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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】車両の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
B62D21/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018114825
(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2019217820
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】石津 宏明
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓之
(72)【発明者】
【氏名】平井 駿介
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雄基
(72)【発明者】
【氏名】納富 将史
(72)【発明者】
【氏名】福田 巧
(72)【発明者】
【氏名】新原 英満
(72)【発明者】
【氏名】粟根 正浩
(72)【発明者】
【氏名】白石 秀宗
(72)【発明者】
【氏名】西田 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】毛利 正樹
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-001394(JP,A)
【文献】特開2000-177621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部において車両前後方向に延びる車体側フレームに対して下方に取り付けられ、サスペンションに備えたサスアームを支持するサブフレームを備えた車両の前部車体構造であって、
上記サブフレームにおける、ラバーブッシュを介して上記サスアームが取り付けられる取付部の近傍かつ車幅方向内側部位に、上記サスアームからの入力荷重に対して該取付部を補強する高剛性部を設け
上記高剛性部は、上記取付部から車幅方向内側への荷重入力方向に沿って延びる複数のリブであり、
上記サスアームから上記取付部への荷重入力方向の延長線上に対応する上記取付部の近傍部位に、クロスメンバを接続する接続部を有し、
上記接続部には、上記クロスメンバが車幅方向内側へ延設するように該クロスメンバの車幅方向外端部を嵌め込む凹部が車幅方向内側へ開口して形成され、
上記取付部は、上記サスアームの前側を支持する前側支持部において前側取付部と後側取付部とを備えており、
上記クロスメンバの上記接続部は、上記前側取付部と車両前後方向に一致する部位に設けられ、
上記クロスメンバの上記接続部は、上記後側取付部に対して車両前方向にオフセットして設けられており、
複数の上記リブには、上記後側取付部から車幅方向内側かつ前側へ延設する第1リブと、該第1リブの車幅方向内側端部から上記凹部まで延設する第2リブを備えた
車両の前部車体構造。
【請求項2】
記高剛性部は、上記取付部の近傍部位であって、上記クロスメンバの上記接続部と上記サブフレームとのコーナー部から上記クロスメンバに沿って張り出した張出し部であり、
上記リブは、上記後側取付部と上記クロスメンバとの間に、上記張出し部を経由してこれら後側取付部とクロスメンバとを繋ぐように設けられた
請求項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
上記取付部の近傍部位に、上記リブを底面視でトラス形状に囲んだトラス形状部を設けた
請求項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
上記サブフレームは、上記前側支持部と、該前側支持部よりも後側の位置で上記サスアームを支持する後側支持部とを備え、
上記後側支持部の近傍部位には、上記高剛性部として、該後側支持部に備えた取付部を中心として、上記サスアームからの荷重入力方向に沿って底面視で放射状に延びるリブを設けた
請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両前後方向に延びる車体側フレームに対して下方に取り付けられ、サスペンションに備えたサスアームを支持するサブフレームを備えた車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車体前部において、車両前後方向に延びる車体側フレームに対して下方に取り付けられ、前輪用のサスペンションに備えたサスアームを支持するサブフレームを備えた構成が知られている。
【0003】
このような車体前部において、振動発生源としてのサスペンションからサブフレームへ入力された振動は、サブフレームの車体への取付部を介して車体に伝達される。
【0004】
そしてサスペンションからサブフレームへの振動入力点として、例えば、サスペンション取付部は、振動発生源から車体側へ伝達される振動の伝達経路における上流側に位置し、このようなサスペンション取付部において振動低減対策を施すことは、サブフレーム全体や車体側へ振動が拡散する前段階で振動を低減できるため有効であると考えられる。
【0005】
ところで、自動車において、車外から伝達される振動を低減するためには、互いに接続される2つの車両用部材間の接続部において、これら部材間での振動伝達を食い止めることが効果的とされている。例えば下記特許文献1においては、2つの車両用部材を、振動低減部材(30)を介して接続する構成が開示されている。
【0006】
しかしながら、このような構成においては、2つの車両用部材間の振動低減効果を得るために、これらの部材間に、弾性体から成る振動低減部材(30)を追加する必要があり、部品点数の増加に繋がる。
【0007】
また一般に、サブフレームのサスペンション取付部においては、サスペンションに備えたサスアームが、弾性体から成るラバーブッシュを介して取り付けられることから、このラバーブッシュを、同じ弾性体から成る振動低減部材(30)として兼用することも考えられる。
【0008】
しかしながら、ラバーブッシュを振動低減部材として適した弾性となることを優先して形成した場合には、例えば、サスペンションジオメトリ等のサスペンション支持性能に影響が及ぶことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-23049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、サスペンションに備えたサスアームとサブフレームに設けたサスペンション取付部との間に介在するラバーブッシュに要求されるサスペンション支持性能を補償しつつ、サスペンションからサブフレームに伝達される振動を低減することができる車両の前部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、車体前部において車両前後方向に延びる車体側フレームに対して下方に取り付けられ、サスペンションに備えたサスアームを支持するサブフレームを備えた車両の前部車体構造であって、上記サブフレームにおける、ラバーブッシュを介して上記サスアームが取り付けられる取付部の近傍かつ車幅方向内側部位に、上記サスアームからの入力荷重に対して該取付部を補強する高剛性部を設け、上記高剛性部は、上記取付部から車幅方向内側への荷重入力方向に沿って延びる複数のリブであり、上記サスアームから上記取付部への荷重入力方向の延長線上に対応する上記取付部の近傍部位に、クロスメンバを接続する接続部を有し、上記接続部には、上記クロスメンバが車幅方向内側へ延設するように該クロスメンバの車幅方向外端部を嵌め込む凹部が車幅方向内側へ開口して形成され、上記取付部は、上記サスアームの前側を支持する前側支持部において前側取付部と後側取付部とを備えており、上記クロスメンバの上記接続部は、上記前側取付部と車両前後方向に一致する部位に設けられ、上記クロスメンバの上記接続部は、上記後側取付部に対して車両前方向にオフセットして設けられており、複数の上記リブには、上記後側取付部から車幅方向内側かつ前側へ延設する第1リブと、該第1リブの車幅方向内側端部から上記凹部まで延設する第2リブを備えたものである。
【0012】
上記構成によれば、取付部の近傍部位に高剛性部を設けることにより、取付部材としてのサブフレーム(振動伝達経路の下流側部材)に備えた取付部と、サブフレームに備えた被取付部材としてのラバーブッシュ(振動伝達経路の上流側部材)との相互間に、剛性差を生じさせることができ、サスアームからラバーブッシュを介したサブフレームへの振動伝達を低減することができる。また、ラバーブッシュ自体の弾性(剛性)の変更が不要であるため、サスペンションジオメトリ等への影響が無く、狙い通りのサスペンションジオメトリ等を達成できる。
【0013】
また、上記高剛性部は、上記取付部から荷重入力方向に沿って延びるリブであるため、高剛性部をリブで形成することで、部品点数が増えることなく、サスアームからラバーブッシュを介したサブフレームへの振動伝達を効果的に低減することができる。
【0014】
さらに高剛性部をリブで形成することで、サブフレームを成形により形成する場合には、該リブを、成形時に所望の部位、突出し長さ、数になるように一体に形成できる。
【0015】
さらにまた、上記サスアームから上記取付部への荷重入力方向の延長線上に対応する上記取付部の近傍部位に、車幅方向に延びるクロスメンバを接続したものであるため、取付部の近傍へクロスメンバを接続する接続部によって、サスアームから取付部への入力荷重を、サブフレームの車幅方向内側から受け止めるように突っ張り支持することができるため、該接続部を、取付部の近傍部位を補強する高剛性部として構成することができる。
【0016】
これにより、ラバーブッシュと取付部との剛性差をより一層生じさせることができ、サブフレームへ伝達する振動低減効果を高めることができる。
【0017】
また、上記クロスメンバの、上記取付部の近傍部位への接続部は、上記取付部と車両前後方向に一致する部位に設けたものであるため、クロスメンバの接続部は、上記取付部と車両前後方向に一致する部位に設けたため、サスアームから取付部へ入力される車幅方向内側への入力荷重を、該接続部によって、サブフレームの車幅方向内側からダイレクトに受け止めることができる。これにより、クロスメンバの接続部を設けることによる、サブフレームへ伝達する振動低減効果をより一層高めることができる。
【0018】
この発明の態様として、上記高剛性部は、上記取付部の近傍部位であって、上記クロスメンバの上記接続部と上記サブフレームとのコーナー部から上記クロスメンバに沿って張り出した張出し部であり、上記リブは、上記後側取付部と上記クロスメンバとの間に、上記張出し部を経由してこれら後側取付部とクロスメンバとを繋ぐように設けられたものである。
【0019】
上記構成によれば、クロスメンバの上記接続部が上記取付部に対して車両前後方向にオフセットして設けたものであっても、上記高剛性部としての張出し部によって、上記クロスメンバの上記接続部と協働してサスアームから取付部への入力荷重を効果的に受け止めることができる。これにより、クロスメンバの接続部が上記取付部に対して車両前後方向にオフセットして設けたものであっても、該クロスメンバの接続部を設けることによる、サブフレームへ伝達する振動低減効果をより一層高めることができる。
【0020】
また、上記リブは、上記取付部と上記クロスメンバとの間に、上記張出し部を経由してこれら取付部とクロスメンバとを繋ぐように設けられたものであるため、上記サスアームから取付部への入力荷重を、リブを介してクロスメンバに分散することができる。よって、リブは、クロスメンバの接続部と協働してサスアームから取付部への入力荷重を効果的に受け止めることができる。
【0021】
この発明の態様として、上記取付部の近傍部位に、上記リブを底面視でトラス形状に囲んだトラス形状部を設けたものである。
【0022】
上記取付部の近傍部位にトラス形状部を設けることで、最小限のリブによって該取付部を効果的に高剛性化することができる。
【0023】
この発明の態様として、上記サブフレームは、上記取付部によって上記サスアームを支持する前側支持部と、該前側支持部よりも後側の位置で上記サスアームを支持する後側支持部とを備え、上記後側支持部の近傍部位には、上記高剛性部として、該後側支持部に備えた取付部を中心として、上記サスアームからの荷重入力方向に沿って底面視で放射状に延びるリブを設けたものである。
【0024】
上記構成によれば、サスアームから後側支持部に入力されるモーメント荷重等の荷重に対して、後側支持部に備えた取付部を効果的に高剛性化(補強)できるため、上記後側支持部における取付部と、該取付部に取り付けられる、サブフレームに備えた被取付部材としてのラバーブッシュとの相互間に、剛性差を生じさせることができ、サスアームからラバーブッシュを介したサブフレームへの振動伝達を低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、サスペンションに備えたサスアームとサブフレームに設けたサスペンション取付部との間に介在するラバーブッシュに要求されるサスペンション支持性能を補償しつつ、サスペンションからサブフレームに伝達される振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態のサブフレーム構造を備えた車体前部の斜視図。
図2】本実施形態のサブフレーム構造を備えた車体前部の側面図。
図3】本実施形態のサブフレーム構造を備えた車体前部の平面図。
図4】車幅方向内側かつ後方斜め上方から視たサブフレームの本体部材およびその周辺の斜視図。
図5】サブフレームの本体部材と第2前側クロスメンバの一部とを下側から視た分解斜視図。
図6】PTマウントおよび保持部材を分解したサブフレームの本体部材を車幅方向外側から視た側面図。
図7】サブフレームの本体部材の底面図。
図8図3中のA-A線拡大断面図。
図9】振動被伝達部材を1自由度マスバネモデルで示したモデル図、および振動伝達部材に対する振動被伝達部材の剛性差に応じたエネルギー伝達の様子を示す模式図。
図10】振動被伝達部材の動剛性と動的エネルギーとの関係図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両右方を示し、矢印Lは車両左方を示し、矢印Uは車両上方を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示し、矢印INは車幅方向内側を示すものとする。
【0028】
図1図4は、本発明の実施形態の前部車体構造を示し、まず、本実施形態の前部車体構造の前提構造について主に図1図4を用いて説明する。
【0029】
図1および図2に示すように、エンジンルームE(図3参照)の左右両側部には、車両前後方向に延びる強度部材としてのフレーム部材で形成されたフロントサイドフレーム1が設けられている。これら左右一対のフロントサイドフレーム1の後部には、車幅方向に延びるダッシュクロス5が接続されている。
【0030】
この実施形態では駆動方式をフロントエンジンリア駆動(FR)としており、図3に示すように、フロントサイドフレーム1間のエンジンルームEには、縦置き配置タイプのエンジン3と、その後部に連結されるトランスミッション4とを備えたパワートレイン2が配置されている。
【0031】
図1図2に示すように、各フロントサイドフレーム1は、ダッシュクロス5から前方に直線状に延びる前側直線部1aと、ダッシュクロス5から車体後方に向かって後下がりの傾斜部1bと、傾斜部1bの下端からさらに後方に直線状に延びて、図示しないフロアフレームに連接される後側直線部1cとが設けられている。各フロントサイドフレーム1は、図2に示すように、後側直線部1cが前側直線部1aよりも低く形成されている。
【0032】
図1図2に示すように、各フロントサイドフレーム1の前端にはセットプレート6および取付けプレート7を介して、衝突時の衝撃を吸収する筒状体等からなる左右一対のメインクラッシュカン8が設けられている。左右一対のメインクラッシュカン8の前端面には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント9が取り付けられている。
【0033】
各フロントサイドフレーム1の下方には、サスペンションのロアアーム100を支持するサブフレーム10が配置されている。
ここで図3に示すように、ロアアーム100は、サスペンションの下部に備えたサスペンションアームであって、車幅方向に略平行延びる前側アーム部101と、前側アーム部101の車幅方向の中間部から車幅方向内側かつ後方へ略水平に延びる後側アーム部102とを有して平面視略L字形状に形成されている。そして、前後各アーム部101,102の車幅方向の車幅方向内端には、サブフレーム10に備えた後述する本体部材20の前側に連結する前側連結部101a、同じく後側に連結する後側連結部102aが形成されている(図1図3参照)。
【0034】
図1図3に示すように、サブフレーム10は、主に左右一対のサブフレーム本体部材20(以下、「本体部材20」と略記する)と、左右一対のエクステンションフレーム12と、第1、第2の前側クロスメンバ13,14(図1図3参照)と、後側クロスメンバ15(同図参照)とを備えている。
【0035】
図2に示すように、本体部材20は、車両前後方向に沿って延在するとともに、フロントサイドフレーム1に対して、その前側直線部1aの車両前後方向における中間位置から傾斜部1bにかけての後下方に配置されており、図3に示すように、該本体部材20は、その前端がエンジン3の前端よりも前方に配置されている。
【0036】
また、第2前側クロスメンバ14および後側クロスメンバ15は、夫々左右一対の本体部材20の前方部21,21の間、後方部61,61の間に、これら前方部21,21および後方部61,61の夫々を車幅方向に橋渡しするように直線状に延びている(図3参照)。
なお、本体部材20、第2前側クロスメンバ14および後側クロスメンバ15の詳細については後述する。
【0037】
図1図4に示すように、エクステンションフレーム12は、本体部材20の前端部から前方に直線状に延び、前突時に後述するサブクラッシュカン19では吸収しきれない前突荷重を前端から後方へ圧潰変形して吸収するフレーム部材であり、図2に示すように、フロントサイドフレーム1の前側直線部1aの下方に配設されている。
【0038】
図3に示すように、エクステンションフレーム12の前端部には接続部材16が接続されており、左右一対の接続部材16の間には、これら16,16を車幅方向に橋渡しする第1前側クロスメンバ13が直線状に延びている。
【0039】
また図2図3に示すように、接続部材16の前面には、セットプレート18および取付けプレート17を介して車両前後方向に延びるサブクラッシュカン19の後面が接続されている。サブクラッシュカン19の前方部にはサブバンパビーム11を設けている。このサブバンパビーム11は、車両と歩行者との衝突時に、歩行者の脚を払って当該歩行者をボンネット上に傾倒させ、2次衝突を防止する所謂足払い部材である。
【0040】
上記の接続部材16は、図2図3に示すように、エクステンションフレーム12や第1前側クロスメンバ13(図3参照)との各接続箇所に対して上方に延在したタワー形状に形成されている。さらに接続部材16は、中空箱型形状に形成されており、その車幅方向外側部分の上面部をマウントブッシュを介してフロントサイドフレーム1の下面に対して不図示の締結部材によって取り付けている。これにより接続部材16の上部には、前側車体取付部71が構成されている。
【0041】
以下、サブフレーム10の本体部材20を中心に本実施形態の前提構造について図1図8を用いて引き続き説明する。なお、左右一対のサブフレーム10は、左右対称形状であるため、以下、特に示す場合を除いて左側の構成に基づいて説明する。
【0042】
図3図4に示すように、サブフレーム10の本体部材20は、エクステンションフレーム12および第2前側クロスメンバ14が接続される前方部21と、後側クロスメンバ15が接続される後方部61と、これら前方部21と後方部61との間を繋ぐ中間部31とを有しており、アルミダイキャスト等の鋳造により一体成形された一部材から成るアルミブロックである。
【0043】
図5に示すように、前方部21は、その車幅方向外側かつ前部に、差込み部22が前端から後方へ向けて凹状に形成している。そして図1図4に示すように、エクステンションフレーム12は、その後部が差込み部22に差し込まれることで本体部材20に対して一体に接続している。
【0044】
図3図7に示すように、前方部21の車幅方向外側には、ロアアーム100の前側アーム部101の車幅方向内端に備えた前側連結部101a(図3図4参照)を揺動自在に支持する前側支持部24が形成されている。
【0045】
具体的には図5図7に示すように、前側支持部24は、前方部21の車幅方向外側において車両前後方向に間隔を隔てて車幅方向外側へフランジ状に突出形成した前後一対の取付部241,242によって形成されている。
【0046】
一方、図3図4に示すように、ロアアーム100の前側連結部101aは、該前側連結部101aに埋設されたラバーブッシュ25に挿通された車両前後方向に平行に延びる軸部材26を備えている。
【0047】
この軸部材26は、その軸方向におけるラバーブッシュ25に対して前側が、前側の取付部241に、後側が後側の取付部242に、夫々ボルト等によって締結固定されている。
【0048】
このように、前側支持部24は、その前後一対の取付部241,242によって軸部材26を2点留めすることで、該軸部材26(ラバーブッシュ25)を介してロアアーム100の前側連結部101aを軸支している。
【0049】
また図1図2図4図8に示すように、サブフレーム10の本体部材20の中間部31には、パワートレイン2側に備えたPT側ブラケット201(図8参照)に接続するマウント支持構造体36(PTマウント36)(同図参照)を収容する収容部33が設けられている。
【0050】
収容部33は、下方に開口した収容空間33s(図5図7参照)を内部に有する中空状に形成している。図6図8に示すように、PTマウント36は、収容部33の下方の開口部33aを通じて内部の収容空間33sに収容される。
【0051】
収容空間33sに収容されたPTマウント36は、図8に示すように、収容部33の上壁部331に形成された貫通孔372c1(ネック部挿通孔372c1)を通じて、該上壁部331の上面に対して上方へ突き出すマウントラバー38を備え、このマウントラバー38の上部に設けられたPTブラケット取付け用突出片39を、エンジン3側のPT側ブラケット201に接続することで、PTマウント36によってPT側ブラケット201を下側から弾性支持する。
【0052】
図6図8に示すように、収容部33の下部には、収容空間33sの下方の開口部33aを塞ぐように該開口部33aの周縁30a,30b(図7参照)にボルト等によって取り付けられ、収容部33に収容したPTマウント36を下側から保持する保持部材40をさらに備えている。保持部材40の内部には、PTマウント嵌込み部41を備えており、PTマウント36は、PTマウント嵌込み部41に嵌め込まれた状態で保持される(図8参照)。
【0053】
図4図8に示すように、収容部33には、その上壁部331の車幅方向外縁31aから車幅方向外側に水平に延出する中間張出し部34が形成されている。
【0054】
中間張出し部34の平面視で、前縁と車幅方向外縁とのコーナー部には、サブフレーム10をその本体部材20の車両前後方向の中間位置にて車体側へ取り付ける中間車体取付部72が、上方に突出するように柱状(円筒状)に立設されている。
【0055】
また、図6図7に示すように、収容部33と中間車体取付部72との間(詳しくは収容部33の側壁部332における車幅方向外側の外壁面332aと、中間張出し部34との間)には、これら33(332a),72(34)の間を補強する上下方向および車両前後方向に延びる複数の補強リブ51a,51bが設けられている。
【0056】
図4図7に示すように、本体部材20の後方部61は、車両前後方向に沿って略直線状に延びる後方部前側62と、該後方部前側62の後端から車両前後方向に対して後方程車幅方向外側へ傾斜して略直線状に延びる後方部後側63とを有して一体に形成されている。
【0057】
さらに図4図6に示すように、本体部材20の後方部61には、該後方部61の車幅方向中央において車両前後方向に沿って延びるベース部分の上面に対して上方に立ち上がる縦壁部64が形成されている。縦壁部64は、後方部61の後方部前側62の車幅方向外縁部において、その前端から後方部後側63の前部に至るまで車両前後方向に延びており、後方へ徐々に低くなるように側面視で傾斜状に形成されている。
【0058】
縦壁部64の前端は、収容部33の側壁部332の後端から後方へ連続して延びるように該収容部33に対して一体に形成されるとともに、収容部33の上壁部331と同じ高さで形成されている。
【0059】
図5図7に示すように、後方部前側62と後方部後側63との車幅方向外側のコーナー部分(平面視で内角部分)には、車幅方向外側へ延出する後方張出部66が形成されている。
【0060】
図7に示すように、後方部61の車幅方向外側には、ロアアーム100の後側アーム部102の車幅方向内端に備えた後側連結部102a(図1図3参照)を揺動自在に支持する後側支持部67が形成されている。
具体的には図1図3に示すように、後側支持部67は、ロアアーム後側支持ブラケット67Aを備えている。
【0061】
図6に示すように、このロアアーム後側支持ブラケット67Aは、その前後各側にサブフレーム10の本体部材20に取り付ける取付けフランジ部67a,67bを備えており、これら前後一対の取付けフランジ部67a,67bのうち前側取付けフランジ部67aは、縦壁部64の車幅方向外側の壁面に形成されたボルト締結穴67aaにボルトを介して締結固定される一方、後側取付けフランジ部67bは、後方張出部66に形成されたボルト締結穴67bb(図5図7参照)にボルトを介して締結固定されている。
ここで後方張出部66におけるボルト締結穴67bbの周縁を後側取付部67rに設定する(図5図7参照)。
【0062】
そしてロアアーム100の後側連結部102aは、その後方へ延びる軸部材68(図4図6図7参照)がロアアーム後側支持ブラケット67Aの内部に備えたラバーブッシュ69(図4参照)に挿通することにより、後側支持部67に軸支される(図6図7参照)。
【0063】
これにより、ロアアーム100の前側連結部101aと後側連結部102aとは、車両前後方向に平行かつ同軸に配されている(図3参照)。
【0064】
また図1図4図6に示すように、後方部後側63の後部の上面部には、フロントサイドフレーム1の下面に対してマウントブッシュを介して締結固定する後側車体取付部73が形成されている。
【0065】
このようにサブフレーム10は、この後側車体取付部73と、上述した前側車体取付部71および中間車体取付部72との3箇所によって、フロントサイドフレーム1に取り付けられている。
【0066】
ところで、上述したサブフレーム10を備えた車体前部構造においては、サスペンションが、前輪から走行荷重を受けることで振動発生源となり、該サスペンションからサブフレーム10へ入力された振動は、サブフレーム10の車体取付部71,72,73を介して車体に伝達される。
【0067】
発明者らは、このような振動発生源から車体側への振動伝達経路において、互いに取り付けられ、上流側に位置する上流側部材(振動伝達部材)と、下流側に位置する下流側部材(振動被伝達部材)との間に剛性差をもたせることが、振動発生源から車体側へ伝達される振動を低減するうえで有効であることに着目した。
【0068】
以下では、互いに取り付けられた2つの部材間に剛性差をもたせるという上述した技術思想について、サブフレーム10におけるサスペンション取付部としての前後各側の支持部24,67に適用し、サスペンションに備えたラバーブッシュ25,69(振動伝達部材)から前後各側の支持部24,67(振動被伝達部材)へと外力(振動)が入力される場合を例に採り、図9(a)(b1)(b2)、図10を用いて説明する。
図9(a)は、サブフレーム10を1自由度系のバネ・マスモデルで示すとともに、この1自由度系のバネ・マスモデルに対して外力Fが入力される様子を示すモデル図である。図9(a)中のm1、k1は、夫々サブフレーム10の剛性、弾性を示す。
【0069】
また、外力入力点としての、ラバーブッシュ25と、サスペンション取付部としての前側支持部24との間における剛性差に応じて、サブフレーム10に対して外力が入力時に該前側支持部24が受け取るエネルギー(m1動的弾性エネルギー)の変化の関係は、図10のグラフに示す結果となった。
【0070】
図10は、サブフレーム10のみの1自由度系マス・ダンパモデルに基づく動剛性(m1動剛性、換言すると弾性係数k1)とm1動的弾性エネルギーとの関係を示すグラフである。
【0071】
ここで、m1動剛性の変化に伴うm1動的弾性エネルギーの影響について検討するにあたって、図9(a)に示すように、ラバーブッシュ25を除いてサブフレーム10のみに基づいてモデル化した1自由度系のバネ・マスモデルを採用したのは、ラバーブッシュ25と前側支持部24との間に剛性差をもたせるにあたって、弾性体から成るラバーブッシュ25と剛体からなるサブフレーム10との間には、元々大きな剛性差が存在するためであり、ラバーブッシュ25に対するサブフレーム10の剛性比(相対的な大きさ)に着目するよりも、サブフレーム10の絶対的な剛性を高めることに着目する方がラバーブッシュ25の弾性に変更を加えることがなく、結果的にラバーブッシュ25との剛性差をもたせて振動低減効果を高めることが期待できるためである。
【0072】
すなわち、振動伝達部材と振動被伝達部材との剛性差をもたせるにあたって、これら2部材のうち、上述したように、振動被伝達部材の剛性を変更する(高める)ことに限らず、例えば、振動伝達部材側の剛性を変更することも考えられる。しかしながら本実施形態においては、振動伝達部材としてサスペンションのラバーブッシュの剛性を変更することは、サスペンションジオメトリなどを考慮して適切に設定しされたラバーブッシュの弾性を変更することに繋がり、サスペンションの支持性能に悪影響を及ぼすことが懸念される。このため本実施形態では、振動被伝達部材としてのサブフレーム10側の剛性高めることで両部材間に剛性差をもたせる構成を採用したものである。
【0073】
図10のグラフ中の波形Lが示すとおり、外力入力点から外力Fが入力時にm1動的弾性エネルギーは、m1動剛性が高くなるに従って線形的に低くなる特性を示した。
【0074】
すなわち、図10のグラフ中の波形Lからの明らかなとおり、振動被伝達部材としてのサブフレーム10の剛性が高い方が、跳ね返り量が大きくなり、振動低減効果を高めるうえで有効であるといえる。
【0075】
換言すると、振動被伝達部材の一部に局所的に外力が加わる場合において、該一部周辺の剛性が低い場合(振動伝達部材と振動被伝達部材との剛性差が小さい場合)には、図9(b1)に示すように、振動被伝達部材が反射する振動エネルギーの反射量は小さくなる。すなわち、振動被伝達部材への振動エネルギーの伝達量(受け取り量)は大きくなる。これに対して、振動被伝達部材の剛性が高い場合(振動伝達部材と振動被伝達部材との剛性差が大きい場合)には、図9(a2)に示すように、振動被伝達部材における振動エネルギーの反射量は大きくなる。すなわち、振動被伝達部材への振動エネルギーの伝達量は小さくなる。
【0076】
そこで本実施形態では、上述した前提構造としてのサブフレーム10に対して、上述した技術思想を具現化した構造として、上記サブフレーム10における、ラバーブッシュ25,69を介してロアアーム100が取り付けられる前側支持部24(前後一対の取付部241,242)および後側支持部67(後側取付部67r)の各近傍部位に、走行中にロアアーム100からの入力荷重(図3中のF1、図7中のモーメント荷重M参照)に対して、これら前後各側の支持部24,67を補強する(すなわち弾性係数を高める)高剛性部を設けた具体的構造について説明する。
【0077】
サブフレーム10の本体部材20における、ロアアーム100の前側連結部101aを支持する前側支持部24のうち、前側取付部241の近傍には、該前側取付部241を補強する高剛性部としてのガイド凹部23が設けられている。
【0078】
図4図5図7に示すように、ガイド凹部23は、前方部21の前部における前側取付部241の近傍部位であって、ロアアーム100(詳しくは、前側連結部101aに備えたラバーブッシュ25)から前側取付部241への荷重入力方向である車幅内側方向の延長線上に対応する部位に設けられている。換言すると、ガイド凹部23は、前側取付部241と車両前後方向に一致する部位に設けられている(図7参照)。
【0079】
このようなガイド凹部23は、第2前側クロスメンバ14の接続部として、中間部31および後方部61の車幅方向内縁よりも車幅方向内側に延出して設けられており、上壁部23aと、上壁部23aの前後各側から下方へ延びる一対のガイド側壁部23b,23cと、上壁部23aの車幅方向外端から下方に延びる車幅方向外壁部23dとで、下方かつ車幅方向内方へ開口する凹形状に形成している(特に図5図7参照)。
【0080】
ガイド凹部23は、上述したように、前方部21の前部に設けられている。詳述すると、ガイド凹部23は、前方部21の前部に、ロアアーム100(詳しくは、前側連結部101aに備えたラバーブッシュ25)から前側取付部241への荷重入力方向である車幅内側方向の延長線上に対応する前側取付部241の近傍部位に設けられている。換言すると、第2前側クロスメンバ14の接続部としてのガイド凹部23は、上述したように、前側取付部241と車両前後方向に一致する部位に設けられている。そして第2前側クロスメンバ14は、このようなガイド凹部23から車幅方向内側へ延びている。
【0081】
図4図5に示すように、第2前側クロスメンバ14は、その車幅方向外端部がガイド凹部23に嵌め込まれた状態で各壁部23a~23cに対して溶接等により一体に接合されている。これにより、第2前側クロスメンバ14は、このようなガイド凹部23から車幅方向内側へ延びており、左右一対の本体部材20の前方部21の間に、これらを車幅方向に橋渡しするように直線状に延びている(図3参照)。
【0082】
また、サブフレーム10の本体部材20の底面部における、ロアアーム100の前側連結部101aを支持する前側支持部24のうち、後側取付部242の近傍には、該後側取付部242を補強する高剛性部として底面前方補強リブ85a,85b,85cが設けられている(図5図7参照)。
【0083】
図5図7に示すように、第1~第3の底面前方補強リブ85a,85b,85cは、本体部材20の前方部21の底面部であって、後側取付部242に対して車幅方向内側周辺部分において下方へ突出形成されており、何れも後側取付部242から荷重入力方向である車幅方向内側に沿って延びている。具体的には、第1~第3の底面前方補強リブ85a,85b,85cは、底面視で後側取付部242を中心として隣り合う相互間の車両前後方向の間隔が徐々に広がるように放射状に延びている。
【0084】
これら第1~第3の底面前方補強リブ85a,85b,85cによって、走行中に前輪からロアアーム100を介して前側支持部24の特に後側取付部242に入力される車幅方向の荷重(横力)を、前方部21の全体に効率よく分散する構成としている。
【0085】
ここで図5図7に示すように、サブフレーム10の本体部材20の底面部には、その車幅方向内外各縁において、該底面部から下方へ突出するとともに略車両前後方向に沿って延びる車幅内縁リブ81、車幅外縁リブ82が形成されており、上述した第1~第3の底面前方補強リブ85a,85b,85cは、車幅外縁リブ82と車幅内縁リブ81とを連結するように車幅方向に沿って延びている。
【0086】
上述したように、本体部材20の前方部21の底面部において、第2前側クロスメンバ14は、前側支持部24のうち前側取付部241と車両前後方向に一致するとともに該前側取付部241の近傍部位に設けられている(図5参照)。
【0087】
一方、第1~第3の底面前方補強リブ85a,85b,85cは、後側取付部242と車両前後方向に一致するとともに該後側取付部242の近傍部位に夫々設けられている(図5図7参照)。
これにより、前側支持部24の近傍部位は、前側取付部241および後側取付部242の夫々からの車幅方向内側への荷重入力に対して剛性を高めた構成としている。
【0088】
さらに、図4図5図7に示すように、本体部材20の車両前後方向の少なくとも前方部21には、本体部材20における車両前後方向に延びるベース部分(車両前後方向に延びる車幅方向中央部分)に対して車幅方向内側へ張り出す前側張出し部27が一体に形成されている。
【0089】
この前側張出し部27は、第2前側クロスメンバ14を嵌め込んだ状態で接合する上記のガイド凹部23と、該ガイド凹部23の後方で該ガイド凹部23を補強する補強張出し部271とで一体に形成されている。
【0090】
本実施形態の補強張出し部271は、ガイド凹部23と同様にロアアーム100からの入力荷重に対して前側支持部24(前側取付部241および後側取付部242)を補強する高剛性部の一部として、該前側支持部24の近傍部位であって、ガイド凹部23と本体部材20のベース部分(車幅方向中央部分)とのコーナー部において、第2前側クロスメンバ14に沿って(車幅方向内側に向けて)張り出して設けたものである。
【0091】
すなわち図7に示すように、補強張出し部271は、中間部31(収容部33)の前部からガイド凹部23の後縁にかけての範囲に形成している。さらに、補強張出し部271は、その前端がガイド凹部23と略同じ車幅方向内側への延出長さとなるように該ガイド凹部23の後縁に対して一体形成されており、車両後方程徐々に車幅方向の内側への延出長さが短くなるように平面視で傾斜形状に形成されている。
【0092】
また、図5図7に示すように、前方部21の底面部には、車両前後方向に沿って延びる上述した車幅内縁リブ81の前端から底面視で車幅方向に2股状に分岐するように車両前方へ延びる一対のガイド壁補強リブ83,84が下方へ突出形成されている。これら一対のガイド壁補強リブ83,84は、車両前方に従って互いの間隔が広がるように車幅方向に沿って形成されている。
【0093】
具体的には、一対のガイド壁補強リブ83,84のうちガイド壁第1補強リブ83は、前側張出し部27(補強張出し部271)において車両前方程車幅方向内側へ延び、その前端が、第2前側クロスメンバ14の接続用のガイド凹部23における後側のガイド壁23cの車幅方向内端に連結される。
【0094】
一方、車幅方向外側のガイド壁補強リブ84(ガイド第2壁補強リブ84)は、車両前方程車幅方向外側へ延び、その前端が、ガイド凹部23の後側のガイド壁23cの車幅方向外端に連結されている。
これにより、ガイド壁第1補強リブ83とガイド第2壁補強リブ84と後側のガイド壁23cとによって底面視略トラス形状を成すトラス形状部Taを構成している。
【0095】
上記構成に伴って、第1~第3の底面前方補強リブ85a,85b,85cは、前方部21の底面部において、車幅内縁リブ81および一対のガイド壁補強リブ83,84を介してガイド凹部23の後側のガイド壁23cに連結されるように延びている。
【0096】
ここで、後側取付部242は、第2前側クロスメンバ14の接続部としてのガイド凹部23に対して車両後方にオフセットして設けられているが(図5図7参照)、このようにガイド凹部23と後側取付部242との間を補強リブ85a,85b,85c,81,83,84によって略連続的に繋ぐことで、該後側取付部242およびその近傍部位の剛性を効果的に高めた構成としている。
【0097】
また同図に示すように、前側張出し部27の補強張出し部271には、その車幅方向内縁に沿って延びる車幅方向内縁補強リブ86aと、夫々車両前方から後方へ間隔を隔てて車幅方向に沿って延びる第1~第3の前側張出し部補強リブ86b~86dとが形成されており、いずれも底面部から下方へ突出形成されている。
【0098】
続いて図5図7に示すように、サブフレーム10の本体部材20における、ロアアーム100の後側連結部102aを支持する後側支持部67の近傍に設けられ、該後側支持部67(特に後側取付部67r)を補強する高剛性部について説明する。
【0099】
同図に示すように、後側支持部67に備えたロアアーム後側支持ブラケット67Aには、上述したように後側取付けフランジ部67bが設けられており、該後側取付けフランジ部67bの後方張出部66への取り付け部分に相当する後側取付部67rの近傍には、該後側取付部67rを補強する高剛性部が設けられている。
【0100】
具体的には、図5図7に示すように、後方部61の後方部前側62の後部(換言すると後方部後側63の前部)の車幅方向内側には、高剛性部としてのガイド凹部74が設けられている。
【0101】
ガイド凹部74は、後側クロスメンバ15(図3図4参照)を嵌め込み可能に上壁部74aと、上壁部74aの前後両端から下方へ延びる一対のガイド側壁部74b,74cと、上壁部74aの車幅方向外端から下方に延びる車幅方向外壁部74dとで、後側クロスメンバ15の車幅方向外端部を嵌め込んで接続可能に下方かつ車幅方向内方へ開口した凹形状で形成している。
【0102】
そして、後側クロスメンバ15は、ガイド凹部74に嵌め込まれた状態で、これら壁部74a,74b,74cに対して溶接等により一体に接合されている。これにより、後側クロスメンバ15は、左右一対の本体部材20の後部の間に、これらを車幅方向に橋渡しするように直線状に延びている。
【0103】
さらに図5図7に示すように、本体部材20の後方部61における底面部であって、後側取付部67rの近傍部位には、高剛性部としての第1~第7底面後方リブ88a~88gが形成されている。
【0104】
これら第1~第7底面後方リブ88a~88gは、車幅内縁リブ81と車幅外縁リブ82との間においてこれら81,82を連結するように車幅方向に沿って形成されている。
【0105】
第1~第7底面後方リブ88a~88gのうち、特に第2~第6底面後方リブ88b~88fは、ロアアーム100から後側支持部67に入力される荷重に対して、後方部61における、後側支持部67(特に後側取付部67r)の車幅方向の内側周辺部位を補強する高剛性部として該内側周辺部位に設けられたものである。
【0106】
具体的には、車両走行中において前輪に加わる前後力によっては、平面視で前側支持部24を中心としたモーメント荷重M(図7参照)がロアアーム100から後側支持部67(特に後側取付部67r)を介してサブフレーム10の本体部材20に対して加わることがある。
【0107】
このため本実施形態においては、ロアアーム100から後側支持部67に対して入力される上述した、前側支持部24を中心とするモーメント荷重に対して、第2~第6底面後方リブ88b~88fを、底面視で後側支持部67(後側取付部67r)を中心として放射状に形成している。
【0108】
詳しくは、第2~第6底面後方リブ88b~88fのうち、第2、第3底面後方リブ88b,88cは、後側支持部67(後側取付部67r)に対して前方かつ車幅方向内側へ直線状に延びるとともに、第4~第6底面後方リブ88d,88e,88fは、後側支持部67(後側取付部67r)に対して後方かつ車幅方向内側へ直線状に延びている。
【0109】
そして、車幅内縁リブ81と、車幅外縁リブ82と、これら81,82を車幅方向に連結するとともに車両前後方向で隣り合う第2、第3底面後方リブ88b,88cとによって、底面視で略トラス形状を成すトラス形状部Tbを構成している(図5図7参照)。
【0110】
車幅内縁リブ81と、車幅外縁リブ82と、これら81,82を車幅方向に連結するとともに車両前後方向で隣り合う第3、第4底面後方リブ88c,88dとによって、底面視で略トラス形状を成すトラス形状部Tcを構成している(同図参照)。
【0111】
さらに車幅内縁リブ81と、車幅外縁リブ82と、これら81,82を車幅方向に連結するとともに車両前後方向で隣り合う第4、第5底面後方リブ88d,88eとによって、底面視で略トラス形状を成すトラス形状部Tdを構成している(同図参照)。
【0112】
さらにまた、第5、第6底面後方リブ88e,88fは、共にロアアーム100の後側支持部67(後側取付部67r)から後方部61のガイド凹部74の前側ガイド側壁部74bに至るまで延びており、これにより、後側取付部67rは、第5、第6底面後方リブ88d,88eを介してガイド凹部74に連続的に繋ぐことで、後側支持部67の後側取付部67rおよびその近傍部位の剛性を効果的に高めた構成としている。
【0113】
図1図3に示すように、上述した本実施形態の車両の前部車体構造は、車両前後方向に延びる車体側フレームとしてのフロントサイドフレーム1に対して下方に取り付けられ、サスペンションに備えたサスアームとしてのロアアーム100を支持するサブフレーム10を備え(図1図3参照)、サブフレーム10における、ラバーブッシュ25,69を介してロアアーム100が取り付けられる取付部241,242,67rの近傍部位に、ロアアーム100からの入力荷重に対して該取付部241,242,67rを補強する高剛性部を設けたものである(特に図5図7参照)。
【0114】
上記構成によれば、取付部241,242,67rの近傍部位に高剛性部を設けることにより、取付部241,242,67r近傍部位を高剛性化し(すなわち絶対的な剛性を高め)、結果的に、取付部材(振動伝達経路の下流側部材)としてのサブフレーム10に備えた取付部241,242,67rと、ロアアーム100に備えた被取付部材(振動伝達経路の上流側部材)としてのラバーブッシュ25,69との相互間の剛性差を高めることができる。
【0115】
これにより、ロアアーム100からラバーブッシュ25,69を介したサブフレーム10への振動伝達を低減することができる。
【0116】
従って、ラバーブッシュ25,69自体の弾性(剛性)の変更が不要であるため、サスペンションジオメトリ等への影響が無く、狙い通りのサスペンションジオメトリ等を達成できる。
【0117】
この発明の態様として、高剛性部は、前側支持部24に備えた後側取付部242から荷重入力方向(車幅方向内側)に沿って延びる第1~第3の底面前方補強リブ85a,85b,85c(リブ)であるとともに(図5図7参照)、後側支持部67に備えた後側取付部67rから荷重入力方向(車幅方向内側)に沿って延びる第2~第6底面後方リブ88b~88f(リブ)である(同図参照)。
【0118】
このように、高剛性部をリブ85a,85b,85c,88b~88fで形成することで、部品点数が増えることなく、ロアアーム100からラバーブッシュ25,69を介したサブフレーム10への振動伝達を効果的に低減することができる。
【0119】
さらに高剛性部をリブ85a,85b,85c,88b~88fで形成することで、サブフレーム10を成形により形成する場合には、該リブ85a,85b,85c,88b~88fを、本体部材20の成形時に所望の部位、突出し長さ、数となるように一体に形成できる。
【0120】
この発明の態様として、ロアアーム100から前側支持部24に備えた前後一対の取付部241,242への荷重入力方向の延長線上に対応する、取付部241,242の近傍部位に、車幅方向に(荷重入力方向に沿って)延びるクロスメンバとしての第2前側クロスメンバ14を接続したものである(図3図6参照)。
【0121】
上記構成によれば、取付部241,242の近傍へ第2前側クロスメンバ14を接続する接続部としてのガイド凹部23によって、ロアアーム100から取付部241,242への入力荷重を、サブフレーム10の車幅方向内側から受け止めるように突っ張り支持することができるため、該ガイド凹部23を、取付部241,242の近傍部位を補強する高剛性部として構成することができる。
【0122】
これにより、ラバーブッシュ25と前側支持部24との剛性差をより一層生じさせることができ、サブフレーム10へ伝達する振動低減効果を高めることができる。
【0123】
この発明の態様として、第2前側クロスメンバ14の、取付部241,242の近傍部位への接続部としてのガイド凹部23は、取付部241,242のうち、前側取付部241と車両前後方向に一致する部位に設けたものである(図7参照)。
【0124】
上記構成によれば、第2前側クロスメンバ14の接続部としてのガイド凹部23は、前側取付部241と車両前後方向に一致する部位に設けたため、ロアアーム100から前側取付部241へ入力される車幅方向内側への入力荷重を、該ガイド凹部23によって、サブフレーム10の車幅方向内側からダイレクトに受け止めることができる。これにより、ガイド凹部23を設けることによる、サブフレーム10へ伝達する振動低減効果をより一層高めることができる。
【0125】
この発明の態様として、第2前側クロスメンバ14の、取付部241,242の近傍部位への接続部であるガイド凹部23は、取付部241,242のうち、後側取付部242に対して車両前方へオフセットして設けられており(図7参照)、高剛性部は、後側取付部242の近傍部位であって、ガイド凹部23と、サブフレーム10の本体部材20とのコーナー部から第2前側クロスメンバ14に沿って張り出した補強張出し部271(張出し部)である(図4図5図7参照)。
【0126】
上記構成によれば、ガイド凹部23を後側取付部242に対して前方へオフセットして設けたものであっても、高剛性部としての補強張出し部271によって、ガイド凹部23と協働してロアアーム100から後側取付部242への入力荷重を効果的に受け止めることができる。これにより、ガイド凹部23を設けることによる、サブフレーム10へ伝達する振動低減効果をより一層高めることができる。
【0127】
この発明の態様として、補強リブ85a,85b,85c,81,83,84(リブ)は、後側取付部242と第2前側クロスメンバ14との間に、補強張出し部271を経由してこれら後側取付部242と第2前側クロスメンバ14とを繋ぐように設けられたものである(図5図7参照)。
【0128】
上記構成によれば、ロアアーム100から後側取付部242への入力荷重を、補強リブ85a,85b,85c,81,83,84を介して第2前側クロスメンバ14に分散することができるため、補強リブ85a,85b,85c,81,83,84は、第2前側クロスメンバ14の接続部としてのガイド凹部23と協働してロアアーム100から後側取付部242への入力荷重を効果的に受け止めることができる。
【0129】
この発明の態様として、前側支持部24(前側取付部241および後側取付部242)の近傍部位に、リブとしての、ガイド壁第1補強リブ83とガイド第2壁補強リブ84と後側のガイド壁23cとによって底面視トラス形状部Taを構成したものである(図5図7参照)。また、後側支持部67(特に後側取付部67r)の近傍部位に、リブとしての、車幅内縁リブ81と車幅外縁リブ82と第2、第3底面後方リブ88b,88cとによって、底面視でトラス形状部Tbを構成し(同図参照)、車幅内縁リブ81と車幅外縁リブ82と第3、第4底面後方リブ88c,88dとによって、底面視でトラス形状部Tcを構成し(同図参照)、さらに車幅内縁リブ81と車幅外縁リブ82と第4、第5底面後方リブ88d,88eとによって、底面視でトラス形状部Tdを構成したものである(同図参照)。
【0130】
上記構成によれば、最小限のリブによって効果的に取付部241,242,67rの近傍部位を高剛性化することができる。
【0131】
この発明の態様として、サブフレーム10は、取付部241,242によってロアアーム100を支持する前側支持部24と、該前側支持部24よりも後側の位置でロアアーム100を支持する後側支持部67とを備え、該後側支持部67の近傍部位には、高剛性部として、後側支持部67に備えた後側取付部67rを中心として荷重入力方向(車幅方向内側)に沿って底面視で放射状に延びるリブとしての第2~第6底面後方リブ88b~88fを設けたものである(図5図7参照)。
【0132】
上記構成によれば、ロアアーム100から後側支持部67を中心として後側支持部67(後側取付部67r)に入力されるモーメント荷重M(図7参照)に対して後側取付部67rの近傍部位を効果的に高剛性化(補強)できるため、後側取付部67rと、ロアアーム100側に備えた被取付部材としてのラバーブッシュ69との相互間に、剛性差を生じさせることができ、ロアアーム100からラバーブッシュ69を介したサブフレーム10への振動伝達を低減することができる。
【0133】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【符号の説明】
【0134】
1…フロントサイドフレーム(車体側フレーム)
10…サブフレーム
14…第2前側クロスメンバ(クロスメンバ、高剛性部)
23…ガイド凹部(凹部、高剛性部)
24…前側支持部
25,69…ラバーブッシュ
67…後側支持部
67r…後側取付部(後側支持部に備えた取付部)
3,84,23c…補強リブ(トラス形状部を形成するリブ、高剛性部
83…ガイド壁第1補強リブ(第2リブ)
85a…第1の底面前方補強リブ(第1リブ)
8b~88f…第2~第6底面後方リブ(放射状に延びるリブ、高剛性部
00…ロアアーム(サスアーム)
241,242,67r…取付部
241…前側取付
242…後側取付
271…補強張出し部(張出し部、高剛性部)
a…トラス形状部(高剛性部)
図1
図2
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図8
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図10