(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】超音波流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20220101AFI20220307BHJP
【FI】
G01F1/66 101
(21)【出願番号】P 2021191288
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2021-12-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390026996
【氏名又は名称】東京計装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】金 光楠
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158675(JP,A)
【文献】特開2019-95322(JP,A)
【文献】特開2015-210252(JP,A)
【文献】特開2012-21782(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0257941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66
G01P 5/00- 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体内の流体の流速を超音波パルスにより測定する一対の超音波送受信器を配置した測定管路部の周囲に、前記管体を伝達するノイズを吸収する消音構造体を取り付けた超音波流量計であって、
前記消音構造体は、複数個の金属部材を前記管体の外面に配置すると共に、前記金属部材同士の間隙及び前記管体と前記金属部材との間隙に可塑性を有する軟質高密度の音波吸収材を充填したことを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
前記測定管路部の外面の上流側と下流側に前記一対の前記超音波送受信器を取り付け、前記超音波パルスを一方の前記超音波送受信器から発信し他方の前記超音波送受信器で受信することを交互に繰り返して、流量を測定することを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項3】
前記金属部材は長片状で表面積が大きな型材とし、その一部が前記管体の長手方向に沿って接するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波流量計。
【請求項4】
前記音波吸収材は油粘土、高分子材料としたことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の超音波流量計。
【請求項5】
前記消音構造体の周囲を金属製カバーにより覆うことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の超音波流量計。
【請求項6】
金属製カバーは前記消音構造体を外側から締付可能としたことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体を伝達するノイズを消音構造体で吸収し、S/Nを大きくして、測定精度の向上を図る超音波流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波流量計では、管体を伝達する余分な超音波のノイズ成分が超音波受信素子に混入し、S/Nが小さくなり測定精度が悪化し易い。そのために、例えば特許文献1などに記載されているように、管体の周囲にゴム体や粘着ゲルのような超音波消音材を配置し、ノイズを吸収して減少させることが開示されている。或いは、超音波消音材中に金属粒子等を混在して、吸収性能を向上させることも行われている。
【0003】
また特許文献2には、管体の周囲に、未架橋ゴムなどから成る超音波吸収体を配置し、更にその外側に連続気泡を有するマット状の弾性多孔体から成る超音波緩衝材を配置し、管体を伝達するノイズを吸収することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-117894号公報
【文献】特開2018-105735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの特許文献1、2等で使用されるゴム体等の超音波消音材は、管体の表面に接触してノイズを吸収できるが、管体の表面積には限界があり、ノイズの吸収が不十分で、ノイズが多く残留するので望ましい測定精度が得られるとは云えない。
【0006】
特に、流体として気体を測定対象とする場合には、気体中を伝播する超音波パルスの減衰が大きく、管体を伝達するノイズによる影響が増加し、得られる超音波信号よりも1000倍程度も大きなノイズ量となることがある。このため、信号がノイズ中に埋もれることがあって、S/N比が極端に小さくなり、このノイズを十分に除去しないと、測定の信頼性を確保し難いという問題点がある。
【0007】
管体が合成樹脂材の場合には伝達ノイズは少ないので、除去が十分でなくとも流速は容易に測定できるが、金属管の場合には伝達ノイズ量が大きく、除去がなかなか困難である。
【0008】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、管体の測定管路部の周囲に、金属部材と音波吸収材とから成る消音構造体を配置して、伝達ノイズを効果的に吸収し、特に気体を測定対象とする場合でも適用可能な超音波流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る超音波流量計は、管体内の流体の流速を超音波パルスにより測定する一対の超音波送受信器を配置した測定管路部の周囲に、前記管体を伝達するノイズを吸収する消音構造体を取り付けた超音波流量計であって、前記消音構造体は、複数個の金属部材を前記管体の外面に配置すると共に、前記金属部材同士の間隙及び前記管体と前記金属部材との間隙に可塑性を有する軟質高密度の音波吸収材を充填したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る超音波流量計によれば、金属部材と軟質高密度の音波吸収材とから成る消音構造体を管体の測定管路部の周囲に配置することによって、管体を伝達するノイズを効果的に吸収し測定管路部における測定精度を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】管体の周囲に金属部材を配置した状態の斜視図である。
【
図4】他の形状の金属部材を使用した測定管路部の拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は測定管路部の縦断面図である。気体である流体を流す管体1の一部は測定管路部2とされている。測定管路部2においては、例えば径50mmの金属製の管体1の外面に一対の超音波送受信器3、4がくさび台5を介して固定されている。超音波送受信器3、4はそれぞれ振動子を内蔵しており、超音波パルスの送信及び受信が可能とされている。くさび台5は管体1に対して超音波パルスを所定の角度で送受信させるものであり、超音波を伝達し易い例えばチタンなどの材料から成っている。
【0014】
超音波送受信器3、4は管体1に沿って管体1表面の上流側と下流側とにずれて配置され、超音波送受信器3、4の何れかから発信された超音波パルスPが管体1中の流体を斜め方向に横断し、管体1の内壁で反射し折り返され他方の超音波送受信器3、4で受信される所謂V型方式の配置とされている。なお、超音波送受信器3、4を管体1を挟んで上流側と下流側とに配置し、超音波パルスPを管体1内の流体を斜め1方向のみに横断させるZ型方式の配置とすることもできる。
【0015】
測定管路部2の周囲には、
図2、
図3にも示すように、管体1を伝達する超音波状のノイズを吸収する消音構造体6が構設されている。消音構造体6は金属部材7と音波吸収材8とから成り、金属部材7には型材等から成るSUSなどの多数個のブロック材が使用され、音波吸収材8には油粘土、高分子材料などの可塑性を有する軟質高密度材料が使用されている。なお、
図3に示す消音構造体6には、音波吸収材8の図示は省略している。
【0016】
金属部材7は、例えば100mm、50mmの2種類の長さの長片部材が、管体1の長さ方向に多数列に、適宜な間隔をおいて継ぎ足されて配列されている。
図2に示す実施例では、金属部材7の断面は例えば正方形とされ、管体1に接する面に沿って凹部が形成されている。金属部材7は音波吸収材8への吸音効率を向上させるために、その断面では音波吸収材8に接する表面積が大きな形状であることが好ましい。
【0017】
測定管路部2では、2種類の金属部材7が適宜に組み合わされて配置されており、このように金属部材7に長さの異なるものを用いるのは、その表面に音波吸収材8を配置してランダム性を高めるためであるが、同一長、同一形状の金属部材7を用いても支障はない。
【0018】
音波吸収材8は金属部材7同士の間隙、及び管体1と金属部材7との間隙、更には金属部材7の周囲に、その可塑性を利用して隙間なく充填されている。
【0019】
この消音構造体6は、超音波送受信器3、4、くさび台5を除く測定管路部2の周囲を覆うように設けられている。更に、消音構造体6の外側は、図示を省略する例えば金属製の専用カバー部材により覆われ、消音構造体6はこのカバー部材により管体1に強く密着可能とされている。
【0020】
測定に際しては、超音波送受信器3、4にそれぞれ内蔵した振動子から交互に超音波パルスPが発信され、超音波パルスPは管体1内の流体を横断して管体1の内壁で反射され、超音波送受信器4、3の振動子で受信される。上流側の超音波送受信器3から下流側の超音波送受信器4に向い流体の流れに沿って進行する超音波パルスPと、下流側の超音波送受信器4から上流側の超音波送受信器3に向い流れと逆行する超音波パルスPとの到達時間差を基に流速が演算により求められる。この流速に管体1の断面積を乗じて流量が求められるが、この測定原理は公知なので、更なる詳細な説明は省略する。
【0021】
管体1の周囲には、消音構造体6の特に金属部材7が管体1に接するように配置されているので、管体1を伝達してきたノイズは金属部材7に伝達され、更に金属部材7に接する音波吸収材8で効果的に吸収され、超音波送受信器3、4へのノイズの入力は少なくなる。
【0022】
ノイズの低減を音響インピーダンスに関して説明すると、音響インピーダンスは媒質の密度と音速を乗じた値である。金属製の管体1とほぼ同等の大きさの音響インピーダンスを持つ金属部材7を管体1に密着させると、管体1のノイズは金属部材7に伝達し分散する。そして、金属部材7中のノイズが音波吸収材8に伝達されて吸収される。このようにして、管体1、金属部材7に伝達されたノイズのエネルギーは主に音波吸収材8により熱エネルギーに変換され、音波吸収材8で消音される。
【0023】
消音構造体6の外側に金属製カバーを被着し、緊締バンド等により締め付けると、ノイズの吸収が更に良好となる。つまり、金属製カバーは消音構造体6を管体1に強く密着させ、金属製カバーは消音構造体6にも密着するので、音響整合状態が変化し、管体1から金属部材7、音波吸収材8へのノイズの伝達、金属部材7、音波吸収材8から金属製カバーへのノイズの伝達が多くなり、ノイズの吸収が効果的に行われる。また、金属製カバーを被着することにより、空気との接触が少なくなり、音波吸収材8の変質が防止される。
【0024】
図4は断面半円弧状の金属部材7を使用した場合の測定管路部2の断面図であり、金属部材7の一部は管体1に沿って接触しており、管体1の周囲、金属部材7同士の間隙には音波吸収材8が充填されている。
【0025】
図5(a)~(d)は金属部材7の断面形状の例であり、これらの表面積を大きくした金属部材7を用いることにより、消音構造体6による消音効果が発揮される。なお、消音構造体6にはこれらの形状が異なる金属部材7を混在することもできる。
【0026】
なお、実施例においては、金属部材7は長片状のブロック材で、管体1の長手方向に沿って接することを説明したが、その形状は実施例に限定されず、また管体1の短手方向に巻き付けるように配置することもできる。また、金属部材7は管体1の周囲にひれ状に一体的に形成してもよい。つまり、金属部材7の表面積を大にして、ノイズを音波吸収材8に効果的に伝達できるようにすればよい。
【符号の説明】
【0027】
1 管体
2 測定管路部
3、4 超音波送受信器
5 くさび台
6 消音構造体
7 金属部材
8 音波吸収材
【要約】
【課題】可塑性物質と金属部材から成る消音構造体を管体の周囲に配置することによって、管体を伝達するノイズを効果的に吸収する。
【解決手段】管体1に沿って管体1の外面に一対の超音波送受信器3、4がくさび台5を介して固定され、測定管路部2とされている。測定管路部2の周囲には消音構造体6が構設されており、消音構造体6は超音波送受信器3、4、くさび台5を除く測定管路部2の周囲を覆うように設けられている。消音構造体6は金属部材7と音波吸収材8とから成り、金属部材7は型材による複数個の長片部材とされ、管体1の長さ方向に沿って管体1の外面に接するように配置されている。音波吸収材8は金属部材7同士の間隙、管体1と金属部材7との間隙に充填されている。
【選択図】
図2