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特許7035658マイクロレンズアレイ、光書き込み装置及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】マイクロレンズアレイ、光書き込み装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20220308BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20220308BHJP
   G02B 13/24 20060101ALI20220308BHJP
   G03G 15/04 20060101ALI20220308BHJP
   B41J 2/447 20060101ALI20220308BHJP
   B41J 2/45 20060101ALI20220308BHJP
   H04N 1/036 20060101ALI20220308BHJP
   G02B 13/22 20060101ALN20220308BHJP
【FI】
G02B3/00 A
G02B1/04
G02B13/24
G03G15/04 111
B41J2/447 101C
B41J2/45
H04N1/036
G02B13/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018047556
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2019159170
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】大木 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 英生
(72)【発明者】
【氏名】池田 和樹
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-245083(JP,A)
【文献】特開2016-225584(JP,A)
【文献】米国特許第05719706(US,A)
【文献】特開2009-216832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00
G02B 13/22
G02B 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
ガラス基板の少なくとも一方の主面に配設された複数の樹脂レンズと、を備え、
前記複数のレンズのうち、前記ガラス基板の1の主面上に配設された樹脂レンズは、第1の方向に配列されたレンズ列の複数列が、前記第1の方向とは異なる第2の方向に並設されてなり、
いずれかのレンズ列における樹脂レンズの芯厚、曲率半径および面形状が、他のレンズ列のそれと異なっている一方、
前記樹脂レンズは互いに樹脂体積が同じである
ことを特徴とするマイクロレンズアレイ。
【請求項2】
前記樹脂レンズは、レンズ形状域が大きい樹脂レンズほど芯厚が小さい
を特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項3】
前記樹脂レンズ同士で、レンズ形状域と最大芯厚との積が同じである
を特徴とする請求項1または2に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項4】
前記ガラス基板の一方の主面上に配設されている第1の樹脂レンズと、他方の主面上において前記第1の樹脂レンズと対応する位置に配設されている第2の樹脂レンズとは、互いに樹脂体積が同じである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項5】
感光体を露光して、静電潜像を形成する光書き込み装置であって、
請求項1から4の何れかに記載のマイクロレンズアレイと、
前記各樹脂レンズに対応する位置に発光点が配設された光源基板と、を備え、
前記発光点から前記感光体までの距離は、当該発光点に対応する樹脂レンズが属するレンズ列が同じ発光点同士では同じであり、当該発光点に対応する樹脂レンズが属するレンズ列が異なる発光点どうしで異なっている
ことを特徴とする光書き込み装置。
【請求項6】
前記光源基板は前記第1の方向に発光点を配列した単位基板を複数集積したものであって、
同じ単位基板に配設された発光点に対応する樹脂レンズは同じレンズ列に属し、異なる単位基板に配設された発光点に対応する樹脂レンズは異なるレンズ列に属する
ことを特徴とする請求項5に記載の光書き込み装置。
【請求項7】
前記発光点はOLEDである
ことを特徴とする請求項5または6に記載の光書き込み装置。
【請求項8】
請求項5から7の何れかに記載の光書き込み装置を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイ、光書き込み装置及び画像形成装置に関し、特に、マイクロレンズアレイの歪みに起因する画像劣化を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成する光書き込み装置としてライン光学型の光書き込み装置を用いたものがある。ライン光学型の光書き込み装置は、マイクロレンズアレイを用いて多数の発光素子の出射光を感光体上に結像させる。
【0003】
このマイクロレンズアレイは、例えば、ガラス基板上に多数の樹脂レンズを形成したものである。樹脂は硬化する際に収縮するため、樹脂の収縮によってガラス基板が反ると、感光体上での結像状態が変化して、画像品質に影響を与える恐れがある。
【0004】
例えば、ガラス基板の面外方向の反りについては、ガラス基板の両面に同一形状の樹脂レンズを形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このようにすれば、ガラス基板に作用する樹脂の収縮力がガラス基板の両面で同じになるので、反りを防止することができる。
【0005】
また、ガラス基板の面内方向の反りについては、樹脂レンズの個数が十分多い場合には、樹脂レンズの形状をランダムに変化させることによって、反りを抑制することができる(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-118423号公報
【文献】特開2005-148427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、発光素子を周期的に2次元配列した光書き込み装置においては発光素子から感光体までの距離が発光素子どうしで異なる場合がある。例えば、主走査方向に延設された発光素子列が副走査方向に複数並設されており、発光素子列どうしで発光素子から感光体までの距離が異なっている場合、当該発光素子列に対応させて、主走査方向に延設された樹脂レンズ列を副走査方向に発光素子列と同数並設すると、同じ樹脂レンズ列に属する樹脂レンズどうしは形状が同じになる一方、異なる樹脂レンズ列に属する樹脂レンズどうしは形状を異ならせる必要がある。
【0008】
このような場合には、樹脂レンズどうしで形状を同一にすることもできなければ、樹脂レンズの形状をランダムに変化させることもできないため、上記従来技術を適用することによってガラス基板の反りを抑制することができない。
【0009】
ガラス基板において面内方向の反りが発生すると、樹脂レンズどうしの位置関係が変化することによって、発光素子と発光素子に対応する樹脂レンズの位置関係がばらつくので、樹脂レンズごとに結像性能がばらついてしまう。樹脂レンズの形状の変化に周期性があると、結像性能のばらつきによる濃度変化にも周期性が表れて視認し易くなるので、画像品質の低下を免れない。
【0010】
本発明は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、ガラス基板の歪みに起因する画像劣化を抑制することができるマイクロレンズアレイ、光書き込み装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るマイクロレンズアレイは、ガラス基板と、ガラス基板の少なくとも一方の主面に配設された複数の樹脂レンズと、を備え、前記複数のレンズのうち、前記ガラス基板の1の主面上に配設された樹脂レンズは、第1の方向に配列されたレンズ列の複数列が、前記第1の方向とは異なる第2の方向に並設されてなり、いずれかのレンズ列における樹脂レンズの芯厚、曲率半径および面形状が、他のレンズ列のそれと異なっている一方、前記樹脂レンズは互いに樹脂体積が同じであることを特徴とする。
【0012】
この場合において、前記樹脂レンズは、レンズ形状域が大きい樹脂レンズほど芯厚が小さいのが望ましい。
【0013】
また、前記樹脂レンズ同士で、レンズ形状域と最大芯厚との積が同じであってもよい。
【0014】
また、前記ガラス基板の一方の主面上に配設されている第1の樹脂レンズと、他方の主面上において前記第1の樹脂レンズと対応する位置に配設されている第2の樹脂レンズとは、互いに樹脂体積が同じであってもよい。
【0015】
また、本発明に係る光書き込み装置は、感光体を露光して、静電潜像を形成する光書き込み装置であって、本発明に係るマイクロレンズアレイと、前記各樹脂レンズに対応する位置に発光点が配設された光源基板と、を備え、前記発光点から前記感光体までの距離は、当該発光点に対応する樹脂レンズが属するレンズ列が同じ発光点同士では同じであり、当該発光点に対応する樹脂レンズが属するレンズ列が異なる発光点どうしで異なっていることを特徴とする。
【0016】
また、前記光源基板は前記第1の方向に発光点を配列した単位基板を複数集積したものであって、同じ単位基板に配設された発光点に対応する樹脂レンズは同じレンズ列に属し、異なる単位基板に配設された発光点に対応する樹脂レンズは異なるレンズ列に属してもよい。
【0017】
また、前記発光点はOLEDであってもよい。
【0018】
また、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る光書き込み装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このようにすれば、ガラス基板の歪みに起因する画像劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の主要な構成を示す図である。
図2】光書き込み装置100の主要な構成を示す図である。
図3】光源基板230の外観と、発光点群の主要な構成を示す図である。
図4】マイクロレンズアレイ200における樹脂レンズの配置を示す平面図である。
図5】マイクロレンズアレイ200における樹脂レンズの配置の変形例を示す平面図である。
図6】樹脂レンズ211、212および213の断面形状を例示する図である。
図7】樹脂レンズ毎に共役長、芯厚、レンズ形状域、芯厚とレンズ形状域の乗算値、乗算値の比を例示する表である。
図8】マイクロレンズアレイ200における樹脂レンズの配置の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るマイクロレンズアレイ、光書き込み装置及び画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1]画像形成装置の構成
まず、本実施の形態に係る画像形成装置の構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、画像形成装置1は、所謂タンデム方式のカラープリンターであって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)各色のトナー像を形成する作像部110Y、110M、110C及び110Kを備えている。作像部110Y、110M、110C及び110Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kを有している。
【0023】
感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの周囲には外周面に沿って順に帯電装置102Y、102M、102C及び102K、光書き込み装置100Y、100M、100C及び100K、現像装置103Y、103M、103C及び103K、1次転写ローラー104Y、104M、104C及び104K及びクリーニング装置105Y、105M、105C及び105Kが配設されている。
【0024】
帯電装置102Y、102M、102C及び102Kは感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの外周面を一様に帯電させる。光書き込み装置100Y、100M、100C及び100Kは、いわゆるOLED-PH(Organic Light Emitting Diode - Print Head)であって、感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの外周面を露光して静電潜像を形成する。
【0025】
現像装置103Y、103M、103C及び103KはYMCK各色のトナーを供給して静電潜像を現像し、YMCK各色のトナー像を形成する。1次転写ローラー104Y、104M、104C及び104Kは感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kが担持するトナー像を中間転写ベルト106へ静電転写する(1次転写)。
【0026】
クリーニング装置105Y、105M、105C及び105Kは、1次転写後に感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの外周面上に残留する電荷を除電すると共に残留トナーを除去する。なお、以下において、作像部110Y、110M、110C及び110Kに共通する構成について説明する際にはYMCKの文字を省略する。
【0027】
中間転写ベルト106は、無端状のベルトであって、2次転写ローラー対107及び従動ローラー108、109に張架されており、矢印B方向に回転走行する。この回転走行に合わせて1次転写することによって、YMCK各色のトナー像が互いに重ね合わされカラートナー像が形成される。中間転写ベルト106はカラートナー像を担持した状態で回転走行することによって、カラートナー像を2次転写ローラー対107の2次転写ニップまで搬送する。
【0028】
2次転写ローラー対107を構成する2つのローラーは互いに圧接されることによって2次転写ニップを形成する。これらのローラー間には2次転写電圧が印加されている。中間転写ベルト106によるカラートナー像の搬送にタイミングを合わせて給紙トレイ120から記録シートSが供給されると、2次転写ニップにおいてカラートナー像が記録シートSに静電転写される(2次転写)。
【0029】
記録シートSは、カラートナー像を担持した状態で定着装置130まで搬送され、カラートナー像を熱定着された後、排紙トレイ140上へ排出される。
【0030】
画像形成装置1は、更に制御部150を備えている。制御部150は、PC(Personal Computer)等の外部装置から印刷ジョブを受け付けると、画像形成装置1の動作を制御して画像形成を実行させる。
[2]光書き込み装置100の構成
次に、光書き込み装置100の構成について説明する。
【0031】
光書き込み装置100は、マイクロレンズアレイ200と光源基板230とを備えており、マイクロレンズアレイ200と光源基板230は不図示のホルダーによって感光体ドラム101からの所定の距離になるように支持されている。
【0032】
光源基板230は、図3に示すように、単位基板231、232および233を光軸方向に積層したものであって、単位基板231、232および233にはそれぞれ発光点群241、242および243が主走査方向に沿って列設されており、発光点群列251、252および253を構成する。発光点群243は発光点303を千鳥状に配列したものであり、発光点群241、242もまた同様である。
【0033】
本実施の形態においては、発光点303としてOLED(Organic Light Emitting Diode)を用いる。OLEDは発光領域を面状に形成することができるため、OLEDの発光領域の面積と光学倍率との乗算値を設定することによって、当該OLEDに対応する結像点におけるビーム径を設定することができる。従って、共役長が異なることで設計的に光学倍率を発光点毎に変えなくてはならない場合でも、光学倍率に合わせてOLEDの発光領域の面積および形状を最適化すれば、結像点におけるビーム径を均一化することができるという利点がある。なお、発光点としてOLED以外の発光素子を用いてもよい。
【0034】
一般的には、発光点は全て同一平面内に配設されるが、発光基板における配線の制約、製造上の制約、発光基板を配置する際の空間的な制約等によって発光点は全て同一平面内に配設することが適わない場合には、本実施の形態のように、複数の平面に分けて発光点を配設するのが有効である。
【0035】
また、光源基板230が発光点群列251、252および253毎に単位基板231、232および233に分かれているので、単位基板231、232および233毎に個別に共役長を調整することができる。従って、マイクロレンズアレイ200や光源基板230の製造時に発生した誤差を単位基板231、232および233毎に個別に修正することができる。
【0036】
また、共役長だけでなく、シフト成分や傾き成分の誤差についても単位基板231、232および233毎に個別に修正することができる。従って、これらの誤差に起因する画質の劣化を抑制することができるので、高い画像品質を達成することができる。
【0037】
また、OLEDは発光点の面積が比較的大きくなることに加えて、多数のOLEDをアレイ状に配列することから、光源基板230を単一基板にすると大型化してしまう。一方、上記のように複数の単位基板231、232および233基板どうしで重なり合う箇所にOLED以外の配線等の回路を配設すれば、光軸方向から見た光源基板230の面積を小型化することができる。
[3]マイクロレンズアレイ200の構成
次に、マイクロレンズアレイ200の構成について説明する。
【0038】
マイクロレンズアレイ200は、図2に示すように、ガラス基板220の両面に樹脂レンズ211、212および213を形成したレンズアレイと、ガラス基板250の両面に樹脂レンズ251を形成したレンズアレイとを組み合わせたテレセントリック光学系である。樹脂レンズ211、212および213はそれぞれ発光点群241、242および243の出射光を平行光にし、当該平行光を樹脂レンズ251が感光体ドラム101の外周面上に結像させる。
【0039】
単位基板231、232および233からガラス基板220までの距離は単位基板231、232および233毎に異なる一方、ガラス基板250から感光体ドラム101までの距離は樹脂レンズ251の如何に関わらず一定している。このため、樹脂レンズ251はすべて同一形状である。従って、樹脂レンズ251が収縮したり膨張したりしても、樹脂レンズどうしで収縮量や膨張量が等しいので、ガラス基板250は反らない。一方、ガラス基板220上に形成された樹脂レンズ211、212および213は互いに形状が異なっている。
【0040】
図4に示すように、樹脂レンズ211、212および213は、それぞれ主走査方向に列設されており、樹脂レンズ列401、402および403を構成する。
【0041】
樹脂レンズ列401、402および403は互いに副走査方向に並設されている。また、樹脂レンズ列401、402および403は互いに主走査方向にずれており、樹脂レンズ列401、402および403の各主走査方向端部の樹脂レンズ211、212および213の光軸中心を結んだ方向Qは樹脂レンズ211、212および213の列設方向P(主走査方向)に斜交する。図4においては、方向P、Qの交差角度が30度である場合を例示したが、方向P、Qが平行でなければ、交差角度が90度(図5)など、30度以外の角度であってもよい。
【0042】
樹脂レンズ列401、402および403は互いに異なる単位基板231、232および233上に形成されているため、発光点群241、242および243から感光体ドラム101の外周面までの距離(共役長)L1、L2およびL3は発光点群列251、252および253毎に異なっている。このため、樹脂レンズ211、212および213の芯厚、曲率半径および面形状もまた樹脂レンズ列401、402および403毎に異なっている。
【0043】
しかしながら、樹脂レンズ211、212および213は樹脂体積が互いに同じになっている。また、図6に示すように、樹脂レンズ210、211および213は、ガラス基板220の樹脂レンズ形成面221に形成された樹脂レンズ部分211a、212aおよび213aと、ガラス基板220の裏側の樹脂レンズ形成面222上の対応する位置に形成された樹脂レンズ部分211b、212bおよび213bとで樹脂体積が同じになっている。
【0044】
樹脂レンズ211、212および213のパラメーターのうち樹脂体積に対する影響が大きいパラメーターは芯厚Taとレンズ形状域φである。芯厚Taは樹脂レンズ211、212および213の光軸における厚さであり、レンズ形状域φはガラス基板上で樹脂レンズが形状を有する領域の外径である。
【0045】
本実施の形態においては、樹脂レンズ211、212および213毎に共役長が異なるため、Fナンバーが異なり、従ってレンズ形状域φも異なる。具体的には、共役長が長いほどレンズ形状域φが大きくなり、共役長が短いほどレンズ形状域φが小さくなる。
【0046】
一方、芯厚Taは、レンズ形状域φとは異なって、マイクロレンズアレイ200の光学特性に影響を与えない範囲内で、ある程度設計的に制御することができる。このため、レンズ形状域φが大きい樹脂レンズは芯厚Taを薄く、レンズ形状域φが小さい樹脂レンズは芯厚Taを厚くすれば、樹脂レンズ211、212および213どうしで光軸を含む断面積のばらつきを小さくすることができる。
【0047】
樹脂レンズどうしの断面積比の2乗は体積比に等しいので、断面積比を1に近づければ、体積比が1に近づき、樹脂レンズどうしの体積差が抑制される。本実施の形態においては、樹脂レンズ211、212および213の断面積比が、芯厚Taとレンズ形状域φの乗算値の比に概ね等しいので、当該乗算値の比が1になるように、芯厚Taが設定されている。このようにすれば、樹脂レンズ211、212および213の樹脂体積の差が最小化されるので、ガラス基板220の歪みを抑制する効果を最大化することができる。
【0048】
図7は、本実施の形態に係る共役長L1、L2およびL3、樹脂レンズ211、212および213の芯厚Taとレンズ形状域φを示す表である。図7の表には、併せて芯厚Taとレンズ形状域φの乗算値、並びに樹脂レンズ211の乗算値に対する各レンズの乗算値の比が示されている。図7の表のように、共役長とレンズ形状域φに合わせて芯厚Taを設定すれば、乗算値の比を1にすることができるので、樹脂レンズ211、212および213の樹脂体積を揃えることができる。従って、ガラス基板220の歪みを抑制して、優れた画質を達成することができる。
[4]ガラス基板220の反りの抑制
樹脂レンズ211、212および213は射出成形によって形成される。樹脂は冷却硬化時に収縮し、その収縮力は樹脂の体積に比例する。一方の樹脂レンズ形成面上に形成された樹脂レンズの樹脂体積が、他方の樹脂レンズ形成面上に形成された樹脂レンズの樹脂体積よりも大きい場合には、当該一方の樹脂レンズ形成面上に形成された樹脂レンズの収縮力が、他方の樹脂レンズ形成面上に形成された樹脂レンズの収縮力よりも大きくなる。その結果、当該一方の樹脂レンズ形成面が窪むようにガラス基板220が面外方向へ反ってしまう。
【0049】
また、樹脂レンズ形成面どうしで対応する樹脂レンズ部分の樹脂体積が同じであればガラス基板220に作用する収縮力が樹脂レンズ形成面どうしで相殺されるためガラス基板220の面外方向への反りを抑制することができる。しかしながら、同じ樹脂レンズ形成面上に形成される樹脂レンズどうしで樹脂体積が異なっている場合には、ガラス基板220の面内方向に反りが発生する。また、硬化後においても温度上昇に起因する膨張量も樹脂体積に比例するため、ガラス基板220の反りが同じように発生し得る。
【0050】
このため、芯厚、曲率半径および面形状が異なる樹脂レンズ211、212および213どうしで樹脂体積を同じにすれば、硬化時における樹脂レンズ211、212および213の収縮量や、温度上昇による樹脂レンズ211、212および213の膨張量の分布がガラス基板上で等方的になる。従って、当該収縮量や膨張量の偏りに起因するガラス基板220の変形が相似的になるので、ガラス基板220の歪みを抑制して、画像劣化を防止することができる。
【0051】
なお、共役長が異なるためにレンズ形状が異なる樹脂レンズ211、212および213どうしで樹脂体積を同一にした結果、光学系の倍率や結合効率や収差は異なってしまう場合には、発光点間隔や発光量等の光源側のパラメータを適宜調整するれば、画質を改善することができる。
[5]変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(5-1)上記実施の形態においては、発光点群列と樹脂レンズ列とがいずれも3列である場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。
【0052】
例えば、図8に示すように、ガラス基板220上に4列の樹脂レンズ列801、802、803および804を設けてもよい。4列の樹脂レンズ列801、802、803および804はそれぞれ方向Pに沿って樹脂レンズ811、812、813および814を列設したものであって、方向Pにおける一端の樹脂レンズの光軸中心を結んだ方向Qは方向Pに直交している。
【0053】
このように樹脂レンズ列が3列以外であっても、樹脂レンズどうしで樹脂体積を同じにすることでマイクロレンズアレイ200の歪みを抑制することができる。
(5-2)上記実施の形態においては、ガラス基板220の両面に樹脂レンズを配設する場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて片面だけに樹脂レンズを配設してもよい。この場合においても、樹脂レンズどうしで樹脂体積を同じにすれば、ガラス基板220の面内方向における反りを抑制することができる。
(5-3)上記実施の形態においては、複数の発光点群列や複数の樹脂レンズ列が副走査方向に等間隔に配設されている場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、複数の発光点群列や複数の樹脂レンズ列の副走査方向における間隔は等間隔でなくてもよい。これらの間隔は画像形成装置1内における光書き込み装置100の設置位置などの制約条件に応じて設定するのが望ましい。
(5-4)上記実施の形態においては、発光点群列ごとに共役長が異なる場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて、共役長を同じくする発光点群列が含まれていてもよい。例えば、図3において発光点群列251、252は互いに異なる単位基板231、232に配設されているが、これに代えて1つの単位基板に配設してもよい。このようにすれば光軸方向における光書き込み装置100の寸法の制約が厳しい場合であっても、本発明を適用して、上記の効果を得ることができる。
(5-5)上記実施の形態においては、単位基板231、232および233の副走査方向における一方の端部が、それぞれ光軸方向において感光体ドラム101から遠い単位基板に搭載された発光点の出射光を遮らないように後退している場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次にようにしてもよい。
【0054】
例えば、光軸方向において感光体ドラム101から遠い単位基板に搭載された発光点の出射光を遮らないように、当該単位基板よりも光軸方向において感光体ドラム101に近い単位基板に貫通孔を設けてもよいし、当該出射光の光路部分を透明してもよい。このような構成によっても、光源基板230を多層化することができるので、副走査方向における光源基板230のサイズを小型化することができる。また、このような構成においても、本発明を適用することによって同様の効果を得ることができる。
(5-6)上記実施の形態においては、画像形成装置1がタンデム方式のカラープリンターである場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、タンデム方式以外の方式のカラープリンターであってもよいし、モノクロプリンターであってもよい。また、スキャナーを備えた複写装置や更にファクシミリ通信機能を備えたファクシミリ装置といった単機能機、或いはこれらの機能を兼ね備えた複合機(MFP: Multi-Function Peripheral)に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るマイクロレンズアレイ、光書き込み装置及び画像形成装置は、マイクロレンズアレイの歪みに起因する画像劣化を防止することができる装置として有用である。
【符号の説明】
【0056】
1……………………………画像形成装置
100………………………光書き込み装置
101………………………感光体ドラム
200………………………マイクロレンズアレイ
211、212、213…樹脂レンズ
220………………………ガラス基板
221、222……………樹脂レンズ形成面
230………………………光源基板
231、232、233…単位基板
241、242、243…発光点群
303………………………発光点
L1、L2、L3…………共役長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8