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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】エンジンの燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20220308BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
F02M37/00 321B
F02B67/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018016968
(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2019132250
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】外園 和昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博
(72)【発明者】
【氏名】野崎 修
(72)【発明者】
【氏名】生嶋 裕輔
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205240(JP,A)
【文献】特開2016-094887(JP,A)
【文献】特開2012-087735(JP,A)
【文献】特開2005-090260(JP,A)
【文献】特開2012-153229(JP,A)
【文献】特開2001-097052(JP,A)
【文献】特開平07-101353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
F02B 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に配列された複数の気筒と、前記車両のフレームにエンジンを固定するマウント部材が連結された側面と、を有する縦置き型のエンジンへ燃料を供給する燃料供給装置であって、
前記燃料を前記エンジンの下部から前記エンジンの上部に位置する前記複数の気筒へ案内する案内管部を備え、
前記案内管部は少なくとも部分的に、前記マウント部材の後方に配置されているとともに前記マウント部材よりも高い剛性を有するエンジン補機の前端よりも後方の位置に配置されている
エンジンの燃料供給装置。
【請求項2】
前記案内管部は、第1管部材と、前記第1管部材に連結された第2管部材と、を含み、
前記マウント部材の後方に配置されているとともに前記マウント部材よりも高い剛性を有するエンジン補機の前端よりも後方の位置に、前記第1管部材及び前記第2管部材の連結部は配置されている
請求項1に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項3】
前記案内管部を通じて供給された前記燃料を前記気筒の燃料噴射弁へ送り出す燃料ポンプを更に備え、
前記燃料ポンプは、前記マウント部材の上端よりも上方の位置において前記エンジンの前記側面に固定されている
請求項1又は2に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項4】
前記案内管部を通じて供給された前記燃料を前記気筒の燃料噴射弁へ送り出す燃料ポンプを更に備え、
前記第1管部材は、前記エンジン補機の側方で鉛直方向に延設された金属管であり、
前記第2管部材は、前記金属管の上端部に連結された弾性管を含み、
前記弾性管は、前記エンジン補機よりも上方で前記金属管の前記上端部に連結されているとともに前記エンジン補機の前端よりも車両の前方側に位置し、前記燃料ポンプへの前記燃料の流路を形成している
請求項2に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項5】
前記案内管部は、前記エンジン補機と前記エンジンの前記側面との間に形成された空隙を通じて延設されている
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項6】
前記第1管部材は、前記第2管部材よりも高い剛性を有している
請求項2又は4に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項7】
前記案内管部は少なくとも部分的に、前記エンジンの後部に連結されたトランスミッションケースに固定された前記エンジン補機の前記前端よりも後方に配置されている
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエンジンの燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンへ燃料を供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンへ燃料を供給する燃料供給装置の破損は車両からの燃料漏れを引き起こすので、燃料供給装置が十分に保護されるように車両は設計される必要がある。特許文献1は、燃料供給装置の燃料ポンプを保護するために燃料ポンプの前方にスタータを配置することを提案する。特許文献1によれば、車両の前突時において、車両に衝突した障害物はスタータに衝突するので、スタータの後方の燃料ポンプに接触しにくくなる。したがって、燃料ポンプの破損のリスクが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-88270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、横置き型のエンジンを開示している。特許文献1に開示される燃料ポンプとスタータとの間の位置関係は、燃料ポンプの破損のリスクの防止に効果的である。しかしながら、縦置き型のエンジンに関しては、特許文献1の開示技術をそのまま適用することはできない。
【0005】
縦置き型のエンジンに関して、複数の気筒は車両の前後方向に配列されるので、エンジンの側面は車両の前後方向に広くなる。燃料ポンプがエンジンの下面に取り付けられた横置き型のエンジン(特許文献1を参照)とは異なり、縦置き型のエンジンの広い側面部分には、燃料ポンプに燃料を案内する管部といった燃料供給装置の構成部品が様々な設計条件を考慮して配置されることがある。
【0006】
燃料ポンプへ供給される燃料を貯留する燃料タンクが車両の後部に配置されているとき、燃料タンクから燃料ポンプへ燃料を案内する案内経路での圧力損失を低減するために、燃料ポンプをエンジンの後部に配置し案内経路を短くすることが考えられる。この場合、燃料ポンプへの燃料の流路は、エンジンの側面の後部に沿って配管された複数の管部材によって形成されることもある。
【0007】
これらの管部材と同様に、エンジンを車体のフレームに固定するためのマウント部材がエンジンの広い側面に連結されることがある。上述の如く、複数の管部材がエンジンの側面の後部に沿って配管されているならば、これらの管部材を避けるためにマウント部材はこれらの管部材の前方でエンジンの側面に取り付けられることになる。
【0008】
マウント部材は、エンジンの側面に連結された連結部位と車両のフレームに連結された連結部位とを有する。エンジンの側面との連結部位が車両の前突によって破損される一方で、車体のフレームとの連結部位が車両の前突下でも維持されることがある。この場合、マウント部材は車両のフレームの変形に応じて変位され得る。前突によって車両が受けたエネルギが吸収されるように車体のフレームは変形するので、フレームの大部分は後方に変位する。このとき、マウント部材は車両のフレームとともに後方に移動し、燃料ポンプへの燃料の流路を形成する管路に衝突することになる。
【0009】
管路は燃料供給装置の中で最も脆弱な部位のうちの1つである。マウント部材が管路に衝突すると、管路は破壊され、燃料が破損部位から漏出する虞がある。
【0010】
本発明は、燃料供給装置の管路を車両の前突から保護することができる燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面に係る燃料供給装置は、車両の前後方向に配列された複数の気筒と、前記車両のフレームにエンジンを固定するマウント部材が連結された側面と、を有する縦置き型のエンジンへ燃料を供給する。燃料供給装置は、前記燃料を前記エンジンの下部から前記エンジンの上部に位置する前記複数の気筒へ案内する案内管部を備える。前記案内管部は少なくとも部分的に、前記マウント部材の後方に配置されているとともに前記マウント部材よりも高い剛性を有するエンジン補機の前端よりも後方の位置に配置されている。
【0012】
上記の構成によれば、エンジン補機の前方に配置されたマウント部材が車両の前突によってエンジンに対して相対的に後方に変位すると、エンジン補機の前端がマウント部材に衝突する。エンジン補機はマウント部材よりも高い剛性を有するので、エンジン補機の前端の後方への変位は僅かである。したがって、エンジン補機は、マウント部材の後方への変位を効果的に食い止めることができる。燃料を縦置き型のエンジンへ案内する案内管部は少なくとも部分的にエンジン補機の前端よりも後方に配置されているので、第1管部材及び第2管部材の連結部は後方に変位したマウント部材と接触しない。すなわち、案内管部はエンジン補機によって、車両の前突に起因して後方に変位したマウント部材から効果的に保護されることができる。
【0013】
上記の構成に関して、前記案内管部は、第1管部材と、前記第1管部材に連結された第2管部材と、を含んでもよい。前記マウント部材の後方に配置されているとともに前記マウント部材よりも高い剛性を有するエンジン補機の前端よりも後方の位置に、前記第1管部材及び前記第2管部材の連結部は配置されていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、燃料を縦置き型のエンジンへ案内する案内管部の第1管部材及び第2管部材の連結部はエンジン補機の前端よりも後方に配置されているので、エンジン補機はマウント部材の後方への変位を食い止め、第1管部材及び第2管部材の連結部は後方に変位したマウント部材と接触しない。
【0015】
上記の構成に関して、燃料供給装置は前記案内管部を通じて供給された前記燃料を前記気筒の燃料噴射弁へ送り出す燃料ポンプを更に備えてもよい。前記燃料ポンプは、前記マウント部材の上端よりもエンジンの上方の位置において前記エンジンの前記側面に固定されていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、マウント部材が車両の前突によってエンジンに対して相対的に後方に変位しても、燃料ポンプは、マウント部材の上端よりも上方の位置においてエンジンの側面に固定されるため、マウント部材が燃料ポンプに衝突することから保護される。
【0017】
上記の構成に関して、燃料供給装置は、前記案内管部を通じて供給された前記燃料を前記気筒の燃料噴射弁へ送り出す燃料ポンプを更に備えていてもよい。前記第1管部材は、前記エンジン補機の側方で鉛直方向に延設された金属管であってもよい。前記第2管部材は、前記金属管の上端部に連結された弾性管を含んでもよい。前記弾性管は、前記エンジン補機よりも上方で前記金属管の前記上端部に連結されているとともに少なくとも部分的に前記エンジン補機の前端よりも車両の前方側に位置し、前記燃料ポンプへの前記燃料の流路を形成していてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、第1管部材として用いられる金属管は鉛直方向に延設されているので、車両の前後方向において広い空間を必要とすることなく配置される。したがって、金属管をエンジン補機の前端から前方にはみ出させることなくエンジン補機の側方に配置することが容易となる。エンジン補機は、上述の如く、マウント部材の後方への変位を食い止めるので、金属管はエンジン補機によって保護される。
【0019】
一方、第2管部材は少なくとも部分的にエンジン補機の前端よりも車両の前方側に位置しているので、第2管部材はエンジン補機による保護を第1管部材よりも受けにくくなる。すなわち、マウント部材との衝突のリスクは、第1管部材よりも第2管部材の方が高い。しかしながら、第2管部材は弾性管であるので容易に弾性変形し、マウント部材から過度に強い衝撃力を受けることを回避することができる。
【0020】
加えて、第2管部材が変形しやすい弾性管である一方で第1管部材は変形しにくい金属管であるので、作業者は、第1管部材の上端部の位置を固定的に保持し、第2管部材を第1管部材の上端部に容易に連結させることができる。第2管部材が第1管部材に連結される部位はエンジン補機の上方であるので、作業者はエンジン補機に邪魔されることなく第2管部材を第1管部材に連結することができる。
【0021】
上記の構成に関して、前記案内管部は、前記エンジン補機と前記エンジンの前記側面との間に形成された空隙を通じて延設されていてもよい。
【0022】
車両の衝突時においてエンジンルーム内の部品がエンジン補機の側方から案内管部に向けて移動することもある。上記の構成によれば、案内管部はエンジン補機とエンジンの側面との間に形成された空隙を通じて延設されているので、エンジン補機の側方から案内管部に向けて移動する部品はエンジン補機に衝突し案内管部に接触しない。したがって、案内管部はエンジン補機によって、エンジン補機の側方から案内管部に向けて移動する部品からも保護される。
【0023】
上記の構成に関して、前記第1管部材は、前記第2管部材よりも高い剛性を有していてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、第1管部材は、第2管部材よりも高い剛性を有しているので、作業者は、第1管部材の端部の位置を固定的に保持し、第2管部材を第1管部材の上端部に容易に連結させることができる。
【0025】
上記の構成に関して、前記第1管部材及び前記第2管部材の前記連結部は、前記エンジンの後部に連結されたトランスミッションケースに固定された前記エンジン補機の前記前端よりも後方に配置されていてもよい。
【0026】
トランスミッションケースは一般的に高い剛性を有する。上記の構成によれば、エンジン補機はエンジンの後部に連結されたトランスミッションケースに固定されているので、後方へ変位したマウント部材がエンジン補機に衝突しても、エンジン補機の後方への変位はほとんど生じない。したがって、エンジン補機はトランスミッションケースと協働してマウント部材の後方への変位を食い止めることができる。エンジン補機がマウント部材の後方への変位を食い止めるので、エンジン補機の前端よりも後方に配置された第1管部材及び第2管部材の連結部は、後方に変位したマウント部材に接触しない。すなわち、第1管部材及び第2管部材の連結部はエンジン補機によって、車両の前突に起因して後方に変位したマウント部材から効果的に保護されることができる。
【発明の効果】
【0027】
上述の燃料供給装置の管路は、エンジン補機によって車両の前突から保護されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】エンジンへ燃料を供給する燃料供給装置の概略図である。
図2】エンジンの概略的な斜視図である。
図3】エンジンの概略的な背面輪郭図である
【発明を実施するための形態】
【0029】
<エンジン及び周辺機器>
図1は、エンジン200へ燃料を供給する燃料供給装置100の概略図である。図2は、エンジン200の概略的な斜視図である。図3は、エンジン200の概略的な背面輪郭図である。燃料供給装置100の前に、エンジン200及びエンジン200の周囲に配置された周辺機器を図1乃至図3を参照して説明する。「前」、「後」、「右」、「左」、「上」や「下」といった方向を表す用語は、車両(図示せず)を基準として用いられている。「上流」及び「下流」との用語は、燃料の流れ方向を基準に用いられている。
【0030】
エンジン200は、縦置き型である。エンジン200は、シリンダブロック211とシリンダヘッド212とを含む(図2を参照)。シリンダブロック211は、上方に開口するとともに鉛直方向に延設された6つの気筒(図示せず)を形成している。シリンダヘッド212は、6つの気筒の開口端を閉じている。6つの気筒は、前後方向に配列されている。
【0031】
エンジン200は、6つの気筒内で鉛直方向に往復動する6つのピストン(図示せず)、6つのピストンの往復動を所定の回転軸周りの回転として出力するクランクシャフト(図示せず)及びクランクシャフトと6つのピストンそれぞれとを連結する連結機構(図示せず)を更に含む。クランクシャフトは、6つのピストンの下方で前後方向に延設されている。連結機構は、コネクティングロッド、ピストンロッド及びクロスヘッドを含むことができる。エンジン200の構造に対して、一般的な車両用エンジンの設計技術が適用されることができる。したがって、本実施形態の原理は、エンジン200の特定の構造に限定されない。
【0032】
エンジン200の左側面220が図1に示されている。上述の如く、6つの気筒は鉛直方向に延設されているので、左側面220は鉛直方向に大きな寸法を有することができる。加えて、エンジン200の6つの気筒は前後方向に配列されているので、左側面220は前後方向にも大きな寸法を有することができる。したがって、左側面220は、大きな面積を有することができる。
【0033】
エンジン200の広い左側面220に連結されたマウント部材300が、エンジン200の周辺に配置された周辺機器のうち1つとして図1に概略的に示されている。マウント部材300は、エンジン200の左側面220だけでなく、車両のフレーム(図示せず)にも連結されている。すなわち、エンジン200はマウント部材300を介して、車両のフレームに固定されている。
【0034】
マウント部材300に加えて、図1はエンジン200の周辺に配置された周辺機器のうち1つとしてトランスミッション400を概略的に示している。トランスミッション400は、ギア構造(図示せず)と、異物からギア構造を保護するようにギア構造を取り囲むトランスミッションケース410と、を含む。ギア構造は、エンジン200のクランクシャフトの回転を、車両を運転する運転者の操作下又は車両の運転条件に適合するようにトランスミッション400を制御するECU(Electronic Control Unit)の制御下で決定されたギア比で減速する。この結果、トランスミッション400は増大されたトルクの回転を出力することができる。トランスミッションケース410は、シリンダブロック211の後面の下部に連結された連結フランジ411を含む。連結フランジ411の剛性は、連結フランジ411及び連結フランジ411を貫通しシリンダブロック211に形成された雌ネジ孔に螺合されたボルト(図示せず)がエンジン200及びトランスミッション400からの振動の下でもトランスミッション400とエンジン200との間の連結を維持する連結構造を形成するように特に高い値に設定されている。
【0035】
図3は、連結フランジ411の輪郭を鎖線で示すとともにエンジン200の輪郭を実線で示している。図3に示されるように、エンジン200の左側面220は右方に凹没した空間を形成している。右方に凹没した空間においてエンジン200の左側面220から左方に突出した突出部位412が連結フランジ411の一部として形成されている。突出部位412は、マウント部材300の後方に位置している(図1を参照)。
【0036】
突出部位412に固定されたスタータ500が、エンジン200の周辺に配置された周辺機器のうち1つとして図1及び図3に示されている。スタータ500は、エンジン200の始動時においてエンジン200のクランクシャフトを所定の回転数まで回転させるエンジン補機として機能する。
【0037】
スタータ500はマウント部材300の後方に配置された突出部位412の前面に取り付けられ、突出部位412からマウント部材300に向けて突出している。すなわち、スタータ500はマウント部材300の後方で連結フランジ411に固定されている。図3に示されるように、スタータ500の大部分はエンジン200の左側面220が右方に湾曲することによって形成された凹没空間に収容されているので、スタータ500はエンジン200の最外側面から左方へほとんど突出しない。スタータ500とエンジン200の左側面220との間に弧状の空隙が形成されるように、スタータ500は連結フランジ411に固定されている。
【0038】
スタータ500の高さ位置は、マウント部材300がエンジン200の左側面220に連結された連結部位の高さ位置に略等しい(図1を参照)。スタータ500は、マウント部材300よりも高い剛性を有している。スタータ500はエンジン200の始動時にクランクシャフトを回転させる機能に加えて、燃料供給装置100を保護する機能をも有する。燃料供給装置100に対する保護機能の前に、燃料供給装置100の構造を以下に説明する。
【0039】
<燃料供給装置の構造>
図1に示されるように、燃料供給装置100はエンジン200の左側面220の後部(すなわち、左側面220の後半分の領域)に取り付けられた燃料ポンプ部110と、燃料ポンプ部110の上流及び下流で燃料を案内する案内管部120(燃料ポンプ部110の周囲で鉛直方向に延びる燃料供給経路全体)と、を含む。燃料ポンプ部110は、車両の後部に搭載された燃料タンク(図示せず)から燃料を吸引し、吸引された燃料をエンジン200の6つの気筒へ送り出す。案内管部120は、エンジン200の下部からエンジン200の上部の気筒への燃料の流路を形成している。図1に示される案内管部120は、燃料ポンプ部110の上流における燃料の流路を形成し、燃料タンクから燃料ポンプ部110に向かって流れる燃料を案内する。図2に示される案内管部120は燃料ポンプ部110の下流における燃料の流路を形成し、燃料ポンプ部110からエンジン200へ向かって流れる燃料を案内する。
【0040】
図1に示されるように、燃料ポンプ部110はマウント部材300の上端よりも上方且つ後方に配置されている。燃料ポンプ部110はスタータ500の上方に位置し、鉛直方向においてスタータ500の重なるようにエンジン200の左側面220に固定される。
【0041】
燃料ポンプ部110へ向かう燃料を案内する案内管部120は、燃料ポンプ部110から下方且つ後方に延びる流路を形成する。案内管部120は、燃料ポンプ110の下方に配置された2つの弾性管121,122及び金属管123を含む。弾性管121,122は、ゴムや弾性樹脂といった弾性材料から形成されている。金属管123は、燃料に対して高い耐腐食性を有する金属から形成されている。
【0042】
弾性管121は、燃料ポンプ部110から下方に延設され、弾性管121の一部はスタータ500の前方で配管されている。弾性管121の上流端(すなわち、下端部)は、スタータ500の上方に配置された金属管123の下流端(すなわち、上端部)に接続されている。金属管123は弾性管121から下方に延設され、スタータ500とエンジン200の左側面220との間の形成された空隙に通される(図3を参照)。すなわち、金属管123はスタータ500の右方で略鉛直に延設されている。金属管123の上流端(すなわち、下端部)は、スタータ500の下方で弾性管122の下流端(すなわち、上端部)に接続されている。弾性管122は、金属管123から下方且つ後方に延設されている。弾性管122の上流端(すなわち、下端部)は、燃料タンクから燃料ポンプ部110に向かって流れる燃料から異物を除去する燃料フィルタ130に連結されている。
【0043】
弾性管121,122及び金属管123の2つの連結部は、案内管部120の一部を形成している。これらの連結部は、図1において、符号「124」,「125」で表される。連結部124において、弾性管122の下流端及び金属管123の上流端が連結されている。連結部125において、金属管123の下流端及び弾性管121の上流端が連結されている。連結部124,125は、スタータ500の半球状の前端(図1は、スタータ500の前端に接する仮想的な鉛直平面VPを示している)よりも後方に配置されている。連結部124,125として、2つの管部材の連結に一般的に用いられている連結部材が用いられてもよい。本実施形態の原理は、連結部125,125として用いられる特定の連結部材に限定されない。
【0044】
連結部125,124において弾性管121,122が金属管123に連結される結果、案内管部120は燃料フィルタ130から燃料ポンプ部110への燃料の流路を形成することができる。弾性管122は、燃料フィルタ130から連結部124までの区間に亘って燃料の流路を形成する。金属管123は、スタータ500の下方の連結部124からスタータ500の上方の連結部125までの区間に亘って燃料の流路を形成する。弾性管121は、連結部125から燃料ポンプ部110までの区間に亘って燃料の流路を形成する。
【0045】
燃料ポンプ部110は、弾性管121を通じて流入した燃料を2つの経路に分けて吐出する。図2は、燃料ポンプ部110から吐出された燃料の経路を概略的に示している。燃料ポンプ部110及び燃料ポンプ部110から吐出された燃料の経路が以下に説明される。
【0046】
燃料ポンプ部110は、シリンダブロック211によって形成された6つの気筒に燃料をそれぞれ噴射するようにシリンダヘッド212に取り付けられた6つの燃料噴射弁161~166へ燃料を供給する。燃料噴射弁161~166は、燃料供給装置100の一部として用いられている。
【0047】
燃料ポンプ部110は2つの燃料ポンプ111,112を含む。燃料ポンプ111,112は、燃料が吐出される吐出部113,114をそれぞれ含む。燃料ポンプ111,112は、弾性管121,122及び金属管123(図1を参照)によって形成された流路を通じて供給された燃料を吐出部113,114から吐出する。吐出部113,114から吐出された燃料をエンジン200の6つの気筒へ噴射する6つの燃料噴射弁161~166へ案内する経路を、案内管部120は更に形成する。
【0048】
案内管部120は、燃料噴射弁161~166へ案内する経路を形成する管部材として、燃料ポンプ部110から延設された2つの供給管126,127と、燃料ポンプ部110の上方に配置された2つの分配管128,129と、分配管128,129と燃料噴射弁161~166との間で延設された6つの連結管131~136を含む。供給管126,127は、燃料ポンプ111,112から分配管128,129へ流れる燃料を案内する。分配管128,129は、供給管126,127を通じて流入した燃料を一時的に貯留する。連結管131,132,133は、分配管128から燃料噴射弁161,163,162へ流れる燃料を案内する。連結管134,135,136は、分配管129から燃料噴射弁165,164,166へ流れる燃料を案内する。
【0049】
供給管126,127は燃料ポンプ111,112の吐出部113,114から前方且つ上方に延設され、燃料ポンプ111,112の上方で略水平に延設された分配管128,129にそれぞれ接続されている。供給管126及び分配管128の接続位置は、分配管128の長手方向において分配管128の略中心である。供給管127及び分配管129の接続位置は、分配管129の長手方向において分配管129の略中心である。
【0050】
分配管128,129は、一線上に配置される。すなわち、分配管128,129は直列に配列されている。分配管128は、分配管129の前方に配置されている。
【0051】
分配管128は、主管141と3つの吐出部142,143,144とを含む。主管141は、燃料ポンプ111から供給管126を通じて送り込まれた燃料が一時的に貯留される部位である。吐出部142,143,144は、燃料噴射弁161,163,162が開かれたときに主管141内の燃料が吐出される部位である。
【0052】
主管141は略円筒状である。主管141の両端は閉じられている。主管141の周壁には、上述の供給管126が接続されている。燃料ポンプ111が供給管126を通じて燃料を送り出すにつれて主管141内の燃料の圧力は増加する。
【0053】
吐出部142,143,144は、主管141の周壁から上方に突出した部位である。吐出部142は、吐出部142,143,144の中で最も前方に配置されている。吐出部143は、吐出部142の後方に位置している。吐出部144は、吐出部143の後方に位置している。吐出部142,143の間の間隔は、吐出部143,144の間の間隔に略等しい。
【0054】
吐出部142は、燃料噴射弁161,162,163の中で最も前方に配置された燃料噴射弁161に連結管131によって連結されている。吐出部143は、燃料噴射弁161,162,163の中で最も後方に配置された燃料噴射弁163に連結管142によって連結されている。吐出部144は、燃料噴射弁161,163の間に配置された燃料噴射弁162に連結管133によって連結されている。燃料噴射弁161,162,163は、ECUの制御下で互いに異なるタイミングで開いたり閉じたりする。
【0055】
燃料噴射弁161,162,163は分配管128を通じて燃料の供給を受ける一方で、燃料噴射弁161,162,163の後方に配置された燃料噴射弁164,165,166は分配管128の後方で延設された分配管129を通じて燃料の供給を受ける。分配管129は、分配管128と同様に、主管145と3つの吐出部146,147,148とを含む。主管145は、燃料ポンプ112から供給管127を通じて送り込まれた燃料が一時的に貯留される部位である。吐出部146,147,148は、燃料噴射弁165,164,166が開かれたときに主管145内の燃料が吐出される部位である。
【0056】
分配管129は、形状及び構造において分配管128と略一致する。分配管128の形状及び構造に関する説明は、分配管129に援用される。
【0057】
分配管129の主管145の周壁には、燃料ポンプ112から吐出された燃料を案内する供給管127が接続されている。主管145内には、燃料ポンプ112から供給管127を通じて送り込まれた燃料が一時的に貯留される。燃料ポンプ112が燃料を送り出すにつれて主管145内の燃料の圧力は増加する。
【0058】
吐出部146は、吐出部146,147,148の中で最も前方に配置されている。吐出部147は、吐出部146の後方に位置している。吐出部148は、吐出部147の後方に位置している。
【0059】
吐出部146は、燃料噴射弁164,165,166の中で最も前方に配置された燃料噴射弁164と燃料噴射弁164,165,166の中で最も後方に配置された燃料噴射弁166との間に配置された燃料噴射弁165に連結管134によって連結されている。吐出部147は、燃料噴射弁164に連結管135によって連結されている。吐出部148は、燃料噴射弁166に連結管136によって連結されている。燃料噴射弁164,165,166は、ECUの制御下で互いに異なるタイミングで開いたり閉じたりする。
【0060】
燃料噴射弁161~166は、気筒の配列方向(すなわち、車両の前後方向)に所定の間隔で配置されている。燃料噴射弁161~166の下方で6つの気筒が形成されている。燃料噴射弁161~166は、これらの下方に形成された気筒に燃料噴射のタイミングを制御するECUの制御下で燃料をそれぞれ噴射する。
【0061】
燃料噴射弁161~166からの燃料の噴射量を超えた量の燃料を燃料ポンプ部110は吐出し、分配管128,129内の燃料の圧力を高い値に設定する。この結果、燃料は燃料噴射弁161~166から勢いよく噴射されることができる。燃料の噴射量を超えた量の燃料が燃料ポンプ部110から分配管128,129へ供給される結果、分配管128,129内の燃料の圧力は所定の閾値を超えることもある(たとえば、車両の減速に応じて燃料の噴射量が低減されるときに燃料ポンプ部110から分配管128,129への燃料の供給量が過剰になることがある)。したがって、分配管128,129内の圧力を低減するための圧力調整機構が分配管128,129に設けられている。圧力調整機構が以下に説明される。
【0062】
燃料供給装置100の圧力調整機構は、分配管128,129から燃料を流出させ、流出した燃料を燃料タンクへ案内する。燃料供給装置100の圧力調整機構は、分配管128,129から燃料を流出させる部位として、分配管128,129にそれぞれ対応して設けられた2つの圧力調整弁171,172と、分配管128,129の周壁から上方にそれぞれ突出した2つの漏出部173,174と、を含む。燃料供給装置100の圧力調整機構は、分配管128,129から流出した燃料を燃料タンクへ案内する部位として、漏出部173,174からそれぞれ延設された2つの圧力調整管175,176と、分配管128,129の下方に配置された接続部材177と、接続部材177に到達した燃料を更に下方に案内するリターン管部178(図1を参照)と、を含む。
【0063】
圧力調整弁171は、分配管128の主管141の後端に取り付けられている。圧力調整弁171は分配管128内の燃料の圧力に応じて、分配管128の内部空間と吐出部144の後方で分配管128の主管141の周壁から突出した漏出部173によって形成された流路とを連通させたり、分配管128及び漏出部173の連通部位を閉じたりする機械的な弁体である。同様に、圧力調整弁172は分配管129内の燃料の圧力に応じて、分配管129の内部空間と吐出部148の後方で分配管129の主管145の周壁から突出した漏出部174によって形成された流路とを連通させたり、分配管129及び漏出部174の連通部位を閉じたりする機械的な弁体である。
【0064】
圧力制御弁171,172が漏出部173,174と分配管128,129とを連通させたときに漏出部173,174から漏出した燃料は圧力調整管175,176に流入する。圧力調整管175は漏出部173から下方に延設され、接続部材177に接続されている。圧力調整管176は、漏出部174,173に接続されている。
【0065】
圧力調整管175が接続された接続部材177には、リターン管部178も接続されている。リターン管部178は、燃料を燃料タンクまで案内するために用いられる。
【0066】
リターン管部178は、燃料を燃料ポンプ部110へ供給する区間を形成する案内管部120と同様に、2つの弾性管181,182と、これらに連結された金属管183と、を含む。弾性管181は接続部材177から下方且つ後方に延設されている。弾性管181の下端部に金属管183は連結される。図1は、弾性管181及び金属管183の連結部を符号「184」で示している。金属管183は、案内管部120の金属管123と同様に、スタータ500とエンジン200の左側面220との間に形成された空隙(図3を参照)に通され、下方に延設されている。金属管183はスタータ500の下方で弾性管182に連結されている。図1は、弾性管182及び金属管183の連結部を符号「185」で示している。弾性管182は連結部185から後方に延設され、燃料タンクへ燃料を案内する。リターン管部178に設けられた連結部184,185は、燃料を燃料ポンプ部110へ供給する区間を形成する案内管部120に設けられた連結部124,125と同様に、鉛直平面VPの後方に位置している。
【0067】
<燃料供給装置の動作>
燃料供給装置100の動作が以下に説明される。
【0068】
燃料ポンプ部110が作動すると、燃料タンク内の燃料は燃料ポンプ部110によって吸引され、燃料フィルタ130を通過する。燃料は燃料フィルタ130で異物の除去処理を受けた後、弾性管122、金属管123及び弾性管121を順次通過し燃料ポンプ部110に到達する。
【0069】
燃料ポンプ部110は、燃料を吐出部113,114から吐出する。燃料は、吐出部113,114から延設された供給管126,127によって分配管128,129へ案内される。燃料はその後、分配管128,129内で一時的に貯留される。燃料ポンプ部110は燃料噴射弁161~166からの燃料噴射量より多い量の燃料を吐出するので、分配管128,129内の燃料の圧力は高くなる。
【0070】
分配管128,129内の高圧の燃料は、燃料噴射弁161~166が開くと、エンジン200内の6つの気筒へ噴射される。燃料噴射弁161~166は、ECUの制御下で、互いに異なるタイミングで開かれる。燃料噴射弁161,162,163が開かれると、分配管128内の燃料は連結管131,133,132を通じて燃料噴射弁161,162,163へ流れ、燃料噴射弁161,162,163の下方に形成された気筒に燃料噴射弁161,162,163から噴射される。燃料噴射弁164,165,166が開かれると、分配管129内の燃料は連結管135,134,136を通じて燃料噴射弁164,165,166へ流れ、燃料噴射弁164,165,166の下方に形成された気筒に燃料噴射弁164,165,166から噴射される。
【0071】
分配管128,129内の燃料の圧力が所定の閾値を超えると、圧力調整弁171,172は開かれる。圧力調整弁171が開かれると、分配管128内の燃料は漏出部173から漏出し、圧力調整管175に流入する。圧力調整弁172が開かれると、分配管129内の燃料は漏出部174から漏出し、圧力調整管176に流入する。燃料はその後、圧力調整管176及び漏出部173を順次通過し、圧力調整管175に流入する。
【0072】
圧力調整管175に流入した燃料は、分配管128,129の下方の接続部材177へ圧力調整管175によって案内される。接続部材177へ到達した燃料は、リターン管部178によって燃料タンクへ案内される。
【0073】
<燃料供給装置に対する保護>
燃料供給装置100の中でも、案内管部120及びリターン管部178の連結部124,125,184,185は脆弱な部位である。連結部124,125,184,185は、車両の前突時にスタータ500によって保護されることができる。連結部124,125,184,185が車両の前突時においてスタータ500によってどのように保護されるかが以下に説明される。
【0074】
車両の前突時において、マウント部材300とエンジン200の左側面220との間の連結部位が破壊される一方で、マウント部材300が車両のフレームに連結されたままであることがある。この場合、フレームは車両が受けた衝撃力(すなわち、後方への衝撃力)を受け止めながら変形するので、マウント部材300とフレームとの間の連結部位は後方に変位する。マウント部材300とフレームとの間の連結部位の後方への変位は、マウント部材300の後方への変位に帰結する。
【0075】
上述の如く、マウント部材300の後方にスタータ500が配置されている。スタータ500はマウント部材300よりも高い剛性を有するので、後方へ変位したマウント部材300がスタータ500の前端に衝突してもスタータ500の前端はほとんど変形しない。加えて、スタータ500は特に高い剛性を有するトランスミッションケース410の連結フランジ411に取り付けられているので、ほとんど後方に変位しない。したがって、スタータ500の前端は、鉛直平面VPから後方にほとんど変位しない。鉛直平面VPの後方に連結部124,125,184,185は配置されているので、後方へ変位したマウント部材300が連結部124,125,184,185に接触することはスタータ500によって防がれることができる。
【0076】
連結部124,125,184,185に端部を有する金属管123,183は、略鉛直に延設されているので、金属管123,183それぞれの前後方向における両端部の距離は、鉛直方向における両端部の距離よりも短くなる。金属管123,183は車両の前後方向に広い空間を必要とすることなく配置されることができるので、金属管123,183をスタータ500の前端(すなわち、鉛直平面VP)から前方にはみ出させることなくスタータ500の右方に配置することは容易となる。すなわち、連結部124,125,184,185全ては、鉛直平面VPの後方に容易に配置されることができる。
【0077】
鉛直平面VPの後方に全体的に配置された金属管123,183とは異なり、弾性管121,181は鉛直平面VPを越えて前方に延設されている。したがって、弾性管121,181は、後方に変位したマウント部材300と接触することもある。弾性管121,181は弾性材料から形成されているので、マウント部材300と接触した弾性管121,181は弾性変形することができる。したがって、弾性管121,181が深刻な損傷を受けるリスクは非常に低い。
【0078】
上述の如く、マウント部材300の後方への変位はスタータ500によって食い止められるので、スタータ500の上方に配置された燃料ポンプ部110はマウント部材300の後方に配置されているけれども、後方へ変位したマウント部材300とは接触しにくい。したがって、燃料ポンプ部110も後方へ変位したマウント部材300からスタータ500によって保護されることができる。
【0079】
マウント部材300に加えて、車両の衝突時には、エンジンルーム(図示せず)内の部品が燃料供給装置100に向けて移動して来ることもある。この場合においても、金属管123,183はスタータ500とエンジン200の左側面220との間に形成された空隙(図3を参照)に通されているので、スタータ500は金属管123,183に向けて移動する部品が金属管123,183と接触することを防止することができる。
【0080】
<他の有利な効果>
金属管123,183は、弾性管121,122,181,182よりも高い剛性を有するので、金属管123,183がエンジン200の左側面220に固定されると、金属管123,183の端部も固定されることができる。金属管123,183の端部が不動となるので、作業者は、弾性管121,122,181,182を金属管123,183の端部に容易に連結することができる。
【0081】
弾性管121は、金属管123の上端部に連結されている。この結果、弾性管121及び金属管123の連結部125は、スタータ500の上方でエンジン200の左側面220に固定された燃料ポンプ部110の近くで形成される。したがって、弾性管121は短くてもよい。この結果、弾性管121内での燃料の圧力損失は小さな値となる。
【0082】
上述の実施形態に関して、マウント部材300はエンジン200の左側面220に連結されている。しかしながら、マウント部材300はエンジン200の右側面(図示せず)に連結されていてもよい。
【0083】
上述の実施形態に関して、マウント部材300よりも高い剛性を有するエンジン補機としてスタータ500が用いられている。しかしながら、マウント部材300より高い剛性を有する様々なエンジン補機(たとえば、インバータ)が燃料供給装置100の保護に用いられてもよい。
【0084】
上述の実施形態に関して、金属管123は、マウント部材300とエンジン200の左側面220との間の空隙(図3を参照)に通されている。しかしながら、金属管は、マウント部材300の左側の空間に通されてもよい。
【0085】
上述の実施形態に関して、金属管123が第1管部材として用いられている一方で、弾性管121が第2管部材として用いられている。しかしながら、第1管部材は金属製でなくてもよいし、第2管部材は、弾性材料から形成されなくてもよい。この場合、第1管部材が第2管部材よりも高い剛性を有することが好ましい。第2管部材よりも高い剛性を得るために、第1管部材として第2管部材よりも厚い肉厚を有する管部材が用いられてもよい。第1管部材が第2管部材よりも高い剛性を有するならば、第2管部材と連結される第1管部材の端部は固定されやすくなり、作業者は第2管部材を第1管部材の端部に容易に連結することができる。
【0086】
上述の実施形態に関して、燃料ポンプ部110はエンジン200の左側面220に固定されている。しかしながら、燃料ポンプ部はエンジンの他の部位に固定されてもよい。たとえば、燃料ポンプ部はエンジンの後面に取り付けられてもよい。上述の実施形態の原理は、燃料ポンプ部が取り付けられる特定の部位に限定されない。
【0087】
上述の実施形態に関して、燃料ポンプ部110はスタータ500の上方でエンジン200の左側面220に固定されている。しかしながら、燃料ポンプ部はスタータ500の下方に配置されていてもよい。
【0088】
上述の実施形態に関して、燃料ポンプ部110は燃料ポンプ111,112を含む。しかしながら、燃料ポンプ部は単一のポンプ装置であってもよい。上述の実施形態の原理は、燃料ポンプ部の特定の構造に限定されない。
【0089】
上述の実施形態に関連して、燃料ポンプ部110の下流の構造が詳細に説明されている。しかしながら、設計者は、燃料ポンプ部110から燃料噴射弁161~162までの流路に対して様々な構造を設計することができる。したがって、上述の実施形態の原理は、燃料ポンプ部110の下流の構造によっては何ら限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
上述の実施形態の原理は、様々な車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0091】
100・・・・・・・・・・燃料供給装置
111,112・・・・・・燃料ポンプ
120・・・・・・・・・・案内管部
121・・・・・・・・・・弾性管(第1管部材)
123・・・・・・・・・・金属管(第2管部材)
125・・・・・・・・・・連結部
200・・・・・・・・・・エンジン
220・・・・・・・・・・左側面(側面)
300・・・・・・・・・・マウント部材
410・・・・・・・・・・トランスミッションケース
図1
図2
図3