(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】ゴムシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 11/12 20060101AFI20220308BHJP
B29B 13/00 20060101ALI20220308BHJP
B29C 31/00 20060101ALI20220308BHJP
B29C 43/24 20060101ALI20220308BHJP
B05D 1/18 20060101ALI20220308BHJP
B29D 30/00 20060101ALN20220308BHJP
【FI】
B29B11/12
B29B13/00
B29C31/00
B29C43/24
B05D1/18
B29D30/00
(21)【出願番号】P 2017239719
(22)【出願日】2017-12-14
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 智浩
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108616(JP,A)
【文献】特開2016-030241(JP,A)
【文献】特開2001-191014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00-11/14
B29B 13/00-15/06
B29C 31/00-31/10
B29C 37/00-37/04
B29C 71/00-71/02
B05D 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のゴムシートの製造方法であって、
ゴムを帯状のゴムシートに圧延成形する圧延工程と、
上記圧延工程で圧延成形され送り出される上記ゴムシートの表面に凸部を形成する凸部形成工程と、
上記凸部が形成された上記ゴムシートに防着剤を塗布する防着剤塗布工程と
を含むゴムシートの製造方法。
【請求項2】
上記凸部形成工程において、押さえロールが上記ゴムシートの表面に押し付けられ、上記押さえロールの外周面に形成された凹部が上記凸部を形成する請求項1に記載のゴムシートの製造方法。
【請求項3】
上記凸部形成工程において、上記凹部が溝であり、上記溝が上記ゴムシートの表面に上記凸部を形成する請求項2に記載のゴムシートの製造方法。
【請求項4】
上記溝が軸方向に傾斜して延びている請求項3に記載のゴムシートの製造方法。
【請求項5】
上記凹部の深さが5mm以上10mm以下である請求項2から4のいずれかに記載のゴムシートの製造方法。
【請求項6】
上記外周面に複数の凹部が形成されており、隣り合う凹部の間隔が10cm以上20cm以下である請求項2から5のいずれかに記載のゴムシートの製造方法。
【請求項7】
上記防着剤として液体防着剤が使用されており、
上記防着剤塗布工程において、上記ゴムシートの上記凸部が形成された表面が下方に向けられた姿勢で、上記ゴムシートが上記防着剤が貯められた防着剤槽に浸漬されている請求項1から6のいずれかに記載のゴムシートの製造方法。
【請求項8】
ゴムシートを製造するゴムシート製造工程と、
上記ゴムシートを用いてローカバーを成形する予備成形工程と、
上記ローカバーを加硫成形してタイヤが得られる加硫工程とを備えており、
上記ゴムシート製造工程が、
ゴムを帯状のゴムシートに圧延成形する圧延工程と、
上記圧延工程で圧延成形され送り出される上記ゴムシートの表面に凸部を形成する凸部形成工程と、
上記凸部が形成された上記ゴムシートに防着剤を塗布する防着剤塗布工程と
を含む、タイヤの製造方法。
【請求項9】
ゴムを帯状のゴムシートに圧延成形する機能を備える一対の圧延ロールと、
上記一対の圧延ロールで圧延成形され送り出される上記ゴムシートの表面に凸部を形成する機能を備える押さえロールと、
上記凸部が形成された上記ゴムシートに防着剤を塗布する防着剤塗布装置と
を備えており、
上記押さえロールの外周面に上記凸部を形成する凹部が形成されているゴムシートの製造装置。
【請求項10】
上記外周面に形成された凹部の深さが5mm以上10mm以下である請求項9に記載のゴムシートの製造装置。
【請求項11】
上記外周面に複数の凹部が形成されており、隣り合う凹部の間隔が10cm以上20cm以下である請求項9又は10に記載のゴムシートの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状のゴムシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造方法において、ゴムシートが用いられる。このゴムシートは、長尺の帯状の形状を備えている。このゴムシートは、パレットに積層されたり、ドラムの外周面に巻回積層されたりして、積層状態にされる。このゴムシートは、この積層状態で下工程に送られる。この積層状態では、互いに接触する部分同士が密着してしまうことがある。この密着は、下工程の生産性を損なう。
【0003】
特開2016-30241公報には、ゴムシートに防着剤を塗布する方法が開示されている。この方法では、ゴムシートにガイドローラで、防着剤が塗布されている。これにより、ゴムシートの密着が抑制されている。特開2012-219105公報では、防着剤を塗布する他の方法が開示されている。この方法では、ゴムシートを防着剤槽に浸漬している。更に、ゴムシートに防着剤を噴霧している。これにより、ゴムシートの密着が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-30241公報
【文献】特開2012-219105公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このゴムシートは、防着剤を塗布された後に、搬送されて、パレットやドラムに積層される。この搬送において、ゴムシートは、コンベアやガイドローラに接触する。この接触により、ゴムシートに塗布された防着剤が、コンベアやガイドローラに付着する。この付着によって、ゴムシートに塗布された防着剤は減少する。この防着剤の減少によって、積層状態にされたときに、ゴムシートに密着が発生することがある。この防着剤の減少を補うために、防着剤の塗布量を増やしたり、防着剤を更に追加塗布したりすることが行われる。
【0006】
しかしながら、防着剤の塗布量を増やしたり、防着剤を追加塗布したりすることは、防着剤の使用量を増加させる。この防着剤の使用量の増加は、製造装置の汚れを増大させる。また、この防着剤の使用量の過度の増加は、タイヤの品質にも影響しうる。
【0007】
本発明の目的は、防着剤の塗布量を抑制しつつ、ゴムシートの密着を抑制しうるゴムシートの製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る帯状のゴムシートの製造方法は、
ゴムを帯状のゴムシートに圧延成形する圧延工程と、
上記ゴムシートの表面に凸部を形成する凸部形成工程と、
上記ゴムシートに防着剤を塗布する防着剤塗布工程と
を含む。
【0009】
好ましくは、上記凸部形成工程において、押さえロールが上記ゴムシートの表面に押し付けられ、上記押さえロールの外周面に形成された凹部が上記凸部を形成する。
【0010】
好ましくは、上記凸部形成工程において、上記凹部が溝であり、上記溝が上記ゴムシートの表面に上記凸部を形成する。
【0011】
好ましくは、上記溝は軸方向に傾斜して延びている。
【0012】
好ましくは、上記凹部の深さが5mm以上10mm以下である。
【0013】
好ましくは、上記外周面に複数の凹部が形成されている。隣り合う凹部の間隔は、10cm以上20cm以下である。
【0014】
好ましくは、このゴムシートの製造方法では、上記防着剤として液体防着剤が使用されている。上記防着剤塗布工程において、上記ゴムシートの上記凸部が形成された表面が下方に向けられた姿勢で、上記ゴムシートが上記防着剤が貯められた防着剤槽に浸漬される。
【0015】
本発明に係るタイヤの製造方法は、
ゴムシートを製造するゴムシート製造工程と、
上記ゴムシートを用いてローカバーを成形する予備成形工程と、
上記ローカバーを加硫成形してタイヤが得られる加硫工程とを備えている。
上記ゴムシート製造工程は、
ゴムを帯状のゴムシートに圧延成形する圧延工程と、
上記ゴムシートの表面に凸部を形成する凸部形成工程と、
上記ゴムシートに防着剤を塗布する防着剤塗布工程と
を含む。
【0016】
本発明に係るゴムシート製造装置は、
ゴムを帯状のゴムシートに圧延成形する機能を備える一対の圧延ロールと、
上記ゴムシートの表面に凸部を形成する機能を備える押さえロールと、
上記ゴムシートに防着剤を塗布する防着剤塗布装置と
を備えている。
上記押さえロールの外周面に上記凸部を形成する凹部が形成されている。
【0017】
好ましくは、上記外周面に形成された凹部の深さは5mm以上10mm以下である。
【0018】
好ましくは、上記外周面に複数の凹部が形成されており、隣り合う凹部の間隔が10cm以上20cm以下である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るゴムシートの製造方法では、ゴムシートの表面に凸部が形成されている。この凸部により、防着剤の塗布量を抑制しつつ、ゴムシートの密着を抑制しうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴムシート製造装置が、ゴムシートと共に示された概念図である。
【
図2】
図2は、
図1の製造装置の押さえロールの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2の押さえロールの外周面の一部の展開図である。
【
図5】
図5は、
図1の製造装置で製造されたゴムシートの一部が示された斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の他の実施形態に係るゴムシートの製造設備の押さえロールの外周面の一部の展開図である。
【
図7】
図7は、
図6の線分VII-VIIに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0022】
図1には、ゴムシート1と、ゴムシート製造装置2とが示されている。この製造装置2は、押出機4、一対の圧延ロール6、押さえロール8、コンベア10、コンベア14、防着剤塗布装置としての防着剤槽16、コンベア18、乾燥装置20、ガイドローラ22及びパレット24を備えている。
【0023】
この製造装置2では、ゴムシート1の製造工程の上流から下流に向かって、押出機4、一対の圧延ロール6、押さえロール8、コンベア10、コンベア14、防着剤槽16、コンベア18、乾燥装置20、ガイドローラ22、パレット24の順に配置されている。
【0024】
押出機4は、ホッパー26及びスクリュー28を備えている。ホッパー26は、ゴム材料の投入口としての機能を備える。スクリュー28は、ゴム材料を練りながら吐出口から押し出す機能を備えている。
【0025】
一対の圧延ロール6は、押出機4の下流に位置している。一対の圧延ロール6は、ゴム材料を圧延成形する機能を備えている。この製造装置2では、一対の圧延ロール6は、押出機4から押し出されたゴム材料を帯状のゴムシート1に圧延成形する機能を備えている。
【0026】
押さえロール8は、一対の圧延ロール6の下流に位置している。押さえロール8は、ゴムシート1に複数の凸部を形成する機能を備えている。この製造装置2では、押さえロール8は、一方の圧延ロール6と間でゴムシート1を挟み込む。押さえロール8がゴムシート1に押し付けられて、ゴムシート1に凸部が形成される。
【0027】
コンベア10及びコンベア14は、押さえロール8と防着剤槽16との間に位置している。コンベア10及びコンベア14は、ゴムシート1を押さえロール8から防着剤槽16に搬送する機能を備えている。
【0028】
防着剤槽16は、押さえロール8の下流に位置している。防着剤槽16は、ゴムシート1に防着剤を塗布する機能を備えている。この製造装置2では、防着剤槽16に、液体防着剤が貯められている。この防着剤には、液体防着剤に粉体防着剤が混合されていてもよい。
【0029】
コンベア18は、防着剤槽16と乾燥装置20との間に位置している。コンベア18は、ゴムシート1を防着剤槽16から乾燥装置20に搬送する機能を備えている。
【0030】
乾燥装置20は、防着剤槽16の下流に位置している。乾燥装置20は、ゴムシート1を乾燥させる機能を備えている。この乾燥装置20は、更に、ゴムシート1を冷却する機能を備えている。
【0031】
ガイドローラ22は、乾燥装置20とパレット24との間に位置している。ガイドローラ22は、ゴムシート1を乾燥装置20からパレット24に案内し搬送する機能を備えている。この製造装置2では、乾燥装置20とパレット24との間の搬送装置として、ガイドローラ22を用いたが、これに限られない。この搬送装置として、コンベア10等と同様にコンベアが用いられてもよい。また、コンベア10、14及び18に代えて、搬送装置として、ガイドローラ22と同様に、ガイドローラが用いられてもよい。
【0032】
パレット24は、乾燥装置20の下流に位置している。パレット24は、ゴムシート1が積層される載置面30を備えている。このパレット24は、ゴムシート1を保管する機能を備えている。
図1に示される様に、ゴムシート1は、載置面30に、繰り返し折り返されて、積層状態にされる。この保管には、このパレット24に代えて、ドラムが用いられてもよい。ドラムの外周面にゴムシート1が巻回されて積層状態にされてもよい。
【0033】
図2に示される様に、押さえロール8は、略円柱状の形状を備えている。一点鎖線Lは、押さえロール8の軸線を表している。押さえロール8は、この軸線Lを回転軸にして、回転可能に支持される。押さえロール8の外周面32に、凹部としての溝34が複数形成されている。この押さえロール8では、6本の溝34が形成されている。それぞれの溝34は、外周面32を周方向に延在する。この溝34は、外周面32を一周している。
【0034】
図3から明らかなように、周方向に垂直な断面において、溝34は、円弧状の輪郭を備えている。この輪郭は曲率半径Rで形成されている。
【0035】
図3の点Pwは、溝34の輪郭と外周面32との交点を表している。点Pdは、溝34の輪郭上に位置して、押さえロール8の半径方向において、外周面32から最も離れた点を表している。両矢印Sは、隣り合う溝34の間隔を表している。この間隔Sは、隣り合う2つの溝34において、互いに近い点Pd間の距離として測定される。この間隔Sは、隣り合う溝34間の最小間隔である。両矢印Wは、溝34の幅を表している。この幅Wは、外周面32に沿って測定される、溝34の最小幅である。この幅Wは、一つの溝34において、一方の点Pwから他方の点Pwまでの距離として測定される。この押さえロール8では、間隔S及び幅Wは、軸方向の直線距離として測定される。両矢印Dは、溝34の深さを表している。この深さDは、外周面32から点Pdまでの半径方向直線距離として測定される。
【0036】
図4には、押さえロール8の外周面32の一部の展開図が示されている。
図4の上下方向が周方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面に垂直な方向が半径方向である。それぞれの溝34は、周方向に延びている。これらの溝34は、軸方向に一定の間隔Sで形成されている。
【0037】
図5には、この製造装置2で製造されるゴムシート1の一部が示されている。
図5の矢印xはゴムシート1の幅方向を表し、矢印yは長手方向を表し、矢印zは厚さ方向を表している。このゴムシート1は、厚さ方向に直交する表面36及び裏面38を備えている。ゴムシート1は、更に、表面36から突出する凸部としての、筋40を備えている。この表面36には、筋40が6本形成されている。この筋40は、ゴムシート1の長手方向に延びている。符号Ptは、筋40の頂点を表している。この頂点Ptは、厚さ方向において筋40の表面上の点であって表面36から最も離れた点を表している。
【0038】
この製造装置2を用いて、タイヤの製造方法が説明される。このタイヤの製造方法は、ゴムシート製造工程、予備成形工程及び加硫工程を備えている。
【0039】
このゴムシート製造工程は、混練工程、押出工程、圧延工程、凸部形成工程、防着剤塗布工程、乾燥工程及び積層工程を備えている。
【0040】
混練工程では、図示されないバンバリーミキサに、原料ゴム、配合剤等が投入される。このバンバリーミキサ内で、原料ゴム、配合剤等が混練されて、所定の配合のゴム材料が得られる。このゴム材料は、押出工程に送られる。
【0041】
押出工程では、押出機4にゴム材料が投入される。ゴム材料は、ホッパー26に投入される。このゴム材料は、スクリュー28によって、練られながら突出口から押し出される。押出機4から押し出されたゴム材料は、圧延工程に送られる。
【0042】
圧延工程では、ゴム材料が一対の圧延ロール6によって圧延成形される。この圧延工程では、ゴム材料からゴムシート1が形成される。このゴムシート1は、長尺の帯状の形状を備えている。このゴムシート1は、凸部形成工程に送られる。
【0043】
凸部形成工程では、ゴムシート1は、一方の圧延ロール6と押さえロール8の間に通される。この押さえロール8の外周面32が、ゴムシート1の表面36に押し付けられる。ゴムシート1の表面36に、溝34によって、凸部としての筋40が形成される。この筋40は、ゴムシート1の長手方向に延びている。このゴムシート1は、コンベア10及びコンベア14に搬送されて防着剤塗布工程に送られる。
【0044】
防着剤塗布工程では、ゴムシート1が、防着剤槽16に通される。ゴムシート1は防着剤を潜らされる。これにより、ゴムシート1の表面36、裏面38及び筋40に防着剤が塗布される。この防着剤の塗布方法は、この様な浸漬塗布に限られない。例えば、ゴムシート1の表面36、裏面38及び筋40に防着剤が噴霧されてもよいし、ローラや刷毛等で塗布されてもよい。
【0045】
このゴムシート1は、コンベア18に搬送されて、防着剤塗布工程から乾燥工程に送られる。このコンベア18では、ゴムシート1の表面36が下向きにされて搬送される。筋40がコンベア18に接触して搬送される。この搬送では、表面36はコンベア18に非接触の状態にされる。
【0046】
乾燥工程では、ゴムシート1は乾燥装置20に通される。ゴムシート1は、乾燥冷却される。このゴムシート1は、ガイドローラ22に案内されて、積層工程に送られる。
【0047】
積層工程では、ゴムシート1が、パレット24の載置面30に載置される。ゴムシート1は、この載置面30の上で、繰り返し折り返され、積層状態にされる。この積層状態では、ゴムシート1の表面36の一部に表面36の他の一部が対向し積層される。積層状態にされたゴムシート1は、パレット24と共に、予備成形工程に送られる。
【0048】
予備成形工程では、トレッド部材、サイドウォール部材、クリンチ部材、インナーライナー部材等、タイヤの各部を形成するゴム部材が準備される。例えば、前述のゴムシート1からトレッド部材が形成される。具体的には、ゴムシート1は、図示されない他の押出機によって、所定の断面形状の帯状体として押し出される。この帯状体が所定の長さに裁断される。この様にして、所定の断面形状と所定の長さとを備えるトレッド部材が得られる。ここでは、トレッド部材の形成を例示したが、サイドウォール部材、クリンチ部材等の他の部材も、トレッド部材と同様に成形されてもよい。この予備成形工程では、タイヤの各部を形成するゴム部材が組み合わされて、ローカバーが形成される。このローカバーは、加硫工程に送られる。
【0049】
加硫工程において、ローカバーが金型に投入される。ローカバーは、金型内で加圧及び加熱される。この加硫工程において、ローカバーが加硫成形されて、タイヤが得られる。
【0050】
このゴムシート製造工程では、ゴムシート1の表面36に筋40が形成されている。防着剤塗布工程と乾燥工程との間の搬送において、このゴムシート1では、コンベア18に筋40の頂点Ptで主に接触する。このゴムシート1は、コンベア18との接触面積が小さい。これにより、コンベア18との接触により、ゴムシート1から除去される防着剤の量が低減される。
【0051】
積層工程において、ゴムシート1の表面36の一部と表面36の他の一部とが対向して積層される。この積層状態において、筋40の頂点Ptが主に接触する。この積層された状態で対向する表面36の間の接触面積が小さい。これにより、ゴムシート1の密着が抑制されている。
【0052】
前述の様に、この製造方法では、コンベア18との接触により除去される防着剤の量が低減される。また、表面36においてゴムシート1の密着が抑制されている。これにより、従来に比べて、ゴムシート1に塗布される防着剤の量が低減される。又、防着剤の濃度が低減されうる。これにより防着剤の使用量を低減しうる。また、防着剤による製造装置2の汚れを抑制しうる。更には、この防着剤の量や濃度の低減は、ゴムシート1の品質の向上に寄与する。
【0053】
この凸部形成工程では、押さえロール8が搬送されるゴムシート1に押し付けられて筋40が形成されている。この製造装置2では、圧延ロール6と押さえロール8とのでゴムシート1を挟み込むので、押さえロール8に別個に回転駆動装置を必要としない。この押さえロール8を用いることで、安価に且つ簡易に筋40を形成しうる。この押さえロール8は、既存の製造装置にも後から容易に取り付けられる。
【0054】
この凸部形成工程では、外周面32の溝34によって、ゴムシート1の筋40が形成されている。溝34は周方向に延在するので、溝34がゴムシート1の表面36に押し付けられるときに、エアーが逃げ易い。これにより、形状の整った筋40が形成される。エアーを逃げ易くする観点から、この溝34は、押さえロール8の軸線に対して傾斜して延びることが好ましい。更に、外周面32に溝34を容易に形成する観点から、この溝34は、押さえロール8の周方向に延びることが好ましい。
【0055】
また、溝34は、周方向に垂直な断面において、円弧状の輪郭を備えている。円弧状の輪郭の溝34は、円弧状の筋40を形成する。この筋40はゴムシート1が積層されたときの接触面積を小さくする。この観点から、周方向に垂直な断面において、溝34の輪郭は、滑らかな曲線で形成されることが好ましい。更に、溝34を容易に形成する観点から、溝34の輪郭は円弧状に形成されることが好ましい。
【0056】
深さDが深い溝34を備える押さえロール8は、ゴムシート1の筋40の高さを高くする。この溝34は、ゴムシート1の密着の発生を効果的に抑制しうる。この密着を抑制する観点から、この深さDは、好ましくは5mm以上であり、更に好ましくは6mm以上である。一方で、深さDが浅い溝34は、積層されたときに嵩張らない。この溝34は、積層状態における省スペース化に寄与する。この観点から、この深さDは、好ましくは10mm以下であり、更に好ましくは9mm以下である。
【0057】
間隔Sが小さい押さえロール8は、表面36の接触を効果的に抑制しうる。これにより、ゴムシート1の密着の発生を抑制しうる。この観点から、この間隔Sは、好ましくは20cm以下であり、更に好ましくは18cm以下である。一方で、この間隔Sが小さ過ぎる押さえロール8では、筋40とコンベア18との接触面積を増大させる。この接触面積の増大は、ゴムシート1の密着を招来する。この密着を抑制する観点から、この間隔Sは、好ましくは10cm以上であり、更に好ましくは12cm以上である。
【0058】
幅Wが大きい溝34を備える押さえロール8は、ゴムシート1の筋40の幅を大きくする。この溝34は、ゴムシート1の密着の発生を効果的に抑制しうる。この密着を抑制する観点から、この幅Wは、好ましくは10mm以上であり、更に好ましくは12mm以上である。一方で、幅Wが大過ぎる溝34は、筋40とコンベア18との接触面積を増大させる。この接触面積の増大は、ゴムシート1の密着を招来する。この密着を抑制する観点から、この幅Wは、好ましくは20mm以下であり、更に好ましくは18mm以下である。
【0059】
また、周方向に垂直な断面において円弧状の輪郭を備える溝34は、筋40とコンベア18との接触面積を小さくする観点からも、好ましい。この接触面積を小さくする観点から、溝34の幅は、点Pdから点Pwに向かって漸増することが好ましい。また、コンベア18等と筋40との接触による筋40の変形を抑制する観点から、溝34の点Pdは滑らかな曲面上の点であることが好ましい。
【0060】
この防着剤塗布工程において、ゴムシート1の防着剤として、液体防着剤、粉体防着剤、又はこの両者を混合したものが用いられうる。液体防着剤は、ゴムシート1の表面36で塊として残り難い。これにより、液体防着剤は、ゴムシート1から得られるゴム部材に、異物として混入することが抑制される。ゴムシート1の品質の向上の観点から、液体防着剤の使用が好ましい。
【0061】
この防着剤塗布工程では、筋40が形成された表面36が下方に向けられた姿勢で、ゴムシート1は防着剤槽16に浸漬されている。これにより、筋40に、液体防着剤が塗布され易い。さらに、防着剤槽16から乾燥装置20に搬送される間も、表面36が下方に向けられた姿勢でゴムシート1が搬送されている。このとき、表面36に付着した防着剤の一部は、表面36の下方に位置する筋40に移動する。これにより、比較的少ない量で、防着剤が筋40に十分に塗布されうる。これにより、防着剤の塗布量を最小限にして、搬送においても塗布ムラの発生が抑制されうる。
【0062】
この製造装置2では、圧延ロール6を用いて、押さえロール8で、辻40が形成されたが、これに限られない。押さえロール8と他のガイドローラとの間で、ゴムシート1を挟み込んでもよいし、押さえロール8と支持台との間で、ゴムシート1を挟み込んでもよい。
【0063】
この製造装置2では、裏面38はコンベア18に接触しないので、裏面38の防着剤は残存し易い。従って、この搬送装置2では、表面36のみに筋40が形成されている。しかしながら、裏面38にも凸部としての筋40が形成されてもよい。裏面38に筋40を形成することで、積層状態において、接触面積を小さくして、密着の抑制に寄与しうる。また、裏面38が他のコンベアやガイドローラと接触する場合にも、コンベアやガイドローラに付着する防着剤の量を低減しうる。
【0064】
図6には、本発明に係る他のゴムシート製造装置52の押さえロール54の一部が示されている。この製造装置52は、製造装置2の押さえロール8に代えて、押さえロール54を用いた他は、製造装置2と同様の構成を備えている。ここでは、この製造装置52について、製造装置2と異なる構成が説明される。この製造装置52について、製造装置2と同様の構成の説明は省略され、同様の構成については同じ符号を用いて説明がされる。
【0065】
図6には、押さえロール54の外周面56の一部の展開図が示されている。この外周面56には、凹部として凹み58が複数形成されている。この凹み58は、外周面56の全体に点在している。
図6の両矢印Sは、隣り合う凹み58の間隔を表している。この間隔Sは、隣り合う凹み58間の最小間隔として測定される。
【0066】
図7には、
図6の線分VII-VIIに沿った断面図が示されている。
図7の両矢印Wは、凹み58の幅を表している。また、両矢印Dは凹み58の深さを表している。この凹み58は、半球面状に凹んでいる。両矢印Rは、この凹み58の曲率半径を表している。
【0067】
本発明では、凹部はゴムシート1に凸部を形成できればよく、凹部の形状は、製造装置2の様な溝34に限られない。凹部の形状は、この凹み58の様な半球面状に凹んでいてもよい。更には、この凹部には、直方体や立方体状に凹んでいる形状が含まれる。
【0068】
一方で、前述の溝34や凹み58で形成される凸部は、コンベア18との接触面積を小さくできる。本発明では、この接触面積を小さくする観点から、凸部の幅は、頂点Ptから表面36に向かって漸増することが好ましい。また、頂点Ptは、接触による変形を抑制する観点から滑らかな曲面上の点であるが好ましい。従って、凸部を形成する凹部の幅Wは、点Pdから点Pwに向かって漸増することが好ましい。また、点Pdは、滑らかな曲面上の点であるが好ましい。
【0069】
また、エアーの排出性の観点から、この凹部は、隅が形成さらない滑らかな曲線で形成されることが好ましい。また、この凹部は、軸方向に対して傾斜する方向を長手方向として延びる形状で形成されることが好ましく、押さえロール8の様に周方向を長手方向にして延びる形状で形成されることが更に好ましい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0071】
[実施例1]
図1のゴムシート製造装置を用いて、本発明に係る製造方法で、ゴムシートが得られた。使用された防着剤の量と濃度とは、後述する比較例1の量及び濃度を100とする指数で、表1に表されている。表1の防着剤追加塗布の欄の「無」は、乾燥工程において追加で防着剤の塗布がされていないことを表している。
【0072】
[比較例1]
従来の製造方法でゴムシートが製造された。この方法では、ゴムシートに凸部が形成されなかった。表1の防着剤追加塗布の欄に「有」と記載されている様に、乾燥工程において追加で防着剤の塗布がされた。その他は、実施例1と同様にして、ゴムシートが得られた。
【0073】
[比較例2]
乾燥工程において追加で防着剤の塗布がされなかった他は、比較例1と同様にして、ゴムシートが得られた。
【0074】
[評価]
それぞれのゴムシートについて、密着の発生の有無と、防着剤残りの発生の有無とが、評価された。その結果が表1に示されている。また、1から3の3段階で、それぞれのゴムシートの総合評価を行った。この総合評価では、比較例1を2として、他の総合総評がされた。この総合評価は、数値が大きいほど優れており、好ましい。これらの評価結果が、下記の表1に示されている。
【0075】
【0076】
表1に示されるように、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明された方法は、タイヤの製造に用いられるゴムシートの製造方法に広く適用されうる。
【符号の説明】
【0078】
1・・・ゴムシート
2、52・・・製造装置
4・・・押出機
6・・・圧延ロール
8、54・・・押さえロール
10、14、18・・・コンベア
16・・・防着剤槽
20・・・乾燥装置
22・・・ガイドローラ
24・・・パレット
30・・・載置面
32、56・・・外周面
34・・・溝
36・・・表面
38・・・裏面
40・・・筋
58・・・凹み