(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置及び記録媒体の浮き上がりの検出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 307
(21)【出願番号】P 2018091036
(22)【出願日】2018-05-10
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宗田 唱
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/146492(WO,A1)
【文献】特開2011-025451(JP,A)
【文献】特開2013-169688(JP,A)
【文献】国際公開第2016/009941(WO,A1)
【文献】特開2002-292856(JP,A)
【文献】特開2014-124819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面に載置された記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される記録媒体に対してインクを吐出するインク吐出部と、
前記搬送部による記録媒体の搬送方向について前記インク吐出部より上流側の所定位置における前記搬送面からの記録媒体の浮き上がりを検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記記録媒体の浮き上がりが、前記搬送方向についての前記浮き上がりの連続状態に係る所定の条件を満たすか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により前記条件が満たされていると判別された場合に所定の処理を行う処理手段と、
を備え
、
前記判別手段は、前記記録媒体のうち、直近で前記検出部による検出対象となった前記搬送方向についての所定長さの区間において、前記搬送方向について前記検出部により前記浮き上がりが検出された区間が占める割合が所定値以上である場合に前記条件が満たされていると判別し、
前記浮き上がりは、前記記録媒体のうち前記搬送面からの高さが所定の基準値を超えている部分である、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記処理手段は、前記インク吐出部によるインクの吐出を中止させる前記処理を行う請求項
1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記処理手段は、前記搬送部による前記記録媒体の搬送速度を低減させ、又は前記搬送部による前記記録媒体の搬送を中止させる前記処理を行う請求項1
又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
報知手段を備え、
前記処理手段は、前記報知手段により所定の報知動作を実行させる前記処理を行う請求項1から
3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記インク吐出部は、前記搬送面に対向するインク吐出面に設けられたノズルの開口部からインクを吐出し、
当該インクジェット記録装置は、
前記インク吐出部を移動させて、前記インク吐出面と前記搬送面との距離を変化させる昇降部と、
前記検出部により前記浮き上がりが検出された場合に、前記記録媒体のうち前記浮き上がりが検出された浮上部分が前記インク吐出面と対向する範囲内に搬送されるタイミングまでの間に、前記インク吐出面と前記搬送面との距離を、前記インク吐出面と前記浮上部分とが接触しない退避距離となるように変化させる退避動作を前記昇降部に行わせる昇降制御手段と、
を備える請求項1から
4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記浮き上がりの前記搬送面からの高さを検出可能に設けられており、
前記昇降制御手段は、前記インク吐出面と前記搬送面との距離を、前記浮き上がりの高さに応じた前記退避距離となるように変化させる前記退避動作を前記昇降部に行わせる請求項
5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
外部からの入力操作を受け付ける操作受付部と、
前記操作受付部により受け付けられた前記入力操作に応じて前記退避距離に係る設定を行う退避距離設定手段と、
を備える請求項
5又は
6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記搬送面に対向する位置に設けられ、前記搬送面に載置された記録媒体までの距離の測定結果に基づいて前記浮き上がりを検出する請求項1から
7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記検出部は、前記搬送面に平行な光路を進行する光を出射する発光部と、当該発光部から出射された光を検出する受光部とを備え、前記発光部から出射された前記光の前記受光部による検出状態の変化により前記浮き上がりを検出する請求項1から
8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
搬送面に載置された記録媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される記録媒体に対してインクを吐出するインク吐出部と、前記搬送部による記録媒体の搬送方向について前記インク吐出部より上流側の所定位置における前記搬送面からの記録媒体の浮き上がりを検出する検出部と、を備えたインクジェット記録装置における記録媒体の浮き上がりの検出方法であって、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記記録媒体の浮き上がりが、前記搬送方向についての前記浮き上がりの連続状態に係る所定の条件を満たすか否かを判別する判別ステップ、
前記判別ステップにおいて前記条件が満たされていると判別された場合に所定の処理を行う処理ステップ、
を含
み、
前記判別ステップでは、前記記録媒体のうち、直近で前記検出部による検出対象となった前記搬送方向についての所定長さの区間において、前記搬送方向について前記検出部により前記浮き上がりが検出された区間が占める割合が所定値以上である場合に前記条件が満たされていると判別し、
前記浮き上がりは、前記記録媒体のうち前記搬送面からの高さが所定の基準値を超えている部分である、検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及び記録媒体の浮き上がりの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送ベルトなどの搬送面に載置されて搬送される記録媒体に対し、インク吐出部のインク吐出面に設けられたノズルの開口部からインクを吐出して所望のパターンで着弾させていくことで、記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置がある。このインクジェット記録装置では、記録媒体にしわや反りなどがあって記録媒体の一部が搬送面から浮き上がっていると、インク吐出面と記録媒体との間の距離が場所によって変化し、インクの着弾位置に一様でないずれが生じて画質が低下するという問題がある。
【0003】
これに対し、特許文献1には、記録媒体の搬送方向についてインク吐出部の上流側で記録媒体の浮き上がりを検出する検出部を設け、記録媒体の浮き上がりが検出された場合に、浮き上がりの生じている部分がインク吐出部の下流側に搬送されるまでインク吐出部を搬送面に垂直な方向に退避させてインク吐出動作を中止させることで、低画質画像の形成を防止する技術が開示されている。また、特許文献2には、記録媒体の浮き上がりの高さが所定値以下である場合に、インク吐出部を搬送面に垂直な方向に、記録媒体の浮き上がりに応じた距離だけ退避させつつインク吐出を継続させることで、画像形成のスループットの低下を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/009941号
【文献】特開2011-126131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、記録媒体の浮き上がりは、搬送方向について長く連続していたり、断続的に連なっていたりする場合がある。このように搬送方向について長い区間に亘って浮き上がりが生じている場合に、特許文献1に記載の方法のようにインク吐出を中止させたまま記録媒体の搬送を続けると、画像が形成されない未形成領域が大量に生じてしまう。また、特許文献2の方法による画像形成を続けると、浮き上がりの高さのばらつき等に起因して画質低下のある低画質領域が大量に生じてしまう。
このように、上記従来の技術では、記録媒体の未形成領域や低画質領域が増大して記録媒体の無駄な消費が増える場合があるという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、より適切に記録媒体の無駄な消費に繋がる状態を判別して検出することができるインクジェット記録装置及び記録媒体の浮き上がりの検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のインクジェット記録装置の発明は、
搬送面に載置された記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される記録媒体に対してインクを吐出するインク吐出部と、
前記搬送部による記録媒体の搬送方向について前記インク吐出部より上流側の所定位置における前記搬送面からの記録媒体の浮き上がりを検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記記録媒体の浮き上がりが、前記搬送方向についての前記浮き上がりの連続状態に係る所定の条件を満たすか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により前記条件が満たされていると判別された場合に所定の処理を行う処理手段と、
を備え、
前記判別手段は、前記記録媒体のうち、直近で前記検出部による検出対象となった前記搬送方向についての所定長さの区間において、前記搬送方向について前記検出部により前記浮き上がりが検出された区間が占める割合が所定値以上である場合に前記条件が満たされていると判別し、
前記浮き上がりは、前記記録媒体のうち前記搬送面からの高さが所定の基準値を超えている部分である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記処理手段は、前記インク吐出部によるインクの吐出を中止させる前記処理を行う。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置において、
前記処理手段は、前記搬送部による前記記録媒体の搬送速度を低減させ、又は前記搬送部による前記記録媒体の搬送を中止させる前記処理を行う。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
報知手段を備え、
前記処理手段は、前記報知手段により所定の報知動作を実行させる前記処理を行う。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記インク吐出部は、前記搬送面に対向するインク吐出面に設けられたノズルの開口部からインクを吐出し、
当該インクジェット記録装置は、
前記インク吐出部を移動させて、前記インク吐出面と前記搬送面との距離を変化させる昇降部と、
前記検出部により前記浮き上がりが検出された場合に、前記記録媒体のうち前記浮き上がりが検出された浮上部分が前記インク吐出面と対向する範囲内に搬送されるタイミングまでの間に、前記インク吐出面と前記搬送面との距離を、前記インク吐出面と前記浮上部分とが接触しない退避距離となるように変化させる退避動作を前記昇降部に行わせる昇降制御手段と、
を備える。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のインクジェット記録装置において、
前記検出部は、前記浮き上がりの前記搬送面からの高さを検出可能に設けられており、
前記昇降制御手段は、前記インク吐出面と前記搬送面との距離を、前記浮き上がりの高さに応じた前記退避距離となるように変化させる前記退避動作を前記昇降部に行わせる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載のインクジェット記録装置において、
外部からの入力操作を受け付ける操作受付部と、
前記操作受付部により受け付けられた前記入力操作に応じて前記退避距離に係る設定を行う退避距離設定手段と、
を備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記検出部は、前記搬送面に対向する位置に設けられ、前記搬送面に載置された記録媒体までの距離の測定結果に基づいて前記浮き上がりを検出する。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記検出部は、前記搬送面に平行な光路を進行する光を出射する発光部と、当該発光部から出射された光を検出する受光部とを備え、前記発光部から出射された前記光の前記受光部による検出状態の変化により前記浮き上がりを検出する。
【0018】
また、上記目的を達成するため、請求項10に記載の記録媒体の浮き上がりの検出方法の発明は、
搬送面に載置された記録媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される記録媒体に対してインクを吐出するインク吐出部と、前記搬送部による記録媒体の搬送方向について前記インク吐出部より上流側の所定位置における前記搬送面からの記録媒体の浮き上がりを検出する検出部と、を備えたインクジェット記録装置における記録媒体の浮き上がりの検出方法であって、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記記録媒体の浮き上がりが、前記搬送方向についての前記浮き上がりの連続状態に係る所定の条件を満たすか否かを判別する判別ステップ、
前記判別ステップにおいて前記条件が満たされていると判別された場合に所定の処理を行う処理ステップ、
を含み、
前記判別ステップでは、前記記録媒体のうち、直近で前記検出部による検出対象となった前記搬送方向についての所定長さの区間において、前記搬送方向について前記検出部により前記浮き上がりが検出された区間が占める割合が所定値以上である場合に前記条件が満たされていると判別し、
前記浮き上がりは、前記記録媒体のうち前記搬送面からの高さが所定の基準値を超えている部分である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に従うと、より適切に記録媒体の無駄な消費に繋がる状態を判別して検出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る実施形態のインクジェット記録装置の全体斜視図である。
【
図2】インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】インクジェット記録装置における記録媒体、記録媒体距離センサー及びキャリッジの位置関係を説明する側面図である。
【
図4】インクジェット記録装置の複数の動作モードの内容を説明する図である。
【
図5】動作モードB1におけるインクジェット記録装置の動作を説明する図である。
【
図6】浮き上がりの長さの取得方法を説明する図である。
【
図7】画像形成処理の制御部による制御手順を示すフローチャートである。
【
図8】浮上対応処理の制御部による制御手順を示すフローチャートである。
【
図9】変形例における浮上連続条件の判別方法を説明する図である。
【
図10】変形例1における複数の動作モードの内容を説明する図である。
【
図11】変形例2の記録媒体距離センサーの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のインクジェット記録装置及び記録媒体の浮き上がりの検出方法に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る実施形態のインクジェット記録装置100の全体斜視図である。また、
図2は、インクジェット記録装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0022】
このインクジェット記録装置100は、搬送部11と、複数(ここでは、8つ)のキャリッジ120と、キャリッジ120に各々対応して設けられたキャリッジ昇降部13(昇降部)とを備える。キャリッジ120は、それぞれ、搬送部11による搬送方向(x方向)に垂直な幅方向(y方向)に延在して、搬送部11による記録媒体の搬送面と対向するように配置され、搬送される記録媒体の全幅に亘ってインクを吐出可能にインクジェットヘッド12が固定されてラインヘッド構造をなしている。これらの8列に配置されたキャリッジ120は、8色のインクにそれぞれ対応して、搬送方向に互いに異なる位置に設けられている。キャリッジ120は、キャリッジ昇降部13により搬送面からの距離(z方向)が変更可能に設けられ、キャリッジ120の移動に伴ってインクジェットヘッド12も搬送面からの距離が変更される。
【0023】
インクジェット記録装置100は、機能構成として、搬送部11と、インクジェットヘッド12と、キャリッジ昇降部13と、制御部14(判別手段、処理手段、昇降制御手段、退避距離設定手段)と、操作表示部15(操作受付部、報知手段)と、通信部16と、などを備える。
【0024】
搬送部11は、搬送モーター111と、エンコーダー112と、記録媒体距離センサー113(検出部)と、駆動ローラー114と、搬送ベルト115などを備える。搬送モーター111は、駆動ローラー114を所定の速度で回転動作させる。駆動ローラー114には、図示略の従動ローラーと共に無端状の搬送ベルト115が巻回されて、当該駆動ローラー114の回転により搬送ベルト115を周回移動させる。この搬送ベルト115の外周面を搬送面として当該搬送面上に記録媒体が載置されて、当該記録媒体は、搬送ベルト115の周回移動に伴って搬送方向に搬送される。
【0025】
エンコーダー112は、搬送モーター111の回転角度や回転速度を計測するロータリーエンコーダーであり、当該搬送モーター111の回転速度から搬送ベルト115の移動速度、すなわち、記録媒体の搬送速度が算出される。
【0026】
記録媒体距離センサー113は、記録媒体と搬送面との距離(浮上距離)を計測するためのセンサーである。記録媒体距離センサー113は、搬送経路上で最初のインクジェットヘッド12(キャリッジ120)の搬送面との対向面(インク吐出面)における搬送方向上流側端部からさらに上流側に所定の距離Laの位置で記録媒体と搬送面との距離を計測するように設けられている。この記録媒体距離センサー113は、搬送面に対向する位置に設けられ、搬送面に載置された記録媒体までの距離の算出結果に基づいて記録媒体の浮き上がりを検出する。記録媒体距離センサー113の構成は、特には限られないが、例えば、記録媒体に対して出射された光の反射光を出射軸とは異なる受光軸で検出して、その受光位置に基づいて記録媒体表面との距離を算出する三角測距方式のものを用いることができる。
【0027】
インクジェットヘッド12は、駆動回路121と、インク吐出部122とを備える。インク吐出部122は、図示略のインク供給部と、インクを吐出する各ノズルの開口部とをそれぞれ繋ぐインク流路を有し、当該インク流路内のインクに所定の駆動パターンで圧力が加えられることでノズル開口部からインク液滴を吐出させる。ノズル開口部は、インクジェットヘッド12の搬送面と対向するインク吐出面に設けられ、インクは、記録媒体(搬送面)に対して略垂直に飛翔して着弾する構成となっている。ノズル開口部は、各インクジェットヘッド12のインク吐出面において、幅方向に所定の間隔(ピッチ)で複数配列されて設けられている。ノズル開口部の配列パターンは、特に限られず、単純な一次元配列であっても良いし、搬送方向に複数列を有する千鳥格子状配列などであっても良い。各キャリッジ120において、同色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッド12が配列されてラインヘッドが構成される場合には、隣接するインクジェットヘッド12に設けられたノズル開口部が幅方向に部分的に重複して配置されることで、記録媒体の全幅に亘り確実にインクの吐出が行われる構成であることが望ましい。
【0028】
駆動回路121は、インク吐出部122のインク流路内のインクに対する加圧状態を変化させ、適切なタイミングでノズル開口部からインクを吐出させるための駆動信号を出力する。インクに対する加圧状態を変化させる方法としては、周知の各種方法が用いられ、例えば、インク流路に沿って設けられた圧電体に適宜な波形で電圧を印加することでインク流路を変形圧縮/拡張させても良いし、電熱素子(抵抗素子)に通電してインク流路の壁面を加熱し、気泡を発生させることでインクを加圧しても良い。
なお、駆動回路121は、インクジェットヘッド12内でインク吐出部122とまとめて形成されるが、適宜配置されて良い。
【0029】
キャリッジ昇降部13は、モータードライバー131と、昇降モーター132と、電磁ブレーキ133と、梁部材134と、支持部135とを備え、キャリッジ120におけるインク吐出面の搬送面からの距離を変化させて固定する。詳しくは、キャリッジ昇降部13は、キャリッジ120のインク吐出面の位置(以下、単にキャリッジ120の位置とも記す)を、吐出位置P1(
図3)と最大退避位置P2(
図3)との間で移動させる。ここで、吐出位置P1は、キャリッジ120におけるインク吐出面と、搬送面上の記録媒体Mとの距離が所定のインク吐出距離D1となる位置であり、通常のインク吐出動作が行われる位置である。また、最大退避位置P2は、吐出位置P1から最大退避距離D2だけキャリッジ120を上方に退避させた位置である。
梁部材134は、搬送ベルト115の上部(記録媒体の搬送面側)で搬送方向を跨ぐ向きで略平行に二本設けられ、当該梁部材134の両端にそれぞれ二つの支持部135が固定される。昇降モーター132、電磁ブレーキ133及びキャリッジ120は、支持部135に取り付けられて、制御部14からの制御信号に基づいてモータードライバー131が昇降モーター132及び電磁ブレーキ133を駆動することでキャリッジ120の位置を定める。
【0030】
昇降モーター132は、モータードライバー131からの駆動信号に応じて所定の昇降速度でキャリッジ120を移動させる。昇降モーター132としては、例えば、サーボモーターやステッピングモーターが用いられる。
【0031】
電磁ブレーキ133は、モータードライバー131からの動作信号があった場合にキャリッジ120の固定状態を解除して、昇降モーター132によるキャリッジ120の移動を可能とする。すなわち、電源切断時を含めた通常の状態では、電磁ブレーキ133は、キャリッジ120を固定する。電磁ブレーキ133としては、例えば、ディスクブレーキが用いられる。
【0032】
制御部14は、インクジェット記録装置100の全体動作を統括制御し、各部を適切に動作させる。制御部14は、メモリー141と、CPU142(Central Processing Unit)と、ROM143(Read Only Memory)と、RAM144(Random Access Memory)と、バス145などを備える。
【0033】
メモリー141は、通信部16を介して外部から入力された画像データを一時的に記憶する。また、当該画像データがインクジェット記録装置100で画像形成用に処理される場合には、当該処理された画像データがメモリー141に記憶される。また、メモリー141は、記録媒体の浮き上がりの高さに応じたキャリッジ120の退避距離に係る設定データなどを記憶する。
【0034】
CPU142は、インクジェット記録装置100の動作制御に係る各種演算処理を行う。CPU142は、ROM143から読み出されたプログラムに従い、画像データ、各部のステータス信号やクロック信号などに基づいて画像形成に係る各処理を行う。なお、CPU142は、一つのCPUがインクジェット記録装置100の動作全てを集中制御しても良いし、動作制御用のCPUと、その他の処理、例えば、画像データの処理などに係る専用CPUを別個に保持、動作させても良い。
【0035】
ROM143は、CPU142により実行される各種のプログラムや初期設定データ等を記憶格納する。なお、ROM143に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
【0036】
RAM144は、CPU142に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。一時データには、昇降モーター132の動作に係るキャリッジ120の位置や、記録媒体距離センサー113の計測動作に係る距離データなどが含まれる。
【0037】
これらメモリー141、CPU142、ROM143及びRAM144は、バス145で互いに接続されてデータのやり取りが可能となっている。また、バス145には、制御部14の外部から搬送部11、インクジェットヘッド12、キャリッジ昇降部13、操作表示部15及び通信部16が接続されて、制御信号やデータなどのやり取りが行われる。
【0038】
操作表示部15は、ユーザーの操作などの外部入力を受け付けて入力信号として出力するとともに、CPU142からの制御信号に応じてインクジェット記録装置100の各種ステータスや動作メニューなどを表示する。操作表示部15は、操作入力手段として、例えば、押しボタンスイッチや操作キーなどを備え、また、表示手段(及び、ユーザーに対する報知を行う報知手段)としてLCD(液晶ディスプレイ)などの表示画面、その表示ドライバー及びインディケーターとして用いる発光部などを備える。また、表示画面にタッチセンサーを設けて当該表示画面をタッチパネルとして用いることもできる。
【0039】
通信部16は、外部から画像データや印刷ジョブに係るコマンドや設定を受信し、また、画像形成に係るステータス信号などを送信する通信動作のインターフェイスである。この通信部16としては、例えば、NIC(Network Interface Card)などであり、各種通信規格に基づくドライバーを含む。
【0040】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置100における画像形成動作について説明する。
図3は、インクジェット記録装置100における記録媒体M、記録媒体距離センサー113及びキャリッジ120の位置関係を説明する側面図である。
【0041】
本実施形態のインクジェット記録装置100では、搬送方向に距離Laよりも長く連続する記録媒体M、特に布帛が用いられる。ここでは、記録媒体M上には、当該布帛の搬送に応じて適宜設定された間隔(マージン)で、同一又は所定のパターン/順番で配列された画像データに基づく画像が順次形成されていく。
【0042】
画像形成に係るインクの吐出時には、キャリッジ120は、インク吐出面と搬送面上の記録媒体Mとの距離が所定のインク吐出距離D1となる吐出位置P1で固定される。
【0043】
ここで、記録媒体Mは、しわや反りなどによって搬送面から浮き上がっている場合がある。記録媒体Mのうち浮き上がりが生じている浮上部分では、インク吐出面と記録媒体Mの表面との距離が上述のインク吐出距離D1より小さくなる。この結果、インクの飛翔距離が短くなることで着弾位置が所望の位置からずれ、形成画像の画質の低下に繋がる。この画質低下は、インク吐出面と記録媒体Mの表面との距離の、インク吐出距離D1からの乖離が大きくなるほど、すなわち、浮き上がりによる記録媒体M(記録媒体表面)の搬送面からの高さが増大するほど顕著となる。以下では、浮き上がりが生じている浮上部分における記録媒体Mの搬送面からの高さを、単に浮き上がりの高さH(又は、浮上部分の高さH)と記す。
また、浮き上がりの高さHによっては、記録媒体Mがインク吐出面(インクジェットヘッド12やキャリッジ120)と接触(衝突)して、インクジェット記録装置100の故障に繋がる。
【0044】
そこで、本実施形態のインクジェット記録装置100では、記録媒体距離センサー113によって記録媒体Mの浮き上がりが検出され、検出された浮き上がりの高さHや浮き上がりの搬送方向についての長さLに応じて異なる複数の動作モードで動作することで、浮き上がりに起因する上記の問題の発生を抑制することができるようになっている。
【0045】
図4は、インクジェット記録装置100の複数の動作モードの内容を説明する図である。
図4に示されるように、本実施形態のインクジェット記録装置100は、動作モードA、B1、B2、C1、C2及びDの6つの動作モードで動作する。以下、各動作モードの内容について説明する。
【0046】
<動作モードA>
記録媒体Mの搬送面からの高さHが第1基準値H1以下である場合には、インクジェット記録装置100は、動作モードAで動作する。
動作モードAでは、キャリッジ120が吐出位置P1に固定されて、通常の画像形成動作が行われる。詳しくは、動作モードAでは、通常の搬送速度で記録媒体Mの搬送が行われ、キャリッジ120が吐出位置P1に固定され、インクジェットヘッド12のインク吐出部122による、形成画像の画像データに応じたインク吐出動作が実行される。
ここで、第1基準値H1は、記録媒体Mの浮き上がりに起因する画質低下が所定の基準に基づく許容範囲内となる範囲の上限値である。したがって、記録媒体Mの高さHが第1基準値H1以下である場合には、画質の管理上、問題となる浮き上がりがないものとみなすことができ、動作モードAによる通常の画像形成動作を行うことで、許容範囲内の画質の画像を形成することができる。このため、本明細書では、記録媒体Mのうち搬送面からの高さHが第1基準値H1を超えている部分を浮き上がり(浮上部分)と定義する。
【0047】
<動作モードB1>
搬送面からの高さHが第1基準値H1より大きく、かつ第2基準値H2以下である浮き上がりが検出された場合には、インクジェット記録装置100は、動作モードB1で動作する。
動作モードB1では、キャリッジ昇降部13が動作して、記録媒体Mの浮き上がりに対応する距離だけキャリッジ120を上昇させて退避させた上で、記録媒体Mを通常速度で搬送させながらインク吐出動作が行われる。これにより、インク吐出面と記録媒体Mの浮上部分との距離を略一定に保ちつつ画像が形成されるため、形成画像の著しい画質低下を抑えつつ画像形成を継続させることができる。
【0048】
動作モードB1では、キャリッジ120の高さは、記録媒体Mの浮き上がりのうち第1基準値H1を超えた部分の高さに応じて段階的に、又は連続的に調整され、記録媒体Mの浮き上がりが第2基準値H2である場合には、最大退避位置P2とされる。すなわち、第2基準値H2は、キャリッジ120を最大退避位置P2まで退避させた状態で許容範囲内の画質の画像を形成することができる浮き上がりの高さの上限値である。第2基準値H2は、例えば、第1基準値H1との高度差が最大退避距離D2となる高さである。
また、記録媒体Mの浮き上がりの高さHに応じたキャリッジ120の退避位置は、メモリー141に記憶された設定データにおいて予め設定されている。この設定データは、出荷時に固定されたものとしても良いし、操作表示部15により受け付けられたユーザーからの入力操作に応じて、制御部14により設定が変更されるようになっていても良い。
【0049】
また、動作モードB1では、第1基準値H1を超える高さで浮き上がりが生じている浮上部分が、搬送方向についてキャリッジ120の下流側に移動したタイミングで、キャリッジ120が降下して元の吐出位置P1に復帰する。
【0050】
図5は、動作モードB1におけるインクジェット記録装置100の動作を説明する図である。
図5では、8つのキャリッジ120が、搬送方向上流側から順番に1列目のキャリッジ120a、2列目のキャリッジ120b、…8列目のキャリッジ120hと記されている。
【0051】
図5(a)のように記録媒体距離センサー113によって第1基準値H1より大きく第2基準値H2以下の浮き上がりが検出されると、インクジェット記録装置100は、動作モードB1に移行する。また、当該浮き上がりが検出されると、メモリー141の設定データが参照されて、浮き上がりの高さに応じたキャリッジ120の退避距離が取得される。そして、記録媒体Mの浮上部分が1列目のキャリッジ120aと対向する範囲内に到達するタイミング(又は当該タイミングに対して所定のマージン分だけ早いタイミング)より前に、取得された退避距離の退避動作が完了するように、1列目のキャリッジ120aの退避動作が行われる(
図5(b))。2列目以降のキャリッジ120b~120hについてもそれぞれ同様に、浮上部分の到達前に退避動作が完了するタイミングで退避動作が行われる(
図5(c))。
【0052】
また、高さHが第1基準値H1を超える浮上部分が1列目のキャリッジ120aと対向する範囲内を通過して搬送方向下流側に搬送されると、1列目のキャリッジ120aが下降して通常の吐出位置P1に復帰する。2列目以降のキャリッジ120b~120hについてもそれぞれ同様に、浮上部分が下流側に通過したタイミングで下降して吐出位置P1に復帰する。
【0053】
そして、浮上部分が8番目のキャリッジ120hの下流側に移動して、全てのキャリッジ120が吐出位置P1に復帰すると(
図5(d))、インクジェット記録装置100は、動作モードAに移行する。
【0054】
<動作モードC1>
搬送面からの高さHが第2基準値H2より大きく、かつ第3基準値H3未満である浮き上がりが検出された場合には、インクジェット記録装置100は、動作モードC1で動作する。
動作モードC1では、第2基準値H2を超える浮上部分がキャリッジ120と対向する範囲内を通過する期間において、当該キャリッジ120が最大退避位置P2に固定され、当該キャリッジ120のインクジェットヘッド12からのインク吐出動作が中止される。また、記録媒体Mの搬送は、通常速度で継続される。
動作モードC1では、第2基準値H2を超える浮上部分が各キャリッジ120と対向する範囲内に到達する前、及び当該範囲内を通過した後における各キャリッジ120の動作は、上述の動作モードB1と同一の動作とすることができる。なお、これに代えて、第2基準値H2を超える浮上部分が検出されたタイミングで、全てのキャリッジ120の最大退避位置P2への退避動作を開始した上で、全てのキャリッジ120におけるインク吐出動作を中止するようにしても良い。
【0055】
キャリッジ120は、最大退避位置P2からさらに上昇させることができないことから、浮き上がりの高さが第2基準値H2を超えている場合には、インク吐出面と記録媒体Mとの間の必要な距離を確保できなくなるため、インク吐出動作を継続させると画質が著しく低下して許容範囲より低い画質となってしまう。このため、動作モードC1では、記録媒体Mの搬送を継続させつつ、第2基準値H2を超える高さHの浮上部分が通過する期間においてインク吐出動作を一時的に中止することで、許容範囲より低い画質での画像の形成が防止される。
また、第3基準値H3は、キャリッジ120の最大退避位置P2に一致する高さとされる。したがって、浮き上がりの高さHが第3基準値H3未満である場合に実行される動作モードC1において、記録媒体Mの搬送を継続しても、記録媒体Mがキャリッジ120におけるインク吐出面と接触することはない。なお、第3基準値H3は、最大退避位置P2に一致する高さに対して所定のマージン分だけ低い高さに設定しても良い。これによって、より確実に記録媒体Mのインク吐出面への接触を避けることができる。
【0056】
動作モードC1は、動作モードB1において検出されている浮き上がりの高さHが第2基準値H2を超えた場合に、動作モードB1から移行することで開始される。あるいは、記録媒体Mの検出高さHが第1基準値H1以下の状態から、所定の短時間で第2基準値H2を超える浮き上がりが検出された場合には、動作モードB1を経由せずに動作モードA1から動作モードC1に移行しても良い。
また、動作モードC1において、第2基準値H2を超える浮き上がりが全てのキャリッジ120の下流側に移動すると、インクジェット記録装置100は、動作モードC1から動作モードB1に移行する。
【0057】
<動作モードD>
搬送面からの高さHが第3基準値H3以上である浮き上がりが検出された場合には、インクジェット記録装置100は、動作モードDで動作する。
動作モードDでは、キャリッジ120が最大退避位置P2に固定され、キャリッジ120のインクジェットヘッド12からのインク吐出動作が中止され、かつ記録媒体Mの搬送が中止される。浮き上がりの高さHが第3基準値H3以上となっている場合には、キャリッジ120を最大退避位置P2に退避させても、記録媒体Mがキャリッジ120のインク吐出面に接触し得る。このため、動作モードDでは、記録媒体Mの搬送を中止させることで、記録媒体Mがインク吐出面に接触する不具合の発生が未然に防止される。
【0058】
また、動作モードDに移行した場合には、操作表示部15において、ユーザーに対して必要な措置の実行を促す警告画面が表示される。ここで行われる措置は、再び動作モードAでの通常の画像形成動作が可能な状態とするために必要な措置であり、例えば、記録媒体Mの浮き上がりの補修や、補修が困難な場合に記録媒体Mを下流側に移動させたり交換したりする措置が含まれる。
ユーザーは、必要な措置を行った後、上記の警告画面に表示されている復帰ボタンを選択する入力操作を行うことで、インクジェット記録装置100に復帰動作を行わせることができる。この復帰動作では、記録媒体距離センサー113などの各種センサーにより、動作モードAでの動作が可能な状態であるか否かが判別され、当該動作が可能であると判別された場合には、動作モードAでの画像形成動作が再開される。
【0059】
<動作モードB2>
次に、動作モードB2の動作内容について説明する。
上述の動作モードB1では、浮き上がりの高さHに応じた距離だけキャリッジ120を退避させた上でインク吐出動作を行うことで、形成される画像の著しい画質低下を抑えつつ画像形成が継続される。しかしながら、浮き上がりの高さに対してキャリッジ120の高さを完全に追従させることはできないため、記録媒体Mの表面とキャリッジ120のインク吐出面との距離が変動しやすく、動作モードAでの形成画像の画質と比較して画質が低下しやすい。このため、記録媒体Mの浮き上がりが搬送方向について長く連続している場合に動作モードB1での画像形成を続けると、画質低下のある低画質領域が意図しない長さで大量に生じてしまい、記録媒体Mの無駄な消費に繋がる。記録媒体Mに布帛が用いられている場合には、搬送方向に長く延びるしわが特に発生しやすい傾向があり、このような不具合が生じやすい。
【0060】
そこで、上述の動作モードB1では、記録媒体Mの浮き上がりが、搬送方向についての浮き上がりの連続状態に係る所定の浮上連続条件(所定の条件)を満たすか否かが判別され、浮上連続条件を満たすと判別された場合に、動作モードB1から動作モードB2に移行する。具体的には、
図6に示されるように、記録媒体距離センサー113による検出データに基づいて、第1基準値H1を超える浮き上がりが搬送方向について連続している部分の長さLが取得される。そして、この長さLが所定の基準長さL0以上である場合に浮上連続条件が満たされると判別され、動作モードB1から動作モードB2に移行する。
長さLの取得方法は、特には限られないが、例えば、エンコーダー112による搬送モーター111の回転速度の検出結果に基づいて算出された搬送ベルト115の移動速度と、第1基準値H1を超える浮き上がりが連続して検出された期間の長さ(継続時間)との積により長さLを算出することができる。
【0061】
動作モードB2では、記録媒体Mの搬送速度が、通常速度より小さい所定の低速とされ、さらにキャリッジ120のインクジェットヘッド12によるインク吐出動作が中止される。キャリッジの退避位置は、動作モードB1での設定値に従う。
このように、浮き上がりの長さが基準長さL0に達した時点でインク吐出動作(すなわち、画像形成)が中止されることで、低画質領域の生成をその時点で止めることができるため、低画質領域が意図しない長さで生成され続けてしまう不具合の発生が防止される。
また、搬送速度が低速とされることで、画像が形成されない未形成領域の発生を最小限に抑えることができる。また、記録媒体Mの移動速度が低減されることで、ユーザーが浮き上がりの補修を容易に行えるようにすることができる。
なお、動作モードB2では、記録媒体Mの搬送を中止させても良い。
【0062】
また、動作モードB2に移行した場合においても、操作表示部15において上述の警告画面が表示される。そして、ユーザーによる上述の必要な措置がなされて、警告画面における復帰ボタンを選択する入力操作が行われると、上述の復帰動作が行われて動作モードAでの画像形成動作が再開される。
【0063】
<動作モードC2>
次に、動作モードC2の動作内容について説明する。
上述の動作モードC1では、記録媒体Mの搬送を継続させながら、低画質の画像が形成されるのを防止するために、インク吐出動作が一時的に中止される。しかしながら、記録媒体Mの浮き上がりが搬送方向について長く連続している場合に、動作モードC1での動作を続けると、画像が形成されない未形成領域が大量に生じてしまい、記録媒体Mの無駄な消費に繋がる。
そこで、動作モードC1では、動作モードB1と同様に、浮き上がりが搬送方向について連続している部分の長さLが取得され、取得された長さLが所定の基準長さL0以上になった(すなわち、浮上連続条件が満たされている)と判別された場合に、動作モードC1から動作モードC2に移行する。
なお、動作モードC1の前に動作モードB1での動作が行われていた場合には、動作モードB1からの、第1基準値H1を超える浮上部分の長さLの累積値が基準長さL0に達していることを浮上連続条件として、当該浮上連続条件が満たされていると判別された場合に動作モードC2に移行する。
【0064】
動作モードC2では、キャリッジが退避位置に固定され、インク吐出動作が中止された状態で、記録媒体Mの搬送速度が、通常速度より小さい所定の低速に変更される。
このように搬送速度が低速とされることで、画像の未形成領域の発生を最小限に抑えることができる。また、記録媒体Mの移動速度が低減されることで、ユーザーが浮き上がりの補修を容易に行えるようにすることができる。
なお、動作モードC2では、記録媒体Mの搬送を中止させても良い。
【0065】
また、動作モードC2に移行した場合においても、操作表示部15において上述の警告画面が表示される。そして、ユーザーによる必要な措置がなされて、警告画面における復帰ボタンを選択する入力操作が行われると、上述の復帰動作が行われて動作モードAでの画像形成動作が再開される。
【0066】
これらの動作モードB2及び動作モードC2において行われる処理のうち、搬送速度を低下させ、又は搬送を中止させる処理、インク吐出動作を中止させる処理、及び操作表示部15に警告画面を表示させる処理は、記録媒体Mの消費を抑制するための所定の処理(以下、浮上対応処理とも記す)の一態様である。また、報知手段としての操作表示部15に警告画面を表示させる処理は、報知手段に報知動作を実行させる処理の一態様である。
【0067】
図7は、本実施形態のインクジェット記録装置100において実行される画像形成処理の制御部14による制御手順を示すフローチャートである。
【0068】
この画像形成処理は、例えば、通信部16を介して制御部14がプリントジョブを受け取った場合や、操作表示部15からメモリー141に記憶されている画像データに係る画像形成の命令が入力されたのを制御部14が検出した場合に開始される。
【0069】
画像形成処理が開始されると、制御部14は、インクジェット記録装置100の各部を動作させて、動作モードAで画像形成を開始させる(ステップS101)。すなわち、制御部14は、搬送モーター111に制御信号を出力し、搬送部11により通常の搬送速度での記録媒体Mの搬送を開始させる。また、制御部14は、必要に応じてモータードライバー131に制御信号を出力し、キャリッジ120を吐出位置P1に移動させる。また、キャリッジ120の移動が完了すると、制御部14は、駆動回路121に制御信号を出力し、また、メモリー141から画像データを適宜なタイミングで出力させて、各ノズルからインクを吐出させることにより画像形成を開始する。
【0070】
制御部14は、記録媒体距離センサー113の検出データを取得して、当該記録媒体距離センサー113による検出位置で、H1<H≦H2を満たす高さHの記録媒体Mの浮き上がりが検出されたか否かを判別する(ステップS102)。
【0071】
H1<H≦H2を満たす高さHの浮き上がりが検出されたと判別された場合には(ステップS102で“YES”)、制御部14は、インクジェット記録装置100を動作モードB1に移行させる(ステップS103)。すなわち、制御部14は、メモリー141に記憶された設定データを参照して、記録媒体Mの浮き上がりの高さHに応じたキャリッジ120の退避位置を取得する。また、制御部14は、記録媒体Mの浮上部分が各キャリッジ120と対向する範囲内に到達する前に、取得された退避距離の退避動作が完了するタイミングで、キャリッジ昇降部13により各キャリッジ120の退避動作を開始させる。
【0072】
ステップS102の処理においてH1<H≦H2を満たす高さHの浮き上がりが検出されていないと判別された場合には(ステップS102で“NO”)、制御部14は、H2<H<H3を満たす高さHの記録媒体Mの浮き上がりが検出されたか否かを判別する(ステップS104)。
【0073】
H2<H<H3を満たす高さHの浮き上がりが検出されたと判別された場合には(ステップS104で“YES”)、制御部14は、インクジェット記録装置100を動作モードC1に移行させる(ステップS105)。すなわち、制御部14は、このような浮き上がりがキャリッジ120に対向する範囲内を通過する期間においてキャリッジ昇降部13によりキャリッジ120を最大退避位置P2に退避させて、インクジェットヘッド12によるインク吐出動作を中止させる。
なお、ここでは便宜上、動作モードAから動作モードB1を経由せずに直接動作モードC1に移行させる例を用いて説明しているが、ステップS103で動作モードB1に移行した後にH2<H<H3を満たす高さHの浮き上がりが検出された場合にも、ステップS105の処理が実行されてインクジェット記録装置100が動作モードC1に移行する。
【0074】
ステップS104の処理においてH2<H<H3を満たす高さHの浮き上がりが検出されていないと判別された場合には(ステップS104で“NO”)、制御部14は、H3≦Hを満たす高さHの記録媒体Mの浮き上がりが検出されたか否かを判別する(ステップS106)。
【0075】
H3≦Hを満たす高さHの浮き上がりが検出されたと判別された場合には(ステップS106で“YES”)、制御部14は、インクジェット記録装置100を動作モードDに移行させる(ステップS107)。すなわち、制御部14は、キャリッジ昇降部13によりキャリッジ120を最大退避位置P2に移動させて、インクジェットヘッド12によるインク吐出動作を中止させ、かつ搬送部11による記録媒体Mの搬送を中止させる。
なお、ここでは便宜上、動作モードAから動作モードB1やC1を経由せずに直接動作モードDに移行させる例を用いて説明しているが、ステップS103で動作モードB1に移行した後、又はステップS105で動作モードC1に移行した後にH3≦Hを満たす高さHの浮き上がりが検出された場合にも、ステップS107の処理が実行されてインクジェット記録装置100が動作モードDに移行する。
【0076】
H3≦Hを満たす高さHの浮き上がりが検出されていないと判別された場合には(ステップS106で“NO”)、制御部14は、動作モードAでの通常の画像形成動作を継続させ、処理をステップS110に移行させる。
【0077】
ステップS103で動作モードB1に移行した場合、及びステップS105で動作モードC1に移行した場合には、制御部14は、浮き上がりが連続している部分の搬送方向についての長さLが、基準長さL0以上となっているか否かを判別する(ステップS108:判別ステップ)。
【0078】
長さLが基準長さL0以上となっていると判別された場合(ステップS108で“YES”)、及びステップS107の処理で動作モードDに移行した場合には、制御部14は、後述する浮上対応処理を実行する(ステップS109:処理ステップ)。
【0079】
浮上対応処理が終了した場合、ステップS108の処理で長さLが基準長さL0未満であると判別された場合(ステップS108で“NO”)、又はステップS106の処理でH3≦Hを満たす高さHの浮き上がりが検出されていないと判別された場合(ステップS106で“NO”)には、制御部14は、画像形成が正常終了したか否かを判別する(ステップS110)。正常終了していない、すなわち、画像形成が終了していないと判別された場合には(ステップS110で“NO”)、制御部14は、処理をステップS102に戻す。
画像形成が正常終了したと判別された場合には(ステップS110で“YES”)、制御部14は、画像形成処理を終了する。
【0080】
図8は、浮上対応処理の制御部14による制御手順を示すフローチャートである。
浮上対応処理が呼び出されると、制御部14は、インクジェット記録装置100が動作モードB1で動作しているか否か(すなわち、画像形成処理のステップS103を経由して浮上対応処理が呼び出されたか否か)を判別する(ステップS201)。
【0081】
インクジェット記録装置100が動作モードB1で動作していると判別された場合には(ステップS201で“YES”)、制御部14は、インクジェット記録装置100を動作モードB2に移行させる(ステップS202)。すなわち、制御部14は、搬送モーター111に制御信号を出力し、搬送部11による記録媒体Mの搬送速度を所定の低速に変更させる。また、制御部14は、駆動回路121に制御信号を出力して、インクジェットヘッド12によるインク吐出動作を中止させる。
【0082】
ステップS201の処理でインクジェット記録装置100が動作モードB1で動作していないと判別された場合には(ステップS201で“NO”)、制御部14は、インクジェット記録装置100が動作モードC1で動作しているか否か(すなわち、画像形成処理のステップS105を経由して浮上対応処理が呼び出されたか否か)を判別する(ステップS203)。
【0083】
インクジェット記録装置100が動作モードC1で動作していると判別された場合には(ステップS203で“YES”)、制御部14は、インクジェット記録装置100を動作モードC2に移行させる(ステップS204)。すなわち、制御部14は、搬送モーター111に制御信号を出力し、搬送部11による記録媒体Mの搬送速度を所定の低速に変更させる。また、制御部14は、キャリッジ昇降部13によりキャリッジ120を最大退避位置P2に退避させ、インクジェットヘッド12によるインク吐出動作を中止させる。
【0084】
ステップS202の処理によりインクジェット記録装置100が動作モードB2に移行した場合、ステップS204の処理によりインクジェット記録装置100が動作モードC2に移行した場合、又はステップS203の処理でインクジェット記録装置100が動作モードC1で動作していない(すなわち、インクジェット記録装置100が動作モードDで動作している)と判別された場合には(ステップS203で“NO”)、制御部14は、操作表示部15により上述の警告画面を表示させる(ステップS205)。
【0085】
制御部14は、操作表示部15の警告画面における復帰ボタンを選択する入力操作がなされたか否かを判別し(ステップS206)、当該入力操作がなされたと判別された場合には(ステップS206で“YES”)、動作モードAへの復帰条件が満たされているか否かを判別する(ステップS207)。動作モードAへの復帰条件が満たされていないと判別された場合(ステップS207で“NO”)、又はステップS206の処理で復帰ボタンに対する入力操作がなされていないと判別された場合(ステップS206で“NO”)には、制御部14は、処理をステップS206に戻す。
【0086】
ステップS207の処理において、復帰条件が満たされていると判別された場合には(ステップS207で“YES”)、制御部14は、インクジェット記録装置100を動作モードAで動作させて画像形成動作を再開させ(ステップS208)、浮上対応処理を終了させる。
【0087】
(変形例1)
続いて上記実施形態の変形例について説明する。本変形例は、浮き上がりの連続状態に係る浮上連続条件が上記実施形態と異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0088】
図9は、本変形例における浮上連続条件の判別方法を説明する図である。
本変形例では、記録媒体Mのうち、直近で記録媒体距離センサー113による検出対象となった搬送方向についての所定長さLbの検出対象区間において、搬送方向について記録媒体距離センサー113により浮き上がりが検出された区間(すなわち、浮き上がりが搬送方向に連続している区間)が占める割合Rが所定値R0以上である場合に浮上連続条件が満たされていると判別される。割合Rは、上記検出対象区間における各浮き上がりの長さLの和を、検出対象区間の長さLbで除すことで算出される。したがって、本変形例では、個々の浮き上がりの搬送方向についての長さLが上述の基準長さL0より小さい場合であっても、これらの浮き上がりが搬送方向について断続的に連なっているような連続状態にある場合に、浮上連続条件が満たされていると判別される。
【0089】
図10は、本変形例における複数の動作モードの内容を説明する図である。
図10に示されるように、本変形例では、所定長さLbの区間における浮上部分の割合Rが所定値R0以上である場合に、動作モードB1から動作モードB2に、また動作モードC1からC2に、それぞれ移行する。その他の点は、上記実施形態に係る
図4の動作モードと同様である。
【0090】
(変形例2)
続いて上記実施形態の変形例2について説明する。本変形例は、記録媒体距離センサー113の構成が上記実施形態と異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0091】
図11は、本変形例の記録媒体距離センサー113の構成を示す斜視図である。
本変形例の記録媒体距離センサー113は、搬送面に平行な光路を進行する光を出射する光(ここでは、レーザー光)を出射する発光部113aと、発光部113aから出射された光を検出する受光部113bとを備え、発光部113aから出射された光の受光部113bによる検出状態の変化により浮き上がりを検出する。
図11では、図面の都合上、単一のレーザー光のみが記載されているが、発光部113aからは、搬送面からの高さが互いに異なる複数の光路を進行する複数の光が出射され、これらの各出射光の受光部113bへの入射状態から、浮き上がりの高さが検出される。
【0092】
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、搬送面に載置された記録媒体Mを搬送する搬送部11と、搬送部11により搬送される記録媒体Mに対してインクを吐出するインク吐出部122と、搬送部11による記録媒体Mの搬送方向についてインク吐出部122より上流側の所定位置における搬送面からの記録媒体Mの浮き上がりを検出する記録媒体距離センサー113と、制御部14と、を備え、制御部14は、記録媒体距離センサー113による検出結果に基づいて、記録媒体Mの浮き上がりが、搬送方向についての浮き上がりの連続状態に係る所定の浮上連続条件(所定の条件)を満たすか否かを判別し(判別手段)、浮上連続条件が満たされていると判別された場合に所定の浮上対応処理(所定の処理)を行う(処理手段)。
このような構成によれば、記録媒体Mの浮き上がりが搬送方向について長い区間に亘って連続し、又は断続的に連なっているような場合に、記録媒体Mの無駄な消費に繋がる状態であると判別して検出することができる。また、当該検出に応じて上記の浮上対応処理が行われることで、長い区間に亘る浮き上がりの発生に起因する記録媒体Mの無駄な消費を抑制することができる。具体的には、記録媒体Mの浮き上がりに応じて画像の未形成領域や低画質領域が意図しない長さで生じる不具合の発生を抑制することができる。
【0093】
また、制御部14は、記録媒体距離センサー113により検出された記録媒体Mの浮き上がりが、搬送方向について所定の基準長さL0以上連続している場合に浮上連続条件が満たされていると判別する(判別手段)。これにより、記録媒体Mの搬送中にインク吐出動作を中止することで生じる未形成領域や、浮き上がりに応じた距離だけキャリッジ120を上方に退避させつつ画像形成を継続させた場合に生じる低画質領域が、搬送方向について基準長さL0以上連続して発生するのを防止することができる。よって、未形成領域や低画質領域が意図しない長さで発生するのを抑制することができる。
【0094】
また、上記変形例に係る制御部14は、記録媒体Mのうち、直近で記録媒体距離センサー113による検出対象となった搬送方向についての所定長さLbの区間において、搬送方向について記録媒体距離センサー113により浮き上がりが検出された区間が占める割合Rが所定値R0以上である場合に浮上連続条件が満たされていると判別する(判別手段)。これにより、個々の浮き上がりの搬送方向についての長さLが基準長さL0未満であっても、これらの浮き上がりが連なって、搬送方向について浮き上がりの発生頻度が高くなっている場合に、未形成領域や低画質領域が意図しない長さの範囲に亘って発生するのを抑制することができる。
【0095】
また、制御部14は、インク吐出部122によるインクの吐出を中止させる浮上対応処理を行う(処理手段)。これにより、記録媒体Mの浮き上がりが搬送方向について長い区間に亘って生じている場合に、低画質領域の増大を止めることができる。
【0096】
また、制御部14は、搬送部11による記録媒体Mの搬送速度を低減させ、又は搬送部11による記録媒体Mの搬送を中止させる浮上対応処理を行う(処理手段)。浮上対応処理において搬送速度を低減させることで、未形成領域や低画質領域の生成速度を低減させることができる。また、浮上対応処理において搬送を中止させることで、未形成領域や低画質領域の増大を止めることができる。
【0097】
また、インクジェット記録装置100は、報知手段としての操作表示部15を備え、制御部14は、操作表示部15により所定の警告画面を表示させる浮上対応処理を行う(処理手段)。これにより、未形成領域や低画質領域が意図しない長さで発生する可能性があることをユーザーに認識させることができ、これらの領域の増大を抑制するための措置の実行をユーザーに促すことができる。
【0098】
また、インク吐出部122は、搬送面に対向するインク吐出面に設けられたノズルの開口部からインクを吐出し、インクジェット記録装置100は、インク吐出部122を移動させて、インク吐出面と搬送面との距離を変化させるキャリッジ昇降部13を備え、制御部14は、記録媒体距離センサー113により浮き上がりが検出された場合に、記録媒体Mのうち浮き上がりが検出された浮上部分がインク吐出面と対向する範囲内に搬送されるタイミングまでの間に、インク吐出面と搬送面との距離を、インク吐出面と浮上部分とが接触しない退避距離となるように変化させる退避動作をキャリッジ昇降部13に行わせる(昇降制御手段)。これにより、記録媒体Mに浮き上がりが生じている場合に、記録媒体Mがインク吐出面に衝突する不具合の発生を抑制することができる。
【0099】
また、記録媒体距離センサー113は、浮き上がりの搬送面からの高さHを検出可能に設けられており、制御部14は、インク吐出面と搬送面との距離を、浮き上がりの高さHに応じた退避距離となるように変化させる退避動作をキャリッジ昇降部13に行わせる(昇降制御手段)。これにより、浮き上がりの高さHに応じた退避距離だけキャリッジ120を退避させつつインク吐出部122からインク吐出を行うことができるため、画質の低下を許容範囲内に抑えた状態で画像形成を継続させることができ、画像形成のスループットの低下を抑制することができる。
【0100】
また、インクジェット記録装置100は、外部からの入力操作を受け付ける操作表示部15を備え、制御部14は、操作表示部15により受け付けられた入力操作に応じて退避距離に係る設定を行う(退避距離設定手段)。これによれば、浮き上がりが検出された場合に、インク吐出面と搬送面との距離が適切な退避距離となるようにキャリッジ120を退避させることができる。よって、浮き上がりが生じている範囲に画像形成を継続させる場合の画質の低下をより効果的に抑えることができる。
【0101】
また、記録媒体距離センサー113は、搬送面に対向する位置に設けられ、搬送面に載置された記録媒体Mまでの距離の測定結果に基づいて浮き上がりを検出する。このような構成によれば、検出位置における記録媒体Mの搬送面からの高さの変化から確実に浮き上がりを検出することができる。
【0102】
また、記録媒体距離センサー113は、搬送面に平行な光路を進行する光を出射する発光部113aと、当該発光部113aから出射された光を検出する受光部113bとを備え、発光部113aから出射された光の受光部113bによる検出状態の変化により浮き上がりを検出する。これにより、簡易な構成で記録媒体Mの浮き上がりを検出することができる。
【0103】
また、上記実施形態のインクジェット記録装置100における記録媒体Mの浮き上がりの検出方法は、記録媒体距離センサー113による検出結果に基づいて、記録媒体Mの浮き上がりが、搬送方向についての浮き上がりの連続状態に係る所定の浮上連続条件(所定の条件)を満たすか否かを判別する判別ステップ、判別ステップにおいて浮上連続条件が満たされていると判別された場合に所定の浮上対応処理(所定の処理)を行う処理ステップ、を含む。このような方法によれば、より適切に記録媒体Mの無駄な消費に繋がる状態を判別して検出することができる。
【0104】
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態及び変形例では、記録媒体Mの消費を抑制するための浮上対応処理として、記録媒体Mの搬送速度を低下させ、又は搬送を中止させる処理、インク吐出動作を中止させる処理、及び操作表示部15に警告画面を表示させる処理を例に挙げて説明したが、これに限られず、浮上対応処理は、直接又は間接的に記録媒体Mの消費の抑制に繋がる任意の処理とすることができる。
【0105】
また、上記実施形態及び変形例では、記録媒体として搬送方向に連続した布帛を例に挙げて説明したが、記録紙やその他の素材でも良く、例えば、薄膜フィルムのようにしわが生じやすいものに対して、本発明は、より好ましく適用される。また、連続した記録媒体(連帳媒体)に限らず、カット紙であっても良い。
【0106】
また、インクジェットヘッド12のインク吐出面が昇降モーター132の動作によって搬送面からの距離を可変に設定可能であれば、昇降モーター132の種別や、インクジェットヘッド12と昇降モーター132との取り付け配置や構造は任意に定められる。例えば、複数のインクジェットヘッド12が直接キャリッジに取り付けられても良いし、複数のインクジェットヘッド12がインクジェットヘッドユニットにまとめて形成されて、当該インクジェットヘッドユニットがキャリッジに取り付けられても良い。
また、インクジェットヘッド12の数やサイズは、任意に定められる。
【0107】
また、インク吐出面は、完全な平面である必要は無い。この場合、搬送面とインク吐出面との距離が最も小さくなる場合を基準として動作させれば良い。
【0108】
また、搬送速度をエンコーダー112から直接取得する必要は無く、予めメモリー141などに記憶された設定速度を取得して利用しても良い。エンコーダー112から速度や搬送距離が取得される場合には、経過時間や搬送距離の計測中に搬送速度が変化しても柔軟かつ正確に計測値を取得することができる。
【0109】
また、上記実施形態及び変形例における動作モードB1及び動作モードB2では、記録媒体Mの浮き上がりの高さHに応じてキャリッジ120の高さを調整したが、動作モードB1及び動作モードB2におけるキャリッジ120の高さを所定の退避位置に固定しても良い。
【0110】
また、上記実施形態及び変形例では、記録媒体Mのしわや反りなどによる浮き上がりの検出(動作モードの遷移や、警告画面の表示等)を行う場合について説明したが、本明細書で示した浮き上がりは、実際に記録媒体Mと搬送面とが離れている場合に限られず、記録媒体Mの厚みが不均一な場合による表面の凹凸を含むこととして、この場合にも同様に、当該記録媒体Mの厚みの変化に応じた検出方法を適用しても良い。例えば、記録媒体Mの端部同士を重畳させて繋げることで長尺の記録媒体Mが形成されている場合には、当該重畳部分において、記録媒体の厚みが増大して記録媒体表面の浮き上がりが生じるが、このような浮き上がりに対して上記の検出方法を適用しても良い。
【0111】
また、報知手段による報知動作として、操作表示部15による警告画面の表示を例に挙げて説明したが、これに限られない。報知動作は、例えば、所定の警告ランプを点灯させる動作や、ビープ音などの所定の警告音を発生させる動作などとしても良い。
【0112】
また、上記実施形態では、8色のインクを用いたラインヘッド型のインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、色数はこれに限られず、例えば、単色での画像形成のみを行うインクジェット記録装置であっても良い。また、インクジェット記録装置100がラインヘッド型の構造を有するものではない場合でも、インクジェットヘッド12の幅方向への移動速度を考慮に入れながら本発明に係る技術を適用することができる。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0114】
11 搬送部
12 インクジェットヘッド
13 キャリッジ昇降部
14 制御部
15 操作表示部
16 通信部
100 インクジェット記録装置
111 搬送モーター
112 エンコーダー
113 記録媒体距離センサー
114 駆動ローラー
115 搬送ベルト
120 キャリッジ
121 駆動回路
122 インク吐出部
131 モータードライバー
132 昇降モーター
133 電磁ブレーキ
134 梁部材
135 支持部
141 メモリー
142 CPU
143 ROM
144 RAM
145 バス
M 記録媒体