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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】遠隔操作装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
E02F9/20 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017165257
(22)【出願日】2017-08-30
(65)【公開番号】P2019044352
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】塙 裕彰
(72)【発明者】
【氏名】山崎 峻一
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-277976(JP,A)
【文献】特開2000-032325(JP,A)
【文献】特開2009-270321(JP,A)
【文献】特開2009-237967(JP,A)
【文献】特開平07-114816(JP,A)
【文献】特開2003-099124(JP,A)
【文献】特開2009-016078(JP,A)
【文献】特開平11-050493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延在する棒状の操作レバーと前記操作レバーが挿通されるリング状の保持部とを含む操作部材の前記保持部に連結されて前記操作部材を引っ張る紐状部材であって、前記上下方向に直交すると共に互いに直交する前後方向及び左右方向において、前記保持部から前記操作レバーの前側かつ左側に延在する第1紐状部材と、前記保持部から前記操作レバーの前側かつ右側に延在する第2紐状部材と、前記保持部から前記操作レバーの後側かつ右側に延在する第3紐状部材と、前記保持部から前記操作レバーの後側かつ左側に延在する第4紐状部材と、を含む前記紐状部材と、
前記紐状部材を巻き取り可能であると共に繰り出し可能なリール部であって、前記第1紐状部材が巻き付けられる第1リール部と、前記第2紐状部材が巻き付けられる第2リール部と、前記第3紐状部材が巻き付けられる第3リール部と、前記第4紐状部材が巻き付けられる第4リール部と、を含む前記リール部と、
前記リール部を回転駆動する電動モータであって、前記第1リール部を回転駆動する第1電動モータと、前記第2リール部を回転駆動する第2電動モータと、前記第3リール部を回転駆動する第3電動モータと、前記第4リール部を回転駆動する第4電動モータと、を含む前記電動モータと、
前記第1電動モータ、前記第2電動モータ、前記第3電動モータ、及び前記第4電動モータを制御する制御部と、を備える遠隔操作装置。
【請求項2】
前記操作部材と前記リール部との間に配置され、前記第1紐状部材、前記第2紐状部材、前記第3紐状部材、及び前記第4紐状部材の少なくとも何れかに接すると共に、前記第1紐状部材、前記第2紐状部材、前記第3紐状部材、及び前記第4紐状部材の少なくとも何れかを湾曲させる中継部材を更に備える請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項3】
前記第1紐状部材、前記第2紐状部材、前記第3紐状部材、及び前記第4紐状部材の繰り出し長さを検出する繰り出し長さ検出部を更に備える請求項1又は2に記載の遠隔操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建設機械などを遠隔操作することが可能な遠隔操作システムがある(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の遠隔操作システムは、建設機械を操作する操作手段(例えば操作レバー)と、操作手段を駆動する操作駆動手段と、操作指令情報に基づいて操作駆動手段を制御する制御部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-350535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の遠隔操作装置は、操作手段を駆動する操作駆動手段として、例えば空気シリンダを備えていた。また、このような遠隔操作装置では、空気シリンダに圧縮空気を供給するためのエアコンプレッサ等を配置する必要があった。さらに、エアコンプレッサと空気シリンダとを接続し、圧縮空気が流通する配管等を設置する必要があった。そのため、従来の遠隔操作装置では、操作駆動手段の配置の自由度が制限されていた。本開示は、操作部材を駆動するための駆動ユニットの配置の自由度を増やすことが可能な遠隔操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の遠隔操作装置は、上下方向に延在する棒状の操作レバーと操作レバーが挿通されるリング状の保持部とを含む操作部材の保持部に連結されて操作部材を引っ張る紐状部材であって、上下方向に直交すると共に互いに直交する前後方向及び左右方向において、保持部から操作レバーの前側かつ左側に延在する第1紐状部材と、保持部から操作レバーの前側かつ右側に延在する第2紐状部材と、保持部から操作レバーの後側かつ右側に延在する第3紐状部材と、保持部から操作レバーの後側かつ左側に延在する第4紐状部材と、を含む紐状部材と、紐状部材を巻き取り可能であると共に繰り出し可能なリール部であって、第1紐状部材が巻き付けられる第1リール部と、第2紐状部材が巻き付けられる第2リール部と、第3紐状部材が巻き付けられる第3リール部と、第4紐状部材が巻き付けられる第4リール部と、を含むリール部と、リール部を回転駆動する電動モータであって、第1リール部を回転駆動する第1電動モータと、第2リール部を回転駆動する第2電動モータと、第3リール部を回転駆動する第3電動モータと、第4リール部を回転駆動する第4電動モータと、を含む電動モータと、第1電動モータ、第2電動モータ、第3電動モータ、及び第4電動モータを制御する制御部と、を備える。
【0006】
この遠隔操作装置では、電動モータを駆動してリール部を回転させて紐状部材を巻き取ることで、操作部材を引っ張って操作することができる。紐状部材を任意の方向に延在させて、リール部を用いて紐状部材を巻き取り、または、繰り出すことができるので、紐状部材が延在する範囲を設定して、操作部材を駆動するための紐状部材及びリール部の配置の自由度を増やすことができる。また、電動モータを用いて、リール部を回転駆動して操作部材を操作することができるので、従前のように、空気シリンダ、エアコンプレッサ及び配管等の設備を配置する必要がなく、省スペース化を図る共に配置の自由度を向上させることができる。
【0008】
また、遠隔操作装置は、操作部材とリール部との間に配置され、第1紐状部材、第2紐状部材、第3紐状部材、及び第4紐状部材の少なくとも何れかに接すると共に、第1紐状部材、第2紐状部材、第3紐状部材、及び第4紐状部材の少なくとも何れかを湾曲させる中継部材を更に備える構成でもよい。この構成の遠隔操作装置によれば、中継部材を用いて紐状部材を湾曲させて、紐状部材が延在する方向を変えることができるので、紐状部材及びリール部の配置の自由度を更に向上させることができる。また、遠隔操作装置は、第1紐状部材、第2紐状部材、第3紐状部材、及び第4紐状部材の繰り出し長さを検出する繰り出し長さ検出部を更に備える構成でもよい。この構成の遠隔操作装置によれば、紐状部材の繰り出し長さを把握することができるので、操作部材を操作する際の操作量を適切に把握することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の遠隔操作装置によれば、操作部材を駆動するための紐状部材及びリール部を備えているので、配置の自由度が向上された遠隔操作装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の遠隔操作システムが適用される建設機械を示す側面図である。
図2図1に示す建設機械の操縦席を示す正面図である。
図3図2に示す操縦席の側面図である。
図4図2に示す操縦席の平面図である。
図5図5(a)は、作業レバーの前後方向における動きを示す側面図である。図5(b)は、作業レバーの左右方向における動きを示す正面図である。
図6】走行レバーの前後方向における動きを示す側面図である。
図7】本開示の遠隔操作システムを示すブロック構成図である。
図8】作業レバーを駆動する駆動ユニットを示す平面図である。
図9図8に示す電動リールを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
まず、図1を参照して、遠隔操作システム(遠隔操作装置)1が適用される建設機械2について説明する。建設機械2は、例えばバックホウである。建設機械2は、建設機械2を走行させる走行体3と、走行体3の上部に設けられ旋回可能な旋回体4と、旋回体4に取り付けられた作業部5と、を備える。作業部5は、ブーム6、アーム7及びバケット8を含む。なお、建設機械2は、バックホウに限定されず、例えば、ブルドーザ、クレーン、クローラダンプなどその他の建設機械でもよい。また、遠隔操作システム1が適用される作業機械は、建設機械に限定されず、農業機械、搬送機械、作業用の車両などその他の作業機械でもよい。
【0013】
旋回体4は、操縦席9を含み、操縦席9には、後述する操作レバー(操作部材)10が設けられている。旋回体4には、エンジン、発電機、バッテリ、油圧ポンプ等が搭載されている。また、各図において直交する3方向を前後方向X、左右方向Y、上下方向Zとして図示している。前後方向X、左右方向Y、上下方向Zは、操縦席9を基準とする。走行体3は、左クローラ3a及び右クローラ3bを備える。建設機械2は、左クローラ3a及び右クローラ3bの回転方向を操作して、走行体3の前進、後退、方向転換を行うことができる。旋回体4は、走行体3に対して、上下方向Zに延在する回転軸線回りに回転可能となっている。建設機械2は、旋回体4を右旋回及び左旋回させることができる。
【0014】
ブーム6は、旋回体4の前方に取り付けられ、左右方向Yに延在する回転軸線回りに揺動可能となっている。ブーム6の基端部6aは、旋回体4に連結されている。旋回体4には、ブーム6を揺動させるための油圧シリンダ(不図示)が設けられている。建設機械2は、油圧シリンダを駆動して、ブーム6を揺動させることで、ブーム6の先端部6bを上げ下げすることができる。アーム7は、ブーム6に取り付けられ、左右方向Yに延在する回転軸線回りに揺動可能となっている。アーム7の基端部7aは、ブーム6の先端部6bに連結されている。ブーム6には、アーム7を揺動させるための油圧シリンダ11が設けられている。建設機械2は、油圧シリンダ11を駆動して、アーム7を揺動させることで、アーム7を伸ばし、かき込むことができる。アーム7を伸ばすとは、アーム7の先端部7bを操縦席9から離す方向の動きである。アーム7をかき込むとは、アーム7の先端部7bを操縦席9に近づける方向の動きである。
【0015】
バケット8は、アーム7に取り付けられ、左右方向Yに延在する回転軸線回りに揺動可能となっている。バケット8の基部8aは、アーム7の先端部7bに連結されている。アーム7には、バケット8を揺動させるための油圧シリンダ12が設けられている。建設機械2は、油圧シリンダ12を駆動して、バケット8を揺動させることで、バケット8によるかき込み動作を行うことができ、バケット8内の対象物を投下する(ダンプする)動作を行うことができる。バケット8によるかき込みとは、バケット8の先端部8bを操縦席9に近づける方向の動きである。バケット8内の対象物を投下する動きは、バケット8の先端部8bを操縦席9から離す方向の動きである。
【0016】
図2図4に示される操縦席9は、建設機械2を操縦する操縦者が着席可能な座席である。操縦席9は、シート13、背もたれ14及び左右の肘掛け部15,16を備える。また、操縦席9の周囲には、建設機械2を操縦するための複数の操作レバー10が設けられている。複数の操作レバー10としては、左作業レバー17、右作業レバー18、左走行レバー19及び右走行レバー20がある。なお、以下の説明において、左作業レバー17、右作業レバー18、左走行レバー19及び右走行レバー20を区別しない場合には、操作レバー10と記載する。
【0017】
左作業レバー17は、例えば左側の肘掛け部15の前側の天面15aに設けられている。左作業レバー17は、図2図3及び図5に示されるように、上下方向Zに延在し、中立点(中立位置)において、上端部17aがやや前方に傾いて配置されている(図5(a)参照)。前後方向Xから見た場合には、左作業レバー17は、中立点において、上下方向Zに沿って直立している(図5(b)参照)。なお、中立点とは、操作レバー10による入力値が0となる位置であり、停止を指示する位置である。中立点において、操作レバー10は、上下方向Zに沿って直立している状態でもよく、後方に傾斜している状態でもよい。また、前後方向Xから見た場合に、操作レバー10は、中立点において、例えばシート13側に傾いていてもよい。図5(a)及び図5(b)では、実線で示された状態が中立点の左作業レバー17を示している。左作業レバー17は、下端部17bを基点として揺動可能である。左作業レバー17の上端部17aは、前後方向X及び左右方向に移動可能となっている。左作業レバー17は、旋回体4を旋回させる操作に利用されると共に、アーム7を伸ばしたり、かき込んだりする操作に利用される。
【0018】
操縦者は、左作業レバー17を前後方向Xに操作することで、アーム7を操作することができる。具体的には、左作業レバー17の上端部17aを前方に移動させると、アーム7が伸ばされ、左作業レバー17の上端部17aを後方に移動させると、アーム7の先端部7bが操縦席9側に接近してかき込まれる。操縦者は、左作業レバー17を左右方向Yに操作することで、旋回体4を操作することができる。具体的には、左作業レバー17の上端部17aを左側に移動させると、旋回体4を左旋回させて、アーム7を左側に移動させることができ、左作業レバー17の上端部17aを右側に移動させると、旋回体4を右旋回させて、アーム7を右側に移動させることができる。
【0019】
右作業レバー18は、例えば右側の肘掛け部16の前側の天面16aに設けられている。右作業レバー18は、上下方向Zに延在し、中立点において、上端部18aがやや前方に傾いて配置されている。前後方向Xから見た場合には、右作業レバー18は、中立点において、上下方向Zに沿って直立している。図5(a)及び図5(b)では、実線で示された状態が中立点の右作業レバー18を示している。右作業レバー18は、下端部18bを基点として揺動可能である。右作業レバー18の上端部18aは、前後方向X及び左右方向Yに移動可能となっている。右作業レバー18は、ブーム6を上げ下げする操作に利用されると共に、バケット8の操作に利用される。
【0020】
操縦者は、右作業レバー18を前後方向Xに操作することで、ブーム6を操作することができる。具体的には、右作業レバー18の上端部18aを前方に移動させると、ブーム6の先端部6bを下げることができ、右作業レバー18の上端部18aを後方に移動させると、ブーム6の先端部7bを上げることができる。操縦者は、右作業レバー18を左右方向Yに操作することで、バケット8を操作することができる。具体的には、右作業レバー18の上端部18aを左側に移動させると、バケット8によるかき込み動作を行うことができ、右作業レバー18の上端部18aを右側に移動させると、バケット8内の対象物を投下させる動作を行うことができる。
【0021】
左走行レバー19は、例えば操縦席9の前方かつ中央より左側に配置されている。左走行レバー19は、操縦席9の前方の床面21から上方に伸びている。左走行レバー19は、図3図4及び図6に示されるように、床面21から前方に伸びる基部22と、基部22の先端22aから上方に伸びるレバー本体23と、を備える。基部22には、左ペダル24が連結されている。レバー本体23は、斜め後方に傾斜するように伸びている。左走行レバー19は、中立点において、例えばレバー本体23の上端部23aが下端部23bよりも後方に配置されている。また、レバー本体23の上端部23aには、左側に張り出すグリップ19aが設けられている。操縦者は、例えばグリップ19a又は左ペダル24を操作することで、左走行レバー19を操作することができる。
【0022】
図6では、実線で示された状態が中立点の左走行レバー19である。左走行レバー19は、下端部19bを基点として揺動可能である。左走行レバー19の上端部のグリップ19aは、前後方向Xに移動可能となっている。左走行レバー19は、左クローラ3aの回転操作の指示に利用される。操縦者は、左走行レバー19を前後方向Xに操作することで、左クローラ3aの回転方向を操作することができる。具体的には、左走行レバー19のグリップ19aを前方に移動させると、左クローラ3aが前進する方向に回転し、左走行レバー19のグリップ19aを後方に移動させると、左クローラ3aが後退する方向に回転する。左走行レバー19を中立点に配置すると、左クローラ3aの回転を停止させることができる。
【0023】
右走行レバー20は、例えば操縦席9の前方かつ中央より右側に配置されている。右走行レバー20は、操縦席9の前方の床面21から上方に伸びている。右走行レバー20は、床面21から前方に伸びる基部25と、基部25の先端部25aから上方に伸びるレバー本体26と、を備える。基部25には、右ペダル27が連結されている。レバー本体26は、斜め後方に傾斜するように伸びている。右走行レバー20は、中立点において、例えばレバー本体26の上端部26aが下端部26bよりも後方に配置されている。また、レバー本体26の上端部26aには、右側に張り出すグリップ20aが設けられている。操縦者は、例えばグリップ20a又は右ペダル27を操作することで、右走行レバー20を操作することができる。
【0024】
次に、建設機械2を遠隔操作する遠隔操作システム1について説明する。遠隔操作システム1は、図7に示されるように、各種操作レバー10を操作する複数の駆動ユニット31~34と、複数の駆動ユニット31~34を制御する制御ユニット35と、制御ユニット35に指令信号を送信する操作ユニット36とを備える。駆動ユニット31~34は、操縦席9の近傍に配置されて、操作レバー10を操作するものである。なお、図2図4では、駆動ユニット31~34が設置される前の状態を示している。駆動ユニット31~34としては、左作業レバー17を操作する駆動ユニット31と、右作業レバー18を操作する駆動ユニット32と、左走行レバー19を操作する駆動ユニット33と、右走行レバー20を操作する駆動ユニット34とがある。左作業レバー17を操作する駆動ユニット31は、図5及び図8に示されるように、左作業レバー17を保持する保持部37と、保持部37に連結されたワイヤー部材(紐状部材)38~41と、ワイヤー部材38~41を駆動する電動リール42~45と、を備える。
【0025】
保持部37は、例えばリング状を成し、左作業レバー17を保持する。保持部37は、左作業レバー17の上端部17a側に装着されている。左作業レバー17の上端部17a側の棒状部分が保持部37の開口部に挿通されている。保持部37には、複数のワイヤー部材38~41が連結されている。図8に示されるように、電動リール42は、左作業レバー17よりも前側であり、且つ、左側に配置されている。電動リール43は、左作業レバー17よりも前側であり、且つ、右側に配置されている。電動リール44は、左作業レバー17よりも後側であり、且つ、右側に配置されている。電動リール45は、左作業レバー17よりも後側であり、且つ、左側に配置されている。電動リール42~45の配置は任意に設定できる。
【0026】
ワイヤー部材38~41は、左作業レバー17を操作するための力を伝達可能な強度を有する。ワイヤー部材38~41は、図5(a)に示されるように、保持部37から前方に延在するワイヤー部材(第1紐状部材)38,39と、保持部37から後方に延在するワイヤー部材(第2紐状部材)40,41とを含む。ワイヤー部材38~41は、図5(b)に示されるように、保持部37から図示右側に延在するワイヤー部材(第1紐状部材)38,41と、保持部37から図示左側に延在するワイヤー部材(第2紐状部材)39,40とを含む。ワイヤー部材38の第1端部38aは保持部37に連結され、第2端部38bは電動リール42に連結されている。ワイヤー部材39の第1端部39aは保持部37に連結され、第2端部39bは電動リール43に連結されている。ワイヤー部材40の第1端部40aは保持部37に連結され、第2端部40bは電動リール44に連結されている。ワイヤー部材41の第1端部41aは保持部37に連結され、第2端部41bは電動リール44に連結されている。
【0027】
電動リール42は、図9に示されるように、ワイヤー部材38を巻き取り可能であると共に繰り出し可能なリール部46と、リール部46を回転駆動する電動モータ50と、を備えている。同様に、図8に示す電動リール43~45は、リール部(第1リール部、第2リール部)47~49及び電動モータ(第1電動モータ、第2電動モータ)51~53を備える。リール部46~49は、回転軸線回りに回転可能な円筒体を備え、この円筒体の外周面にワイヤー部材38~41が巻き付けられる。電動モータ50~53は、例えばステッピングモータである。電動モータ50~53では、出力軸の回転角度及び停止位置が制御される。電動モータ50~53の出力軸は、リール部46~49に連結され、電動モータ50~53の出力は、リール部46~49に伝達される。これにより、ワイヤー部材38~41を巻き取り、ワイヤー部材38~41を介して力を伝達して、左作業レバー17を操作することができる。
【0028】
電動リール42は、当該電動リール42を固定するための固定部55を備える。固定部55は、例えばクランプ構造を含み、一対の把持片55a,55bを備える。一対の把持片55a,55bによって、例えば操縦室のフレーム等を挟むことで、電動リール42を固定する。電動リール43~45も同様に、固定部55を備えている。固定部55はクランプ構造を備えるものに限定されず、例えば、磁石を用いて固定するものなどその他の構造を採用することができる。
【0029】
また、図8に示されるように、左作業レバー17と電動リール44との間には、中継部材54が設けられている。中継部材54は、例えば円柱状を成し、上下方向Zに延在している。ワイヤー部材40の湾曲部40cは、中継部材54の外周面に沿って湾曲している。ワイヤー部材40は、第1部分40d及び第2部分40eを含み、中継部材54と電動リール44とを結ぶ第2部分40eは、保持部37と中継部材54とを結ぶ第1部分が延在する方向と異なる方向に延在している。例えば第1部分40dは、保持部37から右側に向かって延在し、第2部分40eは、中継部材54から右側、且つ、後方に向かって延在している。中継部材54は、例えばワイヤー部材40の移動に伴って回転可能な回転体を備えるものでもよい。また、中継部材54は、円柱状のものに限定されず、例えば半円形状のものでもよく、ワイヤー部材40に当接する湾曲面を備えるものでもよい。
【0030】
左作業レバー17を操作する駆動ユニット31は、電動リール42,43を駆動して、ワイヤー部材38,39を巻き取ると共に、電動リール44,45を駆動してワイヤー部材40,41を繰り出して、左作業レバー17を前方に傾けて操作することができる。駆動ユニット31は、電動リール44,45を駆動して、ワイヤー部材40,41を巻き取ると共に、電動リール42,43を駆動してワイヤー部材38,39を繰り出して、左作業レバー17を後方に傾けて操作することができる。駆動ユニット31は、電動リール42,45を駆動して、ワイヤー部材38,41を巻き取ると共に、電動リール43,44を駆動してワイヤー部材39,40を繰り出して、左作業レバー17を左側に傾けて操作することができる。駆動ユニット31は、電動リール43,44を駆動して、ワイヤー部材39,40を巻き取ると共に、電動リール42,45を駆動してワイヤー部材38,41を繰り出して、左作業レバー17を右側に傾けて操作することができる。右作業レバー18を操作する駆動ユニット32は、左作業レバー17を駆動ユニット31と同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。
【0031】
左走行レバー19を操作する駆動ユニット33は、図6に示されるように、左走行レバー19を保持する保持部56と、保持部56に連結されたワイヤー部材(紐状部材)57,58と、ワイヤー部材57,58を駆動する電動リール59,60と、を備える。保持部56は、例えばリング状を成し、左走行レバー19を保持する。保持部56は、例えばリング状を成し、左作業レバー17を保持する。保持部56は、左走行レバー19のレバー本体23の上端部23aに装着されている。レバー本体23の上端部23aが保持部56の開口部に挿通されている。保持部56には、複数のワイヤー部材57,58が連結されている。電動リール59は、左走行レバー19よりも前側に配置されている。電動リール60は、左走行レバー29よりも後側に配置されている。ワイヤー部材57,58は、左走行レバー19を操作するための力を伝達可能な強度を有する。ワイヤー部材57,58は、保持部56から前方に延在するワイヤー部材(第1紐状部材)57と、保持部56から後方に延在するワイヤー部材(第2紐状部材)58とを含む。ワイヤー部材57の第1端部57aは保持部56に連結され、第2端部57bは電動リール59に連結されている。ワイヤー部材58の第1端部58aは保持部56に連結され、第2端部58bは電動リール60に連結されている。
【0032】
電動リール59は、ワイヤー部材57を巻き取り可能であると共に繰り出し可能なリール部(第1リール部)61と、リール部61を回転駆動する電動モータ(第1電動モータ)63と、を備えている。電動リール60は、ワイヤー部材58を巻き取り可能であると共に繰り出し可能なリール部(第2リール部)62と、リール部62を回転駆動する電動モータ(第2電動モータ)64と、を備えている。リール部61,62は、回転軸線回りに回転可能な円筒体を備え、この円筒体の外周面にワイヤー部材57,58が巻き付けられる。電動モータ63,64は、例えばステッピングモータである。電動モータ63,64では、出力軸の回転角度、停止位置が制御される。電動モータ63,64の出力軸は、リール部61,62に連結され、電動モータ63,64の出力は、リール部61,62に伝達される。これにより、ワイヤー部材38~41を巻き取り、ワイヤー部材57,58を介して力を伝達して、左作業レバー17を操作することができる。また、電動リール59,60は、図9に示す電動リール42と同様に、固定部55を備えている。右走行レバー20を操作する駆動ユニット34は、左走行レバー19を操作する駆動ユニット33と同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。
【0033】
次に図7を参照して制御ユニット35について説明する。制御ユニット35は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとから構成されたコンピュータである。制御ユニット35は、記憶部、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などを含む。制御ユニット35は、制御部65と、位置検出部(繰り出し長さ検出部)66と、通信部67とを備える。
【0034】
制御部65は、操作ユニット36から送信された指令信号に基づいて、電動リール42~45,59,60を制御する。制御部65は、電動モータ50~53,63,64のトルク制御を行い、電動リール42~45,59,60を駆動して、各種操作レバー10を各々操作する。制御部65は、操作レバー10を所定の操作位置に移動させるべく、ワイヤー部材39~41,57,58の繰り出し長さ、巻き取り長さを制御する。
【0035】
位置検出部66は、各種操作レバー10の位置を検出する。位置検出部66は、電動モータ50~53,63,64に取り付けられたエンコーダからの信号を受信して、電動モータ50~53,63,64の出力軸の回転位置を検出することができる。位置検出部66は、出力軸の回転位置に基づいて、ワイヤー部材39~41,57,58の繰り出し長さを演算し、操作レバー10の位置を検出することができる。ワイヤー部材39~41,57,58の繰り出し長さとは、保持部37,56と電動リール42~45,59,60との間のワイヤー部材39~41,57,58の長さである。操作レバー10の位置とは、例えば、操作レバー10の上端部の位置でもよく、保持部37,56の位置でもよく、その他の位置でもよい。位置検出部66は、例えば中立点を基準とし、中立点からの操作レバー10の上端部の位置を検出することができる。
【0036】
通信部67は、操作ユニット36と無線通信を行い、操作ユニット36から送信された指令信号を受信する。操作ユニット36は、リモートコントローラであり、使用者が操作入力可能なレバー等が設けられている。操作ユニット36には、例えば、左作業レバー17に対応するレバー、右作業レバー18に対応するレバー、左走行レバー19に対応するレバー、右走行レバー20に対応するレバーがそれぞれ設けられている。
【0037】
このような遠隔操作システム1では、使用者が操作ユニット36を操作すると、制御ユニット35が電動モータ50~53,63,64を駆動してリール部46~49,61,62を回転させてワイヤー部材38~41,57,58を巻き取ることで、操作レバー10を引っ張って操作して建設機械2を操縦することができる。遠隔操作システム1では、互いに異なる方向に延在する複数のワイヤー部材38~41,57,58を備え、例えば前後方向X及び左右方向Yに操作レバー10を操作することができる。遠隔操作システム1では、ワイヤー部材38~41,57,58を任意の方向に延在させて、リール部46~49,61,62を回転させてワイヤー部材38~41,57,58を巻き取り、または、繰り出すことができるので、ワイヤー部材38~41,57,58が延在する範囲を任意に設定することができる。そのため、ワイヤー部材38~41,57,58及び電動リール42~45,59,60の配置の自由度を増やすことができる。また、電動モータ50~53,63,64を用いて、リール部46~49,61,62を回転駆動して操作レバー10を操作することができるので、従前のように、空気シリンダ、エアコンプレッサ及び配管等の設備を配置する必要がなく、省スペース化を図ると共に配置の自由度を向上させることができる。
【0038】
また、遠隔操作システム1では、中継部材54を用いてワイヤー部材38~41,57,58を湾曲させて、ワイヤー部材38~41,57,58が延在する方向を変えることができるので、ワイヤー部材38~41,57,58及び電動リール42~45,59,60の配置の自由度を更に向上させることができる。また、制御ユニット35は、ワイヤー部材38~41,57,58の繰り出し長さを検出する位置検出部66を備えているので、ワイヤー部材の繰り出し長さを検出して、操作レバー10を操作する際のリール部46~49,61,62の回転角度を適切に把握することができる。
【0039】
また、駆動ユニット31~34は、建設機械2に対して後付けすることができので、必要に応じて、駆動ユニット31~34を設置して使用することができる。また、遠隔操作システム1では、駆動ユニット31~34の配置の自由度が高く、ワイヤー部材38~41,57,58が延在する方向を任意に設定できるので、駆動ユニット31~34を他の建設機械2に設置して使用することができる。その結果、汎用性が高い遠隔操作システム1が実現できる。
【0040】
本開示は、前述した実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。上記の実施形態では、操作部材を操作レバー10として説明しているが、操作部材は操作レバー10に限定されず、例えば、ステアリングホイール、ペダルなどその他の操作部材でもよい。また、上記の実施形態では、一つの操作レバー10に対して、複数のワイヤー部材38~41,57,58を配置しているが、一つの操作レバー10に対して一つのワイヤー部材を備えるものでもよい。例えば、バネ部材(引張バネ部材、圧縮バネ部材等)を操作レバー10に連結することで、第1方向に操作レバー10を移動可能とし、第1方向とは反対向きの第2方向にワイヤー部材38~41,57,58を配置して、操作レバー10を引っ張って操作してもよい。
【0041】
また、例えば前後方向X及び左右方向Yに操作可能な操作レバーに対して、互いに異なる3方向にワイヤー部材を延在させてもよい。また、ワイヤー部材38~41,57,58を巻き取るリール部46~49,61,62の回転軸線が延在する方向は、上下方向Zに限定されず、その他の方向に延在していてもよい。また、上記実施形態では、電動リールを備える構成としているが、電動リールに代えて電動ウィンチなどを備える構成でもよい。また、上記の実施形態では、紐状部材をワイヤー部材としているが、紐状部材は、ワイヤー部材に限定されず、例えば、釣り糸、チェーン、帯状部材(ベルト)等、所定の強度、長さを有し、巻き取り可能なその他の紐状部材でもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 遠隔操作システム(遠隔操作装置)
2 建設機械
10 操作レバー(操作部材)
17 左作業レバー(操作部材)
18 右作業レバー(操作部材)
19 左走行レバー(操作部材)
20 右走行レバー(操作部材)
31~34 駆動ユニット
38~41 ワイヤー部材(紐状部材、第1紐状部材、第2紐状部材)
57 ワイヤー部材(紐状部材、第1紐状部材)
58 ワイヤー部材(紐状部材、第2紐状部材)
42~45、59、60 電動リール
46~49 リール部(第1リール部、第2リール部)
61 リール部(第1リール部)
62 リール部(第2リール部)
50~53、63、64 電動モータ(第1電動モータ、第2電動モータ)
54 中継部材
63 電動モータ(第1電動モータ)
64 電動モータ(第2電動モータ)
66 位置検出部(繰り出し長さ検出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9