(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】防災システム
(51)【国際特許分類】
G08B 27/00 20060101AFI20220307BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
G08B27/00 B
G08B17/00 F
(21)【出願番号】P 2021027518
(22)【出願日】2021-02-24
(62)【分割の表示】P 2017170093の分割
【原出願日】2017-09-05
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 洋巳
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-257244(JP,A)
【文献】特開2017-033242(JP,A)
【文献】国際公開第2007/096969(WO,A1)
【文献】特開2017-146771(JP,A)
【文献】松崎 頼人,スマートホームを利用した津波避難支援システム,情報処理学会 研究報告 数理モデル化と問題解決(MPS) 2013-MPS-096 [online] ,日本,情報処理学会
【文献】山本 友理 Yuri YAMAMOTO,歩行者用道路上におけるリアルタイムな混雑情報の取得・提供手法 The acquisition and offer method of the real time congestion information on the road for pedestrians,情報処理学会研究報告 Vol.2004 No.44 IPSJ SIG Technical Reports,日本,社団法人情報処理学会 Information Processing Society of Japan,第2004巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物における異状の発生又は異状の発生の可能性を示す異状情報を受信する異状情報受信部と、
前記異状情報受信部により異状情報が受信されると、前記建物の在館者が携帯する携帯端末の各々から、当該携帯端末の現在の位置と、当該現在の位置よりも所定時間前に測定された過去の位置とを示す移動情報を取得する移動情報取得部と、
前記移動情報取得部により移動情報が取得されると、取得された移動情報が示す現在の位置に最も近い避難経路を特定し、取得された移動情報が示す現在の位置と過去の位置の差分を前記所定時間により除することで移動速度を算出し、かつ、算出した移動速度に基づいて混雑度を特定することにより、前記建物の複数のエリアの各々に設定された避難経路について混雑度を特定する混雑度特定部と、
前記複数のエリアのうち、前記混雑度特定部により特定された混雑度に基づいて、避難支援メッセージを放送するエリアを特定する放送対象エリア特定部と、
前記放送対象エリア特定部により特定されたエリアに設置されたスピーカから前記避難支援メッセージを音声出力させる放送制御部と
を備える防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災等の異状発生時に在館者の避難を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災発生時に在館者に対して避難経路を案内するための案内システムが知られている。例えば、特許文献1には、火災等の非常事態発生を在館者に知らせつつ、その避難を促すことができる、フラッシュ光を用いた警報システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数階からなる建物は、消防法により、原則2方向に避難可能なように建てることが求められている。そのため、そのような建物には原則複数の避難経路が確保されている。しかし、そのような建物において一斉避難時に一方の避難経路に避難者が集中してしまうと、避難経路が渋滞してしまい、円滑な避難が妨げられてしまう。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、火災等の異状発生時に、円滑な避難を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る防災システムは、建物における異状の発生又は異状の発生の可能性を示す異状情報を受信する異状情報受信部と、前記異状情報受信部により異状情報が受信されると、前記建物の在館者が携帯する携帯端末の各々から、当該携帯端末の現在の位置と、当該現在の位置よりも所定時間前に測定された過去の位置とを示す移動情報を取得する移動情報取得部と、前記移動情報取得部により移動情報が取得されると、取得された移動情報が示す現在の位置に最も近い避難経路を特定し、取得された移動情報が示す現在の位置と過去の位置の差分を前記所定時間により除することで移動速度を算出し、かつ、算出した移動速度に基づいて混雑度を特定することにより、前記建物の複数のエリアの各々に設定された避難経路について混雑度を特定する混雑度特定部と、前記複数のエリアのうち、前記混雑度特定部により特定された混雑度に基づいて、避難支援メッセージを放送するエリアを特定する放送対象エリア特定部と、前記放送対象エリア特定部により特定されたエリアに設置されたスピーカから前記避難支援メッセージを音声出力させる放送制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る防災システムによれば、火災等の異状発生時に、円滑な避難を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】防災システム1の構成の一例を示す図である。
【
図5】隊員候補情報データベース721の一例を示す図である。
【
図6】混雑度情報データベース723の一例を示す図である。
【
図7】非常用放送設備9の構成の一例を示す図である。
【
図8】メッセージデータベース921の一例を示す図である。
【
図9】自衛消防隊の編成動作の一例を示すシーケンス図である。
【
図10】混雑度特定動作の一例を示すフロー図である。
【
図11】火災放送動作の一例を示すシーケンス図である。
【
図12】避難支援放送動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施形態
1-1.防災システム1の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る防災システム1の構成の一例を示す図である。防災システム1は、自動火災報知設備2(以下、「自火報設備2」)と、防災支援システム3とを備える。
【0010】
1-1-1.自火報設備2の構成
自火報設備2は、防火対象物である建物に設置される。ここで建物とは、例えば、オフィスビル、商業施設、ホテル、マンション等の集合住宅である。自火報設備2は、建物の各所に設置される火災感知器4と、建物の防災センタに設置される火災受信機5とを備える。火災感知器4と火災受信機5は、信号線を介して接続される。火災受信機5は、直接または通信回線10を介して支援サーバ7及び非常用放送設備9とも接続される。ここで通信回線10は、例えば、インターネットや無線LAN等の通信ネットワークである。自火報設備2は、P型設備であってもR型設備であってもよい。以下の説明では自火報設備2がR型設備であるものとする。
【0011】
1-1-1-1.火災感知器4の構成
火災感知器4は火災感知手段の一例であり、例えば光電式の煙感知器である。火災感知器4は、図示を省略するが、火災時に発生する煙を検知して火災を検出する火災検出部と、火災検出部が火災を検出すると自己の識別情報であるアドレスを含む火災感知信号を火災受信機5に送信する信号送信部とを備える。なお、変形例として、火災感知器4は、熱感知器や炎感知器等の他の種類の感知器であってもよい。
【0012】
1-1-1-2.火災受信機5の構成
図2は、火災受信機5の構成の一例を示す図である。火災受信機5は、制御部51と、記憶部52と、表示部53と、操作入力部54と、第1通信部55と、第2通信部56とを備える。
【0013】
制御部51は、CPU等の演算処理装置とRAM等の揮発性メモリとを備え、記憶部52に記憶されるプログラムを実行する。記憶部52は、HDDやフラッシュメモリ等の記憶装置であり、制御部51により実行されるプログラムと、感知器データベース521を記憶する。感知器データベース521は、図示を省略するが、火災感知器4のアドレスと対応付けて、当該感知器の設置場所の地区番号及び地区名称を格納する。なお、変形例として、記憶部52は外部記憶装置であってもよい。次に、表示部53は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示器である。操作入力部54は、操作ボタンやタッチパネル等の入力装置である。第1通信部55は、火災感知器4と信号線を介して通信を行うための通信インタフェースである。第2通信部56は、支援サーバ7及び非常用放送設備9と通信回線10を介して通信を行うための通信インタフェースである。
【0014】
火災受信機5の制御部51は、記憶部52に記憶されるプログラムを実行することにより、火災感知信号受信部511と、火災判定部512と、火災情報送信部513という機能を実現する。
【0015】
火災感知信号受信部511は、火災感知器4から火災感知信号を受信すると、感知器データベース521を参照して、当該信号に含まれるアドレスに対応する設置場所を特定する。また、火災感知信号受信部511は、図示せぬ発信機から信号線を介して火災信号を受信する。
【0016】
火災判定部512は、火災感知信号受信部511により受信された信号に基づいて火災の発生を判定する。具体的には、2台目の火災感知器4から火災感知信号が受信された場合と、1台目の火災感知器4から火災感知信号が受信されてから一定時間が経過した場合と、発信機から火災信号が受信された場合に、火災の発生を判定する。また、火災判定部512は、操作入力部54を用いて火災確定操作がなされた場合にも火災の発生を判定する。
【0017】
火災情報送信部513は、火災判定部512により火災の発生が判定されると、火災の確定を通知する火災確定信号を支援サーバ7及び非常用放送設備9に送信する。この火災確定信号には、火災の発生場所情報が含まれる。
【0018】
1-1-2.防災支援システム3の構成
防災支援システム3は、複数の携帯端末6と、支援サーバ7と、複数のスピーカ8と、非常用放送設備9とを備える。携帯端末6と支援サーバ7は、通信回線10を介して接続される。スピーカ8と非常用放送設備9は、信号線を介して接続される。なお、変形例として、スピーカ8と非常用放送設備9は、無線の通信回線を介して接続されてもよい。
【0019】
1-1-2-1.携帯端末6の構成
図3は、携帯端末6の構成の一例を示す図である。携帯端末6は、防火対象物である建物の在館者により携帯される端末である。具体的には、スマートフォンや携帯電話機やタブレット端末やウェアラブル端末である。この携帯端末6は、制御部61と、記憶部62と、表示部63と、操作入力部64と、通信部65と、測位部66とを備える。
【0020】
制御部61は、CPU等の演算処理装置とRAM等の揮発性メモリとを備え、記憶部62に記憶されるプログラムを実行する。記憶部62は、フラッシュメモリ等の記憶装置であり、制御部61により実行されるプログラムを記憶する。表示部63は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示器である。操作入力部64は、操作ボタンやタッチパネル等の入力装置である。通信部65は、支援サーバ7と通信回線10を介して通信を行うための通信インタフェースである。測位部66は、周知の屋内測位技術を用いて携帯端末6の現在位置を測定する。例えば、建物の各所に設置されたBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)ビーコン発信機から受信されるビーコン信号の電波強度に基づいて現在位置を測定する。または、Wi-Fi(登録商標)測位やIMES(Indoor Messaging System)を用いて携帯端末6の現在位置を特定してもよい。
【0021】
制御部61は、記憶部62に記憶されるプログラムを実行することにより、情報受信部611と、表示制御部612と、移動速度算出部613と、情報送信部614という機能を実現する。
【0022】
情報受信部611は、支援サーバ7から、役割情報及び移動情報要求を受信する。これらの情報については後述する。
【0023】
表示制御部612は、情報受信部611により受信される役割情報を表示部63に表示させる。
【0024】
移動速度算出部613は、情報受信部611により移動情報要求が受信されると、携帯端末6の移動速度を算出する。ここで移動速度は、測位部66により測定された第1の位置と、第1の位置よりも所定時間前に測定された第2の位置との差分を、所定時間で除することにより算出される。
【0025】
情報送信部614は、情報受信部611により移動情報要求が受信されると、移動情報を支援サーバ7に返信する。この移動情報には、測位部66により測定された携帯端末6の現在位置と、移動速度算出部613により算出された移動速度とが含まれる。
【0026】
1-1-2-2.支援サーバ7の構成
図4は、支援サーバ7の構成の一例を示す図である。支援サーバ7は、防火対象物である建物に設定された避難経路の混雑度を管理するためのコンピュータ装置である。この支援サーバ7は、制御部71と、記憶部72と、通信部73とを備える。
【0027】
制御部71は、CPU等の演算処理装置とRAM等の揮発性メモリとを備え、記憶部72に記憶されるプログラムを実行する。
【0028】
記憶部72は、HDDやフラッシュメモリ等の記憶装置であり、制御部71により実行されるプログラムを記憶する。また、記憶部72は、隊員候補情報データベース721と、隊員情報データベース722と、混雑度情報データベース723とを記憶する。
図5は、隊員候補情報データベース721の一例を示す図である。隊員候補情報データベース721は、自衛消防隊の各役割について隊員候補者の隊員IDを対応付けて格納するデータベースである。具体的には、自衛消防隊の役割と、役割に対して選定される隊員の定数と、隊員選定の際の役割の優先順位と、役割に対して選定される隊員候補の隊員IDとを対応付けて格納する。ここで隊員IDとは、例えば、隊員候補の氏名や隊員候補が携帯する携帯端末6の端末IDである。
【0029】
なおここで、自衛消防隊とは、防火対象物である建物の在館者により構成される自衛組織であって、建物内で発生した異状に対して初期対応を行うための組織である。より具体的には、火災や地震等の災害の発生時に初期対応や応急対策を円滑に行い、建物の利用者の安全を確保するため設置される組織である。自衛消防隊の隊員は、本部隊や地区隊に所属し、各隊員の役割には、例えば、初期消火係、避難誘導係、安全防護係、通報連絡係、応急救護係、非常持出係等がある。
【0030】
次に、隊員情報データベース722は、編成された自衛消防隊の各隊員の情報を格納するデータベースである。具体的には、図示を省略するが、隊員IDと、当該隊員に割り当てられた役割と、当該隊員が担当する階とを対応付けて格納する。
図6は、混雑度情報データベース723の一例を示す図である。混雑度情報データベース723は、防火対象物である建物に設定された避難経路の混雑度を格納するデータベースである。具体的には、建物の階と避難口(非常口)とに対応付けて、当該避難口の場所と、当該避難口付近の混雑度を格納する。ここで、避難口付近とは、具体的には、避難口と、避難口に至る通路(附室を含む)と、避難口近傍の避難階段(非常階段)である。また、混雑度とは、避難者の混雑の度合いである。なお、変形例として、記憶部72は外部記憶装置であってもよい。
【0031】
通信部73は、火災受信機5及び携帯端末6と通信回線10を介して通信を行うための通信インタフェースである。
【0032】
支援サーバ7の制御部71は、記憶部72に記憶されるプログラムを実行することにより、異状情報受信部711と、編成部712と、役割情報送信部713と、移動情報取得部714と、混雑度特定部715と、混雑度情報送信部716という機能を実現する。
【0033】
異状情報受信部711は、防火対象物である建物における異状の発生を示す異状情報を受信する。具体的には、火災受信機5から火災確定信号を受信する。
【0034】
編成部712は、異状情報受信部711により火災確定信号が受信されると、隊員候補情報データベース721を参照して自衛消防隊を編成する。具体的には、隊員候補情報データベース721において優先順位の高い役割から順に、優先順位の高い隊員候補を、定数を満たすまで隊員に選定してゆく。選定された隊員の隊員IDは、割り当てられた役割と担当階とに対応付けられて、隊員情報データベース722に格納される。
【0035】
役割情報送信部713は、編成部712により選定された隊員が携帯する携帯端末6に対して、割り当てられた役割と担当階とを通知する役割情報を送信する。
【0036】
移動情報取得部714は、編成部712により自衛消防隊が編成されると、避難誘導係の隊員が携帯する携帯端末6の移動情報を周期的に取得する。ここで、避難誘導係の移動情報を取得する理由は、避難誘導係は、避難者の隊列の先頭と最後尾に付いて、避難者を避難場所へ誘導する役割であるため、避難誘導係の移動速度を知ることができれば、避難者の移動速度を知ることができると考えられるからである。具体的には、移動情報取得部714は、隊員情報データベース722を参照して避難誘導係の隊員を特定し、特定した隊員が携帯する携帯端末6に対して、移動情報を要求する移動情報要求を送信する。そして、送信した移動情報要求に対する応答として移動情報を受信する。
【0037】
混雑度特定部715は、移動情報取得部714により移動情報が取得されると、取得された移動情報に含まれる位置情報と、混雑度情報データベース723(特に、避難口の場所情報)とを参照して、移動情報を送信した携帯端末6の現在位置に最も近い避難口を特定する。避難口を特定すると、受信された移動情報に含まれる移動速度に基づいて、特定した避難口付近の混雑度を特定する。具体的には、移動速度(時速)が0km以上1km未満の場合には、混雑度「高」と判定し、1km以上3km未満の場合には、混雑度「中」と判定し、3km以上の場合には、混雑度「低」と判定する。なお、この判定基準はあくまで一例であり、混雑度のカテゴリ数と閾値は、適宜設定されてよい。
【0038】
混雑度特定部715は、混雑度を特定すると、特定した混雑度を、特定した避難口と対応付けて混雑度情報データベース723に格納する。すなわち、混雑度特定部715は、異状情報受信部711により火災確定信号が受信された後、防火対象物である建物に設定された複数の避難経路の各々について混雑度を特定する。その際、混雑度特定部715は、建物が複数階からなる建物である場合には、当該建物の各階に設定された複数の避難経路の各々について混雑度を特定する。
【0039】
混雑度情報送信部716は、後述する混雑度特定動作が実行される毎に、混雑度情報データベース723に格納されている各避難口の混雑度情報を、非常用放送設備9に対して送信する。
【0040】
1-1-2-3.スピーカ8の構成
スピーカ8は、防火対象物である建物の各所に設置される。スピーカ8は、非常用放送設備9から音声メッセージを受信して音声出力する。
【0041】
1-1-2-4.非常用放送設備9の構成
図7は、非常用放送設備9の構成の一例を示す図である。非常用放送設備9は、防火対象物である建物内で火災が発生した場合に、火災の発生を知らせる音声メッセージや、在館者の避難を支援するための音声メッセージを、スピーカ8を介して放送するための装置である。この非常用放送設備9は、制御部91と、記憶部92と、第1通信部93と、第2通信部94とを備える。
【0042】
制御部91は、CPU等の演算処理装置とRAM等の揮発性メモリとを備え、記憶部92に記憶されるプログラムを実行する。
【0043】
記憶部92は、HDDやフラッシュメモリ等の記憶装置であり、制御部91により実行されるプログラムを記憶する。また、記憶部92は、メッセージデータベース921と、混雑度情報データベース922と、スピーカ情報データベース923とを記憶する。
図8は、メッセージデータベース921の一例を示す図である。メッセージデータベース921は、放送用の音声メッセージと、その音声メッセージを放送する状況とを対付けて格納するデータベースである。具体的には、火災放送メッセージと、避難支援メッセージとを格納する(
図8に示すメッセージは、あくまで一例である)。なおここで、避難支援メッセージとは、避難経路が混雑していることを在館者に通知しつつ、落ち着いた避難を促すメッセージである。次に、混雑度情報データベース922は、防火対象物である建物に設定された避難経路の混雑度を格納するデータベースである。混雑度情報データベース922のデータ構成は、支援サーバ7が備える混雑度情報データベース723と同様であるので、詳細な説明は省略する。スピーカ情報データベース923は、図示を省略するが、スピーカ8の識別情報であるアドレスと対応付けて、当該スピーカの設置階を格納する。
【0044】
第1通信部93は、火災受信機5と通信回線10を介して通信を行うための通信インタフェースである。第2通信部94は、スピーカ8と信号線を介して通信を行うための通信インタフェースである。
【0045】
非常用放送設備9の制御部91は、記憶部92に記憶されるプログラムを実行することにより、異状情報受信部911と、メッセージ特定部912と、スピーカ特定部913と、放送制御部914と、放送対象エリア特定部915と、混雑度情報受信部916いう機能を実現する。
【0046】
異状情報受信部911は、防火対象物である建物における異状の発生を示す異状情報を受信する。具体的には、火災受信機5から火災確定信号を受信する。
【0047】
メッセージ特定部912は、異状情報受信部911により火災確定信号が受信されると、メッセージデータベース921を参照して火災放送メッセージを特定する。また、火災放送後に行われる避難支援放送動作では、メッセージデータベース921を参照して、放送対象エリア特定部915により特定されるエリア(具体的には、階)に放送される避難支援メッセージを特定する。
【0048】
スピーカ特定部913は、異状情報受信部911により火災確定信号が受信されると、スピーカ情報データベース923を参照して、すべてのスピーカ8を特定する。また、火災放送後に行われる避難支援放送動作では、放送対象エリア特定部915により放送対象階が特定されると、スピーカ情報データベース923を参照して、特定された放送対象階に設置されたスピーカ8を特定する。
【0049】
放送制御部914は、異状情報受信部911により火災確定信号が受信されると、メッセージ特定部912により特定された火災放送メッセージを、スピーカ特定部913により特定されたすべてのスピーカ8から、鎮火まで繰り返し音声出力させる。また、火災放送後に行われる避難支援放送動作では、放送対象エリア特定部915により特定されたエリア(具体的には、階)に設置されたスピーカ8から避難支援メッセージを音声出力させる。その際、火災放送メッセージの合間に避難支援メッセージを音声出力させる。なお、火災放送メッセージに代えて特定されたエリアだけに避難支援メッセージを音声出力させる形でもよい。
【0050】
放送対象エリア特定部915は、火災放送後に、防火対象物である建物内の複数のエリア(具体的には、階)のうち、混雑度情報データベース922を参照して(言い換えると、支援サーバ7の混雑度特定部715により特定された混雑度に基づいて)、避難支援メッセージを放送するエリアを特定する。その際、混雑度情報データベース922において避難口付近の混雑度が「中」以上である階を、避難支援メッセージを放送するエリアとして特定する。なお、変形例として、避難口付近の混雑度が「高」である階のみを、避難支援メッセージを放送するエリアとして特定するようにしてもよい。
【0051】
混雑度情報受信部916は、支援サーバ7から混雑度情報を受信すると、受信した混雑度情報で混雑度情報データベース922を更新する。すなわち、支援サーバ7の混雑度情報データベース723と、混雑度情報データベース922のデータを同期させる。
【0052】
1-2.防災システム1の動作
防災システム1の動作について説明する。具体的には、自衛消防隊の編成動作と、混雑度特定動作と、火災放送動作と、避難支援放送動作について説明する。
【0053】
1-2-1.自衛消防隊の編成動作
図9は、自衛消防隊の編成動作の一例を示すシーケンス図である。この動作は、火災受信機5の火災判定部512が火災の発生を判定すると実行される。
【0054】
火災受信機5の火災判定部512が火災の発生を判定すると、火災情報送信部513は、火災の確定を通知する火災確定信号を支援サーバ7に送信する(Sa1)。送信された火災確定信号が支援サーバ7の異状情報受信部711により受信されると、支援サーバ7の編成部712は、隊員候補情報データベース721を参照して自衛消防隊を編成する(Sa2)。具体的には、隊員候補情報データベース721において優先順位の高い役割から順に、優先順位の高い隊員候補を、定数を満たすまで隊員に選定してゆく。選定された隊員の隊員IDは、割り当てられた役割と担当階とに対応付けられて、隊員情報データベース722に格納される。自衛消防隊の編成が完了すると、役割情報送信部713は、選定された隊員が携帯する携帯端末6に対して、割り当てられた役割と担当階とを通知する役割情報を送信する(Sa3)。送信された役割情報が携帯端末6の情報受信部611により受信されると、携帯端末6の表示制御部612は、利用者の操作に応じて、受信された役割情報を表示部63に表示させる(Sa4)。
以上が、自衛消防隊の編成動作についての説明である。
【0055】
1-2-2.混雑度特定動作
図10は、混雑度特定動作の一例を示すフロー図である。この動作は、自衛消防隊の編成(Sa2)後に、支援サーバ7により所定の周期で実行される。
【0056】
支援サーバ7の移動情報取得部714は、隊員情報データベース722を参照して、避難誘導係の隊員を特定する(Sb1)。隊員を特定すると、当該隊員が携帯する携帯端末6に対して、移動情報を要求する移動情報要求を送信する(Sb2)。そして、この移動情報要求に対する応答として移動情報を受信する(Sb3)。移動情報が受信されると、混雑度特定部715は、受信された移動情報に含まれる位置情報と、混雑度情報データベース723(特に、避難口の場所情報)とを参照して、携帯端末6の現在位置に最も近い避難口を特定する(Sb4)。避難口を特定すると、受信された移動情報に含まれる移動速度に基づいて、ステップSb4で特定した避難口付近の混雑度を特定する(Sb5)。具体的には、移動速度(時速)が0km以上1km未満の場合には、混雑度「高」と判定し、1km以上3km未満の場合には、混雑度「中」と判定し、3km以上の場合には、混雑度「低」と判定する。混雑度を特定すると、特定した混雑度を、ステップSb4で特定した避難口と対応付けて混雑度情報データベース723に格納する(Sb6)。データベースへの格納が完了すると、移動情報取得部714は、隊員情報データベース722に登録されているすべての避難誘導係について移動情報を取得したか否かを判定し(Sb7)、すべての避難誘導係について移動情報を取得していない場合には(Sb7のNO)、ステップSb1に戻り、すべての避難誘導係について移動情報を取得している場合には(Sb7のYES)、本混雑度特定動作は終了する。
以上が、混雑度特定動作についての説明である。
【0057】
1-2-3.火災放送動作
図11は、火災放送動作の一例を示すシーケンス図である。この動作は、火災受信機5の火災判定部512が火災の発生を判定すると実行される。
【0058】
火災受信機5の火災判定部512が火災の発生を判定すると、火災情報送信部513は、火災の確定を通知する火災確定信号を非常用放送設備9に送信する(Sc1)。送信された火災確定信号が非常用放送設備9の異状情報受信部911により受信されると、非常用放送設備9のメッセージ特定部912は、メッセージデータベース921を参照して、火災放送メッセージを特定する(Sc2)。火災放送メッセージが特定されると、非常用放送設備9のスピーカ特定部913は、スピーカ情報データベース923を参照して、すべてのスピーカ8を特定する(Sc3)。スピーカ8が特定されると、非常用放送設備9の放送制御部914は、ステップSc2で特定された音声メッセージを、ステップSc3で特定されたスピーカ8から、鎮火まで繰り返し音声出力させる(Sc4及びSc5)。
以上が、火災放送動作についての説明である。
【0059】
なお、好ましい態様において放送制御部914は、まず先に、火災階と直上階に設置されたスピーカ8のみから火災放送メッセージを出力させ、所定時間経過してから、その他の階に設置されたスピーカ8から火災放送メッセージを出力させるようにしてもよい。
【0060】
1-2-4.避難支援放送動作
図12は、避難支援放送動作の一例を示すフロー図である。この動作は、上記の火災放送動作の実行後に、非常用放送設備9により所定の周期で実行される。
【0061】
非常用放送設備9の放送対象エリア特定部915は、混雑度情報データベース922を参照して、避難口付近の混雑度が「中」以上である階を、避難支援メッセージの放送対象階として特定する(Sd1)。例えば、
図6に例示するデータが参照されたと仮定すると、少なくとも「1階」及び「2階」を特定する。放送対象階が特定されると、スピーカ特定部913は、スピーカ情報データベース923を参照して、ステップSd1で特定された放送対象階に設置されたスピーカ8を特定する(Sd2)。スピーカ8が特定されると、メッセージ特定部912は、メッセージデータベース921を参照して、避難支援メッセージを特定する(Sd3)。避難支援メッセージが特定されると、放送制御部914は、ステップSd2で特定されたスピーカ8から、ステップSd3で特定された音声メッセージを音声出力させる(Sd4)。その際、火災放送メッセージの合間に避難支援メッセージを音声出力させる。
以上が、避難支援放送動作についての説明である。
【0062】
以上説明した防災システム1によれば、避難経路が混雑している階に避難支援メッセージが放送することで、在館者に対して落ち着いた避難を促すことができる。
【0063】
2.変形例
上記の実施形態は、下記のように変形してもよい。なお、下記の2以上の変形例は互いに組み合わせてもよい。
【0064】
2-1.変形例1
携帯端末6の移動速度算出部613は、測位部66により測定された位置情報に代えて、携帯端末6が備える加速度センサやジャイロセンサ等のセンサ類(図示略)を用いて移動速度を算出するようにしてもよい。
【0065】
また、上記の実施形態において、携帯端末6側で移動速度を算出せずに、支援サーバ7側で、携帯端末6から提供される位置情報に基づいて移動速度を算出するようにしてもよい。その場合、携帯端末6から支援サーバ7に対して、測位部66により測定された第1の位置と、第1の位置よりも所定時間前に測定された第2の位置とが移動情報として通知され、支援サーバ7の混雑度特定部715は、通知された第1の位置と第2の位置の差分を上記所定時間により除することにより移動速度を算出する。
【0066】
2-2.変形例2
支援サーバ7が備える混雑度情報データベース723は、建物の階に代えて、建物のフロアを複数に区切ることで形成される各区画に対応付けて、区画内の避難口と、当該避難口の場所と、当該避難口付近の混雑度を格納するようにしてもよい。これは、混雑度情報データベース723と同様のデータ構成を有する、非常用放送設備9の混雑度情報受信部916についても同様である。また、非常用放送設備9が備えるスピーカ情報データベース923は、スピーカ8の設置階に代えて、スピーカ8の設置区画を、当該スピーカのアドレスと対応付けて格納するようにしてもよい。その場合、非常用放送設備9の放送対象エリア特定部915は、放送対象階に代えて、放送対象区画を特定し、スピーカ特定部913は、放送対象階に代えて、放送対象区画に設置されたスピーカ8を特定するようにしてもよい。すなわち、階単位ではなく、区画単位で避難支援メッセージを放送するようにしてもよい。
【0067】
2-3.変形例3
支援サーバ7の異状情報受信部711と、非常用放送設備9の異状情報受信部911は、避難が必要となるような情報として、火災確定信号に代えて又は加えて、地震、津波、洪水、テロ等の他の異状の発生又はその可能性を示す情報を受信するようにしてもよい。
【0068】
2-4.変形例4
支援サーバ7の移動情報取得部714は、避難誘導係の隊員が携帯する携帯端末6に限られず、他の係の隊員が携帯する携帯端末6の移動情報も取得してもよい。加えて、隊員に選定されていない在館者(隊員候補及びそうでない者を含む)が携帯する携帯端末6の移動情報も取得してもよい。
【0069】
2-5.変形例5
支援サーバ7の移動情報取得部714により、避難誘導係の隊員だけでなく在館者全体の移動情報が取得される場合、支援サーバ7の混雑度特定部715は、取得された各移動情報に含まれる位置に基づいて避難経路の混雑度を特定してもよい。より具体的には、避難口付近の所定領域(例えば、避難口から半径10mの領域)内の人数に基づいて避難経路の混雑度を特定してもよい。その際、避難口付近の所定領域内の人数が多くなるほど、混雑度が高いと判定される。
【0070】
移動速度に代えて避難口付近の所定領域内の人数に基づいて混雑度を特定するにあたっては、混雑度特定部715は、携帯端末6から取得される移動情報によらずに、各避難口付近に設置されたカメラにより撮影された画像を解析することにより所定領域内の人数を計数するようにしてもよい。ここで、避難口付近とは、上述したように、避難口と、避難口に至る通路(附室を含む)と、避難口近傍の避難階段である。または、混雑度特定部715は、各避難口付近に設置されたマイクにより収集された音声を解析することにより所定領域内の人数を計数するようにしてもよい。
【0071】
2-6.変形例6
非常用放送設備9のメッセージ特定部912は、上記の避難支援放送動作において、放送対象エリア特定部915により特定されるエリア(具体的には、階)に放送される避難支援メッセージを、混雑度情報データベース922を参照して(言い換えると、当該エリアについて支援サーバ7の混雑度特定部715により特定された混雑度に基づいて)特定するようにしてもよい。一例として、放送対象エリア特定部915により特定される階の避難経路の混雑度に対応する避難支援メッセージを特定するようにしてもよい。具体的には、混雑度「高」の階に放送される避難支援メッセージとしては、「待機して下さい。」というメッセージを特定し、混雑度「中」の階に放送される避難支援メッセージとしては、「落ち着いて避難して下さい。」というメッセージを特定するようにしてもよい。また、混雑度「中」以上の階に限られず、混雑度「低」の階にも避難支援メッセージを放送する場合には、混雑度「低」の階に放送される避難支援メッセージとしては、「避難して下さい。」というメッセージを特定するようにしてもよい。
【0072】
別の例として、メッセージ特定部912は、放送対象エリア特定部915により特定される階の避難経路のうち、混雑していない方の避難経路の利用を促す避難支援メッセージを特定するようにしてもよい。具体的には、放送対象エリア特定部915により特定される階の避難経路のうち、避難口Aの方が避難口Bよりも混雑している場合には、「避難口Bから避難して下さい。」というメッセージや、「避難口Aから避難しないで下さい。」というメッセージを特定するようにしてもよい。
【0073】
2-7.変形例7
非常用放送設備9のメッセージ特定部912と放送対象エリア特定部915の機能は、支援サーバ7が備えてもよい。すなわち、支援サーバ7の側で、避難支援メッセージと当該メッセージを放送する階とを特定し、非常用放送設備9は、支援サーバ7により特定された避難支援メッセージを、同サーバにより特定された階に設置されたスピーカ8から音声出力させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…防災システム、2…自火報設備、3…防災支援システム、4…火災感知器、5…火災受信機、6…携帯端末、7…支援サーバ、8…スピーカ、9…非常用放送設備、10…通信回線、51…制御部、52…記憶部、53…表示部、54…操作入力部、55…第1通信部、56…第2通信部、61…制御部、62…記憶部、63…表示部、64…操作入力部、65…通信部、66…測位部、71…制御部、72…記憶部、73…通信部、91…制御部、92…記憶部、93…第1通信部、94…第2通信部、511…火災感知信号受信部、512…火災判定部、513…火災情報送信部、521…感知器データベース、611…情報受信部、612…表示制御部、613…移動速度算出部、614…情報送信部、711…異状情報受信部、712…編成部、713…役割情報送信部、714…移動情報取得部、715…混雑度特定部、716…混雑度情報送信部、721…隊員候補情報データベース、722…隊員情報データベース、723…混雑度情報データベース、911…異状情報受信部、912…メッセージ特定部、913…スピーカ特定部、914…放送制御部、915…放送対象エリア特定部、916…混雑度情報受信部、921…メッセージデータベース、922…混雑度情報データベース、923…スピーカ情報データベース