(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20220308BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20220308BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/03 100C
B60C11/03 100B
B60C11/12 C
(21)【出願番号】P 2018085562
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】堀口 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】兼松 義明
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037276(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0239997(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106573505(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0028965(KR,A)
【文献】国際公開第2015/166803(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057297(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106457923(CN,A)
【文献】特開2008-222075(JP,A)
【文献】特開平11-198612(JP,A)
【文献】特開平03-167006(JP,A)
【文献】特開2017-140927(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0023080(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108602391(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0099869(KR,A)
【文献】特開2018-111385(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0366775(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110191812(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/13
B60C 11/03
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に延びる第1縦エッジと、タイヤ周方向に延びる第2縦エッジとで区分された踏面を有する陸部を含み、
前記陸部には、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジに延びる横溝が設けられ、
前記横溝は、前記第1縦エッジから延びる第1部分と、前記第2縦エッジから延びる第2部分と、これらを連結する連結部とを含み、
前記連結部は、前記第1部分からタイヤ周方向に突出する第1小エッジと、前記第2部分から前記第1小エッジとは反対側のタイヤ周方向に突出する第2小エッジとの間の部分であり、
前記第1小エッジ及び前記第2小エッジのタイヤ周方向の長さは、前記第1部分の最大の溝幅及び前記第2部分の最大の溝幅よりも小さく、
前記連結部は、その少なくとも一部に、前記横溝の前記第1縦エッジでの深さ及び前記第2縦エッジでの深さよりも小さい深さの上げ底部を有する、
タイヤ。
【請求項2】
前記陸部は、タイヤ赤道とトレッド端との間に配され、
前記連結部は、前記陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記トレッド端側に位置している、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1部分は、その少なくとも一部に、前記上げ底部と同じ深さを有する、請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記陸部には、前記第2縦エッジから延びかつ前記陸部内で途切れる短溝が設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記短溝は、前記陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記第2縦エッジ側で途切れている、請求項4記載のタイヤ。
【請求項6】
前記短溝は、前記第2縦エッジ側の端から前記陸部内の途切れ端に向かって深さが漸減している、請求項4又は5記載のタイヤ。
【請求項7】
前記陸部には、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまで延びるサイプが設けられている、請求項1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記サイプは、本体部と、前記本体部よりも小さい深さを有する浅底部とを含む、請求項7記載のタイヤ。
【請求項9】
前記陸部には、前記浅底部のタイヤ軸方向の位置が異なる複数種類の前記サイプが設けられている、請求項8記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1小エッジと前記第2部分の溝縁とは、溝外方に凸となる円弧部で接続されており、前記第2小エッジと前記第1部分の溝縁とは、溝外方に凸となる円弧部で接続されている請求項1ないし9のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、詳しくは、オールシーズンタイヤとして好適に実施され得るタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
オールシーズンタイヤは、ドライ路面だけではなく雪道での基本的な走行性能が求められる。雪上性能を向上させるためには、トレッド部に横溝を多数設けることが効果的である。横溝は、路面の雪を溝内で押し固め、かつ、それをせん断することにより、雪上でのトラクション(雪柱せん断力)を発生させる。また、横溝のエッジは、押し固められた圧雪路を引っ掻くことで摩擦力を発生させる。関連する技術として、下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トレッド部に設けられた横溝は、雪上トラクションの向上には役立つが、雪上での旋回性能の向上については十分ではなく、さらなる改善が求められていた。また、横溝は、トレッド部のパターン剛性を低下させ、ひいては、ドライ路面での操縦安定性を悪化させるという傾向があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とを向上することができるタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に延びる第1縦エッジと、タイヤ周方向に延びる第2縦エッジとで区分された踏面を有する陸部を含み、前記陸部には、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジに延びる横溝が設けられ、前記横溝は、前記第1縦エッジから延びる第1部分と、前記第2縦エッジから延びる第2部分と、これらを連結する連結部とを含み、前記連結部は、前記第1部分からタイヤ周方向に突出する第1小エッジと、前記第2部分から前記第1小エッジとは反対側のタイヤ周方向に突出する第2小エッジとの間の部分であり、前記第1小エッジ及び前記第2小エッジのタイヤ周方向の長さは、前記第1部分の最大の溝幅及び前記第2部分の最大の溝幅よりも小さく、前記連結部は、その少なくとも一部に、前記横溝の前記第1縦エッジでの深さ及び前記第2縦エッジでの深さよりも小さい深さの上げ底部を有する。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記陸部は、タイヤ赤道とトレッド端との間に配され、前記連結部は、前記陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記トレッド端側に位置しているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第1部分は、その少なくとも一部に、前記上げ底部と同じ深さを有するのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記陸部には、前記第2縦エッジから延びかつ前記陸部内で途切れる短溝が設けられているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記短溝は、前記陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記第2縦エッジ側で途切れているのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記短溝は、前記第2縦エッジ側の端から前記陸部内の途切れ端に向かって深さが漸減しているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記陸部には、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまで延びるサイプが設けられているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記サイプは、本体部と、前記本体部よりも小さい深さを有する浅底部とを含むのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記陸部には、前記浅底部のタイヤ軸方向の位置が異なる複数種類の前記サイプが設けられているのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記第1小エッジと前記第2部分の溝縁とは、溝外方に凸となる円弧部で接続されており、前記第2小エッジと前記第1部分の溝縁とは、溝外方に凸となる円弧部で接続されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタイヤのトレッド部は、タイヤ周方向に延びる第1縦エッジと、タイヤ周方向に延びる第2縦エッジとで区分された踏面を有する陸部を含む。陸部には、第1縦エッジから第2縦エッジに延びる横溝が設けられている。前記横溝は、第1縦エッジから延びる第1部分と、第2縦エッジから延びる第2部分と、これらを連結する連結部とを含む。連結部は、第1部分からタイヤ周方向に突出する第1小エッジと、第2部分から第1小エッジとは反対側のタイヤ周方向に突出する第2小エッジとの間の部分である。
【0017】
このような連結部を含む横溝は、雪上トラクションを高めるだけでなく、第1小エッジ及び第2小エッジによってタイヤ軸方向の摩擦力を提供し、ひいては雪上での旋回性能も高めることができる。
【0018】
第1小エッジ及び第2小エッジのタイヤ周方向の長さは、第1部分の最大の溝幅及び第2部分の最大の溝幅よりも小さい。これにより、連結部による陸部の剛性低下が抑制される。
【0019】
また、連結部は、比較的大きな溝空間となりがちであるが、その少なくとも一部に、横溝の第1縦エッジでの深さ及び第2縦エッジでの深さよりも小さい深さの上げ底部を有することで、トレッド部の局部的な剛性低下が抑制され、ひいてはドライ路面での操縦安定性が向上する。
【0020】
以上のように、本発明のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図4】(A)は、
図2のA-A線断面図であり、(B)は、
図2のB-B線断面図である。
【
図5】(A)は、
図2のC-C線断面図であり、(B)は、
図2のD-D線断面図である。
【
図8】比較例のタイヤのミドル陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、空気入りタイヤとして構成される。本実施形態では、好ましい態様として、乗用車やSUVに装着が意図されたオールシーズンタイヤが示されている。本実施形態のタイヤ1のトレッド部2は、車両への装着の向きが指定されておらず、例えば、タイヤ赤道C上の点について点対称のパターンを有する。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0023】
図1に示されるように、トレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝3が設けられている。主溝3は、例えば、トレッド端Te側に配されたショルダー主溝4と、ショルダー主溝4よりもタイヤ赤道C側に配されたクラウン主溝5とを含む。
【0024】
トレッド端Teは、空気入りタイヤの場合、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0025】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0026】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0027】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0028】
本実施形態のトレッド部2には、2本のショルダー主溝4が設けられている。各ショルダー主溝4の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの0.20~0.30倍である。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における一方のトレッド端Teから他方のトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0029】
本実施形態のクラウン主溝5は、例えば、ショルダー主溝4とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。本実施形態のトレッド部2には、タイヤ赤道Cを挟む2本のクラウン主溝5が設けられている。クラウン主溝5の溝中心線からタイヤ赤道Cまでの距離L2は、例えば、トレッド幅TWの0.05~0.15倍である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、他の態様では、タイヤ赤道C上に1本のクラウン主溝5が設けられても良い。
【0030】
各主溝3は、例えば、直線状に延びている。各主溝3は、例えば、ジグザグ状に延びるものでも良い。主溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの4.0%~6.0%であるのが望ましい。主溝3の溝深さは、例えば、5.0~12.0mmであるのが望ましい。これにより、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とがバランス良く高められる。
【0031】
トレッド部2は、上述の主溝3によって、複数の陸部に区分されている。本実施形態のトレッド部2は、クラウン陸部6と、2つのミドル陸部7と、2つのショルダー陸部8とに区分されている。クラウン陸部6は、2本のクラウン主溝5の間に区分され、タイヤ赤道C上に設けられている。ミドル陸部7は、クラウン主溝5とショルダー主溝4との間に区分されている。ショルダー陸部8は、ショルダー主溝4とトレッド端Teとの間に区分されている。これにより、本実施形態のトレッド部2は、5つの陸部で構成されている。但し、他の態様において、トレッド部2は、例えば、2本のショルダー主溝4と1本のクラウン主溝5によって4つの陸部に区分されるものでも良い。
【0032】
図2には、陸部の一態様を示す図として、ミドル陸部7の拡大図が示されている。
図2に示されるように、ミドル陸部7は、タイヤ周方向に延びる第1縦エッジ7aと、タイヤ周方向に延びる第2縦エッジ7bとで区分された踏面を有する。本実施形態において、第1縦エッジ7aは、タイヤ赤道C側のエッジである。第2縦エッジ7bは、トレッド端Te側のエッジである。
【0033】
ミドル陸部7には、第1縦エッジ7aから第2縦エッジ7bに延びる横溝10がタイヤ周方向に複数設けられている。
【0034】
横溝10は、第1縦エッジ7aから延びる第1部分11と、第2縦エッジ7bから延びる第2部分12と、これらを連結する連結部13とを含んでいる。
【0035】
第1部分11の溝幅W2は、例えば、主溝3の溝幅W1(
図1に示す)の0.20~0.40倍である。第2部分12の溝幅も同様である。第1部分11と第2部分12とは、例えば、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。第1部分11及び第2部分12の溝縁のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、25~35°である。また、第1部分11と第2部分12とは、例えば、タイヤ周方向に位置ずれして互いに連なっている。第1部分11と第2部分12とのタイヤ周方向の位置ずれ量は、例えば、第1部分11又は第2部分12の溝幅の0.50~0.60倍である。
【0036】
図3には、横溝10の拡大図が示されている。
図3に示されるように、連結部13は、第1部分11からタイヤ周方向に突出する第1小エッジ16と、第2部分12から第1小エッジ16とは反対側のタイヤ周方向に突出する第2小エッジ17との間の部分である。第1小エッジ16及び第2小エッジ17のタイヤ周方向に対する角度は、例えば、0~10°である。横溝10が連結部13を有することにより、横溝10の一対のエッジのそれぞれは、連結部13においてS字状に曲がっている。
【0037】
このような連結部13を含む横溝は、雪上トラクションを高めるだけでなく、第1小エッジ16及び第2小エッジによってタイヤ軸方向の摩擦力を提供し、ひいては雪上での旋回性能も高めることができる。
【0038】
第1小エッジ16及び第2小エッジ17のタイヤ周方向の長さは、第1部分11の最大の溝幅及び第2部分12の最大の溝幅よりも小さい。これにより、連結部13による陸部の剛性低下が抑制される。
【0039】
連結部13は、その少なくとも一部に、横溝10の第1縦エッジ7aでの深さ及び第2縦エッジ7bでの深さよりも小さい深さの上げ底部18を有する。
【0040】
連結部13は、比較的大きな溝空間となりがちであるが、その少なくとも一部に、横溝10の第1縦エッジ7aでの深さ及び第2縦エッジ7bでの深さよりも小さい深さの上げ底部18を有することで、トレッド部2の局部的な剛性低下が抑制され、ひいてはドライ路面での操縦安定性が向上する。なお、発明を理解し易いように、
図3では、上げ底部18及び上げ底部18と同じ深さを有する領域が、着色されている。
【0041】
図4(A)には、
図2の横溝10のA-A線断面図が示されている。
図4に示されるように、本実施形態では、連結部13の全体に亘って上げ底部18が構成されている。さらに望ましい態様では、第1部分11は、その少なくとも一部に、前記上げ底部18と同じ深さを有する。このような横溝10は、ドライ路面での操縦安定性をさらに向上させることができる。
【0042】
横溝10の第1縦エッジ7aでの深さd1及び第2縦エッジ7bでの深さd2は、それぞれ、主溝3の深さの0.65~0.75倍である。上げ底部18の深さd3は、例えば、主溝3の深さの0.40~0.50倍である。また、上げ底部18の深さd3は、横溝10の前記深さd1の0.60~0.75倍であるのが望ましい。
【0043】
図3に示されるように、連結部13は、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の中心位置よりもトレッド端Te側に位置しているのが望ましい。より具体的には、第1小エッジ16及び第2小エッジ17の両方が、前記中心位置よりもトレッド端Te側に位置している。これにより、雪上走行時、接地圧の変化によって連結部13からに雪が排出され易くなり、優れた雪上性能が長期に亘って発揮される。
【0044】
第1部分11の溝縁と第1小エッジ16とは、例えば、溝内方に凸となる円弧部で接続されている。第2部分12の溝縁と第2小エッジ17とは、例えば、溝内方に凸となる円弧部で接続されている。
【0045】
同様に、第1小エッジ16と第2部分12の溝縁とは、例えば、溝外方に凸となる円弧部16aで接続されている。これにより、連結部13の溝縁の偏摩耗が抑制される。第1縦エッジ7aからこの円弧部16aの端までのタイヤ軸方向の距離に相当する第1部分長さL3は、例えば、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅W3(
図2に示され、以下、同様である。)の0.50~0.65倍である。
【0046】
第2小エッジ17と第1部分11の溝縁とは、溝外方に凸となる円弧部17aで接続されている。第1縦エッジ7aからこの円弧部17aまでのタイヤ軸方向の距離L4は、例えば、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅W3の0.60~0.80倍である。
【0047】
連結部13のタイヤ軸方向の幅W4(
図2に示され、以下、同様である。)は、例えば、第1部分11の最大の溝幅及び第2部分12の最大の溝幅よりも大きいのが望ましい。連結部13のタイヤ軸方向の幅W4は、第1小エッジ16の長さ方向の中心位置から第2小エッジ17の長さ方向の中心位置までのタイヤ軸方向の距離で定義される。さらに望ましい態様では、連結部13の幅W4は、例えば、ミドル陸部7の幅W3の0.10~0.25倍である。このような連結部13は、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めることができる。
【0048】
連結部13のタイヤ周方向の幅W5(
図2に示され、以下、同様である。)は、例えば、連結部13のタイヤ軸方向の幅W4よりも大きい。連結部13のタイヤ周方向の幅は、第1小エッジ16と第2部分12の溝縁とが接続する円弧部のタイヤ周方向の端から、第2小エッジ17と第1部分11の溝縁とが接続する円弧部のタイヤ周方向の端までのタイヤ周方向の距離で定義される。さらに望ましい態様では、連結部13のタイヤ周方向の幅W5は、連結部13のタイヤ軸方向の幅W4の1.3~2.0倍である。
【0049】
図2に示されるように、本実施形態のミドル陸部7には、例えば、複数の短溝20及び複数のサイプ21が設けられている。なお、本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.5mm未満の切れ込みである。サイプの幅は、0.5~1.0mmであるのがより望ましい。
【0050】
短溝20のタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅W3の0.40~0.55倍である。望ましい態様では、短溝20は、陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりも第2縦エッジ7b側で途切れている。このような短溝20は、ミドル陸部7の剛性を維持しつつ、雪上性能を高めることができる。
【0051】
短溝20の溝幅W6は、例えば、連結部13のタイヤ軸方向の幅W4及びタイヤ周方向の幅W5よりも小さいのが望ましい。このような短溝20は、ドライ路面での操縦安定性をさらに高めることができる。
【0052】
図4(B)には、短溝20のB-B線断面図が示されている。
図4(B)に示されるように、短溝20は、第2縦エッジ7b側の端からミドル陸部7内の途切れ端に向かって深さが漸減しているのが望ましい。さらに望ましい態様では、一定の深さで延びる2つの定深部20aの間に、溝底が傾斜して深さが変わる変深部20bが設けられている。このような短溝20は、雪上走行時、陸部の変形によって内部の雪を排出し易い。
【0053】
図2に示されるように、サイプ21は、例えば、横溝10と短溝20との間に設けられている。サイプ21は、例えば、第1縦エッジ7aから第2縦エッジ7bまで延びている。本実施形態のサイプ21は、タイヤ軸方向に対して横溝10の第1部分11及び第2部分12と同じ向きに傾斜しているのが望ましい。サイプ21のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、20~30°である。
【0054】
サイプ21は、例えば、深さの分布が異なる第1サイプ22及び第2サイプ23が設けられている。
図5(A)には、第1サイプ22のC-C線断面図が示されている。
図5(B)には、第2サイプ23のD-D線断面図が示されている。
図5(A)及び(B)に示されるように、サイプ21は、本体部21aと、本体部21aよりも小さい深さを有する浅底部21bとを含んでいるのが望ましい。本体部21aの深さd2は、例えば、主溝3の深さの0.65~0.75倍である。浅底部21bの深さd3は、例えば、主溝3の深さd1の0.40~0.50倍である。浅底部21bは、サイプ21が過度に開くのを抑制し、ドライ路面での操縦安定性を高め、かつ、ミドル陸部7の偏摩耗を抑制することができる。
【0055】
本実施形態のミドル陸部7には、浅底部21bのタイヤ軸方向の位置が異なる複数種類のサイプ21が設けられている。具体的には、第1サイプ22は、例えば、浅底部21bが第1縦エッジ7a側に設けられている。第2サイプ23は、例えば、浅底部21bが第2縦エッジ7b側に設けられている。これにより、ミドル陸部7の偏摩耗がさらに抑制される。
【0056】
図6には、ショルダー陸部8の拡大図が示されている。
図6に示されるように、ショルダー陸部8には、複数のショルダー横溝25と、ショルダーサイプ29と、面取り部28とが設けられている。
【0057】
ショルダー横溝25は、例えば、トレッド端Teからショルダー主溝4まで延びる第1ショルダー横溝26と、トレッド端Teから延びかつショルダー陸部8内で途切れる第2ショルダー横溝27を含んでいる。
【0058】
図1に示されるように、第1ショルダー横溝26のショルダー主溝4側の端部は、ミドル陸部7の短溝20をその長さ方向に延長した領域と交わるのが望ましい。なお、「溝を長さ方向に延長する」とは、溝の端部における曲率半径を保ったまま溝を延長することを意味する。これにより、雪上走行時、ショルダー主溝4、短溝20及び第1ショルダー横溝26が協働して大きい雪柱を形成し、大きな雪柱せん断力を提供することができる。
【0059】
第2ショルダー横溝27のショルダー主溝4側の端部は、ミドル陸部7の横溝10の第2部分をその長さ方向に延長した領域と交わるのが望ましい。これにより、横溝10が過度に開くのを抑制でき、ドライ路面での操縦安定性がさらに向上する。
【0060】
図6に示されるように、ショルダーサイプ29は、例えば、トレッド端Teからショルダー主溝4まで延びている。ショルダーサイプ29は、例えば、第1ショルダー横溝26と第2ショルダー横溝27との間に複数本設けられている。本実施形態では、第1ショルダー横溝26と第2ショルダー横溝27との間に2本のショルダーサイプ29が設けられている。このようなショルダーサイプ29は、雪上での摩擦力を提供することができる。
【0061】
面取り部28は、ショルダー陸部8の踏面と側面との間のコーナ部が凹んで構成されている。本実施形態の面取り部28は、例えば、ショルダー横溝25から離れた位置に設けられている。面取り部28のタイヤ周方向の長さは、例えば、ショルダー横溝25の溝幅よりも大きいのが望ましい。さらに望ましい態様では、面取り部28のタイヤ周方向の長さは、横溝10の連結部13のタイヤ周方向の幅W5(
図2に示す)よりも大きい。このような面取り部28は、ショルダー陸部8の偏摩耗を抑制しつつ、ショルダー主溝4に雪が詰まるのを抑制できる。
【0062】
本実施形態の面取り部28は、2本のショルダーサイプ29に連通する様に配されている。より具体的には、面取り部28のタイヤ周方向の両端部のそれぞれに、ショルダーサイプ29が連通している。このような面取り部28の配置は、上述の効果をさらに高めるのに役立つ。
【0063】
図1に示されるように、さらに望ましい態様では、面取り部28をタイヤ軸方向に沿って延長した領域は、ミドル陸部7に配されたサイプ21の端部と交わる。このような面取り部28は、ショルダー陸部8の偏摩耗を抑制しつつ、ショルダー主溝4に雪が詰まるのを抑制できる。
【0064】
図7には、クラウン陸部6の拡大図が示されている。
図7に示されるように、クラウン陸部6には、複数のクラウン横溝30と複数のクラウンサイプ35とが設けられている。
【0065】
クラウン横溝30は、例えば、クラウン主溝5から延びかつクラウン陸部6内で途切れている。本実施形態のクラウン横溝30は、例えば、クラウン陸部6のタイヤ軸方向の中心位置に達することなく途切れている。クラウン横溝30のタイヤ軸方向の長さL6は、ミドル陸部7に設けられた短溝20のタイヤ軸方向の長さL5(
図2に示す)よりも小さいのが望ましい。具体的には、クラウン横溝30のタイヤ軸方向の長さL6は、クラウン陸部6のタイヤ軸方向の幅W7の0.20~0.30倍であるのが望ましい。このようなクラウン横溝30は、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めることができる。
【0066】
本実施形態のクラウン陸部6には、一方側のクラウン主溝5から延びる第1クラウン横溝31と、他方側のクラウン主溝5から延びる第2クラウン横溝32とが設けられている。
【0067】
第1クラウン横溝31と第2クラウン横溝32とは、比較的近い位置に配されている。本実施形態では、第1クラウン横溝31をその長さ方向に延長した領域が、第2クラウン横溝32と交わる。これにより、雪上でのトラクションが高められる。
【0068】
クラウン横溝30は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している。望ましい態様では、タイヤ軸方向に対してミドル陸部7の横溝10の第1部分11(
図2に示す)と同じ向きに傾斜している。
【0069】
図1に示されるように、本実施形態のクラウン横溝30のクラウン主溝5側の端部は、ミドル陸部7の横溝10の第1部分11をその長さ方向に延長した領域と交わる。これにより、雪上走行時、クラウン主溝5、横溝10及びクラウン横溝30が協働して大きい雪柱を形成し、優れた雪上性能が発揮される。
【0070】
図7に示されるように、クラウンサイプ35は、例えば、第1クラウンサイプ36と、第2クラウンサイプ37と、第3クラウンサイプ38とを含む。各クラウンサイプ35は、例えば、タイヤ軸方向に対してミドル陸部7の横溝10と同じ向きに傾斜している。
【0071】
第1クラウンサイプ36は、例えば、クラウン陸部6を横切っている。本実施形態の第1クラウンサイプ36は、例えば、2つの緩傾斜部36aとこれらの間の急傾斜部36bとを有している。各緩傾斜部36aは、一方側又は他方側のクラウン主溝5に連なり、タイヤ軸方向に対して傾斜して延びている。急傾斜部36bは、タイヤ軸方向に対して緩傾斜部36aよりも大きい角度で配されている。望ましい態様では、急傾斜部36bは、タイヤ周方向に沿って延びている。このような第1クラウンサイプ36は、雪上での旋回性能を高めることができる。
【0072】
第2クラウンサイプ37は、例えば、第1クラウン横溝31の途切れ端から第2クラウン横溝32の途切れ端まで延びている。このような第2クラウンサイプ37は、雪上トラクションを高めるのに役立つ。
【0073】
第3クラウンサイプ38は、例えば、一方側又は他方側のクラウン主溝5から延びかつクラウン陸部6内で途切れている。本実施形態の第3クラウンサイプ38は、例えば、クラウン陸部6のタイヤ軸方向の中心位置に達することなく途切れている。より望ましい態様では、第3クラウンサイプ38のタイヤ軸方向の長さは、第1クラウンサイプ36の緩傾斜部36aのタイヤ軸方向の長さよりも小さい。
【0074】
第3クラウンサイプ38は、例えば、第1クラウンサイプ36の緩傾斜部36aをその長さ方向に延長した領域と交わるのが望ましい。このような第3クラウンサイプ38は、緩傾斜部36aとともに、雪上トラクションを高めるのに役立つ。
【0075】
以上、本発明のタイヤの好ましい実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0076】
図1の基本パターンを有するサイズ215/60R16の空気入りタイヤが試作された。比較例として、
図8に示されるように、ミドル陸部aに連結部を含まないミドル横溝bが配されたタイヤが設けられた。なお、このミドル横溝bは、フラットな溝底を有し、
図4(A)で示される上げ底部を有していない。比較例のタイヤは、上記の点を除き、
図1で示されるタイヤと実質的に同じである。各テストタイヤのドライ路面での操縦安定性及び雪上性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×7.0J
タイヤ内圧:250KPa
テスト車両:排気量2500cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0077】
<ドライ路面での操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、ドライ路面での操縦安定性が優れていることを示す。
【0078】
<雪上性能>
各テストタイヤが装着された上記テスト車両で雪路を走行したときの性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、雪上性能が優れていることを示す。
テスト結果が表1に示される。
【0079】
【0080】
テストの結果、実施例のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とが向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0081】
2 トレッド部
7 陸部
7a 第1縦エッジ
7b 第2縦エッジ
10 横溝
11 第1部分
12 第2部分
13 連結部
16 第1小エッジ
17 第2小エッジ
18 上げ底部