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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】サンプラー
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
G01N1/00 101K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018124723
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020003405
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 悠太
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-101795(JP,A)
【文献】国際公開第2007/102599(WO,A1)
【文献】特開平08-304387(JP,A)
【文献】特表平06-507015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0279551(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/44
G01N 33/48 -33/98
A61B 5/145- 5/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血管のゴム栓に刺して前記採血管内の血液を流出させるためのサンプラーであって、
前記ゴム栓に刺すべく先端部が鋭利であって、前記先端部から基端部にわたって連通路が延在し、前記連通路の基端側の開口部が血液を流出させる流出部を構成しているサンプラー本体と、
前記サンプラー本体の基端部に設けられ且つ押圧可能に構成され、押圧されることによって前記サンプラー本体を前記ゴム栓に刺すことができる押圧体とを備え、
前記押圧体は、前記サンプラー本体の前記流出部を覆い且つ着脱可能に前記サンプラー本体に設けられている、サンプラー。
【請求項2】
前記流出部と外側とを繋ぐ通気路を備え、
前記通気路は、気体を通し且つ血液が通らないようになっている、請求項1に記載のサンプラー。
【請求項3】
前記押圧体は、前記サンプラー本体の軸線方向に沿った寸法である縦寸法に比べて、前記軸線方向に直交する方向に沿った寸法である横寸法の方が大きい、請求項1又は2に記載のサンプラー。
【請求項4】
前記押圧体は、離脱操作部を有し、
前記離脱操作部は、前記押圧体の外周縁の少なくとも一部を前記ゴム栓の外周縁より外側に突出させて形成されている、請求項1乃至3の何れか1つに記載のサンプラー。
【請求項5】
前記離脱操作部は、その前記ゴム栓側の外縁部分が丸く面取りされている、請求項4に記載のサンプラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗抹標本を作製する際に採血管から血液を流出させるためのサンプラーに関する。
【背景技術】
【0002】
赤血球、白血球、及び血小板等の状態を確認する検査方法として塗抹検査が知られている。塗抹検査では、血球数や血球の大きさを観察するべく塗抹標本が用いられる。塗抹標本は、採血管に採取されている血液をスライドガラス上に塗布することによって作製され、塗布する際にサンプラーが用いられる。サンプラーは、採血管のゴム栓に穿刺して用いられ、例えば非特許文献1のテルモ製のベノジェクトIIピアッシングサンプラー、非特許文献2のgreiner bio-one製のバキュドロップ、及び非特許文献3の日本ベクトン・ディッキンソン製のDIFF-SAFE(商標)血液ディスペンサーが知られている。
【0003】
これらのサンプラーは、共に大略円筒状に形成されており、その先端部が先鋭に形成されている。それ故、サンプラーをゴム栓に穿刺することができる。また、穿刺することによって採血管内とサンプラー内とを連通し、採血管に採血された血液がサンプラー内へと導かれる。更に、サンプラーは、その基端側に滴下部を有しており、サンプラー内へと導かれた液滴が滴下部を介してスライドガラス上に滴下され、塗布される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】ベノジェクトIIピアッシングサンプラー、[online]、テルモ株式会社、[2018年2月16日]、インターネット<https://www.terumo.co.jp/medical/equipment/me75.html>
【文献】バキュドロップ、[online]、2018年、Greiner Bio One International GmbH、[2018年2月16日]、インターネット<https://shop.gbo.com/ja/japan/products/preanalytics/accessories/accessories-venous-blood-collection/additional-accessories/vacudrop/>
【文献】採血総合カタログ、第20頁、DIFF-SAFE(商標)血液ディスペンサー、[online]、2016年、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社、[2018年2月16日]、インターネット<https://www.bdj.co.jp/pas/products/catalog/62-006-PAS-catalogue.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願人は、試験において、採血管内が稀に採血後に陽圧状態となる場合があることを確認した。この場合、サンプラーをゴム栓に刺した際に採血管内の気体が滴下部から勢いよく放出される。特に、ゴム栓等に血液が付着している場合、穿刺することによって付着している血液が気体によって滴下部まで運ばれてきてしまい、手等に汚染が生じる。手等が汚染されないようにするために、前述するサンプラーでは、穿刺作業において、滴下部及びその周辺に手又は物が触れないよう、例えば使用者はサンプラーの側面を把持してゴム栓に押し込んで穿刺することが考えられる。しかし、側面を把持して押し込むと力が伝わりにくく穿刺しにくい。それ故、サンプラーの基端側部分を手で押したり、机等に押し付けたりすることが好ましいが、そうすると前述するように滴下部及びその周辺に手又は物に触れることになり、滴下部まで運ばれてくる血液によって手等が汚染されるおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、滴下部である流出部に運ばれてくる血液による汚染を抑制し且つ刺しやすさを向上させることができるサンプラーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサンプラーは、採血管のゴム栓に刺して前記採血管内の血液を流出させるためのサンプラーであって、前記ゴム栓に刺すべく先端部が鋭利であって、前記先端部から基端部にわたって連通路が延在し、前記連通路の基端側の開口部が血液を流出させる流出部を構成しているサンプラー本体と、前記サンプラー本体の基端部に設けられ且つ押圧可能に構成され、押圧されることによって前記サンプラー本体を前記ゴム栓に刺すことができる押圧体とを備え、前記押圧体は、前記サンプラー本体の前記流出部を覆い且つ着脱可能に前記サンプラー本体に設けられ、前記サンプラー本体は、前記ゴム栓から抜けることなく前記押圧体を離脱させることができるように構成されているものである。
【0008】
本発明に従えば、押圧体を押すことによってサンプラー本体をゴム栓に刺すことができるので、ゴム栓に対する刺しやすさを向上させることができる。また、サンプラー本体の流出部を押圧体によって覆うことによって、穿刺時において流出部から血液が飛散したり、また流出部に付着する血液に触れたりして血液による汚染が生じることを防ぐことができる。即ち、サンプラー本体を刺す際の血液による汚染を抑制することができる。このようにサンプラーは、流出部に運ばれてくる血液による汚染を抑制し且つ刺しやすさを向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流出部に運ばれてくる血液による汚染を抑制し且つ穿刺しやすさを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本件発明の第1実施形態のサンプラーが取り付けられているサンプラー付きの採血管を示す斜視図である。
図2図1のサンプラーにおいて、押圧キャップを取外した状態を示す斜視図である。
図3図2のサンプラーを拡大して示す拡大斜視図である。
図4図3のサンプラーを分解して示す分解斜視図である。
図5図1のサンプラー付きの採血管を切断して示す断面図である。
図6】本件発明の第2実施形態のサンプラーにおいて、押圧キャップを取外した状態を示す斜視図である。
図7図6のサンプラーを拡大して示す拡大斜視図である。
図8図7のサンプラーを分解して示す分解斜視図である。
図9】サンプラー付きの採血管を切断して示す断面図である。
図10】本件発明の第3実施形態のサンプラーにおいて、押圧キャップを取外した状態を示す斜視図である。
図11図10のサンプラーを拡大して示す拡大斜視図である。
図12図11のサンプラーを分解して示す分解斜視図である。
図13図10のサンプラー付きの採血管を切断して示す断面図である。
図14図13のサンプラー付きの採血管を切断線XIV-XIVにて切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る第1乃至第3実施形態のサンプラー1,1A,1Bについて、前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下で説明するサンプラー1,1A,1Bは、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0012】
塗抹検査では、塗抹標本を用いて血液中の血球数及び血球の大きさを観察し、赤血球、白血球、及び血小板の異常を検出する。塗抹標本は、スライドガラス(図示しない)に血液を塗布して作製する。具体的に説明すると、図1に示すような採血管2に採取された血液をサンプラー1によってスライドガラス上に滴下して塗布し、それを乾燥させることによって塗抹標本が作製される。このように塗抹標本は、サンプラー1を用いて作製される。以下では、塗抹標本の作製において使用される採血管2及びサンプラー1の構成について説明する。
【0013】
[第1実施形態]
<採血管>
採血管2は、採取した血液を保存する容器であり、管本体3と、ゴム栓4とを有している。管本体3は、大略有底筒状のガラス管であり、その先端部が部分球面状に形成されている。また、管本体3は、その基端に開口部を有しており、その開口部には、ゴム栓4が嵌合されている。ゴム栓4は、例えば合成ゴムから成る中実の大略円柱状の弾性部材であり、開口部を封止している。これにより、管本体3内が密閉され、採血管2は血液を外に漏らすことなく管本体3内にて保存させることができる。
【0014】
また、ゴム栓4は、その先端側部分を管本体3の開口部に嵌合させ、その基端側部分4aを管本体3の開口部から突出させている。基端側部分4aは、開口部より大径に形成されており、その側面が基端面に向かって先細りのテーパ状に形成されている。また、ゴム栓4の基端面には、図2に示すように凹所4bが形成されている。凹所4bは、底が丸い大略逆円錐上に形成されており、ゴム栓4の軸線に沿うように且つゴム栓4の先端に向って延在している。このように形成されるゴム栓4には、サンプラー1が穿刺される。
【0015】
<サンプラー>
図3に示すサンプラー1は、前述の通り、塗抹標本を作製する際にスライドガラスに採血管2内の血液を滴下すべく用いられる。即ち、サンプラー1は、図4に示すようにサンプラー本体11と、押圧キャップ12とを備えている。サンプラー本体11は、ゴム栓4に穿刺することによってゴム栓4に取り付けられる。また、サンプラー本体11は、取り付けられた状態にて採血管2とその外側(即ち、外空間)とを連通させることができ、それによって採血管2内に採取された血液を滴下させることができる。
【0016】
更に詳細に説明すると、サンプラー本体11は、大略円筒状に形成されており、その先端が鋭利に形成されている。また、サンプラー本体11の外径は、先端から基端側に向かうにつれて徐々拡径し、その中間部分11aが残余部分に比べて大径に形成されている。他方、サンプラー本体11の基端側部分11bの外径は、中間部分11aより小径になっている。それ故、サンプラー本体11では、基端側部分11bと中間部分11aとの間に環状の肩部11cが形成されている。このような形状を有するサンプラー本体11は、図5に示すようにその内孔である連通路13を有している。
【0017】
連通路13は、サンプラー本体11の軸線L1に沿ってその基端から先端部分11dまで延在している。また、サンプラー本体11の先端部分11dには、一対の切欠き溝11e,11eが形成されている。一対の切欠き溝11e,11eは、先端部分11dの外周面に形成され、周方向に互いに等間隔、即ち180度の間隔をあけて配置されている。このように形成される一対の切欠き溝11e,11eは、その基端側の部分にて連通路13と繋がっており、連通路13は、一対の切欠き溝11e,11eを介して外側に開放されている。また、連通路13は、サンプラー本体11の基端にて開口しており、その開口部が流出部の一例である滴下部13aを成している。それ故、サンプラー本体11は、一対の切欠き溝11e,11eから連通路13内に血液を取り入れ、更にその血液を連通路13を通して滴下部13aに導く。これにより、滴下部13aから血液を滴下させることができる。
【0018】
このように構成されるサンプラー本体11は、前述の通りその先端が鋭利に形成されており、先端をゴム栓4に突き刺すことができる。また、サンプラー本体11は、中間部分11aより先端側が長尺に形成されており、中間部分11aより先端側が少なくともゴム栓4の中心付近の厚み(即ち、凹所の最も深い部分が形成されている部分の厚み)より長く形成されている。それ故、サンプラー本体11は、一対の切欠き溝11e,11eの少なくとも先端部分がゴム栓4から採血管2内に突き出るまで押し込むことができる。これにより、採血管2内と連通路13とを連通させることができ、ゴム栓4が下側に位置するように採血管2をひっくり返すことによって、採血管2内の血液を連通路13に取り込んで滴下部13aから滴下させることができる。このように基端側部分11bには、滴下部13aが形成されており、またその滴下部13aを覆うべく押圧キャップ12が被せられている。
【0019】
押圧キャップ12は、大略円板状に形成されており、サンプラー本体11の軸線L1方向に沿った寸法である縦寸法に比べて、軸線L1方向に直交する方向に沿った寸法である横寸法の方が大きい。この押圧キャップ12には、その軸線L2に沿って装着孔部14が形成されている。装着孔部14は、押圧キャップ12の下面から上面に向かって延在する断面円形状の孔であり、その天井側の部分が開口側の部分に比べて小径に形成されている。それ故、天井側の部分である小径部14aと開口側の部分である大径部14bとの間には段部14cが形成されている。また、小径部14aの孔径は、サンプラー本体11の基端側部分11bの外径と略同一、より詳しくは若干大径に形成され、大径部14bは、サンプラー本体11の中間部分11aの外径と略同一、より詳しくは若干大径に形成されている。
【0020】
このように構成されている押圧キャップ12は、図3に示すように装着孔部14の小径部14aにサンプラー本体11の基端側部分11bを挿入され、且つ大径部14bにサンプラー本体11の中間部分11aであってその基端側の一部分を挿入させた状態にてサンプラー本体11に外装されている。このようにして押圧キャップ12は、互いの軸線L1,L2が略一致するようにしてサンプラー本体11の基端側部分11bに被せられている。また、サンプラー本体11及び押圧キャップ12には、被せられた状態、即ち装着状態にて互いに外れないようにすべく、本体側係合部15及びキャップ側係合部16が夫々形成されている。
【0021】
本体側係合部15は、サンプラー本体11の肩部11cより先端側の中間部分11aの外周面に形成されている。本体側係合部15は、中間部分11aの外周面から径方向外方に突出し且つ中間部分11aの外周面において周方向全周にわたって延在している。このようにして形成される本体側係合部15は、大略円環状に形成され、これに対応させるように装着孔部14の大径部14bの内周面には、キャップ側係合部16が形成されている。キャップ側係合部16は、大径部14bの内周面から径方向内方に突出し且つ大径部14bの内周面において周方向全周にわたって延在している。
【0022】
このように形成されている2つの係合部15,16は、互いに係合し、押圧キャップ12からサンプラー本体11が外れないようになっている。より詳細には、本体側係合部15は、前述する装着状態においてキャップ側係合部16より小径部14a側に位置するようになっている。このような位置関係にある2つの係合部15,16は、押圧キャップ12をサンプラー本体11から外そうとすると互いに係合し、押圧キャップ12がサンプラー本体11から外れることを阻止する。他方、後述するように押圧キャップ12を押したり引っ張ったりする等してキャップ側係合部16及びその周りを変形させることによって、その係合を解除して押圧キャップ12をサンプラー本体11から外すことができるようになっている。
【0023】
このように構成されている押圧キャップ12には、更に上面に上溝12aが形成されている。上溝12aは、大略円環状に形成され、押圧キャップ12の軸線L2を中心にして形成されている。上溝12aは、押圧キャップ12の重量を軽減すると共に、サンプラー本体11から押圧キャップ12を外す際の変形のしやすさを向上させることができる。また、上溝12aは、装着孔部14を避けて囲むように形成されており、そうすることで押圧キャップ12の上面であって軸線L2周りに押圧面18が形成されている。
【0024】
押圧面18は、平面視で大略円形状であり、軸線L2上(即ち、軸線L2に交差するよう)に形成されている。このような位置に形成される押圧面18は、装着状態においてサンプラー本体11の軸線L1上に位置し、穿刺作業において押圧面18を押すことによってサンプラー本体11の先端に効率よく力を伝えることができる。つまり、押圧キャップ12は、本発明に係る押圧体を成している。これにより、ゴム栓4に対するサンプラー1の穿刺しやすさを向上させることができる。また、押圧面18は、軸線L2に対して直交する(即ち、平坦になる)ように形成されている、即ちサンプラー本体11の軸線L1に対して直交するように形成されている。これによっても押圧面18を押した力をあまり分散することなく軸線L1に沿ってサンプラー本体11の先端に伝えることができるので、ゴム栓4に対するサンプラー1の穿刺しやすさを更に向上させることができる。なお、押圧面18は、必ずしも平坦に形成されている必要はなく、部分球面状に形成されていてもよい。また、押圧面18は径が4mm以上であることが好ましい。
【0025】
また、サンプラー1は、押圧面18が平坦に形成されているので、押圧キャップ12の上面を下方に向けて台に置くことができる。即ち、サンプラー本体11の先端を上に向けた状態で押圧キャップ12を台に置くことができ、またその状態にあるサンプラー1に対してゴム栓4を下に向けた採血管2をサンプラー本体11の先端に向かって降ろすことによってサンプラー1をゴム栓4に穿刺させることができる。このように降ろす作業によってサンプラー1をゴム栓4に穿刺させることができ、穿刺時に大きな力でサンプラー1をゴム栓に穿刺させることができる。それ故、ゴム栓4に対するサンプラー本体11の穿刺しやすさを向上させることができる。なお、本実施形態のサンプラー1では、押圧キャップ12の外周縁部12bの上面と押圧面18とを面一に形成しているため、より台等に安定的に立てて置くことができる。
【0026】
<サンプラーの使用方法について>
このように構成されているサンプラー1は、予め押圧キャップ12をサンプラー本体11に被せて装着した状態にて用意されており、その状態にて採血管2のゴム栓4に取り付けられる。取り付け方法としては、上述するようなサンプラー1をゴム栓4に押し込む方法と、サンプラー1にゴム栓を押し付ける方法とがある。前者では、まず採血管2のゴム栓4であってその凹所4bの最も凹んだ箇所に、用意したサンプラー1の先端(即ち、サンプラー本体11の先端)を当てる。次に、サンプラー本体11の軸線L1とゴム栓4の軸線とが互いに略一致するように互いの位置を調整し、略一致したところで押圧キャップ12の押圧面18に使用者の指(主に、親指)を掛けてそのまま押し込む。押し込むことによってサンプラー本体11の先端がゴム栓4の中に刺さって入り込む。そのまま押し込むことによって、やがてサンプラー本体11の先端がゴム栓4から採血管2内に突き出て、一対の切欠き溝11e,11eを介して採血管2内と連通路13とが繋がる。
【0027】
また、後者では、まずサンプラー1をその先端が上に向くように机上等の水平面上に置くと共に、ゴム栓4が下側に位置するように採血管2を持つ。そして、凹所4bの最も凹んだ箇所にサンプラー1の先端を当て、そのまま採血管2を軸線L1に沿って降ろしていく。そうすることで、サンプラー本体11の先端がゴム栓4の中に刺さって入り込み、やがてサンプラー本体11の先端がゴム栓4から採血管2内に突き出て、一対の切欠き溝11e,11eを介して採血管2内と連通路13とが繋がる。
【0028】
このようにサンプラー1が取り付けられる採血管2内は、稀に陽圧になっており、採血管2と連通路13とが繋がることによって採血管2内の気体が連通路13へ勢いよく排出される。基本的にサンプラーは、一度使用すると捨てられる使い捨てタイプのものであり、簡単な構造にて構成される。それ故、従来のサンプラーは滴下部を露出させて構成されており、このような構造の場合、連通したと同時に採血管2内の気体が勢いよく外部へ放出される、つまり飛散する。他方、採血管2内においてゴム栓4に血液が付着している場合、その血液は前述する気体と共に滴下部に運ばれ、更に気体と一緒に外部へ飛散することになる。これに対して本実施形態のサンプラー1は、滴下部13aが押圧キャップ12によって覆われている。それ故、気体によって運ばれる血液が滴下部13aからとび出して外部へ飛散することがない。従って、血液の飛散を防ぐことができ、血液の飛散による汚染を防ぐことができる。
【0029】
このように穿刺されたサンプラー1は、押圧キャップ12がその下面がゴム栓4の上面に接するまで押し込まれる。そうすることで、サンプラー本体11の先端がゴム栓4から採血管2内に突き出て、採血管2内と連通路13とが繋がったことを視覚的かつ物理的に確認することができる。なお、サンプラー1では、必ずしも押圧キャップ12の下面がゴム栓4の上面に当接せずとも、サンプラー本体11の中間部分11aがゴム栓4の上面(より詳しくは凹所4bを規定する面)に当たると、サンプラー本体11の先端がゴム栓4から採血管2内に突き出ていることが確認できるようにしてもよい。このようにして取り付けられるサンプラー1では、血液をスライドガラスに滴下すべく、以下のようにして押圧キャップ12がサンプラー本体11から外される。なお、押圧キャップ12の下面がゴム栓4の上面に当接するようであると、サンプラー1を採血管2に穿刺した際に押圧キャップ12とサンプラー本体11が安定した当接面を形成するので、サンプラー1と採血管2との間のぐらつきを防止することができる。本実施形態においては安定した当接面は環状に形成されるが、均一幅で点状に形成されてもよい。
【0030】
例えば、使用者は、管本体3を持ち、また押圧キャップ12の下面の外周縁部12bに1つの指(例えば、人指し指)の先端を引っかける。更に他の指(例えば、親指)にて押圧面18を押え、そのまま前記1つの指を持ち上げて2つの係合部15,16の係合を解除する。このように押圧キャップ12では、その下面の外周縁部12bが離脱操作部20として形成されており、この離脱操作部20を上に押し上げることで、押圧キャップ12をサンプラー本体11から外すことができる。このように外すことができる押圧キャップ12は、押圧面18を他の指によって押えておくことでサンプラー本体11をゴム栓4から抜くことなくサンプラー本体11から押圧キャップ12を外すことができる。それ故、押圧キャップ12を外しやすい。また、押圧キャップ12は、外しやすさを考慮して以下のような形状を有している。
【0031】
即ち、押圧キャップ12は、その離脱操作部20がゴム栓4の上面より大径に形成されている、即ちゴム栓4の上面より外方に突出している。これにより、使用者は、離脱操作部20に1つの指が引っ掛けやすい。より詳細に説明すると、ゴム栓4の基端側部分4aの側面は、前述の通りテーパ状に形成されており、基端側部分4aの上面が基端側部分4aの残余部分より小径になっている。他方、押圧キャップ12の側面が略同一径であってゴム栓4の上面より大径に形成されている。それ故、離脱操作部20がゴム栓4より大径に形成され、指を引っ掛けやすくなっている。これにより、取り外す際の作業性を向上させることができる。また、押圧キャップ12の離脱操作部20は、R面取りされている。これにより、引っ掛けた指に対して局所的な圧力が生じて指が痛くなることを抑制することができる。
【0032】
また、押圧キャップ12は、上述する方法以外の方法でもサンプラー本体11から外すことができる。その際、サンプラー本体11がゴム栓4から抜けないようにすべくサンプラー本体11及び押圧キャップ12は、以下のように構成されていてもよい。即ち、サンプラー本体11は、その中間部分11aより先端側の部分(即ち、先端側部分11f)の形状によってその抜けにくさの度合いが変化する。例えば、先端側部分11fの外径を大きくすることによって抜く際の摩擦抵抗を大きくしたり、また先端側部分11fの外周面に突起等を形成したりすることによって、抜けにくくすることができる。他方、2つの係合部15,16は、係合時における当接面積、即ち係合度合によって外れやすさ(即ち、係合解除のしやすさ)を調整することができ、係合度合は2つの係合部15,16の突出量(即ち、外径寸法)によって調整することができる。このようにサンプラー本体11の抜けにくさと2つの係合部15,16の外れやすさを調整することによって、以下のような外し方も可能となる。
【0033】
即ち、使用者は、管本体3を持つと共に、押圧キャップ12の離脱操作部20を複数本の指(例えば、親指、人指し指、及び中指の3つの指)で把持する。その後、把持した複数の指で押圧キャップ12を軸線L1に沿って持ち上げる。前述する抜けにくさと外れやすさとを予め調整しておくことで、サンプラー本体11をゴム栓4から抜くことなく押圧キャップ12をサンプラー本体11から外せる。これにより、押圧キャップ12がサンプラー本体11に被せられていても、押圧キャップ12を引っ張って外すだけでスライドガラス上に血液を滴下させて塗抹標本を作製することができる。
【0034】
このようなサンプラー1では、押圧キャップ12をサンプラー本体11から外す際に血液が飛散しないように以下のように構成されている。即ち、2つの係合部15,16が互いに当接している状態において、サンプラー本体11の肩部11cと押圧キャップ12の段部14cとが互いに隙間を空けて配置されている。それ故、サンプラー1をゴム栓4に穿刺すべく押し込むと、サンプラー本体11が押圧キャップ12に対して相対変位し、互いに当接する2つの係合部15,16が離れることになる。そうすることで、2つの係合部15,16の間に隙間が形成される。
【0035】
また、押圧キャップ12の天井面14dとサンプラー本体11の滴下部13aとの間にも隙間が形成されている。それ故、採血管2と連通路13とが繋がった際(即ち、穿刺時)、滴下部13aと外側(即ち、大気空間)とを繋ぐ通気路19が押圧キャップ12とサンプラー本体11との間に形成される。これにより、通気路19によって穿刺時に採血管2内から出てくる気体を外側に排出する。なお、通気路19は、その断面積が小さく気体に比べて血液を通しにくいように設計されているのが好ましい。その場合、穿刺時に血液が外側に排出されることをより防ぐことができ、血液による汚染をより効果的に防ぐことができる。
【0036】
このように穿刺時に通気路19を介して採血管2内から出てくる気体を排出することができるので、穿刺後において採血管2内が陽圧で維持されることを防ぐことができる。例えば、採血管2内が陽圧で維持されている場合、押圧キャップ12を外した際に滴下部13a及びその付近に付着する血液が押し出されて飛散する。他方、採血管2内が通気路19によって常圧になっていると、押圧キャップ12を外した際に滴下部13a及びその周辺にある血液が押し出されることがない。それ故、押圧キャップ12をサンプラー本体11から外す際に血液が飛散することを抑制することができる。なお、サンプラー本体11の基端面は押圧キャップ12の天井面14dと液密になるように当接しているのが好ましく、このようであると、押圧キャップ12をサンプラー本体11から離脱させた際、サンプラー本体11から液が垂れにくくすることができる。
【0037】
このように押圧キャップ12をサンプラー本体11から外した後、使用者は、滴下部13aが下に向くようにして採血管2を持つ。そうすると、血液は連通路13を伝って滴下部13aへと導かれるので、滴下部13aをスライドガラスの上面に近づける。そうすると、スライドガラス上に血液が滴下され、滴下された血液をスライドガラスに塗って乾燥させることによって塗抹標本(図示せず)が作製される。そして、作成された塗抹標本を用いて血液中の血球数及び血球の大きさが観察され、赤血球、白血球、及び血小板の異常が検出される。
【0038】
なお、検査後において、採血管2と共にサンプラー1を廃棄する際、血液による汚染を防ぐべく、以下のようにしてから廃棄してもよい。即ち、サンプラー本体11から外された押圧キャップ12をサンプラー本体11に再度装着してもよい。これにより、滴下部13a及びその周辺に付着する血液が他の廃棄物を汚染することを防ぐことができる。
【0039】
[第2実施形態]
第2実施形態のサンプラー1Aは、第1実施形態のサンプラー1と構成が類似している。以下では、第2実施形態のサンプラー1Aの構成について、第1実施形態のサンプラー1と異なる点について主に説明し、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
図6に示すように第2実施形態のサンプラー1Aは、第1実施形態のサンプラー1と同様に、塗抹標本を作製するにあたって採血管2のゴム栓4に取り付けられる。即ち、サンプラー1Aは、図7及び8に示すようにサンプラー本体11Aと、押圧体を成す押圧キャップ12Aとを備えている。サンプラー本体11Aは、ゴム栓4に穿刺することによって取り付けられる。また、サンプラー本体11Aは、取り付けられた状態で採血管2と外空間とを連通させることができ、それによって採血管2内に採取された血液を滴下させることができる。
【0041】
更に詳細に説明すると、サンプラー本体11Aは、第1実施形態のサンプラー本体11と構成が類似している。即ち、大略円筒状で且つ先端が先鋭に形成されており、図9に示すように内孔である連通路13を有している。他方、サンプラー本体11Aの肩部11cには、平面視で基端側部分11bを外囲するように環状溝11gが形成されている。環状溝11gは、サンプラー本体11Aの中間部分11aをその軸線L1に沿って延在しており、サンプラー本体11Aは、中間部分11aに環状溝11gを形成することによって以下のように構成されている。
【0042】
即ち、サンプラー本体11Aは、本体部21と外套部22とを有している。本体部21は、大略円筒状に形成されており、その先端側部分が先細りのテーパ状に形成され且つ先端が鋭利になっている。他方、本体部21の中間部分21aから基端側部分21b(基端側部分21bはサンプラー本体11Aの基端側部分11bに相当)は、略同一径にて形成されている。このような形状を有する本体部21の中間部分21aには、外套部22が一体的に設けられている。
【0043】
外套部22は、大略円筒状に形成されており、本体部21の中間部分21aを全周にわたって囲むように配置されている。即ち、外套部22は、本体部21の中間部分21aに外装されている。また、外套部22と本体部21の中間部分21aとの間には、周方向全周にわたって環状溝11gが介在し、それによってそれらは互いに径方向に離されている。また、外套部22の先端部分は、先細りの逆ドーム状に形成されており、本体部21の中間部分21aの外周面に一体的に設けられている。このように外套部22は、その先端部分にて中間部分21aに一体的に繋がり、且つ先端部分を除く部分によって本体部21の中間部分21aを囲ませるようにして配置されている。このように構成されている外套部22の基端部分には、複数の切欠き溝22a(本実施形態では、4つの切欠き溝22a)が形成されている。
【0044】
切欠き溝22aは、周方向に互いに等間隔をあけて配置されており、外套部22の内周面と外周面との間を繋ぐように切り欠かれており、且つ、外套部22の基端から軸線L1に沿って延びている。外套部22では、これら切欠き溝22aによってそれらの間に可撓片22bが形成されている(即ち、本実施形態では、外套部22は、4つの可撓片22bを有している)。可撓片22bは、薄い板状に形成されており、半径方向内側に撓めるようになっている。また可撓片22bの各々の外周面には、係合片15aが形成されている。係合片15aは、可撓片22bの外周面から径方向外方へと突出しており、4つの可撓片22bの各々に形成される4つの係合片15aによって本体側係合部15Aが構成されている。また、装着孔部14の大径部14bの内周面には、前述する本体側係合部15Aに対応させて形成される押圧キャップ12Aのキャップ側係合部16Aが以下のように構成されている。
【0045】
即ち、キャップ側係合部16Aは、装着孔部14の大径部14bの内周面であってその開口側部の部分を周方向全周にわたって、径方向内側に窄めることによって形成されている。また、キャップ側係合部16Aでは、大径部14bのうち小径部14a側の部分を開口側に進むにつれて先細りのテーパ状に形成し、このテーパ部分16aに本体側係合部15Aの各係合片15aを当接させて係合させている。このように係合することによってサンプラー本体11Aに押圧キャップ12Aが装着され、サンプラー本体11Aから押圧キャップ12Aが外れないようにすることができる。他方、サンプラー本体11Aから押圧キャップ12Aを外す際には、押圧キャップ12Aを引き上げるとテーパ部分16aによって係合片15aが径方向内側に押されて可撓片22bが径方向内側に撓む。つまり、外套部22の基端側部分22cが径方向内側に窄まる。それ故、係合片15aがテーパ部分16aを滑っていき、やがて本体側係合部15Aとキャップ側係合部16Aとの係合が解除される。このようにして、押圧キャップ12Aは、本体側係合部15Aとキャップ側係合部16Aとの係合を解除させ、サンプラー本体11Aから外すことができる。
【0046】
なお、装着孔部14は、その開口部がR面取りされており、サンプラー本体11Aに押圧キャップ12Aを被せる際には、係合片15aが開口部によって径方向内側に押されて可撓片22bが径方向内側に撓み、外套部22の基端側部分22cが径方向内側に窄まる。これにより、本体側係合部15Aを装着孔部14においてキャップ側係合部16Aより天井面14d側に配置し、本体側係合部15Aとキャップ側係合部16Aとを係合させることができる。
【0047】
このように構成されているサンプラー1Aは、第1実施形態のサンプラー1と同じ方法にて採血管2に取り付けることができ、また、サンプラー本体11Aから押圧キャップ12Aを外すことができる。そして、滴下部13aからスライドガラス上に血液を滴下して塗抹標本を作製し、その塗抹標本を用いて血液中の血球数及び血球の大きさが観察され、赤血球、白血球、及び血小板の異常が検出される。更に、サンプラー本体11A及び押圧キャップ12Aは、外す際に、サンプラー本体11Aがゴム栓4から抜けないようにするべく以下のように構成されていてもよい。
【0048】
例えば、2つの係合部15A,16Aは、可撓片22bの長さ、即ち切欠き溝22aの長さによって可撓片22bの撓みやすさを調整することができる。可撓片22bを撓みやすくすることによって、より小さい力にて押圧キャップ12Aを持ち上げることが可能になる、即ち外しやすく(即ち、係合解除をしやすく)することができる。従って、サンプラー1Aでは、切欠き溝22aの長さを調整することによって、サンプラー本体11Aをゴム栓4から抜くことなく押圧キャップ12Aをサンプラー本体11Aから外せるようになっている。これにより、押圧キャップ12Aがサンプラー本体11Aに被せられていても、図6に示すように押圧キャップ12Aを引っ張って外すだけでスライドガラス上に血液を滴下させて塗抹標本を作製することができる。
【0049】
また、サンプラー1Aでは、サンプラー本体11Aを天井面14dの方へと押し込むことで、肩部11cと段部14cとを当接させた状態にて保持することができる。これにより、サンプラー本体11Aに対する押圧キャップ12Aのぐらつきを抑制することができる。他方、肩部11cと段部14cとを当接させることによって、その間を気体が通ることが抑制されるので、採血管2内から連通路13に導かれる気体を外側に排出すべく、通気路19Aが以下のようにして構成されている。
【0050】
即ち、図7に示すように、サンプラー本体11Aでは、それに押圧キャップ12Aが被せられた装着状態において切欠き溝22aの少なくとも先端部分が押圧キャップ12Aの下面から突き出ている。即ち、本実施形態の場合、サンプラー本体11Aの外套部22の外周面と、押圧キャップ12Aの装着孔部14の開口部におけるR面取りされた部分との間に形成される隙間にて、切欠き溝22aの先端部分が露出している。このように形成される切欠き溝22aは、図9に示すように環状溝11g、及びサンプラー本体11Aの基端側部分11bと押圧キャップ12Aの小径部14aとの間の空間を介して滴下部13aに繋がっている。つまり、切欠き溝22aは、環状溝11g、及びサンプラー本体11Aの基端側部分11bと押圧キャップ12Aの小径部14aとの間の空間と共に、通気路19Aを形成している。なお、肩部11cと段部14cとを当接する状態において、滴下部13aは、天井面14dから離して配置されており、採血管2内から連通路13に導かれる気体は、通気路19Aに導かれ、この通気路19Aによって外側へと排出される。なお、通気路19Aは、第1実施形態の通気路19と同じく流路面積を小さくし、血液が通りにくいように設計するのが好ましい。これにより、採血管2内が陽圧になっている場合であっても、押圧キャップ12Aを外す際に滴下部13aから血液が飛散することをより抑制することができる。
【0051】
その他、第2実施形態のサンプラー1Aは、第1実施形態のサンプラー1と同様の作用効果を奏する。
【0052】
[第3実施形態]
第3実施形態のサンプラー1Bは、第1実施形態のサンプラー1と構成が類似している。以下では、第3実施形態のサンプラー1Bの構成について、第1実施形態のサンプラー1と異なる点について主に説明し、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図10に示すように第3実施形態のサンプラー1Bは、第1実施形態のサンプラー1と同様に、塗抹標本を作製するにあたって採血管2のゴム栓4に取り付けられる。即ち、サンプラー1Aは、図11及び12に示すようにサンプラー本体11Bと、押圧体を成す押圧キャップ12Bとを備えている。サンプラー本体11Bは、ゴム栓4に穿刺することによって取り付けられる。また、サンプラー本体11Bは、取り付けられた状態で採血管2と外空間とを連通させることができ、それによって採血管2内に採取された血液を滴下させることができる。
【0054】
更に詳細に説明すると、サンプラー本体11Bは、第1実施形態のサンプラー本体11と同じような形状を有しており、本体側係合部15に代えて本体側係合部15Bを有している。本体側係合部15Bは、一対の係合突起片15b,15bを有しており、一対の係合突起片15b,15bは、サンプラー本体11Bの中間部分11aの外周面に一体的に設けられている。更に詳細に説明すると、一対の係合突起片15b,15bは、サンプラー本体11Bの中間部分11aの外周面において周方向に等間隔を空けて(即ち180度ずらして)配置され、また中間部分11aの外周面から径方向外方に突出している。このように構成されるサンプラー本体11Bでは、その基端側部分11bに対して押圧キャップ12Bをスライドさせて被せるようになっており、押圧キャップ12Bは以下のように構成されている。
【0055】
即ち、押圧キャップ12Bは、図13及び図14に示すように装着孔部14Bに加えてスライド溝23が形成されている。装着孔部14Bは、図13に示すように小径部14a及び大径部14bに加えて一対の収容部16B,16Bを有している。一対の収容部16Bの各々は、サンプラー本体11Bの一対の係合突起片15b,15bに対応させて形成されている。即ち、サンプラー本体11Bには、その基端側部分11bを小径部14aに収め、且つその軸線L1が押圧キャップ12Bの軸線L2と一致するように押圧キャップ12Bが被せられて装着されている。このような装着状態において、収容部16Bはその中に対応する係合突起片15b,15bが収まるように形成されている。
【0056】
更に詳細に説明すると、一対の収容部16B,16Bは、大径部14bの内周面を半径方向外側に凹ますことによって形成され、周方向に等間隔をあけて(即ち、180度ずらして)配置されている。即ち、一対の収容部16B,16Bは、軸線L2に直交する方向である第1方向一方及び他方に大径部14bの内周面を夫々凹ませて形成されている。このように形成される一対の収容部16B,16Bの各々は、対応する係合突起片15bと略同一の断面形状、より詳しくは若干大きめに形成されている。これにより、装着状態にあるサンプラー本体11Bは、押圧キャップ12Bに対してその軸線L1回りに相対回転不能になっている。このように構成されているサンプラー1Bでは、押圧キャップ12Bを軸線L1に沿う方向に持ち上げてサンプラー本体11Bから外すのではなく、サンプラー本体11Bに対して押圧キャップ12Bをその軸線L1に直交する方向にスライドさせることによって外せる。このような機能を有するべく押圧キャップ12Bは、スライド溝23を有している。
【0057】
スライド溝23は、図14に示すように装着孔部14Bから第2方向一方に向かって延在するように押圧キャップ12Bに形成され、押圧キャップ12Bの側面にて開口している。ここで、第2方向とは、一対の収容部16Bが凹む前述の第1方向及び軸線L2に沿う軸線方向の夫々に直交する方向である。このように形成されるスライド溝23は、第2方向一方側から見ると装着孔部14Bと略同一形状になっている。即ち、スライド溝23もまた、小径部23a、大径部23b、及び一対の収容部23cを有しており、各部23a~23cは、第2方向一方側から見ると装着孔部14Bの各部14a,14b,16Bと略同一形状になっている。また、スライド溝23は、押圧キャップ12Bの下面でもまた開口している。
【0058】
このように形成されているスライド溝23には、その開口部23dからサンプラー本体11Bの装着部11h、即ち一対の係合突起片15b,15bから基端側の部分を入れることができる。また、入れた後は、スライド溝23内において装着部11hを第2方向他方(即ち、装着孔部14Bの方)に移動させるべく、押圧キャップ12Bを第2方向一方にスライドさせる。更に、スライドさせる前にサンプラー本体11Bを軸線回りに回動させることによって一対の係合突起片15b,15bを一対の収容部23cに収容しておく(即ち、一対の突起片15b,15bの延在方向が第1方向と一致するようにしておく)。そうすることで装着部11hをスライド溝23より奥側、即ち装着孔部14Bへとスライドさせることができる。このように押圧キャップ12をスライドさせて装着部11hを装着孔部14Bに配置することによって、一対の係合突起片15b,15bの各々が対応する収容部16Bに収容される。これにより、押圧キャップ12Bがサンプラー本体11Bに装着される。
【0059】
このように構成されているサンプラー1Bは、第1実施形態のサンプラー1と同じ方法にて採血管2に取付けられる。他方、サンプラー本体11Bから押圧キャップ12Bを外す際には、以下のようにして外される。即ち、サンプラー本体11Bに対して押圧キャップ12Bを第2方向他方にスライドさせ、装着部11hを装着孔部14Bから第2方向一方に移動させる。そうすると、やがて装着部11hがスライド溝23を通って、開口部23dから離脱する。即ち、押圧キャップ12Bがサンプラー本体11Bから外れる。
【0060】
このように押圧キャップ12Bを軸線L1に直交する第2方向他方にスライドすることによってサンプラー本体11Bから外すことができるので、サンプラー本体11Bをゴム栓4から抜くことなく押圧キャップ12Bをサンプラー本体11Bから外す(即ち、離脱させる)ことができる。このようにして外された後は、第1実施形態のサンプラー1と同じく、滴下部13aからスライドガラス上に血液を滴下して塗抹標本を作製し、その塗抹標本を用いて血液中の血球数及び血球の大きさが観察され、赤血球、白血球、及び血小板の異常が検出される。
【0061】
このように構成されているサンプラー1Bでは、サンプラー本体11Bに押圧キャップ12Bが装着されている状態において押圧キャップ12Bの天井面14dとサンプラー本体11Bとの間に隙間が空いており、その隙間がスライド溝23に繋がっている。即ち、押圧キャップ12Bの天井面14dとサンプラー本体11Bとの間が通気路19Bを成しており、採血管2内から連通路13を伝ってくる気体は通気路19B及びスライド溝23を介して外側に排出される。これにより、採血管2内が陽圧にて維持されることを抑制する(即ち、常圧にて維持する)ことができる。他方、通気路19Bの高さは、血液が通らない程度に小さく設定するのが好ましい。これにより、気体によって血液が外側に運ばれることを防ぎ、血液による汚染をより抑制することができる。更に、サンプラー1Bでは、前述の通り採血管2内が常圧にて維持されているので、押圧キャップ12Bをサンプラー本体11Bから外した際に滴下部13a及びその付近に付着する血液が飛散することを防ぐことができる。
【0062】
また、押圧キャップ12Bは、第1実施形態の押圧キャップ12と同様に離脱操作部20を有している。離脱操作部20は、その外径がゴム栓4の上面の外径より大径に形成されている、即ち、ゴム栓4の外周縁部より半径方向外側に突出させることによって形成されている。それ故、使用者は、離脱操作部20を把持しやすく、押圧キャップ12Bをスライドしやすい。これにより、サンプラー1Bにおける外す際の作業性を向上させることができる。
【0063】
その他、第3実施形態のサンプラー1Bは、第1実施形態のサンプラー1と同様の作用効果を奏する。
【0064】
[その他の実施形態]
第1乃至第3実施形態のサンプラー1,1A,1Bでは、サンプラー本体11,11A,11Bと押圧キャップ12,12A,12Bとの間に通気路19,19A,19Bを形成しているが、必ずしもこのような構成である必要はない。例えば、押圧面18に装着孔部14の小径部14aと連通する通気路を形成し、そこから気体を排出させるようにしてもよい。この場合、通気路には、気液を分離するためのフィルターを介在させ血液等の液体を通過させないようにしたり、通気路の開口を塞ぐべく開閉可能な蓋を設けたりするようにしてもよい。また、通気路は通気しさえすればよく、その形状は問わない。
【符号の説明】
【0065】
1 サンプラー
2 採血管
4 ゴム栓
11 サンプラー本体
12 押圧キャップ(押圧体)
13 連通路
13a 滴下部(流出部)
19 通気路
20 離脱操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14