物を含む。加えて、シミュレートされたターゲット、敵対的要素、友好的要素、及び他の特徴が、シミュレートされたシーンに導入され得る。そのような敵対的かつ友好的な要素の導入は、地上設置型オペレータから制御されてもよく、同じシミュレートされた領域内であるが物理的に安全な間隔で飛行する他の航空機を表してもよい。あるいは、そのような要素の導入は、完全に自動化されてもよい。
【0039】
シミュレートされたフライトシナリオの表示された画像及びフライトデータを参照して行動するときに、航空機の安全性がパイロットのアクション70によって損なわれないことを保証するために、様々な安全機能(safety features)が実装され得る。例えば、シミュレーション制御機能は、1)本質的な(genuine)システム故障の検出時、2)別の航空機が航空機の周りのシミュレーション除外領域に入ることが検出された場合、3)航空機が制御を回復するためにパイロットの介入を必要とする場合、又は4)パイロットがシミュレーションを解除する場合に、シミュレーションモードの動作を解除する機能を含み得る。いずれの場合も、航空機ディスプレイ35によって表示される任意のフライトデータは、シミュレートされたフライトデータから実際のフライトデータに直ちに変化してもよく、風景生成器60は、人工風景の生成を中止する。
【0040】
上述のシミュレーション制御機能を実施するためのデータ処理能力は、実際には、オプションで、チップセット、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、グラフィックス処理ユニット(GPU)などとして提供される、単一のチップもしくは集積回路又は複数のチップもしくは集積回路によって提供され得る。1つ又は複数のチップは、例示的な実施形態に従って動作するように構成可能である、1つ又は複数のデータプロセッサ、1つ又は複数のデジタルシグナルプロセッサ、ベースバンド回路、及び無線周波数回路のうちの少なくとも1つ又は複数を実施するための回路(並びに場合によってはファームウェア)を備え得る。この点に関して、例示的な実施形態は、(非一時的)メモリに記憶され、プロセッサによって実行可能なコンピュータソフトウェアによって、又はハードウェアによって、又は有形に記憶されたソフトウェア及びハードウェア(並びに有形に記憶されたファームウェア)の組み合わせによって、少なくとも部分的に実施され得る。
【0041】
図面を参照して本明細書で説明される実施形態の少なくともいくつかの態様は、処理システム又はプロセッサにおいて実行されるコンピュータ処理を備えるが、本発明はまた、本発明を実施するように適合されたコンピュータプログラム、特にキャリア上又はキャリア内のコンピュータプログラムに及ぶ。プログラムは、非一時的ソースコード、オブジェクトコード、部分的にコンパイルされた形態などのコード中間ソース及びオブジェクトコードの形態、又は本発明によるプロセスの実施における使用に適した任意の他の非一時的形態であり得る。キャリアは、プログラムを搬送することができる任意のエンティティ又はデバイスであり得る。例えば、キャリアは、ソリッドステートドライブ(SSD)又は他の半導体ベースのRAM、ROM、例えば、CD ROM又は半導体ROM、磁気記録媒体、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク又はハードディスク、一般に光学メモリデバイスなどの記憶媒体を備えてもよい。
【0042】
本明細書に記載の例は、本発明の実施形態の実例となる例として理解されるべきである。さらなる実施形態及び実施例が想定される。任意の1つの例又は実施形態に関連して説明される任意の特徴は、単独で、又は他の特徴と組み合わせて使用され得る。加えて、任意の1つの例又は実施形態に関連して説明される任意の特徴はまた、実施例もしくは実施形態のうちの任意の他のものの1つ又は複数の特徴と組み合わせて、又は実施例もしくは実施形態のうちの任意の他のものの任意の組み合わせで使用され得る。さらに、本明細書に記載されていない修正及び等価物もまた、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内で用いられ得る。
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
航空機のライブフライト中のフライトシナリオをシミュレートするための方法であって、前記シミュレートされたフライトシナリオは、前記航空機のライブフライト特性とは異なるフライト特性を備え、前記方法は、
(i)シミュレートされた高度における前記シミュレートされたフライトシナリオに関連するシーンを備える画像を生成すること(60)と、
(ii)前記航空機について受信されたライブフライトデータを使用して、所定のフライトモデル(65)を参照して、前記シミュレートされた高度における前記シミュレートされたフライトシナリオについてのシミュレートされたフライトデータを計算することと、
(iii)表示されシミュレートされたフライトデータに対応する速度及び方向に、前記表示されたシーンを通る前記航空機の移動をシミュレートするために、前記生成されたシーン画像の前記表示を制御しつつ、前記計算されシミュレートされたフライトデータを前記航空機の表示システム(35)上に表示することと
を備える、方法。
[C2]
前記シミュレートされたフライトデータは、地球に対するシミュレートされた航空機の速度、シミュレートされた高度、シミュレートされたフライトの方向、及びシミュレートされた航空機の向きのうちの1つ又は複数を備える、C1に記載の方法。
[C3]
(ii)は、前記シミュレートされた高度で飛行しているときの前記フライトモデル(65)において定義された前記航空機の所定のフライト特性と比較して、ライブフライトの前記高度で飛行しているときの前記航空機のフライト特性の差を補償するために、受信されたライブフライトデータを変換することを備える、C1又は2に記載の方法。
[C4]
(iv)前記シミュレートされたフライトシナリオにおいてパイロットによるフライト制御アクション(70)に対する前記航空機の予想される応答をシミュレートするために、前記パイロットによる前記フライト制御アクション(70)に対する前記航空機のフライト制御システム(30)の前記応答を調整すること
を備える、C1~3のいずれか一項に記載の方法。
[C5]
(iv)は、前記シミュレートされたフライトシナリオに従って飛行するときの異なるタイプの航空機の予想される応答をシミュレートするために、前記パイロットによるフライト制御アクション(70)に対する前記航空機の前記フライト制御システム(30)の前記応答を調整することを備える、C4に記載の方法。
[C6]
(iv)は、前記航空機の前記応答を、前記パイロットが、インセプタ(30)又はスロットル制御装置(30)の動き(70)に対して調整することを備える、C4又は5に記載の方法。
[C7]
ライブフライトの前記高度は、前記シミュレートされた高度よりも高い、C1~6のいずれか一項に記載の方法。
[C8]
前記シミュレートされたフライトシナリオは、前記表示されたシーン画像に表される地形を通る低高度飛行のシミュレーションを備える、C1~7のいずれか一項に記載の方法。
[C9]
前記シミュレートされたフライトシナリオは、前記表示されたシーン画像に表された航空機キャリアのフライトデッキへの前記航空機の着陸をシミュレートする目的で、航空機キャリアのフライトデッキのシミュレーションを備える、C1~8のいずれか一項に記載の方法。
[C10]
前記航空機のディスプレイ(35)は、前記航空機のパイロットによって着用されるヘルメットマウントディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、及びヘッドダウンディスプレイのうちの1つ又は複数を備える、C1~9のいずれか一項に記載の方法。
[C11]
(v)前記航空機の潜在的に危険な状態を検出した場合に、前記シミュレートされたフライトシナリオの画像及び前記シミュレートされたフライトデータの画像の前記表示を終了すること
を備える、C1~10のいずれか一項に記載の方法。
[C12]
前記潜在的に危険な状態は、前記航空機の許容できないライブフライト特性の検出、前記航空機の所定の距離内の別の航空機又は物体の存在、前記パイロットの能力不足又は能力低下のうちの1つ又は複数を備える、C11に記載の方法。
[C13]
航空機のライブフライト中のフライトシナリオをシミュレートするための、航空機の表示システム(35)に関連付けられた航空機フライトシミュレータであって、
シミュレートされたフライトシナリオのシーン画像を前記表示システム(35)に生成および出力するための風景生成器(60)と、
1つ又は複数のシミュレートされたフライトシナリオに従って飛行するときに前記航空機の予想されるフライト特性をモデル化するためのフライトモデル(65)と、
前記フライトモデル(65)によってモデル化されたフライト特性に従って前記風景生成器(60)の前記出力を制御し、それによって、前記航空機のライブフライト中に前記航空機のパイロットにフライトシミュレーション経験を提供するためのフライトシミュレーションコントローラと
を備える、航空機フライトシミュレータ。
[C14]
前記フライトシミュレーションコントローラは、C1~12のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成される、C13に記載の航空機フライトシミュレータ。
[C15]
前記航空機のライブフライト中に1つ又は複数のフライトシナリオをシミュレートするように構成された航空機であって、前記航空機は、C1~12のいずれか一項に記載の方法を実施する、航空機。