(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】生産設備の解析装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20220308BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G05B23/02 302R
(21)【出願番号】P 2017156263
(22)【出願日】2017-08-11
【審査請求日】2020-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】石榑 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】原 麻美
(72)【発明者】
【氏名】クンドゼーロブァ タチアナ
(72)【発明者】
【氏名】押海 龍生
(72)【発明者】
【氏名】内野 聡朗
(72)【発明者】
【氏名】四井 利彦
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077588(JP,A)
【文献】特開2009-020090(JP,A)
【文献】特開2007-310611(JP,A)
【文献】特開2007-286904(JP,A)
【文献】特開2001-350510(JP,A)
【文献】特開2016-074072(JP,A)
【文献】特開平07-314284(JP,A)
【文献】特開2017-007070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 23/00-23/02
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備に設けられた検出器により検出された前記生産設備の状態に関する
対象データ
であって、複数のグループに分類されるデータ種および複数のグループに分類されないデータ種を含む前記対象データを取得する対象データ取得部と、
前記対象データが複数のグループに分類されるデータ種である場合に、前記生産設備において、前記対象データのグループ分けの基準の情報および前記基準が動作した時間情報を含む基準データを取得する基準データ取得部と、
前記対象データが複数のグループに分類されるデータ種である場合に、前記基準データのグループ別に、前記対象データにおいて前記基準データの動作時間帯と同一時間帯に検出されたデータを、前記基準データと結合させたグループ別結合データを生成するグループ別結合データ生成部と、
前記対象データが複数のグループに分類されないデータ種である場合には、統計的手法を用いて、前記対象データ取得部により取得された前記
対象データについての統計量を算出
し、前記対象データが複数のグループに分類されるデータ種である場合には、前記グループ別結合データのそれぞれについての統計量を算出する統計量算出部と、
前記対象データが複数のグループに分類されないデータ種である場合には、前記対象データについての前記統計量に基づいて前記生産設備の状態を判定
し、前記対象データが複数のグループに分類されるデータ種である場合には、前記グループ別結合データのそれぞれについての統計量に基づいて前記生産設備の状態を判定する判定部と、
前記判定部の結果に応じた処置を実施する処置部と、
を備え
、
前記対象データは、回転体を回転駆動するための駆動装置、移動体を移動するための駆動装置、自動工具交換装置のクランプ装置、自動工具交換装置のシャッター開閉装置、自動パレット交換装置のクランプ装置、チップコンベアの駆動装置、工具マガジン装置の駆動装置の少なくとも1つの対象装置に関して、異常を評価するためのデータであり、
前記判定部は、前記対象装置に関する異常を判定する、生産設備の解析装置。
【請求項2】
前記生産設備の解析装置は、前記対象データ取得部により取得された前記
対象データに基づいて、前記生産設備の駆動装置による動作開始時刻から動作完了時刻までの動作処理時間を算出する処理時間算出部をさらに備え、
前記判定部は、前記動作処理時間に基づいて前記駆動装置の状態を判定する、請求項1に記載の生産設備の解析装置。
【請求項3】
前記生産設備は、回転駆動するための駆動装置をさらに備え、
前記検出器は、前記駆動装置の状態に関するデータとして前記駆動装置における振動データを検出し、
前記統計量算出部は、前記振動データに対して、前記統計的手法として周波数解析、二乗平均平方根の算出、標準偏差の算出、平均値の算出の何れかの処理を施すことによって、振動に関する前記統計量を算出し、
前記判定部は、前記統計量に関する閾値と前記統計量算出部により算出された前記統計量とを比較することにより、前記駆動装置の状態を判定する、請求項1又は2に記載の生産設備の解析装置。
【請求項4】
前記生産設備は、軸受に潤滑油を供給する回転構造を有する駆動装置をさらに備え、
前記検出器は、前記駆動装置の状態に関するデータとして、前記軸受から排出される前記潤滑油の温度又は前記軸受から排出される前記潤滑油の配管における排気の温度と、前記駆動装置の周囲の外気温とを検出し、
前記統計量算出部は、前記潤滑油に関する前記温度と前記外気温との関係を前記統計量として算出し、
前記判定部は、前記関係に関する閾値と前記統計量とを比較することにより、前記駆動装置の状態を判定する、請求項1-3の何れか一項に記載の生産設備の解析装置。
【請求項5】
前記駆動装置は、指令に応じた回転速度で回転駆動する駆動装置であり、
前記処理時間算出部は、回転速度の変更開始時刻から前記駆動装置が指令の前記回転速度への到達時刻までの前記動作処理時間を算出し、
前記判定部は、前記動作処理時間と閾値とを比較することにより前記駆動装置の状態を判定する、請求項2に記載の生産設備の解析装置。
【請求項6】
前記生産設備は、生産対象物を加工する工具を交換するための自動工具交換装置、又は、前記生産対象物を載置するパレットを交換するための自動パレット交換装置をさらに備え、
前記検出器は、前記自動工具交換装置又は前記自動パレット交換装置における駆動装置の動力を検出し、
前記統計量算出部は、前記統計的手法として前記動力の最大値を算出し、
前記判定部は、前記統計量に関する閾値と前記統計量算出部により算出された前記統計量とを比較することにより、前記駆動装置の状態を判定する、請求項1又は2に記載の生産設備の解析装置。
【請求項7】
前記生産設備は、生産対象物を加工する工具を交換するための自動工具交換装置、又は、前記生産対象物を載置するパレットを交換するための自動パレット交換装置をさらに備え、
前記処理時間算出部は、前記自動工具交換装置又は前記自動パレット交換装置における前記駆動装置の動作としてクランプ動作、アンクランプ動作、回転動作の何れかの動作に関し、動作開始時刻から動作完了時刻までの前記動作処理時間を算出する、請求項2に記載の生産設備の解析装置。
【請求項8】
前記駆動装置は、流体圧を駆動源とする装置であり、
前記対象データ取得部は、前記流体の温度をさらに取得し、
前記判定部は、前記流体の前記温度に応じた閾値と前記動作処理時間とを比較することにより、前記駆動装置の状態を判定する、請求項7に記載の生産設備の解析装置。
【請求項9】
前記生産設備は、切削加工により生じた切粉を排出するためのチップコンベアをさらに備え、
前記検出器は、前記チップコンベアにおける駆動装置の動力を検出し、
前記統計量算出部は、前記統計的手法として前記動力の最大値を算出し、
前記判定部は、前記統計量に関する閾値と前記統計量算出部により算出された前記統計量とを比較することにより、前記駆動装置の状態を判定する、請求項1又は2に記載の生産設備の解析装置。
【請求項10】
前記対象データが複数のグループに分類されるデータ種である場合における前記対象装置は、回転体を回転駆動するための駆動装置を含み、
前記対象データが複数のグループに分類されないデータ種である場合における前記対象装置は、移動体を移動するための駆動装置、自動工具交換装置のクランプ装置、自動工具交換装置のシャッター開閉装置、自動パレット交換装置のクランプ装置、チップコンベアの駆動装置、工具マガジン装置の駆動装置の少なくとも1つを含み、
前記回転駆動するための駆動装置における前記対象データは、回転速度毎に複数のグループに分類され、
前記基準データは、回転速度に関するデータである、請求項1~9の何れか一項に記載の生産設備の解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産設備の解析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工作機械の主軸の異常を検出することが記載されている。特許文献2には、工作機械の主軸のモータの異常を検出することが記載されている。特許文献3には、工作機械に用いられるチップコンベアのモータ負荷に応じて異常を判断することが記載されている。特許文献4には、チップコンベアの異常を確認するための点検窓について記載されている。特許文献5,6には、工作機械のパレットチェンジャーの異常を検出することが記載されている。特許文献7には、工具自動交換装置の異常を検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-77588号公報
【文献】特許第5628994号公報
【文献】特開2017-7070号公報
【文献】特開2008-55533号公報
【文献】特開2003-225841号公報
【文献】特開2016-120580号公報
【文献】特開2016-74072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生産設備の状態を適切に検出し、生産設備の状態の結果を好適に利用することが求められる。本発明は、生産設備の状態を適切に検出し、生産設備の状態の結果を好適に利用することができる生産設備の解説装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、生産設備に設けられた検出器により検出された前記生産設備の状態に関する対象データであって、複数のグループに分類されるデータ種および複数のグループに分類されないデータ種を含む前記対象データを取得する対象データ取得部と、
前記対象データが複数のグループに分類されるデータ種である場合に、前記生産設備において、前記対象データのグループ分けの基準の情報および前記基準が動作した時間情報を含む基準データを取得する基準データ取得部と、
前記対象データが複数のグループに分類されるデータ種である場合に、前記基準データのグループ別に、前記対象データにおいて前記基準データの動作時間帯と同一時間帯に検出されたデータを、前記基準データと結合させたグループ別結合データを生成するグループ別結合データ生成部と、
前記対象データが複数のグループに分類されないデータ種である場合には、統計的手法を用いて、前記対象データ取得部により取得された前記対象データについての統計量を算出し、前記対象データが複数のグループに分類されるデータ種である場合には、前記グループ別結合データのそれぞれについての統計量を算出する統計量算出部と、
前記対象データが複数のグループに分類されないデータ種である場合には、前記対象データについての前記統計量に基づいて前記生産設備の状態を判定し、前記対象データが複数のグループに分類されるデータ種である場合には、前記グループ別結合データのそれぞれについての統計量に基づいて前記生産設備の状態を判定する判定部と、
前記判定部の結果に応じた処置を実施する処置部と、
を備え、
前記対象データは、回転体を回転駆動するための駆動装置、移動体を移動するための駆動装置、自動工具交換装置のクランプ装置、自動工具交換装置のシャッター開閉装置、自動パレット交換装置のクランプ装置、チップコンベアの駆動装置、工具マガジン装置の駆動装置の少なくとも1つの対象装置に関して、異常を評価するためのデータであり、
前記判定部は、前記対象装置に関する異常を判定する、生産設備の解析装置にある。
【0006】
つまり、解析装置の判定部が、取得したデータの統計量を用いて生産設備の状態を判定するため、生産設備の状態を適切に検出することができる。そして、解析装置の処置部は、判定部の結果に応じた処置を実施する。つまり、生産設備の状態の結果を好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】生産設備であるマシニングセンタを示す図である。
【
図2】生産設備に関する機能ブロックを示す図である。
【
図3】解析装置に関する第一の機能ブロックを示す図である。
【
図4】解析装置に関する第二の機能ブロックを示す図である。
【
図5】主軸装置において、排気等温度と外気温との関係を示すグラフである。
【
図6】主軸装置において、回転速度、動力、振動に関するグラフである。
【
図7】主軸装置において、振動に関する二乗平均平方根を示すグラフである。
【
図8】主軸装置において、振動に関する周波数解析結果を示すグラフである。
【
図9】主軸装置において、回転速度の到達所要時間に関するグラフである。
【
図10】主軸装置において、判定部にて複数の判定方法を用いた異常の兆候検知対象の判定方法を示すフローチャートである。
【
図11】APC装置において、パレット駆動装置の流体温度とクランプ動作及びアンクランプ動作の動作処理時間との関係を示すグラフである。
【
図12】APC装置において、パレット駆動装置の動力に関するグラフである。
【
図13】APC装置において、パレット駆動装置の動力の始動時のピーク値に関するグラフである。
【
図14】ATC装置において、アーム駆動装置の流体温度とクランプ動作及びアンクランプ動作の動作処理時間との関係を示すグラフである。
【
図15】ATC装置において、アーム駆動装置の動力に関するグラフである。
【
図16】ATC装置において、アーム駆動装置の動力の始動時のピーク値に関するグラフである。
【
図17】チップコンベアにおいて、第一コンベアの動力に関するグラフである。
【
図18】チップコンベアにおいて、第一コンベアの動力の平均値に関するグラフである。
【
図19】チップコンベアにおいて、第二コンベアの動力の平均値に関するグラフである。
【
図20】チップコンベアにおいて、第一コンベアの動力のピーク-ピーク値に関するグラフである。
【
図21】チップコンベアにおいて、第二コンベアの動力のピーク-ピーク値に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1.生産設備1の構成)
生産設備1は、所定の生産対象物Wを生産する設備である。生産設備1は、工作機械、射出成型機、鋳造機、搬送装置、産業用ロボットなど種々の設備を含む。例えば、工作機械においては、生産対象物Wは、加工対象である工作物となる。
【0011】
生産設備1の一例について、
図1及び
図2を参照して説明する。生産設備1は、生産ラインにおいて工作物を加工する工作機械であって、横形のマシニングセンタを例にあげる。なお、生産設備1としてのマシニングセンタの構成は、以下の構成の他に、種々の公知の構成を採用することができる。
【0012】
マシニングセンタは、例えば以下のように構成される。設置面にベッド11が固定され、ベッド11には、Z軸サドル12がZ軸方向(
図1の左右方向)に移動可能に支持されている。Z軸サドル12の上面には、コラム13がX軸方向(
図1の紙面前後方向)に移動可能に支持されている。コラム13の
図1の右面には、Y軸サドル14がY軸方向(
図1の上下方向)に移動可能に支持されている。
【0013】
ここで、
図2に示すように、Z軸サドル12、コラム13及びY軸サドル14(以下、総称して「移動体」とする)を移動するための移動装置15が設けられている。移動装置15は、各移動体12,13,14を移動するための駆動装置15a(例えばモータ)、駆動装置15aの動力(例えばトルク)を検出するための動力検出器15b、移動体12,13,14の移動速度を検出する移動速度検出器15c、移動体12,13,14の位置を検出する位置検出器15d、移動体12,13,14の振動を検出する振動検出器15eを備える。
【0014】
また、
図1に示すように、Y軸サドル14には主軸装置16が設けられ、主軸装置16における回転体である主軸(図示せず)が軸受16aにより回転可能に設けられており、主軸に工具17が保持されている。主軸装置16は、軸受16aに潤滑油が供給される回転構造を有している。
【0015】
ここで、主軸装置16は、
図2に示すように、さらに、主軸を回転駆動するための駆動装置16b(例えばモータ)、主軸の回転速度を検出する回転速度検出器16c、駆動装置16bの動力(例えばトルク)を検出するための動力検出器16d、主軸装置16の振動を検出する振動検出器16e、軸受16aから排出される潤滑油の温度又は軸受16aから排出される潤滑油の配管における排気の温度(以下、「排気等温度」と称する)を検出する温度検出器16fを備える。
【0016】
また、ベッド11上において、Z軸サドル12及びコラム13に対してZ軸方向(
図1の左右方向)に対向する位置に、自動パレット交換装置18(以下、「APC装置」と称する)が鉛直軸線まわりに回転可能に設けられている。APC装置18は、上面の2か所にそれぞれパレットPを着脱可能に保持するパレット本体18aを備える。パレットPには、生産対象物Wである工作物が載置されている。つまり、APC装置18においてコラム13側(
図1の左側)の加工位置と、コラム13から遠い側(
図1の右側)の準備位置とにおいて、パレットPを交換することができる。
【0017】
APC装置18は、
図2に示すように、さらに、パレット本体18aを回転駆動するためのパレット駆動装置18b(例えばモータ)、流体圧を駆動源としパレット本体18aがパレットPをクランプ動作及びアンクランプ動作を行うためのクランプ装置18c、クランプ動作及びアンクランプ動作を検出するON/OFF検出器18d、クランプ装置18cの流体の温度を検出する温度検出器18e、パレット駆動装置18bの動力(例えばトルク)を検出するための動力検出器18fを備える。パレット駆動装置18bには、例えば、モータなどが適用され、クランプ装置18cには、例えば、流体圧を駆動源とするシリンダ装置などが適用される。
【0018】
さらに、
図1に示すように、ベッド11上において、コラム13の側方(
図1の手前側)には、工具マガジン装置19が設けられている。工具マガジン装置19は、複数の工具17を収容するための複数の工具収容具19aを備える。工具マガジン装置19は、
図2に示すように、複数の工具収容具19aを回転駆動するための駆動装置19b、工具収容具19aの位置を検出する位置検出器19c、工具収容具19aを支持する部材の振動を検出する振動検出器19dを備える。
【0019】
図1に示すように、自動工具交換装置20(以下、「ATC装置」と称する)が設けられている。ATC装置20は、回転可能なATCアーム20aを備えており、工具マガジン装置19に収容されている複数の工具17のうち指定された工具番号の工具17と、主軸装置16に保持されている工具17とを交換する。ATC装置20は、
図2に示すように、ATCアーム20aを回転駆動するためのアーム駆動装置20b(例えば、モータ)、流体圧を駆動源とし工具17をクランプ動作及びアンクランプ動作を行うためのクランプ装置20c、流体圧を駆動源とし加工領域と工具マガジン装置19側の領域を区画するシャッター(図示せず)の開閉を行うシャッター開閉装置20d、クランプ装置20cのクランプ動作、アンクランプ動作、及び、シャッターの開閉を検出するON/OFF検出器20e、クランプ装置20c及びシャッター開閉装置20dの流体の温度を検出する温度検出器20f、アーム駆動装置20bの動力(例えばトルク)を検出するための動力検出器20gを備える。アーム駆動装置20bには、例えば、モータなどが適用され、クランプ装置20c及びシャッター開閉装置20dには、例えば、流体圧を駆動源とするシリンダ装置などが適用される。
【0020】
さらに、
図1に示すように、生産設備1には、切削加工によって生じた切粉を排出するためのチップコンベア21が設けられている。チップコンベア21は、大きな切粉を排出するための第一コンベア21aと、小さな切粉を排出するための第二コンベア21bとを備える。そして、排出された切粉は、チップバケット22内に収容させる。
図2に示すように、チップコンベア21は、第一コンベア21aを駆動するための第一駆動装置21c、第二コンベア21bを駆動するための第二駆動装置21d、第一駆動装置21cの動力を検出する第一動力検出器21e、第二駆動装置21dの動力を検出する第二動力検出器21fを備える。
【0021】
さらに、生産設備1であるマシニングセンタは、
図2に示すように、生産設備1の周囲の外気温を検出する外気温検出器25を備える。外気温検出器25は、後述する異常検出に用いたり、熱変位補正などに用いたりする。
【0022】
さらに、作業者によって操作するための操作盤26が設けられている。操作盤26は、作業者が入力するための入力装置26a、マシニングセンタの各種情報を表示するための表示装置26bを備える。
【0023】
さらに、生産設備1であるマシニングセンタは、
図2に示すように、移動装置15、主軸装置16、APC装置18、工具マガジン装置19、ATC装置20、チップコンベア21を制御するための制御装置30を備える。制御装置30は、CNC(Computerized Numerical Control)装置31、PLC(Programmable Logic Controller)32を備える。
【0024】
CNC装置31は、NCプログラムに従って、各装置15,16,18,19,20,21を制御する。PLC32は、ラダー回路やシーケンシャルファンクションチャート(SFC)などに従って、シーケンス制御を行う。
【0025】
さらに、生産設備1であるマシニングセンタには、解析装置41が設けられている。解析装置41は、生産設備1に設けられた各検出器の検出データ(生産設備1に関するデータに相当する)、及び、CNC装置31における制御データ、PLC32におけるI/Oメモリに記憶されているI/Oデータなどを取得する。
【0026】
ここで、解析装置41は、例えば、ベッド11上の奥側に配置されたり、制御装置30を備える制御盤(図示せず)の筐体の中に収容されたりする。解析装置41は、CNC装置31及びPLC32と接続されている。例えば、解析装置41は、LANコネクタ及びUSBコネクタなどを備えており、CNC装置31及びPLC32と接続される。つまり、解析装置41は、CNC装置31及びPLC32とは、Ethernet(登録商標)やEtherCAT(登録商標)などにより接続されている。すなわち、解析装置41は、CNC装置31及びPLC32と、例えば、OSI参照モデルの下位2層(物理層及びデータリンク層)のネットワークプロトコルを用いて通信する。
【0027】
一般に、インターネット・プロトコル・スイートは、OSI参照モデルの第3層(ネットワーク層)以上のプロトコルが用いられる。そして、物理層やデータリンク層によるデータ伝送速度は、インターネット・プロトコル・スイートによるデータ伝送速度に比べて、高速である。
【0028】
そして、本実施形態における解析装置41は、通信対象(CNC装置31及びPLC32)に近くに下位層のプロトコルにより接続されたエッジコンピューティングを構成している。なお、エッジコンピューティングは、インターネット・プロトコル・スイートを利用したクラウドコンピューティングと対比させた称呼として用いる。
【0029】
また、解析装置41は、外部機器として入力装置42及び表示装置43を着脱可能に接続することができる。そのため、解析装置41は、表示装置43に接続するための端子を備えている。入力装置42は、解析装置41の設定内容を入力及び編集する。表示装置43は、解析装置41による処理内容を表示することができる。なお、解析装置41が、入力装置42及び表示装置43を備える構成としてもよい。
【0030】
さらに、解析装置41は、LANコネクタをサーバなどに接続するために用いることで、サーバ44に処理結果などのデータを伝送することができる。
【0031】
なお、解析装置41は、CNC装置31やPLC32と別体の装置として説明するが、CNC装置31やPLC32などの組み込みシステムとすることもでき、生産設備1とは別位置に配置されるパーソナルコンピュータやサーバなどとすることもできる。
【0032】
(2.解析装置41の構成)
解析装置41の構成について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3及び
図4に示すように、解析装置41は、第一データベース50、複数の第一データ処理部60、複数の第二データ処理部70、第二データベース80、及び、評価部90を備える。
【0033】
第一データベース50は、CNC装置31及びPLC32が記憶しているデータのうち、予め設定した種類のデータを取得して記憶する。第一データベース50には、CNC装置31及びPLC32を介して、各検出器が検出したデータが記憶される。さらに、第一データベース50には、CNC装置31が制御に用いるデータ、及び、PLC32の制御に用いるI/Oデータが記憶されている。
【0034】
例えば、マシニングセンタにおいて、実際の工作物の加工の際に検出した各種データを第一データベース50に記憶させることができる。ただし、より安定したデータを検出するために、本実施形態においては、工作物の存在しない状態でのデータ検出用加工動作を実施して、各検出器により検出されたデータを第一データベース50に記憶させる。このデータ検出用加工動作は、例えば、一日の最初に一回行う。なお、各種データは、データファイルなどとして記憶媒体へ保存されてもよいし、各種データは、取得されるたびに追加されるようにしてもよい。
【0035】
複数の第一データ処理部60は、それぞれ、予め設定された処理を行う。第一データ処理部60のそれぞれは、第一データベース50に記憶されるデータを用いて、生産設備1の状態を評価するためのデータを生成する。例えば、主軸装置16の軸受16a、APC装置18のクランプ装置18c、ATC装置20のクランプ装置20c、シャッター開閉装置20d、チップコンベア21の第一駆動装置21c及び第二駆動装置21dに関して、異常又は異常の兆候を評価するために適切なデータをそれぞれ生成する。なお、以下において、異常とは、異常の場合と異常の兆候がある場合を含む意味として用いる。
【0036】
第一データ処理部60は、対象データ取得部61、統計量算出部62及び処理時間算出部63を備える。対象データ取得部61は、生産設備1に設けられた検出器により検出された生産設備1の状態に関する対象データを取得する。対象データは、検出した時刻(日時)と、当該時刻において検出器により検出された検出データとを含む。
【0037】
統計量算出部62は、統計的手法を用いて、対象データ取得部61により取得されたデータについての統計量を算出する。統計量を評価指標とすることで、生産設備1の駆動装置の状態の正常/異常を評価することができる。
【0038】
ここで、統計量とは、統計的手法(統計学的なアルゴリズム)を適用して、データの特徴を要約した数値を意味する。統計的手法とは、FFT(Fast Fourier Transform)やDFT(Discrete Fourier Transform)などの周波数解析結果における最大ピーク値の算出、周波数解析結果におけるピーク-ピーク値の算出、二乗平均平方根(RMS)の算出、最大値の算出、平均値の算出、標準偏差の算出、ピーク-ピーク値などである。上記において、統計量は、周波数解析結果における最大ピーク値、周波数解析結果における最大ピークと最小ピークの幅、二乗平均平方根の値、最大値、平均値、標準偏差の値、最大ピークと最小ピークの幅である。
【0039】
処理時間算出部63は、対象データ取得部61により取得されたデータに基づいて、生産設備1の駆動装置による動作開始時刻から動作完了時刻までの動作処理時間を算出する。動作処理時間は、駆動装置の異常時には、正常時に比べて長くなるなどによって、動作処理時間を評価指標とすることができる。
【0040】
複数の第二データ処理部70は、それぞれ、予め設定された処理を行う。ただし、第二データ処理部70は、第一データ処理部60とは異なる処理を行う。第二データ処理部70のそれぞれは、第一データベース50に記憶されるデータを用いて、生産設備1の状態を評価するためのデータを生成する。例えば、主軸装置16の軸受16a、APC装置18のクランプ装置18c、ATC装置のクランプ装置20c、シャッター開閉装置20d、チップコンベア21の第一駆動装置21c及び第二駆動装置21dに関して、異常を評価するために適切なデータをそれぞれ生成する。
【0041】
第二データ処理部70は、基準データ取得部71、対象データ取得部72、データ取得判定部73、結合データ生成部74、統計量算出部75及び処理時間算出部76を備える。基準データ取得部71は、生産設備1において、データのグループ分けの基準(例えば、主軸装置16)が動作した時間情報を含む基準データを取得する。基準データは、基準が動作した時刻(日時)を含む。なお、基準データは、制御装置30による制御データである場合や、検出器により検出された検出データである場合がある。
【0042】
対象データ取得部72は、生産設備1に設けられた検出器により検出された生産設備1の状態に関する対象データを取得する。対象データは、検出した時刻(日時)と、当該時刻において検出器により検出された検出データとを含む。データ取得判定部73は、予め設定されたアルゴリズムに基づいて、基準データ取得部71が基準データを取得したことを判定し、且つ、対象データ取得部72が対象データを取得したことを判定する。
【0043】
結合データ生成部74は、基準データ及び対象データが取得されたとデータ取得判定部73が判定した場合に、グループ別結合データの生成を開始する。グループ別結合データは、基準データのグループ別に、対象データにおいて基準データの動作時間帯と同一時間帯に検出したデータを、基準データと結合させたデータである。
【0044】
結合データ生成部74は、総結合データ生成部74aとグループ別分割部74bとを備える。総結合データ生成部74aは、基準データ及び対象データを、基準データ取得部71及び対象データ取得部72から取得する。続いて、総結合データ生成部74aは、取得した基準データ及び対象データを、基準データの動作時間及び対象データの検出時間で対応付けて結合した総結合データを生成する。グループ別分割部74bは、総結合データにおける基準データのグループに基づいて総結合データをグループ別に分割又は抽出することにより、グループ別にグループ別結合データを生成する。
【0045】
統計量算出部75は、統計的手法を用いて、グループ別分割部74bにより生成されたグループ別結合データについての統計量を算出する。統計量を評価指標とすることで、生産設備1の駆動装置の状態の正常/異常を評価することができる。統計量は、上述したとおりである。
【0046】
処理時間算出部76は、グループ別分割部74bにより生成されたグループ別結合データに基づいて、生産設備1の駆動装置による動作開始時刻から動作完了時刻までの動作処理時間を算出する。動作処理時間は、駆動装置の異常時には、正常時に比べて長くなるなどによって、動作処理時間を評価指標とすることができる。
【0047】
第二データベース80は、複数の第一データ処理部60のそれぞれの統計量算出部62及び処理時間算出部63によって生成された統計量及び動作処理時間を記憶する。さらに、第二データベース80は、複数の第二データ処理部70のそれぞれの統計量算出部75及び処理時間算出部76によって生成された統計量及び動作処理時間を記憶する。上記処理が継続されることによって、第二データベース80には、複数個の工作物の分の統計量及び動作処理時間が記憶される。
【0048】
評価部90は、第二データベース80に閾値決定対象として記憶された統計量及び動作処理時間に基づいて、閾値を決定する閾値決定部91を備える。さらに、評価部90は、当該閾値と第二データベース80に判定対象として記憶された統計量及び動作処理時間とに基づいて、生産設備1の駆動装置の状態を判定する判定部92を備える。判定部92は、閾値と判定対象としての統計量又は動作処理時間とを比較して、駆動装置の状態を判定する。
【0049】
さらに、評価部90は、判定部92の結果に応じた処置を実施する処置部93を備える。処置部93は、例えば、生産設備1の駆動装置の状態として、生産設備1の評価対象の部位が異常の場合には、当該部位に応じ、且つ、異常に応じた処置を行う。例えば、処置部93は、操作盤26に警告表示を行ったり、CNC装置31又はPLC32に対して制御停止処置を行ったりする。
【0050】
(3.データ処理部60、70及び評価部90の例示)
(3-1.主軸装置16に関する処理)
図3に示す第一データ処理部60及び評価部90において、主軸装置16に関する処理について、
図3及び
図5を参照して説明する。主軸装置16に関して、第一データ処理部60における対象データ取得部61は、温度検出器16fにより検出された軸受16aの排気等温度、外気温検出器25により検出された外気温を取得する。
【0051】
統計量算出部62は、対象データ取得部61が取得したデータを基に、統計量を算出する。対象データは、検出した時刻(日時)と、当該時刻において検出器により検出された検出データとを含む。そこで、統計量算出部62は、複数の対象データのそれぞれの検出時間で対応付けて、複数の対象データを結合する。
【0052】
そして、
図5に示すように、統計量算出部62は、検出時間で対応付けられた排気等温度と外気温との関係を統計量の一つとして算出する。つまり、統計量算出部62は、排気等温度と外気温を各軸としたグラフに、検出時間で対応付けられた排気等温度と外気温との点をプロットする。排気等温度と外気温とは、所定の関係性を有する。つまり、
図5に示すように、駆動装置16bが正常時には、外気温が高くなるほど、排気温度も高くなる。そして、第二データベース80には、統計量としての排気等温度と外気温との関係が記憶される。
【0053】
閾値決定部91は、
図5のハッチングにて示すように、閾値決定対象としての統計量のデータを用いて、当該関係の閾値を決定する。
図5の閾値内が、駆動装置16bが正常である範囲であり、閾値外が、駆動装置16bが異常である範囲である。判定部92は、判定対象としての統計量のデータが、
図5の閾値内であるか閾値外であるかを判定する。判定部92は、閾値内であれば正常と判定し、閾値外であれば異常と判定する。
【0054】
次に、
図4に示す第二データ処理部70及び評価部90において、主軸装置16に関する第一の処理について、
図4、
図6-
図8を参照して説明する。主軸装置16に関して、第二データ処理部70における基準データ取得部71は、回転速度検出器16cにより検出された回転速度を基準データとして取得する。基準データは、何れも、グループ分けの基準である回転速度が検出された時刻(日時)と、回転速度に関する検出データを含む。
【0055】
第二データ処理部70における対象データ取得部72は、対象データとして、振動検出器16eにより検出された振動を取得する。対象データも、基準データと同様に、検出された時刻(日時)と、検出データを含む。そして、基準データ取得部71が基準データを取得し、且つ、対象データ取得部72が対象データを取得したことを、データ取得判定部73が判定すると、総結合データ生成部74aは、基準データ及び対象データを結合する。回転速度に関する基準データと、振動に関する対象データとが、時間で対応付けて結合された場合、
図6の上段及び下段のグラフで示すことができるようなデータ構造を有している。続いて、グループ別分割部74bは、回転速度が略一定となる時間帯における振動データ、すなわち、
図6におけるC部分及びD部分の振動データを分割して切り取る。
【0056】
統計量算出部75は、
図7に示すように、切り取った振動データに対して二乗平均平方根(RMS)を統計量として算出する。また、統計量算出部75は、二乗平均平方根に代えて、
図8に示すように、切り取った振動データに対してFFTなどの周波数解析を行い、その結果を統計量として算出するようにしてもよい。他に、統計量算出部75は、振動データの標準偏差、平均値、最大値、最小値などを振動に関する統計量としてもよい。そして、第二データベース80には、統計量としての振動に関するデータが記憶される。
【0057】
閾値決定部91は、
図7に示すように、統計量として二乗平均平方根を用いる場合には、閾値決定対象としての統計量のデータを用いて、閾値を決定する。当該閾値は、二乗平均平方根の最大値を参照して、当該最大値よりも許容範囲を考慮した値とされる。
図7の閾値以下の範囲が、駆動装置16bが正常である範囲であり、閾値より大きい範囲が、駆動装置16bが異常である範囲である。判定部92は、判定対象としての統計量のデータが、
図7の閾値以下であるか閾値より大きいかを判定する。判定部92は、閾値以下であれば正常と判定し、閾値より大きければ異常と判定する。
【0058】
また、閾値決定部91は、
図8に示すように、統計量として周波数解析結果を用いる場合には、閾値決定対象としての統計量のデータを用いて、周波数毎の閾値を決定する。判定部92は、判定対象としての統計量のデータが
図8の周波数毎の閾値以下であるか、閾値より大きいかを判定する。判定部92は、周波数毎の閾値以下であれば正常と判定し、閾値より大きければ異常と判定する。
【0059】
次に、
図4に示す第二データ処理部70及び評価部90において、主軸装置16に関する第二の処理について、
図4、
図6及び
図9を参照して説明する。主軸装置16に関して、第二データ処理部70における基準データ取得部71は、回転速度検出器16cにより検出された回転速度を基準データとして取得する。ここで、以下には、主軸装置16が、回転速度指令に基づいて、停止状態(0min
-1)から2000min
-1に変更し、所定時間経過後に4000min
-1に変更し、さらに所定時間経過後に停止させる場合を例にあげる。
【0060】
第二データ処理部70における対象データ取得部72は、対象データとして、動力検出器16dにより検出された動力を取得する。そして、基準データ取得部71が基準データを取得し、且つ、対象データ取得部72が対象データを取得したことを、データ取得判定部73が判定すると、総結合データ生成部74aは、基準データ及び対象データを結合する。回転速度に関する基準データと、動力に関する対象データとが、時間で対応付けて結合された場合、
図6の上段及び中段のグラフで示すことができるようなデータ構造を有している。続いて、グループ別分割部74bは、回転速度が変化している時間帯における振動データ、すなわち、
図6におけるA部分及びB部分の回転速度データ及び動力データを分割して切り取る。
【0061】
処理時間算出部76は、
図6のA部分のデータに基づいて、主軸装置16の回転動作に関し、動作処理時間を算出する。詳細には、処理時間算出部76は、回転速度が0から2000min
-1に向けての変更開始時刻から、2000min
-1への到達時刻までの動作処理時間、すなわち、回転速度が0から2000min
-1に到達所要時間を算出する。つまり、動力が0から大きくなった時刻を動作開始時刻とし、動力が0に戻った時刻を動作完了時刻とし、動作開始時刻から動作完了時刻までの動作処理時間が算出される。
【0062】
さらに、回転速度の到達所要時間である動作処理時間は、回転速度に応じて取得され、第二データベース80に記憶される。つまり、0から2000min-1の動作処理時間、2000から4000min-1の動作処理時間のそれぞれが、第二データベース80に記憶される。
【0063】
閾値決定部91は、
図9に示すように、閾値決定対象としての0から2000min
-1の動作処理時間のデータを用いて、0から2000min
-1の閾値を決定する。同様に、閾値決定部91は、
図9に示すように、閾値決定対象としての2000から4000min
-1の動作処理時間のデータを用いて、2000から4000min
-1の閾値を決定する。判定部92は、判定対象としての動作処理時間が、回転速度に応じた閾値以下であれば正常と判定し、閾値より大きければ異常と判定する。
【0064】
ここで、判定部92は、上記のように、個別の閾値を用いて個別の判定を行うことができる。この他に、上述した3種類の判定方法を用いることで、主軸装置16の状態判定をより高度に行うことができる。この場合の判定部92の判定方法について、
図10を参照して説明する。
【0065】
ここで、異常の兆候検知対象として、以下の場合を例にあげる。第一の兆候検知対象は、軸受16aの焼き付きなどの故障の兆候検知である(
図10の異常1)。第二の兆候検知対象は、軸受16aの破損又は劣化などの故障の兆候検知である(
図10の異常2)。第三の兆候検知対象は、駆動装置16b(モータ)の故障の兆候検知である(
図10の異常3)。
【0066】
図10において、判定1は、
図5に示すように、統計量として排気等温度と外気温との関係を用いた場合の判定方法である。判定2は、
図7又は
図8に示すように、統計量として振動に関する判定方法である。判定3は、
図9に示すように、回転速度の到達所要時間(動作処理時間)に関する判定方法である。
【0067】
図10に示すように、判定1,2,3の全てで正常と判定された場合には、故障兆候検知対象は、全て正常であると判定される。判定1,2で正常、判定3で異常と判定された場合には、第三の兆候検知対象が異常であると判定される。判定1,3で正常、判定2で異常と判定された場合には、第二の兆候検知対象が異常であると判定される。判定1で正常、判定2,3で異常と判定された場合には、第二、第三の兆候検知対象が異常であると判定される。
【0068】
判定2,3で正常、判定1で異常と判定された場合には、第一の兆候検知対象が異常であると判定される。判定2で正常、判定1,3で異常と判定された場合には、第一、第三の兆候検知対象が異常であると判定される。判定3で正常、判定1,2で異常と判定された場合には、第一、第二の兆候検知対象が異常であると判定される。判定1,2,3の全てで異常と判定された場合には、故障兆候検知対象は、全て異常であると判定される。
【0069】
そして、処置部93は、判定部92の結果に応じた処置を実施する。つまり、生産設備1の駆動装置16bの状態の結果を好適に利用することができる。
【0070】
(3-2.APC装置18に関する処理)
データ処理部60及び評価部90において、APC装置18に関する第一の処理について、
図3及び
図11を参照して説明する。APC装置18に関して、第一データ処理部60における対象データ取得部61は、ON/OFF検出器18dにより検出されたパレットPのクランプ動作及びアンクランプ動作の動作開始信号及び動作完了信号を取得する。さらに、対象データ取得部61は、温度検出器18eにより検出されたクランプ装置18cの流体の温度を取得する。
【0071】
統計量算出部62は、対象データ取得部61が取得したデータを基に、統計量を算出する。
図11に示すように、統計量算出部62は、検出時間で対応付けられた、クランプ動作及びアンクランプ動作の動作処理時間と、クランプ装置18cの流体温度との関係を統計量の一つとして算出する。ここでの動作処理時間とは、クランプ動作開始時刻からクランプ動作完了時刻までの時間、及び、アンクランプ動作開始時刻からアンクランプ動作完了時刻である。
【0072】
つまり、統計量算出部62は、動作処理時間と流体温度を各軸としたグラフに、検出時間で対応付けられた動作処理時間と流体温度との点をプロットする。
図11に示すように、動作処理時間と流体温度とは、所定の関係性を有する。つまり、流体温度が高くなるほど、動作処理時間が短くなる。反対に、流体温度が低くなるほど、動作処理時間が長くなる。これは、シリンダ装置などの駆動装置における流体の粘性などの影響によるものである。そして、第二データベース80には、統計量として、動作処理時間と流体温度との関係が記憶される。
【0073】
閾値決定部91は、
図11の各プロットの位置に基づいて、例えば、最小二乗近似などを用いて、さらに許容量を考慮して、閾値を決定する。判定部92は、当該閾値と判定対象としての統計量のデータとを比較することにより、クランプ装置18cの異常を判定する。
【0074】
第一データ処理部60及び評価部90において、APC装置18に関する第二の処理について、
図3及び
図12-
図13を参照して説明する。APC装置18に関して、第一データ処理部60における対象データ取得部61は、動力検出器18fにより検出されたパレット駆動装置18bの動力(例えばトルク、モータの電流値)を取得する。
【0075】
統計量算出部62は、対象データ取得部61が取得したパレット駆動装置18bの動力のデータを基に、統計量を算出する。
図12の破線枠にて示すように、統計量算出部62は、動力のデータにおいて、パレット駆動装置18bの始動時におけるピーク値P1を統計量として算出する。そして、第二データベース80には、統計量として、ピーク値P1が記憶される。
【0076】
閾値決定部91は、
図13に示すように、閾値決定対象の統計量であるピーク値P1のデータを用いて閾値を決定する。判定部92は、当該閾値と判定対象としての統計量であるピーク値P1のデータとを比較することにより、パレット駆動装置18bの異常を判定する。そして、処置部93は、判定部92の結果に応じた処置を実施する。つまり、生産設備1のパレット駆動装置18bの状態の結果を好適に利用することができる。
【0077】
また、パレット駆動装置18bが流体圧を駆動源としている場合には、上記のモータの電流値などに代えて、評価部90は、例えば主軸装置16と同様に、振動検出器の振動を取得してパレット駆動装置18bの異常を判定する。
【0078】
(3-3.ATC装置20に関する処理)
第一データ処理部60及び評価部90において、ATC装置20に関する第一の処理について、
図3及び
図14を参照して説明する。ATC装置20に関して、第一データ処理部60における対象データ取得部61は、ON/OFF検出器20eにより検出されたATCアーム20aのクランプ動作及びアンクランプ動作に関し、動作開始信号及び動作完了信号を取得する。さらに、対象データ取得部61は、温度検出器20fにより検出されたクランプ装置20cの流体の温度を取得する。
【0079】
統計量算出部62は、対象データ取得部61が取得したデータを基に、統計量を算出する。
図14に示すように、統計量算出部62は、検出時間で対応付けられた、クランプ動作及びアンクランプ動作の動作処理時間と、クランプ装置20cの流体温度との関係を統計量の一つとして算出する。ここでの動作処理時間とは、クランプ動作開始時刻からクランプ動作完了時刻までの時間、及び、アンクランプ動作開始時刻からアンクランプ動作完了時刻までの時間である。
【0080】
つまり、統計量算出部62は、動作処理時間と流体温度を各軸としたグラフに、検出時間で対応付けられた動作処理時間と流体温度との点をプロットする。
図14に示すように、動作処理時間と流体温度とは、所定の関係性を有する。つまり、流体温度が高くなるほど、動作処理時間が短くなる。反対に、流体温度が低くなるほど、動作処理時間が長くなる。これは、シリンダ装置などの駆動装置における流体の粘性などの影響によるものである。そして、第二データベース80には、統計量として、動作処理時間と流体温度との関係が記憶される。
【0081】
閾値決定部91は、
図14の各プロットの位置に基づいて、例えば、最小二乗近似などを用いて、さらに許容量を考慮して、閾値を決定する。判定部92は、当該閾値と判定対象としての統計量のデータとを比較することにより、クランプ装置20cの異常を判定する。
【0082】
第一データ処理部60及び評価部90において、ATC装置20に関する第二の処理について、
図3及び
図14を参照して説明する。ATC装置20に関して、第一データ処理部60における対象データ取得部61は、さらに、ON/OFF検出器20eにより検出されたシャッターの開動作開始信号、開動作完了信号、閉動作開始信号及び閉動作完了信号を取得する。さらに、対象データ取得部61は、温度検出器20fにより検出されたシャッター開閉装置20dの流体の温度を取得する。
【0083】
統計量算出部62は、検出時間で対応付けられた、シャッターの開閉の動作処理時間と、シャッター開閉装置20dの流体温度との関係を統計量の一つとして算出する。ここでの動作処理時間とは、シャッターの開動作の開始時刻から完了時刻までの動作処理時間、及び、シャッターの閉動作の開始時刻から完了時刻までの動作処理時間である。この場合、シャッター開閉装置20dに関する統計量、閾値については、クランプ装置20cと同様に、
図14に示すようになる。また、判定部92も同様である。
【0084】
第一データ処理部60及び評価部90において、ATC装置20に関する第三の処理について、
図3及び
図15-
図16を参照して説明する。ATC装置20に関して、第一データ処理部60における対象データ取得部61は、動力検出器20gにより検出されたアーム駆動装置20bの動力(例えばトルク、モータの電流値)を取得する。
【0085】
統計量算出部62は、対象データ取得部61が取得したアーム駆動装置20bの動力のデータを基に、統計量を算出する。
図15の破線枠にて示すように、統計量算出部62は、動力のデータにおいて、アーム駆動装置20bの始動時におけるピーク値P2を統計量として算出する。そして、第二データベース80には、統計量として、ピーク値P2が記憶される。
【0086】
閾値決定部91は、
図16に示すように、閾値決定対象の統計量であるピーク値P2のデータを用いて閾値を決定する。判定部92は、当該閾値と判定対象としての統計量であるピーク値P2のデータとを比較することにより、アーム駆動装置20bの異常を判定する。
【0087】
ここで、判定部92は、上記のように、個別の閾値を用いて個別の判定を行うことができる。この他に、上述した3種類の判定方法を用いることで、ATC装置20の状態判定をより高度に行うことができる。この場合の判定部92の判定方法について、
図10を参照して説明する。
【0088】
ここで、異常の兆候検知対象として、以下の場合を例にあげる。第一の兆候検知対象は、シャッターのシャッター開閉装置20dの劣化又は破損などの故障の兆候検知である(
図10の異常1)。第二の兆候検知対象は、クランプ装置20cの劣化又は破損などの故障の兆候検知である(
図10の異常2)。第三の兆候検知対象は、アーム駆動装置20b(モータ)の故障の兆候検知である(
図10の異常3)。
【0089】
図10において、判定1は、統計量としてシャッターの開閉の動作処理時間と流体温度との関係を用いた場合の判定方法である。判定2は、
図14に示すように、統計量としてクランプ装置のクランプ動作及びアンクランプ動作の動作処理時間と流体温度との関係を用いた場合の判定方法である。判定3は、
図16に示すように、アーム駆動装置20bの動力の始動時のピーク値P2に関する判定方法である。
【0090】
図10に示すように、判定1,2,3の全てで正常と判定された場合には、故障兆候検知対象は、全て正常であると判定される。判定1,2で正常、判定3で異常と判定された場合には、第三の兆候検知対象が異常であると判定される。判定1,3で正常、判定2で異常と判定された場合には、第二の兆候検知対象が異常であると判定される。判定1で正常、判定2,3で異常と判定された場合には、第二、第三の兆候検知対象が異常であると判定される。
【0091】
判定2,3で正常、判定1で異常と判定された場合には、第一の兆候検知対象が異常であると判定される。判定2で正常、判定1,3で異常と判定された場合には、第一、第三の兆候検知対象が異常であると判定される。判定3で正常、判定1,2で異常と判定された場合には、第一、第二の兆候検知対象が異常であると判定される。判定1,2,3の全てで異常と判定された場合には、故障兆候検知対象は、全て異常であると判定される。
【0092】
そして、処置部93は、判定部92の結果に応じた処置を実施する。つまり、生産設備1のATC装置20の状態の結果を好適に利用することができる。
【0093】
(3-4.チップコンベア21に関する処理)
第一データ処理部60及び評価部90において、チップコンベア21に関する処理について、
図3及び
図17-
図21を参照して説明する。チップコンベア21に関して、第一データ処理部60における対象データ取得部61は、第一動力検出器21e及び第二動力検出器21fにより検出された第一駆動装置21c及び第二駆動装置21dの動力(例えばトルク、モータの電流値)を取得する。
【0094】
統計量算出部62は、対象データ取得部61が取得した第一駆動装置21c及び第二駆動装置21dの動力のデータを基に、統計量を算出する。
図17に示すように、統計量算出部62は、動力のデータにおいて、第一駆動装置21cにおける平均値Av及びピーク-ピーク値P-Pを統計量として算出する。また、統計量算出部62は、動力のデータにおいて、第二駆動装置21dにおける平均値Av及びピーク-ピーク値P-Pを統計量として算出する。なお、ピーク-ピーク値とは、最大ピーク値と最小ピーク値との差である。そして、第二データベース80には、統計量として、第一駆動装置21cの平均値Av及びピーク-ピーク値P-P、第二駆動装置21dの平均値Av及びピーク-ピーク値P-Pが記憶される。
【0095】
閾値決定部91は、
図18に示すように、閾値決定対象の統計量である第一駆動装置21cの平均値Avのデータを用いて閾値を決定する。また、閾値決定部91は、
図19に示すように、閾値決定対象の統計量である第二駆動装置21dの平均値Avのデータを用いて閾値を決定する。閾値決定部91は、
図20に示すように、閾値決定対象の統計量である第一駆動装置21cのピーク-ピーク値P-Pのデータを用いて閾値を決定する。閾値決定部91は、
図21に示すように、閾値決定対象の統計量である第二駆動装置21dのピーク-ピーク値P-Pのデータを用いて閾値を決定する。
【0096】
判定部92は、第一駆動装置21cの平均値Av又はピーク-ピーク値P-Pについて、当該閾値と判定対象としての統計量のデータとを比較することにより、第一駆動装置21cの異常を判定する。また、判定部92は、第二駆動装置21dの平均値Av又はピーク-ピーク値P-Pについて、当該閾値と判定対象としての統計量のデータとを比較することにより、第二駆動装置21dの異常を判定する。
【0097】
例えば、判定部92は、第一コンベア21aに切粉が過度に堆積したことにより第一コンベア21aがガイドから外れる異常、第一コンベア21aに切粉が過度に堆積したことにより第一コンベア21aが破断する異常を判定する。また、判定部92は、第二コンベア21bに切粉が過度に堆積したことにより第二コンベア21bがガイドから外れる異常、第二コンベア21bに切粉が過度に堆積したことにより第二コンベア21bが破断する異常を判定する。
【0098】
そして、処置部93は、判定部92の結果に応じた処置を実施する。つまり、生産設備1のチップコンベア21の状態の結果を好適に利用することができる。
【0099】
(3-5.その他)
移動装置15についても、上述したように、他の装置と同様に、異常の判定を行うことができる。また、工具マガジン装置19についても、同様に、異常の判定を行うことができる。
【0100】
また、上記において、第一データ処理部60と第二データ処理部70とは、対象データと統計量の関係、対象データと動作処理時間との関係などに応じて、選択的に用いることができる。例えば、
図5を参照して、排気等温度と外気温との関係に関して、第一データ処理部60の例として説明した。当該関係に関して、例えば、回転速度に応じた関係とする場合には、第二データ処理部70を用いることになる。
【0101】
また、解析装置41は、Ethernet(登録商標)などのネットワークプロトコルや、バス(コンピュータ)で、PLC32、CNC装置31、外部装置などとも接続し、対象データとして、生産設備1や、他の搬送装置などの生産設備の周辺装置などに関するデータや、接続している生産設備や各種装置内のON/OFF状態も取得できる。これらの対象データも、グループ分けの対象とすることもできる。また、当該データを、データのグループ分けの基準としての基準データとすることもできる。例えば、ON/OFF状態に基づいて、ON状態からOFF状態までグループ単位とすることができる。
【0102】
また、解析装置41の複数の第一データ処理部60、複数の第二データ処理部70及び評価部90は、Ethernet(登録商標)やバス(コンピュータ)の通信経路を使用して、算出状態、閾値及び判定状態(以下、総称して各種状態と称する)を変更することができる。そして、当該各種状態を変更することで、生産設備1や他の搬送装置などの生産設備の周辺装置に対しても、当該各種状態に関するデータを取得することができ、当該各種状態に応じた統計量に基づいて生産設備や各種装置の状態を判定して処置することができる。
【符号の説明】
【0103】
1:生産設備、16:主軸装置、16a:軸受、16b:駆動装置、16c:回転速度検出器、16d:動力検出器、16e:振動検出器、16f:温度検出器、18:自動パレット交換装置、18a:パレット本体、18b:パレット駆動装置、18c:クランプ装置、18d:ON/OFF検出器、18e:温度検出器、18f:動力検出器、20:自動工具交換装置、20a:アーム、20b:アーム駆動装置、20c:クランプ装置、20d:シャッター開閉装置、20e:ON/OFF検出器、20f:温度検出器、20g:動力検出器、21:チップコンベア、21a:第一コンベア、21b:第二コンベア、21c:第一駆動装置、21d:第二駆動装置、21e:第一動力検出器、21f:第二動力検出器、25:外気温検出器、30:制御装置、31:CNC装置、32:PLC、41:解析装置、60:第一データ処理部、61:対象データ取得部、62:統計量算出部、63:処理時間算出部、70:第二データ処理部、71:基準データ取得部、72:対象データ取得部、73:データ取得判定部、74:結合データ生成部、74a:総結合データ生成部、74b:グループ別分割部、75:統計量算出部、76:処理時間算出部、90:評価部、91:閾値決定部、92:判定部、93:処置部、W:生産対象物