(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】リチウム硫黄固体電池の充電方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20220308BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20220308BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220308BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220308BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220308BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220308BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20220308BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220308BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H01M10/44 A
H02J7/10 B
H02J7/10 H
H01M10/48 P
H01M4/66 A
H01M10/052
H01M10/0562
H01M10/0568
H01M4/13
H01M4/38 Z
(21)【出願番号】P 2018024160
(22)【出願日】2018-02-14
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】道畑 日出夫
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-130465(JP,A)
【文献】国際公開第2012/127775(WO,A1)
【文献】特開2002-203542(JP,A)
【文献】特開2017-168435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H02J 7/10
H01M 10/48
H01M 4/66
H01M 10/052
H01M 10/0562
H01M 10/0568
H01M 4/13
H01M 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流充電工程と、
前記定電流充電工程の実行後に実行される定電圧充電工程と
、
前記定電圧充電工程の実行後に実行される第2定電流充電工程と、
第2定電圧充電工程とを含
み、
リチウム硫黄固体電池の電圧が第1電圧に到達するまで、前記定電流充電工程が実行され、
前記リチウム硫黄固体電池の電圧が前記第1電圧に到達した後に、前記定電圧充電工程が実行され、
前記リチウム硫黄固体電池の電圧が前記第1電圧よりも高い第2電圧に到達するまで、前記第2定電流充電工程が実行され、
前記リチウム硫黄固体電池の電圧が前記第2電圧に到達した後に、前記第2定電圧充電工程が実行され、
前記第2定電圧充電工程では、前記リチウム硫黄固体電池の電圧が前記第1電圧よりも低い第3電圧に設定される、
リチウム硫黄固体電池の充電方法。
【請求項2】
前記第2定電圧充電工程の実行後に前記リチウム硫黄固体電池の電圧を増加させる追加充電工程を更に含む、
請求項1に記載のリチウム硫黄固体電池の充電方法。
【請求項3】
前記定電圧充電工程では、前記リチウム硫黄固体電池の内部抵抗値が、所定範囲内に維持され、ほぼ一定である、
請求項
1または請求項2に記載のリチウム硫黄固体電池の充電方法。
【請求項4】
前記定電圧充電工程中に充電電流値を順次低減させる、
請求項
1から請求項3のいずれか一項に記載のリチウム硫黄固体電池の充電方法。
【請求項5】
前記リチウム硫黄固体電池は、硫黄正極と、リチウム負極と、固体電解質とを備え、
前記硫黄正極は、多数の空隙部を有する導電性シートを備え、
前記空隙部には、硫黄、導電助剤、バインダーおよびイオン液体が含まれ、
前記空隙部は、前記導電性シートの外部に対して開口している、
請求項
1から請求項4のいずれか一項に記載のリチウム硫黄固体電池の充電方法。
【請求項6】
前記導電性シートの構成材料が、炭素、銅、アルミニウム、チタン、ニッケルまたはステンレス鋼である、
請求項
5に記載のリチウム硫黄固体電池の充電方法。
【請求項7】
前記イオン液体が、グライム-リチウム塩錯体からなる溶媒和イオン液体である、
請求項
5または請求項6に記載のリチウム硫黄固体電池の充電方法。
【請求項8】
前記導電性シートが、カーボンフェルトまたはカーボンクロスである、
請求項
5から請求項7のいずれか一項に記載のリチウム硫黄固体電池の充電方法。
【請求項9】
前記イオン液体が、トリグライム-リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド錯体またはテトラグライム-リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド錯体である、
請求項
5から請求項8のいずれか一項に記載のリチウム硫黄固体電池の充電方法。
【請求項10】
前記定電圧充電工程中における前記固体電解質から前記リチウム負極へのリチウムイオンの流入量は、前記定電流充電工程における前記固体電解質から前記リチウム負極への前記リチウムイオンの流入量よりも大きい、
請求項
5に記載のリチウム硫黄固体電池の充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、リチウム硫黄固体電池の充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナトリウム-硫黄電池の充電方法が知られている(例えば特許文献1、2等参照)。特許文献1の
図1には、第1段階充電として定電流充電が行われ、次いで、第2段階充電として、第1段階充電よりも低い電流値で定電流充電が行われる旨が記載されている。また、特許文献1には、
図1に記載された充電を行うことによって、過充電を避けながら所望の充電量を得ることができる旨が記載されている。
特許文献2の
図6には、最初に第1電流値で定電流充電が行われ、次いで、第1電流値より高い第2電流値で定電流充電が行われ、次いで、第1電流値で定電流充電が行われる旨が記載されている。また、特許文献2には、第1電流値より高い第2電流値で定電流充電を行うことによって、電池の温度を上昇させ、充電後半における多硫化ナトリウムの存在量を減少させることができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2878584号公報
【文献】特許第3027297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載されたナトリウム-硫黄電池の性能を遥かに凌ぐ将来の新型電池として、リチウム硫黄固体電池が期待される。
一方、リチウム硫黄固体電池の原理は、特許文献1、2に記載されたナトリウム-硫黄電池の原理や、リチウムイオン来の電池の原理とは完全に異なる。
従って、特許文献1、2に記載された充電方法をリチウム硫黄固体電池に適用しても、リチウム硫黄固体電池の性能を最大限に発揮させることができない。詳細には、特許文献1、2に記載された充電方法をリチウム硫黄固体電池に適用しても、過電圧によるリチウム硫黄固体電池の劣化を抑制しつつリチウム硫黄固体電池の蓄電容量を増加させることができない。
同様に、リチウムイオン電池に適した充電方法をリチウム硫黄固体電池に適用しても、過電圧によるリチウム硫黄固体電池の劣化を抑制しつつリチウム硫黄固体電池の蓄電容量を増加させることはできない。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、過電圧によるリチウム硫黄固体電池の劣化を抑制しつつリチウム硫黄固体電池の蓄電容量を増加させることができるリチウム硫黄固体電池の充電方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、定電流充電工程と、前記定電流充電工程の実行後に実行される定電圧充電工程とを含む、リチウム硫黄固体電池の充電方法である。
【0007】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、前記リチウム硫黄固体電池の電圧が第1電圧に到達するまで、前記定電流充電工程が実行され、前記リチウム硫黄固体電池の電圧が前記第1電圧に到達した後に、前記定電圧充電工程が実行されてもよい。
【0008】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法は、前記定電圧充電工程の実行後に実行される第2定電流充電工程を更に含んでもよい。
【0009】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法は、第2定電圧充電工程を更に含み、前記リチウム硫黄固体電池の電圧が前記第1電圧よりも高い第2電圧に到達するまで、前記第2定電流充電工程が実行され、前記リチウム硫黄固体電池の電圧が前記第2電圧に到達した後に、前記第2定電圧充電工程が実行され、前記第2定電圧充電工程では、前記リチウム硫黄固体電池の電圧が前記第1電圧よりも低い第3電圧に設定されてもよい。
【0010】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法は、前記第2定電圧充電工程の実行後に前記リチウム硫黄固体電池の電圧を増加させる追加充電工程を更に含んでもよい。
【0011】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、前記定電圧充電工程では、前記リチウム硫黄固体電池の内部抵抗値が、所定範囲内に維持され、ほぼ一定であってもよい。
【0012】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、前記定電圧充電工程における充電電流値は、前記定電流充電工程における充電電流値の2分の1から10分の1に設定されてもよい。
【0013】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、前記定電圧充電工程における充電電流値は、前記定電流充電工程における充電電流値の2分の1から4分の1に設定されてもよい。
【0014】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、前記定電圧充電工程中に充電電流値を順次低減させてもよい。
【0015】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、前記リチウム硫黄固体電池は、硫黄正極と、リチウム負極と、固体電解質とを備え、前記硫黄正極は、多数の空隙部を有する導電性シートを備え、前記空隙部には、硫黄、導電助剤、バインダーおよびイオン液体が含まれ、前記空隙部は、前記導電性シートの外部に対して開口していてもよい。
【0016】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、前記導電性シートの構成材料が、炭素、銅、アルミニウム、チタン、ニッケルまたはステンレス鋼であってもよい。
【0017】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、前記イオン液体が、グライム-リチウム塩錯体からなる溶媒和イオン液体であってもよい。
【0018】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、前記導電性シートが、カーボンフェルトまたはカーボンクロスであってもよい。
【0019】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、前記イオン液体が、トリグライム-リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド錯体またはテトラグライム-リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド錯体であってもよい。
【0020】
本発明の一態様のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、前記定電圧充電工程中における前記固体電解質から前記リチウム負極へのリチウムイオンの流入量は、前記定電流充電工程における前記固体電解質から前記リチウム負極への前記リチウムイオンの流入量よりも大きくてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、過電圧によるリチウム硫黄固体電池の劣化を抑制しつつリチウム硫黄固体電池の蓄電容量を増加させることができるリチウム硫黄固体電池の充電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法が適用された充電システムの一例を示す図である。
【
図2】第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法において充電装置からリチウム硫黄固体電池に供給される充電電流などを説明するための図である。
【
図4】第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法が適用されるリチウム硫黄固体電池内におけるリチウムイオンの移動範囲の変化を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法の効果を説明するための図である。
【
図6】第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法による充電中における電圧と電流との関係を示す図である。
【
図7】第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法を説明するための図である。
【
図8】第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法による充電中における電圧と電流との関係を示す図である。
【
図9】第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法が適用されるリチウム硫黄固体電池の蓄電容量などを説明するための図である。
【
図10】第3実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のリチウム硫黄固体電池の充電方法の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法が適用された充電システムCSの一例を示す図である。
図1に示す例では、充電システムCSが、リチウム硫黄固体電池1と、充電装置2とを備えている。リチウム硫黄固体電池1は、硫黄正極11と、リチウム負極12と、固体電解質13とを備えている。固体電解質13の一端は、硫黄正極11に接続されている。硫黄正極11は、充電装置2の一端に接続されている。固体電解質13の他端は、リチウム負極12に接続されている。リチウム負極12は、充電装置2の他端に接続されている。
【0025】
硫黄正極11は、導電性シート(図示せず)を備えている。導電性シートは、導電性を有する材料によって構成されており、正極集電体として機能し得る。導電性シートの構成材料は、硫黄との反応性を有しないものが好ましい。導電性シートの構成材料は、例えば、炭素、銅、アルミニウム、チタン、ニッケルまたはステンレス鋼である。導電性シートの構成材料は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせおよび比率は、目的に応じて任意に選択できる。導電性シートが、カーボンフェルトまたはカーボンクロスであってもよい。
導電性シートの厚さは、例えば100~30000μmであることが好ましく、200~1000μmであることがより好ましい。
導電性シートの形態としては、例えば、多孔質体、織布または不織布等の、繊維状の材料が互いに絡み合ったもの等が挙げられる。
【0026】
導電性シートは、多数の空隙部(図示せず)を有する。空隙部は、1個または2個以上の他の空隙部と連結していてもよいし、他の空隙部と連結することなく、独立していてもよい。
空隙部は、導電性シートの外部に対して開口している。連結している空隙部、および、連結していない空隙部は、いずれも、導電性シートの一方の表面から他方の表面まで貫通していてもよいし、貫通することなく、導電性シートの内部で行き止まりとなっていてもよい。また、連結している空隙部、および、連結していない空隙部は、いずれも、導電性シートの一方の表面から導電性シートの内部を経由して、再び一方の表面に到達していてもよい。
【0027】
空隙部には、硫黄、導電助剤、バインダーおよびイオン液体が含まれている。
導電助剤としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等が挙げられる。
空隙部に含められる導電助剤は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせおよび比率は、目的に応じて任意に選択できる。
硫黄、導電助剤、バインダーおよびイオン液体の総含有量に対する、硫黄および導電助剤の合計含有量の割合は、例えば60~95質量%であることが好ましく、70~85質量%であることがより好ましい。
[硫黄の含有量(質量部)]:[導電助剤の含有量(質量部)]の質量比は、例えば30:70~70:30であることが好ましく、45:55~65:35であることがより好ましい。
硫黄および導電助剤は、複合体を形成していてもよい。例えば、硫黄と、炭素含有材料(例えばケッチェンブラック等)とを混合し、焼成することによって、硫黄-炭素複合体が得られる。このような、複合体も、硫黄正極11の含有成分として好適である。
【0028】
空隙部に含められるバインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-六フッ化プロピレン共重合体(PVDF-HFP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(PAALi)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)等が挙げられる。
空隙部に含められるバインダーは、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせおよび比率は、目的に応じて任意に選択できる。
硫黄、導電助剤、バインダーおよびイオン液体の総含有量に対する、バインダーの含有量の割合は、例えば3~15質量%であることが好ましく、5~9質量%であることがより好ましい。
【0029】
空隙部に含められるイオン液体は、リチウム硫黄固体電池1内において、リチウムイオンを容易に移動させるための成分である。イオン液体は、硫黄正極11と固体電解質13との間でリチウムイオンを移動させる。
イオン液体は、例えば、170℃未満の温度範囲で、硫黄の溶解度が低いものほど好ましく、硫黄を溶解させないものが特に好ましい。イオン液体としては、例えば、170℃未満の温度で液状のイオン性化合物、溶媒和イオン液体等が挙げられる。
【0030】
イオン液体が170℃未満の温度で液状のイオン性化合物である場合、イオン性化合物を構成するカチオン部は、有機カチオンおよび無機カチオンのいずれでもよいが、有機カチオンであることが好ましい。イオン性化合物を構成するアニオン部も、有機アニオンおよび無機アニオンのいずれでもよい。
イオン性化合物を構成するカチオン部のうち、有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン(imidazolium cation)、ピリジニウムカチオン(pyridinium cation)、ピロリジニウムカチオン(pyrrolidinium cation)、ホスホニウムカチオン(phosphonium cation)、アンモニウムカチオン(ammonium cation)、スルホニウムカチオン(sulfonium cation)等が挙げられる。
【0031】
イオン性化合物を構成するアニオン部のうち、有機アニオンとしては、例えば、メチルサルフェートアニオン(CH3SO4
-)、エチルサルフェートアニオン(C2H5SO4
-)等のアルキルサルフェートアニオン(alkylsulfate anion)、トシレートアニオン(CH3C6H4SO3
-)等が挙げられる。
また、イオン性化合物を構成するアニオン部のうち、有機アニオンとしては、例えば、メタンスルホネートアニオン(CH3SO3
-)、エタンスルホネートアニオン(C2H5SO3
-)、ブタンスルホネートアニオン(C4H9SO3
-)等のアルカンスルホネートアニオン(alkanesulfonate anion)が挙げられる。
また、イオン性化合物を構成するアニオン部のうち、有機アニオンとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3
-)、ペンタフルオロエタンスルホネートアニオン(C2F5SO3
-)、ヘプタフルオロプロパンスルホネートアニオン(C3H7SO3
-)、ノナフルオロブタンスルホネートアニオン(C4H9SO3
-)等のパーフルオロアルカンスルホネートアニオン(perfluoroalkanesulfonate anion)が挙げられる。
また、イオン性化合物を構成するアニオン部のうち、有機アニオンとしては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF3SO2)N-)、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオン((C4F9SO2)N-)、ノナフルオロ-N-[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルイミドアニオン((CF3SO2)(C4F9SO2)N-)、N,N-ヘキサフルオロ-1,3-ジスルホニルイミドアニオン(SO2CF2CF2CF2SO2N-)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミドアニオン(perfluoroalkanesulfonylimide anion)が挙げられる。
また、イオン性化合物を構成するアニオン部のうち、有機アニオンとしては、例えば、アセテートアニオン(CH3COO-)、ハイドロジェンサルフェートアニオン(HSO4
-)等が挙げられる。
【0032】
イオン性化合物を構成するアニオン部のうち、無機アニオンとしては、例えば、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン(N(SO2F)2
-)、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6
-)、テトラフルオロボレートアニオン(BF4
-)等が挙げられる。
また、イオン性化合物を構成するアニオン部のうち、無機アニオンとしては、例えば、塩化物イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)、ヨウ化物イオン(I-)等のハライドアニオン(halide anion)が挙げられる。
また、イオン性化合物を構成するアニオン部のうち、無機アニオンとしては、例えば、テトラクロロアルミネートアニオン(AlCl4
-)、チオシアネートアニオン(SCN-)等が挙げられる。
【0033】
イオン液体が170℃未満の温度で液状のイオン性化合物である場合、イオン性化合物としては、例えば、上記のいずれかのカチオン部と、上記のいずれかのアニオン部と、の組み合わせで構成されたものが挙げられる。
例えば、カチオン部がイミダゾリウムカチオンであるイオン液体としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、メチルトリブチルアンモニウムメチルサルフェート、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムメチルサルフェート、メチルイミダゾリウムクロライド、メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムエチルサルフェート等が挙げられる。
【0034】
イオン液体が170℃未満の温度で液状の溶媒和イオン液体である場合、溶媒和イオン液体としては、例えば、グライム-リチウム塩錯体からなるもの等が挙げられる。
グライム-リチウム塩錯体におけるリチウム塩としては、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(C2F6LiNO4S2、以下、「LiFSI」と略記することがある)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO2CF3)2以下、「LiTFSI」と略記することがある)等が挙げられる。
グライム-リチウム塩錯体におけるグライムとしては、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル(CH3(OCH2CH2)3OCH3、トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(CH3(OCH2CH2)4OCH3、テトラグライム)等が挙げられる。
グライム-リチウム塩錯体としては、例えば、グライム1分子とリチウム塩1分子とで構成された錯体等が挙げられるが、グライム-リチウム塩錯体はこれに限定されない。
グライム-リチウム塩錯体は、例えば、リチウム塩とグライムとを、リチウム塩(モル):グライム(モル)のモル比が、好ましくは10:90~50:50となるように、混合することで作製できる。
好ましいグライム-リチウム塩錯体としては、例えば、トリグライム-LiFSI錯体、テトラグライム-LiFSI錯体、トリグライム-LiTFSI錯体、テトラグライム-LiTFSI錯体等が挙げられる。
【0035】
より好ましいグライム-リチウム塩錯体としては、トリグライム-LiFSI錯体、テトラグライム-LiFSI錯体等が挙げられる。
これらの中でも、グライム-リチウム塩錯体は、LiFSIとトリグライムとを、LiFSI(モル):トリグライム(モル)のモル比を10:90~30:70として混合して得られたもの;LiFSIとテトラグライムとを、LiFSI(モル):テトラグライム(モル)のモル比を10:90~30:70として混合して得られたものがさらに好ましく、
LiFSIとトリグライムとを、LiFSI(モル):トリグライム(モル)のモル比を15:85~20:80として混合して得られたもの;LiFSIとテトラグライムとを、LiFSI(モル):テトラグライム(モル)のモル比を15:85~20:80として混合して得られたものが特に好ましい。
イオン液体は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせおよび比率は、目的に応じて任意に選択できる。
イオン液体は、上記の中でも、グライム-リチウム塩錯体からなる溶媒和イオン液体であることが好ましい。
硫黄、導電助剤、バインダーおよびイオン液体の総含有量に対する、イオン液体の含有量の割合は、例えば5~20質量%であることが好ましく、9~15質量%であることがより好ましい。
【0036】
リチウム負極12は、リチウムからなる電極である。リチウム負極12の厚さは、例えば100~2000μmであることが好ましく、100~1000μmであることがより好ましい。
【0037】
固体電解質13の構成材料は、結晶性材料、アモルファス材料およびガラス材料のいずれであってもよい。固体電解質13の構成材料としては、例えば、硫化物を含まず、かつ酸化物を含むもの(本明細書においては「酸化物系材料」と称することがある)、少なくとも硫化物を含むもの(本明細書においては「硫化物系材料」と称することがある)等、公知のものが挙げられる。
固体電解質13の構成材料として酸化物系材料(不燃性材料)が用いられる場合には、固体電解質13の信頼性を向上させることができる。
【0038】
酸化物系材料としては、例えば、Li7La3Zr2O12(LLZ)、Li2.9PO3.3N0.46(LIPON)、La0.51Li0.34TiO2.94、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、50Li4SiO4・50Li3BO3、Li3.6Si0.6P0.4O4、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO4)3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3等が挙げられる。
また、酸化物系材料としては、例えば、Li7La3Zr2O12(LLZ)等の複合酸化物に、アルミニウム、タンタル、ニオブ、ビスマス等の元素が添加(ドープ)されたものも挙げられる。ここで、添加される元素は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせおよび比率は、目的に応じて任意に選択できる。
硫化物系材料としては、例えば、Li10GeP2S12(LGPS)、Li3.25Ge0.25P0.75S4、30Li2S・26B2S3・44LiI、63Li2S・36SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、70Li2S・30P2S5(LISPS)、50Li2S・50GeS2、Li7P3S11、Li3.25P0.95S4等が挙げられる。
【0039】
固体電解質13の構成材料は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせおよび比率は、目的に応じて任意に選択できる。固体電解質13の構成材料は、大気中における安定性が高く、緻密性が高い固体電解質を作製できる点から、酸化物系材料であることが好ましい。
固体電解質13の厚さは、例えば10~1000μmであることが好ましく、50~500μmであることがより好ましい。
【0040】
図1に示す例では、充電装置2が、電源部21と、制御部22とを備えている。電源部21は、例えばAC-DCコンバータ(図示せず)によって構成されている。また、電源部21は、制御部22に給電するとともに、リチウム硫黄固体電池1に充電電力を供給する。
制御部22は、充電時における充電電流および充電電圧の制御などを行う。制御部22は、電圧検出部22Aと、電流検出部22Bと、定電流充電制御部22Cと、定電圧充電制御部22Dとを備えている。
電圧検出部22Aは、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧を検出する。電流検出部22Bは、リチウム硫黄固体電池1を流れる電流を検出する。
定電流充電制御部22Cは、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に対して行われる定電流充電の制御を行う。定電流充電制御部22Cは、定電流充電中にリチウム硫黄固体電池1を流れる電流値を一定に制御する。
定電圧充電制御部22Dは、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に対して行われる定電圧充電の制御を行う。定電圧充電制御部22Dは、定電圧充電中にリチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧値を一定に制御する。
【0041】
図2は第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法を説明するための図である。
図2の縦軸は、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧を示している。
図2の横軸は、時刻を示している。
図2において、実線は、第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法における電圧と時刻との関係を示している。破線は、比較例のリチウム硫黄固体電池の充電方法における電圧と時刻との関係を示している。
第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、
図2に実線で示すように、定電流充電制御部22Cが、時刻t0に、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電流充電を開始する。時刻t0にリチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧は、値V1(例えば1[V])である。定電流充電制御部22Cは、時刻t1に、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電流充電を終了する。時刻t1にリチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧は、値V2(>V1)(例えば3[V])である。
定電圧充電制御部22Dは、時刻t1に、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電圧充電を開始する。定電圧充電制御部22Dは、時刻t2に、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電圧充電を終了する。リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧は、時刻t1から時刻t2までの期間中、定電圧充電制御部22Dによって一定値V2に維持される。
【0042】
つまり、第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、
図2に実線で示すように、充電装置2の定電流充電制御部22Cが、時刻t0から時刻t1までの期間中に、定電流充電工程を実行する。詳細には、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が値V2に到達するまで、定電流充電工程が実行される。
次いで、充電装置2の定電圧充電制御部22Dは、時刻t1から時刻t2までの期間中に、定電圧充電工程を実行する。すなわち、定電圧充電工程は、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が値V2に到達した後に実行される。
一方、比較例のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、
図2に破線で示すように、時刻t0から時刻t1までの期間中のみならず、時刻t1以降においても、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電流充電が行われる。その結果、時刻tAに、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が上限値Vthに到達してしまい、過充電(過電圧)状態になってしまう。そのため、比較例のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、リチウム硫黄固体電池1が劣化してしまうおそれがある。
【0043】
図3は第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法において充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流などを説明するための図である。詳細には、
図3(A)および
図3(B)の横軸は、時刻を示している。
図3(A)の縦軸は、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流を示している。
図3(B)の縦軸は、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される電力を示している。
上述したように、時刻t0から時刻t1までの期間中には、定電流充電工程が実行される。そのため、
図3(A)に示すように、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流は、一定値I1(>0)になる。次いで、定電圧充電工程が実行される時刻t1から時刻t2までの期間中には、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流値が、I1からゼロまで順次減少する。
その結果、
図3(B)に示すように、時刻t1から時刻t2までの期間中(定電圧充電中)に充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される電力の値P2は、時刻t0から時刻t1までの期間中(定電流充電中)に充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される電力の値P1よりも小さくなる。また、時刻t1から時刻t2までの期間中に充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される電力量の値W2は、時刻t0から時刻t1までの期間中に充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される電力量の値W1よりも小さくなる。
【0044】
本発明者は、鋭意研究において、定電流充電工程の後に、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流が減少する定電圧充電工程を実行することにより、リチウム硫黄固体電池1内におけるリチウムイオンの移動範囲が広がり、リチウム硫黄固体電池1の蓄電容量が増加することを見い出したのである。
【0045】
図4は第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法が適用されるリチウム硫黄固体電池1内におけるリチウムイオンの移動範囲の変化を説明するための図である。詳細には、
図4(A)は定電流充電中におけるリチウム硫黄固体電池1内のリチウムイオンの移動を矢印で示した図である。
図4(B)は定電圧充電中におけるリチウム硫黄固体電池1内のリチウムイオンの移動を矢印で示した図である。
定電流充電中には、
図4(A)に示すように、リチウムイオンが、硫黄正極11から、リチウム負極12と固体電解質13との境界面までしか移動することができない。
ところが、定電流充電の後に行われる定電圧充電中には、
図4(B)に示すように、リチウムイオンが、硫黄正極11から、リチウム負極12の内部にまで移動できるようになるのである。
つまり、定電圧充電中における固体電解質13からリチウム負極12へのリチウムイオンの流入量は、定電流充電中における固体電解質13からリチウム負極12へのリチウムイオンの流入量よりも大きい。
【0046】
図5は第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法の効果を説明するための図である。詳細には、
図5(A)および
図5(B)の横軸は、時刻を示している。
図5(A)の縦軸は、リチウム硫黄固体電池1の充電容量を示している。
図5(B)の縦軸は、リチウム硫黄固体電池1の固体電解質13の温度を示している。
図5(A)に示すように、定電流充電が行われる時刻t0から時刻t1までの期間中には、リチウム硫黄固体電池1の充電容量が、値SC1から値SC2まで増加する。
次いで、定電圧充電が行われる時刻t1から時刻t2までの期間中には、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が変化せず(
図2参照)、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流が減少する(
図3(A)参照)にもかかわらず、リチウム硫黄固体電池1の充電容量が値SC2から値SC3まで増加することを、本発明者は見い出したのである。
【0047】
第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、
図5(B)に実線で示すように、定電流充電が行われる時刻t0から時刻t1までの期間中に、固体電解質13の温度が、値T1から値T2に上昇する。
次いで、時刻t1から時刻t2までの期間中には、定電圧充電が行われ(
図2参照)、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流が減少する(
図3(A)参照)。その結果、
図5(B)に実線で示すように、固体電解質13の温度は、上限値Tthを超えない。
一方、比較例のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法と同様に、定電流充電が行われる時刻t0から時刻t1までの期間中に、固体電解質13の温度が、値T1から値T2に上昇する。
時刻t1以降においても、比較例のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電流充電が行われる。その結果、
図5(B)に破線で示すように、時刻tBに、固体電解質13の温度は上限値Tthを超えてしまう。
【0048】
図6は第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法による充電(定電流充電および定電圧充電)中における電圧と電流との関係を示す図である。
図6の縦軸は、定電流充電中および定電圧充電中にリチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧を示している。
図6の横軸は、定電流充電中および定電圧充電中に充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流を示している。
図6に示すように、第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法による充電中には、電圧が値V1と値V2との間で変動し、電流値がゼロとI1との間で変動する。詳細には、電圧値が小さい場合(
図2および
図3(A)の時刻t0から時刻t1までの期間)に、電流値は大きくなる。電圧値が大きい場合(
図2および
図3(A)の時刻t1から時刻t2までの期間)に、電流値は小さくなる。
【0049】
換言すれば、
図2および
図5(A)に示すように、定電流充電が終了する時刻t1に、リチウム硫黄固体電池1の充電容量は値SC2であり、リチウム硫黄固体電池1が本来有する充電容量(電気容量)にまだ到達していない。
図2に破線で示すように、仮に、時刻t1以降に定電流充電が継続される場合には、時刻tAに、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が上限値Vthに到達してしまい、過充電(過電圧)状態になる。その結果、リチウム硫黄固体電池1が劣化してしまうおそれがある。
そこで、第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、時刻t1から時刻t2までの期間に、定電圧充電が行われる。詳細には、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が上限値Vthを超えないように、微小な充電電流が、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される。そのため、第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法によれば、過電圧によるリチウム硫黄固体電池1の劣化を抑制しつつ、リチウム硫黄固体電池1の充電容量(電気容量)を値SC3(リチウム硫黄固体電池1が本来有する値)まで増加させることができる。
【0050】
詳細には、第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、
図2に示すように、定電流充電が行われる時刻t0から時刻t1までの期間中に、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が上昇する。その結果、リチウム硫黄固体電池1の内部抵抗が増加し、
図5(B)に示すように、リチウム硫黄固体電池1の固体電解質13の温度が上昇する。
次いで、時刻t1から時刻t2までの期間中に、定電圧充電が行われる。そのため、
図5(B)に実線で示すように、リチウム硫黄固体電池1の固体電解質13の温度の異常上昇が抑制される。また、固体電解質13の温度の不均一分布も抑制される。その結果、リチウム硫黄固体電池1の信頼性を向上させることができる。
【0051】
第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法の一例では、定電圧充電が行われる時刻t1から時刻t2までの期間中におけるリチウム硫黄固体電池1の内部抵抗が、所定範囲内のほぼ一定値に維持される。
また、第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法の一例では、定電圧充電が行われる時刻t1から時刻t2までの期間中に充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流値は、定電流充電が行われる時刻t0から時刻t1までの期間中に充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流値の2分の1から10分の1に設定される。
第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法の他の例では、定電圧充電が行われる時刻t1から時刻t2までの期間中に充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流値を、定電流充電が行われる時刻t0から時刻t1までの期間中に充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流値の2分の1から4分の1に設定してもよい。
【0052】
<第2実施形態>
以下、本発明のリチウム硫黄固体電池の充電方法の第2実施形態について、添付図面を参照して説明する。
第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法は、後述する点を除き、上述した第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法と同様である。従って、第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法と同様の効果を奏することができる。
【0053】
図7は第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法を説明するための図である。
図7の縦軸は、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧を示している。
図7の横軸は、時刻を示している。
図7において、実線は、第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法における電圧と時刻との関係を示している。破線は、比較例のリチウム硫黄固体電池の充電方法における電圧と時刻との関係を示している。
第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、
図7に実線で示すように、定電流充電制御部22Cが、時刻t00に、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電流充電を開始する。時刻t00にリチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧は、値V01(例えば1[V])である。定電流充電制御部22Cは、時刻t01に、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電流充電を終了する。時刻t01にリチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧は、値V02(>V01)(例えば2[V])である。
定電圧充電制御部22Dは、時刻t01に、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電圧充電を開始する。定電圧充電制御部22Dは、時刻t02に、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電圧充電を終了する。リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧は、時刻t01から時刻t02までの期間中、定電圧充電制御部22Dによって一定値V02に維持される。
定電流充電制御部22Cは、時刻t02に、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電流充電を開始する。定電流充電制御部22Cは、時刻t03に、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電流充電を終了する。時刻t03にリチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧は、値V03(>V02)(例えば3[V])である。
【0054】
つまり、第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、
図7に実線で示すように、充電装置2の定電流充電制御部22Cが、時刻t00から時刻t01までの期間中に、定電流充電工程を実行する。詳細には、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が値V02に到達するまで、定電流充電工程が実行される。
次いで、充電装置2の定電圧充電制御部22Dは、時刻t01から時刻t02までの期間中に、定電圧充電工程を実行する。すなわち、定電圧充電工程は、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が値V02に到達した後に実行される。この定電圧充電工程では、
図7に破線で示す比較例のリチウム硫黄固体電池の充電方法よりも、充電による発熱ロスが抑制される。
次いで、充電装置2の定電流充電制御部22Cは、時刻t02から時刻t03までの期間中に、第2定電流充電工程を実行する。詳細には、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が値V03に到達するまで、定電流充電工程が実行される。
一方、比較例のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、
図7に破線で示すように、時刻t00から時刻t01までの期間中のみならず、時刻t01以降においても、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電流充電が行われる。その結果、時刻tCに、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が上限値Vthに到達してしまい、過充電(過電圧)状態になってしまう。そのため、比較例のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、リチウム硫黄固体電池1が劣化してしまうおそれがある。
【0055】
図8は第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法による充電(定電流充電および定電圧充電)中における電圧と電流との関係を示す図である。
図8の縦軸は、定電流充電中および定電圧充電中にリチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧を示している。
図8の横軸は、定電流充電中および定電圧充電中に充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される充電電流を示している。
図8に示すように、第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法による充電中には、電圧が値V01と値V03との間で変動し、電流値がゼロとI01との間で変動する。詳細には、電圧値が小さい場合(
図7の時刻t00から時刻t01までの期間)に、電流値は大きくなる。電圧値が中程度の場合(
図7の時刻t01から時刻t02までの期間)に、電流値は中程度になる。電圧値が大きい場合(
図7の時刻t02から時刻t03までの期間)に、電流値は小さくなる。
【0056】
換言すれば、
図7に示すように、定電流充電が終了する時刻t01に、リチウム硫黄固体電池1の充電容量は、リチウム硫黄固体電池1が本来有する充電容量(電気容量)にまだ到達していない。
図7に破線で示すように、仮に、時刻t01以降に定電流充電が継続される場合には、時刻tCに、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が上限値Vthに到達してしまい、過充電(過電圧)状態になる。その結果、リチウム硫黄固体電池1が劣化してしまうおそれがある。
そこで、第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、時刻t01から時刻t02までの期間に、定電圧充電が行われる。詳細には、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が上限値Vthを超えないように、微小な充電電流が、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される。そのため、第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法によれば、過電圧によるリチウム硫黄固体電池1の劣化を抑制しつつ、リチウム硫黄固体電池1の蓄電容量(電気容量)を、リチウム硫黄固体電池1が本来有する値まで増加させることができる。
第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、リチウム硫黄固体電池1の蓄電容量(電気容量)が、リチウム硫黄固体電池1が本来有する値まで増加させられた後である時刻t02以降に、第2定電流充電工程が実行される。
【0057】
図9は第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法が適用されるリチウム硫黄固体電池1の蓄電容量などを説明するための図である。
図9の横軸は、サイクル数(リチウム硫黄固体電池1に対する充電回数)を示している。
図9の縦軸は、リチウム硫黄固体電池1の蓄電容量を示している。
図9において、「第2実施形態」は、第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法が適用されるリチウム硫黄固体電池1の蓄電容量とサイクル数との関係を示している。「比較例」は、比較例のリチウム硫黄固体電池の充電方法(
図7の破線参照)が適用されるリチウム硫黄固体電池1の蓄電容量とサイクル数との関係を示している。
図9に示すように、サイクル数(リチウム硫黄固体電池1に対する充電回数)が増加するに従って、リチウム硫黄固体電池1の蓄電容量は減少する。
第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、
図7に示すように、時刻t01から時刻t02までの期間に、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が上限値Vthを超えないように、定電圧充電によって、微小な充電電流が、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1に供給される。そのため、第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法によれば、
図9に示すように、定電圧充電が行われない比較例のリチウム硫黄固体電池の充電方法よりも、リチウム硫黄固体電池1の蓄電容量を大きくすることができる。
【0058】
<第3実施形態>
以下、本発明のリチウム硫黄固体電池の充電方法の第3実施形態について、添付図面を参照して説明する。
第3実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法は、後述する点を除き、上述した第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法と同様である。従って、第3実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法によれば、後述する点を除き、上述した第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法と同様の効果を奏することができる。
【0059】
図10は第3実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法を説明するための図である。
図10の縦軸は、第3実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法が適用されたリチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧を示している。
図10の横軸は、時刻を示している。
第2実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、
図7に実線で示すように、時刻t03に、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への定電流充電を終了する。
一方、第3実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、
図10に示すように、時刻t03以降においても、充電装置2からリチウム硫黄固体電池1への充電が行われる。
【0060】
詳細には、第3実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法では、
図10に示すように、リチウム硫黄固体電池1の電圧が値V02よりも高い値V03に到達する時刻t03まで、定電流充電が行われる。
次いで、時刻t03から時刻t04までの期間中に、定電圧充電が行われる。その期間中には、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧が、値V02よりも低い値V04に設定される。
次いで、時刻t04から時刻t05までの期間中に、リチウム硫黄固体電池1の両端にかかる電圧を値V04から値V05まで増加させる追加充電が行われる。
【0061】
第3実施形態のリチウム硫黄固体電池の充電方法によれば、時刻t03から時刻t05までの期間中の充電を行うことによって、その充電が行われない場合よりも、リチウム硫黄固体電池1の蓄電容量(電気容量)を増加させることができる。
【0062】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…リチウム硫黄固体電池、11…硫黄正極、12…リチウム負極、13…固体電解質、2…充電装置、21…電源部、22…制御部、22A…電圧検出部、22B…電流検出部、22C…定電流充電制御部、22D…定電圧充電制御部、CS…充電システム