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特許7035480水性リキッドインキ、及び該水性リキッドインキを用いた積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】水性リキッドインキ、及び該水性リキッドインキを用いた積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/107 20140101AFI20220308BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220308BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20220308BHJP
【FI】
C09D11/107
B32B27/30 A
C09D11/102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017224635
(22)【出願日】2017-11-22
(65)【公開番号】P2019094423
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 高浩
(72)【発明者】
【氏名】佐坂 利桂
(72)【発明者】
【氏名】小代 康敬
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-155340(JP,A)
【文献】特開2007-231148(JP,A)
【文献】特開2011-144303(JP,A)
【文献】特開2016-128554(JP,A)
【文献】特開2015-024508(JP,A)
【文献】特開2012-214690(JP,A)
【文献】特開2011-122022(JP,A)
【文献】特開2012-251049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/107
B32B 27/30
C09D 11/102
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムに複数層の印刷層を有する積層体であって、
プラスチックフィルムに、ポリウレタン樹脂又はアクリルポリウレタン樹脂と着色顔料を含有する印刷インキにより形成された第一の印刷層と、
前記第一の印刷層に接して設けられ、水性リキッドインキ(A)により形成された第二の印刷層とを、この順に有し、
前記水性リキッドインキ(A)が、エマルジョン樹脂全体の酸価が50(mgKOH/g)未満の(メタ)アクリルエマルジョン樹脂(A1)と、前記(メタ)アクリルエマルジョン樹脂(A1)とは異なる樹脂で酸価50(mgKOH/g)以上の(メタ)アクリル樹脂(A2)との固形分質量比率が、(A1):(A2)=69:1~20:50の範囲で含有することを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記(メタ)アクリルエマルジョン樹脂(A1)がコア-シェル型のエマルジョン樹脂である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記水性リキッドインキ(A)が白色顔料を含有する請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記水性リキッドインキ(A)が、更に、エポキシ化合物を含有する請求項1~3のいずれかに記載の水性リキッドインキ。
【請求項5】
前記第一の印刷層と、前記第二の印刷層と、前記水性リキッドインキ(A)より形成された第三の印刷層と
をこの順に有する請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟包装用ラミネート用途の水性グラビアインキ、水性フレキソインキ向け水性リキッドインキ、及び該水性リキッドインキを用いた積層体に関する。
特に、粘度安定性に優れ、硬化塗膜の基材密着性、各種塗膜強度をも兼備する水性リキッドインキ、及び該水性リキッドインキを用いた積層体に関する。
更に、硬化剤を添加した系でも同様に、粘度安定性に優れ、硬化塗膜の基材密着性、各種塗膜強度をも兼備する水性リキッドインキ、及び該水性リキッドインキを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
軟包装フィルムの被印刷体に美粧性、機能性を付与させる目的で、グラビアインキ、フレキソインキが広く用いられている。グラビア、フレキソ印刷された被印刷体が、包装材料の中でも特に食品向けや衛生用品向け軟包材として用いられる場合、ラミネート加工が加えられるのが一般的である。この場合、内容物の種類や使用目的に応じて様々な被印刷体やラミネート加工が利用される。そして印刷物と各種フィルムを接着剤により貼り合わせるラミネート加工により、印刷物のみでは得られない、膜面強度、保存安定性、ボイル・レトルト適性などを保持する事ができる。
一方で印刷物にラミネート加工を加える場合、印刷物そのものが内容物保護を目的とする場合が多い。この場合、基材のプラスチックと印刷インキ層からなる印刷物と、シーラントフィルムとを接着剤を用いてラミネートするため、直接、印刷インキ層が内容物に触れることはない反面、ラミネート適性を必要とする。そして、ラミネート適性を保持すべく、印刷インキ層の下にアンカーコート層を設けることで、基材のプラスチックフィルムと印刷インキ層との密着性を向上させる事が通常行われている。
【0003】
しかし、近年の省資源化、包装形態の簡素化の取り組みに答え、石油資源由来のフィルムの使用量削減、後加工の簡素化を目的とし、グラビア・フレキソ印刷物そのものを包材に使用する要望が増加しつつあり、これに応じて、印刷インキ層そのものにフィルム密着性、耐摩擦性、耐水性、耐ブロッキング性といった高い塗膜特性が要求されつつある。
また、軟包装フィルム包材における印刷デザインの優劣は、内容物の良し悪しを連想させるまでに影響が大であり、美粧性を意識した高度なデザインに対応可能な高い画像再現性が要求される。
【0004】
そして近年、VOCによる大気汚染の悪化、地球温暖化など全地球規模の拡大を背景としたサステナビティの観点を根底に、労働安全衛生、更に引火爆発性も加え、脱石油資源への転換する動きに応じ、インキ中の有機溶剤を水に置き換えた水性インキへの置き換えが期待されつつある。例えば水性アクリル樹脂系の色インキ皮膜層と水性ポリウレタン樹脂系の白インキ皮膜層を組み合わせることで、これまで得ることが出来なかった塗膜物性、インキ物性を得ることが出来るようになっている。しかし、これらのインキ皮膜層の組み合わせ構成は、揮発性有機化合物を使用したオーバープリントワニス層、又は水性ポリウレタン系アンカーコートワニス層を必須とするため、印刷時の生産性に関して十分であるとは言えない(例えば、特許文献1)。
また、プラスチックフィルムに隣接する印刷インキにアクリル樹脂又はポリウレタン樹脂を使用した印刷インキ積層体の発明が成されているが、フィルム密着性、耐水性を要求される胴巻きシュリンクラベル等の用途では、性能面でまだまだ十分であるとは言えない(例えば、特許文献2)。
更に、印刷作業直前に水性インキに硬化剤を添加したい場合、その作業性を考慮して硬化剤添加から少なくとも6時間は一定粘度が持続する粘度安定性を維持しつつ、硬化塗膜の基材密着性、各種塗膜強度を兼備することは、何れ容易であるとは言えない。
【0005】
【文献】特開2005-225083号公報
【文献】特開2016-155340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、粘度安定性に優れ、硬化塗膜の基材密着性、各種塗膜強度をも兼備する水性リキッドインキ、及び該水性リキッドインキを用いた積層体を提供することにある。
更に、硬化剤を添加した系でも同様に、粘度安定性に優れ、硬化塗膜の基材密着性、各種塗膜強度をも兼備する水性リキッドインキ、及び該水性リキッドインキを用いた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水性リキッドインキは、酸価の異なるアクリル樹脂を少なくとも2種を特定比率で用いる事で課題解決に有効であることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、酸価50(mgKOH/g)未満の(メタ)アクリル樹脂(A1)と、酸価50(mgKOH/g)以上の(メタ)アクリル樹脂(A2)との固形分質量比率が、(A1):(A2)=69:1~20:50の範囲で含有することを特徴とする水性リキッドインキに関する。
【0009】
更に、本発明は、更に、エポキシ化合物を含有する水性リキッドインキに関する。
【0010】
更に、本発明は、顔料を含有する水性リキッドインキに関する。
【0011】
更に、本発明は、プラスチックフィルムに1層または複数層の印刷層を有する積層体であって、前記印刷層の少なくとも1つが、酸価50(mgKOH/g)未満の(メタ)アクリル樹脂(A1)と、酸価50(mgKOH/g)以上の(メタ)アクリル樹脂(A2)との固形分質量比率が、(A1):(A2)=69:1~20:50の範囲で含有する水性リキッドインキ(A)の印刷層を有する積層体に関する。
【0012】
更に、本発明は、前記印刷層が複数層であり、プラスチックフィルムに、ポリウレタン樹脂又はアクリルポリウレタン樹脂と顔料を含有する印刷インキにより形成された第一の印刷層と、前記水性リキッドインキ(A)により形成された第二の印刷層とをこの順に有する積層体に関する。
【0013】
更に、本発明は、前記印刷層が複数層であり、プラスチックフィルムに、ポリウレタン樹脂又はアクリルポリウレタン樹脂と顔料を含有する印刷インキより形成された第一の印刷層と、白色顔料を含有する前記水性リキッドインキ(A)により形成された第二の白印刷層と、前記水性リキッドインキ(A)より形成された第三の印刷層とをこの順に有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性リキッドインキは、酸価の異なるアクリル樹脂を少なくとも2種を特定比率で用いる事で、粘度安定性に優れ、硬化塗膜の基材密着性、各種塗膜強度をも兼備する水性リキッドインキ、及び該水性リキッドインキを用いた積層体を提供することが出来る。
更に、硬化剤を添加した系でも同様に、粘度安定性に優れ、硬化塗膜の基材密着性、各種塗膜強度をも兼備する水性リキッドインキ、及び該水性リキッドインキを用いた積層体を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について詳細に説明する。なお以下の説明で用いる「インキ」とは全て「水性リキッドインキ」を示す。また「部」とは全て「質量部」を、「%」とは全て「質量%」を示す。
【0016】
本発明の水性リキッドインキは、酸価50(mgKOH/g)未満の(メタ)アクリル樹脂(A1)と、酸価50(mgKOH/g)以上の(メタ)アクリル樹脂(A2)との固形分質量比率が、(A1):(A2)=69:1~20:50の範囲で含有するすることを必須とする。
尚、(メタ)アクリル樹脂の酸価は、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示すものであり、各々乾燥させた水溶性樹脂を、JIS K2501に準じた水酸化カリウム・エタノール溶液による電位差滴定から算出したものである。
【0017】
前記(メタ)アクリル樹脂(A1)、及び(A2)としては、各種の(メタ)アクリレートモノマーと、必要に応じて、その他の重合性不飽和基含有化合物を共重合させて得られる。
前記(メタ)アクリル樹脂を構成するモノマーは特に限定されず、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2-アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリルモノマーを使用することができる。
尚、前記「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートのいずれか一方または両方を指し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルのいずれか一方または両方を指す。
【0018】
前記重合性不飽和基含有化合物としては、前記(メタ)アクリルモノマーの他に、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルスチレン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N-ビニルピロリドン等のビニルモノマーを使用することもできる。
これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0019】
また、酸価を有するアクリル樹脂(A1)及び(A2)は、カルボキシル基及びカルボキシル基が塩基性化合物によって中和されたカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を導入することを目的として(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させることで得ることができる。
【0020】
前記アクリル樹脂(A1)、及び(A2)は、例えば、重合開始剤の存在下、60℃~150℃の温度領域で各種モノマーを重合させることにより製造することができる。重合の方法は、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。また、重合様式は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。
【0021】
〔コアシェル型樹脂〕
本発明においては、酸価50(mgKOH/g)未満の(メタ)アクリル樹脂(A1)について、コアシェル型の樹脂を使用する事が好ましい。
本発明で使用するコアシェル型樹脂は、重合体(a2)が重合体(a1)によって水性媒体中に分散された状態を指し、通常、重合体(a1)が樹脂粒子の最外部に存在することでシェル部を形成し、重合体(a2)の一部または全部がコア部を形成したものであることが多い。以後本発明において、シェル部を形成する樹脂を重合体(a1)とし、コア部を形成する樹脂を重合体(a2)と称す。
【0022】
〔シェル部を構成する重合体(a1)〕
本発明で使用するコアシェル型樹脂は、シェル部を構成する重合体(a1)について、カルボキシル基及びそれを中和して形成されるカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を有するアクリル樹脂を含むものによって構成されていることが好ましい。その際、シェル部の酸価は40以上250以下の範囲であることが好ましく、120以下がなお好ましい。
【0023】
前記、シェル部を構成する重合体(a1)のカルボキシル基は、塩基性化合物によって中和されカルボキシレート基を形成することが好ましい。
【0024】
前記、中和に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等を使用することができ、アンモニア、トリエチルアミンを使用することが、塗膜の耐温水性、耐食性及び耐薬品性をより一層向上するうえで好ましい。
【0025】
前記塩基性化合物の使用量は、得られるコアシェル型樹脂の水分散安定性をより一層向上するうえで、前記重合体(a1)が有するカルボキシル基の全量に対して[塩基性化合物/カルボキシル基]=0.2~2(モル比)となる範囲で使用することが好ましい。
【0026】
前記、重合性不飽和二重結合を有するモノマーのうち、カルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーを含む(メタ)アクリルモノマーを重合して得られるものを使用することが好ましい。特に、前記重合体(a1)としては、前記重合体(a1)のガラス転移温度(Tg1)を30℃~100℃の範囲に調整するうえで、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を組み合わせ重合して得られるものを使用することが、造膜性に優れ、かつ、耐温水性、耐食性及び耐薬品性に優れた塗膜を形成するうえでより好ましい。
【0027】
〔コア部を構成する重合体(a2)〕
前記、コア部を構成する重合体(a2)は、前述のアクリル樹脂と同様のアクリルモノマー等の共重合体を使用することができる。
この際、コア部の重量平均分子量は200,000~3,000,000の範囲であることが好ましく、800,000以上がなお好ましい。Tgは-30℃~30℃の範囲であることが好ましい。
【0028】
前記、コア部を構成する重合体(a2)は、前述のアクリル樹脂と同様のアクリルモノマー等の共重合体を使用することができるが、中でも、水性媒体で製造することが好ましい。具体的には、前記、モノマーと重合開始剤等とを、水性媒体を含有する反応容器に一括供給または逐次供給し重合することによって製造することができる。その際、予め前記モノマーと水性媒体と必要に応じて反応性界面活性剤等とを混合することでプレエマルジョンを製造し、それと重合開始剤等とを、水性媒体を含有する反応容器に供給し重合してもよい。
【0029】
前記、重合体(a2)を製造する際に使用可能な重合開始剤としては、例えば過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等のラジカル重合開始剤、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ開始剤を使用することができる。また、前記ラジカル重合開始剤は、後述する還元剤と併用しレドックス重合開始剤として使用しても良い。
【0030】
前記過硫酸塩としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等を使用することができる。前記、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等を使用することができる。
【0031】
また、前記還元剤としては、例えば、アスコルビン酸及びその塩、エリソルビン酸及びその塩(ナトリウム塩等)、酒石酸及びその塩、クエン酸及びその塩、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、塩化第二鉄等を使用することができる。
【0032】
重合開始剤の使用量は、重合が円滑に進行する量を使用すれば良いが、得られる塗膜の優れた耐食性を維持する観点から、少ない方が好ましく、ビニル重合体(a2)の製造に使用するモノマーの全量に対して、0.01質量%~0.5質量%とすることが好ましい。また、前記重合開始剤を前記還元剤と併用する場合には、それらの合計量の使用量も前記した範囲内であることが好ましい。
【0033】
また、前記プレエマルジョンを製造する際には、反応性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤等を使用してもよい。
【0034】
前記アクリル樹脂(A)を酸価50未満の(メタ)アクリル樹脂(A1)と、酸価50以上の(メタ)アクリル樹脂(A2)の2種を含有することで、アクリル樹脂(A1)だけでは補えない印刷インキの基材密着性、耐熱性、及び粘度安定性を保持できる一方、アクリル樹脂(A2)だけでは補えない耐摩擦性、耐水摩擦性、及び耐スクラッチ性が良好な傾向にあり、両者を特定比率で混合し用いた積層体は、基材密着性、耐摩耗性、耐水摩耗性、耐スクラッチ性、耐熱性等の基本的な塗膜強度と、粘度安定性を兼備した水性リキッド印刷インキ積層体を提供できる。
【0035】
前記酸価50未満の(メタ)アクリル樹脂(A1)と酸価50以上の(メタ)アクリル樹脂(A2)の比率としては、固形分の質量比率で(A1):(A2)=69:1~20:50の範囲が好ましく、より好ましくは39:1~10:30範囲であり、更に好ましくは、35:1~1:1である。
【0036】
前記、酸価50未満の(メタ)アクリル樹脂(A1)としては、酸価10以上50未満が好ましい。酸価50未満であれば耐スクラッチ性、耐水性、及び耐熱性が低下する事を抑制できる。
前記、酸価50以上の(メタ)アクリル樹脂(A2)としては、酸価50以上250以下が好ましく、より好ましくは酸価100以上である。酸価が100mgKOH/g以上であれば、積層体の基材密着性、耐スクラッチ性、及び硬化剤添加時の塗膜強度を向上する事が出来る。
尚、ここで言う酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示す。
【0037】
前記(メタ)アクリル樹脂(A1)の重量平均分子量は、400,000~3,000,000の範囲のものが好ましい。重量平均分子量400,000以上であれば、樹脂皮膜の耐熱性が低下することなく、積層体の耐摩擦性、及び耐水摩擦性を保持できる傾向にある。3,000,000以下であれば、積層体の基材密着性、耐スクラッチ性が兼備できる傾向にある。
前記(メタ)アクリル樹脂(A2)の重量平均分子量は、10,000~100,000の範囲のものが好ましい。重量平均分子量が10,000以上であれば、樹脂皮膜の強度が低下することなく、積層体の基材密着性、耐熱性、及び粘度安定性を保持できる傾向にある。100,000以下であれば、積層体の基材密着性、耐スクラッチ性が兼備できる傾向にある。
【0038】
前記(メタ)アクリル樹脂(A1)のガラス転移温度(Tg)は、-30℃~30℃の範囲である事が好ましい。(メタ)アクリル樹脂(A)のTgが-30℃以上であれば、皮膜強度が保たれ、積層体の耐水摩擦性が低下することなく、また30℃以下であれば、他の印刷層との相溶性が低下する事なく、積層体の耐摩擦性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性が良好に保たれる傾向にある。
前記(メタ)アクリル樹脂(A2)のガラス転移温度(Tg)は、40℃~100℃の範囲である事が好ましい。(メタ)アクリル樹脂(A)のTgが40℃以上であれば、樹脂の皮膜強度が保たれ、積層体の耐摩擦性、耐水摩擦性が低下する事なく、また反対に100℃以下であれば、樹脂の成膜性が向上し、耐スクラッチ性が低下する事なく、積層体の基材密着性が良好に保たれる傾向にある。
尚、前記ガラス転移温度(Tg1)は、いわゆる計算ガラス転移温度を指し、下記の方法で算出された値を指す。
(式1) 1/Tg(K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・(Wn/Tn)
(式2) Tg(℃)=Tg(K)-273
式1中のW1、W2、・・・Wnは、重合体の製造に使用したモノマーの合計質量に対する各モノマーの質量%を表し、T1、T2、・・・Tnは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を表す。なお、T1、T2、・・Tnの値は、Polymer Handbook(Fourth Edition,J.Brandrup,E.H.Immergut,E.A.Grulke 編)に記載された値を用いる。
また、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度が前記Polymer Hand Bookに記載されていないもののガラス転移温度は、示差走査熱量計「DSC Q-100」(TA Instrument社製)を用い、JIS K7121に準拠した方法で測定した。具体的には、真空吸引して完全に溶剤を除去した重合体を、20℃/分の昇温速度で-100℃~+200℃の範囲で熱量変化を測定し、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点をガラス転移温度とした。
【0039】
更に、本発明の水性リキッドインキは、更にエポキシ化合物を添加することが出来る。
前記エポキシ化合物としては、例えば、フェノール(EO)グリシジルエーテル(CAS番号:54140-67-9)、ラウリルアルコール(EO)15グリシジルエーテル(CAS番号:86630-59-3)、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシクレゾールノボラック等が挙げられ、これらは硬化剤としての効能を有する。
【0040】
中でも、ソルビトールポリグリシジルエーテルがより好ましい。
ソルビトールを母骨格とした脂肪族多官能エポキシ化合物は、高い官能数に由来する高反応性を有し、硬化後は脂肪族でありながら高い架橋密度を有し、堅固な架橋構造による硬化皮膜の強度アップに繋がる。
前記、酸価50(mgKOH/g)未満の(メタ)アクリル樹脂(A1)と、酸価50(mgKOH/g)以上の(メタ)アクリル樹脂(A2)を、前記(メタ)アクリル樹脂(A1):前記(メタ)アクリル樹脂(A2)=69:1~20:50の範囲で含有する構成に、更にエポキシ化合物を添加する事で、硬化スピードが増す分、粘度安定性はやや低下するものの、フィルム基材に対するインキ層の基材密着性、耐摩耗性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性、耐熱性等を更に強固にすることができる。
前記エポキシ化合物の添加量は、インキ全量の固形分換算で0.1~10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~9.0質量%の範囲である。
添加量が0.1質量%以上であれば硬化剤としての効果が得られる一方、10.0質量%以下であれば、基材密着性、耐摩擦性、耐水摩擦性が保持される傾向となる。
【0041】
更に、本発明の水性リキッドインキは、顔料を添加することが出来る。前記顔料としては、着色顔料、白色顔料いずれでもよい。白色顔料を添加すれば、例えば表刷りグラビア印刷を例に挙げれば、絵柄の背景に相当する白インキとしても使用することができる。これら顔料を添加しなければオーバーコートニス用途として使用する事もできる。
【0042】
本発明の水性リキッドインキに使用される着色顔料としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機顔料や染料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。
【0043】
カラーインデックス名としては、
C.I.Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、42、74、83;
C.I.Pigment Orange 16;
C.I.Pigment Red 5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、81、101;
C.I.Pigment Violet 19、23;
C.I.Pigment Blue 23、15:1、15:3、15:4、17:1、18、27、29
C.I.Pigment Green 7、36、58、59;
C.I.Pigment Black 7;
C.I.Pigment White 4、6、18などが挙げられる。
【0044】
藍インキにはC.I.Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)、黄インキにはコスト・耐光性の点からC.I.Pigment Yellow83、紅インキにはC.I.Pigment Red 57:1を用いることが好ましい。墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウム、パールインキにはマイカ(雲母)を使用することがコストや着色力の点から好ましい。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
【0045】
また、本発明の水性リキッドインキに使用される白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、鉛白、亜鉛華、リトボン、アンチモンホワイト、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、シリカ、等があげられる。
尚、前記顔料の平均粒径は、10~200nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50~150nm程度のものである。
また前記着色顔料の添加量としては、十分な画像濃度や印刷画像の耐光性を得るため、インキ全量の1~20質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0046】
本発明の水性リキッドインキは、プラスチックフィルムに1層または複数層の印刷層を有する積層体であって、前記印刷層の少なくとも1つが、酸価50(mgKOH/g)未満の(メタ)アクリル樹脂(A1)と、酸価50(mgKOH/g)以上の(メタ)アクリル樹脂(A2)との固形分質量比率が、(A1):(A2)=69:1~20:50の範囲で含有する水性リキッドインキ(A)の印刷層であることを特徴とする積層体を作製する事ができる。
【0047】
前記積層体に使用される基材であるプラスチックフィルムとしては、特に限定は無く、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂に代表される生分解性樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂またはそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。
これらのフィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでも良く、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。
また、フィルムの印刷面には、コロナ放電処理がされていれば更に基材密着性を向上させる事ができ好ましい。また、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
【0048】
尚、前記積層体が複数層の場合、基材であるプラスチックフィルムから最も遠い最上層に水性リキッドインキ(A)の印刷層が設けられれば、積層体の強度はより十分なものとなり、基材密着性、耐摩擦性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性、耐熱性と言った基本的な塗膜強度がより保持される傾向にある。特にオーバーコートニス用途として有用である。勿論、前述の通り水性リキッドインキ(A)に着色顔料や白色顔料を添加してもよいし、複数層に渡って水性リキッドインキ(A)を刷り重ねて積層させれば、より強固な積層体が得られる傾向にある。
また、水性リキッドインキ(A)に更に前記エポキシ化合物を適量添加した積層体では、硬化スピードが増す分、粘度安定性はやや低下するものの、基材密着性、耐摩耗性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性、耐熱性等を兼備するより強靭な積層体を得る事ができる。
【0049】
また、本発明の水性リキッドインキを使用した積層体としては、印刷層が複数層であり、プラスチックフィルムに、ポリウレタン樹脂又はアクリルポリウレタン樹脂と顔料を含有する印刷インキにより形成された第一の印刷層と、白色顔料を含有する前記水性リキッドインキ(A)により形成された第二の白印刷層とをこの順に有する積層体を作製する事ができる。
【0050】
前記ポリウレタン樹脂又はアクリルポリウレタン樹脂を第一の印刷層に用いる事で、アクリル樹脂と比較して塗膜に柔軟性があり、プラスチックフィルムに対する密着性が高くフィルム基材の変形に伴う追従性も高い。また、ポリウレタン樹脂又はアクリルポリウレタン樹脂は顔料分散性、印刷時の再溶解性、顔料を分散した際の発色性の点でも、アクリル樹脂に劣らない同等以上の性能が得られ顔料との相性もよい。
また、アクリルポリウレタン樹脂を用いた場合、ポリウレタン樹脂を使用した場合と比較して、発色や再溶解性が良好であり、柔軟で強靭なポリウレタン樹脂による塗膜に較べ、印刷時の糸曳きが発生し難い傾向がある。尚、ポリウレタン樹脂、アクリルポリウレタン樹脂は双方混合して使用してもよいし、必用に応じアクリル樹脂を適宜混合して使用してもよい。
【0051】
前記ポリウレタン樹脂の酸価は10~50mgKOH/gの範囲であることが好ましい。酸価が10mgKOH/g以上であれば、印刷におけるインキ皮膜の水系溶剤への再溶解性が悪くなり、印刷物の調子再現性が低下することなく、リキッド印刷インキ積層体を形成した際の画像再現性が低下する事も抑制できる。
反対に酸価が50mgKOH/g以下であれば、樹脂の耐水性が低下することがなく、積層体の基材密着性、耐水摩擦性の低下を抑制する事ができる。尚、ここで言う酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示す。
【0052】
前記アクリルポリウレタン樹脂としては、重量平均分子量が20,000~2,000,000、酸価は10~60mgKOH/gが望ましく、より好ましくは、重量平均分子量が、30,000~1,500,000、20~50mgKOH/gである。重量平均分子量が20,000以上であれば、耐摩擦性、及び耐水摩擦性が低下することなく、重量平均分子量が2,000,000以下であれば、基材密着性が低下を抑制する事ができる。
また、酸価が10mgKOH/g以上であれば、印刷物の調子再現性が低下することなく、リキッド印刷インキ積層体としての画像再現性も良好に保持できる。
一方で、酸価が60mgKOH/g以下であれば、樹脂の耐水性が低下することなく、積層体の基材密着性、耐水摩擦性を良好に保つ事ができる。
【0053】
更に本発明は、前記印刷層が複数層であり、プラスチックフィルムに、ポリウレタン樹脂又はアクリルポリウレタン樹脂と顔料を含有する印刷インキより形成された第一の印刷層と、白色顔料を含有する前記水性リキッドインキ(A)により形成された第二の白印刷層と、前記水性リキッドインキ(A)より形成された第三の印刷層とをこの順に有する請求項4に記載の積層体をも作製する事ができる。
プラスチックフィルムに、ポリウレタン樹脂又はアクリルポリウレタン樹脂と顔料を含有する印刷インキより形成された第一の印刷層は前記に準じた着色顔料による絵柄を形成させる事ができ、白色顔料を含有する前記水性リキッドインキ(A)により形成された第二の白印刷層は、例えば表刷りグラビア印刷を例に挙げれば、絵柄の背景として使用することができる。更に前記水性リキッドインキ(A)より形成された第三の印刷層はオーバーコートニス用途として使用する事もできるし、場合によっては白色顔料を添加してもよい。
【0054】
尚、本発明の水性リキッドインキに含まれる樹脂の含有量は、各々固形分換算で5~50質量%であることが好ましい。5質量%以上であれば、インキ塗膜強度が低下することもなく、基材密着性、耐水摩擦性等も良好に保たれる。反対に50質量%を以下であれば、着色力が低下する事が抑制でき、また高粘度となる事が避けられ、作業性が低下することもない。
【0055】
本発明の水性リキッドインキについて、各々必用に応じて併用樹脂、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス類、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。中でも耐摩擦性、滑り性等を付与するためのパラフィン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、カルナバワックス、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド類及び印刷時の発泡を抑制するためのシリコン系、非シリコン系消泡剤及び顔料の濡れを向上させる各種分散剤等が有用である。
【0056】
本発明の水性リキッドインキに含まれる溶剤としては、水単独または水と混和する有機溶剤を使用することができる。有機溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール等のアルコール類やプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチルカルビトール等のエーテル類等が挙げられる。
【0057】
本発明の水性リキッドインキは、まず顔料、水、又は水と混和する有機溶剤、分散剤、消泡剤等を添加した混合物を分散機で分散し、顔料分散体を得る。得られた顔料分散体に樹脂、水、又は水と混和する有機溶剤、必要に応じてワックス、レベリング剤等の添加剤を加え、撹拌混合することで得られる。分散機としてはグラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造される。
【0058】
本発明の水性リキッドインキを、フレキソインキとして使用する場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#4を使用し25℃にて7~25秒であればよく、より好ましくは10~20秒である。また、得られたフレキソインキの25℃における表面張力は、25~50mN/mが好ましく、33~43mN/mであればより好ましい。インキの表面張力が低いほどフィルム等の基材へのインキの濡れ性は向上するが、表面張力が25mN/mを下回るとインキの濡れ広がりにより、中間調の網点部分で隣り合う網点どうしが繋がり易い傾向にあり、ドットブリッジと呼ばれる印刷面の汚れの原因と成りやすい。一方、表面張力が50mN/mを上回るとフィルム等の基材へのインキの濡れ性が低下し、ハジキの原因と成り易い。
【0059】
一方で本発明の水性リキッドインキを、グラビアインキとして使用する場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#3を使用し25℃にて7~25秒であればよく、より好ましくは10~20秒である。また、得られたグラビアインキの25℃における表面張力は、フレキソインキと同様に25~50mN/mが好ましく、33~43mN/mであればより好ましい。インキの表面張力が低いほどフィルム等の基材へのインキの濡れ性は向上するが、表面張力が25mN/mを下回るとインキの濡れ広がりにより、中間調の網点部分で隣り合う網点どうしが繋がり易い傾向にあり、ドットブリッジと呼ばれる印刷面の汚れの原因と成りやすい。一方、表面張力が50mN/mを上回るとフィルム等の基材へのインキの濡れ性が低下し、ハジキの原因と成り易い。
【実施例
【0060】
以下実施例により、本発明をより詳しく説明する。尚、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ表す。
尚、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0質量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
また、アクリル樹脂の酸価は、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示すものであり、各々乾燥させた水溶性樹脂を、JIS K2501に準じた水酸化カリウム・エタノール溶液による電位差滴定から算出した。
また、ガラス転移温度(Tg)は、いわゆる計算ガラス転移温度を指し、下記の方法で算出された値を指す。
(式1) 1/Tg(K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・(Wn/Tn)
(式2) Tg(℃)=Tg(K)-273
式1中のW1、W2、・・・Wnは、重合体の製造に使用したモノマーの合計質量に対する各モノマーの質量%を表し、T1、T2、・・・Tnは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を表す。なお、T1、T2、・・Tnの値は、Polymer Handbook(Fourth Edition,J.Brandrup,E.H.Immergut,E.A.Grulke 編)に記載された値を用いる。
また、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度が前記Polymer Hand Bookに記載されていないもののガラス転移温度は、示差走査熱量計「DSC Q-100」(TA Instrument社製)を用い、JIS K7121に準拠した方法で測定した。具体的には、真空吸引して完全に溶剤を除去した重合体を、20℃/分の昇温速度で-100℃~+200℃の範囲で熱量変化を測定し、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点をガラス転移温度とした。
【0061】
〔合成例1:シェル部アクリル樹脂(重合体a1)の作製〕
反応容器に攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、酢酸n-プロピル60.0部を仕込む。窒素雰囲気かで攪拌しながら、温度90℃まで昇温した。一方でメチルアクリレート36.0部、n-ブチルアクリレート10.0部、n-ブチルメタクリレート20.0部、2-エチルヘキシルアクリレート20.0部、アクリル酸14.0部、アゾビスイソブチロニトリル1.2部を酢酸n-プロピル40.0部に溶解し、滴下ロートを用いて4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に6時間反応させた。反応終了後に冷却を行い、得られたアクリル樹脂溶液に30%アンモニア水を8.0部加えて中和した。更にイオン交換水を加えて加熱しながら溶剤置換を行い、固形分55%のアクリル樹脂の水溶液を得た。酸価は105 mgKOH/g、Tgは65℃、重量平均分子量は18,000であった。
【0062】
〔合成例2:コア-シェル型アクリルエマルジョン(A1)の作製〕 酸価42
合成例1で調製したアクリル樹脂水溶液121.2部を仕込んだ反応容器に、攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、イオン交換水195.5部を加える。窒素雰囲気下で攪拌を行いながら温度75℃まで昇温した。続いて滴下ロートを用いてメチルメタクリレート30.0部、n-ブチルアクリレート25.0部、2-エチルヘキシルアクリレート45部、30%過硫酸アンモニウム3.3部を4時間かけて滴下した。滴下完了後、更に6時間反応を行い、固形分40%のコア-シェル型アクリルエマルジョン水溶液を得た。酸価は42mgKOH/g、Tgは-20℃、重量平均分子量は1,200,000であった。
【0063】
〔合成例3:高酸価アクリルポリマー(A2)の作製〕 酸価220
反応容器に攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、酢酸n-プロピル65.0部を仕込む。窒素雰囲気下で攪拌しながら、温度90℃まで昇温した。一方でスチレン50.0部、2-エチルヘキシルアクリレート15.0部、アクリル酸35.0部、アゾビスイソブチロニトリル2.5部を酢酸n-プロピル35.0部に溶解し、滴下ロートを用いて4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に6時間反応させた。反応終了後に冷却を行い、得られたアクリル樹脂溶液に30%アンモニア水を20.0部加えて中和した。更にイオン交換水を加えて加熱しながら溶剤置換を行い、固形分30%のアクリル樹脂の水溶液を得た。酸価は220 mgKOH/g、Tgは60℃、重量平均分子量は10,000であった。
【0064】
〔合成例4:ポリウレタン樹脂溶液(Pu)の作製〕
PLACCEL 212(ダイセル化学工業(株)製、ポリカプロラクトンジオール、水酸基価90 mgKOH/g)の186.9部およびIPDIの100.0部を仕込んだ。これを攪拌しながら、110℃に加熱した。1時間後、80℃まで冷却し、DMPAの20.1部、ジブチル錫ジラウレートの0.3部および酢酸エチルの76.8部を加え、80℃で2時間反応させた。ここに、バーノック DN-980S(DIC社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含量20%)の18.1部とMEKの408部を加えた。この時のNCO基含有量は固形分換算で4.9%であった。
これを30℃以下まで冷却し、トリエチルアミンの15.2部を加え、次いでイオン交換水の1293部を加えてO/W型のエマルジョンを得た。続いてジエチレントリアミン5%水溶液の234部を徐々に加え、加え終わった後60℃に昇温して30分攪拌を続けた。
次いで、減圧下において、蒸留を行い、溶剤と水の一部を除去せしめた。
このものはやや乳白色を呈する半透明液体であり、少量を試験管に取ってTHFを加えると濁りを呈し、架橋して不溶解になっていることを示した。不揮発分39.6%で、粘度が160cpsで、pHが7.7で、平均粒子径が28.5nmであった。
【0065】
〔調整例Au:アクリルポリウレタン(Au)樹脂溶液の作製〕
反応容器に攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、酢酸n-プロピル80.0部を仕込む。窒素雰囲気下で攪拌しながら、温度90℃まで昇温した。一方でスチレン32.0部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル20.0部、2-エチルヘキシルアクリレート40部、アクリル酸8.0部、アゾビスイソブチロニトリル3.0部を酢酸n-プロピル40.0部に溶解し、滴下ロートを用いて4時間かけて滴下した。滴下終了後、バーノック DN-980S(DIC社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含量20%)1.6部を徐々に加え、更に6時間反応させた。反応終了後に冷却を行い、得られたアクリル樹脂溶液に30%アンモニア水を4.0部加えて中和した。更にイオン交換水を加えて加熱しながら溶剤置換を行い、固形分25%のアクリル樹脂の水溶液を得た。酸価は48 mgKOH/g、Tgは54℃、重量平均分子量は600,000であった。
【0066】
〔調整例1:アクリル系ニスの製造〕
合成例2で作製したアクリルエマルジョン(A1)固形分10部、合成例3で作製した高酸価アクリルポリマー(A2)固形分25部、ポリエチレンワックス5部、ノルマルプロパノール4部、消泡剤0.1部、アンモニア水1.2部、水54.7部を撹拌混合した後、ビーズミルで練肉しアクリル系ニスを作製した。得られたアクリル系ニスの粘度がザーンカップ#4(離合社製)で16秒(25℃)である事を確認した。
【0067】
〔調整例2~10:アクリル系ニスの製造〕
調整例2~8については、表1に示すアクリルエマルジョン(A1)、及び高酸価アクリルポリマー(A2)の添加量を変更する以外は、調整例1と同じ配合、同様の手順にてアクリル系ニスを作製した。
調整例9については、アクリルエマルジョン(A1)固形分35部のみとし、高酸価アクリルポリマー(A2)は未使用とした。
調整例10については、高酸価アクリルポリマー(A2)35部のみとし、アクリルエマルジョン(A1)は未使用とした。
得られたアクリル系ニスの粘度がザーンカップ#4(離合社製)で16秒(25℃)である事を確認した。
【0068】
〔調整例11~22:エポキシ硬化剤含有アクリル系ニスの製造〕
表2に示す通り、調整例1~8の配合に更に各々エポキシ硬化剤ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)社製をデナコールEX-612)5部添加し、同様の手順にてアクリル系ニスを作製した。
調整例19~22については、表3の配合に従い、エポキシ硬化剤ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)社製をデナコールEX-612)の添加量を変更し、水の添加量でインキ全量を100部に調整した。
【0069】
〔調整例23、24:ポリウレタン系ニスの製造〕
合成例4で作製したポリウレタン樹脂(Pu)固形分20.6部、スチレン・マレイン酸系顔料分散樹脂5部、ポリエチレンワックス2.3部、ノルマルプロパノール3.5部、消泡剤0.1部、アンモニア水1.0部、水67.5部を撹拌混合した後、ビーズミルで練肉しポリウレタン系ニス作製した。得られたポリウレタン系ニスの粘度がザーンカップ#4(離合社製)で16秒(25℃)である事を確認した。配合を表4に示す。
【0070】
〔調整例25、26:アクリルポリウレタン系ニスの製造〕
合成例5で作製したアクリルポリウレタン樹脂(Au)固形分20.6部、スチレン・マレイン酸系顔料分散樹脂5部、ポリエチレンワックス2.3部、ノルマルプロパノール3.5部、消泡剤0.1部、アンモニア水1.0部、水67.5部を撹拌混合した後、ビーズミルで練肉しアクリルポリウレタン系ニスを作製した。得られたアクリルポリウレタン系ニスの粘度がザーンカップ#4(離合社製)で16秒(25℃)である事を確認した。配合を表4に示す。
【0071】
〔調整例27、28:アクリル系白インキの製造〕
調整例27については、アクリルエマルジョン(A1)固形分18部、高酸価アクリルポリマー(A2)固形分2部、酸化チタン(テイカ社製 製品名:JR-800)40部、ポリエチレンワックス5部、ノルマルプロパノール3部、消泡剤0.1部、アンモニア水0.6部、水31.3部を撹拌混合した後、ビーズミルで練肉しアクリル系白インキを作製した。得られたアクリル系白インキの粘度がザーンカップ#4(離合社製)で16秒(25℃)である事を確認した。
調整例28については、アクリルエマルジョン(A1)固形分20部、高酸価アクリルポリマー(A2)を無添加、以外は調整例27と同じ配合、同様の手順にてアクリル系白インキを作製した。配合を表5に示す。
【0072】
〔調整例29:ポリウレタン系藍インキ(Pu-藍)の製造〕
合成例3で作製したポリウレタン樹脂(Pu)固形分16.7部、FASTPGEN BLUE LA5380藍顔料(DIC社製) 19部、スチレン・マレイン酸系顔料分散樹脂4部、ポリエチレンワックス0.6部、ノルマルプロパノール2.8部、消泡剤0 .1部、アンモニア水0.8部水56部を撹拌混合した後、ビーズミルで練肉しポリウレタン系藍インキ(Pu-藍)を作製した。得られたポリウレタン系藍インキ(Pu-藍)の粘度がザーンカップ#4(離合社製)で16秒(25℃)である事を確認した。
【0073】
〔調整例30:アクリルポリウレタン系藍インキ(Au-藍)の製造〕
調整例1のポリウレタン樹脂(Pu)の代わりに、合成例4で作製したアクリルポリウレタン樹脂(Au)固形分16.7部を使用した以外は調整例29と同じ配合、同様の手順にてアクリルポリウレタン系藍インキ(Au-藍)を作製した。得られたアクリルポリウレタン系藍インキ(Au-藍)の粘度がザーンカップ#4(離合社製)で16秒(25℃)である事を確認した。
【0074】
表1~6に各インキ、ニスの調整例を示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
<印刷インキ積層体の作製>
[実施例1]
コロナ処理ポリプロピレン二軸延伸フィルム(東洋紡績(株)製 パイレンP2161 厚さ20μm)に、縦240mm×横80mmのベタ絵柄を、Flexoproof100テスト印刷機(Testing Machines,Inc.社製、アニロックス200線/inch)を用い、アニロックスロールおよび樹脂版により、調整例29によるポリウレタン系藍インキ、調整例1によるアクリル系ニスの順で印刷速度100m/分で印刷し、得られた印刷物を40℃にて20時間エージングを行った後、第一印刷層、第二印刷層からなる2層構造の印刷インキ積層体(P1)を得た。
【0082】
[実施例2~36][比較例1~12]
表7~13に示す第一印刷層、第二印刷層からなる2層構造の印刷インキ積層体(P1)を、実施例1と同様の方法で作製した。
【0083】
[実施例37]
コロナ処理ポリプロピレン二軸延伸フィルム(東洋紡績(株)製 パイレンP2161 厚さ20μm)に、縦240mm×横80mmのベタ絵柄を、Flexoproof100テスト印刷機(Testing Machines,Inc.社製、アニロックス200線/inch)を用い、アニロックスロールおよび樹脂版により、調整例29によるポリウレタン系藍インキ、調整例27によるアクリル系白インキ、調整例1によるアクリル系ニスの順で印刷速度100m/分で印刷し、得られた印刷物を40℃にて24時間エージングを行った後、第一印刷層、第二印刷層、及び第三印刷層からなる3層構造の印刷インキ積層体(P2)を得た。
【0084】
[実施例38~72][比較例13~24]
表14~表20に示す第一印刷層、第二印刷層、及び第三印刷層からなる3層構造の印刷インキ積層体(P2)を、実施例37と同様の方法で作製した。
【0085】
作製した2層構造の印刷インキ積層体(P1)、3層構造の印刷インキ積層体(P2)を用い、基材密着性、耐摩擦性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性、耐熱性の評価を行い、また作成した本発明のアクリル樹脂系のインキ、ニスについて粘度安定性についても評価を行った。
【0086】
<基材密着性>
得られた印刷インキ積層体に対し、インキ塗工面にセロファンテープ(ニチバン製)を貼ったのち、強く引き剥がしてインキの剥離度合いを目視判定した。
尚、実用レベルは△○以上である。
◎ :インキが全く剥離しなかったもの
○ :インキがフィルムから僅かに剥離するもの(20%未満)
○△:インキがフィルムから剥離するもの(20%以上、40%未満)
△ :インキがフィルムから剥離するもの(40%以上、60%未満)
× :インキがフィルムから著しく剥離するもの(60%以上)
【0087】
<耐摩耗性>
得られた印刷インキ積層体を、学振型耐摩擦性試験機を用いて、上質紙にて摩擦し、インキ層の剥離度合いを目視判定した。(荷重 500gにて往復500回)
尚、実用レベルは△以上である。
◎: インキが全く剥離しなかったもの
○: インキがフィルムから僅かに剥離するもの(15%未満)
○△:インキがフィルムから剥離するもの(15%以上、30%未満)
△: インキがフィルムから剥離するもの(30%以上、50%未満)
×: インキがフィルムから著しく剥離するもの(50%以上)
【0088】
<耐水摩擦性>
得られた印刷インキ積層体を、学振型耐摩擦性試験機を用いて、含水黒綿布にて摩擦し、インキ層の剥離度合いを目視判定した。(荷重 200gにて往復500回)
尚、実用レベルは△以上である。
◎: インキが全く剥離しなかったもの
○: インキがフィルムから僅かに剥離するもの(15%未満)
○△:インキがフィルムから剥離するもの(15%以上、30%未満)
△: インキがフィルムから剥離するもの(30%以上、50%未満)
×: インキがフィルムから著しく剥離するもの(50%以上)
【0089】
<耐スクラッチ性>
得られた印刷インキ積層体に対し、爪でインキ塗工面を引掻き、塗膜の傷つき程度から
耐スクラッチ性を目視評価した。
なお、実用レベルは○△以上である。
◎ :傷が生じなかったもの
○ :僅かに傷を生ずるもの
○△:○と△の中位の傷を生ずるもの
△: 傷を生ずるもの
×: 著しく傷を生ずるもの(爪を縦にしても剥がれるもの)
【0090】
<耐熱性>
印刷面とPETフィルム(東洋紡社製 製品名:E5102 12μ)未処理面を圧着し、ヒートシールテスターを用いて高温条件化におけるインキの取られ度合いを目視評価した
◎ :インキが全く取られなかったもの
○ :インキがフィルムに僅かに取られるもの(20%未満)
○△:インキがフィルムに取られるもの(20%以上、40%未満)
△ :インキがフィルムに取られるもの(40%以上、60%未満)
× :インキがフィルムに著しく取られるもの(60%以上)
【0091】
<粘度安定性>
作成した本発明のアクリル樹脂系のインキ・ニスに関して、25℃にて標準を15秒とした場合の6時間後の粘度をザーンカップ#4(離合社製)を用いて評価した
◎ :インキが全く増粘しなかったもの(+1秒未満)
○ :インキが僅かに増粘したもの(+3秒未満)
○△:インキが僅かに増粘したもの(+5秒未満)
△ :インキが増粘したもの(+10秒未満)
× :インキが著しく増粘したもの(+10秒以上)
【0092】
得られた2層構造の印刷インキ積層体(P1)、3層構造の印刷インキ積層体(P2)の構成と、評価結果を表7~20に示す。
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【0095】
【表9】
【0096】
【表10】
【0097】
【表11】
【0098】
【表12】
【0099】
【表13】
【0100】
【表14】
【0101】
【表15】
【0102】
【表16】
【0103】
【表17】
【0104】
【表18】
【0105】
【表19】
【0106】
【表20】
【0107】
以上の結果から、本発明の水性リキッドインキは、粘度安定性に優れ、硬化塗膜の基材密着性、各種塗膜強度をも兼備する積層体を提供することが出来る。
更に、硬化剤を添加した系でも同様に、粘度安定性に遜色なく、硬化塗膜の基材密着性、各種塗膜強度を更に強靭とする積層体を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のリキッド印刷インキ積層体は、各種グラビア、フレキソ印刷物として、食品包材・サニタリー・コスメ・電子部品等工業製品向け用途に幅広く展開され得る。