IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許-ボイラ、および、ボイラ制御方法 図1
  • 特許-ボイラ、および、ボイラ制御方法 図2
  • 特許-ボイラ、および、ボイラ制御方法 図3
  • 特許-ボイラ、および、ボイラ制御方法 図4
  • 特許-ボイラ、および、ボイラ制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】ボイラ、および、ボイラ制御方法
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/00 20060101AFI20220308BHJP
   F22B 35/14 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
F23N5/00 J
F22B35/14 C
F23N5/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017233515
(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019100646
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 聚偉
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-116250(JP,A)
【文献】特開2004-316960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/00
F22B 35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉と、
前記燃焼炉に対する制御入力を無次元化して前回値としての無次元制御入力を導出する無次元化部と、
前記無次元制御入力に対する結果である制御量を取得する制御量取得部と、
前記無次元制御入力および前記制御量の蓄積された複数の組み合わせに基づき、前記無次元制御入力に対する前記制御量を導く関数を導出する関数導出部と、
前記無次元制御入力と前記制御量との相関係数を導出し、前記相関係数が相関閾値未満となる前記関数を除外する関数除外部と、
導出された関数の逆関数により前記制御量が所定の範囲に収まる無次元制御入力を導出する制御入力導出部と、
を備えるボイラ。
【請求項2】
燃焼炉と、
前記燃焼炉に対する制御入力を無次元化して前回値としての無次元制御入力を導出する無次元化部と、
前記無次元制御入力に対する結果である、前記燃焼炉の任意の位置の火炎温度である代表火炎温度、燃焼後の灰中の未燃分の重量比である未燃重量比、燃焼排ガスにおけるNOxの濃度であるNOx濃度を含む制御量を取得する制御量取得部と、
前記無次元制御入力および前記制御量の蓄積された複数の組み合わせに基づき、前記無次元制御入力に対する前記制御量を導く関数を導出する関数導出部と、
導出された関数の逆関数により前記制御量が、前記代表火炎温度、前記未燃重量比、前記NOx濃度の順に所定の範囲に収まる無次元制御入力を導出する制御入力導出部と、
を備えるボイラ。
【請求項3】
燃焼炉に対する制御入力を無次元化して前回値としての無次元制御入力を導出し、
前記無次元制御入力に対する結果である制御量を取得し、
前記無次元制御入力および前記制御量の蓄積された複数の組み合わせに基づき、前記無次元制御入力に対する前記制御量を導く関数を導出し、
前記無次元制御入力と前記制御量との相関係数を導出し、前記相関係数が相関閾値未満となる前記関数を除外し、
導出された関数の逆関数により前記制御量が所定の範囲に収まる無次元制御入力を導出するボイラ制御方法。
【請求項4】
燃焼炉に対する制御入力を無次元化して前回値としての無次元制御入力を導出し、
前記無次元制御入力に対する結果である、前記燃焼炉の任意の位置の火炎温度である代表火炎温度、燃焼後の灰中の未燃分の重量比である未燃重量比、燃焼排ガスにおけるNOxの濃度であるNOx濃度を含む制御量を取得し、
前記無次元制御入力および前記制御量の蓄積された複数の組み合わせに基づき、前記無次元制御入力に対する前記制御量を導く関数を導出し、
導出された関数の逆関数により前記制御量が、前記代表火炎温度、前記未燃重量比、前記NOx濃度の順に所定の範囲に収まる無次元制御入力を導出するボイラ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボイラ、および、ボイラ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼炉と、燃焼炉の内側に配され、水が流通する伝熱管とを含んで構成される微粉炭ボイラが知られている。微粉炭ボイラでは、燃焼炉で微粉炭(石炭)を燃焼させ、燃焼により生じた熱を伝熱管内に伝えることで伝熱管内の水を加熱している。
【0003】
また、このような燃焼炉における燃焼に伴い燃焼排ガスが生じる。そこで、燃焼排ガスに含まれるNOxを低減する技術が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭63-65226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボイラにおいては、燃焼における火炎温度や、燃焼後の灰中の未燃分が適切な範囲に収まるように燃料等の制御入力が決定される。しかし、ボイラの制御は確立されておらず、このような火炎温度や未燃分の調整に技師が介入せざるを得なかった。したがって、石炭の種類や運転条件の変化に対して迅速に対応することが難しかった。また、火炎温度や未燃分を適切な範囲に収めることができたとしても、その状態で、さらにNOxを低減することは困難であった。
【0006】
そこで本開示は、このような課題に鑑み、NOxの排出量を含む制御対象を適切な範囲に収めることが可能なボイラおよびボイラ制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るボイラは、燃焼炉と、燃焼炉に対する制御入力を無次元化して前回値としての無次元制御入力を導出する無次元化部と、無次元制御入力に対する結果である制御量を取得する制御量取得部と、無次元制御入力および制御量の蓄積された複数の組み合わせに基づき、無次元制御入力に対する制御量を導く関数を導出する関数導出部と、無次元制御入力と制御量との相関係数を導出し、相関係数が相関閾値未満となる関数を除外する関数除外部と、導出された関数の逆関数により制御量が所定の範囲に収まる無次元制御入力を導出する制御入力導出部と、を備える。
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るボイラは、燃焼炉と、燃焼炉に対する制御入力を無次元化して前回値としての無次元制御入力を導出する無次元化部と、無次元制御入力に対する結果である、燃焼炉の任意の位置の火炎温度である代表火炎温度、燃焼後の灰中の未燃分の重量比である未燃重量比、燃焼排ガスにおけるNOxの濃度であるNOx濃度を含む制御量を取得する制御量取得部と、無次元制御入力および制御量の蓄積された複数の組み合わせに基づき、無次元制御入力に対する制御量を導く関数を導出する関数導出部と、導出された関数の逆関数により、制御量が、代表火炎温度、未燃重量比、NOx濃度の順に所定の範囲に収まる無次元制御入力を導出する制御入力導出部と、を備える。
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るボイラ制御方法は、燃焼炉に対する制御入力を無次元化して前回値としての無次元制御入力を導出し、無次元制御入力に対する結果である制御量を取得し、無次元制御入力および制御量の蓄積された複数の組み合わせに基づき、無次元制御入力に対する制御量を導く関数を導出し、無次元制御入力と制御量との相関係数を導出し、相関係数が相関閾値未満となる関数を除外し、導出された関数の逆関数により制御量が所定の範囲に収まる無次元制御入力を導出する。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るボイラ制御方法は、燃焼炉に対する制御入力を無次元化して前回値としての無次元制御入力を導出し、無次元制御入力に対する結果である、燃焼炉の任意の位置の火炎温度である代表火炎温度、燃焼後の灰中の未燃分の重量比である未燃重量比、燃焼排ガスにおけるNOxの濃度であるNOx濃度を含む制御量を取得し、無次元制御入力および制御量の蓄積された複数の組み合わせに基づき、無次元制御入力に対する制御量を導く関数を導出し、導出された関数の逆関数により制御量が、代表火炎温度、未燃重量比、NOx濃度の順に所定の範囲に収まる無次元制御入力を導出する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、NOxの排出量を含む制御対象を適切な範囲に収めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】微粉炭ボイラの構成を説明するための図である。
図2】バーナの構成を説明するための図である。
図3】微粉炭ボイラの制御の流れを説明するための図である。
図4】関数の導出態様を説明するための図である。
図5】ボイラ制御方法の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、本開示の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、限定されるものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、微粉炭ボイラ100の構成を説明するための図である。微粉炭ボイラ(ボイラ)100を構成する燃焼炉110の側面には、バーナ112が所定間隔をおいて複数設けられている。バーナ112は、燃料として微粉炭(粉砕された石炭)を噴出し、燃料を燃焼させる。オーバーエアポート114は、バーナ112の上方に設けられ、二次ガス(例えば空気)を供給して二段燃焼を実現する。
【0015】
また、燃焼炉110の内側には、伝熱管120が設けられる。伝熱管120の内部を流通する流体(例えば、水)は、燃焼および高温(例えば、1300℃~1400℃程度)の燃焼排ガスによって加熱される。また、燃焼によって生じた灰は底部110aに集約され、燃焼排ガスはガス排出路110bから排出される。
【0016】
図2は、バーナ112の構成を説明するための図である。バーナ112は、内筒112aと、その周囲に同心状に配設された外筒112bとで構成される。内筒112aは、実線の矢印で示すように、燃料と一次ガス(例えば空気)との混合ガスを噴出して火炎150を形成する。また、外筒112bは、破線の矢印で示すように、例えば、エアレジスタベーンを通じ、二次ガス(例えば空気)を旋回流として噴出する。こうして、一点鎖線の矢印で示すような混合ガスの内部循環流(炉内からバーナ112の中心軸に向かう循環流)が形成される。
【0017】
このように、微粉炭ボイラ100では、燃料を燃焼し、伝熱管120内部の流体を加熱する(図1参照)。また、微粉炭ボイラ100では、微粉炭の燃焼に伴い灰と燃焼排ガスが生じる。灰には未燃分(未燃の燃料)が含まれ、燃焼排ガスにはNOxが含まれる。したがって、微粉炭ボイラ100に設けられた制御部(コンピュータ)130は、火炎温度を適切な範囲に収めつつ、灰中の未燃分の重量比(未燃重量比)や燃焼排ガスのNOx濃度を低減して適切な範囲に収めるように微粉炭ボイラ100を制御する。
【0018】
制御部130は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成される。なお、制御部130は、無次元化部132、制御量取得部134、関数導出部136、関数除外部138、制御入力導出部140、制御実行部142としても機能する。かかる機能部については後程詳述する。
【0019】
ここでは、制御部130が、燃焼炉110への入力と、その制御入力に対する出力結果とによって燃焼炉110をモデル化する。以下では、燃焼炉110への入力を「制御入力」と呼び、その具体的な値として「制御入力値」と読み替えてもよい。また、出力結果を「制御量」と呼ぶ。なお、制御部130は、かかるモデル化に際し、制御入力と制御量との関係を単純化すべく、制御入力を無次元化する。以下では、無次元化した制御入力を「無次元制御入力」と呼び、その具体的な値として「無次元制御入力値」と読み替えてもよい。そして、制御部130は、モデルの逆関数により、制御量が適切な範囲に収まる制御入力を導出する。
【0020】
図3は、微粉炭ボイラ100の制御の流れを説明するための図である。ここで、制御入力としては、バーナ112の寸法、石炭の種類(炭種)、燃料投入量、バーナベーン(エアレジスタベーン)角度、一次ガス流量、二次ガス流量、燃焼炉110へ供給された総空気流量等、複数のパラメータが挙げられる。
【0021】
このような制御入力を、図3のように無次元化して前回値としての無次元制御入力を生成する。無次元制御入力としては、燃料比、燃焼負荷、スワール比、運動量比、燃焼炉総空気過剰率(燃焼炉総当量比の逆数)、石炭に対するバーナ112における空気過剰率(当量比の逆数)、揮発分に対するバーナ112における空気過剰率、石炭に対する一次ガスの空気過剰率、揮発分に対する一次ガスの空気過剰率等、複数のパラメータが挙げられる。ただし、説明の便宜上、ここでは、上記の9つの無次元制御入力のみを対象とし、それぞれ順にx(i=1,2,3…9)とする。このように制御入力を無次元化することで、後段のモデルを容易かつ画一的に生成することができる。
【0022】
ここで、燃料比xは、燃料中の揮発分と固定炭素の質量比で表される。燃焼負荷xは、実際の運転中における燃料投入量と設計定格燃料投入量の比で表される。スワール比xは、燃焼炉110における軸方向運動量流束(kg・m/s)と角運転量流束(kg・m/s)との比で表される。ここで、軸方向運動量流束(kg・m/s)は、質量流量(kg/s)×直進速度(m/s)×特性寸法(m)で表され、角運転量流束(kg・m/s)は、質量流量(kg/s)×直進速度(m/s)×旋回半径(m)で表される。運動量比xは、一次ガスと二次ガスの運動量の比で表される。ここで、運動量(kg・m/s)は、質量流量(kg/s)×速度(m/s)で表される。
【0023】
また、燃焼炉総空気過剰率xは燃焼炉110全体における実際の投入空気量と燃料(投入石炭)を完全燃焼させるために必要な空気量の比で表される。石炭に対するバーナ112における空気過剰率xは、燃焼炉110内の任意のバーナ112における実際の投入空気量と燃料を完全燃焼させるために必要な空気量の比で表される。揮発分に対するバーナ112における空気過剰率xは、燃焼炉110内の任意のバーナ112における実際の投入空気量と揮発分(燃料の一部)を完全燃焼させるために必要な空気量の比で表される。石炭に対する一次ガスの空気過剰率xは、バーナ112に実際に投入された一次ガス流量と燃料(投入石炭)を完全燃焼させるために必要な空気量の比で表される。揮発分に対する一次ガスの空気過剰率xは、バーナ112に実際に投入された一次ガス流量と揮発分(燃料の一部)を完全燃焼させるために必要な空気量の比で表される。
【0024】
このような無次元制御入力x~xに対し、制御量は、代表火炎温度、未燃重量比、NOx濃度等、複数のパラメータが挙げられる。ただし、説明の便宜上、ここでは、上記の3つの制御量のみを対象とし、それぞれ順にy(j=1,2,3)とする。
【0025】
ここで、代表火炎温度yは、燃焼炉110内の任意の位置の火炎温度で表される。なお、ここでは、図2におけるバーナ112の計測位置Aにおいて測定される温度を代表火炎温度とする。未燃重量比yは、底部110aで集約された燃焼後の灰中の未燃分の重量比で表される。NOx濃度yは、ガス排出路110bから排出された燃焼排ガスにおけるNOxの濃度で表される。
【0026】
このように無次元制御入力x~xおよび制御量y~yを取得すると、図3のように、無次元制御入力x~xおよび制御量y~yを用いて制御対象をモデル化する。モデル化は以下のように実行される。すなわち、無次元制御入力x~xそれぞれに対する制御量y~yそれぞれを導く関数fijを導出する。ここで、無次元制御入力x、制御量y、関数fijの関係は、y=fij(x)である。したがって、関数fijの数は、無次元制御入力x~xと制御量y~yと組み合わせの数分、すなわち、9×3=27通りになる。ここで、関数fijの添字ijは、無次元制御入力xの添字iと制御量yの添字jを示す。したがって、例えば、無次元制御入力xを引数とする制御量yを導く関数はf11で表される(y=f11(x))。
【0027】
図4は、関数fijの導出態様を説明するための図である。ここでは、代表例として、無次元制御入力xを引数とする制御量yを導く関数f11を導出する。まず、無次元制御入力xと、無次元制御入力xに対する結果である制御量yとを所定の周期で取得し、その都度関連付けておく。したがって、無次元制御入力xと制御量yとを関連付けた組み合わせが、例えば、(x(1)、y(1))、(x(2)、y(3))、…、(x(n)、y(n))といったように、取得した数(例えばn)分だけ蓄積されることとなる。
【0028】
次に、その蓄積された組み合わせ全てを、図4(a)のようなx-y平面にプロットした場合の近似曲線を求める。ここでは、例えば、近似曲線として、複数次(例えば6次)関数(y=Ax+Bx+Cx+Dx+Ex+Fx+G)、指数関数(y=Aexp(Bx))、対数関数(Y=Aln(X)+B)を当て嵌める。図4(b)、図4(c)、図4(d)は、それぞれ、6次関数、指数関数、対数関数による近似曲線を当て嵌めたものである。そして、組み合わせ全てと各関数との差分の二乗和が最小となる関数を、無次元制御入力xを引数とする制御量yを導く関数f11とする。ここでは、図4(b)の6次関数について、差分の二乗和が最小となったので、図4(b)の6次関数を関数f11として採用する。
【0029】
また、蓄積される組み合わせ数nの上限は例えば500,000に設定される。したがって、組み合わせ数が500,000に到達すると、新たな組み合わせが蓄積される度に、最も古い組み合わせが削除される。そして、そのように更新された500,000の組み合わせ全てに対し、上記のように近似曲線を導出する。なお、ここでは上限を500,000としたが、微粉炭ボイラ100の構造、無次元制御入力xおよび制御量yの取得周期、設計思想等に応じて任意に決定できることは言うまでもない。
【0030】
このように、多くの組み合わせを蓄積することで、無次元制御入力xを引数とする制御量yを導く関数fijを高精度に導出することができる。こうして、NOxの排出量を含む制御対象を適切な範囲に収めることが可能となる。また、無次元制御入力xとして適切な値を導出することで、適切な無次元制御入力x近傍の組み合わせを多く蓄積することができ、より高精度に制御することができる。
【0031】
そして、図4を用いて説明した近似曲線の導出処理を、無次元制御入力x~xと制御量y~yの組み合わせ分である27回繰り返す。こうして、モデルとしての関数fij(i=1,2,3…9、j=1,2,3)が生成される。
【0032】
ただし、関数fijの中には、無次元制御入力xと制御量yとの相関性が高い関数と、相関性が低い関数がある。相関性が高い関数は、無次元制御入力xが有効に制御量yに寄与するが、相関性が低い関数は、無次元制御入力xの制御量yへの寄与率が低い。このように制御量yへの寄与率が低い関数は、当該微粉炭ボイラ100の制御に貢献しないのみならず、不要なノイズの原因にもなり得る。そこで、関数fijの中でも、無次元制御入力xと制御量yとの相関性が低い関数fijは、当該微粉炭ボイラ100の制御から除外する。
【0033】
具体的に、無次元制御入力xと制御量yとの相関係数R(i,j)は以下の数式で示される。
【数1】
ただし、/xは無次元制御入力xの平均値、/yは制御量yの平均値を示す(「/」は数1中のオーバーラインを示す)。
【0034】
そして、相関係数R(i,j)が所定の相関閾値(例えば0.5)未満となる関数fijを除外し、相関閾値以上の関数fijのみを適用する。かかる構成により、不要なノイズを排除して精度を高めるとともに、処理負荷を軽減することが可能となる。
【0035】
なお、ここでは、全ての組み合わせ(例えば27通り)の関数fijを導出した上で、その内、相関係数R(i,j)が低い関数fijを除外しているが、相関係数R(i,j)を先に求め、相関係数R(i,j)が低い組み合わせについては最初から関数fijを導出しないとしてもよい。こうすることで関数fijを導出する処理負荷を軽減することができる。
【0036】
以上のようにモデルとしての関数fijが導出されると、その関数fijの逆関数により、制御量yが適切な所定の範囲に収まる無次元制御入力xが導出される。例えば、制御量yの適切な所定の範囲を、代表火炎温度yについては1000~1500℃、未燃重量比yについては0~4.0wt%、NOx濃度yについては0~150ppmと定めたとする。
【0037】
このとき、制御量yの3つのパラメータは、制御上、代表火炎温度>未燃重量比>NOx濃度のような優先順位で制御される。したがって、代表火炎温度、未燃重量比、NOx濃度の順に、逆関数による無次元制御入力xを導出する。具体的に、まず、代表火炎温度yが1000℃(保炎下限)~1500℃(耐火上限)となるように無次元制御入力xの範囲が決定される。次に、その範囲内で、未燃重量比yが0~4.0wt%となるように無次元制御入力xの範囲が決定され、その範囲内で、NOx濃度yが0~150ppmとなるように無次元制御入力xの範囲が決定される。
【0038】
なお、代表火炎温度yが1000~1500℃となるような無次元制御入力xの範囲内に、未燃重量比yが0~4.0wt%となる無次元制御入力xの範囲が存在しない場合、未燃重量比yの上限を適宜高くして範囲を決定してもよい。同様に、未燃重量比yが0~4.0wt%となるような無次元制御入力xの範囲内に、NOx濃度yが0~150ppmとなる無次元制御入力xの範囲が存在しない場合、NOx濃度yの上限を適宜高くして範囲を決定してもよい。
【0039】
そして、決定された無次元制御入力xの範囲のうち、それぞれ1の値が決定される。例えば、決定された無次元制御入力xの範囲の中央値が選択される。こうして、決定された無次元制御入力xに基づいて制御入力を導出し、微粉炭ボイラ100が制御されることとなる。
【0040】
図5は、微粉炭ボイラ100の制御方法(ボイラ制御方法)の流れを示したフローチャートである。ここでは、例えば、1時間毎にモデルを更新し、制御部130の各機能部(無次元化部132、制御量取得部134、関数導出部136、関数除外部138、制御入力導出部140、制御実行部142)が、更新したモデルに基づいて無次元制御入力xを決定する。
【0041】
まず、無次元化部132は、所定の取得周期(例えば、1時間)に到達したか否か判定する(S1)。そして、無次元化部132は、取得周期に到達するまで(S1におけるNO)、当該周期判定処理S1を繰り返す。
【0042】
取得周期に到達すると(S1におけるYES)、無次元化部132は、前回の制御入力をRAMから読み出し(S2)、それを無次元化して無次元制御入力x(i=1,2,3…9)を導出する(S3)。
【0043】
続いて、制御量取得部134は、その制御入力に対する制御量y(j=1,2,3)を取得する(S4)。そして、関数導出部136は、新たな無次元制御入力xおよび制御量yの組み合わせを蓄積し、蓄積された組み合わせ全てを用い、近似曲線を通じて関数fijを導出する(S5)。次に、関数除外部138は、無次元制御入力xと制御量yとの相関係数R(i,j)を導出し、相関係数R(i,j)が相関閾値未満である関数fijを当該微粉炭ボイラ100の制御から除外する(S6)。
【0044】
続いて、制御入力導出部140は、除外されていない関数fijの逆関数fij -1により、代表火炎温度yが1000~1500℃となるように無次元制御入力xの範囲を決定する(S7)。そして、制御入力導出部140は、その決定された範囲内で、未燃重量比yが0~4.0wt%となるように無次元制御入力xの範囲を決定する(S8)。次に、制御入力導出部140は、その決定された範囲内で、NOx濃度yが0~150ppmとなるように無次元制御入力xの範囲を決定する(S9)。
【0045】
続いて、制御実行部142は、決定された無次元制御入力xの範囲の中央値を無次元制御入力xとして決定し(S10)、決定された無次元制御入力xに基づいて制御入力を導出し、その制御入力によって実際に微粉炭ボイラ100を制御する(S11)。
【0046】
ここで、制御入力は次回のボイラ制御方法のため、RAMに保持される。なお、制御入力の代わりに無次元制御入力xを直接RAMに保持させてもよい。こうすることで、無次元制御入力導出処理S3を省略することができ、処理負荷の軽減を図ることができる。
【0047】
以上、説明したように、微粉炭ボイラ100やボイラ制御方法によってNOxの排出量を含む制御対象を適切な範囲に収めることが可能となる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0049】
例えば、上記実施形態においては、その制御対象として微粉炭ボイラ100を挙げて説明したが、燃焼炉110を有しさえすれば、様々なボイラに適用することができる。また、ここでは、燃料として微粉炭を挙げて説明したが、燃焼を実現できれば、固体燃料、液体燃料、気体燃料を問わず、様々な燃料を適用することができる。
【0050】
また、上記実施形態においては、無次元制御入力として、燃料比、燃焼負荷、スワール比、運動量比、燃焼炉総空気過剰率、石炭に対するバーナ112における空気過剰率、揮発分に対するバーナ112における空気過剰率、石炭に対する一次ガスの空気過剰率、揮発分に対する一次ガスの空気過剰率等を挙げて説明した。また、制御量として、代表火炎温度、未燃重量比、NOx濃度等を挙げて説明した。しかし、かかるパラメータに限らず、無次元制御入力や制御量として様々なパラメータを適用することができる。
【0051】
また、コンピュータを、上記ボイラ制御方法を遂行する制御部として機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示は、ボイラ、および、ボイラ制御方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 微粉炭ボイラ(ボイラ)
110 燃焼炉
112 バーナ
132 無次元化部
134 制御量取得部
136 関数導出部
138 関数除外部
140 制御入力導出部
図1
図2
図3
図4
図5