(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】液晶パネル封止材樹脂組成物、および該液晶パネル封止材樹脂組成物で端部を封止したフィルム液晶パネル
(51)【国際特許分類】
C08G 75/045 20160101AFI20220308BHJP
C08F 216/16 20060101ALI20220308BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20220308BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
C08G75/045
C08F216/16
C09K3/10 B
C09K3/10 Z
G02F1/1339 505
(21)【出願番号】P 2018068203
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】特許業務法人雄渾
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【氏名又は名称】浅見 保男
(72)【発明者】
【氏名】二戸 吉徳
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 聖
(72)【発明者】
【氏名】藤村 俊伸
【審査官】佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-054084(JP,A)
【文献】特開2017-002171(JP,A)
【文献】国際公開第2003/073158(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00 - 75/32
79/00 - 79/14
C09K 3/10 - 3/12
G02F 1/133 - 1/1334
1/1339- 1/1341
1/1347
C08F 216/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式1で表される化合物と、(B)下記式2で表される化合物と、(C)2~6個のアリル基を有するアリル化合物と、(D)光重合開始剤を含有し、
(A)100質量部に対して、(B)を1~20質量部、(C)を50~200質量部、(D)を0.1~10質量部の割合で含有する液晶パネル用封止材。
【化1】
(式中のaは
3~6の整数であり、R
1は
3~6価で炭素数10~60の有機基である。)
【化2】
(式中R
2は水素原子またはメチル基である。R
3はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基である。)
【請求項2】
(A)下記式1で表される化合物と、(B)下記式2で表される化合物と、(C)2~6個のアリル基を有するアリル化合物と、(D)光重合開始剤と、(A’)下記式3で表される化合物を含有し、
(A)と(A’)の合計の含有量に対する(A’)の含有量の割合[(A’)/((A)+(A’))]が1~60質量%であり、
(A)と(A’)の合計量100質量部に対して、(B)を1~20質量部、(C)を50~200質量部、(D)を0.1~10質量部の割合で含有する液晶パネル用封止材。
【化3】
(式中のaは
3~6の整数であり、R
1は
3~6価で炭素数10~60の有機基である。)
【化4】
(式中R
2は水素原子またはメチル基である。R
3はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基である。)
【化5】
(式中のbは1~5の整数であり、cは1~5の整数であり、bとcの和は2~6である。R
4は2価~6価で、置換基を有していてもよい炭素数4~30の有機基である。R
5は下記式4または式5で表される2価の官能基である。R
6はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基である。)
【化6】
(式中のR
7は水素原子またはメチル基である。)
【化7】
(式中のR
8は水素原子またはメチル基である。)
【請求項3】
(A’)が下記式6で表される、請求項2に記載の液晶パネル用封止材。
【化8】
(式中のdは1~5の整数であり、eは0~2の整数であり、fは1~5の整数であり、dとeとfの和は6である。R
9は下記式7で表される6価の官能基であり、R
10はメチレン基、エチレン基またはイソプロピレン基であり、R
11は下記式4または式5で表される2価の官能基であり、R
12はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基であり、R
13はメチル基またはエチル基である。)
【化9】
【化10】
(式中のR
7は水素原子またはメチル基である。)
【化11】
(式中のR
8は水素原子またはメチル基である。)
【請求項4】
(A’)が下記式8で表される、請求項2に記載の液晶パネル用封止材。
【化12】
(式中のgは1~3の整数であり、hは0または1であり、iは1~3の整数であり、gとhとiの和は4である。R
14は、メチレン基、エチレン基またはイソプロピレン基であり、R
15は下記式4または式5で表される2価の官能基であり、R
16はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基であり、R
17はメチル基またはエチル基である。)
【化13】
(式中のR
7は水素原子またはメチル基である。)
【化14】
(式中のR
8は水素原子またはメチル基である。)
【請求項5】
(A’)が下記式9で表される、請求項2に記載の液晶パネル用封止材。
【化15】
(式中のjは1または2であり、kは1または2であり、jとkの和は3である。R
18は下記式10で表される3価の官能基であり、R
19は、下記式4または式5で表される2価の官能基であり、R
20は、メチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基である。)
【化16】
(式中のR
21はメチレン基、エチレン基、イソプロピレン基である。)
【化17】
(式中のR
7は水素原子またはメチル基である。)
【化18】
(式中のR
8は水素原子またはメチル基である。)
【請求項6】
フィルム液晶パネルに対して用いられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶パネル用封止材。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶パネル用封止材で封止された端部を有する、フィルム液晶パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止材が未硬化の状態で液晶と接触しても液晶を汚染せず、また、硬化物が基材への追随性に優れる液晶パネル用封止材に関し、更に、前記液晶パネル用封止材を封止材として用いたフィルム液晶パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶滴下工法は液晶パネルの製造方法として一般的である。液晶滴下工法は、基材の一方に封止材を塗布しパターンを形成し、該パターンの枠内に液晶を滴下、封止材が未硬化の状態でもう一対の基材を高真空下で貼りあわせた後封止材を硬化するという工法である。液晶滴下工法に使用される封止材は製造過程で発生するアウトガスにより接着性や硬化物の透明性が悪くなるという問題や、液晶の汚染を引き起こし電圧印加時に液晶の配向が乱れてしまうという問題があった。
【0003】
これらの問題に対し、チオール基を有するチオールモノマーと炭素-炭素二重結合を有するエンモノマーを含有する封止材を用いることで、アウトガスの発生を抑制し接着性および硬化物の透明性を向上できることが知られている(特許文献1)。また、特許文献1では、封止材硬化後は湿熱環境下で封止材と液晶とが接触した状態でも液晶の配向乱れが発生しないことを確認している。
【0004】
しかしながら、特許文献1の封止材では、未硬化状態で液晶と接触した場合、封止材成分が液晶と混ざり合ってしまうため、液晶汚染性が悪く、封止材が硬化前に液晶と長い間接する製造条件では液晶を汚染してしまうという問題があった。
また、近年ではフレキシブルな液晶パネルの開発が進んでおり、このような液晶パネルに使用される基板には、剛直なガラスに代わり柔軟なフィルムが用いられている。このフィルム基材を基板としたフレキシブルな液晶パネルに使用される封止材には、硬化物が高い柔軟性を持ち基材に十分に追随することが要求される。
しかしながら、特許文献1の封止材は、得られた硬化物の柔軟性が不十分で柔軟性のある基材に追随することが難しいのもであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その課題は、封止材が未硬化の状態で液晶と接触しても液晶を汚染せず、また、硬化物が基材への追随性に優れる液晶パネル用封止材を提供すること、および上記液晶パネル用封止材を封止材として用いたフィルム液晶パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねる中で、ヒドロキシル基を有する特定のアクリルアミドと、特定のアリル化合物とを組合せて用いる際に、特定の置換チオール化合物の使用に着目して検討を進めた結果、これらを用いた特定の組成を有する液晶パネル用封止材が、上記の課題を解決することの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の〔1〕~〔7〕である。
【0008】
〔1〕(A)下記式1で表される化合物と、(B)下記式2で表される化合物と、(C)2~6個のアリル基を有するアリル化合物と、(D)光重合開始剤を含有し、
(A)を100質量部に対して、(B)を1~20質量部、(C)を50~200質量部、(D)を0.1~10質量部の割合で含有する液晶パネル用封止材。
【化1】
(式中のaは1~6の整数であり、R
1は1~6価で炭素数10~60の有機基である。)
【化2】
(式中R
2は水素原子またはメチル基である。R
3はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基である。)
〔2〕(A)上記式1で表される化合物と、(B)上記式2で表される化合物と、(C)2~6個のアリル基を有するアリル化合物と、(D)光重合開始剤と、(A’)下記式3で表される化合物を含有し、
(A)と(A’)の合計の含有量に対する(A’)の含有量の割合[(A’)/((A)+(A’))]が1~60質量%であり、(A)と(A’)の合計量を100質量部に対して、(B)を1~20質量部、(C)を50~200質量部、(D)を0.1~10質量部の割合で含有する液晶パネル用封止材。
【化3】
(式中のbは1~5の整数であり、cは1~5の整数であり、bとcの和は2~6である。R
4は2価~6価で、置換基を有していてもよい炭素数4~30の有機基である。R
5は下記式4または式5で表される2価の官能基である。R
6はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基である。)
【化4】
(式中のR
7は水素原子またはメチル基である。)
【化5】
(式中のR
8は水素原子またはメチル基である。)
〔3〕(A’)が下記式6で表される、前記の〔2〕に記載の液晶パネル用封止材。
【化6】
(式中のdは1~5の整数であり、eは0~2の整数であり、fは1~5の整数であり、dとeとfの和は6である。R
9は下記式7で表される6価の官能基であり、R
10はメチレン基、エチレン基またはイソプロピレン基であり、R
11は下記式4または式5で表される2価の官能基であり、R
12はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基であり、R
13はメチル基またはエチル基である。)
【化7】
【化8】
(式中のR
7は水素原子またはメチル基である。)
【化9】
(式中のR
8は水素原子またはメチル基である。)
〔4〕(A’)が下記式8で表される、前記の〔2〕に記載の液晶パネル用封止材。
【化10】
(式中のgは1~3の整数であり、hは0または1であり、iは1~3の整数であり、gとhとiの和は4である。R
14は、メチレン基、エチレン基またはイソプロピレン基であり、R
15は下記式4または式5で表される2価の官能基であり、R
16はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基であり、R
17はメチル基またはエチル基である。)
【化11】
(式中のR
7は水素原子またはメチル基である。)
【化12】
(式中のR
8は水素原子またはメチル基である。)
〔5〕(A’)が下記式9で表される、前記の〔2〕に記載の液晶パネル用封止材。
【化13】
(式中のjは1または2であり、kは1または2であり、jとkの和は3である。R
18は下記式10で表される3価の官能基であり、R
19は、下記式4または式5で表される2価の官能基であり、R
20は、メチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基である。)
【化14】
(式中のR
21はメチレン基、エチレン基、イソプロピレン基である。)
【化15】
(式中のR
7は水素原子またはメチル基である。)
【化16】
(式中のR
8は水素原子またはメチル基である。)
〔6〕フィルム液晶パネルに対して用いられる、前記の〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の液晶パネル用封止材。
〔7〕前記の〔6〕の液晶パネル用封止材で封止された端部を有するフィルム液晶パネル。
【0009】
本発明において「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリル基を有する化合物とメタクリル基を有する化合物の双方を含む総称を意味し、「(メタ)アクリルアミド」、「(メタ)アクリル基」等も同様である。本発明において数値範囲を示す「○○~××」とは、別途記載が無い限り、その下限値(「○○」)や上限値(「××」)を含む概念である。すなわち、正確には「○○以上××以下」を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶パネル用封止材は、耐液晶汚染性が高く封止材が未硬化の状態で液晶と接触しても液晶を汚染せず、また、硬化物が基材への追随性に優れる液晶パネル用封止材、および上記液晶パネル用封止材を封止材として用いたフィルム液晶パネルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について詳しく説明する。本発明の硬化性樹脂組成物は、下記(A)、(B)、(C)、(D)を必須成分とし、任意に(A)中にさらに(A’)を含有する液晶パネル用封止材である。
【0012】
<(A)>
本発明に用いる(A)は、下記式1で表される化合物である。
【化17】
(式中のaは1~6の整数であり、R
1は1~6価で炭素数10~60の有機基である。)
【0013】
(A)は、1種のみを単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。このような化合物を含有することで、他成分との間でチオールーエン反応が進行し、硬化性を高めることができる。また、硬化物は柔軟性が高く、基材追随性を高めることができる。更には、(A)を含有する組成物は他成分との架橋ネットワークの形成に優れるため硬化物はバリア性に優れ、湿熱試験後の液晶の配向乱れを防ぐことができる。
式中のaは水分バリア性を高め、湿熱試験後の液晶汚染を抑えることができる観点から3~6個が好ましく、より好ましくは4~6個である。式中のaが7個以上になると、硬化収縮が大きくなり、硬化後の密着力が低下するため好ましくない。また、R1の炭素数が多くなると架橋密度が下がりバリア性が低下してしまう。R1の炭素数は10~60であり、下限値としては、好ましくは10以上であり、より好ましくは15以上であり、さらに好ましくは20以上である。上限値としては、好ましくは50以下であり、40以下であり、さらに好ましくは30以下である。
【0014】
有機基とは、C、Si、N、P、O、Sといった元素により構成される基であり、繰り返し単位を有する重合体であってもよい。また、その構造中に、ケトン基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオエーテル基、イソシアヌレート基等の基を含んでもよい。
【0015】
R1としては、例えば、カルボニルオキシエチルイソシアヌレート基、カルボニルオキシトリメチロールプロピル基、カルボニルオキシトリメチロールエチル基、カルボニルオキシペンタエリスリトール基等が挙げられる。
更に、式1で表される化合物として、具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、トリス-[(3-メルカプトプロピオモルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、等が挙げられる。
その中でも、他成分との架橋ネットワークの形成に優れるため、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート、トリス-[(3-メルカプトプロピオモルオキシ)-エチル]-イソシアヌレートが好ましい。
【0016】
(A)としては、市販品を用いてもよく、また合成したものを用いてもよい。
合成の方法としては、例えば、ペンタエリスリトール等の多価アルコールに対して、3-メルカプトプロピオン酸等のメルカプト基含有エステルを反応させてエステル交換させることで得ることができる。
【0017】
<(B)>
本発明に用いる(B)は、下記式2で表される化合物である。
【化18】
(式中R
2は水素原子またはメチル基である。R
3はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基である。)
【0018】
(B)は、1種のみを単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。このような化合物を含有することで、硬化物を強靭化し、基材への追随性を高めることができる。また、組成物の液晶への溶解性が低下し、液晶の汚染を防ぐことが出来る。一方、水酸基を有しない(メタ)アクリルアミド化合物を用いた場合、組成物の未硬化の状態での液晶への溶解性が低下せず、液晶の汚染を防ぐことが難しい。更には、(B)を含有する組成物は水素結合性を有する官能基を有するため、水素結合による架橋ネットワークを形成でき、硬化物はバリア性に優れ、湿熱試験後の液晶の配向乱れを防ぐことができる。
式2中のR2は水素原子またはメチル基であり、硬化性が高いという観点から水素原子が好ましい。また、R3はメチレン基、エチレン基、イソプロピレン基であり、組成物の液晶への溶解性を更に低下させ、液晶の汚染をより防ぐことができるという観点からメチレン基、またはエチレン基が好ましい。
【0019】
(B)として、具体的には、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシメチルメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ヒドロキシイソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシイソプロピルメタクリルアミドが挙げられる。
【0020】
<(C)>
本発明に用いる(C)は、2~6個のアリル基を有するアリル化合物である。(C)は、1種のみを単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。(C)は好ましくは、下記式11で表される構造を有する。(C)を含有することで、硬化物の柔軟性が高くなり、基材追随性を高めることができる。また、(B)の相溶化材として働き、組成物の未硬化の状態での液晶の汚染を防ぐことが出来る。硬化物のバリア性が向上し湿熱試験後の液晶汚染を抑えることができる。更には、(C)を含有する組成物は他成分との架橋ネットワークの形成に優れるため硬化物はバリア性に優れ、湿熱試験後の液晶の配向乱れを防ぐことができる。
【0021】
【化19】
(式中のlは2~6の整数である。R
22は、水素原子またはメチル基である。R
23は炭素数2~14のエーテル酸素(-O-)と炭化水素基からなる基、イソシアヌレートと炭化水素からなる基、グリコールウリル基と炭化水素からなる基、またはビスフェノールA骨格を有し更にエーテル酸素または水酸基または炭化水素からなる基である。)
【0022】
式中のlは硬化物の柔軟性を増し追随性を高める観点から2~5個が好ましく、より好ましくは2~3個である。式中のlが7個以上になると、硬化収縮が大きくなり、追随性が低下する。また、式中のlが1個の場合は、架橋ネットワーク形成に劣りバリア性が低下し、湿熱試験後の配向乱れを起こしてしまう。また、水分バリア性を高め湿熱試験後の配向乱れを抑えることができる観点からはR23にイソシアヌレートと炭化水素からなる基、グリコールウリル基と炭化水素からなる基、またはビスフェノールA骨格を有し更にエーテル酸素または水酸基または炭化水素からなる基を用いたものが好ましい。また、硬化物の追随性を高める観点からは、炭素数2~14のエーテル酸素(-O-)と炭化水素基からなる基、ビスフェノールA骨格を有し更にエーテル酸素または水酸基または炭化水素からなる基が好ましい。更には、水分バリア性と追随性の両立の点からビスフェノールA骨格を有し更にエーテル酸素または水酸基または炭化水素からなる基が好ましい。
【0023】
lが2個である化合物としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルエステル、イソフタル酸ジアリルエステル、フタル酸ジアリルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジアリルエステル、ジアリルメチルグリシジルイソシアヌレート、マグノロール、ジアリルジフェニルシラン、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、2,2’-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3-ジアリル-5-(2,3-エポキシプロパン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、1,3-ジアリル-5-メチル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン等が挙げられる。
【0024】
lが3個以である化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、1,3,4,6テトラアリルグリコールウリル、1,3,4,6テトラアリル-3a-メチルグリコールウリル、2,2-ビス(4-アリルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリルー4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、等が挙げられる。
その中でも、他成分との架橋ネットワークの形成に優れるため、2,2-ビス(4-アリルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリルー4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0025】
<(D)>
本発明に用いる(D)である光重合開始剤は、上記(A)、上記(B)、上記(C)、下記(A’)成分、およびその他に重合性化合物が添加される場合はその重合性化合物との光による硬化反応を促進するために添加され、硬化性組成物の硬化に必要な光照射を少なくすることができる。(D)は1種のみを単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤等があげられる。光ラジカル重合開始剤は、反応時間を短縮する際に用いることが好ましく、光カチオン重合開始剤は、屈曲性を向上させる際に用いることが好ましく、光アニオン重合開始剤は、接着性を付与する際に用いることが好ましい。
【0026】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0027】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、シクロプロピルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、2-(3,4-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート等が挙げられる。
【0028】
光アニオン重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン o-ベンゾイルオキシム、ニフェジピン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン、2-ニトロフェニルメチル4-メタクリロイルオキシピペリジン-1-カルボキシラート、1,2-ジイソプロピル-3-〔ビス(ジメチルアミノ)メチレン〕グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5,-テトラメチルビグアニジウム n-ブチルトリフェニルボラート等が挙げられる。
【0029】
<(A’)>
本発明の液晶パネル用封止材は、さらに、下記式3で表される化合物(A’)を含んでいてもよい。
【化20】
(式中のbは1~5の整数であり、cは1~5の整数であり、bとcの和は2~6である。R
4は2価~6価で、置換基を有していてもよい炭素数4~30の有機基である。R
5は下記式4または式5で表される2価の官能基である。R
6はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基である。)
【化21】
(式中のR
7は水素原子またはメチル基である。)
【化22】
式5
(式中のR
8は水素原子またはメチル基である。)
【0030】
(A’)は硬化反応に寄与するチオール基を有する。チオール基が多いと架橋性が増すため、水分バリア性が高まり湿熱試験後の液晶の配向乱れを防ぐことができる観点からはbは3~5が好ましく、より好ましくは4~5である。また、チオール基と(メタ)アクリルアミド基とが結合したチオエーテル基により(B)との相溶性をより増すことができ、湿熱試験後の液晶の配向乱れをより防ぐことができる。更には硬化後の架橋密度を程よく低下するためバリア性を保ったまま硬化物の柔軟性が向上しより追随性をより高めることができる。これらの観点からcは1~2が好ましい。また、硬化後の架橋密度が下がりバリア性が低下してしまうため、R4の炭素数は4~22が好ましく、より好ましくは4~20である。
【0031】
さらに、(A’)は下記式6で表される化合物であることが好ましい。
【化23】
(式中のdは1~5の整数であり、eは0~2の整数であり、fは1~5の整数であり、dとeとfの和は6である。R
9は下記式7で表される6価の官能基であり、R
10はメチレン基、エチレン基またはイソプロピレン基であり、R
11は下記式4または式5で表される2価の官能基であり、R
12はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基であり、R
13はメチル基またはエチル基である。)
【化24】
【化25】
(式中のR
7は水素原子またはメチル基である。)
【化26】
(式中のR
8は水素原子またはメチル基である。)
【0032】
チオール基が多いと架橋性が増すため、水分バリア性が高まり湿熱試験後の液晶の配向乱れを防ぐことができる観点からは、dは3~5が好ましく、より好ましくは4~5である。また、チオール基と(メタ)アクリルアミド基と結合したチオエーテル基により(B)との相溶性をより増すことができ、湿熱試験後の液晶の配向乱れをより防ぐことができる。更には硬化後の架橋密度を程よく低下するためバリア性を保ったまま硬化物の柔軟性が向上しより追随性をより高めることができる。これらの観点からfは1~2が好ましい。R11が上記式4で表される官能基の場合、硬化物の柔軟性がより向上し、追随性を高めることができる。R11が上記式5で表される官能基の場合、液晶へ溶解性を低下でき、より液晶の汚染を防ぐことができる。R12はメチレン基、エチレン基、イソプロピレン基であり、(C)の溶解性を更に増し、湿熱試験後の液晶の配向乱れをより防ぐことができるという観点からメチレン基、またはエチレン基が好ましい。
【0033】
さらに、(A’)は下記式8で表される化合物であることが好ましい。
【化27】
(式中のgは1~3の整数であり、hは0または1であり、iは1~3の整数であり、gとhとiの和は4である。R
14は、メチレン基、エチレン基またはイソプロピレン基であり、R
15は下記式4または式5で表される2価の官能基であり、R
16はメチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基であり、R
17はメチル基またはエチル基である。)
【化28】
(式中のR
7は水素原子またはメチル基である。)
【化29】
(式中のR
8は水素原子またはメチル基である。)
【0034】
チオール基が多いと架橋性が増すため、水分バリア性が高まり湿熱試験後の液晶の配向乱れを防ぐことができる観点からは、gは2~3が好ましく、より好ましくは3である。また、チオール基と(メタ)アクリルアミド基と結合したチオエーテル基により(B)との相溶性をより増すことができ、湿熱試験後の液晶の配向乱れをより防ぐことができる。更には硬化後の架橋密度を程よく低下するためバリア性を保ったまま硬化物の柔軟性が向上しより追随性をより高めることができる。この観点からiは1~2が好ましく、より好ましくは1である。R15が上記式4で表される官能基の場合、硬化物の柔軟性がより向上し、追随性を高めることができる。R15が上記式5で表される官能基の場合、液晶へ溶解性を低下でき、より液晶の汚染を防ぐことができる。R16はメチレン基、エチレン基、イソプロピレン基であり、(C)の溶解性を更に増し、湿熱試験後の液晶の配向乱れをより防ぐできるという観点からメチレン基、またはエチレン基が好ましい。
【0035】
さらに、(A’)は下記式9で表される化合物であることが好ましい。
【化30】
(式中のjは1または2であり、kは1または2であり、jとkの和は3である。R
18は下記式10で表される3価の官能基であり、R
19は、下記式4または式5で表される2価の官能基であり、R
20は、メチレン基、エチレン基、またはイソプロピレン基である。)
【化31】
(式中のR
21はメチレン基、エチレン基、イソプロピレン基である。)
【化32】
(式中のR
7は水素原子またはメチル基である。)
【化33】
【0036】
チオール基が多いと架橋性が増すため、水分バリア性が高まり湿熱試験後の液晶の配向乱れを防ぐことができる観点からは、jは2が好ましい。また、チオール基と(メタ)アクリルアミド基と結合したチオエーテル基により(B)との相溶性をより増すことができ、湿熱試験後の液晶の配向乱れをより防ぐことができる。更には硬化後の架橋密度を程よく低下するためバリア性を保ったまま硬化物の柔軟性が向上しより追随性をより高めることができる。この観点からkは1が好ましい。R19が上記式4で表される官能基の場合、硬化物の柔軟性がより向上し、追随性を高めることができる。R19が上記式5で表される官能基の場合、液晶へ溶解性を低下でき、より液晶の汚染を防ぐことができる。R20はメチレン基、エチレン基、イソプロピレン基であり、(C)の溶解性を更に増し、湿熱試験後の液晶の配向乱れをより防ぐことできるという観点からメチレン基、またはエチレン基が好ましい。
【0037】
本発明の(A’)化合物は、例えば(A)のチオール基を有する化合物と、(B)ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド化合物とを反応させることで得ることができる。
【0038】
<その他成分>
上記液晶パネル用封止材は、本発明の目的を阻害しない範囲において、(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物等の樹脂成分や、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤、界面活性剤、シランカップリング剤、レベリング剤、密着付与剤、可塑剤、消泡剤、充填材、遮光材、導電材、スペーサー等の添加剤を含有していてもよい。
【0039】
<組成比(配合比率)>
本発明の液晶パネル用封止材は、化合物(A)100質量部、もしくは化合物(A)と(A’)の合計量100質量部に対し、化合物(B)が1~20質量部、(C)2~6個のアリル基を有するアリル化合物が50~200質量部、(D)光重合開始剤が0.1~10質量部の割合となるように配合される。
本発明の液晶パネル用封止材は、液晶と混ざりにくい性質を持つ前記(B)を含有することで未硬化の状態での液晶汚染性を低下することができる。しかしながら、(B)は(A)との相溶性が悪く、(A)と(B)のみの組成物では不均一になり硬化性が良くなく性能が発現できない。ここで(B)の相溶化材となる前記(C)を含有することで、封止材が未硬化の状態で液晶と接触しても液晶を汚染しない本発明の液晶パネル用封止材を提供することができる。この際に、(B)がない場合では液晶との溶解性が高まってしまい、未硬化の状態での液晶と接触すると液晶を汚染してしまう。これより、本発明の液晶パネル用封止材が、未硬化の状態の液晶を汚染しないためには(A)と(B)、(C)のいずれも欠くことはできない。
【0040】
また、本発明の液晶パネル用封止材は、前記(A)と前記(B)、(C)との間にチオールーエン反応が進行し硬化物が得られる。形成されるチオエーテル結合はC、O、Nといった原子による結合と比べ結合角や結合長を柔軟に変化できるため硬化物の柔軟性が高くなる。また、水素結合可能なヒドロキシル基や(メタ)アクリルアミド基を有する前記(B)を含有することで、ヒドロキシル基や(メタ)アクリルアミド基由来の水素結合による架橋ネットワークが形成され、硬化物が強靭化する。水素結合は共有結合に比べ、硬化物の柔軟性を損なわないため前記(B)を含有することで硬化膜の柔軟性を保ったまま強靭性を向上することができる。更に、アリル化合物は単独重合しにくく、前記(C)を含有することで、効果的にチオール化合物とチオエーテル結合を形成できるため、チオール化合物との反応により柔軟性の高い硬化物を得ることができる。また、アリル化合物は(メタ)アクリル化合物と比べ、チオールーエン反応における硬化速度が速いため、単官能である(B)よりも先にチオール成分と反応することができ、より架橋ネットワークの広がった柔軟性の高い硬化物を得ることができる。液晶パネル用封止材が(A)と(B)のみでは硬化性が良くなく性能が発現できない。また、(A)と(C)のみでは硬化物に強靭性が足りず、追随性に劣ってしまう。これより、本発明の液晶パネル用封止材の硬化物が基材への追随性に優れるためには液晶を汚染しないためには(A)と(B)、(C)のいずれも欠くことはできない。
(A)、(B)、(C)含有の組成物に更に前記(D)を用いることで光照射のみで硬化し上記効果を発現することが出来る。
【0041】
本発明の液晶パネル用封止材において、化合物(A)100質量部、もしくは化合物(A)と(A’)の合計量100質量部に対し、化合物(B)の含有量は1~20質量部であり、下限値としては、好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上である。上限値としては、好ましくは15質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下である。ここで、(B)が1質量部未満の場合、液晶パネル用封止材が液晶へ溶解しやすくなり、液晶汚染、更には耐湿熱試験後の配向乱れを引き起こしてしまう傾向がある。また、硬化物の強靭性が低下し、追随性が悪化してしまう傾向にある。(B)が20質量部を超える場合、組成物が不均一となり、液晶汚染、更には耐湿熱試験後の配向乱れを引き起こしてしまう傾向がある。
【0042】
液晶パネル用封止材は、化合物(A)100質量部、もしくは化合物(A)と(A’)の合計量100質量部に対し、(C)2~6個のアリル基を有するアリル化合物の含有量は50~200質量部であり、下限値としては、好ましくは70質量部以上であり、より好ましくは90質量部以上である。上限値としては、好ましくは160質量部以下であり、より好ましくは120質量部以下である。(C)が50質量部未満の場合、液晶パネル用封止材中の(B)の溶解性が低下し、組成物が不均一となり、液晶汚染、更には耐湿熱試験後の配向乱れを引き起こしてしまう傾向がある。また、架橋ネットワークが希薄になり硬化物の強靭性が低下し追随性に劣る傾向にある。(C)が200質量部を超える場合、硬化物の柔軟性が低下し追随性に劣る傾向にある。また、未反応のアリル化合物が硬化物中に残存し、液晶汚染、更には耐湿熱試験後の配向乱れを引き起こしてしまう傾向がある。
【0043】
液晶パネル用封止材は、化合物(A)100質量部、もしくは化合物(A)と(A’)の合計量100質量部に対し、(D)光重合開始剤の含有量は0.1~10質量部であり、下限値としては、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上である。上限値としては、好ましくは7質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下である。(D)が0.1質量部未満の場合、硬化反応が十分に進行せず、硬化不十分で追随性の低下や液晶汚染、更には耐湿熱試験後の配向乱れを引き起こしてしまう傾向がある。(D)が10質量部を超える場合、未反応の光重合開始剤が組成物中に多く残存したり、硬化反応に組み込まれない開始剤の分解物が発生するため、液晶汚染、更には耐湿熱試験後の配向乱れを引き起こしてしまう傾向がある。
【0044】
本発明の液晶パネル用封止材中の(A’)の含有量は、(A)と(A’)の合計の含有量に対する(A’)の含有量の割合(A’)/((A)+(A’))として1~60質量%となるように含有すればよい。下限値としては、10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上である。上限値としては、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以上である。
(A’)は1種のみを単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。(A’)は、上記(C)同様、上記(B)の相溶化材として用いられる。上記(B)は上記(C)とともに用いられることで液晶パネル用封止材への溶解性を増すことが出来るが、上記(C)のみでは上記(B)を完全に組成物中に溶解することが困難であり、硬化物がわずかに不均一となり、より厳しい条件の耐湿熱試験下では配向乱れを発生させてしまうことがある。この液晶パネル用封止材中が(A’)を含むことで、液晶パネル用封止材が不均一となることを完全に防ぐことが出来、湿熱試験後の液晶の配向乱れを完全に防ぐことが出来る。
【0045】
また、本発明の液晶パネル用封止材は、化合物(A’)が、上記(A)、(B)、(C)、(D)及び(A’)の合計100質量部中に、0.01~40質量部の割合となるように配合され、好ましくは5~40質量部の割合となるように配合される。これにより、湿熱試験後の液晶の配向乱れを完全に防ぐことが出来る。
【0046】
<液晶パネル>
本発明の液晶パネルとは、例えば液晶の配向により透明・不透明を制御するのみの調光部材やディスプレイのように画像表示を行う表示素子等が含まれる。本発明の液晶パネルは、例えば、一対の基板を対向に配置し、周囲が上記液晶パネル用封止材組成物にて封止され、その間に液晶材料が存在するものである。ここで、基板とはガラス、石英等の無機透明基材やポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィン(コ)ポリマー、PMMA、ポリイミド等のプラスチック透明フィルム基材上に銀や銅の電極またはITO等の透明電極が施され、さらに配向膜等が形成されたものである。フィルム液晶パネルとは、上記プラスチック透明フィルム基材を用いた基板にて形成された液晶パネルであり、フィルム液晶用の液晶パネル用封止材は、上記フィルム液晶パネルに用いられる液晶パネル用封止材である。
【0047】
<液晶パネルの形成>
本発明の液晶パネルは、一対の上記基板の一方に上記液晶パネル用封止材組成物を塗布した後、その内側に液晶を滴下しもう一方の基板を重ね合わせ、光を照射し上記液晶パネル用封止材組成物を硬化させることで形成される。
上記液晶パネル用封止材組成物の塗布方法は特に制限されず、例えば、ディスペンサ塗工やスクリーン印刷法等が適用される。
上記液晶パネル用封止材組成物に光を照射する光源としては特に制限されず、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯といった水銀灯やブラックライトランプ、LEDランプ、ハロゲンランプ、無電極ランプ、キセノンランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が適用される。
液晶パネルの汚染性は、上記のように液晶パネルを形成し、実際に電圧を印加して配向具合を確認する手法に加えて、電圧保持率の測定によって評価することも出来る。電圧保持率は液晶セルに電圧を印加し充電された電荷が一定時間後にどの程度保持されているかを確認する評価方法であり、液晶が汚染されている場合、電荷が保持されずに電圧保持率は低下する。汚染性がなく良好な電圧保持率は90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上である。
【0048】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
本実施例および比較例で用いた各成分は、次のとおりである。
【0049】
<(A)>
A-1:ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)
A-2:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)
A-3:トリス-[(3-メルカプトプロピオモルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート
<(B)>
B-1:ヒドロキシルメチルアクリルアミド
B-2:ヒドロキシルエチルアクリルアミド
B-3:イソプロピルアクリルアミド
【0050】
<(C)>
C-1:2,2-ビス(4-アリルオキシフェニル)プロパン
C-2:2,2-ビス(3-アリルー4-グリシジルオキシフェニル)プロパン
C-3:トリメチロールプロパンジアリルエーテル
C-4:トリアリルイソシアヌレート
C-5:ペンタエリスリトールトリアクリレート
<(D)>
D-1:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
D-2:1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)
D-3:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
【0051】
<(A’)>
A’-1:下記式12の化合物
【化34】
A’-2:下記式13の化合物
【化35】
A’-3:下記式14の化合物
【化36】
A’-4:下記式15の化合物
【化37】
【0052】
<液晶パネル用封止材の製造>
攪拌釜に下記表1から表3のとおりに各成分を加え、2時間混合、攪拌し、実施例1-1~1-18、2-1~2-26、比較例1-1~1-9の液晶パネル用封止材を得た。
【0053】
<評価方法>
各実施例および比較例において得られた液晶パネル用封止材を下記記載の方法によってその性能を評価した。評価結果は表1から表3に示す。
【0054】
<硬化性>
実施例および比較例で製造した液晶パネル用封止材を100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケータにて膜厚が100μmとなるように塗工し、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(1000mJ/cm2)を行った。光照射後の液晶パネル用封止材をクリーン手袋を装着した指にて触り、硬化状態を確認した。
○:タックを感じない、且つ手袋に液晶パネル用封止材が付着しない
×:タックを感じる、また手袋に液晶パネル用封止材が付着する
【0055】
<基材追随性>
実施例および比較例で製造した液晶パネル用封止材を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケータにて膜厚が100μmとなるように塗工し、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(1000mJ/cm2)を行い液晶パネル用封止材を硬化させた。得られた硬化膜付PETフィルムを長さ100mm、幅10mmの長方形状にカットし、サンプルとした。得られたサンプルをMIT試験機(テスター産業(株)製BE-202)を使用し、屈曲試験を行った(条件:荷重1N、折り曲げ速度175cpm、屈曲半径2.0mm、折り曲げ速度 135°)。試験後サンプルを目視観察し、評価した。
◎:10000回後にクラックや剥れなし
○:10000回後にクラックが発生するが、7000回後ではクラックや剥れなし
×:7000回以内にクラックや剥れが発生する
【0056】
<耐液晶汚染性>
サンプル瓶に液晶パネル用封止材を0.025g添加し、更に液晶(メルク社製MLC-7021-000)を1g加え、25℃にて1時間静置した。その後、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(1000mJ/cm2)を行い、液晶パネル用封止材を硬化させ100℃で2時間加熱した。2時間後、遠心分離機で硬化物と液晶を分離し、液晶をITO付ガラス基板液晶セル((株)イーエッチシー製KSSZ-05/B107MINX05)に注入し、液晶物性評価システム(東洋テクニカ(株)製6245)を用いて電圧保持率を測定した。
【0057】
<耐湿熱試験後の配向乱れ>
ディスペンサー(武蔵エンジニアリング(株)製ショットマスター)を用いてガラス上に透明電極および配向膜をこの順で施した40mm×45mmのガラス基板((株)イーエッチシー製RT-DM88-PIN)上に実施例および比較例で製造した液晶パネル用封止材を35mm×40mmの四角形の枠状に塗布(線幅:1mm)し、枠上に描画した液晶パネル用封止材の内側に液晶(メルク社製MLC-11900-000)を滴下した。次に上記ガラス基板と、対向するガラス基板を減圧下にて貼り合わせ、25℃にて1時間静置した。高圧水銀灯を用いて紫外線照射(1000mJ/cm2)を行い液晶パネルを得た。上記と同様に作製した液晶パネルを50℃90%RHの条件下に500時間曝した後、AC5Vの電圧にて中間調の表示状態で駆動させ、液晶パネル用封止材の硬化物近傍の液晶の配向乱れを偏光顕微鏡にて観察した。
◎:配向乱れ未発生
○:液晶パネル用封止材の硬化物端部0.5mm以内に配向乱れ発生
×:液晶パネル用封止材の硬化物端部0.5mmを越えて配向乱れ発生
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
上記試験の結果、各実施例の液晶パネル用封止材は優れた硬化性、基材追随性、耐液晶汚染性、耐湿熱液晶汚染性を有していた。
さらに、実施例1-1~1-18と、実施例2-1~2-26とを比較すると、実施例2-1~2-26は、(A’)を含有していることから、耐湿熱試験後の配向乱れに対して優れた効果を発揮することがわかった。
【0062】
一方、比較例1-1では(A)を含有していないため硬化性が不十分であり、その他の評価を行うことができなかった。比較例1-2、1-3では(B)を含有していない、または(B)の含有量が多すぎるため、基材への追随性が劣り、また液晶の汚染、更には耐湿熱試験後の液晶の配向乱れを起こすことがわかった。比較例1-4では、(B)としてヒドロキシル基を有していないアクリルアミドを使用しているため、基材への追随性が劣っており、また、液晶への溶解性が高まり、液晶の汚染、更には耐湿熱試験後の液晶の配向乱れを起こすことがわかった。比較例1-5、1-6では、(C)の含有量が多すぎるもしくは少なすぎるため、基材への追随性が劣っており、また液晶の汚染、更には耐湿熱試験後の液晶の配向乱れを起こすことがわかった。比較例1-7では、(C)としてアリル化合物を使用しておらず、基材への追随性が劣っており、また液晶の汚染、更には耐湿熱試験後の液晶の配向乱れを起こしてしまうことがわかった。比較例1-8では、(D)を含有していないため、硬化性が不十分であった。比較例1-9では、(D)の含有量が多すぎるため、液晶の汚染、更には耐湿熱試験後の液晶の配向乱れを起こしてしまうことがわかった。