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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20220308BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018061044
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019174583
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 一夫
(72)【発明者】
【氏名】山添 尚
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170702(WO,A1)
【文献】特開2013-083675(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147570(WO,A1)
【文献】特開2017-181931(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0069281(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が照射され直線偏光が透過する表示素子を有する表示装置において、
前記表示素子の一部の領域を透過した光を第1の表示光とし、前記表示素子の他の領域を透過した光を第2の表示光とし、
前記第1の表示光及び前記第2の表示光の光路上に、前記直線偏光の振動方向によって投射された光を反射させ又は透過させる共通の偏光板が設けられ、
前記第2の表示光の光路上であって前記表示素子と前記偏光板との間には、前記第2の表示光における直線偏光の振動方向を変える第1の波長板が配置され、
前記第1の表示光は、前記偏光板の表面に投射されると共に、前記偏光板によって反射され、
前記第2の表示光は、前記偏光板の裏面に投射されると共に、前記偏光板を透過し、
前記偏光板を透過した第2の表示光の光路上には、前記第2の表示光における直線偏光を円偏光に変える第2の波長板が配置されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
光が照射され直線偏光が透過する表示素子を有する表示装置において、
前記表示素子を透過した直線偏光を円偏光に変えるλ/4板が配置され、
前記表示素子の一部の領域を透過した光を第1の表示光とし、前記表示素子の他の領域を透過した光を第2の表示光とし、
前記第1の表示光及び前記第2の表示光の光路上に、前記λ/4板を透過した光を反射させ又は透過させる共通の偏光板が設けられ、
前記第2の表示光の光路上であって前記λ/4板と前記偏光板との間には、前記第2の表示光を反射させる反射部が設けられ、
前記λ/4板を透過した第1の表示光は、前記偏光板の表面に直接的に投射されると共に、前記偏光板によって反射され、
前記λ/4板を透過した第2の表示光は、前記反射部において反射されて前記偏光板の裏面に投射されると共に、前記偏光板を透過することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記表示素子に隣接して、前記第1の表示光及び/又は前記第2の表示光を屈折させるプリズムが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被投影部材に光を投射し情報を提供することができる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、フロントガラス等の被投影部材に光を投射させ運転者に必要な情報を提供するヘッドアップディスプレイ装置(表示装置)が搭載されることがある。表示装置は、フロントガラスに向かって光を投射させるために、光学素子を用いて光源から出射された光を反射しフロントガラスまで導く。このような表示装置の従来技術として特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるような、表示装置は、光が照射され直線偏光が透過する表示素子と、この表示素子の一部の領域を透過した光が表面に入射するハーフミラーと、表示素子の他の領域を透過した光をハーフミラーの裏面に向かって反射させる反射ミラーと、を有している。
【0004】
一部の領域を透過した光は、ハーフミラーで反射され、フロントガラスに到達し第1の投影像を視認させる。他の領域を透過した光は、反射ミラーで反射され、ハーフミラーを透過して、フロントガラスに到達し第2の投影像を視認させる。
【0005】
他の領域を透過した光の光路は、一部の領域を透過した光の光路よりも長い。これにより、第2の投影像は、運転者を基準として、第1の投影像よりも前方で視認される。即ち、光路長を異ならせることにより、虚像の投影される位置を異ならせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-214008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の表示装置では、ハーフミラーが用いられている。ハーフミラーは、照射された光の一部を反射させ、残りの一部を透過させる。このため、表示素子を透過した光に対して、フロントガラスに到達する光は弱くなる。即ち、光エネルギーの利用効率が悪い。
【0008】
本発明は、光エネルギーの利用効率の向上を図ることができる表示装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1による発明によれば、光が照射され直線偏光が透過する表示素子を有する表示装置において、
前記表示素子の一部の領域を透過した光を第1の表示光とし、前記表示素子の他の領域を透過した光を第2の表示光とし、
前記第1の表示光及び前記第2の表示光の光路上に、前記直線偏光の振動方向によって投射された光を反射させ又は透過させる共通の偏光板が設けられ、
前記第2の表示光の光路上であって前記表示素子と前記偏光板との間には、前記第2の表示光における直線偏光の振動方向を変える第1の波長板が配置され、
前記第1の表示光は、前記偏光板の表面に投射されると共に、前記偏光板によって反射され、
前記第2の表示光は、前記偏光板の裏面に投射されると共に、前記偏光板を透過することを特徴とする表示装置が提供される。
【0010】
記偏光板を透過した第2の表示光の光路上には、前記第2の表示光における直線偏光を円偏光に変える第2の波長板が配置されている。
【0011】
請求項による発明によれば、光が照射され直線偏光が透過する表示素子を有する表示装置において、
前記表示素子を透過した直線偏光を円偏光に変えるλ/4板が配置され、
前記表示素子の一部の領域を透過した光を第1の表示光とし、前記表示素子の他の領域を透過した光を第2の表示光とし、
前記第1の表示光及び前記第2の表示光の光路上に、前記λ/4板を透過した光を反射させ又は透過させる共通の偏光板が設けられ、
前記第2の表示光の光路上であって前記λ/4板と前記偏光板との間には、前記第2の表示光を反射させる反射部が設けられ、
前記λ/4板を透過した第1の表示光は、前記偏光板の表面に直接的に投射されると共に、前記偏光板によって反射され、
前記λ/4板を透過した第2の表示光は、前記反射部において反射されて前記偏光板の裏面に投射されると共に、前記偏光板を透過することを特徴とする表示装置が提供される。
【0012】
請求項に記載のごとく、好ましくは、前記表示素子に隣接して、前記第1の表示光及び/又は前記第2の表示光を屈折させるプリズムが設けられている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、第1の表示光及び第2の表示光の光路上に、直線偏光の振動方向によって投射された光を反射させ又は透過させる共通の偏光板が設けられている。更に、第2の表示光の光路上であって表示素子と偏光板との間には、第2の表示光における直線偏光の振動方向を変える第1の波長板が配置されている。これにより、第1~第2の表示光は、偏光板に到達した際、それぞれ振動方向が異なる。結果、第1の表示光は、偏光板の表面に投射されると共に偏光板によって反射され、第2の表示光は、偏光板の裏面に投射されると共に偏光板を透過する。即ち、表示素子を透過してフロントガラスに到達するまでの間において、表示素子を透過した光の光量の減少を防ぐことができる。言い換えると、光エネルギーの利用効率の向上を図ることができる表示装置を提供することができる。
【0014】
請求項に係る発明では、偏光板を透過した第2の表示光の光路上には、第2の表示光における直線偏光を円偏光に変える第2の波長板が配置されている。第2の波長板に第2の表示光を通過させることで、第2の波長板は、円偏光にすることができる。仮に、第2の表示光を円偏光に変えないとすれば、第2の表示光は、第2の投影像が投影されるまでの過程の光の反射における、入射面に対して垂直方向に振動している直線偏光(P偏光)のままである。このP偏光は、境界面に対して反射する際の反射率が低い。このため、第2の投影像の輝度が低くなってしまう虞がある。つまり、第2の波長板を円偏光にすることで、第2の表示光の反射率が低くなるのを防ぐことができる。この結果、第1~第2の投影像に生じる輝度差を抑制することができる。
【0015】
請求項に係る発明では、表示素子を透過した直線偏光を円偏光に変えるλ/4板が配置されている。また、第1の表示光及び第2の表示光の光路上には、λ/4板を透過した光を反射させ又は透過させる共通の偏光板も設けられている。更に、第2の表示光の光路上であってλ/4板と偏光板との間には、第2の表示光を反射させる反射部が設けられている。偏光板は、λ/4板を通過して円偏光になった第1~第2の表示光において、光の進行方向に対する光の回転する向きによって光を反射又は透過する。反射部は、偏光板に到達する前の第2の表示光を偏光板に向かって反射する。反射部によって反射された第2の表示光は、進行している方向に対して、回転する向きが変わる。これらの結果、第1の表示光は、偏光板の表面に投射されると共に反射されることが可能となり、第2の表示光は、偏光板の裏面に投射されると共に透過することが可能となる。即ち、表示素子を透過してフロントガラスに到達するまでの間において、表示素子を透過した光の光量の減少を防ぐことができる。言い換えると、光エネルギーの利用効率の向上を図ることができる表示装置の提供することができる。
【0016】
請求項に係る発明では、表示素子に隣接して、第1の表示光及び/又は第2の表示光を屈折させるプリズムが設けられている。ここで、第1の表示光及び/又は第2の表示光がプリズムを透過すると、第1の表示光及び/又は第2の表示光の光路は変わる。言い換えると、プリズムを利用して第1~第2の表示光の光路を意図的に変化させることができる。これにより、表示装置内部における光学素子(表示素子等)の配置箇所を変えることができる。即ち、配置設計の自由度を高めることができる。また、プリズムを用いることで、遠方に対応する表示像を斜め表示とすることができ、遠方であることを強調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1による表示装置の断面図である。
図2】実施例1にかかる発明の作用を説明する図である。
図3】本発明の実施例2による表示装置の断面図である。
図4】実施例2にかかる発明の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Upは上、Dnは下、Frは前、Rrは後を示している。
<実施例1>
【0019】
図1を参照する。表示装置10は、例えば、車両Veに搭載され、光を車両VeのフロントガラスF(被投影部材F)に投射する。運転者Mnは、フロントガラスFに投射された光から、車速やナビゲーション情報等の情報を得ることができる。
【0020】
表示装置10は、ケース20と、このケース20内部に固定された表示ユニット30と、この表示ユニット30から出射する光を前方に向かって反射させる平面鏡12と、この平面鏡12に反射された光をフロントガラスFに向かって反射させる凹面鏡13と、表示ユニット30を制御する制御部14と、からなる。
【0021】
表示装置10は、フロントガラスFに第1の表示光L1及び第2の表示光L2を投射する。運転者Mnは、フロントガラスFに第1~第2の表示光L1、L2が投射されることで、フロントガラスFの前方に虚像である第1~第2の投影像I1、I2が投影されているように認識する。運転者Mnは、第1~第2の投影像I1、I2から、車速や目的地への進路を把握することができる。
【0022】
ケース20は、下ケース21に上ケース22が被せられることによって構成されている。ケース20は、箱形状を呈し、外部からの光を遮ることができる合成樹脂によって形成されている。
【0023】
下ケース21は、下ケース底面部21aと、この下ケース底面部21aの側縁から上方に立ち上げられた下ケース壁部21bと、を有している。
【0024】
上ケース22は、上ケース天井部22aと、この上ケース天井部22aの側縁から下げられた上ケース壁部22bと、を有している。
【0025】
表示ユニット30は、光を出射可能な光源31と、この光源31から出射された光が透過する表示素子32と、この表示素子32に隣接して設けられると共に表示素子32を透過した第2の表示光L2を屈折させるプリズム33と、第2の表示光L2の光路上に配置され第2の表示光L2を反射する反射鏡34と、この反射鏡34で反射した第2の表示光L2が透過する第1の波長板35と、第1~第2の表示光L1、L2の光路上に配置され直線偏光の振動方向によって投射された光を反射させ又は透過させる偏光板36と、この偏光板36を反射及び透過した直線偏光を円偏光に変える第2の波長板37と、を有している。
【0026】
表示素子32からフロントガラスFまでにおいて、第2の表示光L2の光路は、第1の表示光L1の光路よりも長くなっている。これにより、運転者Mnは、第1の投影像I1よりも前方に第2の投影像I2が投影されているように認識する。
【0027】
光源31は、基板31aにLED製のランプ31bが実装されてなる。なお、光源31は、表示素子32を照射することができれば、LED製のランプ31bを用いたものに限られない。
【0028】
表示素子32には、例えば、TFT(Thin Film Transistor)液晶パネル等の透過型表示素子が採用される。表示素子32は、光源31から出射された様々な方向に振動している光のうち、一方向に振動している光のみを透過させる。言い換えると、表示素子32を透過した第1~第2の表示光L1、L2は、一方向のみに振動している直線偏光となっている。
【0029】
ここで、第1の表示光L1とは、光源31が出射した光であって、表示素子32の上部の領域(一部の領域)を透過した光をいう。第2の表示光L2とは、光源31が出射した光であって、表示素子32の下部の領域(他の領域)を透過した光をいう。
【0030】
反射鏡34は、樹脂製の基材34aと、この基材34aの表面に光を反射可能な金属が薄膜状に形成された反射部34bと、からなるフルミラーである。
【0031】
反射部34bは、例えば、アルミニウム等の金属によってなる。反射部34bは、第2の表示光L2を第1の波長板35に向かって反射させる。
【0032】
第1の波長板35は、反射鏡34と偏光板36との間に設けられている。第1の波長板35は、第2の表示光L2における直線偏光の振動方向を変える。第1の波長板35には、例えば、光波にλ/2の位相差を与えるλ/2板が採用される。
【0033】
なお、第1の波長板35は、第2の表示光L2の光路上であって、表示素子32と偏光板36との間に設けられていればよい。理由は、後述する。
【0034】
偏光板36には、例えば、特定の振動方向の光波のみを透過させ、それ以外を反射させるワイヤーグリッド偏光板を採用することができる。偏光板36は、偏光板36の表面に投射された第1の表示光L1を第2の波長板37に向かって反射させ、第1の波長板35を通過した第2の表示光L2を透過させる。第1の表示光L1は、偏光板36の上面(表面)に投射されると共に偏光板36によって反射される。第2の表示光L2は偏光板36の下面(裏面)に投射されると共に偏光板36を透過する。
【0035】
第2の波長板37には、例えば、光波にλ/4の位相差を与えるλ/4板を採用することができる。第2の波長板37は、偏光板36を透過した第1の表示光L1の光路及び第2の表示光L2の光路上に跨って設けられている。第2の波長板37は、直線偏光である第1及び第2の表示光L1、L2を円偏光に変えることができる。
【0036】
なお、第2の波長板37は、第2の表示光L2の光路上のみに設けることもできる。この場合、第2の波長板37は、第2の表示光L2のみを円偏光に変える。
【0037】
平面鏡12は、上ケース22に固定された平面鏡支持部12aと、この平面鏡支持部12aによって支持され光を反射可能な平面鏡面部12bと、を有している。
【0038】
平面鏡面部12bは、例えば、平板状の基材表面に光を反射可能な金属が薄膜状に形成されたフルミラーによって構成される。
【0039】
凹面鏡13は、下ケース21に固定され凹状に形成された凹面鏡支持部13aと、この凹面鏡支持部13aの表面に形成され光を反射可能な凹面鏡面部13bと、を有している。
【0040】
凹面鏡面部13bは、平面鏡12によって反射された光をフロントガラスFに向かって反射させる。凹面鏡面部13bを介することで、第1~第2の投影像I1、I2をより大きな像として認識させることができる。
【0041】
制御部14は、光源31の点滅を制御する。更に、制御部14は、表示素子32を電圧制御し、表示素子32内部にある結晶の分子配列を変化させる。制御部14が表示素子32を制御することで、運転者Mnが視認する任意の像I1、I2が形成される。
【0042】
次に、本発明の実施例1の表示装置10の作用を説明する。
【0043】
表示装置10は、光源31から出射された第1~第2の表示光L1、L2をフロントガラスFに投射させる。これにより、運転者Mnは、フロントガラスF前方に第1~第2の投影像I1、I2が投影されているように認識する。
【0044】
ここで、第1の表示光L1とは、光源31が出射した光であって、表示素子32の上部の領域(一部の領域)を透過した光をいう。第2の表示光L2とは、光源31が出射した光であって、表示素子32の下部の領域(他の領域)を透過した光をいう。
【0045】
図2を参照する。図2には、表示ユニット30の拡大図が示されると共に光源31から出射される第1~第2の表示光L1、L2の光路が示されている。
【0046】
ここで、様々な方向に振動している光のうち、一方向に振動している光のみが表示素子32を透過可能である。表示素子32を透過した第1の表示光L1(a1)及び第2の表示光L2(a4)は、一方向にのみ振動している直線偏光である。
【0047】
第1の表示光L1(a1)は、偏光板36の表面に到達する。一方、第2の表示光L2は、プリズム33を通過して反射部34bに到達し(a4)、反射部34bから第1の波長板35(λ/2板)に向かって反射する(a5)。この後、第2の表示光L2は、第1の波長板35を透過し、偏光板36に到達する(a6)。
【0048】
第1の波長板35は、例えば、直線偏光の振動方向を90°変える。第1の波長板35を透過した第2の表示光L2(a6)は、直線偏光の振動方向が変えられている。このため、第1の波長板35に到達した、第2の表示光L1、L2(a1、a6)は、互いに振動方向が90°異なる直線偏光になっている。例えば、第1の表示光L1は、偏光板36に対する入射面において水平方向に振動する直線偏光(S偏光)となっており、第2の表示光L2は、偏光板36に対する入射面において垂直方向に振動する直線偏光(P偏光)となっている。
【0049】
その後、第1の表示光L1は、偏光板36によって第2の波長板37に向かって反射される(a2)。一方、第2の表示光L2は、偏光板36を透過する(a7)。第2の表示光L2が進む先には、第2の波長板37が設けられている。このため、第1~第2の表示光L2は、第2の波長板37(λ/4板)に到達することとなる。
【0050】
第2の波長板37を通過した第2の表示光L1、L2(a3、a8)は、円偏光になる。そして、円偏光になった第2の表示光L1、L2(a3、a8)がフロントガラスF(図1参照)に投射される。これにより、運転者Mnは、第1~第2の投影像I1、I2が投影されているように視認する。
【0051】
次に、本発明の実施例1の表示装置10の効果を説明する。
【0052】
図1を参照する。表示装置10は、第1の表示光L1及び第2の表示光L2の光路上に、直線偏光の振動方向によって投射された光を反射させ又は透過させる共通の偏光板36が設けられている。更に、第2の表示光L2の光路上であって反射部34bと偏光板36との間には、第2の表示光L2における直線偏光の振動方向を変える第1の波長板35が配置されている。これにより、第1~第2の表示光L1、L2は、偏光板36に到達した際、それぞれ振動方向が異なる。結果、第1の表示光L1は、偏光板36の表面に投射されると共に偏光板36によって反射され、第2の表示光L2は、偏光板36の裏面に投射されると共に偏光板36を透過する。即ち、表示素子32を透過してフロントガラスFに到達するまでの間において、表示素子32を透過した光の光量の減少を防ぐことができる。言い換えると、光エネルギーの利用効率の向上を図ることができる表示装置10を提供することができる。
【0053】
なお、第2の表示光L2の振動方向は、偏光板36に達するまでの間に変えられていればよい。このため、第1の波長板35は、表示素子32及び偏光板36の間に設けられていればよい、ということができる。
【0054】
更に、偏光板36を透過した第2の表示光L2の光路上には、第2の表示光L2における直線偏光を円偏光に変える第2の波長板37が配置されている。第2の波長板37に第2の表示光L2を通過させることで、第2の波長板37は、円偏光にすることができる。仮に、第2の表示光L2を円偏光に変えないとすれば、第2の表示光L2は、第2の投影像I2が投影されるまでの過程の光の反射における、入射面に対して垂直方向に振動している直線偏光(P偏光)のままである。このP偏光は、境界面に対して反射する際の反射率が低い。このため、第2の投影像I2の輝度が低くなってしまう虞がある。つまり、第2の波長板37を円偏光にすることで、第2の表示光L2の反射率が低くなるのを防ぐことができる。この結果、第1~第2の投影像I1、I2に生じる輝度差を抑制することができる。
【0055】
更に、表示素子32に隣接して、第2の表示光L2を屈折させるプリズム33が設けられている。第2の表示光L2がプリズム33を透過すると、第2の表示光L2の光路は変わる。言い換えると、プリズム33を利用して第2の表示光L2の光路を意図的に変化させることができる。これにより、表示装置10内部における表示素子32等の配置箇所を変えることができる。即ち、配置設計の自由度を高めることができる。また、プリズムを用いることで、遠方に対応する表示像を斜め表示とすることができ、遠方であることを強調することができる。
【0056】
なお、表示素子32に隣接して第1の表示光L1を屈折させるようにプリズム33を設けても良い。つまり、第1の表示光L1の光路を意図的に変化させることで、配置設計の自由度を高めることもできる。さらには、プリズム33によって第1の表示光L1及び第2の表示光L2の両方を屈折させても良い。このとき、プリズム33は、第1の表示光L1及び第2の表示光L2を同じ方向に屈折させるものでもよいし、それぞれを異なる方向に屈折させるものであっても良い。
<実施例2>
【0057】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
【0058】
図3を参照する。図3には、実施例2による表示装置10Aが示されており、上記図1に対応させて表している。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0059】
実施例2による表示ユニット30Aは、光を出射可能な光源31と、この光源31から出射された光が透過する表示素子32と、この表示素子32に隣接して設けられると共に第1~第2の表示光L1、L2の光路上に配置されたλ/4板37Aと、このλ/4板37Aに隣接して設けられると共に第2の表示光L2の光路上に配置され第2の表示光L2を屈折させるプリズム33と、このプリズム33を透過した第2の表示光L2の光路上に配置され第2の表示光L2を反射させる反射鏡34Aと、第1の表示光L1及び第2の表示光L2の光路上であってλ/4板37Aを透過した光を反射又は透過させる共通の偏光板36Aと、を有する。
【0060】
λ/4板37Aは、表示素子32を透過した第1~第2の表示光L1、L2(直線偏光)を円偏光に変える。
【0061】
反射鏡34Aは、樹脂製の基材34Aaと、この基材34Aaの表面に光を反射可能な金属が薄膜状に形成された反射部34Abと、からなるフルミラーである。
【0062】
反射部34Abは、λ/4板37Aを透過した第2の表示光L2を、偏光板36Aに向かって反射させるように設けられている。反射部34Abは、例えば、合成樹脂の基材表面に光を反射可能な金属(アルミニウム等)が薄膜状に形成されてなる。
【0063】
第2の表示光L2は、反射部34Abで反射することで、進行方向に対しての円偏光の回転方向が変わる。
【0064】
偏光板36Aは、第1~第2の表示光L1、L2の進行方向に対しての円偏光の回転方向に応じて、第1の表示光L1及び第2の表示光L2を反射又は透過させる。偏光板36Aは、例えば、右回りの円偏光を反射させ、左回りの円偏光を透過させる。偏光板36Aには、特定方向に回転している円偏光(例えば、左方向に回転)のみを透過できる光波長選択フィルム(WAVISTA(登録商標))等を備えた偏光制御板を採用することができる。
【0065】
次に、本発明の実施例2による表示装置10Aの作用を説明する。
【0066】
図4を参照する。図4には、表示ユニット30Aの拡大図及び第1~第2の表示光L1、L2の光路が示されている。表示ユニット30Aには、透過した直線偏光を円偏光に変えるλ/4板37Aが、表示素子32に隣接すると共に第2の表示光L2の光路上に設けられている。このため、表示素子32を透過してλ/4板37Aを通過した、直線偏光の第1の表示光L1(b1)及び第2の表示光L2(b3)は、円偏光になっている。この時、第1~第2の表示光L1、L2は、それぞれ進行方向に対して右回りの円偏光となっている。
【0067】
その後、第1の表示光L1(b1)は、偏光板36Aに投射される。一方、第2の表示光L2(b3)は、反射部34Abで反射されると共に円偏光が進行方向に対して左回りとなり、偏光板36Aに投射される(b4)。
【0068】
このため、第1の表示光L1(b1)は、偏光板36Aに反射され(b2)、第2の表示光L2(b4)は、偏光板36Aを透過する(b5)。その後、第1の表示光L1(b2)及び第2の表示光L2(b5)は、円偏光のままフロントガラスF(図3参照)に投射される。
【0069】
次に、本発明の実施例2による表示装置10Aの効果を説明する。
【0070】
図3を参照する。表示装置10Aは、表示素子32を透過した直線偏光を円偏光に変えるλ/4板37Aが配置されている。また、第1の表示光L1及び第2の表示光L2の光路上には、λ/4板37Aを透過した光を反射させ又は透過させる共通の偏光板36Aも設けられている。更に、第2の表示光L2の光路上であってλ/4板37Aと偏光板36Aとの間には、第2の表示光L2を反射させる反射部34Abが設けられている。偏光板36Aは、λ/4板37Aを通過して円偏光になった第2の表示光L1、L2において、光の進行方向に対する光の回転する向きによって光を反射又は透過する。反射部34Abは、偏光板36Aに到達する前の第2の表示光L2を偏光板36Aに向かって反射する。反射部34Abによって反射された第2の表示光L2は、進行している方向に対して、回転する向きが変わる。これらの結果、第1の表示光L1は、偏光板36Aの表面に投射されると共に反射されることが可能となり、第2の表示光L2は、偏光板36Aの裏面に投射されると共に透過することが可能となる。即ち、表示素子32を透過してフロントガラスFに到達するまでの間において、表示素子32を透過した光の光量の減少を防ぐことができる。言い換えると、光エネルギーの利用効率の向上を図ることができる表示装置10Aの提供することができる。
【0071】
更に、λ/4板37Aに隣接して、第2の表示光L2を屈折させるプリズム33が設けられている。第2の表示光L2がプリズム33を透過すると、第2の表示光L2の光路は変わる。言い換えると、プリズム33を利用して第2の表示光L2の光路を意図的に変化させることができる。これにより、表示装置10A内部における表示素子32等の配置箇所を変えることができる。即ち、配置設計の自由度を高めることができる。
【0072】
なお、λ/4板37Aに隣接して第1の表示光L1を屈折させるようにプリズム33を設けても良い。つまり、第1の表示光L1の光路を意図的に変化させることで、配置設計の自由度を高めることもできる。さらには、プリズム33によって第1の表示光L1及び第2の表示光L2の両方を屈折させても良い。このとき、プリズム33は、第1の表示光L1及び第2の表示光L2を同じ方向に屈折させるものでもよいし、それぞれを異なる方向に屈折させるものであっても良い。
【0073】
従って、このように構成された実施例2による表示装置10Aにおいても、本発明所定の効果を得ることができる。
【0074】
なお、本発明による表示装置10、10Aが搭載される車両Veは、四輪車の他、二輪車や三輪車であってもよい。更には、車両Ve以外の乗り物や建機等にも適用可能である。
【0075】
更に、実施例において示している平面鏡12、12A及び凹面鏡13、13Aは、必須の構成要素ではない。つまり、これらを必要に応じてこれらを廃しても良い。
【0076】
また、実施例において被投影部材FをフロントガラスFとして説明した。しかしながら、被投影部材Fは、第1~第2の表示光L1、L2を投射することができるものであれば良く、フロントガラスFに限られない。本発明は、いわゆるコンバイナを被投影部材Fとした表示装置10、10Aにも適用することができる。
【0077】
従って、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の表示装置10、10Aは、車両Veに搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0079】
10、10A…表示装置
32…表示素子
33…プリズム
34a、34Aa…反射部
35…第1の波長板(λ/2板)
36、36A…偏光板
37、37A…第2の波長板(λ/4板)
Ve…車両
Mn…運転者
F…フロントガラス
L1…第1の表示光
L2…第2の表示光
図1
図2
図3
図4