(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】複合材料で構成される缶蓋の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/36 20060101AFI20220307BHJP
B29C 65/46 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B29C65/36
B29C65/46
(21)【出願番号】P 2021501081
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(86)【国際出願番号】 EP2019053264
(87)【国際公開番号】W WO2019185225
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-28
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520375192
【氏名又は名称】トップ キャップ ホールディング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーチ グレゴール アントン
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-029301(JP,B2)
【文献】特開昭60-125643(JP,A)
【文献】特開2000-190964(JP,A)
【文献】特開平05-104635(JP,A)
【文献】特開昭57-142846(JP,A)
【文献】特開2002-179061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
B65D 17/00-17/52
B65D 35/44-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合される部分である、少なくとも1つのシート金属部(14)
と、少なくとも1つのプラスチック部(17、18)
とを含む複合材料から構成される缶蓋(9)の製造方法であって、
前記少なくとも1つのシート金属部(14)はシート金属からなる完全に形成された缶蓋部であり、前記プラスチック部は前記少なくとも1つのシート金属部(14)と一致した形状を有するプラスチックフィルム(17)であり、
前記プラスチック
フィルム(17)と前記
完全に形成された缶蓋部(14)は、一緒にプレスして、誘導加熱によって接合されることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記シート金属部(14)及び
前記プラスチック
フィルム(17)の少なくとも一方は、接合前に
結合剤でコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
結合剤は、前記シート金属部(14)に接続される前記プラスチック
フィルム(17)と同じプラスチックを含むことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記缶蓋部(14)は、一方の片側で前記プラスチックフィルム(17)と、他方の片側で前記缶蓋(9)の開口部を覆う閉鎖要素(18)と
、接合されることを特徴とする請求項
1に記載の製造方法。
【請求項5】
両方の接合プロセスが1つのワークステップで行われることを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項6】
上部ツール(6)と下部ツール(5)、及び
前記缶蓋(9)の領域に交番電磁場を供給するための中空導体(11)を備え
たプレス機(1)が接合プロセスに使用され
、
誘導加熱のため、
前記上部ツール(6)は
前記缶蓋(9)の片側
の逆の形状を持ち、
前記下部ツールは
前記缶蓋(9)の反対側
の逆の形状を有することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記中空導体(11)は、接合される
前記缶蓋(9)の受容領域の互いに
対向して配置される
領域を有することを特徴とする請求項
6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記上部ツール(6)
は前記中空導体(11)の側面に位置し、形状安定性の高い材料
を含み、
前記下部ツール(5)は
対向して配置された弾性材料
を含むことを特徴とする請求項
7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記上部ツール(6)は前記プラスチックフィルム(17)に
伴っていることを特徴とする請求項
8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記上部ツール(6)は、接合プロセス中に前記プラスチックフィルム(17)に脆弱化ラインを導入するためのリブを有することを特徴とする請求項
9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記上部ツールと前記下部ツール(5、6)
の少なくとも1つには、閉じ込められ得る空気を受け入れるための自由空間を作るための窪みがあることを特徴とする請求項
6乃至
10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記接合される部分(14、17、18)は、接合プロセス中に真空によって互いに保持されることを特徴とする請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
回転インデックステーブルは、接合プロセスのために
前記缶蓋(9)の
前記接合される部分(14、17、18)を接合するために使用されることを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記回転インデックステーブルには、少なくとも1つの充電ステーション用の真空供給装置を備え、個々の充電ステーション用の真空供給装置は、円形の分配器によって真空が供給されるバルブを介してオンとオフを切り替えることができることを特徴とする請求項
13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのシート金属部、特にアルミニウム板部又はブリキ板部と、特にポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートで構成される少なくとも1つのプラスチック部とを含む複合材料で構成される缶蓋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料缶用の缶蓋は、通常、脆弱化ラインによって残りの缶蓋から分離され、缶を開けるためにそこに固定された引張り部材を介して蓋面から外に移動できる開口部を有する。この点で、開口部は、缶内に移動するか、又は上方に移動することができる。再閉鎖可能な缶蓋も知られており、固定蓋面に接続され、開口領域を取り囲むプラスチック材料の封止フレームが、開口領域を囲む金属蓋領域に接続されている。旋回して開くことができる缶蓋の金属開口部に接続された閉鎖ユニットは、密封フレームと協働する。密閉フレーム及び閉鎖ユニットは、好ましくはプラスチックからなり、缶蓋は、アルミニウム板又はブリキ板からなる。食品缶にも同様の蓋が使われている。また、脆弱化ラインではなく、開口部と固定缶領域との間にマイクロギャップが設けることも知られている。この場合、缶蓋はプラスチックフィルムによって内側がコーティングされ、マイクロギャップを密封して覆う。プラスチックフィルムはまた、缶蓋の開口部で引っ張られて開かれ、その目的のために、プラスチックフィルムは同様に脆弱化ラインを備えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の基本的な目的は、そのような缶蓋を製造する方法をできるだけ単純で費用のかからないものにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、プラスチック部とシート金属部が、一緒にプレスされ、且つ誘導加熱によって一緒に接合されることで満たされる。
【0005】
プラスチック部は、誘導加熱によって部分的に溶融され、それによって材料の連続性を備えたシート金属部に接続される。電磁誘導により渦電流がシート溶融部でのみ発生し得るため、誘導加熱はシート金属部のみが直接加熱されるという利点がある。対照的に、プラスチック部は該金属部によって間接的に加熱され、それにより、シート金属部に接触するプラスチック部の側面が特に部分的に溶融される。
【0006】
シート金属部及び/又はプラスチック部は、好ましくは、接合の前に結合剤でコーティングされる。これにより、接合接続の安定性を高めることができる。
【0007】
結合剤は、好ましくは、シート金属部に接続されるプラスチック部と同じプラスチックを含む。これにより、特に良好な接着が得られ、したがって、特にしっかりした接合接続が得られる。
【0008】
完全に形成されたシート金属の缶蓋要素は、特に好ましくは、適合された形状を有するプラスチックフィルム、特に熱成形されたプラスチックフィルムと一緒に接合される。これにより、特に強固な接合接続も実現される。さらに、接合中にプラスチック部を変形させる必要がないため、比較的少ないエネルギーで接合接続を確立できる。
【0009】
再閉鎖可能な缶蓋を製造するために、缶蓋要素は、本発明のさらなる実施形態に従って、その一方の側のプラスチックフィルムと共に、缶蓋の開口領域を覆う他方の側の閉鎖要素に接合される。これは、密封フレームと、旋回して開くことができる閉鎖ユニットとを含み、閉鎖ユニットは、特に射出成形プラスチック、特にポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートを含む。両方の接合プロセスは、ここでは1つの作業ステップで行われることが好ましい。これにより、接合プロセスを特に迅速かつ簡単に行うことができる。缶蓋のシート金属部が一度加熱されるだけでよいので、さらにエネルギーが節約される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、プレス機は、接合プロセスに使用されものであって、上部ツール及び下部ツール並びに、誘導加熱のために交番電磁場を缶蓋の領域に供給する中空導体を有し、該上部ツールは缶蓋の一方側の反転した形状を有し、下部ツールは缶蓋の他方側の反転した形状を有する。かかる装置を使用して、特に良好な接合接続を確立することができる。接合される部分は、プレス機によって互いに押し付けられ、密接に接触する。交番電磁場は、中空導体を介して缶蓋の領域に伝導され、シート金属部を加熱し、その熱により、シート金属部に接触するプラスチックを部分的に溶融する。
【0011】
特に好ましくは、中空導体は、缶蓋の接合領域に互いに対向して配置される、缶蓋の周辺領域のリング形状領域と、リング状領域内に配置されて缶蓋(9)の中央領域に2つ、3つ又はそれ以上の巻線を有する螺旋領域とを備えている。この設計により、特に、中空導体の別れたリング形状領域に起因する重要な限界領域において、シート金属部の有利な加熱を達成することができる。
【0012】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、中空導体の側面に配置されたツールは、形状安定性の高い材料、特にプラスチックを含み、反対側に配置されたツールは、弾性材料、特にエラストマー材料を含む。中空導体は、中空導体の側面にある形状安定材料によって発生する可能性のある力から安全に保護される。一方、反対側に配置された弾性材料は、高すぎる力が部分を一緒にプレスする際に生成されないように、製造公差の補償を可能にする。
【0013】
主に形状安定性のあるツールは、プラスチックフィルムと伴っていることが好ましい。さらに、好ましくは、接合プロセス中にプラスチックフィルムに脆弱化ラインを導入するためのリブを設けることができる。これにより、缶蓋の製造における作業工程を節約することができる。
【0014】
本発明の同様に好ましい実施形態によれば、接合される部分は、接合プロセス中に真空によって一緒に保持される。これにより、正確な嵌合接合を確実にすることができる。加えて、プラスチック材料とシート金属部との間に気泡が閉じ込められるのを防ぐ、有利な通気が行われる。開口部と固定蓋領域との間にマイクロギャップを有する缶蓋により、通気は蓋の両側に作用することができる。
【0015】
マイクロギャップのない缶蓋の製造には、少なくとも1つのツールに窪みを設けて、閉じ込められている可能性のある空気を受け入れるために形成される自由空間を生成することが特に有利である。そのような窪みは、好ましくは、閉じ込められた気泡が破壊的ではない領域、例えば、蓋領域及び開口領域から十分な間隔を置いた中央の領域に設けることができる。
【0016】
本発明のさらなる実施形態によれば、回転インデックステーブルを使用して、接合プロセスのために缶蓋の個々の要素を一緒にする。したがって、接合中に使用されるプレス機の有利な装備を達成することができる。
【0017】
好ましいさらなる開発によれば、回転インデックステーブルは、少なくとも1つの充電ステーションのための真空供給装置を有し、個々のステーションの真空供給装置は、円形の分配器によって作動される弁を介して行われる。これは、真空の分配に関して特に有利である。
【0018】
本発明の実施形態が図面に表され、以下に説明される。いずれの場合にも概略が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による方法で使用するためのプレス機の断面斜視図である。
【
図2】本発明によるプレス機の一部の断面側面図である。
【
図3】
図1の装置で使用されるインダクタ(誘導加熱装置)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すプレス機1は、下部ラック2と、これに対して移動可能な上部プレス部3と、プレス機の開放及び閉鎖時に上部プレス部3を案内するガイドシリンダ4とを備えている。下部ツール2が下部ラック2の上側に設けられ、上部ツール6が上部プレス部3の下側に設けられている。底部ツール5はエラストマー材料を含み、缶蓋9の閉鎖要素18(
図6参照)を受け入れるための空洞7を有する。別の点では、底部ツール5は缶蓋9の上側の形状を複製する。上部ツール6は、ほぼ安定した形状のプラスチックを含み、缶蓋9の下側の形状を複製する。
【0021】
インダクタ10は、プレス機の領域に配置される。交流電磁場を供給するための中空導体11は、インダクタ10から出発して上部ツール6の領域に案内されている。
図3から
図5を参照すると、特に銅からなる中空導体は、外側リング12と、該リング内に配置され、複数の巻線を有する螺旋領域13とを形成するように形作られている。特に
図2に見られるように、外側リング12及び螺旋領域13は、上部ツール6の上に配置される。それにより、それらは、接合される缶蓋9の表面の互いに反対側にある。銅製中空導体11は、特に水冷される。
【0022】
図6から
図9に示す缶蓋9は、シート金属、特にアルミニウム板又はブリキ板からなるベース本体14を含む。ベース本体14は、金属の固定蓋領域15と、開口領域8を解放するために上向きに旋回可能な開口部16とを備える。
図8及び
図9に特に示すように、缶蓋9の下側はプラスチックフィルム17でラミネートされる。対照的に、密閉フレーム19及び閉鎖ユニット20を含む閉鎖要素は缶蓋9の上側に配置される。密閉フレーム19は固定蓋領域15に接続され、閉鎖ユニット20は上向きに旋回可能な開口部16に接続される。
【0023】
本発明による方法は、
図1から
図5に示される装置を使用しながら
図6から
図9に示される缶蓋9を製造するために使用することができる。この目的のために、特に深絞り工程で一体に製造される閉鎖要素18は、缶蓋9に面する側が上を向くように底部ツール5に配置される。事前にその下側に設けられたプラスチックフィルム17を有しているベース本体14は、閉鎖要素18上に置かれる。次に、プレス機1が閉じられ、誘導加熱10がオンにされる。
【0024】
金属ベース本体14は、供給されたエネルギーによって、その中で電磁渦電流が発生し、加熱される。次に、加熱されたベース本体14は順にプラスチックフィルム17及び閉鎖要素18を加熱し、それによって、それらが部分的に溶融される。これにより、一方では金属ベース本体14とプラスチックフィルム17との間に、他方では閉鎖要素18との間にプラスチック溶接接続が生成される。好ましくはプラスチック溶接接続を改善するために結合剤が使用される。ここで、結合剤は、プラスチックフィルム17又は閉鎖要素18に使用されるものと同じプラスチックを含むことができる。それは、ここでは特に、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートであることができる。
【0025】
上部ツール6は、ここでは認識できないリブをさらに有することができ、それによって、プレス工程及び接合工程中に脆弱化ラインがプラスチックフィルム17に導入される。さらに、上部ツール6に窪みを設けて、プラスチックフィルム17と金属ベース本体14との間に自由空間を生成することができる。これにより、閉じ込められた空気は、缶蓋9の所定の領域、特に缶蓋の縁とその開口領域8の間の領域等の気泡が破壊されない領域に集めることができる。さらに又は代替として、プレス機1には、一方で接合される部分を保持し、他方で少なくとも大部分は空気の閉じ込めを防ぐことができる真空供給装置を設けることができる。固定蓋領域15と旋回可能に開くことができる開口部16との間にマイクロギャップを有する缶蓋でもって、これを缶蓋の両側に適用され得る。
【0026】
缶蓋の個々の部分を組み立てるための複数のステーションを有するプレス機1を装備するために、回転インデックステーブルを設けることができる。しかしながら、回転インデックステーブルの代わりに、プレス機1のための線形供給を設けることもできる。
【0027】
プラスチックフィルム17及び閉鎖要素18の金属ベース本体14への溶接が行われた後、プレス機が開かれ、完成した缶蓋9が取り外される。
【符号の説明】
【0028】
1 プレス機
2 下部ラック
3 上部プレス部
4 ガイドシリンダ
5 底部ツール
6 上部ツール
7 キャビティ
8 開口領域
9 缶蓋
10 インダクタ
11 中空導体
12 外側リング
13 螺旋領域
14 ベース本体
15 固定蓋領域
16 開口部
17 プラスチックフィルム
18 閉鎖要素
19 密閉フレーム
20 閉鎖ユニット