(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】撮像システム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/225 20060101AFI20220307BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220307BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
H04N5/225
H04N5/232 300
H04N7/18 M
(21)【出願番号】P 2020565062
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2019000286
(87)【国際公開番号】W WO2020144755
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】大澤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小川 慶輔
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/004428(WO,A1)
【文献】特許第6427303(JP,B1)
【文献】特開2009-22579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225
H04N 5/232
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラユニットと情報処理ユニットとが差動信号伝送線で接続された撮像システムにおいて、
前記カメラユニットは、
電源電圧によって動作し、撮像データを生成する固体撮像素子と、
撮像データの差動信号を前記差動信号伝送線に出力する出力ドライバを有し、
前記情報処理ユニットは、
基板電圧と、前記基板電圧よりも高く前記電源電圧よりも低い参照電圧によって、前記差動信号の振幅を制御するデエンファシス回路と、
前記参照電圧を生成する電圧生成器とを有する、
ことを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記カメラユニットは、
テストデータを出力するテストデータ生成回路を有し、
出力ドライバを介して前記撮像データに加えて前記テストデータを前記差動信号伝送線に出力し、
前記情報処理ユニットは、
前記テストデータ生成回路が出力する前記テストデータのエラーを判定するエラー判定部を有し、
エラーの判定結果に応じて前記電圧生成器が生成する前記参照電圧を変化させることを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記情報処理ユニットの前記エラー判定部は、エラーレートが所定の値より高い場合に、前記電圧生成器が生成する前記参照電圧を高く設定することを特徴とする請求項2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記情報処理ユニットの前記エラー判定部は、前記固体撮像素子が送信する撮像データについて所定の条件でエラー判定をした場合に、参照電圧を所定値より低い値に降下させ、
前記カメラユニットは、前記参照電圧が所定値より低い値に降下したことを検出してリセット動作またはエラーリカバリ動作を実行することを特徴とする請求項2に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記カメラユニットは、
前記差動信号伝送線の中間電圧を測定する中間電圧測定回路を有し、
中間電圧が前記所定値に対応する第1の所定値を下回ったときにリセット動作またはエラーリカバリ動作を実行することを特徴とする請求項4に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記カメラユニットは、中間電圧が前記所定値に対応する第1の所定値を下回った所定時間に応じて、リセット動作またはエラーリカバリ動作の内容を決定することを特徴とする請求項5に記載の撮像システム。
【請求項7】
前記情報処理ユニットは、
下り通信モードにおいて、前記電圧生成器が生成する前記参照電圧を第1の値に設定し、
上り通信モードにおいて、前記電圧生成器が生成する前記参照電圧を第2の値に設定し、
前記第1の値と前記第2の値は異なる値に設定されることを特徴とする請求項1~6いずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項8】
前記情報処理ユニットは、外部治療デバイスと接続または通信可能であり、
外部治療デバイスが動作しているとき、前記電圧生成器が生成する前記参照電圧を外部治療デバイスが動作していないときよりも高く設定することを特徴とする請求項1~7いずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項9】
前記カメラユニットは、前記カメラユニットの温度を測定して、前記情報処理ユニットに送信する温度センサをさらに有し、
前記情報処理ユニットは、測定温度が所定の温度より高くなった場合に、参照電圧を低く設定することを特徴とする請求項1~8いずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項10】
前記カメラユニットは、前記情報処理ユニットから差動信号伝送線によってデータを受信する受信ドライバをさらに有し、
撮像システムは、前記出力ドライバから前記情報処理ユニットへデータが送信される下り通信モードと、前記情報処理ユニットから受信ドライバへデータが送信される上り通信モードとが切替え可能であり、
前記出力ドライバは、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、第4スイッチを有し、
下り通信モードにおいて、前記第1スイッチと前記第3スイッチ、前記第2スイッチと前記第4スイッチをそれぞれ同時にON/OFFして撮像データを差動信号として出力し、
上り通信モードにおいて、前記第1スイッチ、前記第2スイッチをON、前記第3スイッチ、前記第4スイッチをOFFして、差動信号の伝送路を形成して、前記第1スイッチ、前記第2スイッチが上り通信モードにおけるターミネーション抵抗の一部となることを特徴とする請求項1~9いずれか一項に記載の撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラユニット(撮像素子)-情報処理ユニット間の通信を、デエンファシス回路を有する差動信号伝送線によって実行する撮像システム(内視鏡システム)が検討されている。例えば、特許文献1には、デエンファシス回路に相当するフィルタを情報処理ユニット側に設けた撮像システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のデエンファシス回路に相当するフィルタに対して、参照電圧VCMとしてイメージャ(撮像素子)駆動用の電源電圧VDDを適用すると、イメージャ(撮像素子)駆動用の電源電圧VDDにはダイナミックレンジ確保等のために比較的高い電圧が供給されるため、デエンファシス回路の消費電力も増大し、差動信号伝送線での発熱が大きくなるという課題がある。
デエンファシス回路に相当するフィルタ専用に、画素駆動用の電源電圧よりも低い参照電圧VCMを供給することにより発熱の問題は解決できるが、参照電圧VCMを供給するための専用線を追加することは、内視鏡の伝送線路のケーブル径を太くすることになるため、内視鏡挿入時の患者に対する負担を増大させるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的は、スコープの省線化を実現するとともに、省電力化を実現する撮像システム(内視鏡システム)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る撮像システムは、カメラユニットと情報処理ユニットとが差動信号伝送線で接続された撮像システムにおいて、前記カメラユニットは、電源電圧によって動作し、撮像データを生成する固体撮像素子と、撮像データの差動信号を前記差動信号伝送線に出力する出力ドライバを有し、前記情報処理ユニットは、基板電圧と、前記基板電圧よりも高く前記電源電圧よりも低い参照電圧によって、前記差動信号の振幅を制御するデエンファシス回路と、前記参照電圧を生成する電圧生成器とを有する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様に係る撮像システムは、上記第1の態様において、前記カメラユニットは、テストデータを出力するテストデータ生成回路を有し、出力ドライバを介して前記撮像データに加えて前記テストデータを前記差動信号伝送線に出力し、前記情報処理ユニットは、前記テストデータ生成回路が出力する前記テストデータのエラーを判定するエラー判定部を有し、エラーの判定結果に応じて前記電圧生成器が生成する前記参照電圧を変化させることを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の態様に係る撮像システムは、上記第2の態様において、前記情報処理ユニットの前記エラー判定部は、エラーレートが所定の値より高い場合に、前記電圧生成器が生成する前記参照電圧を高く設定することを特徴とする。
【0009】
本発明の第4の態様に係る撮像システムは、上記第2の態様において、前記情報処理ユニットの前記エラー判定部は、前記固体撮像素子が送信する撮像データについて所定の条件でエラー判定をした場合に、参照電圧を所定値より低い値に降下させ、前記カメラユニットは、前記参照電圧が所定値より低い値に降下したことを検出してリセット動作またはエラーリカバリ動作を実行することを特徴とする。
【0010】
本発明の第5の態様に係る撮像システムは、上記第4の態様において、前記カメラユニットは、前記差動信号伝送線の中間電圧を測定する中間電圧測定回路を有し、中間電圧が前記所定値に対応する第1の所定値を下回ったときにリセット動作またはエラーリカバリ動作を実行することを特徴とする。
【0011】
本発明の第6の態様に係る撮像システムは、上記第5の態様において、前記カメラユニットは、中間電圧が前記所定値に対応する第1の所定値を下回った所定時間に応じて、リセット動作またはエラーリカバリ動作の内容を決定することを特徴とする。
【0012】
本発明の第7の態様に係る撮像システムは、上記第1の態様~第6の態様において、前記情報処理ユニットは、下り通信モードにおいて、前記電圧生成器が生成する前記参照電圧を第1の値に設定し、上り通信モードにおいて、前記電圧生成器が生成する前記参照電圧を第2の値に設定し、前記第1の値と前記第2の値は異なる値に設定されることを特徴とする。
【0013】
本発明の第8の態様に係る撮像システムは、上記第1の態様~第7の態様において、前記情報処理ユニットは、外部治療デバイスと接続または通信可能であり、外部治療デバイスが動作しているとき、前記電圧生成器が生成する前記参照電圧を外部治療デバイスが動作していないときよりも高く設定することを特徴とする。
【0014】
本発明の第9の態様に係る撮像システムは、上記第1の態様~第8の態様において、前記カメラユニットは、前記カメラユニットの温度を測定して、前記情報処理ユニットに送信する温度センサをさらに有し、前記情報処理ユニットは、測定温度が所定の温度より高くなった場合に、参照電圧を低く設定することを特徴とする。
【0015】
本発明の第10の態様に係る撮像システムは、上記第1の態様~第9の態様において、前記カメラユニットは、前記情報処理ユニットから差動信号伝送線によってデータを受信する受信ドライバをさらに有し、撮像システムは、前記出力ドライバから前記情報処理ユニットへデータが送信される下り通信モードと、前記情報処理ユニットから受信ドライバへデータが送信される上り通信モードとが切替え可能であり、前記出力ドライバは、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、第4スイッチを有し、下り通信モードにおいて、第1スイッチと第3スイッチ、第2スイッチと第4スイッチをそれぞれ同時にON/OFFして撮像データを差動信号として出力し、上り通信モードにおいて、前記第1スイッチ、前記第2スイッチをON、前記第3スイッチ、前記第4スイッチをOFFして、差動信号の伝送路を形成して、前記第1スイッチ、前記第2スイッチが上り通信モードにおけるターミネーション抵抗の一部となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の各態様によれば、スコープの省線化を実現するとともに、省電力化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡を含む内視鏡システムの概略の構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る撮像システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態に係る撮像システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る撮像システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】
図3に記載されたイメージャクロック生成部IMG_CLKの構成を示す図である。
【
図6】
図3に記載されたイメージャクロック生成部IMG_CLKの主要ノードの論理状態を示すためのタイミングチャートである。
【
図7】本発明の撮像システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る内視鏡を含む内視鏡システムの概略の構成を示す図である。
図1に示す内視鏡システム(撮像システム1)は、スコープ10と、コントローラ20と、モニタ30とを有している。スコープ10は、被検体の体内の撮像データをコントローラ20の画像プロセッサ22に伝送する。画像プロセッサ22は、スコープ10から伝送された撮像データを処理する。モニタ30は、コントローラ20で処理された撮像データに基づいて映像を表示する。
【0019】
本実施形態における内視鏡として機能するスコープ10は、挿入部11と、操作部14と、ケーブル15と、コネクタ16と、コネクタ17とを有している。
【0020】
挿入部11は、被検体の体内に挿入される部分である。挿入部11の先端の内部には、撮像素子12(後述するカメラユニット2)が設けられている。撮像素子12は、CMOSセンサ又はCCDセンサであり、被検体の体内を撮像して被検体に係る撮像データを生成する。カメラユニット2については後で詳しく説明する。また、挿入部11は、先端から照明光を射出可能に構成されている。
【0021】
また、挿入部11は、医師等の操作者による操作部14の操作ノブの操作を受けて湾曲するという目的で構成された部分と、操作部14の操作によらずに外力によって受動的に湾曲するような部分とを有するという目的で構成されている。
【0022】
操作部14は、挿入部11とケーブル15とを接続している。操作部14は、挿入部11を右左方向に湾曲させる操作を実行するためのRLノブと、挿入部11を上下方向に湾曲させる操作を実行するためのUDノブとを操作ノブとして有している。また、操作部14は、各種のスイッチを有している。
【0023】
挿入部11、操作部14及びケーブル15の内部には、ライトガイドが形成されている。このライトガイドは、ケーブル15の基端に設けられたコネクタ16によってコントローラ20の光源装置21に接続されている。また、挿入部11、操作部14及びケーブル15の内部には、撮像データを伝送するための伝送線路としての映像信号線等の各種の信号線が形成されている。この信号線(後述する差動信号伝送線を含む信号線)は、コネクタ16に接続されるコネクタ17によってコントローラ20の画像プロセッサ22に接続されている。さらに、操作部14から挿入部11を通るという目的で、チャンネルが設けられている。チャンネルは、超音波メス等の超音波凝固切開装置や電気メス等の高周波電流発生装置といった各種の処置具を挿入部11の先端まで通すために設けられている。このようなチャネルが設けられていることにより、内視鏡を用いた観察と処置具による処置とが一体的に行われ得る。
【0024】
なお、本実施形態の情報処理ユニット3(詳細については後述する)は、それを構成するDSP303など全ての構成要素は画像プロセッサ22に含まれてもよい。もっとも、情報処理ユニット3を構成する一部の構成要素、例えばデエンファシス回路301、参照電圧生成器304などの構成要素は、画像プロセッサ22とは異なる部分、例えばコネクタ16、コネクタ17などに含まれてもよい。
【0025】
光源装置21は、白色LED等の光源を有しており、照明光を射出する。光源装置21から射出された照明光は、ライトガイドによって挿入部11の先端まで伝達され、挿入部11の先端から射出される。これにより、被検体内は照明される。
【0026】
撮像素子12(後述するカメラユニット2)の外部の信号処理装置としての情報処理ユニット3は、挿入部11の撮像素子12で得られた撮像データを処理する。この処理は、階調補正処理等の処理後の撮像データをモニタ30で表示可能な形式に変換する処理を含む。
【0027】
モニタ30は、例えば液晶モニタである。モニタ30は、情報処理ユニット3で処理された撮像データに基づく映像や各種の情報を表示する。
【0028】
<第1の実施形態>
図2は、本発明の第1の実施形態に係る撮像システムの構成例を示すブロック図である。
撮像システム1は、カメラユニット2(イメージセンサ)と情報処理ユニット3とが差動信号伝送線(ケーブルCABLEPとケーブルCABLEM)、ケーブルCABLE_VDDおよびケーブルCABLE_VSSで接続されている。
<カメラユニット2の構成について>
図2に示すカメラユニット2は、固体撮像素子201と、クロック生成器202と、出力ドライバ203(Tx1で示す。以下、出力ドライバTx1と呼ぶ。)とで構成されている。
固体撮像素子201は、PIX部201a(PIX)と、信号処理回路201b(COL_ADC)とで構成されている。
【0029】
PIX部201aは、複数個(m×n個;例えば
図2に示すm=4、n=8)のピクセルPからなる。すなわち、
図2において、光電変換素子を含む単位画素(以下、単に「ピクセル」と記す)Pは、行列状(マトリックス状)にm×n個、2次元配置されることにより複数の画素アレーからなるPIX部201aを構成している。
【0030】
信号処理回路201bは、PIX部201aのピクセルPを列毎に並列処理するA-D(アナログ-デジタル)変換回路により、ピクセルPから出力されるアナログ信号を、画素の固定パターンノイズを抑圧しながらデジタル信号に変換して出力する、いわゆるカラムADC(Analog Digital Converter)方式のものである。この信号処理回路201bが生成、出力するデジタル信号を、
図1においては撮像データPIX_DATAと表している。撮像データPIX_DATAは、例えばピクセルP毎にpビットの撮像データとして表される。
【0031】
クロック生成器202は、撮像データPIX_DATAと撮像データを含んだテストデータPIX_DATA(TEST_DATA)(以下テストデータTEST_DATAと呼ぶ)とが入力され、pビットのデータをシリアルにCK<3>およびCK<4>として出力する。CK<3>とCK<4>とは、互いに排他的な関係にある信号であり、例えばCK<3>が「10101010」(p=8ビットの場合)であれば、CK<4>は「01010101」となるデジタル信号(差動形式のシリアル信号とも言うことができる)である。
【0032】
出力ドライバTx1は、入力信号CK<3>が入力されるスイッチSW3と、入力信号CK<4>が入力されるスイッチSW4とで構成される。出力ドライバTx1は、この2つの入力信号を一対の差動信号にして、パッドP1およびパッドM1から一対の差動信号伝送線(2本のケーブルCABLEP、CABLEM)へ出力する。そして、一対の差動信号は、差動信号伝送線によって接続される情報処理ユニット3のパッドP2およびパッドM2を通じて、情報処理ユニット3のデエンファシス回路301へ出力される。
【0033】
ここで、スイッチSW3は、基板電圧VSSとパッドP1との間に設けられており、CK<3>が「1」のとき基板電圧VSSとパッドP1とを導通し、CK<3>が「0」のとき基板電圧VSSとパッドP1とを非導通とする。また、スイッチSW4は、基板電圧VSSとパッドM1との間に設けられており、CK<4>が「1」のとき基板電圧VSSとパッドM1とを導通し、CK<4>が「0」のとき基板電圧VSSとパッドM1とを非導通とする。
【0034】
例えば、後述する出力ドライバTx1への電力供給源としてのデエンファシス回路301(DEEMPH)が、出力ドライバTx1に対する参照電圧VCMとして1Vの電圧を供給するときを考える。このとき、CK<3>が「0」、CK<4>が「1」の場合、パッドP1の電圧は1V、パッドM1の電圧は0Vとなる。一方、CK<3>が「1」、CK<4>が「0」の場合、パッドP1の電圧は0V、パッドM1の電圧は1Vとなる。すなわち、出力ドライバTx1が出力するシングルエンド表記の差動信号の振幅は1V、(差動表記の場合は2V)となる(詳細な動作については、デエンファシス回路301についての説明の後に詳述する)。
【0035】
<情報処理ユニット3の構成について>
情報処理ユニット3は、デエンファシス回路(DEEMPH)301と、レシーバ302(Rx1で示す。以下、レシーバRx1と呼ぶ。)と、DSP303(エラー判定部)と、参照電圧生成器304(電圧生成器)と、LDO(Low Drop Out)305とから構成される。
【0036】
LDO305は、所定の直流電圧を降圧して、降圧後の直流電圧VDD(VDD_ANA)を、パッドV2、ケーブルCABLE_VDD、パッドV1の経路を通して、カメラユニット2の固体撮像素子201に対して電源電圧VDDを供給する。なお、基板電圧VSSは、パッドS2、ケーブルCABLE_VSS、パッドS1の経路を通して、カメラユニット2の基板電圧VSSとなっている。
【0037】
参照電圧生成器304(電圧生成器)は、LDO305が降圧した電源電圧VDDを、DSP303の指示により降圧し、参照電圧VCMを生成し、生成した参照電圧VCMをデエンファシス回路301に対して供給する。
【0038】
レシーバRx1は、パッドP2およびパッドM2で差動増幅信号として受信した撮像データPIX_DATAおよび撮像データを含んだPIX_DATA(TEST_DATA)を二値化するための回路である。
【0039】
DSP303は、二値化された撮像データPIX_DATAを処理する。この処理は、階調補正処理等の処理後の撮像データPIX_DATAをモニタ30(
図1で図示したが
図2では不図示である)で表示可能な形式に変換する処理を含む。
なお、二値化されたテストデータTEST_DATAの処理については、第2の実施形態において詳述する。
【0040】
デエンファシス回路301は、容量素子CEQPと、抵抗素子REQP2と、抵抗素子REQP1と、抵抗素子REQP3と、コイルLEQPと、容量素子CEQMと、抵抗素子REQM2と、抵抗素子REQM1と、抵抗素子REQM3と、コイルLEQMとから構成される。
容量素子CEQPは、パッドP2を一端とし、レシーバRX1の非反転入力端子を他端とする。
抵抗素子REQP2は、容量素子CEQPと同じくパッドP2を一端とし、レシーバRX1の非反転入力端子を他端とする。
抵抗素子REQP1は、抵抗素子REQP2の一端を一端とし、コイルLEQPの他端を他端とする。
抵抗素子REQP3は、抵抗素子REQP2の他端を一端とし、コイルLEQPの他端を他端とする。
コイルLEQPの一端には、参照電圧VCMが入力される。
【0041】
また、容量素子CEQMは、パッドM2を一端とし、レシーバRX1の反転入力端子を他端とする。
抵抗素子REQM2は、容量素子CEQMと同じくパッドM2を一端とし、レシーバRX1の反転入力端子を他端とする。
抵抗素子REQM1は、抵抗素子REQM2の一端を一端とし、コイルLEQMの他端を他端とする。
抵抗素子REQM3は、抵抗素子REQM2の他端を一端とし、コイルLEQMの他端を他端とする。
コイルLEQMの一端には、参照電圧VCMが入力される。
【0042】
以上の構成により、デエンファシス回路301は、特許文献1に開示されたイコライザとしての働きに加え、基板電圧VSSと、基板電圧VSSよりも高く電源電圧VDDよりも低い参照電圧VCMによって、出力ドライバ203が出力する差動信号の振幅を制御する、振幅制御器としての働きも行う。
【0043】
すなわち、
図2に示す情報処理ユニット3のデエンファシス回路301は、カメラユニット2の出力ドライバTx1の出力する一対の差動信号生成に必要なエネルギーの一部または全部を、デエンファシス回路301に接続されたデジタル信号線(差動信号伝送線(ケーブルCABLEPとケーブルCABLEM))から出力ドライバTx1へ供給できる。つまり、出力ドライバTx1を搭載したカメラユニット2を供給することにより、専用の電源線を追加することなく電源電圧VDDよりも低い参照電圧VCMを出力ドライバTx1に供給できるため、信号品質を確保しつつ、出力ドライバTx1の消費電力を削減できる。
図2に示す第1の実施形態では、デエンファシス回路(DEEMPH)301の入力端子(コイルL
EQPおよびコイルL
EQMの一端)から参照電圧VCMが入力できる構成になっており、この電圧が、出力ドライバTx1の電力供給源となっている。
【0044】
ここで、出力ドライバTx1の出力する振幅は、VCMと、(VCM-VSS)×(RON/(RON+RCABLE+ZEQP,M))との差電圧で与えられるため、VSS=0とした場合、実際の差電圧(振幅)は、VCM×{1-(RON/(RON+RCABLE+ZEQP,M))}となる。
なお、上記式において、RONはSW3およびSW4のオン抵抗(CK<3>またはCK<4>が「1」の場合にSW3およびSW4が導通するときのオン抵抗)を示している。また、RCABLEは差動信号伝送線(ケーブルCABLEPとケーブルCABLEM)の抵抗を示している。また、ZEQP,Mはデエンファシス回路301のインピーダンスを示している。
【0045】
したがって、RON=RCABLE+ZEQP,M=50Ωとした場合、VCM=700mVであれば、従来技術における「LVDSドライバ」と同じ信号振幅が得られる。LVDSは規格で回路電流3.5mAと決まっているので、100Ω終端時(50Ω終端が正側と負側で直列に接続されている場合)にシングルエンド表記で350mV、差動表記で700mVの信号振幅が得られる。
【0046】
この動作に必要なカメラユニット2内の消費電力は、スイッチSW3またはスイッチSW4で生じる電圧降下分の損失のみであり、以下の式で与えられ、回路電流3.5mAのLVDSドライバにおける試算に比べて大きく消費電力を低減できることがわかる。
P=V2/RON=(0.7/2)2/50W=2.45mW
ここで、上記式において、VはVCM/2で算出される電圧値であり、V={RON/(RON+RCABLE+ZEQP,M)}×VCM=VCM/2より導かれる。
【0047】
また、回路電流3.5mA(=Iとする)のLVDSドライバにおける試算とは、画素部(PIX部201a)の撮像性能を確保するために必要とされるVDD=3.3V程度の電圧を参照電圧VCMとして供給した場合、カメラユニット2のLVDSドライバ(出力ドライバTX1に対応する出力ドライバ)の出力電流を供給するカメラユニット2側の発熱量がP=I×V=3.5mA×3.3V=11.55mWに達するという試算である。
【0048】
従って、カメラユニット2の出力ドライバTx1の出力する一対の差動信号生成に必要なエネルギーを、情報処理ユニット3のデエンファシス回路301に接続されたデジタル信号線(差動信号伝送線(ケーブルCABLEPとケーブルCABLEM))から供給することにより、電源電圧VDDよりも低い参照電圧VCMを出力ドライバTx1に供給するための電源線を追加することなく、信号品質を確保しつつ、出力ドライバTx1の消費電力を削減できる。
すなわち、本実施形態の撮像システム1は、スコープ10の省線化と、省電力化を両立することができる。
【0049】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について、引き続き
図1を参照しつつ説明する。
第2の実施形態においては、情報処理ユニット3が、外部治療デバイスと接続または通信可能であり、外部治療デバイスが動作しているとき(以下、第2の動作モードとする)、参照電圧生成器304が生成する参照電圧VCMを外部治療デバイスが動作していないとき(以下、第1の動作モードとする)よりも高く設定する。
【0050】
ここで、「外部治療デバイス」とは、超音波メス等の超音波凝固切開装置や電気メス等の高周波電流発生装置といった各種の処置具のことである。また、
図1に示す、操作部14から挿入部11を通るという目的で設けられたチャンネルであって、当該チャンネルが「外部治療デバイス」を挿入部11の先端まで通すために設けられている。このようなチャネルが設けられていることにより、内視鏡(カメラユニット2)を用いた観察と処置具による処置とが一体的に行われ得る。
また、「第1の動作モード」とは、「外部治療デバイス」が動作していない、カメラユニット2を用いた撮影モード動作時を言う。また、「第2の動作モード」とは、「外部治療デバイス」が動作している、治療モード動作時を言う。
【0051】
そして、カメラユニット2は、予め定められたデータパターンを有するテストデータを出力するテストデータ生成回路208を有する。カメラユニット2は、撮像データPIX_DATAを出力する第3の動作モードと、予め定められたテストデータTEST_DATAとを出力する第2の動作モードとで動作可能である。また、情報処理ユニット3におけるDSP303は、レシーバRx1により2値化されたテストデータTEST_DATAのエラーレートに応じて、参照電圧生成器304の出力電圧VCMを制御するための指示信号を参照電圧生成器304に出力する。
なお、第3の動作モードと、第2の動作モードとは所定の周期で交互に切り替わり、第2の動作モード期間中にレシーバRx1が受信したテストデータTEST_DATAのエラーレートが、所定の値よりも高い場合に、DSP303は参照電圧生成器304の出力電圧VCMが高くなるような制御信号(指示信号)を参照電圧生成器304に出力する。また、参照電圧生成器304は、第3の動作モードにおいては、第1の電圧値VCM1を有し、第2の動作モードにおいては、第1の電圧値VCM1より高い第2の電圧値VCM2を有している。
【0052】
すなわち、情報処理ユニット3は、テストデータ生成回路208が送信するテストデータTEST_DATAのエラーを判定するDSP303(エラー判定部)を有し、エラーの判定結果に応じて参照電圧生成器304が生成する参照電圧VCMを変化させる。また、情報処理ユニット3のDSP303(エラー判定部)は、エラーレートが所定の値より高い場合に、参照電圧生成器304(電圧生成器)が生成する参照電圧VCMを高く設定する。
【0053】
これにより、本実施形態における撮像システム1では、外乱雑音が大きくなる治療モード動作時(第2の動作モード)に、参照電圧VCMとして第2の電圧値VCM2を印加することにより、一時的に撮像データの振幅を大きく出来る。したがって、イメージセンサで生じる発熱量の増加を最小限に抑えつつ、伝送エラーを抑えたデータ転送が可能にすることができる。
【0054】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について、
図3および
図4を参照しつつ説明する。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る撮像システムの構成例を示すブロック図である。また、
図4は、本発明の第3の実施形態に係る撮像システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。
図3は、双方向差動通信回路のブロック図を示している。ここで、「双方向差動通信」とは、
図3に示すカメラユニット2における出力ドライバ203が送信する差動信号を情報処理ユニット3におけるレシーバRx1が受信する下り通信モードと、情報処理ユニット3における出力ドライバ306が送信する差動信号をカメラユニット2におけるレシーバ204が受信する上り通信モードとの双方向通信において、差動信号を用いて通信することを言う。なお、出力ドライバ203は、
図3においてTx1’で示す。以下、出力ドライバTx1’と呼ぶ。また、出力ドライバ306は、
図3においてTx2で示す。以下、出力ドライバTx2と呼ぶ。また、レシーバ204は、
図3においてRx2で示す。以下、レシーバRx2と呼ぶ。
【0055】
また、
図4は、双方向通信の過渡応答シミュレーション結果を示している。なお、
図4に示すVOUTP、VOUTMとは、それぞれカメラユニット2におけるパッドP1およびパッドM1に表れる差動信号を示している。
また、
図3において
図1に示す構成と同一あるいは対応する構成には同一の数字の符号または同一の数字に英字を付加した符号を付けて説明を適宜省略する。
【0056】
図4に示すとおり、下り通信モード期間中、出力ドライバTx1’を構成するスイッチSW1~SW4は、クロックCK<1>~CK<4>により断続的にスイッチングされる。
また、上り通信モード期間中、スイッチSW3、SW4はオフするのに対し、スイッチSW1、SW2はオンし続けてレシーバRx2のターミネーション抵抗となる。また、同時に、スイッチSW1、SW2は夫々約50Ωの抵抗値を有しており、レシーバRx1の入力端に接続されたRTERMP、RTERMNと同じ働きをして、出力ドライバTx2に対するリターン電流パスを形成する。
また、
図4に示す上り通信モードから下り通信モードへの切り替えが時刻t1に行われると、VOUTP、VOUTMのスイッチングが停止する。ここで、
図4では簡略な説明のためDIRにより、通信方向の制御が行われているが、実際は、上り信号、下り信号、の終わりに、データ送信の終了を知らせるためのデータが含まれており、それを情報処理ユニット3/カメラユニット2が受信することにより、実際の通信方向が変化する。
また、同時刻(時刻t1)に出力ドライバTx2からの信号送信は開始されているが、この信号がレシーバRx2に到達する時刻t2までの期間、このノードの信号は静定している。時刻t2に出力ドライバTx2からの信号がレシーバRx2に到達すると、VOUTP、VOUTM端子(それぞれ
図3においてパッドP1、パッドM1で示す)にスイッチング波形が再び現れる。
【0057】
図3に示す撮像システム1では、振幅調整が可能な出力ドライバTx1の出力する信号振幅を、十分な振幅で動作する「通常動作モード」と、通常動作モードにおける振幅より低い(振幅ゼロを含んだ)振幅で動作する「エラー通知モード」の両方のモードで動作できるような参照電圧(VCMあるいはVCM’)をデエンファシス回路301に供給できるような参照電圧生成器304を有する撮像システム1を供給することにより、電源を切断することなく、自由度の高いカメラユニット2のリセットが可能となる。
ここで、参照電圧VCMとは、第1、第2の実施形態において説明した第1の電圧値VCM1(所定値)である。また、参照電圧VCM’とは、電圧値VCM1より低い電圧値であって、撮像システム1において、詳細は後述するが、「下り通信モード」においては、デエンファシス回路DEEMPHがエラー通知を表す信号を出力し、DSP303が参照電圧生成器304の出力をVCM’に設定する、また、「上り通信モード」においては、VCM’に設定されることによりカメラユニット2のリセットが可能になる、すなわち、かかる双方向通信が可能となる電圧値である。これは、後述するコモンモード検出器205(Rx3で示す。以下、コモンモード検出器Rx3と呼ぶ)が比較に用いるスライス電圧VSLが、下記式を満たすことにより比較が可能となるためである。
参照電圧VCM’=スライス電圧VSL×2<電圧値VCM1
この比較処理の詳細については後述する。
【0058】
以上説明した動作を可能とするために、クロック生成器202、出力ドライバTx1’、コモンモード検出器Rx3は、以下のような構成を有する。
クロック生成器202は、「通常動作モード」と「エラー通知モード」における「下り通信モード」において動作する。クロック生成器202は、撮像データPIX_DATA、撮像データを含んだテストデータPIX_DATA(TEST_DATA)、通信方向制御信号DIRが入力され、pビットのデータをシリアルにCK<1>~CK<4>として出力する。CK<3>およびCK<1>とCK<4>およびCK<2>とは、互いに排他的な関係にある信号であり、例えばCK<3>およびCK<1>が「10101010」(p=8ビットの場合)であれば、CK<4>およびCK<2>は「01010101」となるデジタル信号(差動形式のシリアル信号とも言うことができる)である。
【0059】
なお、通信方向制御信号DIRは、上述の通り、上り信号、下り信号、の終わりに、データ送信の終了を知らせるためのデータが含まれており、それを情報処理ユニット3/カメラユニット2が受信することにより、実際の通信方向が変化するとあるが、本実施形態においては、クロック生成器202が
図4に示す通信方向制御信号DIRを出力し、上り或いは下りの通信方向を情報処理ユニット3に対して送信するものとする。
【0060】
図3に示す出力ドライバTx1’は、電圧VDDIFに接続されたテール電流源ITAILと、入力信号CK<1>が入力されるスイッチSW1と、入力信号CK<2>が入力されるスイッチSW2と、入力信号CK<3>が入力されるスイッチSW3と、入力信号CK<4>が入力されるスイッチSW4と、で構成される。
【0061】
出力ドライバTx1’は、「通常動作モード」と「エラー通知モード」における「下り通信モード」および「上り通信モード」において動作する。
このうち、「下り通信モード」において、出力ドライバTx1は、第1の実施形態において述べたのと同様に、クロック生成器202が出力する4つの入力信号を、一対の差動信号にして、パッドP1およびパッドM1から一対の差動信号伝送線(2本のケーブルCABLEP、CABLEM)へ出力する。そして、一対の差動信号は、差動信号伝送線によって接続される情報処理ユニット3のパッドP2およびパッドM2を通じて、情報処理ユニット3のデエンファシス回路301へ出力される。
【0062】
一方、「上り通信モード」において、出力ドライバTx1’は、第1の実施形態において述べたのと同様に、スイッチSW3、スイッチSW4がオフした状態で、スイッチSW1、スイッチSW2がオンするために、スイッチSW1、スイッチSW2が出力ドライバTx2からの信号を受信するためのターミネーション抵抗となると同時に、出力ドライバTx2に対するリターン電流の経路を確保するための素子として機能するために、出力ドライバTx2から出力された一対の差動信号は、レシーバRx2で正しく受信され、イメージャクロック生成部206へ出力される。なお、レシーバRx2の出力信号SYSDATA(カメラユニット2の受信データ)については後に詳述する。
【0063】
コモンモード検出器Rx3は、
図3に示す抵抗素子R1と抵抗素子R2とともに、「下り通信モード」において、情報処理ユニット3のデエンファシス回路DEEMPHが出力する信号が、エラー通知を表す信号であるか否かを判定する回路であり、判定結果に応じて、エラー検出フラグERR_DETECTをタイミングジェネレータTGに出力する。
なお、デエンファシス回路DEEMPHがエラー通知を表す信号を出力するのは、DSP303における、モニタ30で表示可能な形式に変換された処理後の撮像データをモニタ30で表示可能な形式に変換する処理において、撮像データPIX_DATAにおいて、諧調が全て暗い、あるいは明るいといった撮像の不具合が発生している場合である。このような場合に、DSP303からの指示により、参照電圧生成器304の出力をVCM1(所定値)から、VCM1より低い値であるVCM’(0Vを含んだ値)に設定する。
【0064】
抵抗素子R1は、一端がパッドP1に接続され、他端が抵抗素子R2の他端に接続される。抵抗素子R2は、一端がパッドM1に接続され、他端が抵抗素子R1の他端に接続される。すなわち、抵抗素子R1および抵抗素子R2は、両抵抗の接続点(抵抗素子R1および抵抗素子R2の他端)から、パッドP1とパッドM1の電圧(一対の差動信号の電圧)の中間電圧VMIDをコモンモード検出器Rx3の第1入力端子(反転入力端子)に出力する。
【0065】
すなわち、抵抗素子R1および抵抗素子R1で構成され、中間電圧VMIDをコモンモード検出器Rx3へ出力する回路を中間電圧測定回路と呼ぶ。
また、コモンモード検出器Rx3は、その第2入力端子(非反転入力端子)に、スライス電圧VSLが入力され、中間電圧VMIDとスライス電圧VSLとの比較・判定を行って、エラー検出フラグERR_DETECTを出力するコンパレータ回路である。
【0066】
ここで、コモンモード検出器Rx3の動作について説明する。
コモンモード検出器Rx3は、VSS=0よりも高く、0.5×VCM1よりも小さな値に設定されたスライス電圧VSLと、中間電圧VMIDとを比較し、VSL>VMIDとなった場合にエラー検出フラグERR_DETECTが「L」から「H」に遷移するという目的で設計されている。
したがって、VCM=VCM1が設定される「通常動作モード」動作時にはVMID=0.5×VCM1であるから、ERR_DETECT=「L」である。これに対し、VCM=0に設定される「エラー通知モード」動作時には、VMID=0となり、ERR_DETECT=「H」に遷移する。
【0067】
また、上記説明は「0<VSL<0.5×VCM1」の範囲にスライス電圧VSLが設定されていれば、任意のRONの値について成立し、前述した作用および効果を得ることができる。すなわち、上記式は、0<参照電圧VCM’=スライス電圧VSL×2<電圧値VCM1で表されるので、「カメラユニット2が、参照電圧VCMが所定値VCM1より低い値VCM’に降下したことを検出する」こと、「コモンモード検出器Rx3が、中間電圧VMIDが所定値VCM1に対応する第1の所定値0.5×VCM1を下回り、スライス電圧VSL=参照電圧VCM’x0.5となったことを判定する」ことは、可能である。
【0068】
すなわち、通常の通信を実行する場合には参照電圧生成器304の出力をVCM1(所定値)に設定し、エラー通知によるカメラユニット2の動作変更(後述するリセット動作またはエラーリカバリ動作への変更)が必要な場合には参照電圧生成器304の出力をVCM1より低い値であるVCM’(0Vを含んだ値)に設定することにより、自由度の高いカメラユニット2のリセットが可能となる。
【0069】
続いて、
図3に記載されたカメラユニット2を構成するイメージャクロック生成部206のより詳細な構成および動作について、
図5および
図6を援用して説明する。
図5は、
図3に記載されたイメージャクロック生成部IMG_CLKの構成を示す図である。また、
図6は、
図3に記載されたイメージャクロック生成部IMG_CLKの主要ノードの論理状態を示すためのタイミングチャートである。
イメージャクロック生成部206は、クロックデータリカバリ部206aと、レジスタ部206bと、デジタル-アナログ変換器206cと、電圧制御発振器206d(以下、電圧制御発振器VCO_IMCLKと呼ぶ)より構成されている。
なお、イメージャクロック生成部206は、
図5においてIMG_CLKで示す。以下、イメージャクロック生成部IMG_CLKと呼ぶ。また、クロックデータリカバリ部206aは、
図5においてCDRで示す。以下、クロックデータリカバリ部CDRと呼ぶ。また、レジスタ部206bは、
図5においてレジスタ部REGで示す。以下、レジスタ部REGと呼ぶ。また、デジタル-アナログ変換器206cは、
図5においてDACで示す。以下、デジタル-アナログ変換器DACと呼ぶ。
【0070】
電圧制御発振器VCO_IMCLKは、入力された制御電圧VCTRLに応じた周波数で発振するイメージャクロックIMCLKをタイミングジェネレータTG(
図3において、TG207で示している)に出力する。即ち、カメラユニット2は、イメージャクロックIMCLKに同期した動作を実行する。
デジタル-アナログ変換器DACは、入力されたレジスタ値REG_VAL(デジタル信号)に応じた制御電圧VCTRL(アナログ信号)を出力する。
レジスタ部REGには、クロックデータリカバリ部CDRから入力されたCDRクロックCDRCLKに同期して入力されるレジスタデータRE_DATAが入力され、レジスタデータRE_DATAの値がレジスタ部REGに保持される。
【0071】
イメージャクロック生成部IMG_CLKには、データの遷移タイミングを検出するためのクロックエッジを有するクロックリカバリシンボルを所定の周期で有する受信データSYSDATA(一般に8b/10b、マンチェスタ符号化信号等が知られている。)が入力される。
クロックデータリカバリ部CDRは、受信データSYSDATAと、CDRクロックCDRCLKの立ち下がりクロックの位相を同じにするという目的で位相調整を実行する(
図6において、時刻t2、t6の線を参照)。
【0072】
位相・周波数比較器PDは、CDRクロックCDRCLKの立ち上がりエッジタイミング(
図6において、時刻t2、t3、t4、t5の線を参照)で受信データSYSDATAの値をサンプリングし、CDRクロックCDRCLKと同期したリタイミングデータRE_DATAとして、レジスタ部REGに出力する。
レジスタ部REGに保持されたデータは、カメラユニット2内部の動作モード等の設定に用いられる。
【0073】
ここで、通信方向の切替動作について説明する。
情報処理ユニット3側からシステムライン終了コマンド(例えば1011)が送信され、リタイミングデータRE_DATAとしてこの値が検出されると、下り通信モード(
図4の時刻0~t1で示す)に移行し、カメラユニット2は、デジタル映像信号(撮像データPIX_DATA)を情報処理ユニット3側に出力する。
下り通信モードが開始すると、
図5に示すスイッチSWがオフし、ループフィルタLFの電圧が保持されるため、下り通信モード期間中に電圧制御発振器VCO_CDRに対する供給電圧が一定となり、この期間中のCDRクロックCDRCLKの周波数は一定に保たれる。
カメラユニット2は、1ライン分のデジタル映像信号(撮像データPIX_DATA)を情報処理ユニット3側に出力した後に、イメージャライン終了コマンド(例えば「0100」)をシステム側に出力し終えると、再び上り通信モードに再移行する。
上り通信モードではスイッチSWが再び短絡され、SYSDATAに基づくCDRCLKの周波数ロック(再調整)動作と、SYSDATAの抽出動作が実行される。
【0074】
図3に戻って、TG207(タイミングジェネレータTG)は、例えば、次に例示した、リセット動作またはエラーリカバリ動作を実行する。すなわち、TG207は、コモンモード検出器Rx3が出力するエラー検出フラグERR_DETECTが出力されている時間を、イメージャクロック生成部206が出力するIMGCLKに基づいて計測する。これにより、TG207は、下記(1)~(4)に記したERR_DETECT=「H」の期間に応じて異なるリセット動作またはエラーリカバリ動作を実行する。
(1)ERR_DETECT=「H」の期間が1ライン分の読み出し期間(1ライン分のIMGCLKのクロック数)に相当する場合には、2ライン分のスキップ読み出しを行ってもよい。
(2)ERR_DETECT=「H」の期間が2ライン分の読み出し期間に相当する場合には、TG(TG207)内の所定のカウンタの値を初期化してもよい。
(3)ERR_DETECT=「H」の期間が3ライン分の読み出し期間に相当する場合には、オンチップレジスタREG(レジスタ部206b)の値を初期化してもよい。
(4)ERR_DETECT=「H」の期間が4ライン分の読み出し期間に相当する場合には、通信トレーニングフェーズに移行してもよい。
【0075】
すなわち、情報処理ユニット3のエラー判定部(DSP303)は、固体撮像素子201が送信する撮像データ(PIX_DATA)について所定の条件でエラー判定をした場合に、参照電圧VCMを所定値(VCM1)より低い値(VCM’)に降下させる。これに伴って、カメラユニット2は、参照電圧VCMが所定値(VCM1)より低い値に降下したことを検出してリセット動作またはエラーリカバリ動作を実行する。また、カメラユニット2は、差動信号伝送線の中間電圧VMIDを測定する中間電圧測定回路(抵抗素子R1および抵抗素子R2)を有し、中間電圧VMIDが所定値(VCM1)に対応する第1の所定値(0.5×VCM1)を下回ったときにリセット動作またはエラーリカバリ動作を実行する。また、カメラユニット2(におけるTG207)は、中間電圧VMIDが所定値(VCM1)に対応する第1の所定値(0.5×VCM1)を下回った所定時間(ERR_DETECT=「H」の期間)に応じて、リセット動作またはエラーリカバリ動作の内容を決定する。
【0076】
これにより、本実施形態における撮像システム1では、スコープの省線化を実現し、省電力化を実現するとともに、電源を切断することなく、自由度の高いカメラユニット2のリセット(リセット動作またはエラーリカバリ動作)が可能となる。
【0077】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について、
図7を参照しつつ説明する。
図7は、本発明の撮像システムの構成例を示すブロック図である。
図7に示す撮像システム1は、
図3に示す撮像システム1を簡略化して記載した図であり、構成する各部には同一の符号を付しており、その説明については適宜省略しながら説明する。
情報処理ユニット3は、下り通信モードにおいて、参照電圧生成器304(電圧生成器)が生成する参照電圧VCMを第1の値(所定値:VCM1)に設定し、上り通信モードにおいて、参照電圧生成器304が生成する参照電圧VCMを第2の値(VCM2あるいはVCM’)に設定し、第1の値と第2の値は異なる値に設定される。
【0078】
これにより、上り通信フェーズにおける参照電圧VCMをレシーバ204(受信器Rx2)の性能が最も高くなるような動作電圧に設定できるため、高速な上り信号に対しても、Rx2は確実に動作する。即ち、従来よりも外乱雑音に対して堅牢な内視鏡システム(撮像システム)を供給できる。
【0079】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について、
図7を参照しつつ説明する。
図7に示す情報処理ユニット3は、
図1を用いて、第2の実施形態において説明した情報処理ユニット3と同様に、外部治療デバイスと接続または通信可能であり、外部治療デバイスが動作しているとき(第2の動作モードのとき)、参照電圧生成器304が生成する参照電圧VCMを外部治療デバイスが動作していないとき(第3の動作モードのとき)の電圧値VCM1よりも高く電圧値VCM2に設定する。
【0080】
これにより、外乱雑音が大きくなる治療モード動作時に、参照電圧VCMとして電圧値VCM2(第2の電圧値)を印加することにより、一時的に撮像データの振幅を大きく出来る。したがって、カメラユニット2(イメージセンサ)で生じる発熱量の増加を最小限に抑えつつ、伝送エラーを抑えたデータ転送が可能になる。
【0081】
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態について、
図7を参照しつつ説明する。
カメラユニット2は、カメラユニット2の温度を測定して、情報処理ユニット3に送信する温度センサ(
図7においては不図示)をさらに有している。
情報処理ユニット3は、測定温度が所定の温度より高くなった場合に、参照電圧VCMをVCM1より低い値VCM1’(<VCM1)に低く設定する。カメラユニット2の温度は、デエンファシス回路の参照電圧VCMに影響される。参照電圧VCMが高くなると、カメラユニット2の温度も上昇し、人体やチップ性能に与える悪影響を与えるおそれがある。本実施形態では、カメラユニット2(イメージセンサ)の温度が人体やチップ性能に影響を与える所定の温度より高くなった場合に、参照電圧VCMをVCM1より低い値VCM1’(<VCM1)に低く設定する。
【0082】
これにより、カメラユニット2(イメージセンサ)の温度が人体やチップ性能に与える悪影響を許容できる範囲内で、下り通信フェーズに送信する信号振幅を大きく出来るため、従来よりも外乱雑音に対して堅牢な内視鏡システムを供給できる。
【0083】
<第7の実施形態>
次に、第7の実施形態について、
図7を参照しつつ説明する。
図7に示すカメラユニット2は、
図3を用いて、第3の実施形態において説明したカメラユニット2と同様に、情報処理ユニット3から差動信号伝送線によってデータを受信するレシーバ204(受信ドライバ)をさらに有している。また、撮像システム1は、出力ドライバ203(Tx1’)から情報処理ユニット3へデータが送信される下り通信モードと、情報処理ユニット3からレシーバ204へデータが送信される上り通信モードとが切替え可能である。
出力ドライバTx1’は、SW1(第1スイッチ)、SW2(第2スイッチ)、SW3(第3スイッチ)、SW4(第4スイッチ)を有している。
出力ドライバTx1’は、下り通信モードにおいて、SW1とSW3、SW2とSW4をそれぞれ同時にON/OFFして撮像データを差動信号として出力する。すなわち、出力ドライバTx1’は、SW1とSW3とをオン(ON)させるとき、SW2とSW4とをOFF(オフ)させ、SW1とSW3とをOFFさせるとき、SW2とSW4とをONさせる。また、出力ドライバTx1’は、上り通信モードにおいて、SW1、SW2をON、SW3、SW4をOFFして、差動信号の伝送路を形成して、SW1、SW2が上り通信モードにおけるターミネーション抵抗の一部となる。
【0084】
これにより、上り通信モードにおいてSW1、SW2がターミネーション抵抗を構成することで、カメラユニット2内にターミネーション抵抗を別途設ける必要が無くなり、カメラユニット2が小型化された撮像システム(内視鏡システム)を提供することができる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態およびその変形例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0086】
上記各態様の撮像システムによれば、スコープの省線化を実現するとともに、省電力化を実現することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 撮像システム
2 カメラユニット
3 情報処理ユニット
201 固体撮像素子
202 クロック生成器
203,306 出力ドライバ
204,302 レシーバ
205 コモンモード検出器
206 イメージャクロック生成部
207 TG
208 テストデータ生成回路
301 デエンファシス回路
303 DSP
304 参照電圧生成器
305 LDO