(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
F16H1/32 A
(21)【出願番号】P 2017181929
(22)【出願日】2017-09-22
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】竹本 心路
(72)【発明者】
【氏名】徐 文徳
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-208767(JP,A)
【文献】特開2009-293650(JP,A)
【文献】特開2015-102216(JP,A)
【文献】特開昭61-252934(JP,A)
【文献】特開2004-332846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心揺動型の変速機であって、
中心軸を中心として回転する第1回転部と、
前記第1回転部とともに回転し、前記中心軸から外周面までの距離が周方向の位置によって異なる第1偏心体と、
前記第1偏心体の外周面に設けられた第1軸受と、
軸方向に貫通する第1貫通孔を有し、前記第1軸受の外周面に設けられた第1外歯歯車と、
前記中心軸を周方向に囲む円筒状であって、前記第1外歯歯車の径方向外側に配置された内歯歯車と、
前記第1貫通孔に挿入された、軸方向に延びる円柱状のキャリアピンと、
前記複数のキャリアピンが固定され、前記中心軸を中心として回転する第2回転部と、を備え、
前記第1外歯歯車の歯数と、前記内歯歯車の歯数とは相違し、
前記内歯歯車には、前記第1外歯歯車の前記中心軸から最も遠い位置の外歯が、噛み合い、
前記第1外歯歯車の外歯それぞれの歯先は、軸方向において、両端部から中央部に向かって凸状に湾曲した曲面を有
し、前記曲面は、曲率半径が前記第1外歯歯車の外径寸法に対して、6倍である、
変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機であって、
前記曲面の前記中心軸を含む断面は、円弧状である、
変速機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の変速機であって、
前記第1偏心体は、
軸方向から視て真円形であり、前記真円の中心が、前記中心軸から外れて位置している、
変速機。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか1つに記載の変速機であって、
前記第1回転部とともに回転し、前記中心軸から外周面までの距離が周方向の位置によって異なり、軸方向において前記第1偏心体と異なる位置に配置された第2偏心体と、
前記第2偏心体の外周面に設けられた第2軸受と、
軸方向に貫通する第2貫通孔と、前記第1外歯歯車と同じ歯数の外歯とを有し、前記第2軸受の外周面に設けられた第2外歯歯車と、
をさらに備え、
前記第1貫通孔と、前記第2貫通孔とは、軸方向に重なり、
前記キャリアピンは、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔に挿入され、
前記内歯歯車は、軸方向に延び、前記第1外歯歯車および前記第2外歯歯車と径方向に対向し、
前記内歯歯車には、前記第2外歯歯車の前記中心軸から最も遠い位置の外歯が、噛み合う、
変速機。
【請求項5】
請求項
4に記載の変速機であって、
前記第2外歯歯車の外歯それぞれの歯先は、軸方向において、両端部から中央部に向かって凸状に湾曲した曲面を有する、
変速機。
【請求項6】
請求項
4または請求項
5に記載の変速機であって、
前記第2偏心体は、
軸方向から視て真円形であり、前記真円の中心が、前記中心軸から外れて位置している、
変速機。
【請求項7】
請求項
4から請求項
6までのいずれか1つに記載の変速機であって、
前記内歯歯車と前記第1外歯歯車との噛み合い位置と、前記内歯歯車と前記第2外歯歯車との噛み合い位置とは、前記中心軸を中心に、点対称である、
変速機。
【請求項8】
請求項1から請求項
7までのいずれか1つに記載の変速機であって、
前記第1回転部は、モータから得られる動力により第1回転数で回転する入力部であり、
前記第2回転部は、前記第1回転数よりも低い第2回転数で回転する出力部である、
変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-16019号公報には、偏心揺動減速機構が記載されている。当該公報の減速機構は、四輪駆動車において、電動モータのモータ回転力を、一対の後輪に伝達するモータ回転力伝達装置に備えられている。減速機構は、内歯歯車と、内歯歯車の内側に配置された外歯歯車とを有する。外歯歯車は、内歯歯車と噛み合いながら、内歯歯車の内面に沿って揺動する。このような偏心揺動型の減速機構は、小型で高い減速比を得ることができる。
【文献】特開2014-16019号公報
【文献】特開2012―0077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、人と協調して作業を行う小型ロボットの需要が高まっている。そして、上述した偏心揺動型の減速機とモータとを組み合わせたアクチュエータを、小型ロボットの関節に用いることが提案されている。ただし、この種の小型ロボットには、滑らかな動作が求められる。このために、外歯と内歯との間の隙間または軸受と外歯との間の隙間、シャフトと軸受との間の隙間等(バックラッシ)を小さくすることが望まれる。バックラッシを小さくすると、逆回転時において、寸法のズレ、衝撃等の発生により生じる歯車間の摩耗を抑制できるため機械寿命を長くすることができる。特開2012―0077号公報では、バックラッシを小さくするために、外歯の歯幅を調整している。しかしながら、外歯または内歯の歯幅を調整することは、加工が難しく、生産性が低下するおそれがある。
【0004】
そこで、変速機において、外歯歯車の外歯の歯丈を調整することで、バックラッシを小さくできることを、本発明者は見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本願の発明は、偏心揺動型の変速機であって、中心軸を中心として回転する第1 回転部と、前記第1 回転部とともに回転し、前記中心軸から外周面までの距離が周方向の位置によって異なる第1 偏心体と、前記第1 偏心体の外周面に設けられた第1 軸受と、軸方向に貫通する第1 貫通孔を有し、前記第1 軸受の外周面に設けられた第1 外歯歯車と、前記中心軸を周方向に囲む円筒状であって、前記第1 外歯歯車の径方向外側に配置された内歯歯車と、前記第1 貫通孔に挿入された、軸方向に延びる円柱状のキャリアピンと、前記複数のキャリアピンが固定され、前記中心軸を中心として回転する第2 回転部と、を備え、前記第1 外歯歯車の歯数と、前記内歯歯車の歯数とは相違し、前記内歯歯車には、前記第1 外歯歯車の前記中心軸から最も遠い位置の外歯が、噛み合い、前記第1 外歯歯車の外歯それぞれの歯先は、軸方向において、両端部から中央部に向かって凸状に湾曲した曲面を有し、前記曲面は、曲率半径が前記第1外歯歯車の外径寸法に対して、6倍である。
【発明の効果】
【0006】
本願によれば、バックラッシを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の変速機の縦断面図である。
【
図4】
図4は、第1外歯歯車の一部を拡大した斜視図である。
【
図5】
図5は、中心軸を含む第1外歯歯車の外歯の断面図である。
【
図6】
図6は、バックラッシを計測したシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、変速機の中心軸と平行な方向を「軸方向」、中心軸に直交する方向を「径方向」、中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、本願では、軸方向を上下方向とし、第1回転部に対して第2回転部の第1キャリア部材側を上として、各部の形状および位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義により、本願に係る変速機の使用時の向きを限定する意図はない。また、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。
【0009】
<1.変速機の全体構成>
図1は、本実施形態の変速機の縦断面図である。
図2は、変速機1の分解斜視図である。
図3は、
図1中のIII-III線の横断面図である。なお、
図3においては、図の煩雑化を避けるため、ハッチングは省略する。
【0010】
変速機1は、第1回転数(入力回転数)の回転運動を、第1回転数よりも低い第2回転数(出力回転数)の回転運動に変換する、歯車減速機である。変速機1は、例えば、人と協調して作業を行うサービスロボット等の小型ロボットの関節に使用される。ただし、同等の構造を有する変速機を、大型の産業用ロボット、工作機、X-Yテーブル、材料の切断装置、コンベアライン、ターンテーブル、圧延ローラ等の他の用途に用いてもよい。
【0011】
変速機1は、第1回転部10と、第1偏心体21および第2偏心体22と、第1外歯歯車31および第2外歯歯車32と、フレーム40と、複数のキャリアピン50と、第2回転部60と、を備える。
【0012】
第1回転部10は、中心軸9に沿って上下に延びる円柱状の部材である。
図1中に概念的に示したように、第1回転部10は、直接または他の動力伝達機構を介して、駆動源であるモータに接続される。モータを駆動させると、モータから供給される動力によって、第1回転部10は、中心軸9を中心として、第1回転数で回転する。すなわち、本実施形態では、第1回転部10は入力部である。
【0013】
第1偏心体21は、第1回転部10の外周面に固定され、第1回転部10とともに回転する部材である。第1回転部10と第1偏心体21とは、単一の部材でもよいし、別の部材でもよい。第1偏心体21は、
図3に示すように、軸方向から視て真円形の外周面を有する。第1偏心体21の中心軸91は、中心軸9から外れて位置する。したがって、中心軸9から第1偏心体21の外周面までの距離は、周方向の位置によって異なる。
【0014】
第2偏心体22は、第1回転部10の外周面に固定される。第2偏心体22は、第1偏心体21と軸方向に異なる位置に固定される。そして、第2偏心体22は、第1回転部10とともに回転する部材である。第1回転部10と第2偏心体22とは、単一の部材でもよいし、異なる別部材でもよい。第2偏心体22は、第1偏心体21と同様に、軸方向から視て真円形の外周面を有する。第2偏心体22の中心軸92は、中心軸9から外れて位置する。したがって、中心軸9から第2偏心体22の外周面までの距離は、周方向の位置によって異なる。
【0015】
また、第2偏心体22の中心軸92は、中心軸9に対して、第1偏心体21の中心軸91と、180°離れて位置する。つまり、第1偏心体21と、第2偏心体22とは、中心軸9を中心として、点対称の関係となる。
【0016】
第1回転部10が中心軸9を中心として回転すると、第1偏心体21および第2偏心体22は、中心軸9を中心として回転する。このとき、第1偏心体21の中心軸91、および第2偏心体22の中心軸92も、中心軸9を中心として回転する。また、前記したように、第1偏心体21の中心軸91と、第2偏心体22の中心軸92とは、中心軸9に対して、互いに180°離れて位置する。このため、第1偏心体21および第2偏心体22の全体としての重心の位置は、常に中心軸9上に位置する。したがって、第1偏心体21および第2偏心体22の回転による重心の揺らぎを抑制できる。
【0017】
第1外歯歯車31は、第1偏心体21の径方向外側に配置される。第1偏心体21と第1外歯歯車31との間には、第1軸受71が介在する。第1軸受71には、例えば、ボールベアリングが用いられる。第1外歯歯車31は、第1軸受71によって、中心軸91を中心として回転可能に支持される。
図3に示すように、第1外歯歯車31の外周部には、複数の外歯311が設けられる。各外歯311は、径方向外側へ向けて突出する。
【0018】
図4は、第1外歯歯車31の一部を拡大した斜視図である。
図5は、中心軸91を含む第1外歯歯車31の外歯311の断面図である。
【0019】
第1外歯歯車31の外歯311それぞれの歯先は、曲面311Aである。曲面311Aは、径方向に交差する面である。曲面311Aは、製造時において、外歯311における軸方向中央の歯丈の長さを確保しつつ、軸方向両端部を曲面状に加工することで形成される。このように形成することで、曲面311Aは、軸方向において、両端部から中央部に向かって凸状に湾曲した面となる。本実施形態では、曲面311Aの中心軸91を含む断面は、円弧状である。この曲面311Aの曲率半径は、外歯歯車の外径寸法dに対して、4.8倍以上8.9倍以下であることが好ましい。
【0020】
第1外歯歯車31は、複数(
図3の例では10個)の貫通孔312を有する。各貫通孔312は、第1外歯歯車31を軸方向に貫通する。複数の貫通孔312は、中心軸91を中心として、周方向に等間隔に並ぶ。
【0021】
第2外歯歯車32は、第2偏心体22の径方向外側に配置される。第2偏心体22と第2外歯歯車32との間には、第2軸受72が介在する。第2外歯歯車32は、第2軸受72によって、中心軸92を中心として回転可能に支持される。第2軸受72には、例えば、ボールベアリングが用いられる。第2外歯歯車32は、第1外歯歯車31と同様に、外周部に複数の外歯321が設けられる。外歯321の歯先は、第1外歯歯車31の外歯311と同様、曲面である。また、第2外歯歯車32には、軸方向に貫通した複数の貫通孔322が設けられる。複数の貫通孔322は、中心軸92を中心として、周方向に沿って等角度間隔に配置される。また、各貫通孔322の一部は、第1外歯歯車31の各貫通孔312と、軸方向に重なる。
【0022】
フレーム40は、中心軸9を周方向に囲み、軸方向に延びる円筒状の部材である。フレーム40は、第1外歯歯車31および第2外歯歯車32の径方向外側を取り囲んで配置される。
図3に示すように、フレーム40の内周面には、複数の内歯41が設けられる。複数の内歯41は、それぞれ、フレーム40の内周面から径方向内側へ向けて突出する。本実施形態では、内歯41を含む内歯歯車が、フレーム40の一部となっている。ただし、内歯歯車は、フレーム40と別部材としてもよい。本実施形態のように、内歯41は、フレーム40と同一部材とを同一部材とした場合、フレーム40とは別に、内歯41を有する内歯歯車を設ける必要がないため、変速機1の小型化が容易となる。
【0023】
フレーム40の複数の内歯41の一部には、第1外歯歯車31の複数の外歯311、および、第2外歯歯車32の複数の外歯321それぞれの一部が噛み合う。具体的には、中心軸9からの距離が最も遠い位置にある、第1外歯歯車31の外歯311、および、中心軸9からの距離が最も遠い位置にある、第2外歯歯車32の外歯321が、内歯41に噛み合う。つまり、第1外歯歯車31の外歯311とフレーム40の内歯41との噛み合い位置と、第2外歯歯車32の外歯321とフレーム40の内歯41との噛み合い位置とは、中心軸9を中心に、点対称である。
【0024】
なお、前記のとおり、第1外歯歯車31および第2外歯歯車32は、同じ構成であり、中心軸9を中心に点対称の関係にある。したがって、以下の説明では、第1外歯歯車31についてのみ説明する。
【0025】
第1回転部10が中心軸9を中心として回転すると、第1外歯歯車31は、中心軸91とともに、中心軸9の周りを公転する。また、第1外歯歯車31が有する複数の外歯311の一部と、フレーム40の内歯41とが噛み合うことによって、第1外歯歯車31は自転する。ここで、フレーム40が有する内歯41の数は、第1外歯歯車31が有する外歯311の数よりも多い。このため、第1外歯歯車31の1公転ごとに、フレーム40の同じ位置の内歯41に噛み合う外歯311の位置がずれる。これにより、第1外歯歯車31が、第1回転部10の回転方向とは逆の方向へ、第1回転数よりも低い第2回転数で自転する。したがって、第1外歯歯車31の貫通孔312の位置も、第2回転数で回転する。変速機1の動作時には、第1外歯歯車31が、このような公転と自転とを組み合わせた回転運動を行う。
【0026】
第1外歯歯車31が有する外歯311の数をNとし、フレーム40が有する内歯41の数をMとすると、変速機1の減速比Pは、P=(第1回転数)/(第2回転数)=N/(M-N)となる。
図3の例では、N=29,M=30なので、この例における減速比は、P=29である。すなわち、第2回転数は、第1回転数の1/29の回転数となる。ただし、外歯311の数Nおよび内歯41の数Mは、他の値であってもよい。
【0027】
本実施形態では、複数の内歯41が、単一の部材であるフレーム40の一部として、設けられる。このため、フレーム40とは別に、複数の内歯41を有する内歯歯車を設ける必要がない。これにより、変速機1の小型化が容易となる。
【0028】
キャリアピン50は、軸方向に延びる円柱状の部材である。複数のキャリアピン50は、中心軸9を中心として、周方向に沿って等角度間隔に円環状に配置される。そして、キャリアピン50は、軸方向に重なる、第1外歯歯車31の貫通孔312、および、第2外歯歯車32の貫通孔322に挿入される。前記のように、貫通孔312および貫通孔322は、減速後の第2回転数で回転する。貫通孔312および貫通孔322に挿入されたキャリアピン50は、貫通孔312および貫通孔322とともに、中心軸9を中心として、第2回転数で回転する。
【0029】
第2回転部60は、円環状の第1キャリア部材61と、円環状の第2キャリア部材62とを有している。第1キャリア部材61は、第1外歯歯車31よりも軸方向の上方側に配置されている。第1回転部10と第1キャリア部材61との間には、軸受73が介在している。また、第1キャリア部材61とフレーム40との間には、軸受74が介在している。
【0030】
第2キャリア部材62は、第2外歯歯車32よりも軸方向の下方側に配置されている。第1回転部10と第2キャリア部材62との間には、軸受75が介在している。また、第2キャリア部材62とフレーム40との間には、軸受76が介在している。軸受73および軸受75には、例えば、ボールベアリングが用いられる。軸受74および軸受76には、例えば、ポリアセタール等の樹脂からなるすべり軸受が用いられる。
【0031】
各キャリアピン50の軸方向の上側端部は、第1キャリア部材61に固定される。各キャリアピン50の軸方向の下側端部は、第2キャリア部材62に固定される。なお、第1キャリア部材61および第2キャリア部材62に対するキャリアピン50の固定方法には、例えば、圧入が用いられる。このため、複数のキャリアピン50が、中心軸9を中心として第2回転数で回転すると、第1キャリア部材61および第2キャリア部材62も、中心軸9を中心として第2回転数で回転する。
【0032】
第2回転部60は、直接または他の動力伝達機構を介して、駆動対象となる部材に接続される。すなわち、本実施形態では、第2回転部60は出力部である。
【0033】
<2.シミュレーションの例>
【0034】
上記のように構成された変速機1において、第1外歯歯車31の外歯311、および第2外歯歯車32の外歯321それぞれの歯先を曲面とすることで、変速機1のバックラッシは小さくなる。
【0035】
以下に、シミュレーションソフトウェアにおいて、上記の変速機1と同等のモデルを作成し、バックラッシを計測したシミュレーション結果を示す。
図6は、バックラッシを計測したシミュレーション結果を示す図である。
図6の縦軸は、バックドライブトルクを示し、横軸は、バックラッシを示す。
図6では、第1回転部10を固定したときの第2回転部60の回転方向の可動角度範囲を「バックラッシ」として計測している。
【0036】
バックドライブトルクは、出力部である第2回転部60を外力で回転させたときの、抵抗の大きさである。バックドライブトルクが小さいと、第2回転部60の回転抵抗が小さく、回転ロスが少なくなる。つまり、バックドライバビリティが向上する。
【0037】
シミュレーションでは、第1外歯歯車31の外歯311、および第2外歯歯車32の外歯321それぞれの歯先を曲面とし、曲率半径を変えている。
図6の白丸マークは、外歯の歯先を曲面としない外歯歯車を用いたシミュレーション結果である。クロスマークは、外歯の歯先を、曲率半径を外歯歯車の外径寸法dに対して、3.6倍とした曲面とした外歯歯車を用いたシミュレーション結果である。四角マークは、外歯の歯先を、曲率半径を外歯歯車の外径寸法dに対して、6倍とした曲面とした外歯歯車を用いたシミュレーション結果である。三角マークは、外歯の歯先を、曲率半径を外歯歯車の外径寸法dに対して、12倍とした曲面とした外歯歯車を用いたシミュレーション結果である。なお、外歯311、321の歯先形状以外の条件は、同一としている。
【0038】
前記のように、曲面311Aの曲率半径は、第1外歯歯車の外径寸法dに対して、4.8倍以上8.9倍以下であることが好ましい。
図6からわかるように、曲率半径が、前記範囲にある外歯歯車の外径寸法dに対して、6倍の場合のバックラッシは、他よりも小さい。
【0039】
以上のように、第1外歯歯車31の外歯311、および、第2外歯歯車32の外歯321それぞれの歯先を曲面とすることで、バックラッシを小さくできる。
【0040】
なお、変速機1は、上記した構成に限定されない。例えば、上記の実施形態では、第1外歯歯車31の外歯311、および、第2外歯歯車32の外歯321それぞれの歯先を曲面としたが、一方の歯先のみが曲面であってもよい。また、変速機1は、第1外歯歯車31と、第2外歯歯車32とを備えるが、いずれか一方のみを備える構成でもよい。また、3つ以上の外歯歯車を備える構成でもよい。また、外歯歯車の外歯の数、および、内歯歯車の内歯の数は、適宜変更可能である。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述の実施形態および変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本願は、変速機に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 :変速機
9 :中心軸
10 :第1回転部
21 :第1偏心体
22 :第2偏心体
31 :第1外歯歯車
32 :第2外歯歯車
40 :フレーム
41 :内歯
50 :キャリアピン
60 :第2回転部
61 :第1キャリア部材
62 :第2キャリア部材
71 :第1軸受
72 :第2軸受
73 :軸受
74 :軸受
75 :軸受
76 :軸受
91 :中心軸
92 :中心軸
311 :外歯
311A :曲面
312 :貫通孔
321 :外歯
322 :貫通孔