IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧

<>
  • 特許-検査装置、検査方法 図1
  • 特許-検査装置、検査方法 図2
  • 特許-検査装置、検査方法 図3
  • 特許-検査装置、検査方法 図4
  • 特許-検査装置、検査方法 図5
  • 特許-検査装置、検査方法 図6
  • 特許-検査装置、検査方法 図7
  • 特許-検査装置、検査方法 図8
  • 特許-検査装置、検査方法 図9
  • 特許-検査装置、検査方法 図10
  • 特許-検査装置、検査方法 図11
  • 特許-検査装置、検査方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/396 20190101AFI20220308BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220308BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220308BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220308BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20220308BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20220308BHJP
【FI】
G01R31/396
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H02J7/00 Y
H02J7/02 H
H01G13/00 381
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018146541
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020020732
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田和 速人
(72)【発明者】
【氏名】小西 大助
(72)【発明者】
【氏名】川本 和幸
(72)【発明者】
【氏名】池本 準
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-334726(JP,A)
【文献】特開2007-309839(JP,A)
【文献】特開2014-029273(JP,A)
【文献】特開平08-140206(JP,A)
【文献】特開2005-114401(JP,A)
【文献】特開2017-062892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/48
H01M 10/44
H02J 7/00
H02J 7/02
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の蓄電素子を有する組電池の検査装置であって、
前記複数の蓄電素子のうち、充放電中において、1番目に電圧が低い第1蓄電素子と2番目に電圧が低い第2蓄電素子との電圧差に基づいて、前記第1蓄電素子の異常を検出する、検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
充電中と放電中の双方で、前記第1蓄電素子の異常が検出された場合、前記第1蓄電素子は異常と判断する、検査装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の検査装置であって、
前記電圧差が第1閾値を超えた回数に基づいて、前記第1蓄電素子の異常を検出する、検査装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の検査装置であって、
前記組電池は、移動体用である、検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の検査装置であって、
前記組電池の放電中に、前記第1蓄電素子の異常を検出する、検査装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の検査装置であって、
移動体は船舶である、検査装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の検査装置であって、
前記電圧差が第1閾値を超えた回数に基づいて、前記第1蓄電素子の異常を検出する第1検出方法と、
前記電圧差の時間変化量が第2閾値を超える状態が継続する継続時間に基づいて、前記第1蓄電素子の異常を検出する第2検出方法と、を実行し、
前記第1検出方法と前記第2検出方法のうち、少なくともいずれか一方の検出方法で、異常が検出された場合、前記第1蓄電素子は異常であると判断する、検査装置。
【請求項8】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記電圧差の時間変化量が第2閾値を超える状態が継続する継続時間に基づいて、前記第1蓄電素子の異常を検出する、検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の検査装置であって、
前記組電池は、定置用である、検査装置。
【請求項10】
直列に接続された複数の蓄電素子を有する組電池の検査方法であって、
前記複数の蓄電素子のうち、充放電中において、1番目に電圧が低い第1蓄電素子と2番目に電圧が低い第2蓄電素子との電圧差に基づいて、前記第1蓄電素子の異常を検出する、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の異常を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子は、異常を起こすことがある。異常の一つに内部短絡がある。内部短絡は、電池内部における正極と負極の短絡であり、例えば、金属片の混入などにより発生する。下記特許文献1には、組電池が満充電状態にある場合において、単電池のうち電圧値が所定の値を下回っており、かつ電圧が維持されている他の単電池に関して測定されるバイパス電流が所定の値を上回る場合に、電圧値の低下が検知された単電池に内部短絡が発生したと検出する点について、開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-231939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の方法では、各蓄電素子についてバイパス回路と電流計測素子が必要であることから、蓄電素子の直列接続数が増えると、部品点数が増加する。蓄電素子の異常を検出する方法として、例えば、充電中に各蓄電素子の電圧を計測し、電圧が最も高い蓄電素子と電圧が最も低い蓄電素子の電圧差に基づいて判断する方法が考えられる。しかし、電圧が最も高い蓄電素子と電圧が最も低い蓄電素子とを比較する場合、2つの蓄電素子間の容量やSOCの相違による電圧ばらつきは大きく、必然的に電圧差のばらつきも大きい。そのため、蓄電素子の異常を高精度に検出できない場合がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、蓄電素子について異常の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
直列に接続された複数の蓄電素子を有する組電池の検査装置であって、前記複数の蓄電素子のうち、充放電中において1番目に電圧が低い第1蓄電素子と2番目に電圧が低い第2蓄電素子との電圧差に基づいて、前記第1蓄電素子の異常を検出する。
【0006】
直列に接続された複数の蓄電素子を有する組電池の検査方法は、前記複数の蓄電素子のうち、充放電中において1番目に電圧が低い第1蓄電素子と2番目に電圧が低い第2蓄電素子との電圧差に基づいて、前記第1蓄電素子の異常を検出する。
【0007】
上記技術は、直列に接続された複数の蓄電素子を有する組電池の検査プログラム及び検査プログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0008】
蓄電素子の異常を高精度に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1におけるバッテリの分解斜視図
図2】二次電池の平面図
図3図2のA-A線断面図
図4】バッテリ及び検査装置の電気的構成を示すブロック図
図5】内部短絡の検出処理のフローチャート
図6】充電中の各二次電池の電圧波形
図7】実施形態2における内部短絡の検出処理のフローチャート
図8】充電中の各二次電池の電圧波形
図9】放電中の各二次電池の電圧波形
図10】放電中の各二次電池の電圧波形
図11】バランサ回路の回路図
図12】他の実施形態においてバッテリの電気的構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
直列に接続された複数の蓄電素子を有する組電池の検査装置は、複数の蓄電素子のうち、充放電中において1番目に電圧が低い第1蓄電素子と2番目に電圧が低い第2蓄電素子の電圧差に基づいて、前記第1蓄電素子の異常の有無を検出する。充放電中は、充電中又は放電中を意味する。
【0011】
2番目に電圧が低い第2蓄電素子は、1番目に電圧が低い第1蓄電素子に対する容量差やSOC差が他の蓄電素子と比べて小さい。そのため、第2蓄電素子は、第1蓄電素子に対する電圧ばらつきが小さい。この構成では、1番目に電圧が低い第1蓄電素子の電圧を、最も電圧が高い蓄電素子の電圧と比較して異常を検出する場合に比べて、第1蓄電素子の異常の有無を高精度に検出できる。SOCは充電状態(state of charge)である。
【0012】
前記検査装置は、充電中と放電中の双方で、前記第1蓄電素子の異常が検出された場合、前記第1蓄電素子は異常と判断してもよい。充電中と放電中の双方で異常の有無を検出した結果に基づいて、蓄電素子の異常を判断することで、充電中と放電中のうち、いずれか一方だけの結果だけで、異常の有無を判断する場合に比べて、異常の有無を誤判断することを抑制出来る。
【0013】
前記検査装置は、前記電圧差が第1閾値を超えた回数に基づいて、前記第1蓄電素子の異常を検出するとよい。この方法は、電池内部に混入した金属片などの異物により、正極と負極が接触と非接触を繰り返す現象(いわゆるソフトショート)に起因する電圧低下の異常を検出する場合に有効である。前記組電池が移動体用の場合、この方法を適用することで、移動体の振動により発生するソフトショートなど、正極と負極が接触と非接触を繰り返す現象に起因する電圧低下の異常を、精度よく検出することが出来る。前記組電池が移動体用の場合、前記検査装置は、前記組電池の放電中に、前記第1蓄電素子の異常を検出してもよい。移動体の移動中は、組電池が放電する時間が長く、移動による振動が加わり易いことから、検出がし易い。
【0014】
移動体は船舶でもよい。船舶は波により常に揺れやすい。この方法を適用することで、船舶の揺れにより発生するソフトショートなど、正極と負極が接触と非接触を繰り返す現象に起因する電圧低下の異常を、精度よく検出することが出来る。
【0015】
前記検査装置は、前記電圧差が第1閾値を超えた回数に基づいて、前記第1蓄電素子の異常を検出する第1検出方法と、前記電圧差の時間変化量が第2閾値を超える状態が継続する継続時間に基づいて、前記第1蓄電素子の異常を検出する第2検出方法と、を実行し、前記第1検出方法と前記第2検出方法のうち、少なくともいずれか一方の検出方法で、異常が検出された場合、前記第1蓄電素子は異常であると判断してもよい。2つの検出方法を併用することで、モードの異なる異常が検出出来る。前記検査装置は、異常を検出した検出方法に応じて、組電池に対して行う処理内容を変更してもよい。例えば、第1検出方法で異常を検出した場合(ソフトショートによる異常)、組電池の充放電を抑え、第2検出方法で異常を検出した場合(ハードショートによる異常)、組電池の使用を禁止してもよい。
【0016】
前記検査装置は、前記電圧差の時間変化量が第2閾値を超える状態が継続する継続時間に基づいて、前記第1蓄電素子は異常と判断するとよい。この方法は、電池内部に混入した金属片などの異物により、正極と負極が常時接触する現象(ハードショート)に起因する電圧低下の異常を検出する場合に有効である。組電池を定置用で使用する場合、この方法を適用することで、定置用の組電池においてハードショートに起因する電圧低下の異常を、精度よく検出することが出来る。
【0017】
<実施形態1>
1.バッテリBT1の構造説明
図1はバッテリBT1の分解斜視図、図2は二次電池の平面図、図3図2のA-A線断面図である。バッテリBT1は、収容体1と、その内部に収容される組電池40と、基板ユニット31と、を備える。
【0018】
収容体1は、合成樹脂材料からなる本体3と蓋体4とを備えている。本体3は有底筒状で、平面視矩形状の底面部5と、その4辺から立ち上がって筒状となる4つの側面部6とを備えている。4つの側面部6によって上端部分に上方開口部7が形成されている。
【0019】
蓋体4は、平面視矩形状で、その4辺から下方に向かって枠体8が延びている。蓋体4は、本体3の上方開口部7を閉鎖する。蓋体4の上面には平面視略T字形の突出部9を有する。蓋体4の上面には、突出部9を有していない2箇所のうち、一方の隅部に正極の外部端子10が固定され、他方の隅部に負極の外部端子11が固定されている。収容体1は、組電池40と基板ユニット31を収容している。基板ユニット31は組電池40の上部に配置されている。
【0020】
組電池40は、直列に接続された複数(一例として6つ)の二次電池2からなる。各二次電池2は、仕切り壁3aにより仕切られた収容体1の各電池収容室3bにそれぞれ収容されている。二次電池2は、蓄電素子の一例である。図2及び図3に示すように、二次電池2は、直方体形状のケース12内に電極体13を非水電解質と共に収容したものである。二次電池2は、例えば、リチウムイオン二次電池である。ケース12は、ケース本体14と、その上方の開口部を閉鎖するカバー15とを有している。
【0021】
電極体13は、詳細については図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極要素との間に、多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状で、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体14に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0022】
正極要素には正極集電体16を介して正極端子17が、負極要素には負極集電体18を介して負極端子19がそれぞれ接続されている。正極集電体16及び負極集電体18は、平板状の台座部20と、この台座部20から延びる脚部21とからなる。台座部20には貫通孔が形成されている。脚部21は正極要素又は負極要素に接続されている。正極端子17及び負極端子19は、端子本体部22と、その下面中心部分から下方に突出する軸部23とからなる。そのうち、正極端子17の端子本体部22と軸部23とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子19においては、端子本体部22がアルミニウム製で、軸部23が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極端子17及び負極端子19の端子本体部22は、カバー15の両端部に絶縁材料からなるガスケット24を介して配置され、このガスケット24から外方へ露出されている。
【0023】
2.バッテリBT1と検査装置100の電気的構成
図4はバッテリBT1と検査装置100の電気的構成を示すブロック図である。バッテリBT1は、組電池40と、電流検出抵抗41と、遮断装置43と、計測ユニット50と、を備える。
【0024】
電流検出抵抗41、組電池40、及び遮断装置43は、パワーライン45P、45Nを介して、直列に接続されている。パワーライン45Pは、正極の外部端子10と組電池40の正極とを接続するパワーラインである。パワーライン45Nは、負極の外部端子11と組電池40の負極とを接続するパワーラインである。遮断装置43は組電池40の正極側に位置し、正極側のパワーライン45Pに設けられている。電流検出抵抗41は、組電池40の負極側に位置し、負極のパワーライン45Nに設けられている。
【0025】
遮断装置43は、リレーなどの有接点スイッチ(機械式)やFETやトランジスタなどの半導体スイッチにより構成することが出来る。遮断装置43を動作させることで、電流を遮断することが出来る。
【0026】
計測ユニット50は、電流計測部51と、電圧計測部53と、メモリ55と、通信部57を備える。計測ユニット50は、基板ユニット31上に設けられている。電流計測部51は、電流検出抵抗41の両端電圧に基づいて、バッテリBT1の電流を計測する。電圧計測部53は、組電池40を構成する各二次電池2の電圧V、及び組電池40の総電圧Vtを計測する。総電圧Vtは6つの二次電池2の合計電圧である。電流計測部51は、電流検出抵抗41の両端電圧の極性(正負)から充電と放電を区別できる。
【0027】
メモリ55は、電流計測部51により計測される電流のデータ、電圧計測部53により計測される各二次電池2の電圧Vのデータのバックアップ用である。
【0028】
通信部57は、バッテリBT1の外部に設けられた監視装置(図略)や検査装置100との通信用である。監視装置は、バッテリBT1の状態を監視する装置である。
【0029】
検査装置100は、処理部110と、メモリ120と、表示部130とを備える。検査装置100は、出荷時の検査工程において、直列に接続された複数の二次電池2について、内部短絡の有無を検出する。内部短絡とは、ケース12の内部で正極要素と負極要素が接触する異常である。
【0030】
メモリ120は、フラッシュメモリやEEPROM等の不揮発性の記憶媒体である。メモリ120には、組電池40の異常を検出する検査プログラム、及び検査プログラムを実行するための各種データが記憶されている。検査プログラムは、コンピュータである処理部110に、内部短絡の検出処理(図5のS10~S70)を実行させることで、直列に接続された複数の二次電池2について、内部短絡の有無を検出するプログラムである。
【0031】
3.内部短絡の検出
図5は内部短絡の検出処理のフローチャートである。内部短絡の検査処理は、バッテリBT1の出荷時の検査工程にて行われ、S10~S70の7ステップにより構成されている。
【0032】
検査工程では、まず、図4に示すように、バッテリBT1の外部端子10、11に充電器150が接続され、バッテリBT1の充電が開始される(S10)。充電は定電流充電である。充電は定電力充電でもよい。バッテリBT1の充電が開始されると、電流計測部51は充電電流の計測を開始し、電圧計測部53は、直列に接続された各二次電池2の電圧V、及び組電池40の総電圧Vtの計測を開始する。
【0033】
計測ユニット50により計測された各データは、計測ユニット50から検査装置100に対してリアルタイムで送信される。各データは、電流計測部51により計測された充電電流のデータ、電圧計測部53により計測された各二次電池2の電圧V及び組電池40の総電圧Vtのデータである。
【0034】
処理部110は、計測ユニット50からリアルタイムで送信されるデータに基づいて、充電中において、1番目に電圧が低い二次電池(第1蓄電素子)2と、2番目に電圧が低い二次電池(第2蓄電素子)2を抽出する。処理部110は、1番目と2番目に電圧が低い2つの二次電池2の電圧差ΔVを算出する(S20)。
【0035】
ΔV=V2-V1・・・・・・・(1)
V2は直列に接続された6つの二次電池2のうち、2番目に電圧が低い二次電池の電圧であり、V1は1番目に電圧が低い二次電池の電圧である。
【0036】
次に処理部110は、2つの二次電池2の電圧差ΔVを、第1閾値K1と比較する(S30)。電圧差ΔVが第1閾値K1未満の場合、処理部110は、組電池40を正常と判断する。この場合、処理の流れとしては、S40に移行して、処理部110は、充電終了か判断する処理を行う。充電が終了していなければ、S20に移行して処理部110は再び電圧差ΔVを検出し、その後、S30にて電圧差ΔVを第1閾値K1と比較する。
【0037】
2つの二次電池2の電圧差ΔVが第1閾値K1を超えた場合、処理部110は、第1所定期間T1内に、電圧差ΔVが第1閾値K1を超えた回数が規定回数以上か判定する(S50)。第1所定期間T1内に規定回数以上の場合(S50:YES)、処理部110は、1番目に電圧が低い二次電池2は、内部短絡と判断する(S60)。
【0038】
第1所定時間T1は一例として10秒、規定回数は一例として3回である。第1閾値K1は一例として20~40mVである。
【0039】
1番目に電圧が低い二次電池2は内部短絡と判断した場合、処理部110は異常を報知する処理を行う(S70)。例えば、処理部110は充電器150に対して充電停止の指令を送ると共に、「二次電池2は内部短絡です」などのエラーメッセージを、表示部130に表示させる。
【0040】
2つの二次電池2の電圧差ΔVが第1閾値K1を超えた場合でも、第1所定期間T1内の回数が規定回数未満であれば、処理部110は、組電池40は正常(S50ではNO判定)と判断する。この場合、充電が継続される。充電が終了すると、内部短絡の検出処理も終了する(S40)。
【0041】
図6は、組電池40を定電流充電した時の各二次電池2の電圧波形V1~V6であり、横軸は時間[s]、縦軸は電圧[V]である。図6は、1番目に電圧が低い二次電池2の電圧波形をV1で示し、2番目に電圧が低い二次電池2の電圧波形をV2で示している。電圧波形V3~V6は、他の二次電池2の電圧波形である。破線で示す電圧波形Vkは電圧波形V2から、第1閾値K1を引いた電圧を示す。
【0042】
時刻t0で充電を開始した後、電圧波形V1は、時刻t1にて電圧波形Vkと交差し、電圧波形V2との電圧差ΔVは第1閾値K1を超えている。時刻t1から第1所定期間T1の間に、電圧波形V1と電圧波形V2の電圧差ΔVは、規定回数である3回、第1閾値K1を超えている。従って、検査装置100により、組電池40のうち、1番目に電圧が低い二次電池2は、内部短絡であると判断される(第1検出方法)。
【0043】
第1検出方法は、1番目に電圧が低い二次電池2と2番目に電圧が低い二次電池2の電圧差ΔVに基づいて、1番目に電圧が低い二次電池2の異常の有無を判断する。これは、1つの二次電池(つまり、1番目に電圧が低い二次電池)2に内部短絡が発生しても、他の二次電池2は正常である、という推測に基づいている。この推測は、過去の経験から、組電池40を構成する複数の二次電池2において、同時に内部短絡が発生することは、極稀であるという事実に基づいている。
【0044】
4.効果説明
2番目に電圧が低い二次電池2は、通常(正常時)、1番目に電圧が低い二次電池2に対する容量差やSOC差が、3番目や4番目に電圧が低い二次電池など他の二次電池2と比べて小さいことから、1番目に電圧が低い二次電池2に対する電圧ばらつきが小さい。
【0045】
この方法では、1番目に電圧が低い二次電池2の電圧を、2番目に電圧が低い二次電池2と比較して、1番目に電圧が低い二次電池2の異常の有無を検出する。この方法は、1番目に電圧が低い二次電池2の電圧を、2番目以外の他の二次電池2の電圧と比較する場合に比べて、1番目に電圧が低い二次電池2の異常を高精度に検出できる。
【0046】
電圧差ΔVが第1閾値K1を超える回数が第1所定期間T1内に規定回数以上の場合、検査装置100は、1番目に電圧が低い二次電池2を、内部短絡と判断(異常検出)する。この検出方法は、二次電池2のケース12の内部に混入した金属片などの異物により、正極要素と負極要素が接触と非接触を繰り返すこと(ソフトショート)に起因する電池の電圧低下の異常を検出する場合に有効である。特に、バッテリBT1を車両や船舶などの移動体に搭載する場合、この方法を適用することで、移動体の振動により発生するソフトショートなど、正極要素と負極要素が接触と非接触を繰り返す現象に起因する電圧低下の異常を、精度よく検出することが出来る。
【0047】
<実施形態2>
実施形態2は、1番目に電圧が低い二次電池2と2番目に電圧が低い二次電池2の電圧差ΔVに着目して1番目に電圧が低い二次電池2の異常を検出する点は、実施形態1と共通している。実施形態2は、電圧差ΔVから異常を検出するプロセスが、実施形態1と異なっている。
【0048】
図7は内部短絡の検出処理のフローチャートである。図7の検出処理は、図5の検出処理に対してS30とS50が相違しており、S30とS50に代えて、S35とS55の処理を行う。
【0049】
処理部110は、充電開始後、1番目に電圧が低い二次電池2と2番目に電圧が低い二次電池2を抽出し、1番目と2番目に電圧が低い2つの二次電池2の電圧差ΔVを算出する(S20)。その後、処理部110は、2つの二次電池2の電圧差ΔVが、充電中において、時間経過に伴って増加しているか、判断する(S35)。電圧差ΔVが増加していなければ(S35:NO)、処理部110は、組電池40は正常と判断する。
【0050】
電圧差ΔVが増加している場合(S35:YES)、処理部110は、電圧差ΔVの時間変化量ΔV/tが第2閾値K2を超えている状態が継続する継続時間Tが、第2所定期間T2以上か判定する(S55)。
【0051】
継続時間Tが第2所定期間T2以上の場合(S55:YES)、処理部110は、1番目に電圧が低い二次電池2は内部短絡と判断する(S60)。継続時間Tが第2所定期間T2より短い場合(S55:NO)、処理部110は、組電池40は正常と判断する。第2所定時間T2は一例として5分、第2閾値K2は一例として10mV/minである。
【0052】
図8は、組電池40を定電流充電した時の、各二次電池2の電圧波形V1~V6であり、横軸は時間[s]、縦軸は電圧[V]である。図8では、1番目に電圧が低い二次電池2の電圧波形をV1で示し、2番目に電圧が低い二次電池2の電圧波形をV2で示している。電圧波形V3~V6は、他の二次電池2の電圧波形である。
【0053】
時刻t0で充電を開始した後、時刻t1以降、電圧波形V1と電圧波形V2との電圧差ΔVが増加している。時刻t1以降、電圧差ΔVの時間変化量ΔV/tは、第2閾値K2を継続して超えている。時間変化量ΔV/tが第2閾値K2を超える状態が継続する継続時間Tは、時刻t2で第2所定期間T2に到達する。従って、時刻t2にて、検査装置100により、組電池40のうち、1番目に電圧が低い二次電池2は内部短絡であると判断される(第2検出方法)。
【0054】
第2検出方法は、二次電池2のケース12の内部に混入した金属片などの異物により、正極要素と負極要素が常時接触する現象(いわゆるハードショート)に起因する電池の電圧低下の異常を検出する場合に有効である。つまり、正極要素と負極要素が常時接触している場合、接触部でのエネルギーロスが継続して発生する。そのため、充電中に電極要素間でハードショートが発生すると、その後、電圧差ΔVは増加して、電圧差ΔVの時間変化量ΔV/tが第2閾値K2を超える状態が持続するため、この方法での検出が有効である。組電池40を無停電電源システムの蓄電装置など定置用で使用する場合、この方法を適用することで、定置用の組電池40においてハードショートに起因する電圧低下の異常を、精度よく検出することが出来る。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1、2では、蓄電素子は、二次電池2を例示した。蓄電素子は、二次電池2に限定されるものではなく、キャパシタ等でもよい。蓄電素子は複数を直列に接続する場合に限らず、直並列の接続でもよい。バッテリBT1の使用用途は、特定の用途に限定されない。バッテリBT1は、移動体用(車両用や船舶用、AGVなど)、定置用(無停電電源システムや太陽光発電システムの蓄電装置)など、種々の用途に使用することが出来る。
【0056】
(2)上記実施形態1、2において、処理部110は、充電中の電圧計測値から、1番目と2番目に電圧が低い2つの二次電池2の電圧差ΔVを算出し、算出した電圧差ΔVに基づいて二次電池2の内部短絡を検出した。図9図10に示すように、放電中も、内部短絡が起きた二次電池2は、他の二次電池2に比べて電圧が低下し、電圧差ΔVが生じる。そのため、出荷検査でバッテリBT1を放電し、処理部110は、放電中の電圧計測値から1番目と2番目に電圧が低い2つの二次電池2の電圧差ΔVを算出し、算出した電圧差ΔVに基づいて、1番目に電圧が低い二次電池2の内部短絡を検出してもよい。
【0057】
(3)処理部110は、充電中と放電中の双方で、1番目と2番目に電圧が低い2つの二次電池2の電圧差ΔVを検出し、充電中と放電中の双方で1番目に電圧が低い二次電池2の異常が検出された場合、1番目に電圧が低い二次電池2は異常であると判断してもよい。充電中と放電中の双方で異常の有無を検出した結果に基づいて、二次電池2の異常を判断することで、充電中、放電中のうちいずれか一方の結果だけで、異常の有無を判断する場合に比べて、異常の有無を誤判断することを抑制出来る。二次電池2の異常の検出は、実施形態1で示した第1検出方法、実施形態2で示した第2検出方法のどちらを用いてもよい。
【0058】
(4)実施形態1、2では、出荷検査用の検査装置100を示した。検査装置100は、出荷検査用に限らない。検査装置100を、バッテリBT1と共に車両や船舶などの移動体に搭載し、移動体搭載後のバッテリBT1について異常を検出してもよい。また、検査装置100は、無停電電源システムや太陽光発電システムに組み込み、システムの稼働中に、無停電電源システムや太陽光発電システムの蓄電部の異常を検出してもよい。
【0059】
(5)バッテリBT1が移動体に搭載されている場合、ソフトショートによる異常の検出は、放電中に行うとよい。つまり、移動体に搭載したバッテリBT1の放電中に、処理部110は、1番目と2番目に電圧が低い2つの二次電池2の電圧差ΔVを算出し、電圧差ΔVが第1閾値K1を超える回数から、移動体に搭載したバッテリBT1のソフトショートによる異常を検出するとよい。移動体の移動中は、バッテリBT1が放電する時間が長く、移動による振動が加わり易いことから、検出がし易い。
【0060】
(6)上記実施形態1において、処理部110は、1番目と2番目に電圧が低い2つの二次電池2の電圧差ΔVが第1閾値K1を超えた回数が、第1所定期間T1内に規定回数以上になった場合に、1番目に電圧が低い二次電池2は内部短絡と判断した。この他に、処理部110は、充電開始から充電終了までを1回とカウントした場合、1回の充電で、電圧差ΔVが第1閾値K1を超えた回数の合計が所定回数以上になった場合に、1番目に電圧が低い二次電池2は内部短絡と判断してもよい。
【0061】
(7)上記実施形態1において、処理部110は、1番目と2番目に電圧が低い2つの二次電池2の電圧差ΔVが第1閾値K1を超えた回数に基づいて、1番目に電圧が低い二次電池2の内部短絡を検出した。内部短絡の検出は、1番目と2番目に電圧が低い2つの二次電池2の電圧差ΔVに基づいて判断する方法であれば、種々の方法が適用可能である。処理部110は、例えば、電圧差ΔVを第1閾値K1と比較して、電圧差ΔVが第1閾値K1を1回でも超えた場合、1番目に電圧が低い二次電池2は内部短絡と判断してもよい。
【0062】
(8)実施形態1では、二次電池2の異常を第1検出方法で検出した。実施形態2では、二次電池2の異常を第2検出方法で検出した。第1検出方法は、充電中又は放電中に各二次電池2の電圧を検出する。第1検出方法は、1番目と2番目に電圧が低い2つの二次電池2の電圧差ΔVが第1閾値K1を超えた回数に基づいて、二次電池2の異常を検出する(図5の検出処理)。第1検出方法は、二次電池2のソフトショートによる異常検出に適している。第2検出方法は、充電中又は放電中に各二次電池2の電圧を検出する。第2検出方法は、1番目と2番目に電圧が低い2つの二次電池2の電圧差ΔVの時間変化量ΔV/tに基づいて、二次電池2の異常を検出する(図7の検出処理)。第2検出方法は、二次電池2のハードショートによる異常検出に適している。
処理部110は、第1検出方法と第2検出方法の2つの検出方法を併用して、二次電池2の異常を検出してもよい。処理部110は2つの検出方法のうち、少なくともいずれか一方の検出方法で異常を検出した場合(内部短絡と判断した場合)、異常を報知する処理を行ってもよい。処理部110は、2つの検出方法を併用することで、ソフトショート、ハードショートのどちらのモードによる異常も検出することが出来る。処理部110は、異常を検出した検出方法に応じて、バッテリBT1に対して行う処理内容を変更してもよい。例えば、処理部110は、第1検出方法で異常を検出した場合(ソフトショートによる異常)、バッテリBT1の充放電を抑える処理を行い、第2検出方法で異常を検出した場合(ハードショートによる異常)、バッテリBT1の使用を禁止する処理を行ってもよい。
【0063】
(9)上記実施形態1、2において、処理部110は、内部短絡に起因する二次電池2の異常を検出したが、電圧が低下する異常であれば、その原因は内部短絡以外でもよい。例えば、図11に示すように、各二次電池2に対してバランサ回路60が接続されている場合がある。バランサ回路60は、抵抗RとスイッチSWを有しており、スイッチSWをONすることで、二次電池2を抵抗放電する。バランサ回路60は、電圧の高い二次電池2を放電することで、直列に接続された二次電池2の電圧を均等化する。バランサ回路60のスイッチSWがONに固着していると、その二次電池2は、放電が進み電圧が低下する。そのため、1番目に電圧が低い二次電池2と2番目に電圧が低い二次電池2との電圧差ΔVが、正常時よりも大きくなる。処理部110は、第1検出方法や第2検出方法により、内部短絡だけでなく、バランサ回路60の故障も検出することが出来る。
【0064】
(10)図12のバッテリBT2は、管理装置200を有する。管理装置200は、バッテリBT2の内部にあって、処理部210、表示部220、メモリ230を有する。管理装置200は、計測ユニット50の計測する各二次電池2の電圧のデータや電流のデータに基づいて、バッテリBT2の状態を管理、監視する。管理装置200は、充放電中の電圧計測値から、1番目と2番目に電圧が低い2つの二次電池2の電圧差ΔVを算出し、算出した電圧差ΔVに基づいて、二次電池2の異常の検出を行う。上記実施形態1、2では、検査装置100をバッテリBT1とは別に設けた構成を例示したが、バッテリ内部の管理装置200を検査装置としてもよい。
【0065】
(11)本技術のコンセプトは、直列に接続された複数の蓄電素子を有する組電池の検査プログラムに適用することが出来る。直列に接続された複数の蓄電素子を有する組電池の検査プログラムは、コンピュータに、充電中又は放電中において、前記複数の蓄電素子のうち、1番目に電圧が低い第1蓄電素子と2番目に電圧が低い第2蓄電素子との電圧差に基づいて、前記第1蓄電素子の異常を検出する検出処理を実行させる。
【0066】
(12)本技術のコンセプトは、直列に接続された複数の蓄電素子を有する組電池の検査プログラムを記録した記録媒体に適用することが出来る。記録媒体は、検査プログラムを記録できる媒体であればよく、メモリ以外に、CD-ROM等でもよい。
【符号の説明】
【0067】
2...二次電池(蓄電素子)
40...組電池
50...計測ユニット
51...電流計測部
53...電圧計測部
100...検査装置
110...処理部
120...メモリ(記録媒体)
130...表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12