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特許7035811樹脂枠製造方法、蓄電モジュールの製造方法、樹脂枠、及び、蓄電モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】樹脂枠製造方法、蓄電モジュールの製造方法、樹脂枠、及び、蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20220308BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20220308BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220308BHJP
   H01M 50/184 20210101ALN20220308BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/02 Z
H01M10/04 Z
H01M50/184 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018100839
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019186179
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2018068237
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛恭
(72)【発明者】
【氏名】濱口 陽平
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-204360(JP,A)
【文献】特開2003-249259(JP,A)
【文献】特開2006-210002(JP,A)
【文献】特開2015-223499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/00-10/39
H01M 50/00-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極の周縁部に設けられる樹脂枠を製造するための樹脂枠製造方法であって、
シート状の母材から、前記樹脂枠のための枠状の樹脂シートを切り出す第1工程と、
前記樹脂シートを折り返すことにより前記樹脂枠を形成する第2工程と、
を備え、
前記樹脂シートは、枠状の第1部分と、前記第1部分に連続する第2部分と、を含み、
前記第2工程においては、前記第2部分が前記第1部分に重複するように前記樹脂シートを折り返して重複部を形成することにより、前記母材の厚さよりも厚い部分を有する前記樹脂枠を形成する、
樹脂枠製造方法。
【請求項2】
前記樹脂枠は、内縁を含む枠状の内側部分と、外縁を含み、前記内側部分よりも厚い枠状の外側部分と、を含み、
前記第2部分は、前記樹脂シートの外縁を含み、
前記第2工程においては、前記第2部分を、前記樹脂シートの内縁に至らないように内側に向けて折り返して前記第1部分に部分的に重複させることにより、前記外側部分として枠状の前記重複部を形成すると共に前記内側部分として枠状の非重複部を形成し、前記樹脂枠を形成する、
請求項1に記載の樹脂枠製造方法。
【請求項3】
前記第2工程においては、前記重複部を形成した後に、前記重複部を加熱及び加圧することにより、前記重複部の厚さを調整する、
請求項1又は2に記載の樹脂枠製造方法。
【請求項4】
前記第1工程においては、前記第1部分と前記第2部分との境界に沿って、前記樹脂シートに切込みを形成する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂枠製造方法。
【請求項5】
前記第1工程においては、前記第2工程において前記第2部分を折り返したときに前記第2部分が互いに重複しないように、前記第2部分に切欠きを形成する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂枠製造方法。
【請求項6】
前記第2工程では、矩形形状の前記樹脂シートの外縁を形成する4辺のそれぞれに沿って前記第2部分を折り返すことによって、枠状に配置される4つの帯状の前記重複部を形成すると共に、互いに隣り合う前記重複部における前記第2部分同士を一体的に接続する接続部を形成する、請求項5記載の樹脂枠製造方法。
【請求項7】
前記接続部は、互いに隣り合う前記重複部における前記第2部分のうち前記切欠きによって形成される外縁同士が面方向に沿って互いに対向している境界部分を溶着することによって形成する、請求項6記載の樹脂枠製造方法。
【請求項8】
前記第1工程においては、前記第2部分に対して、前記樹脂シートの外縁から内縁に向かう方向に延びる一対の切断箇所を形成する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂枠製造方法。
【請求項9】
少なくとも一方の面に活物質層が塗工されている電極板を準備する工程と、
前記電極板の周縁部に、請求項1~8の何れか一項記載の樹脂枠製造方法によって製造された樹脂枠を接合する工程と、を含む、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項10】
電極の周縁部に設けられる樹脂枠であって、
枠状の第1層と、
前記第1層に積層された枠状の第2層と、
を備え、
前記第1層と前記第2層とは、それぞれの外縁において互いに連続している、
樹脂枠。
【請求項11】
前記第1層は、矩形形状に形成されており、
前記第2層は、前記第1層の外縁に沿って4つの帯状部と、互いに隣り合う前記帯状部を一体的に接続する接続部と、を有している、請求項10記載の樹脂枠。
【請求項12】
前記接続部は、樹脂材料によって形成されており、互いに隣り合う前記帯状部の外縁同士が面方向に沿って対向している境界部分の隙間を埋めている、請求項11記載の樹脂枠。
【請求項13】
少なくとも一方の面に活物質層が塗工されている電極板と、
前記電極板の周縁部に配置される、請求項10~12の何れか一項記載の樹脂枠と、
を備える、蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂枠製造方法、蓄電モジュールの製造方法、樹脂枠、及び、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バイポーラ電池が記載されている。このバイポーラ電池は、積層された複数枚のバイポーラ電極を含む電池要素を備える。バイポーラ電極は、集電体と、集電体の片方の面上に設けられた正極層と、集電体の他方の面上に設けられた負極層と、を有する。また、このバイポーラ電池は、電池要素の外部を被覆する樹脂群を備えている。樹脂群は、電池内部の電解液等が外部に漏液しないように電池要素を気密に維持するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-005163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなバイポーラ電池の製造方法において、各電池要素に設けられる樹脂枠(樹脂群のうちの1つ)を形成する際に、例えば、シート状の母材からの切り出しが考えられる。この場合、母材から切り出された枠状の部分は樹脂枠として使用される一方で、枠状の部分に囲われる中心部分は廃棄される。特に、樹脂枠の厚さが厚くなるにつれて、廃棄部分も厚くなり、廃棄量が増大する。このような状況にあっては、母材の廃棄率を低減することが望ましい。
【0005】
本発明は、廃棄率を低減可能な樹脂枠製造方法、蓄電モジュールの製造方法、樹脂枠、及び、蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樹脂枠製造方法は、電極の周縁部に設けられる樹脂枠を製造するための樹脂枠製造方法であって、シート状の母材から、樹脂枠のための枠状の樹脂シートを切り出す第1工程と、樹脂シートを折り返すことにより樹脂枠を形成する第2工程と、を備え、樹脂シートは、枠状の第1部分と、第1部分に連続する第2部分と、を含み、第2工程においては、第2部分が第1部分に重複するように樹脂シートを折り返して重複部を形成することにより、母材の厚さよりも厚い部分を有する樹脂枠を形成する。
【0007】
この製造方法においては、シート状の母材から枠状の樹脂シートを切り出した後に、樹脂シートを折り返して樹脂枠を形成する第2工程を実施する。第2工程においては、樹脂シートの第2部分が第1部分に重複するように樹脂シートを折り返して重複部を形成する。これにより、母材の厚さよりも厚い部分(重複部)を有する樹脂枠が製造される。このとき、樹脂シートに囲われる中心部分は廃棄されるものの、廃棄部分の厚さは、全体にわたって母材の厚さと同等である。したがって、製造される樹脂枠の平均的な厚さに対して、廃棄部分の厚さが相対的に小さくなり、廃棄率が低減される。
【0008】
本発明に係る樹脂枠製造方法においては、樹脂枠は、内縁を含む枠状の内側部分と、外縁を含み、内側部分よりも厚い枠状の外側部分と、を含み、第2部分は、樹脂シートの外縁を含み、第2工程においては、第2部分を、樹脂シートの内縁に至らないように内側に向けて折り返して第1部分に部分的に重複させることにより、外側部分として枠状の重複部を形成すると共に内側部分として枠状の非重複部を形成し、樹脂枠を形成してもよい。この場合、廃棄率を低減しつつ、相対的に薄い内側部分と相対的に厚い外側部分とを含む樹脂枠を製造できる。
【0009】
本発明に係る樹脂枠製造方法においては、第2工程において、重複部を形成した後に、重複部を加熱及び加圧することにより、重複部の厚さを調整してもよい。この場合、廃棄率を低減しつつ、樹脂枠の厚さを調整できる。
【0010】
本発明に係る樹脂枠製造方法においては、第1工程において、第1部分と第2部分との境界に沿って、樹脂シートに切込みを形成してもよい。この場合、樹脂シートの折り返しを容易且つ高精度に行うことができる。
【0011】
本発明に係る樹脂枠製造方法においては、第1工程において、第2工程において第2部分を折り返したときに第2部分が互いに重複しないように、第2部分に切欠きを形成してもよい。この場合、樹脂シートの第2部分同士が重複することが避けられる結果、樹脂枠の厚さにバラツキが生じることが避けられる。
【0012】
本発明に係る樹脂枠製造方法においては、第2工程では、矩形形状の樹脂シートの外縁を形成する4辺のそれぞれに沿って第2部分を折り返すことによって、枠状に配置される4つの帯状の重複部を形成すると共に、互いに隣り合う重複部における第2部分同士を一体的に接続する接続部を形成してもよい。この場合、互いに隣り合う第2部分同士が接続部によって一体化されるので、第2部分同士の間に隙間が生じることがない。したがって、当該隙間から電解液が漏れ出すことが防止されるので、樹脂枠におけるシール性を向上させることができる。
【0013】
本発明に係る樹脂枠製造方法においては、接続部は、互いに隣り合う重複部における第2部分のうち切欠きによって形成される外縁同士が面方向に沿って互いに対向している境界部分を溶着することによって形成してもよい。この場合、第2部分同士を接続する接続部を容易に形成することができる。
【0014】
本発明に係る樹脂枠製造方法においては、第1工程において、第2部分に対して、樹脂シートの外縁から内縁に向かう方向に延びる一対の切断箇所を形成してもよい。この場合、樹脂シートの第2部分を折り返したときに、一対の切断箇所の間の領域を折り返さずに維持できる。これにより、樹脂枠の外縁から内縁に連通する連通溝を形成可能である。この連通溝は、例えば、電解液の注液口として利用できる。
【0015】
本発明に係る蓄電モジュールの製造方法においては、少なくとも一方の面に活物質層が塗工されている電極板を準備する工程と、電極板の周縁部に、上記の樹脂枠製造方法によって製造された樹脂枠を接合する工程と、を含んでいてもよい。この場合、樹脂枠によって形成される内部空間の液密性を向上させることができる。
【0016】
本発明に係る樹脂枠は、電極の周縁部に設けられる樹脂枠であって、枠状の第1層と、第1層に積層された枠状の第2層と、を備え、第1層と第2層とは、それぞれの外縁において互いに連続している。この樹脂枠においては、第1層と第1層に積層された第2層とが、互いに連続している。このため、この樹脂枠は、第1層に対応する部分と第2層に対応する部分とが連続するように形成された樹脂シートの折り返しにより製造され得る。よって、上述した理由から、廃棄率が低減される。
【0017】
本発明に係る樹脂枠は、矩形形状に形成された第1層と、第1層の外縁に沿った4つの帯状部と互いに隣り合う帯状部を一体的に接続する接続部とを有する第2層と、を備えてもよい。この場合、互いに隣り合う第2部分同士が接続部によって一体化されるので、第2部分同士の間に隙間が生じることがない。したがって、樹脂枠におけるシール性を向上させることができる。
【0018】
本発明に係る樹脂枠では、接続部は、樹脂材料によって形成されており、互いに隣り合う帯状部の外縁同士が面方向に沿って対向している境界部分の隙間を埋めていてもよい。この場合も、互いに隣り合う第2部分同士が接続部によって一体化されるので、第2部分同士の間に隙間が生じることがない。したがって、樹脂枠におけるシール性を向上させることができる。
【0019】
本発明に係る蓄電モジュールは、少なくとも一方の面に活物質層が塗工されている電極板と、電極板の周縁部に配置される上記の樹脂枠と、を備えてもよい。この場合、樹脂枠によって形成される内部空間の液密性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、廃棄率を低減可能な樹脂枠製造方法、蓄電モジュールの製造方法、樹脂枠、及び、蓄電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。
図2図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3図2に示された第1樹脂部及びバイポーラ電極を示す図である。
図4図2に示された第1樹脂部及び負極終端電極を示す図である。
図5】母材から切り出された樹脂シートを示す平面図である。
図6】母材から樹脂シートを切り出す様子を示す図である。
図7図5に示された樹脂シートの折り返しにより形成された第1樹脂部を示す平面図である。
図8】(a)は、互いに隣り合う第2層の外縁同士が対向している境界部分の隙間を拡大して示した平面図である。(b)は、第2層の接続部を示した平面図である。
図9】変形例に係る樹脂シート及び樹脂枠を示す平面図である。
図10】(a)は、変形例に係る、互いに隣り合う第2層の外縁同士が対向している境界部分の隙間を拡大して示した平面図である。(b)は、変形例に係る、第2層の接続部を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態について詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
[蓄電装置の一実施形態]
【0023】
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してその積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0024】
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5と、を含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0025】
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側と、にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0026】
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば、積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。なお、図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さいが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0027】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10と、によって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面(モジュール積層体2側の面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0028】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
[蓄電モジュールの一実施形態]
【0029】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12と、を備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して、積層方向D(第1方向)に沿って積層された複数の電極(複数のバイポーラ電極14、単一の負極終端電極18、及び、単一の正極終端電極19)を含む。ここでは、電極積層体11の積層方向Dはモジュール積層体2の積層方向と一致している。電極積層体11は、積層方向Dに延びる側面11aを有している。
【0030】
バイポーラ電極14は、電極板15、電極板15の第1面15aに設けられた正極16、電極板15の第1面15aの反対の第2面15bに設けられた負極17を含んでいる。正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合うさらに別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0031】
負極終端電極18は、電極板15、及び電極板15の第2面15bに設けられた負極17を含んでいる。負極終端電極18は、その第2面15bが電極積層体11の内側(積層方向Dについての中心側)になるように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。正極終端電極19は、電極板15、及び電極板15の第1面15aに設けられた正極16を含んでいる。正極終端電極19は、その第1面15aが電極積層体11の内側になるように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0032】
負極終端電極18の電極板15の第1面15aには、導電板5が接触している。また、正極終端電極19の電極板15の第2面15bには、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5が接触している。拘束部材3からの拘束荷重は、導電板5を介して負極終端電極18及び正極終端電極19から電極積層体11に付加される。すなわち、導電板5は、積層方向Dに沿って電極積層体11に拘束荷重を付加する拘束部材でもある。
【0033】
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の周縁部(バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び、正極終端電極19の縁部)15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の第2面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の第1面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0034】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。
【0035】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、周縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて周縁部15cを保持している。封止体12は、周縁部15cに溶着された複数の第1樹脂部(樹脂枠)21と、側面11aに沿って第1樹脂部21を外側から包囲するように第1樹脂部21に接合された単一の第2樹脂部22と、を有している。第1樹脂部21は、例えば、PP(ポリプロピレン)等の樹脂材料から形成されている。第2樹脂部22は、例えば、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)等の樹脂材料から形成されている。
【0036】
第1樹脂部21は、矩形枠状に形成されている。第1樹脂部21は、周縁部15cの全周にわたって連続的に設けられている。第1樹脂部21は、電極板15の第1面15aに気密(液密)に接合(例えば溶着)されている。第1樹脂部21は、例えば超音波又は熱によって溶着されている。第1樹脂部21は所定の厚さ(積層方向Dの長さ)を有するフィルムである。電極板15の端面は、第1樹脂部21から露出している。第1樹脂部21の積層方向Dからみた内側の一部は、積層方向Dに互いに隣り合う電極板15の周縁部15c同士の間に位置しており、積層方向Dからみた外側の一部は、電極板15から外側に張り出している。第1樹脂部21は、当該外側の一部において第2樹脂部22に埋設されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1樹脂部21同士は、互いに離間している。
【0037】
ここでは、複数種類の第1樹脂部21(第1樹脂部23,25)が用いられている。第1樹脂部(樹脂枠)23は、バイポーラ電極14及び正極終端電極19の周縁部15cにおいて、バイポーラ電極14の第1面15a及び正極終端電極19の第1面15aに設けられている。第1樹脂部25は、負極終端電極18の周縁部15cにおいて、負極終端電極18の第1面15aに設けられている。ここでは、第1樹脂部(樹脂枠)25は、全体として、断面矩形状の単一の枠状部分から形成されている。
【0038】
図3は、図2に示された第1樹脂部及びバイポーラ電極を示す図である。図3の(a)は断面図であり、図3の(b)は平面図である。図2,3に示されるように、第1樹脂部23は、断面矩形状の枠状部分である第1層27と、断面矩形状の枠状部分であり、第1層27に積層された第2層29と、を含む。第1樹脂部23は、第1層27において第1面15aに接合されている。第1層27の外縁27aと第2層29の外縁29aとは、積層方向Dからみて一致している。一方、第1層27の内縁27bと第2層29の内縁29bとは、積層方向Dからみて離間している。
【0039】
より具体的には、第1層27の内縁27bは、第2層29の内縁29bよりも第1面15aの積層方向Dからみた内側に位置している。これにより、第1層27には、第2層29に覆われる部分と、第2層29から露出する部分と、が形成される。すなわち、第1樹脂部23の全体としては、第2層29から露出されて第1層27のみからなる内側部分23pと、第1層27及び第2層29からなる外側部分23rと、を含むことになる。内側部分23pは、第1樹脂部23の内縁を含み、外側部分23rよりも薄い。外側部分23rは、第1樹脂部23の外縁を含み、内側部分23pよりも厚い。これにより、第1樹脂部23に対して、セパレータ13が配置される段差部23tが形成される。
【0040】
第1層27と第2層29とは、互いに連続している。ここでは、第1層27と第2層29とは、それぞれの外縁27a,29aにおいて互いに連続している。これは、後述するように、第1層27に対応する部分と第2層29に対応する部分とが連続するように形成された樹脂シート50(図5参照)を折り返すことにより第1樹脂部23を形成するためである。すなわち、外側部分23rは、当該樹脂シート50の折り返しにより形成される第1層27と第2層29との重複部分であり、内側部分23pは非重複部分である。
【0041】
第2層29は、4つの帯状部291,292,293,294と、互いに隣り合う帯状部291,292,293,294を一体的に接続する接続部Cと、を有している。接続部Cは、第2層29を形成する材料と同じ樹脂材料によって形成されている。図8(b)に示されるように、接続部Cは、互いに隣り合う第2層29の外縁29c,29c同士が面方向に沿って対向している境界部分の隙間を埋めている。接続部Cは、少なくとも、互いに隣り合う第2層29同士が接続されておればよく、第1層27とは接続されていても、接続されていなくてもよい。
【0042】
図4は、図2に示された第1樹脂部及び負極終端電極を示す図である。図4の(a)は断面図であり、図4の(b)は平面図である。図4に示されるように、第1樹脂部25についても、第1樹脂部23と同様の方法により形成され得る。すなわち、第1樹脂部25も、枠状の第1層27と第1層27に積層された枠状の第2層29とを含む。また、第1樹脂部25においても、第1層27と第2層29とが、その外縁27a,29aにおいて互いに連続している。ただし、第1樹脂部25においては、第1層27の内縁27bと第2層29の内縁29bとが一致している。すなわち、第1樹脂部25においては、その全体が、第1層27と第2層29との重複部分となっている。これにより、第1樹脂部23は、上述したように全体として断面矩形状となる。
【0043】
図4に示される第1樹脂部25についても、図4に示される第1樹脂部23と同様に、第2層29は、4つの帯状部291,292,293,294と、互いに隣り合う帯状部291,292,293,294を一体的に接続する接続部Cと、を有している。接続部Cは、第2層29を形成する材料と同じ樹脂材料によって形成されている。図8(b)に示されるように、接続部Cは、互いに隣り合う第2層29の外縁29c,29c同士が面方向に沿って対向している境界部分の隙間を埋めている。接続部Cは、少なくとも、互いに隣り合う第2層29同士が接続されておればよく、第1層27とは接続されていても、接続されていなくてもよい。
[樹脂枠製造方法の一実施形態]
【0044】
引き続いて、樹脂枠の製造方法の一実施形態について説明する。以下では、主に、樹脂枠として第1樹脂部23の製造方法について説明する。この製造方法においては、まず、シート状の母材から、第1樹脂部23のための枠状の樹脂シート50を切り出す(第1工程)。樹脂シート50は、第1樹脂部23を形成する材料から形成されている。図5は、母材から切り出された樹脂シートを示す平面図である。図5に示されるように、樹脂シート50は、単一の矩形枠状の第1部分51と、第1部分51に連続する複数(ここでは4つ)の第2部分52と、を含む。第1部分51は、樹脂シート50の環状の内縁53を含む。第2部分52は、第1部分51の外側に設けられている。第2部分52は、樹脂シート50の直線状の外縁54を含む。ここでは、4つの第2部分52が、第1部分51を囲むように設けられている。第2部分52は、後の第2工程において第1部分51に重複するように折り返される部分である。
【0045】
すなわち、第1部分51は、第1樹脂部23の第1層27に対応する部分であり、第2部分52は、第1樹脂部23の第2層29に対応する部分である。第2部分52の幅W52は、第1部分51の幅W51よりも小さい。幅W51,W52は、外縁54から内縁53に向かう方向についての寸法である。樹脂シート50には、第1部分51と第2部分52との境界Bに沿って切込み55が形成されている。切込み55の深さは、樹脂シート50の厚さよりも小さく、例えば樹脂シート50の厚さの半分程度である。
【0046】
樹脂シート50の角部は、それぞれの第2部分52の形状が台形状となるように面取りされている。すなわち、樹脂シート50には、切欠き56(C面取)が形成されている。ここでは、切欠き56は、樹脂シート50の一の第2部分52の境界Bと別の第2部分52の境界Bとの交点を通り、且つ、それらの境界Bに対して45°の角度で傾斜した直線に沿って形成される。これにより、第2部分52同士が互いに離間される。また、複数の第2部分52のうちの1つの第2部分52には、樹脂シート50の外縁54から内縁53に向かう方向に延びる一対の直線状の切断箇所57が形成されている。
【0047】
第1工程においては、以上の樹脂シート50を、シート状の母材から切り出す。図6は、母材から樹脂シートを切り出す様子を示す図である。図6の(a)は側面図であり、図6の(b)は平面図である。図6に示されるように、原反ロールR1から母材60を巻き出しつつ、母材60をガイドローラR2によりガイドしてローラR3,R4の間に導入する。ローラR3,R4の一方には、母材60の切断部分に応じた回転刃(不図示)が設けられている。これにより、母材60から樹脂シート50を切り出す。
【0048】
特に、この第1工程においては、帯状の母材60を樹脂シート50に個片化するための切断に加えて、第2工程において第2部分52を折り返したときに互いに(第2部分52同士が)重複しないように、第2部分52に切欠き56を形成する。また、第1工程においては、樹脂シート50の第1部分51と第2部分52との境界Bに沿って、樹脂シート50に切込み55を形成する。さらに、第1工程においては、第2部分52に対して、樹脂シート50の外縁54から内縁53に向かう方向に延びる一対の切断箇所57を形成する。これらの切断及び切込みの形成は、ローラR3,R4の回転刃の形状の設定により実現される。以上により、図5に示される樹脂シート50が形成される。
【0049】
引き続いて、第2工程が実施される。図7は、図5に示された樹脂シートの折り返しにより形成された第1樹脂部を示す平面図である。図5,7に示されるように、この第2工程においては、第2部分52が第1部分51に重複するように樹脂シート50を折り返して重複部を形成することにより、母材60の厚さよりも厚い部分(重複部)を有する第1樹脂部23を形成する。
【0050】
特に、ここでは、第2部分52を、境界B(切込み55)に沿って樹脂シート50の内縁53に至らないように内側に向けて折り返し、第1部分51に部分的に重複させる。すなわち、矩形形状の樹脂シート50の外縁54を形成する4辺のそれぞれに沿って第2部分52を折り返すことによって、枠状に配置される4つの帯状の重複部を形成すると共に、互いに隣り合う重複部における第2部分52,52同士を一体的に接続する接続部Cを形成する。これにより、外側部分23rとして枠状の重複部を形成すると共に、内側部分23pとして枠状の非重複部を形成し、第1樹脂部23を形成する。なお、第1部分51から第1層27が形成され、第2部分52から第2層29が形成される。
【0051】
このとき、樹脂シート50の角部には、切欠き56が形成されているため、第2部分52同士が重複しない。特に、切欠き56は、上述したように、樹脂シート50の一の第2部分52の境界Bと別の(隣り合う)第2部分52の境界Bとの交点を通り、且つ、それらの境界Bに対して45°の角度で傾斜した直線に沿って形成される。したがって、図8(a)に示されるように、第2部分52を折り返したときに、一の第2部分52と別の(隣り合う)第2部分52とが切欠き56に沿って突き合わされ、図8(b)に示されるような接続部Cを形成する。接続部Cは、互いに隣り合う重複部における第2部分52のうち切欠き56によって形成される外縁29c,29c同士が面方向に沿って互いに対向している境界部分が溶着されることによって形成されている。すなわち、接続部Cは、互いに隣り合う第2層29の外縁29c,29c同士が面方向に沿って対向している境界部分の隙間を埋める樹脂部分である。これにより、4つの第2部分52が接続部Cを介して互いに接続され、全体として、枠状の第2層29が形成される。一方、この第2工程においては、第2部分52における一対の切断箇所57の間の領域を折り返さずに維持することにより、第1樹脂部23の外縁から内縁に連通する連通溝58を形成する。
【0052】
その後、必要に応じて、例えば第1樹脂部23の樹脂の融点以下の温度において、重複部を加熱及び加圧することにより、第2部分52が折り返された状態が維持されるように癖付けを行うことができる。また、例えば第1樹脂部23の樹脂の融点以上の温度において、重複部を加熱及び加圧することにより、重複部をつぶして重複部の厚さを調整してもよい。このようにして、図7に示されるような、一実施形態の第1樹脂部23となる樹脂枠を形成する。
【0053】
次に、ニッケルからなる矩形の金属箔である電極板15の両面に正極16及び負極17を有するバイポーラ電極14と、電極板15の一方の面に負極17が形成された負極終端電極18、及び電極板15の一方の面に正極16が形成された正極終端電極19を準備する。次に、バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び、正極終端電極19を形成する電極板15の周縁部15cに、上記のとおり製造した樹脂枠としての第1樹脂部21を溶着する。
【0054】
次に、複数の第1樹脂部21が溶着されたバイポーラ電極14の積層体と、積層体の一端に第1樹脂部21が溶着された負極終端電極18と、積層体の他端に第1樹脂部21が溶着された正極終端電極19と、からなる電極積層体11を形成する。次に、第2樹脂部22によって、電極積層体11における複数の第1樹脂部21の周縁を一体的に取り囲む。第2樹脂部22は、例えば、射出成形等により形成される。第2樹脂部22は、第1樹脂部21の周縁にモールドを設置し、当該モールド内に流動性を有する第2樹脂部22の樹脂材料を流し込むことによって形成される。これにより、図2に示されるような蓄電モジュール4が形成される。
[樹脂枠製造方法の作用・効果]
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る樹脂枠製造方法においては、シート状の母材60から枠状の樹脂シート50を切り出した後に、樹脂シート50を折り返して第1樹脂部23を形成する第2工程を実施する。第2工程においては、樹脂シート50の第2部分52が第1部分51に重複するように樹脂シート50を折り返して重複部(外側部分23r)を形成する。これにより、母材60の厚さよりも厚い部分(外側部分23r)を有する第1樹脂部23が製造される。このとき、樹脂シート50に囲われる中心部分は廃棄されるものの、廃棄部分の厚さは、全体にわたって母材60の厚さと同等である。したがって、製造される第1樹脂部23の平均的な厚さに対して、廃棄部分の厚さが相対的に小さくなり、廃棄率が低減される。
【0056】
また、本実施形態に係る樹脂枠製造方法においては、第1樹脂部23は、内縁を含む枠状の内側部分23pと、外縁を含み、内側部分23pよりも厚い枠状の外側部分23rと、を含む。また、樹脂シート50の第2部分52は、樹脂シート50の外縁54を含む。そして、第2工程においては、第2部分52を、樹脂シート50の内縁53に至らないように内側に向けて折り返して第1部分51に部分的に重複させることにより、外側部分23rとして枠状の重複部を形成すると共に、内側部分23pとして枠状の非重複部を形成し、第1樹脂部23を形成する。このように、廃棄率を低減しつつ、相対的に薄い内側部分23pと相対的に厚い外側部分23rとを含む第1樹脂部23を製造できる。
【0057】
特に、厚さの異なる2つの部分を有する樹脂枠を製造する別の方法としては、内寸の異なる2種類の樹脂枠を母材から切り出し、それらを貼り合わせて一体化することにより当該樹脂枠を製造する方法が考えられる。この場合には、1つの樹脂枠を製造するために、2種類の樹脂枠の中心部分を廃棄することになる。これに対して、本実施形態に係る樹脂枠製造方法によれば、上記のとおり、1つの樹脂シート50を折り返すことによって、厚さの異なる部分を有する第1樹脂部23を製造する。このため、廃棄率の低減効果がより顕著となる。
【0058】
また、本実施形態に係る樹脂枠製造方法においては、第2工程において、第1部分51と第2部分52との重複部を形成した後に、重複部を加熱及び加圧することにより、重複部の厚さを調整することができる。この場合、廃棄率を低減しつつ、第1樹脂部23の厚さを調整できる。
【0059】
また、本実施形態に係る樹脂枠製造方法においては、第1工程において、第1部分51と第2部分52との境界Bに沿って、樹脂シート50に切込み55を形成する。このため、樹脂シート50の折り返しを容易且つ高精度に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態に係る樹脂枠製造方法においては、第1工程において、第2工程において第2部分52を折り返したときに第2部分52同士が重複しないように、第2部分52に切欠き56を形成する。このため、樹脂シート50の第2部分52同士が重複することが避けられる結果、第1樹脂部23の厚さにバラツキが生じることが避けられる。
【0061】
さらに、本実施形態に係る樹脂枠製造方法においては、第1工程において、第2部分52に対して、樹脂シート50の外縁54から内縁53に向かう方向に延びる一対の切断箇所57を形成する。このため、第2工程において、樹脂シート50の第2部分52を折り返したときに、一対の切断箇所57の間の領域を折り返さずに維持できる。これにより、樹脂シート50の外縁54から内縁53に連通する連通溝58を形成可能である。この連通溝58は、例えば、電解液の注液口として利用できる。
【0062】
以上の実施形態は、本発明に係る樹脂枠製造方法の一実施形態を説明したものである。したがって、本発明に係る樹脂枠製造方法は、上述した一例に限定されるものでなく、任意の変更が可能である。引き続いて、樹脂枠製造方法の変形例について説明する。
[樹脂枠製造方法の変形例]
【0063】
図9は、変形例に係る樹脂シート及び樹脂枠を示す平面図である。図9の(a)に示されるように、第2部分52の形状を、一例として長方形状とすることができる。この場合にも、第1工程において、第2工程において第2部分52を折り返したときに第2部分52同士が重複しないように、第2部分52に切欠き56を形成する。ここでは、切欠き46は、長方形状に形成される。また、第1工程においては、樹脂シート50の第1部分51と第2部分52との境界に沿って、樹脂シート50に切込み55を形成する。さらに、第1工程においては、第2部分52に対して、樹脂シート50の外縁54から内縁53に向かう方向に延びる一対の切断箇所57を形成する。
【0064】
そして、図9の(b)に示されるように、第2工程において、第2部分52を、切込み55に沿って樹脂シート50の内縁53に至らないように内側に向けて折り返し、第1部分51に部分的に重複させる。すなわち、矩形形状の樹脂シート50の外縁54を形成する4辺のそれぞれに沿って第2部分52を折り返すことによって、枠状に配置される4つの帯状の重複部を形成すると共に、互いに隣り合う重複部における第2部分52,52同士を一体的に接続する接続部Cを形成する。これにより、外側部分23rとして枠状の重複部を形成すると共に、内側部分23pとして枠状の非重複部を形成し、第1樹脂部23を形成する。この場合にも、製造される第1樹脂部23は、図7に示される第1樹脂部23と同様となる。このように、第2部分52の形状は任意に設定され得る。
【0065】
このとき、樹脂シート50の角部には、切欠き56(矩形部)が形成されているため、第2部分52同士が重複しない。特に、切欠き56は、矩形形状に形成される。したがって、図10(a)に示されるように、第2部分52を折り返したときに、一の第2部分52と別の(隣り合う)第2部分52との一部が突き合わされ、図10(b)に示されるような接続部Cを形成する。接続部Cは、互いに隣り合う第2層29の外縁29c,29c同士が面方向に沿って対向している境界部分の隙間を埋める樹脂部分である。これにより、4つの第2部分52が接続部Cを介して互いに接続され、全体として、枠状の第2層29が形成される。一方、この第2工程においては、第2部分52における一対の切断箇所57の間の領域を折り返さずに維持することにより、第1樹脂部23の外縁から内縁に連通する連通溝58を形成する。
【0066】
また、上記実施形態においては、樹脂枠として第1樹脂部23を製造する方法について説明した。このため、第2工程においては、第2部分52を、樹脂シート50の内縁53に至らないように内側に向けて折り返し、第1部分51に部分的に重複させた。しかしながら、例えば、樹脂枠として第1樹脂部25を製造する場合には、第2部分52を、樹脂シート50の内縁53に至るように内側に向けて折り返し、第1部分51の全体に重複させることができる。これにより、図4に示されるように、その全体が第1層27と第2層29との重複部分である第1樹脂部25を製造できる。
【0067】
また、上記実施形態においては、樹脂シート50を1回だけ折り返すことにより、第1樹脂部23等の樹脂枠を製造した。しかしながら、樹脂シート50の折り返しの回数は、1回に限定されない。所望する厚さや形状に応じて、任意の回数だけ樹脂シート50を折り返して樹脂枠を製造することができる。また、樹脂シート50の折り返しに加えて、重複部をつぶして厚さの調整をすることにより、製造される樹脂枠の各部の厚さを、母材60の厚さの整数倍以外の厚さとすることもできる。
【0068】
さらに、上記実施形態においては、連通溝58の形成に際して、第1工程において、樹脂シート50の外縁54から内縁53に向かう方向に延びる一対の切断箇所57を第2部分52に形成した。この場合、第2部分52における一対の切断箇所57の間の領域は残存する。しかしながら、第1工程においては、第2部分52の一部を打ち抜いて切り欠きを形成することにより、当該切り欠きを規定するように切断箇所57を設けてもよい。この場合には、第2部分52における一対の切断箇所57の間の領域は切除される。
【符号の説明】
【0069】
14…バイポーラ電極(電極)、15c…周縁部、18…負極終端電極(電極)、19…正極終端電極(電極)、23,25…第1樹脂部(樹脂枠)、23p…内側部分(非重複部)、23r…外側部分(重複部分)、27…第1層、29…第2層、29a…外縁、50…樹脂シート、51…第1部分、52…第2部分、53…内縁、54…外縁、55…切込み、57…切断箇所、291,292,293,294…帯状部、60…母材、B…境界、C…接続部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10