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  • 特許-加工装置 図1
  • 特許-加工装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017218447
(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公開番号】P2019089148
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
(72)【発明者】
【氏名】上田 渉
(72)【発明者】
【氏名】林 浩一郎
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-116608(JP,A)
【文献】特開昭63-002680(JP,A)
【文献】特開平07-121214(JP,A)
【文献】特開平07-286820(JP,A)
【文献】特開平08-320717(JP,A)
【文献】特開2004-163346(JP,A)
【文献】特開2005-093807(JP,A)
【文献】特開2005-138223(JP,A)
【文献】特開2010-264508(JP,A)
【文献】特開2014-058004(JP,A)
【文献】特開2014-067158(JP,A)
【文献】特開2016-128199(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146180(WO,A1)
【文献】米国特許第05387969(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0253002(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0124825(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/10-19/02
B23K 11/14-26/00
G01B 9/02
G05B 19/18-19/404
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工ヘッドと、
前記加工ヘッドを移動させる移動装置と、
ワークの位置及び姿勢を非接触で検出するセンサと、
前記センサの検出結果に基づいて、前記加工ヘッドの姿勢及び加工軌跡を補正して、前記ワークの加工のための制御を行う制御装置と、を備え
前記センサは、前記加工ヘッドに取り付けられ前記ワークの互いに直交した状態で隣接する3つの面をそれぞれ直線状に計測する3つのラインセンサから構成されている加工装置。
【請求項2】
前記センサは、前記ワークの少なくとも3か所のエッジの位置をそれぞれ検出することにより、前記ワークの前記位置及び前記姿勢を検出する、
請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
前記エッジの位置は、前記ワークの少なくとも2か所のエッジのX座標とZ座標を示す位置、及び、前記ワークの少なくとも1か所のエッジのY座標とZ座標を示す位置である、
請求項2記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、加工製品の製造においては、切削や研削等の加工工程の後に仕上げ工程が行われる。この仕上げ工程は、切削や研削が行われた製品の形状や表面粗さを調整し、最終的に求められる品質を満足させる工程であり、例えばバリ取り、面取り、R付け、磨き等が行われる。従来、このような仕上げ工程は、人手によって行われることが殆どであったが、近年では、労働人口の減少による作業者不足等を背景として、加工装置による自動化が促進されている。
【0003】
仕上げ工程においては、被加工物(以下、「ワーク」と称する)の位置及び姿勢が正確に把握されている必要がある。一般的に、自動仕上げ加工装置においては、3D CAD(Three-Dimensional Computer-Aided Design)モデルに基づき、加工開始位置や加工終了位置、加工中の工具姿勢や加工軌道等が事前に設定される。
【0004】
しかしながら、例えば寸法公差等の影響によって、3D CADモデルに基づくワークの位置や姿勢と、実際のワークの位置や姿勢とは乖離することが多い。そのため従来技術では、例えばワークの表面(上面や側面)の少なくとも6つの計測点の位置(例えば、3つの計測点のZ座標、2つの計測点のX座標、及び1つの計測点のY座標)をそれぞれ計測することによって、実際のワークの位置及び姿勢を精度高く測定する。例えば、特許文献1に記載の技術では、ワーク表面のそれぞれの計測点に対し、計測用のピン等を接触させることで、計測点の位置を計測する。これにより、計測された実際のワークの位置及び姿勢と、3D CADモデルに基づくワークの位置や姿勢との乖離量が特定される。そして、特定された乖離量に基づいて、加工開始位置や加工終了位置、加工中の工具姿勢や加工軌道等が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6011089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の技術では、ピン等の接触によってワークの損傷が発生しないようにする必要があり、計測動作(接触検知動作)の速度を速くすることが難しいため、計測時間が長くなるという問題がある。また、計測時間を短縮するために計測点の数を減らした場合、少なくとも6つの計測点の位置を計測する場合と比べて、計測精度が低下することがあるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、計測精度を低下させることなく計測時間を短縮することが可能な加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の加工装置は、加工ヘッドと、前記加工ヘッドを移動させる移動装置と、ワークの位置及び姿勢を非接触で検出するセンサと、前記センサの検出結果に基づいて、前記加工ヘッドの姿勢及び加工軌跡を補正して、前記ワークの加工のための制御を行う制御装置とを備える。
また、本発明の加工装置は、前記センサが、前記加工ヘッドに取り付けられている。
また、本発明の加工装置は、前記センサが、前記ワークの互いに直交した状態で隣接する3つの面をそれぞれ計測可能な位置に3つ取り付けられている。
また、本発明の加工装置は、前記センサが、前記ワークの互いに直交した状態で隣接する3つの面をそれぞれ計測可能に、前記センサを駆動する駆動機構を備える。
また、本発明の加工装置は、前記センサが、前記ワークの少なくとも3か所のエッジの位置をそれぞれ検出することにより、前記ワークの前記位置及び前記姿勢を検出する。
また、本発明の加工装置は、前記エッジの位置が、前記ワークの少なくとも2か所のエッジのX座標とZ座標を示す位置、及び、前記ワークの少なくとも1か所のエッジのY座標とZ座標を示す位置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、計測精度を低下させることなく計測時間を短縮することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による加工装置の概要構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による加工装置によるワークの位置及び姿勢の計測について説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態による加工装置の概要構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による加工装置について詳細に説明する。
【0012】
〈加工装置の構成〉
図1は、本発明の一実施形態による加工装置の概要構成を示す図である。図1に示す通り、本実施形態による加工装置1は、ロボット10及び制御装置20を備えており、ワークWに対する仕上げ加工を行う。この加工装置1は、仕上げ加工として、例えば、ワークWの表面の切削加工や磨き加工を行う。
【0013】
ロボット10は、ロボットアーム11(移動装置)、加工ヘッド12、工具13、力センサ14、ロボットコントローラ15、及び位置計測センサ16を備える。ロボットアーム11は、複数のアームが複数の関節によって直列的に接続された多関節機構を有する。ロボットアーム11の各関節には、各関節を駆動するモータが設けられている。ロボットアーム11は、制御装置20の制御の下で、ロボットコントローラ15によりモータが駆動されることで、例えば、三次元空間を6軸方向に移動することができる。また、各関節には、モータの回転角度を検知するエンコーダが設けられている。
【0014】
加工ヘッド12は、工具13及び位置計測センサ16をロボットアーム11に対して着脱可能に接続する。工具13及び位置計測センサ16は、加工ヘッド12によりロボットアーム11の先端に取り付けられる。ロボットアーム11を駆動することで、三次元空間内における工具13及び位置計測センサ16の位置及び姿勢を変更することができる。
【0015】
工具13は、仕上げ加工に用いられる工具であり、仕上げ加工の種類に応じたものが複数用意されている。例えば、切削加工用の工具、磨き加工用の工具といった具合である。
【0016】
力センサ14は、工具13に作用する外力を検出し、検出した外力を制御装置20に出力する。例えば、力センサ14は、三次元的に移動可能なロボットアーム11と工具13との間に取り付けられる。この力センサ14は、例えば、直交3軸方向の力と各軸周りのトルクを検出する。但し、力センサ14は、これに限定されず、ワークWに対する押し付け力が検出できる限り、その他の力センサであってもよい。
【0017】
ロボットコントローラ15は、制御装置20の制御の下で、ロボットアーム11の動作を制御する。具体的に、ロボットコントローラ15は、ロボットアーム11の各関節に設けられたモータを駆動することによって、ロボットアーム11の動作を制御する。このロボットコントローラ15は、制御装置20との間でリアルタイム通信を行う。これにより、加工装置1では、予め規定された制御周期でロボットアーム11のリアルタイム制御が実現される。
【0018】
位置計測センサ16は、ワークWまでの距離をレーザ等によって非接触で計測するセンサである。具体的には、位置計測センサ16は、ワークWの互いに直交した状態で隣接する3つの面をそれぞれ計測可能な位置に取り付けられた3つの位置計測センサ(後述する、位置計測センサ16x、位置計測センサ16y、及び位置計測センサ16z)によって構成される。
【0019】
制御装置20は、ロボット制御部21及び記憶部22を備える。ロボット制御部21は、力センサ14によって検出された外力(工具13に作用する外力)を取得する。そして、ロボット制御部21は、取得した外力が一定値になるようにロボット10を制御することで、工具13をワークWの表面に押し付けながら移動させる。つまり、ロボット制御部21は、ワークWの表面に対する工具13の押付け力を制御しながら、工具13をワークWの表面形状に倣せる。
【0020】
工具13をワークWの表面に押し付ける方向(押付け方向)は、例えば、ワークWの表面の法線方向である。但し、押付け方向はワークWの表面の法線方向に限定されず、ワークWと工具13との干渉を避けるために、法線方向からずらした方向であってもよい。また、工具13をワークWの表面形状に倣せる方向(移動方向)とは、例えば、ワークWの表面の接線方向である。
【0021】
記憶部22には、加工データが予め記憶されている。この加工データは、加工軌道データテーブル及び加工条件データを含む。加工軌道データテーブルは、工具13を移動させる軌道(目標軌道)を示すデータであり、一定距離間隔における空間座標(X,Y,Z)と押付ベクトルとからなる。この加工軌道データテーブルは、例えば、ワークWの3DCADモデルから自動的に生成する。加工条件データは、工具13のワークWに対する押付力、工具13の移動方向、並びに往復動作の振幅及び周期等のデータである。また、記憶部22には、ロボット制御部21で取得された軌道データ及び押付力データ、並びにロボット制御部21で編集された制御情報も記憶される。
【0022】
〈加工装置による計測〉
以下、加工装置1によるワークWの位置及び姿勢の計測について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による加工装置によるワークの位置及び姿勢の計測について説明するための図である。
【0023】
加工装置1は、加工前に、ワークWの加工エッジを交差するように、加工ヘッド12に取り付けられた位置計測センサ16の位置を動かしながら、逐次ワークWまでの距離を計測する。そして、加工装置1は、最もワークWまでの距離が短い位置を角部エッジとして、その距離とその計測がなされた時の位置計測センサ16の位置とから、角部エッジの2方向の位置を求める。この動作を3回繰り返すことで、ワークWの位置及び姿勢が特定される。これにより、加工装置1は、特定した実際のワークWの位置及び姿勢に基づいて、加工ヘッド12の姿勢や加工軌道を補正する。
【0024】
具体例について、図2を参照しながら説明する。
図示するように、位置計測センサ16は、X軸方向の位置を計測する位置計測センサ16xと、Y軸方向の位置を計測する位置計測センサ16yと、Z軸方向の位置を計測する位置計測センサ16zを有する。
【0025】
加工装置1は、位置計測センサ16xと位置計測センサ16zとを用いて、線L1に沿って計測することにより、加工エッジe1に含まれる角部エッジp1を検出し、そのX座標とZ座標とを計測する。
また、加工装置1は、位置計測センサ16xと位置計測センサ16zとを用いて、線L2に沿って計測することにより、角部エッジp1と同様に加工エッジe1に含まれる角部エッジp2を検出し、そのX座標とZ座標とを計測する。
【0026】
また、加工装置1は、位置計測センサ16yと位置計測センサ16zとを用いて、線L3に沿って計測することにより、加工エッジe2に含まれる角部エッジp3を検出し、そのY座標とZ座標とを計測する。
加工装置1は、上記計測された、角部エッジp1のX座標及びZ座標と、角部エッジp2のX座標及びZ座標と、角部エッジp3のY座標及びZ座標から実際のワークWの位置及び姿勢を特定する。
【0027】
尚、例えばラインセンサ等の、加工エッジに交差する線L1~線L3に沿ったワークWの形状をそれぞれ1回の計測で計測することができるような位置計測センサを用いることによって、位置計測センサ16の位置を動かす操作を省略することが可能である。
【0028】
〈実施形態の変形例〉
図3は、本発明の一実施形態による加工装置の概要構成を示す図である。図示するように、本実施形態の変形例による加工装置の位置計測センサ16bは、センサの計測方向を変えることができる駆動機構を有している。これにより、位置計測センサ16bは、1つの位置計測センサによって、ワークWの3平面それぞれの位置の計測を行うことが可能である。
【0029】
以上説明したように、本発明の一実施形態による加工装置は、ワークWまでの距離をレーザ等によって非接触で計測するセンサによってワークWの角部エッジの位置を計測することにより、ワークWの位置及び姿勢を計測する。
このように、本発明の一実施形態による加工装置によれば、位置を計測するためのワークWへの接触が不要になるため、計測時間を短縮することができる。
また、本発明の一実施形態による加工装置によれば、計測点の数を少なくすることができる(3点の角部エッジの位置を計測するだけでよい)ため、計測精度を低下させることなく計測時間を短縮することができる。
また、本発明の一実施形態による加工装置によれば、工具が取り付けられた加工ヘッドに位置計測センサが直接取り付けられるため、加工ヘッドの姿勢及び加工軌跡を、位置計測センサによって計測された計測結果に沿って精確に制御することができる。
【0030】
以上、本発明の一実施形態による加工装置について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。
【0031】
また、上記実施形態では、ロボット10が、工具13を移動させる移動装置としてロボットアーム11を備える例について説明した。しかしながら、ロボット10は、必ずしもロボットアーム11を備えている必要は無く、アーム型ではない移動装置(例えば、直動軸等を有する移動装置)を備えるものであっても良い。
【符号の説明】
【0032】
1…加工装置、10…ロボット、11…ロボットアーム、12…加工ヘッド、13…工具、14…力センサ、15…ロボットコントローラ、16…位置計測センサ、20…制御装置、21…ロボット制御部、22…記憶部、W…ワーク
図1
図2
図3